説明

金属−炭素複合材料及びその製造方法

【課題】生産性を向上でき、且つ、性能的にも十分で、広い分野で使用でき、しかも、環境負荷を低減できる金属−炭素複合材料及びその製造方を提供することを目的としている。
【解決手段】炭素と、金属又は金属酸化物から成るナノ粒子と、から構成される金属−炭素複合材料において、上記炭素と上記ナノ粒子の総量に対する上記ナノ粒子の割合が、50重量%以上99重量%であることを特徴とするものであって、炭素内にナノ粒子が分散された構造となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属−炭素複合材料及びその製造方法に関するものであり、特に、磁性金属ナノ粒子を含む炭素複合材料及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属粒子をナノ(1〜100nm程度)分散させることは、サイズ効果による電子構造の変化や、表面積の増大といった変化が生じ、その結果、例えば、高い電磁波吸収効果、磁性体における保磁力の変化、表面プラズモン効果の発現による色素やセンサーへの適用、及び触媒活性の向上といった、様々な利点をもたらすことが知られている。この金属粒子をナノ分散させるに際し、従来は界面活性剤による分散、プラズマを用いた気相法、希薄溶液中での液相法、あるいは超臨界流体を用いた方法が用いられてきていたが、これらの分散方法は制御が難しく、また生産性が低い等の問題がある。それらの問題を解決するための最も好適な材料の一つとして、金属微粒子間に炭素材料を介在させた金属−炭素複合材料が挙げられる。
【0003】
ここで、金属粒子をナノ分散させた従来の金属−炭素複合材料としては、液相法やアーク放電法といった製法によって製造する方法が提案されている。
例えば、Fe(NO・9HO、Co(NO)・6HO等の金属塩に、クエン酸、及び水又はエチレングリコールを加えて、得たクエン酸錯体重合体を炭素化した金属−炭素複合材料が開示されている(下記非特許文献1及び2参照)。
また、NiやFeを配合した炭素材料を電極として用い、対極とアーク放電させることで、炭素材料中に金属微粒子をナノ分散させた金属−炭素複合材料を得る製造方法が開示されている(下記非特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】J.Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy Vol.52, No.8『錯体重合法を応用した炭素/Fe-Co合金複合材料の調製と磁気特性』
【非特許文献2】炭素No.228『錯体重合法による炭素/Fe-Ni-Cu合金複合材料の調製と構造・電波吸収特性の評価』
【非特許文献3】Appl. Phys. Lett. 89, 053115(2006)“Microwave absorption properties of the carbon-coated nickel nanocapsules”
【非特許文献4】J.Phys. D:Appl.Phys.40(2007)5383-5387“Microstructure and microwave absorption properties of the carbon-coated Iron nanocapsules”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1及び2にあるような従来の液相法を用いて金属−炭素複合材料を作製した場合には、金属のナノ分散は図れるものの、金属−炭素複合材料中の金属量を大きくすることができないという課題を有していた。具体的には、非特許文献1に開示された金属−炭素複合材料中の金属含有量は最大で27重量%、非特許文献2では42.7重量%に留まっている。
【0006】
また、非特許文献3及び4にあるようなアーク放電法により得られた金属−炭素複合材料中の金属量については開示されていない。しかしながら、当該方法では、アーク放電時の熱によって蒸発する金属分もあることを考慮すると、金属含有量が50重量%に到達している可能性は極めて小さいものと推定される。
【0007】
このように金属含有量が少ない金属−炭素複合材料では、金属を含有していることに起因する利点が十分に発揮されない。したがって、上述の各種分野における適合性に欠け、とりわけ電磁波吸収材料分野に適用した場合において、電磁波吸収能に欠けるといった課題を有していた。
加えて、従来の液相法を用いた場合には、溶媒として重合性の有機溶媒(一般には、エチレングリコール)を用いていたので、環境負荷が大きくなるといった課題もある。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を考慮したものであって、生産性の向上を図りつつ、飛躍的な性能向上を図って幅広い分野で使用することができ、しかも、環境負荷を低減できる金属−炭素複合材料及びその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するために、炭素と、金属及び/又は金属酸化物から成るナノ粒子とから構成される金属−炭素複合材料において、上記炭素と上記ナノ粒子との総量に対するナノ粒子の割合が、50重量%以上99重量%以下であることを特徴とする。
上記構成の如く、金属の割合を50重量%以上にすることができれば、金属ナノ粒子の生産性の向上を図ることができ、且つ、金属−炭素複合材料の使用分野において、十分な性能を発揮でき、しかも、広範な分野で金属−炭素複合材料を使用することができる。
尚、上記金属−炭素複合材料において、炭素の結晶性は問われない。即ち、金属−炭素複合材料における炭素は結晶でも非晶質であっても良い。また、上記金属には、合金を含む。
【0010】
上記炭素内に上記ナノ粒子が分散されていることが望ましい。
炭素内にナノ粒子が分散された構造であれば(即ち、ナノ粒子の凝集を抑制できれば)、ナノ粒子特有の性状が維持されるので、金属−炭素複合材料の使用分野において、より高い性能を発揮できる。加えて、ナノ粒子が分散された構造であっても、ナノ粒子の回りは炭素が存在するので、耐酸化性、耐熱性、耐薬品性等に優れるナノ粒子を得ることができる。したがって、金属−炭素複合材料の製品寿命が長くなると共に、金属−炭素複合材料のハンドリング性が飛躍的に向上する。
【0011】
上記ナノ粒子の平均粒径が1nm以上100nm以下であることが望ましい。
ナノ粒子の平均粒径が1nm未満になると、安定性の低下が著しいという問題が生じることがある一方、100nmを超えると、ナノ粒子としての機能が発現しないという問題が生じることがあるからである。
【0012】
上記ナノ粒子の粒径の標準偏差が、ナノ粒子の平均粒径の1/3以下であることが望ましい。
このように、ナノ粒子の粒径が均一化されていれば、上記作用効果が一層発揮される。
【0013】
上記ナノ粒子が合金から成ることが望ましく、特に、合金が、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、クロム、銅、バナジウム、モリブデン、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、スズ、タングステン、金、銀、及び白金からなる群から選ばれた、少なくとも2種類の金属から構成されることが望ましい。
このように、ナノ粒子が各種の合金から構成されていれば、金属−炭素複合材料を電磁波吸収体等、多様な分野で用いることが可能となる。
【0014】
保磁力が20A/m以下であることが望ましい。
このような構成であれば、電磁波吸収体として高い作用効果を十分に発揮できる。
【0015】
また、上記目的を達成するために本発明は、金属源と炭素源とを、プロトン性溶媒中に溶解させる第1ステップと、上記プロトン性溶媒を除去する第2ステップと、還元雰囲気下又は不活性雰囲気下において焼成を行う第3ステップと、を有することを特徴とする。
上記方法であれば、上述したナノ粒子の割合が高い金属−炭素複合材料を得ることができる。また、上記方法であれば、第1ステップの溶解、第2ステップの乾燥、及び第3ステップの焼成に対応した設備があれば足り、且つ、反応条件の制御は焼成時の温度と雰囲気制御のみであって、従来のナノ粒子製造法と比べて非常に簡便である。したがって、ナノ粒子の量産性が飛躍的に向上する。
加えて、重合性の有機溶媒を用いることなく金属−炭素複合材料を製造できるので、環境への負荷が低減できる。更に、金属源と炭素源との量を調整するだけで金属−炭素複合材料の金属含有量を任意に調整することができるので、種々の要望に即座に対応することができる。
【0016】
また、第1ステップにおける炭素源の添加量を調整するだけで、金属−炭素複合材料の炭素量を規制できる(焼成工程における焼成条件によって炭素収率を制御するのではない)ので、炭素量を簡単に制御できる。しかも、このように炭素量を制御することにより、結果的にナノ粒子の粒径も制御できる。具体的には、第3ステップの焼成温度が高くなると、結晶子径が増大することがあるが、炭素の割合がある程度多くなるように規制すれば、結晶子径が顕著に増大するのを抑制できる。
【0017】
加えて、金属源を水に溶解させているので、2以上の金属源を用いた場合には各原料が均一混合される。したがって、後述の如く、ナノ粒子として合金を用いる際に、一部は合金となるが、残りは金属のままで存在するといった不都合を回避できる。
尚、上記第2ステップにおける乾燥温度は70℃以上150℃未満であることが望ましい。乾燥温度が70℃未満の場合には乾燥時間が長くなる一方、乾燥時間が150℃以上になると、炭素の割合が所望量よりも大幅に低下することがある。
【0018】
上記金属源には複数種類の異種金属が含まれていることが望ましい。
種類以上の金属源がプロトン性溶媒中に溶解されていれば、金属を合金化することが可能となる。したがって、合金化ナノ粒子が炭素中に分散された金属−炭素複合材料を容易に作製することができる。
【0019】
金属源と炭素源として有機酸の金属塩を用いることが望ましい。
有機酸の金属塩として、例えば、クエン酸ニッケルや、クエン酸鉄等を用いれば、これが金属源のみならず炭素源としても働く。したがって、金属源と炭素源とを別途添加する必要が無くなるので、簡便な方法で金属−炭素複合材料を作製することができる。
【0020】
上記炭素源として有機酸を用い、上記金属源として無機酸の金属塩を用いることが望ましい。
金属源として無機酸の金属塩、例えば、硝酸鉄、硝酸ニッケル等を用いれば、これら材料は極めて安価であるので、金属−炭素複合材料の原材料コストを低減することができる。また、有機酸と金属塩との比率を調整するだけで、所望の金属を含有する金属−炭素複合材料を作製することができる。
【0021】
上記金属源として無機酸の金属塩が含まれている場合には、上記第2ステップにおいて、金属塩の無機酸成分を除去することが望ましい。
このように、第2ステップにおいて、プロトン性溶媒を除去すると共に無機酸成分を除去すれば、工程数が増えることなく上記に効果が発揮される。但し、第2ステップとは別個に、金属塩の無機酸成分を除去するステップを設けても良いことは勿論である。
【0022】
上記有機酸は、蟻酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸からなる群から選ばれた少なくとも1つであることが望ましい。また、上記無機酸は、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、炭酸、りん酸の群から選ばれた少なくとも1つであることが望ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、生産性を向上でき、且つ、性能的な制約が少なく、応用できる分野も広くなり、しかも、環境負荷を低減できるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明材料A1のX線回折プロファイルを示すグラフである。
【図2】比較材料ZのX線回折プロファイルを示すグラフである。
【図3】本発明材料A1の透過電子顕微鏡像を示す写真である。
【図4】本発明材料A1の製造過程中で得られる緑色粉末(乾燥処理後熱処理前の粉末)を窒素雰囲気下で加熱したときの熱重量分析結果を示すグラフである。
【図5】本発明材料A3を空気中で加熱したときの熱重量分析結果を示すグラフである。
【図6】磁化曲線を示すグラフである。
【図7】図6のA部を拡大したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
(実施例1)
クエン酸ニッケルとクエン酸鉄とを、金属のモル比が1:1となるように純水中に投入し、十分に溶解するように撹拌した後、120℃で加熱して水を揮発させる(除去する)ことにより、緑色の粉末状の金属−炭素複合材料前駆体を得た。次に、この金属−炭素複合材料前駆体を、窒素雰囲気中で5℃/minで700℃まで昇温させ、700℃で1時間保持して焼成(炭素化)を行うことで、金属−炭素複合材料を得た。
このようにして作製した金属−炭素複合材料を、以下、本発明材料A1と称する。
【0027】
(実施例2)
硝酸ニッケルとクエン酸鉄とを、金属のモル比が1:0.29となるように純水中に投入し、十分に溶解するように撹拌した後、80℃で加熱して水を揮発させる(除去する)と共に硝酸ニッケルに由来する硝酸を揮発させ(除去し)、緑色の粉末状の金属−炭素複合材料前駆体を得た。次に、この金属−炭素複合材料前駆体を、窒素雰囲気中で5℃/minで900℃まで昇温させ、900℃で1時間保持して焼成(炭素化)を行うことで、金属−炭素複合材料を得た。
このようにして作製した金属−炭素複合材料を、以下、本発明材料A2と称する。
【0028】
(実施例3)
酢酸ニッケルとクエン酸鉄とを、金属のモル比が1:0.29となるように純水中に投入し、十分に溶解するように撹拌した後、80℃で加熱して水を揮発させる(除去する)と共に硝酸ニッケルに由来する硝酸を揮発させ(除去し)、緑色の粉末状の金属−炭素複合材料前駆体を得た。次に、上記実施例2と同様の条件で焼成(炭素化)することで、金属−炭素複合材料を得た。
このようにして作製した金属−炭素複合材料を、以下、本発明材料A3と称する。
【0029】
(比較例)
クエン酸鉄の粉末とクエン酸ニッケルの粉末とを、モル比が1:1となるように物理的に混合した後、この混合粉末を、700℃に設定された炭化炉内で、窒素流下しつつ1時間熱処理することによって、金属−炭素複合材料を作製した。
このようにして作製した金属−炭素複合材料を、以下、比較材料Zと称する。
【0030】
(実験1)
上記本発明材料A1〜A3(但し、X線回折プロファイルについては、本発明材料A1についてのみ示す)、と比較材料ZとのX線回折を行ったので、それらの結果を、図1(本発明材料A1)及び図2(比較材料Z)に示す。また、本発明材料A1〜A3については、X線回折プロファイルの半価幅を求め、この半価幅からシェラー式を用いて平均結晶子径を算出したので、その結果を表1に示す。更に、透過電子顕微鏡を用いて本発明材料A1の状態を調べたので、その写真を図3に示す。
【0031】
図1から明らかなように、本発明材料A1では、金属粒子が単一組成(この場合は、Ni−Fe合金)であることが認められる。これに対して、図2から明らかなように、比較材料Zでは、Ni−Fe合金の他にNi金属が存在していることが認められる。このことから、ナノ粒子として合金を用いる場合には、2種の原料を単に物理的に混合して焼成するだけでは不十分であり、2種の原料を水溶媒に溶解させ、更に水を蒸発させた後に焼成することが必須であることが分かる。
【0032】
【表1】

【0033】
また、図1に示すX線回折プロファイルから半価幅を求め、この半価幅からシェラー式を用いて平均結晶子径を算出したところ、表1に示すように、本発明材料A1の平均結晶子径は37nmで、標準偏差が6.5nmであった。また、図3の写真から、炭素と考えられるマトリックス中に、粒径5〜50nmの微粒子(Ni−Fe合金粒子)が分散していることが認められた。これらのことから、シェラー式により導かれた平均結晶子径と、透過電子顕微鏡像から認められた粒径とは矛盾するものではないということが判明した。
【0034】
尚、本発明材料A2、A3のX線回折プロファイルから半価幅を求め、この半価幅からシェラー式を用いて平均結晶子径を算出したところ、本発明材料A2、A3の平均結晶子径は、各々、22nm、20nmであることがわかった。このことから、酢酸塩など、他の水溶性の金属塩を用いても、本発明材料A1と同様な金属−炭素複合材料を作製できることがわかる。但し、このような塩を用いた場合には炭素源が不十分となる場合があるが、このようなときには、水にニッケル源や鉄源を溶解させる際に、炭素源としてのクエン酸や、水溶性のポリマー等を別途添加すれば良い。
【0035】
(実験2)
本発明材料A1の作製において、混合溶液を乾燥することにより得た緑色の粉末を、窒素雰囲気下で加熱することにより熱重量分析を行ったので、その結果を図4に示す。
図4から明らかなように、温度の上昇によって徐々に炭素化が進行し、重量が減少していくことが認められる。具体的には、定量減少は約600℃まで続き、600℃程度で緑色粉末に含まれる有機成分の熱分解、すなわち炭素の生成が完了することがわかる。
【0036】
(実験3)
本発明材料A3を、空気下での加熱することにより熱重量分析を行ったので、その結果を図5に示す。
図5から明らかなように、本発明材料A3は、まず重量が増加し、より高温になると重量が減少していることが認められる。前者の重量増加は、金属粒子の酸化に伴う重量増加であり、後者の重量減少は炭素の燃焼によるものである。そして、加熱前重量と加熱後の重量から金属含有量および炭素含有量を導くことができる。具体的には以下の通りである。
【0037】
ニッケルと鉄との酸化したときには、(1)式、(2)式に示すような反応となる。
Ni+1/2O→NiO・・・(1)
2Fe+3/2O→Fe・・・(2)
【0038】
ここで、Ni−Fe合金中のニッケルの割合は78.5重量%であり、鉄の割合は21.5重量%である。また、(1)式の酸化により27.3重量%増加し、(2)式の酸化により43.0重量%増加する。
したがって、金属が酸化することによる増加量は(3)式に示すように、30.7重量%となる。
(0.785×0.273)+(0.215×0.43)≒0.307・・・(3)
【0039】
一方、図5から明らかなように、炭素の燃焼後(約900℃)の本発明材料A3の増加量は6重量%である。したがって、下記(4)式のX(本発明材料A1における金属濃度)を算出すると、X≒0.81となり、当該金属濃度は約81重量%であることがわかる。
1.307X=1.06・・・(4)
なお、上記Xの値は、プロセス全体の重量変化から見積もられた収率より予想される値と同等であり、上記実施例1で述べた手法によって得られた試料が、従来になく高濃度に金属を含有する炭素と金属ナノ粒子との複合体であることが分かる。
【0040】
(実験4)
本発明材料A3を試料振動型磁力計により、室温(23℃)にて磁化・脱磁して、磁化曲線を取った。そのデータを図6及び図7に示す。
図6及び図7から明らかなように、2つの磁化曲線間の磁場(横軸方向)の差が20A/mより小さいことから、保磁力は20A/m以下に留まっていることを読み取ることができる。電磁波吸収用途においては、一般に、保磁力を低いレベルに留めるのを要求されることが多いため、本発明材料は電磁波吸収用途に好適に用いることができるものと推測される。
【0041】
(その他の事項)
上記実施例では、熱処理温度を900℃以下で行っているが、900℃を超える温度で熱処理を行うと結晶子径が増大することがある。したがって、結晶子径の増大を抑制するには、900℃以下で熱処理するのが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明の金属−炭素複合材料及びその製造方法は、触媒、磁性流体軸受、電磁波吸収体、磁気記録材料、磁気分離担体、微小接点などの分野で用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素と、金属及び/又は金属酸化物から成るナノ粒子とから構成される金属−炭素複合材料において、
上記炭素と上記ナノ粒子との総量に対するナノ粒子の割合が、50重量%以上99重量%以下であることを特徴とする金属−炭素複合材料。
【請求項2】
上記炭素内に上記ナノ粒子が分散されている、請求項1に記載の金属−炭素複合材料。
【請求項3】
上記ナノ粒子の平均粒径が1nm以上100nm未満である、請求項1又は2に記載の金属−炭素複合材料。
【請求項4】
上記ナノ粒子の粒径の標準偏差が、ナノ粒子の平均粒径の1/3以下である、請求項3に記載の金属−炭素複合材料。
【請求項5】
上記ナノ粒子が合金から成る、請求項1〜4の何れか1項に記載の金属−炭素複合材料。
【請求項6】
上記合金が、鉄、ニッケル、マンガン、コバルト、クロム、銅、バナジウム、モリブデン、ケイ素、アルミニウム、亜鉛、スズ、タングステン、金、銀、及び白金からなる群から選ばれた、少なくとも2種類の金属から構成される、請求項5に記載の金属−炭素複合材料。
【請求項7】
保磁力が20A/m以下である、請求項1〜6の何れか1項に記載の金属−炭素複合材料。
【請求項8】
金属源と炭素源とを、プロトン性溶媒中に溶解させる第1ステップと、
上記プロトン性溶媒を除去する第2ステップと、
還元雰囲気下又は不活性雰囲気下において焼成を行う第3ステップと、
を有することを特徴とする金属−炭素複合材料の製造方法。
【請求項9】
上記金属源には複数種類の異種金属が含まれている、請求項8に記載の金属−炭素複合材料の製造方法。
【請求項10】
金属源と炭素源として有機酸の金属塩を用いる、請求項8又は9に記載の金属−炭素複合材料の製造方法。
【請求項11】
上記炭素源として有機酸を用い、上記金属源として無機酸の金属塩を用いる、請求項8又は9に記載の金属−炭素複合材料の製造方法。
【請求項12】
上記第2ステップにおいて、金属塩の無機酸成分を除去する、請求項11に記載の金属−炭素複合材料の製造方法。
【請求項13】
上記有機酸は、蟻酸、酢酸、シュウ酸、クエン酸、乳酸、りんご酸、酒石酸、コハク酸、フマル酸からなる群から選ばれた少なくとも1つである、請求項11又は12に記載の金属−炭素複合材料の製造方法。
【請求項14】
上記無機酸は、硝酸、硫酸、塩酸、過塩素酸、りん酸、炭酸の群から選ばれた少なくとも1つである、請求項11〜13の何れか1項に記載の金属−炭素複合材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171826(P2012−171826A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34676(P2011−34676)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(000222842)東洋炭素株式会社 (198)
【Fターム(参考)】