説明

金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含む触媒システムを利用したポリウレタン製造方法、及びその製品

【課題】低温で非常に活性の高い鉄や銅などの金属アセチルアセトネート触媒を用いても、早期硬化をもたらすことがない、ポリウレタン製造方法、発泡体製造方法、及びそれらの製品を提供する。
【解決手段】優れた安定性及び良好な触媒活性を有する金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含んだ触媒システムにより、アセチルアセトンが、比較的低温にて触媒反応が高い金属アセチルアセトネートの触媒反応を遅延させる遅延機能を発揮し、ポリウレタンが加熱されてアセチルアセトンが放出された時、金属アセチルアセトネートがその上昇温度にて比較的に速い硬化作用を提供し、ポリウレタンが硬化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンの製造方法とその製品とに関する。さらに詳細には金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含んだ新規で改良された触媒システムを利用したポリウレタンの製造方法に関する。この製造方法は、特にポリウレタンフォームの製造に有効であり、特に、物理的起泡技術(frothing technique)を利用したポリウレタンフォームの製造に有効である。
【背景技術】
【0002】
本発明の製造方法は一般的にポリウレタンの製造に利用されるが、前述の如く特にポリウレタンフォームの製造に有効であり、さらに特定すれば、物理的起泡技術を使用して製造されるポリウレタンフォームに有用である。従って、説明を容易にする目的で、従来の起泡技術を利用して本発明を解説することにする。
【0003】
ポリウレタンフォームの製造に関する従来方法は、構造的及び化学的に非常に安定しており、周囲環境条件(ambient conditions)で加工性を有しているが(即ち、長距離輸送や一時的保管をして、その後に成形加工することが可能)、温度の上昇等による加熱によって望む時期にタックフリー状態(非粘性:tack-free condition)に急速硬化させるこ
とが可能な熱硬化性ポリウレタン成形発泡体(forming froth)の製造に関与する。
【0004】
好適には、この発泡体は、実質的に非水性液相(nonaqueous liquid phase)である安
定なポリウレタン成形成分を含む。即ち、ポリイソシアン酸塩(polyisocyanate)や活性水素化合物(active hydrogen compound)のごとき、最低でも約70℃(または急速硬化促進触媒の存在下では環境温度)においてのみ、(存在するならば、典型的には触媒存在下で)相互反応性を有する成分と、加熱等で硬化するまで発泡体の構造を安定させている有機ポリシロキサン界面活性剤とを含んでいる。この新規な発泡体内のガスまたはバブルは、空気等のいかなる不活性ガスであってもよく、小形バブルあるいはセル(cell)の形態で液相全体に均一に拡散されている。
【0005】
一般的に発泡体は、適当な発泡材料に攪拌下で物理的に空気を送り込むことで得られ、その後に(加熱下で、あるいは急速硬化促進触媒下では環境温度で)硬化され、均一なセル構造を備えた低密度のポリウレタンフォームが得られる。前記のポリウレタン組成物は、好適には、早期に重合が発生しないかぎり、触媒及び/又は架橋剤を含有することができる。好適には、環境温度で重合化させたり、発泡体の安定を阻害したりしないかぎり、例えば、着色剤、充填剤等の特殊効果用の他の添加剤も含有できる。
【0006】
適した触媒にはニッケルアセチルアセトネート(nickel acetylacetonate)がある。これは正式にはビス(2,4−ペンタンジオネート)ニッケル(II)(bis(2,4-pentanedionate)nickel(II)),(ジアセトニトリルジアセチルアセトナトニッケル(diacetonitrilediacetylacetonato nickel)として知られるものであり、さらに、ジアセトニトリルジアセチルアセトナトニッケル(diacetonitrilediacetylacetonato nickel)、ジベンソニトリルジアセチルアセトナトニッケル(dibensonitrilediacetylacetonato nickel)、ビス(トリ−フェニルホスフィン)−ジアセチルアセトナトニッケル(bis(tri-phenylphosphine)-diacetylacetonato nickel)等の誘導体も利用できる。さらに、ジブチルチンジアウレート(dibutyltin diaurate)のごときスズ系触媒も有利に利用が可能である。
【0007】
通常濃度の通常金属系触媒もまた利用可能である。その使用が望まれるなら、従来の金属系触媒は早期に硬化するのを避けるために通常よりも低濃度で使用される。そのような触媒には無機金属化合物と有機基を含む金属化合物との両方がある。特に有用な触媒は有機スズ化合物(organo-tin compounds)である。これらの触媒は単独でまたは複数で使用が可能である。有機スズ化合物には、ジブチルチンジラウレート(dibutyltin dilaurate)等のカルボキシル酸のアルキルスズ塩(alkyl tin salts of carboxylic acids)のご
とき第一スズアシレート(stannous acylates)が存在する。
【0008】
多種な触媒(前記の触媒等)がポリウレタンフォームの硬化に利用できるが、典型的にはニッケルアセチルアセトネート(NAA)が使用されてきた。
【0009】
このNAAは、(ポリウレタン成分が混合あるいは別手法で処理されているとき)低温において比較的に低い触媒活性を有しており、その触媒活性は全面的な硬化が望まれる上昇温度で大幅に増大するという理由によって、好適な触媒とされてきた。しかし、NAAはいくつかの重大な欠点と弱点とを有している。その1つは、NAAの特有な反環境的特性である。特に、コスト高と環境破壊とにつながるNAA触媒の廃棄処理問題は深刻である。
【0010】
他の有機金属系化合物、特に鉄、クロム、鉛を含む他の金属アセチルアセトネートは、ポリウレタンの製造に利用できる触媒として提案されてきた。特に鉄系アセチルアセトネート(FeAA)は、廃棄の際に環境への影響が少ないという理由で有望な触媒である。例えば、特許文献1及び特許文献2、並びに非特許文献1及び非特許文献2に記述されているように、FeAAは有望な触媒として提案されてきた。
【0011】
しかし、環境への影響は少ないが、このFeAAもまたその触媒反応において弱点を有している。特に発泡ウレタンでの触媒作用に弱点を有している。これらの弱点には、FeAAが低温で非常に活性が高いことが含まれている。この性質により、FeAA触媒はウレタン成分が適正に混合され、加工処理される以前にウレタン組成物を硬化させる。この早期硬化によってウレタン製品は物理的特性が低下する。
【特許文献1】米国特許第4,263,423号明細書
【特許文献2】米国特許第4,598,136号明細書
【非特許文献1】M.P.ガフロバ他の「鉄アセチルアセトネートによるイソシアン酸塩とヒドロキシブタジエンオリゴマー(hydroxbutadiene oligomers)間の反応の触媒メカニズム」(ポリマー科学USSR,第28巻8号,1945〜1951ページ,1986年)
【非特許文献2】デービッド・イームズ他の「水−トルエンジイソシアン酸塩反応(water-toluene diisocyanate reaction)の動力作用に対する触媒の影響」(コーティング技術ジャーナル,第57巻,722号,1985年3月)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、低温で非常に活性の高い鉄や銅などの金属アセチルアセトネート触媒を用いても、早期硬化(premature cure)をもたらすことがない、優れた安定性及び良好な触媒活性を有する金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含んだ触媒システムを利用したポリウレタン製造方法、及びその製品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、ポリウレタンの製造方法であって、
少なくとも1種の金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンの混合物で成り、前記金属アセチルアセトネートと前記アセチルアセトンとの重量比が2:1である触媒システムを含んだ反応ウレタン混合物を準備するステップと、
該反応ウレタン混合物及び該触媒システムを、前記アセチルアセトンが実質的に駆逐され、前記金属アセチルアセトネートが前記反応ウレタン混合物の硬化を促進する温度にまで加熱するステップと、
を含んでいることを特徴とするポリウレタン製造方法をその要旨とした。
【0014】
請求項2記載の発明は、反応ウレタン混合物が発泡体であることを特徴とするポリウレタン製造方法をその要旨とした。
【0015】
請求項3記載の発明は、反応ウレタン混合物が物理的に起泡された発泡体であることを特徴とするポリウレタン製造方法をその要旨とした。
【0016】
請求項4記載の発明は、前記金属アセチルアセトネートの金属は、アルミニウム、バリウム、カドミウム、カルシウム、セリウム(III)、クロム(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(II)、インジウム、鉄(III)、ランタン、鉛(II)、マンガン(II)、マンガン(III)、ネオジミウム、ニッケル(II)、パラジウム(II)、カリウム、サマリウム、ナトリウム、テルビウム、チタニウム、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択されたものであることを特徴とするポリウレタン製造方法をその要旨とした。
【0017】
請求項5記載の発明は、請求項1の方法で製造されたポリウレタンをその要旨とした。
【0018】
請求項6記載の発明は、請求項2の方法で製造されたポリウレタンをその要旨とした。
【0019】
請求項7記載の発明は、請求項3の方法で製造されたポリウレタンをその要旨とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含んだ触媒システムを利用しており、非常に優れた環境特性(例、廃棄の容易性)を提供する。さらに、この触媒システムは通常は低温で速い金属アセチルアセトネートのウレタン硬化作用を遅延させる。この遅延効果によって、早期硬化を招くことなく、混合と、延伸と、キャスティングと、成形のための充分な時間が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含んだ触媒システムを利用したポリウレタン製造方法、及びその製品について、さらに詳しく説明する。
【0022】
従来技術の前述の欠点及び他の欠点は、本発明のポリウレタン製造方法によって克服または軽減される。本発明によれば、ポリウレタン、特にポリウレタンフォームの製造に使用されるニッケルアセチルアセトネート(acetonate)触媒は、さらに環境に優しい有機金属系触媒、特に第二鉄、第一鉄、第二銅、亜鉛の群から選択される金属アセチルアセトネートで置換される。本発明の好適実施例では、その優れた安定性、良好な触媒活性、及びその無毒性とによって鉄系アセチルアセトネートが利用される。
【0023】
本発明の1つの重要な特徴によれば、金属アセチルアセトネートに加えて、この触媒システムはアセチルアセトンを含んでいる。アセチルアセトンは、通常においては比較的に低温(例、室温)で高い触媒活性を備えた金属アセチルアセトネートの触媒作用を遅延させる遅延機能を発揮する。比較的に低温での高い触媒活性は早期硬化を発生させる。アセチルアセトンの沸点は139℃である。触媒システムにアセチルアセトンを加えることで、アセチルアセトンは、ポリウレタンが加熱されて、アセチルアセトンが実質的に駆逐される上昇温度で、望ましい、比較的に急速な硬化が発生するまで金属アセチルアセトネートの触媒作用を遅延及び/又は減速させる。
【0024】
本発明の好適実施例は、鉄及び銅のごとき環境に優しい金属のアセチルアセトネートを利用するが、アセチルアセトンが触媒作用抑制剤として使用される本発明の新規な方法は、従来のニッケル及び他の環境に問題がある鉛等の金属のアセチルアセトネートが使用されるときにも非常に有効である。よって、触媒システムが金属アセチルアセトネートとアセチルアセトン(触媒作用抑制剤)との混合物で成り、アセチルアセトンが温度の上昇とともに駆逐され、製造過程の最終段階で最終的な完全硬化を提供する本発明の方法は、ニッケルを含むいかなる金属のアセチルアセトネートにも適用できる。
【0025】
金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとを含んだ本発明の触媒システムは多くの特徴と利点とを備えている。例えば、場合によっては、非常に優れた環境特性(例、廃棄の容易性)を提供する。さらに、この触媒システムは通常は低温で速い金属アセチルアセトネートのウレタン硬化作用を遅延させる。この遅延効果によって、早期硬化を招くことなく、混合と、延伸と、キャスティングと、成形のための充分な時間が提供される。
【0026】
本発明の前述及び他の特徴と利点とは、以下の説明と図面(グラフ)とでさらに理解されるであろう。
【0027】
本明細書を通じて、物理的に起泡されたウレタンフォーム(mechanically frothed urethane foam)及び物理的に起泡されたウレタン成形ウレタン混合物(mechanically frothed urethane forming mixture)を説明する。しかし、化学的に起泡されたウレタンフォーム(chemically frothed urethane foam)と非発泡ポリウレタン(non-foamed polyurethane)とも本発明の方法によって恩恵を受け、その利用が可能である。
【0028】
物理的に起泡されたいかなるポリウレタン成形混合物も本発明の方法の実施と製品の製造において使用が可能である。特に、米国特許第3,706,681号、第3,755,212号、第3,772,224号、第3,821,130号、第3,862,879号、第3,947,386号、第4,022,722号、第4,216,177号、第4,692,476号に開示された物理的に起泡されたポリウレタン成形混合物と成分(例、界面活性剤)には本発明の適用が特に適している。よって、これら特許の内容を本願に援用する。その他のいかなる物理的起泡ポリウレタン成形混合物にも本発明の適用が可能である。
【0029】
米国特許第4,216,177号に詳細に解説されているごとく、物理的に起泡されたポリウレタン成形混合物(以降、一般的に発泡混合物またはウレタン成形混合物と呼称)は、空気のごとき不活性ガスを、SKGミキサー(SKG mixer)、ホーバートミキサー(Hobart mixer)、またはオークスミキサー(Oakes mixer)等の標準的な混合装置で物理的に混合物内に攪拌混入することで提供される。混合物はこのように物理的に起泡されてフロスが形成される。このフロスは実質的に化学的に安定しており、構造的にも安定しているが、15℃から30℃の温度領域である環境温度で加工が容易である。このフロスの形状安定度はエアゾールタイプの髭剃りクリームに近似している。
【0030】
この発泡混合物はホース等で移動式リリース支持体(release support)上に量制御されながら提供される。このリリース支持体は通常はリリース紙であり、平坦面または加工面を有している。リリース紙は供給ロールから引き出され、ウレタン製造システムの多様な工程を通過し、一般的には最後にロールに巻き取られる。紙材以外にも、このリリース支持体にはステンレススチール等の金属シート材や複合シート材が利用できる。その表面をリリースコーティングしたり、泡体の表面に移動接着するウレタンフィルム等でコーティング処理することもできる。望むなら、リリース支持体材料は、泡体と別れて巻き取られるかわりに、最終ウレタン製品に積層されてその一部となる繊維または他の材料による基材であってもよい。あるいは、リリース支持体はコンベアベルトであっても構わない。
【0031】
リリース紙が泡材料と一緒に移動する最中に、泡体はドクター(doctor)または他の適当な器具で望む厚みに広げられる。単純ナイフ式テーブルドクターブレード(simple knife over table doctoring blade)や、ローラコーターまたは3体あるいは4体のロール反転式コーター(roll reversible coater)上のナイフのごとき他の複雑な器具でも利用が可能である。ドクターブレードは泡材料を望む厚みに広げる。典型的にはこの厚みは0.01から0.50インチ(2.54-12.7mm)の範囲である。
【0032】
リリース支持体と一定厚の泡層との組合体は、上下に離れた加熱板からなる加熱ゾーンに送られる。一般的にこれら加熱板は平行に配されており、全長にわたって等間隔である。または、加熱ゾーンの入口から出口まで多少傾斜していてもよい。加熱板は電熱要素で加熱される。それらを独立式に制御することで段階的加熱を施すこともできる。加熱板は単純な1枚の板体でも、複合板体であってもよく、各々が別々の電熱要素を有して加熱ゾーン内で異なる温度を提供するものであってもよい。
【0033】
リリース紙と泡体層とが加熱ゾーンの上下加熱板間を通過するとき、リリース紙と直に接触する下側の加熱板から泡体層に直接的な熱伝導が起きる。上側の加熱板は、発泡材料層の上側と接触しないかぎり接近して配置することができ、泡体シート層に対して大量の輻射熱と対流熱とを提供する。この加熱ステップの最中に、発泡材料は重合化促進によって従来式に硬化し、硬化ポリウレタンフォームが製造される。加熱板の温度は、発泡材料の組成に応じて華氏約200度から約450度に維持される。これらの加熱板は望む硬化手法の特性に応じて等温あるいは非等温に維持することが可能である。例えば、フォーム上にスキン体を一体成形させるため、または、フォームに比較的に厚い層を積層するために段階的温度を提供することができる。
【0034】
リリース紙と泡体層との組合体は加熱処理後に冷却ゾーンに送られ、冷却ファン等の適当な冷却装置で冷却される。製造プロセスの最終ステップではリリース紙と泡体層とは引き剥され、リリース紙は巻き上げられる。このリリース紙の引き剥しステップで最終製品である硬化ポリウレタンフォームが得られる。この最終製品はロールに巻き取られ、保管され、または望む加工が施される。この製造プロセスで製造されたポリウレタンフォーム製品は、均等厚のフォームシートである。硬化プロセス中にフォーム材に化学反応性膨張が起きないため、このシート厚はドクター処理によって容易に制御できる。硬化処理中の唯一の膨張要因は発泡混合物内の空気泡の熱膨張であり、その全膨張量は前もって計算することができる。従って、最終ウレタン製品の厚みは厳密に制御することが可能である。硬化プロセス中の熱伝導と熱輻射とは発泡シート(0.50インチ厚(1.27cm)までのシート)に比較的に均等に熱を配分するので、最終製品の密度も比較的に均等である。
【0035】
このウレタン混合物は、ポリオール(polyol)とイソシアン酸塩単量体(isocyanate monomers)、界面活性剤、及び他の成分を多様な組合せで含んでいる。その詳細は前記の特許に記述されている。好適には、そのイソシアン酸塩は、4,4’ジフェニルメタンジイソシアン酸塩(4,4'diphenylmethane diisocyanate:MDI)、MDI付加体(adduct)、及びその混合体である。
【0036】
【化1】

【0037】
好適なイソシアン酸塩は、MDIと、ダウ社のイソネート1431として商業的に販売されているMDI付加物との混合物である。このイソシアン酸塩は熱によって分解し、反応工程の後半(高温硬化ゾーン)で追加イソシアン酸塩を遊離させる。
【0038】
本発明の1つの重要な特徴は、以下記載の金属アセチルアセトネートを含む触媒システムである。
【0039】
【化2】

【0040】
式中、Mは、アルミニウム、バリウム、カドミウム、カルシウム、セリウム(III)、クロム(chromium)(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(II)、インジウム、鉄(III)、ランタン、鉛(II)、マンガン(II)、マンガン(III)、ネオジミウム、ニッケル(II)、パラジウム(II)、カリウム、サマリウム、ナトリウム、テルビウム、チタニウム、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムである。金属アセチルアセトネートは、ジプロピレングリコールまたは他の水酸基含有化合物のごとき適当な溶剤で予備溶解して加えるのが便利である。これは最終製品の一部となる。
【0041】
金属アセチルアセトネートには次式で示すアセチルアセトン(2,4−ペンタンジオン(2,4-pentanedione))が加えられる。
【0042】
【化3】

【0043】
金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの重量比は21である。アセチルアセトンはウレタン材料の適正な混合と成形とを達成するのに必要な低温での反応性を有したアセチルアセトネートの反応を遅延または妨害するのに使用できることが発見されている。換言すれば、アセチルアセトンは熱の発生を遅らせ、必要な混合と、成形と、他の処理工程とのための時間的余裕を提供し、低温処理中に不都合な早期硬化の発生を防止する。ウレタン材料がいくつもの加熱ゾーンでの加熱とウレタン混合物の熱上昇とによって硬化するときに、アセチルアセトンは駆逐される。アセチルアセトンが駆逐され、その遅延機能が消滅すると、金属アセチルアセトネートはその通常の反応性を発揮し、ポリウレタン反応の最終段階で非常に高レベルの触媒作用を提供する。製造最終段階でのこの高い反応性は有利に作用し、コンプレッションセット(compression set)のごとき改良された物理的特性をウレタン製品に提供する。
【0044】
遅延された硬化作用は、前記MDI付加物を使用するときに特に有利に作用する。なぜなら、追加イソシアン酸塩は付加物の分解によって反応の後半で発生するからである。例えば、鉄アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの触媒システムを使用したウレタン触媒作用のメカニズムは、以下の通りである。
【0045】
【化4】

【0046】
本発明の触媒システムの前述内容、即ち、ポリウレタンの製造工程に使用するための、少なくとも1種の金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの組合せの特性は、図1〜3において明瞭に示されている。図1は、多様な金属アセチルアセトネートをアセチルアセトンを追加せずに使用した場合の、反応ウレタン混合物に対する時間と温度上昇との関係を表すグラフである。図1は金属アセチルアセトネートの時間に対する高触媒活性を表している。この高活性は、第二鉄及び第二銅アセチルアセトネートにおいて特に顕著である。事実、その触媒活性はこれら2種の材料において非常に高く、第二鉄、第二銅アセチルアセトネートのいずれも、早期硬化とその他の問題で発泡ポリウレタンフォームの製造には利用できないとされてきた。
【0047】
図2には、第一鉄アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの組合わせの場合が示されている。低温での時間に関する触媒作用は大幅に減速されている。
【0048】
図3は第二銅アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの組合せによる触媒システムの同様な結果を示している。即ち、図3はアセチルアセトンが第一銅アセチルアセトネートの活性をも遅延させていることを示している。
【実施例】
【0049】
イソシアン酸塩と触媒溶液以外の全未処理材料(raw material)(調剤A)は混合され、攪拌しながら乾燥窒素下で保存タンクに収容された。この混合物は量調整をしながらオークスタイプ(Oakes type)の高シア混合ヘッド(high shearmixing head)にポンプで送られた。イソシアン酸塩と触媒との混合物も量調整をしながら混合ヘッドへと送られた。この際、その流量比はポリオール混合物の流量と対応するものであった。多様な材料の流量の測定と調整には流量計(flowmeter)が使用された。乾燥空気も混合ヘッドへ導入された。約20ポンド/平方フィートの密度の硬化材料が製造されるように空気量はマセソン(Matheson)ガス流量コントローラで調節された。高シア混合器内での混合と起泡とが完了した後、発泡材料は軟性ホースと剛性ノズルとを介して搬送された。直前に華氏275度から300度の高温空気流を通過させて乾燥されたコーティングリリース紙にその泡体はキャストされた。このリリース紙の乾燥処理によって、水による反応が排除された。リリース紙は13インチ(33cm)幅であり、制御速度(この場合は7フィート(18cm)/分)で機械送りされた。リリース紙とキャストされた泡体とはロールナイフ(KOR)コーターの下を通過した。KORは泡体を広げ、最終製品を約135ミル(3.4mm)の厚さに制御した。フォーム製品のキャスト幅は約8インチ(20cm)であった。コーティングされたリリース紙はそれぞれ、90(229cm)、24(61cm)、24、24、36(91cm)、36インチの長さを有した下側加熱板を含む熱硬化セクションを通過した。これらの加熱板は一連のサーモカップル、コントローラ、加熱要素によって、それぞれ華氏200、200、200、325、350、375度に保持された。非加熱板(RT)と加熱板とからなる一連の上側加熱板は、下側加熱板とはそれぞれ約6インチ(15.2cm)と1インチ(2.5cm)離れており、それぞれRT、RT、RT、華氏450、450、450度に制御さ
れた。硬化した製品は空気冷却セクションに一連の駆動ローラで送られ、ロールに巻き取られた。
【0050】
使用されたウレタンの調剤と、触媒及びアセチルアセトンレベルの詳細は次の通りである。
【表1】

【0051】
【表2】

【0052】
1 ポリエーテルポリオール内の溶液として「FeAA&AA」が混合ヘッドに追加注入。FeAAは0.25重量%;AAは多様濃度.2 %CSは22時間、70℃で50%圧縮後のオリジナル厚に対する%。AC%CSは華氏250度で5時間のサンプル蒸気オートクレーブ後の同様測定。
【0053】
尚、本発明の好適実施例は鉄や銅のごとき環境に優しい金属のアセチルアセトネートを使用するが、アセチルアセトンが触媒作用抑制剤として使用されるこの新規な方法は、ニッケルや他の鉛のごとき環境には不都合な金属に対しても同様に非常に有効である。従って、触媒システムが金属アセチルアセトネートとアセチルアセトン(触媒作用抑制剤)との組合せでなり、アセチルアセトンは温度の上昇に連れて駆逐され、製造工程の最終段階で硬化作用を発揮させる本発明の製造方法は、ニッケル等いかなる金属アセチルアセトネートにおいても利用が可能である。
【0054】
ニッケルアセチルアセトネートの場合には、その水和形態(hydrated form)は、水分が駆逐されるまで触媒作用を遅延させ、その後に完全硬化作用を起こさせることが確認されている。この場合、その水は触媒抑制体として作用する。この現象のため、早期硬化を引き起こす無水ニッケルアセチルアセトネートは有用な触媒ではない。しかし、本発明によれば、乾燥または無水形態のニッケルアセチルアセトネートはアセチルアセトンが触媒作用抑制剤として使用されるときには有効な利用が可能である。このことは図4で証明されている。図4には、(1)無水NAAの増大触媒活性と、(2)アセチルアセトンの追加による無水NAAの抑制された触媒活性とが示されている。
【0055】
前述のように、水はNAA触媒の抑制体として作用するので、アセチルアセトンは含水形態のNAAに対しては抑制作用を発揮しない。しかし、図5に示すように、水和環境(hydrated environment)において、鉄アセチルアセトネートはこの触媒抑制現象を示さない。即ち、鉄アセチルアセトネートはNAAのように水和形態を示さない。そのかわり、水分が存在してもしなくても、鉄アセチルアセトネートの触媒作用の抑制にはアセチルアセトンが必要である。このことは銅アセチルアセトネートにおいても同じである。よって、一般的に、本発明の方法は、ニッケルアセチルアセトネートのごとき水和形態を示す金属アセチルアセトネートにおける金属アセチルアセトネートの無水形態に対してのみ有効である。
【0056】
図4と図5の例において、分子シーブ(molecular sieve)が加えられて乾燥触媒システムが提供されることが理解されよう。
【0057】
以上、好適実施例を利用して本発明を解説してきたが、本発明の精神と範囲とから逸脱せずにこれらに改良と変更を加えることは可能であろう。よって、以上の説明は本発明の解説のみを目的とし、本発明の限定は一切意図されていないことは理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】数種の異なる金属アセチルアセトネート触媒を使用した場合の反応ウレタン混合物に対する温度と時間との関係を示すグラフ。
【図2】第二鉄アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの触媒システムを含む場合の第二鉄アセチルアセトネート触媒での反応ウレタン混合物に対する温度と時間との関係を示すグラフ。
【図3】銅アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの触媒システムを含む場合の銅アセチルアセトネート触媒での反応ウレタン混合物に対する温度と時間との関係を示すグラフ。
【図4】水和及び無水形態(hydrated and anhydrous form)のニッケルアセチルアセトネートでの反応ウレタン混合物に対する温度と時間との関係を示すグラフ。
【図5】水性及び無水性環境(aqueous and non-aqueous environment)における第二鉄アセチルアセトネートとアセチルアセトンとの触媒システムによる反応ウレタン混合物に対する温度と時間との関係を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンの製造方法であって、
少なくとも1種の金属アセチルアセトネートとアセチルアセトンの混合物で成り、前記金属アセチルアセトネートと前記アセチルアセトンとの重量比が2:1である触媒システムを含んだ反応ウレタン混合物を準備するステップと、
該反応ウレタン混合物及び該触媒システムを、前記アセチルアセトンが実質的に駆逐され、前記金属アセチルアセトネートが前記反応ウレタン混合物の硬化を促進する温度にまで加熱するステップと、
を含んでいることを特徴とするポリウレタン製造方法。
【請求項2】
前記反応ウレタン混合物は発泡体であることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン製造方法。
【請求項3】
前記反応ウレタン混合物は物理的に起泡された発泡体であることを特徴とする請求項2記載のポリウレタン製造方法。
【請求項4】
前記金属アセチルアセトネートの金属は、アルミニウム、バリウム、カドミウム、カルシウム、セリウム(III)、クロム(III)、コバルト(II)、コバルト(III)、銅(II)、インジウム、鉄(III)、ランタン、鉛(II)、マンガン(II)、マンガン(III)、ネオジミウム、ニッケル(II)、パラジウム(II)、カリウム、サマリウム、ナトリウム、テルビウム、チタニウム、バナジウム、イットリウム、亜鉛、及びジルコニウムからなる群から選択されたものであることを特徴とする請求項1記載のポリウレタン製造方法。
【請求項5】
請求項1の方法で製造されたポリウレタン。
【請求項6】
請求項2の方法で製造されたポリウレタン。
【請求項7】
請求項3の方法で製造されたポリウレタン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−285681(P2008−285681A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180013(P2008−180013)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【分割の表示】特願平8−164147の分割
【原出願日】平成8年6月25日(1996.6.25)
【出願人】(599006672)ワールド プロパティーズ インク. (4)
【Fターム(参考)】