説明

金属ガスケット

【課題】パイプの亀裂を防止できる金属ガスケットを提供すること。
【解決手段】本金属ガスケット10は、パイプ12の端部に一体とされたフランジ14をボルトで相手部材16に固定する際に使用され、中央部に流路孔30を有するとともに、流路孔30の外周縁に流路孔30と同心の環状のシール用ハーフビード36が相手部材16に向かって膨出されたものであって、シール用ハーフビード36の外側領域で且つボルトの非締結領域に、フランジ反らし用フルビード42,44が相手部材16に向かって膨出されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプの端部に一体とされたフランジを複数のボルトで相手部材に固定する際に使用される金属ガスケットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、金属板を備えた平板状のガスケット本体を有し、このガスケット本体の平面上に、流体を流通させる流路孔および組付ボルトを差し通す取付孔を設けるとともに、流路孔の周りにシール用ビードを設けた配管ガスケットが知られている。
【0003】
かかる配管ガスケットにおいては、金属板の表面には、ゴム層が被着されており、このような素材がプレス加工されることによって、その平面上に流路孔、取付孔およびシール用ビードが設けられている。
【0004】
このような配管ガスケットは、ボルト軸力の割にガスケット接触面積が狭く、配管フランジ同士の締結面圧が高く、また使用温度が高くなると、相手フランジ面に粘着し易いものであり、粘着が発生すると、メンテナンスに際して配管を分解するのが困難になるという不都合がある。
【0005】
また、分解後においても相手フランジ面にガスケットの一部が付着していることがあり、このようなことがあると、フランジを再使用するに際して、この付着物を除去する工程を実施しなければならないという不都合もある。
【0006】
そこで、特許文献1では、ガスケットが高締結面圧下で使用されても配管フランジなどの相手取付面に粘着するのを抑えることができ、もってそのメンテナンス性や取扱い性を向上させることができる、ガスケットが提案されている。
【0007】
この特許文献1に記載の技術では、流体を流通させる流路孔および組付ボルトを差し通す取付孔を設けるとともに、流路孔の周りにシール用ビードを設けたガスケットにおいて、高面圧部位である取付孔の周りに粘着防止用ビードを設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−120813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、エンジンのウォータパイプおよびEGR(Exhaust Gas Recirculation)パイプなどの外回りパイプの端部に一体に設けられたフランジをボルトによって相手部材に締結する構造においては、図4に示すように、振動および熱応力などでパイプ100が微小な傾斜力を受け、パイプ100のフランジ102との接合部付近に繰り返し引っ張り応力Xを受け、当該フランジ102との接合部付近を起点として亀裂Cが入り、パイプ100が破断に至る可能性がある。
【0010】
本発明は、上記のような背景に鑑みなされたもので、パイプの亀裂を防止できる金属ガスケットの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明者は、金属ガスケットにフランジ反らし用フルビードを設け、引っ張り応力を繰り返し受けるパイプのフランジとの接合付近へ静的圧縮応力を付与する(換言すると、引っ張り応力を繰り返し受けるパイプのフランジとの接合付近を予圧縮する)ことによって、パイプの亀裂を防止するようにすればよいのではないかと着想した。
【0012】
かかる着想に基づく具体的な発明は、以下の通りである。
【0013】
本発明にかかる金属ガスケットは、パイプの端部に一体とされたフランジを複数のボルトで相手部材に固定する際に使用され、中央部に流路孔が形成されるとともに、流路孔の外周縁に当該流路孔と同心の環状のシール用ハーフビードがパイプまたは相手部材に向かって膨出された金属ブラケットであって、前記ハーフビードの外側領域で且つ前記ボルトの非締結領域に、フランジ反らし用フルビードが当該ハーフビードと同方向に向かって膨出されている。
【0014】
上記構成において、金属ブラケットは、パイプのフランジを複数のボルトで相手部材に固定することによって、パイプと相手部材とのつなぎ部に介装される。このとき、シール用ハーフビードの外側領域で且つボルトの非締結領域には、フランジ反らし用フルビードが当該ハーフビードと同方向に向かって膨出しているので、引っ張り応力を繰り返し受けるパイプのフランジとの接合付近は、フルビードからの静的圧縮応力が付与される。これにより、フランジには、ボルト締結時にパイプの外周縁に生ずる圧縮応力に加えて、フルビードからの静的圧縮応力が加わることになる。そのため、パイプの亀裂起点方向に圧縮応力が付与される。その結果、振動および熱応力などでパイプが微小な傾斜力を受け、パイプのフランジとの接合部付近に繰り返し引っ張り応力を受けても、これがキャンセルされパイプに亀裂が生じないで済む。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、パイプの亀裂を防止できる金属ガスケットの提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施の形態にかかる金属ガスケットをパイプのつなぎ部に介装した状態を示す斜視図である。
【図2】図1のA―A線に沿う断面図である。
【図3】金属ガスケットの構成を示す図であって、(A)は平面図、(B)は(A)のB―B線に沿う拡大断面図である。
【図4】従来技術においてパイプに亀裂が生じるメカニズムを図解的に説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は本発明の実施の形態にかかる金属ガスケット10をパイプのつなぎ部に介装した状態を示す斜視図、図2は図1のA―A線に沿う断面図である。
【0019】
図1および図2を参照して、本実施の形態にかかる金属ガスケット10は、第1のパイプ12の一端部に一体とされたフランジ14と、第1のパイプ12の相手部材となる第2のパイプ16の他端部に一体とされたフランジ18とに挟まれた状態で2本のボルト20,22によって第1および第2のパイプ12,16の両者間のつなぎ部に固定される。なお、第1のパイプ12は、エンジンのウォータパイプおよびEGRパイプなどの外回りパイプである。また、フランジ14,18は、ろう付けおよび溶接などによりパイプ12,16に固定されている。
【0020】
図3は金属ガスケット10の構成を示す図であって、同図(A)は平面図、同図(B)は同図(A)のB―B線に沿う拡大断面図である。
【0021】
図3を参照して、金属ガスケット10は、中央部に流路孔30が形成されるとともに、左右両端部にボルト20,22を相通するためのボルト挿通孔32,34が形成されている。
【0022】
流路孔30の外周縁には、シール用ハーフビード36が設けられている。このシール用ハーフビード36の平面形状は、流路孔30と同心の環状形状をなしている。そして、シール用ハーフビード36は、図2に示すように、第2のパイプ16に向かって膨出している。
【0023】
再び図3を参照して、上記シール用ハーフビード36の外側領域で且つボルト20,22の非締結領域38,40には、第1のパイプ12のフランジ14を反らすためのフルビード(以下、単に「フランジ反らし用フルビード」という。)42,44が流路孔30およびシール用ハーフビード36を挟んで対向して設けられている。換言すると、フランジ反らし用フルビード42,44は、上記ボルト挿通孔32,34の中心同士を結んだ線分Lを挟んだシール用ハーフビード36の外側領域において対向配置されている。これらフランジ反らし用フルビード42,44の平面形状は、流路孔30と同心の円弧形状をなしている。そして、フランジ反らし用フルビード42,44は、図2に示すように、シール用ハーフビード36と同様、第2のパイプ16に向かって膨出している。
【0024】
上記構成において、金属ガスケット10は、第1のパイプ12のフランジ14と、第2のパイプ16のフランジ18とに挟まれた状態でボルト20,22によって第1および第2のパイプ12,16の両者間のつなぎ部に固定される。
【0025】
このとき、シール用ハーフビード36の外側領域で且つボルト20,22の非締結領域38,40には、フランジ反らし用フルビード42,44が第2のパイプ16に向かって膨出しているので、引っ張り応力を繰り返し受ける第1のパイプ12のフランジ14との接合付近は、フランジ反らし用フルビード42,44からの静的圧縮応力が付与される。これにより、第1のパイプ12のフランジ14には、ボルト20,22の締結時に第1のパイプ12の外周縁に生ずる圧縮応力に加えて、フランジ反らし用フルビード42,44らの静的圧縮応力が加わることになる。そのため、第1のパイプ12の亀裂起点方向50(図1参照)に圧縮応力が付与される。その結果、振動および熱応力などで第1のパイプ12が微小な傾斜力を受け、第1のパイプ12のフランジ14との接合部付近に繰り返し引っ張り応力を受けても、これがキャンセルされ第1のパイプ12に亀裂が生じない。
【0026】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
【0027】
上記実施の形態においては、シール用ハーフビードおよびフランジ反らし用フルビードを第2のパイプに向かって膨出させた例について記載した。しかし、本発明はそのような構成には限定されない。シール用ハーフビードおよびフランジ反らし用フルビードを第1のパイプに向かって膨出させても、本発明の目的は十分に達成される。
【0028】
また、上記実施の形態においては、第2のパイプを第1のパイプの相手部材とした例について記載したが、第1のパイプの相手部材はフランジ付きのパイプに限定されない。
【0029】
その他、本明細書に添付の特許請求の範囲内での種々の設計変更および修正を加えうることは勿論である。
【符号の説明】
【0030】
10 金属ガスケット
12 第1のパイプ
14 フランジ
16 第2のパイプ
18 フランジ
20,22 ボルト
30 流路孔
36 シール用ハーフビード
38,40 ボルト非締結領域
42,44 フランジ反らし用フルビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの端部に一体とされたフランジを複数のボルトで相手部材に固定する際に使用され、中央部に流路孔が形成されるとともに、流路孔の外周縁に当該流路孔と同心の環状のシール用ハーフビードがパイプまたは相手部材に向かって膨出された金属ブラケットであって、
前記ハーフビードの外側領域で且つ前記ボルトの非締結領域に、フランジ反らし用フルビードが当該ハーフビードと同方向に向かって膨出されていることを特徴とする金属ガスケット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−169184(P2010−169184A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−12029(P2009−12029)
【出願日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】