説明

金属コート材、および発光装置

【課題】硫黄バリア性および透明性に優れる金属コート材、金属コート材を用いた金属の保護方法、および高輝度化や長寿命化が可能な発光装置を提供する。
【解決手段】下記式(1)RSi(OR4−n(1)(式中、Rは、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、2個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜2の整数である。)で表される少なくとも1種のオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を含有するシリル基を有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(A)と金属酸化物(B)を含有する金属コート材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属コート材、および発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属は、導電性を有することや、光沢を有すること等により、日用品から電子部品に至るまで様々な物品に用いられている。例えばLEDでは電極として銀メッキが使用されており、その反射率の高さから反射板としての機能も果たしているため、LEDの高輝度化や長寿命化に対する銀メッキの役割は大きい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、金属は空気中に微量含まれる硫黄や塩素の存在で変色・黒色化し光沢が失われ反射率が低下する。LEDにおいても銀メッキ黒色化抑制の課題が有り、例えば金属電極の表面に保護膜を設けた発光ダイオードが知られている(特許文献1)。一方、LED封止材としてエポキシ樹脂系封止材が知られているが、この材料は硫黄バリア性に優れるものの硫黄存在下で高温に曝されるとエポキシ樹脂自体が変色する問題があった。また、シリコーン系封止材は耐久性に優れ変色がほとんど見られないが、ガス透過性が高いことが指摘されている(例えば、特許文献2)。そのため硫黄存在下で銀メッキが黒色化する問題が有った。
【0004】
本発明は、硫黄バリア性および透明性に優れる金属コート材、金属コート材を用いた金属の保護方法、および高輝度化や長寿命化が可能な発光装置を提供することを目的としている。
【特許文献1】特開2007−109915号公報
【特許文献2】特開2004−2783号公報
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、シラン化合物とシリル基含有重合体とから得られる重合体と金属酸化物とを含有するコート材が硫黄雰囲気下でも着色せず硫黄バリア性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明に係る金属コート材は下記式(1)
1nSi(OR4−n (1)
(式中、R1は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、2個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜2の整数である。)
で表される少なくとも1種のオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を含有するシリル基を有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(以下「有機無機ハイブリッドポリマー」ともいう。)(A)と金属酸化物(B)とを含有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る金属コート材は前記シラン化合物(a1)と重合体(a2)とを、シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の含有量(Wa1)と重合体(a2)の固形分換算の含有量(Wa2)との重量比(Wa1/Wa2)が、5/95〜95/5の範囲〔ただし、Wa1+Wa2=100とする。〕で加水分解・縮合させる有機無機ハイブリッドポリマー(A)であることが好ましい。
【0008】
本発明に係る金属コート材は、前記重合体(a2)において、加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を含有するシリル基の含有量が、ケイ素原子含有量に換算して、0.1〜2重量%である有機無機ハイブリッドポリマー(A)であることが好ましい。
【0009】
この金属コート材は、銀に対して好ましく用いることができる。また、銀電極に対して好ましく用いることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によると、硫黄雰囲気下に暴露されても材料自身が着色せず、また硫黄バリア性に優れる金属コート材が得られる。また、上記金属コート材をLED内部の銀メッキ表面にコーティングすることによって、硫黄雰囲気下に暴露された場合の銀メッキの変色を抑制することができ、LEDの長寿命化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
〔有機無機ハイブリッドポリマー(A)〕
本発明の有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、特定のシラン化合物(a1)と特定のシリル基を含有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させることにより調製される。より具体的には、上記シラン化合物(a1)とシリル基を含有する重合体(a2)とを含有する混合物に、加水分解・縮合反応を促進する触媒と水とを添加して調製される。
【0012】
(シラン化合物(a1))
本発明に用いられるシラン化合物(a1)は、下記式(1)
1nSi(OR24-n (1)
(式中、R1は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、2個存在する場合には互いに同じ
であっても異なっていてもよい。R2は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基ま
たは炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜2の整数である。)
で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(1)」ともいう)、オルガノシラ
ン(1)の加水分解物およびオルガノシラン(1)の縮合物からなる群から選択される少
なくとも1種のシラン化合物であって、これら3種のシラン化合物のうち、1種のシラン
化合物だけを用いてもよく、任意の2種のシラン化合物を混合して用いてもよく、または
3種すべてのシラン化合物を混合して用いてもよい。また、シラン化合物(b1)として
、オルガノシラン(1)を使用する場合、オルガノシラン(1)は1種単独で使用しても
、2種以上を併用してもよい。また、上記オルガノシラン(1)の加水分解物および縮合
物は、1種のオルガノシラン(1)から形成したものでもよいし、2種以上のオルガノシ
ラン(1)を併用して形成したものでもよい。
【0013】
上記オルガノシラン(1)の加水分解物は、オルガノシラン(1)に2〜4個含まれる
OR2基のうちの少なくとも1個が加水分解されていればよく、たとえば、1個のOR2
が加水分解されたもの、2個以上のOR2基が加水分解されたもの、あるいはこれらの混
合物であってもよい。
【0014】
上記オルガノシラン(1)の縮合物は、オルガノシラン(1)が加水分解して生成する
加水分解物中のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合を形成したものである。本発
明では、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、前記縮合物は、僅かな一部のシ
ラノール基が縮合したもの、大部分(全部を含む)のシラノール基が縮合したもの、さら
にはこれらの混合物などをも包含する。
【0015】
上記式(1)において、R1は炭素数1〜8個の1価の有機基であり、具体的には、メ
チル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s
ec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2
−エチルヘキシル基などのアルキル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基
、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(
メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアネ
ート基などが挙げられる。
【0016】
さらに、R1として、上記有機基の置換誘導体などが挙げられる。R1の置換誘導体の置
換基としては、たとえば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メル
カプト基、イソシアネート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(
メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。ただし、こ
れらの置換誘導体からなるR1の炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8個以下が好ま
しい。式(1)中にR1が複数個存在する場合には、それぞれ同じであっても異なってい
てもよい。
【0017】
炭素数が1〜5個のアルキル基であるRとして、たとえば、メチル基、エチル基、n
−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−
ペンチル基などを挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基であるRとしては、たと
えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などが挙げ
られる。式(1)中にRが複数個存在する場合には、それぞれ同じであっても異なって
いてもよい。
【0018】
このようなオルガノシラン(1)として、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラ
エトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テト
ラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類(式(1)においてn=0);
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エ
チルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシ
シラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチ
ルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラ
ン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチル
トリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘ
キシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシ
シラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ク
ロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラ
ン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメ
トキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメト
キシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメ
トキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルト
リメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピ
ルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナー
トプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラ
ン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4
−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプ
ロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン
、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン
などのトリアルコキシシラン類(式(1)においてn=1);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジ
エチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエト
キシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、
ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチル
ジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシ
ラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n
−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジ
エトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジ
エトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジア
ルコキシシラン類(式(1)においてn=2);
メチルトリアセチルオキシシラン(式(1)においてn=1)、ジメチルジアセチルオキ
シシラン(式(1)においてn=2)などが挙げられる。
【0019】
これらのうち、式(1)においてn=1である3官能のシラン化合物が主として用いら
れる。この3官能のシラン化合物は、本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマーの安定性の面から、式(1)においてn=2である2官能のシラン化合物と併用することが好ましい。3官能シラン化合物としては、特にトリアルコキシシラン類が好ましく、2官能シラン化合物としてはジアルコキシシラン類が好ましい。
【0020】
3官能シラン化合物と2官能シラン化合物とを併用する場合、それぞれの完全加水分解
縮合物換算の重量比で、3官能シラン化合物/2官能シラン化合物が、好ましくは95/
5〜10/90、さらに好ましくは90/10〜30/70、特に好ましくは85/15
〜40/60である。ただし、3官能シラン化合物と2官能シラン化合物との合計(完全
加水分解縮合物換算)を100とする。3官能シラン化合物の含有量が多すぎると有機無
機ハイブリッドポリマーの貯蔵安定性が劣ることがあり、3官能シラン化合物の含有量が少なすぎると硬化体の硬化性や硫黄バリア性が劣ることがある。なお、本明細書において、完全加水分解縮合物とは、シラン化合物の−OR基が100%加水分解してSiOH基となり、さらに完全に縮合してシロキサン構造になったものをいう。
【0021】
本発明では、シラン化合物(a1)として1種のオルガノシラン(1)を単独で使用し
てもよいが、2種以上のオルガノシラン(1)を併用してもよい。シラン化合物(a1)
として使用した2種以上のオルガノシラン(1)を、平均化して上記式(1)で表した場
合、平均化したn(以下、「nの平均値」ともいう)は好ましくは0.5〜1.9、より
好ましくは0.6〜1.7、特に好ましくは0.7〜1.5である。nの平均値が上記下
限未満にあると有機無機ハイブリッドポリマーの貯蔵安定性が劣ることがあり、上記上限を超えると硬化体(塗膜)の硬化性や硫黄バリア性が劣ることがある。
【0022】
nの平均値は、2官能〜4官能のシラン化合物を適宜併用して、その配合割合を適宜調
整することにより、上記範囲に調整することができる。
なお、これは、シラン化合物(a1)として加水分解物または縮合物を使用した場合も
同様である。
【0023】
本発明では、シラン化合物(a1)として、オルガノシラン(1)をそのまま使用して
もよいが、オルガノシラン(1)の加水分解物および/または縮合物を使用することがで
きる。オルガノシラン(1)を加水分解物および/または縮合物として使用する場合、オ
ルガノシラン(1)を予め加水分解・縮合させて製造したものを用いてもよいが、後述す
るように、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する際に、水を添加して、オルガノシラン(1)と水とを加水分解・縮合させて、オルガノシラン(1)の加水分解物および/または縮合物を調製することが好ましい。
【0024】
上記オルガノシラン(1)の縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(G
PC法)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」と表す)が
、好ましくは300〜100,000、より好ましくは500〜50,000である。
【0025】
本発明におけるシラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)の縮合物を用いる場
合、上記オルガノシラン(1)から調製してもよいし、市販されているオルガノシランの
縮合物を用いてもよい。市販されているオルガノシランの縮合物としては、三菱化学(株
)製のMKCシリケート、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング・
シリコーン(株)製のシリコーンレジン、GE東芝シリコーン(株)製のシリコーンレジ
ン、信越化学工業(株)製のシリコーンレジンやシリコーンオリゴマー、ダウコーニング
・アジア(株)製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、日本ユニカー(株)製
のシリコーンオリゴマーなどが挙げられる。これらの市販されているオルガノシランの縮
合物は、そのまま用いても、さらに縮合させて使用してもよい。
【0026】
(シリル基含有重合体(a2))
本発明に用いられる特定のシリル基を含有する重合体(a2)(以下、「特定シリル基
含有重合体(a2)」ともいう)は、加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ
素原子を有するシリル基(以下「特定シリル基」という)を含有する。この特定シリル基
含有重合体(a2)は、重合体分子鎖の末端および/または側鎖に特定シリル基を有する
ことが好ましい。
【0027】
この特定シリル基中の加水分解性基および/または水酸基が上記シラン化合物(a1)
と共縮合することにより、有機無機ハイブリッドポリマー(A)が形成される。この有機無機ハイブリッドポリマー(A)を銀メッキ表面にコーティングすることによって、有機無機ハイブリッドポリマー(A)がシロキサン結合を介して強固に結合し、さらには有機無機ハイブリッドポリマー(A)に残存する特定シリル基中の加水分解性基および/または水酸基が銀表面に吸着することによって、硫黄バリア性を発揮し、銀表面を保護するものと推測される。
【0028】
特定シリル基含有重合体(a2)における特定シリル基の含有量は、ケイ素原子の量に
換算して、特定シリル基導入前の重合体に対して、通常0.1〜2重量%、好ましくは0
.3〜1.7重量%である。特定シリル基含有重合体(a2)における特定シリル基含有
量が上記下限未満になると、シラン化合物(a1)との共有結合部位や金属コート材(A)に残存する特定シリル基が少なくなるため、金属表面保護効果が得られないことがある。一方、上記上限を超えると組成物の保管時にゲル化が発生することがある。
【0029】
上記特定シリル基は、下記式(3)
【0030】
【化1】

【0031】
(式中、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、アセトキシ基、フェノキシ基、チオアルコ
キシル基、アミノ基などの加水分解性基または水酸基を示し、R5は水素原子、炭素数1
〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアラルキル基を示し、iは1〜3の整数であ
る。)
で表される基であることが好ましい。
【0032】
このような特定シリル基含有重合体(a2)は、たとえば、下記(I)や(II)の方法
により、製造することができる。
(I)上記式(3)で表される特定シリル基を有するヒドロシラン化合物(以下、単に
「ヒドロシラン化合物(I)」ともいう)を、炭素−炭素二重結合を有するビニル系重合
体(以下、「不飽和ビニル系重合体」という)中の該炭素−炭素二重結合に付加反応させ
る方法。
【0033】
(II)下記式(4)
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、X、R5、iはそれぞれ上記式(3)におけるX,R5,iと同義であり、R6は
重合性二重結合を有する有機基を示す)
で表されるシラン化合物(以下、「不飽和シラン化合物(II)」という)と、他のビニル
系単量体とを共重合する方法。
【0036】
上記(I)の方法に使用されるヒドロシラン化合物(I)としては、たとえば、メチル
ジクロルシラン、トリクロルシラン、フェニルジクロルシランなどのハロゲン化シラン類
;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリ
メトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシ
ラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;
メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン、ジメチル・アミノキシシランなどの
アミノキシシラン類などを挙げることができる。これらのヒドロシラン化合物(I)は、
単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0037】
また、上記(I)の方法に使用される不飽和ビニル系重合体は、水酸基を有する重合体
以外であれば特に限定されず、たとえば、下記(I−1)や(I−2)の方法あるいはこ
れらの組み合わせなどによって製造することができる。
【0038】
(I−1)官能基(以下、「官能基(α )」という)を有するビニル系単量体を(共)
重合したのち、該(共)重合体中の官能基(α)に、該官能基(α)と反応しうる官能基
(以下、「官能基(β)」という)と炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応
させることにより、重合体分子鎖の側鎖に炭素−炭素二重結合を有する不飽和ビニル系重
合体を製造する方法。
【0039】
(I−2)官能基(α)を有するラジカル重合開始剤(たとえば、4,4’−アゾビス
−4−シアノ吉草酸など)を使用し、あるいは、ラジカル重合開始剤と連鎖移動剤の双方
に官能基(α)を有する化合物(たとえば、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸とジ
チオグリコール酸など)を使用して、ビニル系単量体を(共)重合して、重合体分子鎖の
片末端あるいは両末端にラジカル重合開始剤や連鎖移動剤に由来する官能基(α)を有す
る(共)重合体を合成したのち、該(共)重合体中の官能基(α)に、官能基(β)と炭
素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応させることにより、重合体分子鎖の片末
端あるいは両末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和ビニル系重合体を製造する方法。
【0040】
(I−1)および(I−2)の方法における官能基(α)と官能基(β)との反応とし
ては、たとえば、カルボキシル基と水酸基とのエステル化反応、カルボン酸無水物基と水
酸基との開環エステル化反応、カルボキシル基とエポキシ基との開環エステル化反応、カ
ルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応、カルボン酸無水物基とアミノ基との開環アミ
ド化反応、エポキシ基とアミノ基との開環付加反応、水酸基とイソシアネート基とのウレ
タン化反応や、これらの反応の組み合わせなどを挙げることができる。
【0041】
官能基(α)を有するビニル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、クロ
トン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、
無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレ
ート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)
アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエ
ーテルなどの水酸基含有ビニル系単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−
アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−
アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系単量体;1,1,1−トリメチ
ルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミ
ド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド
、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)
アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−2’−フェノキシプロピ
ル)アミン(メタ)アクリルイミドなどのアミンイミド基含有ビニル系単量体;グリシジ
ル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル系単量
体などを挙げることができる。これらの官能基(α)を有するビニル系単量体は、単独で
または2種以上を混合して使用することができる。
【0042】
官能基(α)を有するビニル系単量体と共重合可能な他のビニル系単量体としては、た
とえば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3
−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチル
スチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレ
ン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−
t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニ
ルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリ
レート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(
メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート
、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シク
ロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコー
ルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエ
チレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオー
ルジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロール
プロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート
などの多官能性単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチ
ル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メ
チレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミ
ドなどの酸アミド化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物;
1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−
ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン
、2−シアノ−1,3−ブタジエン、イソプレン、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基
などの置換基で置換された置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖状および側鎖状の共役ヘキ
サジエンなどの脂肪族共役ジエン;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アク
リレートなどのフッ素原子含有単量体;
4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(
メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)ア
クリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系モ
ノマー;
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリ
アゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メタクリロキシエチルフ
ェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエ
トキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾ
フェノンなどの紫外線吸収モノマー;
ジカプロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種単独あるいは2種以上を併用して
用いることができる。
【0043】
官能基(β)と炭素・炭素二重結合とを有する不飽和化合物としては、たとえば、官能
基(α)を有するビニル系単量体と同様のビニル系単量体や、上記水酸基含有ビニル系単
量体とジイソシアネート化合物とを等モルで反応させることにより得られるイソシアネー
ト基含有不飽和化合物などを挙げることができる。
【0044】
また、上記(II)の方法に使用される不飽和シラン化合物(II)としては、
CH2=CHSi(CH3)(OCH32、CH2=CHSi(OCH33
CH2=CHSi(CH3)Cl2、CH2=CHSiCl3
CH2=CHCOO(CH22Si(CH3)(OCH32
CH2=CHCOO(CH22Si(OCH33
CH2=CHCOO(CH23Si(CH3)(OCH32
CH2=CHCOO(CH23Si(OCH33
CH2=CHCOO(CH22Si(CH3)Cl2、CH3
CH2=CHCOO(CH22SiCl3
CH2=CHCOO(CH23Si(CH3)Cl2
CH2=CHCOO(CH23SiCl3
CH2=C(CH3)COO(CH22Si(CH3)(OCH32
CH2=C(CH3)COO(CH22Si(OCH33
CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)(OCH32
CH2=C(CH3)COO(CH23Si(OCH33
CH2=C(CH3)COO(CH22Si(CH3)Cl2
CH2=C(CH3)COO(CH22SiCl3
CH2=C(CH3)COO(CH23Si(CH3)Cl2
CH2=C(CH3)COO(CH23SiCl3
【0045】
【化3】

【0046】
を挙げることができる。これらは、1種単独あるいは2種以上を併用して用いることがで
きる。
また、不飽和シラン化合物と共重合させる他のビニル系単量体としては、たとえば、上
記(I−1)の方法において例示した官能基(α)を有するビニル系単量体や他のビニル
系単量体などを挙げることができる。
【0047】
上記特定シリル基含有重合体(a2)の製造方法としては、たとえば、一括して各単量
体を添加して重合する方法、単量体の一部を重合したのち、その残りを連続的にまたは断
続的に添加して重合する方法、あるいは、単量体を重合開始時から連続的に添加する方法
などが挙げられる。また、これらの重合方法を組み合わせてもよい。
【0048】
好ましい重合方法としては、溶液重合が挙げられる。溶液重合に使用される溶媒は、特
定シリル基含有重合体(a2)を製造できるものであれば特に制限されないが、たとえば
、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げるこ
とができる。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコ
ール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t
−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリ
コール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチ
ルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコール
モノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチル
エーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどを挙げることができる。また、芳香族炭
化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、エーテル類としては
、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチ
ルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられ、エステ
ル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、
乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、3−エトキシプロピオン酸メチ
ル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独
で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0049】
また、上記重合では、重合開始剤、分子量調整剤、キレート化剤、無機電解質は、公知
のものを使用することができる。
本発明では、特定シリル基含有重合体(a2)として、上記のようにして重合された特
定シリル基含有重合体の他に、特定シリル基含有エポキシ樹脂、特定シリル基含有ポリエ
ステル樹脂などの他の特定シリル基含有重合体を使用することもできる。上記特定シリル
基含有エポキシ樹脂は、たとえば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF
型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル
、脂肪族ポリグリシジルエステルなどのエポキシ樹脂中のエポキシ基に、特定シリル基を
有するアミノシラン類、ビニルシラン類、カルボキシシラン類、グリシジルシラン類など
を反応させることにより製造することができる。また、上記特定シリル基含有ポリエステ
ル樹脂は、たとえば、ポリエステル樹脂中に含有されるカルボキシル基や水酸基に、特定
シリル基を有するアミノシラン類、カルボキシシラン類、グリシジルシラン類などを反応
させることにより製造することができる。
【0050】
特定シリル基含有重合体(a2)のGPC法により測定したポリスチレン換算のMwは
、好ましくは2,000〜100,000、さらに好ましくは3,000〜50,000
である。
【0051】
本発明において、特定シリル基含有重合体(a2)は、単独でまたは2種以上を混合し
て使用することができる。
(触媒)
本発明では、上記シラン化合物(a1)や特定シリル基含有重合体(a2)の加水分解
・縮合反応を促進するために、上記シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)との混合物に触媒を添加することが好ましい。触媒を添加することにより、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)の架橋度を高めることができるとともに、オルガノシラン(1)の重縮合反応により生成するポリシロキサンの分子量が大きくなり、結果として、強度、長期耐久性などに優れた硬化体を得ることができ、かつ銀表面にコーティングした際の硫黄バリア性も高くなる。さらに、触媒の添加は、上記シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)との反応を促進し、有機無機ハイブリッドポリマー(A)に十分な反応サイト(アルコキシ基)が形成される。この有機無機ハイブリッドポリマー(A)を銀メッキにコーティングし硬化させると、シロキサン結合が形成され架橋密度が高い金属コート層が形成され硫黄バリア性が発現すると共に、銀表面に吸着することで銀表面の変色を保護できると推定される。
【0052】
このような加水分解・縮合反応を促進するために用いられる触媒としては、たとえば、
塩基性化合物、酸性化合物、塩化合物および金属キレート化合物が挙げられる。
(塩基性化合物)
上記塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む)、有機アミン化合
物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物
、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド等のアルカリ金属のアルコキシドが挙げ
られる。これらのうち、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましい。
【0053】
有機アミンとしては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリ
ールアミンなどが挙げられる。
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミ
ン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミ
ン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチ
ルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有
するアルキルアミンなどが挙げられる。
【0054】
アルコキシアミンとしては、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシ
プロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン
、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキ
シエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチル
アミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミンなどの
炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアミンなどが挙げられる。
【0055】
アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールア
ミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、
N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールア
ミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノ
ールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロ
ピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン
、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノール
アミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,
N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチ
ルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノー
ルアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、
N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N
−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチル
ブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノール
アミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピル
ジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、
N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノ
ールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−
プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノ
ールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブ
チルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル
)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)
ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタ
ノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノ
ールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノ
ールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタ
ノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノー
ルアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノール
アミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルカノールアミンが挙げられる。
【0056】
アリールアミンとしてはアニリン、N−メチルアニリンなどが挙げられる。
さらに、上記以外の有機アミンとして、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、
テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサ
イド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドなどのテトラアルキルアンモニウムハ
イドロキサイド;テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テト
ラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミンなどのテトラアルキルエチ
レンジアミン;メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプ
ロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエ
チルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノ
メチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピル
アミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルア
ミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミンなどのアルキルアミノアルキルアミン;
エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテト
ラミン、テトラエチレンペンタミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン
などのポリアミン;ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリ
ン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、
ジアザビシクロウンデセンなども挙げられる。
【0057】
このような塩基性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
これらのうち、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジ
ンが特に好ましい。
【0058】
(酸性化合物)
上記酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。有機酸としては、たとえ
ば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸
、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルマロン酸、アジ
ピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチ
ルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安
息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロ
ロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、メタンス
ルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。上記無機酸として
は、たとえば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などが挙げられる。
【0059】
このような酸性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。こ
れらのうち、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、酢酸が特に好ましい。
(塩化合物)
上記塩化合物として、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸な
どのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0060】
(金属キレート化合物)
上記金属キレート化合物としては、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物
(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて、「有機金属化合
物類」という)が挙げられる。
【0061】
上記有機金属化合物類としては、たとえば、下記式(b)
M(OR7r(R8COCHCOR9s (b)
(式中、Mは、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムからなる群からを選択される少
なくとも1種の金属原子を表し、R7および8は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基
、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、
n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個
の1価の炭化水素基を表し、R9は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、
メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、se
c−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数
1〜16個のアルコキシル基を表し、rおよびsは、それぞれ独立に0〜4の整数であっ
て、(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす)
で表される化合物(以下、「有機金属化合物(b)」という)、
1つのスズ原子に炭素数1〜10個のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズの有機
金属化合物(以下、「有機スズ化合物」という)、あるいは、
これらの部分加水分解物などが挙げられる。
【0062】
また、有機金属化合物類として、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テト
ラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン
類;メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシ
シラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘ
キシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエト
キシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシ
シラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−ア
ミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノ
プロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メル
カプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、
3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラ
ンなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラ
ン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−
ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシ
ルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類などのチ
タンアルコレートおよびその縮合物を用いることができる。
【0063】
有機金属化合物(b)として、たとえば、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−
n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチル
アセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジ
ルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(
アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジル
コニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテ
ート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−
i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどの有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートア
ルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ
・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセ
トナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(ア
セチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトア
セテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0064】
有機スズ化合物として、たとえば、
【0065】
【化4】

【0066】
などのカルボン酸型有機スズ化合物;
【0067】
【化5】

【0068】
などのメルカプチド型有機スズ化合物;
【0069】
【化6】

【0070】
などのスルフィド型有機スズ化合物;
【0071】
【化7】

【0072】
などのクロライド型有機スズ化合物;
(C492SnO、(C8172SnOなどの有機スズオキサイドや、これらの有機ス
ズオキサイドとシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオク
チルなどのエステル化合物との反応生成物;
などが挙げられる。
【0073】
このような金属キレート化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いても
よい。これらのうち、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの部分加水分解物が好ましい。
【0074】
また、上記触媒は、亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる

上記触媒の使用量は、上記触媒が有機金属化合物類以外の場合には、シラン化合物(a
1)100重量部(オルガノシラン(1)の完全加水分解縮合物換算)に対して、通常0
.001〜100重量部、好ましくは0.01〜80重量部、さらに好ましくは0.1〜
50重量部である。上記触媒が有機金属化合物類の場合には、シラン化合物(a1)10
0重量部(オルガノシラン(1)の完全加水分解縮合物換算)に対して、通常100重量
部以下、好ましくは0.1〜80重量部、さらに好ましくは0.5〜50重量部である。
上記触媒の使用量が上記上限を超えると、有機無機ハイブリッドポリマーの保存安定性の低下によりゲル化したり、金属コート層の架橋度が高くなりすぎクラックが発生することがある。
【0075】
(水)
本発明では、上記シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)との混合物
に水を添加して、シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)とを共縮合し
て有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製することが好ましい。
【0076】
このとき添加される水の量は、シラン化合物(a1)中の全てのOR基1モルに対し
て、通常0.1〜1.0モル、好ましくは、0.2〜0.8モル、より好ましくは、0.
25〜0.6モルである。水の添加量が上記範囲にあるとゲル化が発生しにくく、組成物
は良好な貯蔵安定性を示す。また、水の添加量が上記範囲にあると十分に架橋した金属コート材(A)が得られ、このような有機無機ハイブリッドポリマー(A)を含む組成物を用いることによって、硫黄バリア性や金属表面保護性に優れた金属コート層を得ることができる。
【0077】
(有機溶剤)
本発明では、シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)とを有機溶剤中
で加水分解・縮合反応させてもよい。このとき、前記シリル基含有重合体(a2)の調製
時に使用した有機溶媒をそのまま使用することもできる。また、金属コート材(A)調製時の固形分濃度を調整するために、必要に応じて、有機溶媒を添加することもできる。さらに、前記シリル基含有重合体(a2)の調製時に使用した有機溶媒を除去し、新たに有機溶媒を添加してもよい。
【0078】
上記有機溶媒は、有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは15〜50重量%、特に好ましくは20〜40重量%の範囲となる量を添加することができる。なお、前記シリル基含有重合体(a2)の調製時に使用した有機溶媒をそのまま使用して有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が上記範囲にある場合には、有機溶媒を添加しても、添加しなくてもよい。
【0079】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度を調整することによって、シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)との反応性をコントロールすることができる。有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が上記下限未満になるとシラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)との反応性が低下することがある。有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が上記上限を超えるとゲル化することがある。なお、ここで言う固形分濃度における固形分量は、シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の使用量(Wa1)と特定シリル基含有重合体(a2)の固形分換算の使用量(Wa2)の総量である。
【0080】
上記有機溶媒としては、上記成分を均一に混合できるものであれば特に限定されないが
、上記特定シリル基含有重合体(a2)の製造に用いられる有機溶媒として例示した、ア
ルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることが
できる。また、これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いても
よい。
【0081】
(安定性向上剤)
本発明では、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の保存安定性などを向上させるために、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製した後、必要に応じて、安定性向上剤を添加することが好ましい。本発明に用いられる安定性向上剤は、下記式(6)
10COCH2COR11 (6)
(式中、R10は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基
、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル
基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R11は、前記炭素数1
〜6個の1価の炭化水素基、または、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−
プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ
基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表す。)
で表されるβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合
物、アミン化合物およびオキシアルデヒド化合物からなる群から選択される少なくとも1
種の化合物である。
【0082】
上記触媒として有機金属化合物類を使用した場合、上記式(6)で表される安定性向上
剤を添加することが好ましい。安定性向上剤を用いることによって、安定性向上剤が有機
金属化合物類の金属原子に配位し、この配位が、シラン化合物(a1)と特定シリル基含
有重合体(a2)との過剰な共縮合反応を抑制し、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)の保存安定性をさらに向上させることができると考えられる。
【0083】
このような安定性向上剤として、たとえば、アセチルアセトン、アセト酢酸メチル、ア
セト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−
n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、ヘキサン−2,4
−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−
ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、マロン酸、シ
ュウ酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、アミノ酢酸、イミノ酢酸、エチレンジア
ミン四酢酸、グリコール、カテコール、エチレンジアミン、2,2−ビピリジン、1,1
0−フェナントロリン、ジエチレントリアミン、2−エタノールアミン、ジメチルグリオ
キシム、ジチゾン、メチオニン、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。これらのうち、
アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルが好ましい。
【0084】
また、安定性向上剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明に用いられる安定性向上剤の量は、前記有機金属化合物類の有機金属化合物1モ
ルに対して、通常2モル以上、好ましくは3〜20モルが望ましい。安定性向上剤の量が
上記下限未満であると、得られる組成物の保存安定性の向上効果が不充分となることがあ
る。
【0085】
(有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製方法)
本発明の有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)とを共縮合させることにより調製できる。特に好ましくは、シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)との混合物に、加水分解・縮合反応用触媒および水を添加して共縮合させることにより調製できる。
【0086】
このとき、シラン化合物(a1)の含有量(Wa1)と特定シリル基含有重合体(a2
)の含有量(Wa2)との重量比(Wa1/Wa2)は、Wa1+Wa2=100として
、5/95〜95/5であり、好ましくは15/85〜85/15である。なお、Wa1
はシラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算値、Wa2は特定シリル基含有重合体
(a2)の固形分換算値である。重量比(Wa1/Wa2)が上記範囲にあると透明性や
耐候性に優れた硬化体を得ることができる。
【0087】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、具体的には下記(1)〜(3)の方法により調製することが好ましい。
(1)シラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)と加水分解・縮合反応
用触媒との混合液に、上記範囲の量の水を加えて、温度40〜80℃、反応時間0.5〜
12時間でシラン化合物(a1)と特定シリル基含有重合体(a2)とを共縮合させて、
有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する。その後、必要に応じて、安定性向上剤などの他の添加剤を加えてもよい。
【0088】
(2)シラン化合物(a1)に上記範囲の量の水を加えて、温度40〜80℃、時間0.5〜12時間でシラン化合物(a1)の加水分解・縮合反応を行う。次いで、特定シリル基含有重合体(b2)および加水分解・縮合反応用触媒を加えて混合し、さらに温度40〜80℃、反応時間0.5〜12時間で縮合反応を行い、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する。その後、必要に応じて、安定性向上剤などの他の添加剤を加えてもよい。
【0089】
加水分解縮合触媒として金属キレート化合物を使用した場合には、反応後に上記
安定性向上剤を添加することが好ましい。
上記方法により得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算値で通常3,000〜200,000、好ましくは4,000〜150,000、より好ましくは5,000〜100,000である。
【0090】
〔金属酸化物〕
本発明の金属コート材は、さらに金属機酸化物(B)を含む。
上記金属酸化物は、金属元素の酸化物の粒子であればその種類は特に限定されないが、たとえば、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、アナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、ブルッカイト型酸化チタン、酸化亜鉛、酸化タンタル、酸化インジウム、酸化ハフニウム、酸化スズ、酸化ニオブ、酸化アルミニウム、酸化セリウム、酸化スカンジウム、酸化イットリウム、酸化ランタン、酸化プラセオジウム、酸化ネオジウム、酸化サマリウム、酸化ユウロピウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビニウム、酸化ジスプロシウム、酸化ホルミウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化カルシウム、酸化ガリウム、酸化リチウム、酸化ストロンチウム、酸化タングステン、酸化バリウム、酸化マグネシウム、およびこれらの複合体、ならびにインジウム−スズ複合酸化物などの上記金属2種以上の複合体の酸化物などの金属酸化物が挙げられる。また、上記金属酸化物(B)として、ケイ素酸化物と金属酸化物との複合酸化物の粒子や金属酸化物の表面をケイ素酸化物で被覆した酸化物の粒子を用いることもできる。
本発明において、金属酸化物(B)は、1種単独で、または2種以上を混合して使用してもよい。金属酸化物(B)は、適宜選択することができるが、本発明ではアナターゼ型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛を好ましく用いることができる。
【0091】
金属酸化物(B)を配合する場合は、粉体、またはイソプロピルアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒に分散した溶媒系のゾルもしくはコロイドなどの形態で使用することもできる。添加前の金属酸化物(B)は、凝集して二次粒子を形成していてもよい。また、金属酸化物(B)の分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。
これらの金属酸化物(B)の1次粒子径は、通常0.0001〜1μm、さらに好ましくは0.001〜0.5μm、特に好ましくは0.002〜0.2μmである。
金属酸化物溶媒系のゾルもしくはコロイドである場合、その固形分濃度は通常0重量%を超えて50量%以下、好ましくは0.01重量%以上40重量%以下である。
金属酸化物(B)は、上記有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製時に添加してもよく、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調整後に添加してもよい。
【0092】
金属酸化物(B)粉体を用いる場合の分散は、ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、ナノマイザー、プロペラミキサー、ハイシェアミキサー、ペイントシェーカーなどの公知の分散機を用いることができ、特に高分散の微粒子分散体ボールミル、サンドミル(ビーズミル,ハイシェアビーズミル)、ペイントシェーカーが好適に使用される。
金属酸化物(B)の使用量は、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の固形分に対して、固形分換算で通常0重量%を超えて80重量%以下、好ましくは5重量%以上50重量%以下である。
【0093】
〔発光装置〕
本発明の金属コート材をコーティングして硬化させたメッキ部材や金属電極を用いて発光装置を得ることができる。図1〜3に発光装置の模式図を示す。LED素子としては、青色LED素子、白色LED素子、紫外LED素子等を用いることができる。さらに、金属コート層中に蛍光体を含有させ、LED素子から発せられた光を変換することもできる。また、封止部材を本発明の金属コート材でコートし、硫黄等から保護するこもできる。
【0094】
〔金属の保護方法〕
本発明の金属コート材を金属にコーティングすることにより、変色等から金属を保護することができる。コート材の組成やコーティング方法等は上記に記載した通りである。
【実施例】
【0095】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、「重量部」および「重量%」を示す。また、実施例および比較例における各種測定は、下記の方法により行なった。
【0096】
(1)GPC測定
シロキサンの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として示した。装置:HLC−8120C(東ソー社製)カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)溶離液:THF、流量0.5mL/min、負荷量5.0%、100μL
(2)保存安定性
得られた組成物をポリエチレン製容器内で常温で1ヶ月間密栓保存して、ゲル化および粒子沈降の有無を目視により判定した。ゲル化していないものについては東京計器社製のBM型粘度計により25℃で粘度測定を行い、下記基準で評価した。A:保存前後の粘度変化率が20%以下、B:保存前後の粘度変化率が20%超
(3)硫黄暴露下の安定性
容積150cmの耐圧容器内で0.06gの硫化鉄と0.20gの47重量%の硫酸水を混合後、直ちに所定の硬化条件で作製した厚み100μm、5mm角のサイズの硬化物を当該耐圧容器に仕込み密閉した(硫化水素の理論濃度10vol%)。この耐圧容器を70℃で5時間加熱後に冷却して硬化物を取出し硬化物の外観を観察し下記基準で評価した。
A:変化なし
B:わずかに変色
C:茶色に変色

(4)銀黒色化抑制能
得られた本発明の組成物を乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、所定の条件で乾燥させ、銀黒色化抑制能評価用サンプルを作製した。容積150cmの耐圧容器内で0.06gの硫化鉄と0.20gの硫酸を混合後、直ちに銀黒色化抑制能評価用サンプルを仕込み密閉した(硫化水素の理論濃度10vol%)。この耐圧容器を120℃で5時間加熱し、後に冷却して試験サンプルを取出し銀メッキの外観を観察し下記基準で評価した。
A :変化なし
A-:わずかに変色
B :やや変色
C :黒く変色
【0097】
〔特定シリル基含有重合体(a2)の調製〕
<調製例1>
還流冷却器および攪拌機を備えた反応器に、メチルメタクリレート70部、2−エチルヘキシルアクリレート10部、シクロヘキシルメタクリレート5部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン10部、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン5部、i−ブチルアルコール75部、メチルエチルケトン50部およびメタノール25部を加えて混合した後、攪拌しながら80℃に加温した。この混合物にアゾビスイソバレロニトリル3部をキシレン8部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させた。冷却後、メチルエチルケトンを35部加えて、固形分濃度が35%、GPC法により測定したMwが12,000、固形分中のケイ素含量が1.1重量%の特定シリル基含有重合体(a2−1)溶液を得た。
【0098】
〔本発明組成物の調製〕
<実施例1>
撹拌機および還流冷却器を備えた反応器に、シラン化合物(a1)としてメチルトリメトキシシラン60部とジメチルジメトキシシラン32部、特定シリル基含有重合体(a2)として上記特定シリル基含有重合体(a2−1)を含む溶液60部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール29部、および加水分解・縮合反応触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール75%希釈液2部を加えて混合し、攪拌しながら50℃に昇温した。これに水を16部(シラン化合物(a1)中の全てのOR基1モルに対して0.48モルに相当)を30分間かけて滴下した後、60℃で4時間反応させ、GPC法により測定したMwが13,000の有機無機ハイブリッドポリマーを含む本発明の組成物(A−1)を得た。その後、安定性向上剤としてアセチルアセトン2部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトン150部を加えて固形分濃度を20重量%に調整した。固形分濃度20重量%に調製した本発明の組成物(A−1)100部に対し、一次粒径10nmの酸化ジルコニウム粉体を13部およびイソプロピルアルコール52部を加えてペイントシェーカーで4時間分散し、固形分濃度20重量%の本発明の組成物(X−1)を得た。保存安定性はAであった。
【0099】
<実施例2>
実施例1で得られた固形分濃度20重量%の本発明の組成物(A−1)100部に対し、一次粒径10nmの酸化ジルコニウム粉体を13部およびイソプロピルアルコール52部を加えてペイントシェーカーで4時間分散し、固形分濃度20重量%の本発明の組成物(X−2)を得た。保存安定性はAであった。
【0100】
<実施例3>
実施例1で得られた固形分濃度20重量%の本発明の組成物(A−1)100部に対し、一次粒径10nmの酸化アルミニウム粉体を13部およびイソプロピルアルコール52部を加えてペイントシェーカーで4時間分散し、固形分濃度20重量%の本発明の組成物(X−3)を得た。保存安定性はAであった。
【0101】
<実施例4>
実施例1で得られた固形分濃度20重量%の本発明の組成物(A−1)100部に対し、一次粒径10nmの酸化亜鉛粉体を13部およびイソプロピルアルコール52部を加えてペイントシェーカーで4時間分散し、固形分濃度20重量%の本発明の組成物(X−4)を得た。保存安定性はAであった。
【0102】
<実施例5>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)100部に対し、固形分濃度15重量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液7部を加え良く攪拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるようにテフロン(登録商標)シート上に塗布し100℃で1時間硬化させ硬化物を作製した。この硬化物の硫黄暴露下の安定性を評価した結果、Aであった。
【0103】
<実施例6>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)の代わりに実施例2で得られた本発明の組成物(X−2)を使用した以外は実施例5と同様にし、硫黄暴露下の安定性を評価した結果、Aであった。
【0104】
<実施例7>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)の代わりに実施例3で得られた本発明の組成物(X−3)を使用した以外は実施例5と同様にし、硫黄暴露下の安定性を評価した結果、Aであった。
【0105】
<実施例8>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)の代わりに実施例4で得られた本発明の組成物(X−4)を使用した以外は実施例5と同様にし、硫黄暴露下の安定性を評価した結果、Aであった。
【0106】
<実施例9>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)100部に対し、固形分濃度15重量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液5部を加え良く攪拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、100℃で1時間乾燥させ銀黒色化抑制能評価用サンプルを作製した。本サンプルの銀黒色化抑制能はAであった。
【0107】
<実施例10>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)の代わりに実施例2で得られた本発明の組成物(X−2)を使用した以外は実施例9と同様にし、銀黒色化抑制能を評価した結果、Aであった。
【0108】
<実施例11>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)の代わりに実施例3で得られた本発明の組成物(X−3)を使用した以外は実施例9と同様にし、銀黒色化抑制能を評価した結果、Aであった。
【0109】
<実施例12>
実施例1で得られた本発明の組成物(X−1)の代わりに実施例4で得られた本発明の組成物(X−4)を使用した以外は実施例9と同様にし、銀黒色化抑制能を評価した結果、Aであった。
【0110】
〔比較例1〕
脂環式エポキシ樹脂としてダイセル化学工業社製のCE2021を60部、酸無水物として新日本理化社製のMH700を66部、硬化促進剤としてサンアプロ社製のUCAT18Xを0.7部を混合し良く攪拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるようにテフロン(登録商標)シート上に塗布し100℃で1時間硬化させ硬化物を作製した。この硬化物の硫黄暴露下の安定性を評価した結果、Cであった。
【0111】
〔比較例2〕
直鎖ポリジメチルシロキサンを主成分とするシリコーン封止材(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のTSE3033A、TSE3033Bの混合系)を乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、150℃で5時間乾燥させ銀黒色化抑制能評価用サンプルを作製した。本サンプルの銀黒色化抑制能はCであった。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明のコート材を用いた発光ダイオードの模式図である。
【図2】本発明のコート材を用いた発光ダイオードの模式図である。
【図3】蛍光部を含有した本発明のコート材を用いた発光ダイオードの模式図である。
【符号の説明】
【0113】
50 発光素子
51 封止材
52 蛍光体
53 本発明のコート材
55 銀電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
Si(OR4−n (1)
(式中、Rは、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、2個存在する場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。Rは、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。nは0〜2の整数である。)
で表される少なくとも1種のオルガノシラン、該オルガノシランの加水分解物および該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を含有するシリル基を有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(A)と金属酸化物(B)とを含有することを特徴とする金属コート材。
【請求項2】
前記金属酸化物(B)が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛からなる群より選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の金属コート材。
【請求項3】
前記シラン化合物(a1)と重合体(a2)とを、シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の含有量(Wa1)と重合体(a2)の固形分換算の含有量(Wa2)との重量比(Wa1/Wa2)が、5/95〜95/5の範囲〔ただし、Wa1+Wa2=100とする。〕で加水分解・縮合させることを特徴とする請求項1または2に記載の金属コート材。
【請求項4】
前記重合体(a2)において、加水分解性基および/または水酸基と結合したケイ素原子を含有するシリル基の含有量が、ケイ素原子含有量に換算して、0.1〜2重量%であることを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載の金属コート材。
【請求項5】
銀に用いられることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の金属コート材。
【請求項6】
銀電極に用いられることを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の金属コート材。
【請求項7】
請求項1〜6いずれかに記載の金属コート材でコートされた銀メッキ部材および/または銀電極を有することを特徴とする発光装置。
【請求項8】
金属表面に請求項1〜6のいずれかに記載の金属コート材を塗布し、前記金属を保護する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−191189(P2009−191189A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34233(P2008−34233)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】