説明

金属セラミックス接合基板及びその製造方法

【課題】ろう材の形成工程のコストを低減できる金属セラミックス接合基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の金属セラミックス接合基板の製造方法は、セラミックス基板1上にコールドスプレー法によりろう材2を形成する工程と、前記ろう材の上に金属板3を配置する工程と、前記金属板、前記ろう材及び前記セラミックス基板を加熱することにより、前記セラミックス基板に前記金属板を接合する工程と、を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属セラミックス接合基板及びその製造方法等に関し、より詳細には、ろう材の形成工程のコストを低減できる金属セラミックス接合基板及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の金属セラミックス接合基板の製造方法について説明する。
まず、金属成分が71Ag-27Cu-2Ti(wt%)になるよう金属粉等を秤量し、これに対し約10%のアクリル系のビヒクルを加え乳鉢、3本ロールミル等通常の方法で混錬し、ペースト状のろう材を作製する。
【0003】
次に、このろう材をセラミックス基板の両面にスクリーン印刷で配置(塗布)し、その両側にCu板を配置し、850℃の真空炉中で接合する。
【0004】
次いで、セラミックス基板を真空炉中から取り出し、接合されたCu板表面の両面に所望の回路パターン等のレジストインクを塗布し、塩化第2銅、塩酸と過酸化水素水の混合液によりCu板の不要部分を除去することによりセラミックス基板上に回路が形成される。その後、レジストをアルカリの薬液で除去する。
【0005】
その後、回路の表面にNi-Pの無電解めっきを選択的に施す(例えば特許文献1参照)。
また、金属板の表面にろう材をスプレーで塗布して形成し、該金属板をセラミックス基板に接合する方法が知られている(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−60111号公報
【特許文献2】特開2005−213107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属セラミックス接合基板を製造するコストを低減する要請がある。特に、ろう材を塗布(形成)する工程のコスト低減の要請が強い。また、金属板にろう材をスプレーする方法では、セラミックス基板と接合する際、セラミックス基板の有する表面のうねりに追従せず、隙間となり、接合後にボイド欠陥を発現するおそれがある。
【0008】
本発明は上記のような事情を考慮してなされたものであり、その目的は、ろう材の形成工程のコストを低減できる金属セラミックス接合基板及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る金属セラミックス接合基板の製造方法は、セラミックス基板上にコールドスプレー法によりろう材を形成する工程と、
前記ろう材の上に金属板を配置する工程と、
前記金属板、前記ろう材及び前記セラミックス基板を加熱することにより、前記セラミックス基板に前記金属板を接合する工程と、
を具備することを特徴とする。
【0010】
上記金属セラミックス接合基板の製造方法によれば、コールドスプレー法によりろう材をセラミックス基板上に形成するため、従来技術に比べてろう材を容易に形成することができる。
【0011】
また、本発明の一態様に係る金属セラミックス接合基板の製造方法において、前記コールドスプレー法によりろう材を形成する工程は、原料粉末を混合した混合粉末及び該混合粉末の融点以下に加温された作動ガスを前記セラミックス基板上に吹き付ける工程であることも可能である。
【0012】
本発明の一態様に係る金属セラミックス接合基板は、セラミックス基板と、
前記セラミックス基板上にろう材によって接合された金属板と、
を具備し、
前記ろう材は、コールドスプレー法により形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように本発明によれば、ろう材の形成工程のコストを低減できる金属セラミックス接合基板及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】(a)〜(f)は、本発明の実施形態による金属セラミックス接合基板の製造方法を説明するための断面図である。
【図2】図1(f)に示す金属セラミックス接合基板の斜視図である。
【図3】コールドスプレー法を実施する低温溶射装置の概略を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1(a)〜(f)は、本発明の実施形態による金属セラミックス接合基板の製造方法を説明するための材料及び金属セラミックス接合基板の断面図である。図2は、図1(f)に示す金属セラミックス接合基板の斜視図である。図3は、コールドスプレー法を実施する低温溶射装置の概略を示す模式図である。
まず、図1(a)に示すセラミックス基板1を用意する。このセラミックス基板1は、例えば厚さが0.2〜1.0mm程度のAlN基板又はAl基板を用いることができる。
【0016】
次いで、図1(b)に示すように、セラミックス基板1の両面にコールドスプレー法によってろう材2を形成する。この際、図3に示す低温溶射装置を用いる。コールドスプレー法及び低温溶射装置の詳細については後述する。
【0017】
次に、図1(c)に示すように、セラミックス基板1の両面のろう材2上に例えばCu板からなる金属板3を配置する。次いで、このセラミックス基板1を真空炉(図示せず)に挿入し、この真空炉を850℃の温度に加熱することにより、セラミックス基板1の両面には金属板3が接合される。
【0018】
次いで、図1(d)に示すように、セラミックス基板1を真空炉中から取り出し、金属板3の表面に所望の回路パターン等の形状のレジストインク4を塗布し、紫外線で硬化する。
【0019】
次に、図1(e)に示すように、このレジスト4をマスクとして例えば塩化第2銅、塩酸と過酸化水素水の混合液により金属板3をエッチングすることにより、セラミックス基板1の一方面には金属板からなる回路パターン3aが形成され、セラミックス基板1の他方面には金属板パターン3bが形成される。次いで、レジスト4をアルカリの薬液で除去する。
【0020】
次いで、図1(f)に示すように、回路パターン間や基板縁面の不要なろう材等を除去するため、EDTAとアンモニアと過酸化水素水の混合溶液中にディップして、セラミックス基板1の両面の不要なろう材等を除去した後、水洗、乾燥し所望の金属回路パターンを得る。その後、回路パターン3a及び金属板パターン3bの表面にNi-Pの無電解めっきが選択的に行われる。このようにして図2に示す金属セラミックス接合基板が製造される。
【0021】
上記のコールドスプレー法及び低温溶射装置の詳細について説明する。
本実施形態に係るろう材の形成方法は、材料粉末をセラミックス基板1の表面に固着させてろう材を形成するもので、材料粉末をその融点より低い温度に加温したガスに投入し、このガスを超音速流にしてセラミックス基板1に対して噴射させるコールドスプレー法を用いる。
【0022】
図3に示す低温溶射装置11は、空気,窒素,ヘリウムなどの高圧の作動ガスを供給するガス供給部10を有しており、このガス供給部10には主配管12の一端が接続されている。この主配管12の途中には、作動ガスを加温するガスヒーター部13が設けられている。主配管12には、その主配管12から分岐された枝配管14の一端が設けられている。この枝配管14の他端には材料粉末を供給する粉体供給部(パウダーフィードユニット)15が配置されている。この粉体供給部15には粉末投入管16の一端が接続されており、この粉末投入管16には主配管12の他端が合流されており、粉末投入管16の他端にはスプレーノズル17が接続されている。スプレーノズル17に対向して配置された基板保持部(図示せず)にはセラミックス基板1が保持されている。
【0023】
図3に示す低温溶射装置11によってセラミックス基板1にろう材を下記のようにして形成する。
【0024】
粉体供給部15にろう材の原料粉末を混合した混合粉末を入れ、低温溶射装置11を駆動させる。ガス供給部10によって空気,窒素,ヘリウムなどの高圧の作動ガスが主配管12に供給される。主配管12に供給された作動ガスは、ガスヒーター部13によって原料粉末の融点より低くまたは軟化温度よりも低い温度に加温される。この加温された作動ガスは粉末投入管16に供給される。これとともに、ガス供給部10によって主配管12及び枝配管14を介して粉体供給部15に作動ガスが供給され、この作動ガスにより粉体供給部15の混合粉末が粉末投入管16に供給される。このようにして粉末投入管16から供給される混合粉末と、主配管12から供給される加温された作動ガスが、スプレーノズル7から超音速流になって噴出され、その結果、混合粉末及び作動ガス18がセラミックス基板1の全面に対して吹き付けられる。この吹き付けられる混合粉末は、セラミックス基板1に衝突して固着される。従って、セラミックス基板1の表面には低温溶射によりろう材2が形成される。このろう材2の厚さは5μm以上が好ましく、より好ましくは10μm以上である。
【0025】
上記実施形態によれば、コールドスプレー法によりろう材2をセラミックス基板1上に形成するため、従来技術に比べてろう材を容易に形成することができる。
【0026】
具体的には、本実施形態では、従来技術のようにろう材をペースト(又は箔)とする必要がなく、原料粉末のままでろう材を形成することができる。このため、従来技術のようなろう材2の製造工程がなくなり、コストを低減できる。また、ろう材成分である金属粉とビヒクルとの相性の心配も不要となる。
【0027】
また、コールドスプレー法によりろう材を形成するため、従来技術に比べてろう材の形成スピードを速くすることができる。例えば、コールドスプレー法では厚さ20μmのろう材を一瞬(1秒以下)で形成することができ、厚さ400μmのろう材を数秒で形成することができる。また、通常の丸ノズルのスプレーの場合、一般に用いられている長方形のセラミックス基板の全面にろう材を形成することが困難な場合がある。この場合、セラミックス基板を移動し、スプレーが全面に当たるようにすれば良い。また、スプレーは複数並べて処理を行っても良い。また、付着しなかった粉末は、回収し、再利用するのもコスト面で好ましい。
【0028】
また、コールドスプレー法では、粉体供給部15に粉の状態で所定の組成に混合すれば良いため、ろう材をペーストや箔とするのと比べ、ろう材の組成を容易に変更することができる。また、コールドスプレー法では、溶射などと比較して、ろう材の成分が酸化しにくいという利点もある。
【0029】
また、コールドスプレー法では、セラミックス基板1の表面のうねりや粗さにろう材を追従させることが容易である。従って、ろう材の接合欠陥(ボイド)を低減させる効果もある。
【0030】
また、コールドスプレー法では、接合時にペーストろう材では必要な処理となる脱脂・脱バインダー工程が不要となり、ろう材形成工程の時間を短縮できるとともに、ろう材の酸化がほとんどなく、ろう材の品質を安定させることができる。
【0031】
また、コールドスプレー法によるアンカー効果により、混合粉末をセラミックス基板1に確実に固着することができ、接合強度を向上させることができる。なお、粒子が溶融した或いは半溶融した高温の状態で低速でスプレーする通常の溶射法では、ろう材成分が酸化して接合できなくなったり、セラミックス基板を加熱する必要があり、セラミックス基板が破壊されるおそれがある。また、単に混合粉末を室温などでセラミックス基板にスプレーした場合は、セラミックス基板表面に該粉末はほとんど付着しない。
【実施例】
【0032】
以下、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
セラミックス基板1としてAlN基板(厚さ0.6mm、長さ100mm、幅50mm)を用意した。
【0033】
次いで、このAlN基板の両面上に図3に示す低温溶射装置(コールドスプレー装置)によってろう材を形成した。詳細には、コールドスプレー装置のパウダーフィードユニット15に原料粉末を投入し、この原料粉末及び高温・高圧のNガスでAlN基板の表面にスプレーすることにより、AlN基板の表面に原料粉末を付着させた。その後、AlN基板を裏返して、AlN基板の裏面に同様の方法で原料粉末を付着させた。このようにしてAlN基板の両面に厚さ30μmのろう材を形成した。ろう材を形成するためのスプレー時間はそれぞれ1秒である。なお、スプレー中にAlN基板表面の全面に原料粉末が付着するように、AlN基板を移動させながらスプレーを行った。
【0034】
なお、従来技術のようなろう材作製工程はない。
【0035】
前記原料粉末は、71.5mass%のAg粉末、27mass%のCu粉末、1.5mass%のTiH粉末を混合した混合粉末であり、原料粉末の粒径は5〜30μmである。また、前記混合粉末は、400℃に加熱され600m/sの速度で噴射される前記NガスによってAlN基板にスプレーした。
【0036】
次いで、AlN基板の表面に厚さ0.3mmのCu板を配置し、AlN基板の裏面に厚さ0.15mmのCu板を配置した。
【0037】
次いで、AlN基板を真空炉に挿入し、真空炉を850℃の温度に加熱することにより、AlN基板の両面にCu板を接合した。
【0038】
次いで、AlN基板を真空炉中から取り出し、Cu板の表面に所望の回路パターンのレジストを塗布し、このレジストをマスクとしてCu板を塩化第2銅と塩酸と過酸化水素を含む混合液でエッチングすることにより、AlN基板の表面及び裏面に回路パターンを形成し、レジストを除去した。その後、フッ酸を含む水溶液でパターン間の不要なろう材を除去した。
【0039】
次いで、回路パターンとAlN基板の接合強度を評価した結果、その接合強度は20kgf/cm以上であった。この際の評価方法は、下記のとおりである。
金属セラミックス接合基板に形成された回路パターンの一部である幅3mmのパターンの端をペンチで引き剥がした。この接合基板をプル(引張)試験機の台に固定し、前記パターンの端をプル試験機のチャックに取り付けた。この時、接合基板の表面と引き剥がされた前記パターンの角度が90°(鉛直方向)になるように設置する。その後、プル試験機を作動させ、チャックを介して引き剥がされた前記パターンを上方に引っ張って移動させ、その時の最大引き剥がし荷重を測定した。その最大引き剥がし荷重を幅(0.3cm)で除して接合強度を測定した。
【0040】
(実施例2)
セラミックス基板1としてAl基板(厚さ0.6mm、長さ100mm、幅50mm)を用意した。
【0041】
次いで、このAl基板の両面上に図3に示す低温溶射装置(コールドスプレー装置)によってろう材を形成した。詳細には、コールドスプレー装置のパウダーフィードユニット15に原料粉末を投入し、この原料粉末及び高温・高圧のNガスでAl基板の表面にスプレーすることにより、Al基板の表面に原料粉末を付着させた。その後、Al基板を裏返して、Al基板の裏面に同様の方法で原料粉末を付着させた。このようにしてAl基板の両面に厚さ30μmのろう材を形成した。ろう材を形成するためのスプレー時間は1秒である。
【0042】
なお、従来技術のようなろう材作製工程はない。
【0043】
前記原料粉末及び原料粉末の温度と速度は、実施例1と同様である。
【0044】
次いで、実施例1と同様に、Al基板の表面に厚さ0.3mmのCu板を配置し、Al基板の裏面に厚さ0.15mmのCu板を配置した。
【0045】
次いで、実施例1と同様に、Al基板を真空炉に挿入し、真空炉を850℃の温度に加熱することにより、Al基板の両面にCu板を接合した。
【0046】
次いで、Al基板の表面及び裏面に実施例1と同様の回路パターンを形成した。
【0047】
次いで、回路パターンとAl基板の接合強度を評価した結果、その接合強度は20kgf/cm以上であった。この際の評価方法は、実施例1と同様である。
【0048】
(実施例3)
セラミックス基板1として実施例1と同様のAlN基板を用意した。
【0049】
次いで、このAlN基板の両面上に図3に示す低温溶射装置(コールドスプレー装置)によってろう材を形成した。詳細には、コールドスプレー装置のパウダーフィードユニット15に原料粉末を投入し、この原料粉末及び高温・高圧のNガスでAlN基板の表面にスプレーすることにより、AlN基板の表面に原料粉末を付着させた。その後、AlN基板を裏返して、AlN基板の裏面に同様の方法で原料粉末を付着させた。このようにしてAlN基板の両面に厚さ30μmのろう材を形成した。ろう材を形成するためのスプレー時間は1秒である。
【0050】
なお、従来技術のようなろう材作製工程はない。
【0051】
前記原料粉末は、90mass%のAl粉末、10mass%のSi粉末を混合した混合粉末であり、原料粉末の平均粒径は25μmである。また、原料粉末は、400℃まで加熱され750m/sの速度で噴射される前記Nガスによって、AlN基板にスプレーされた。
【0052】
次いで、AlN基板の表面に厚さ0.3mmのAl板を配置し、AlN基板の裏面に厚さ0.3mmのAl板を配置した。
【0053】
次いで、AlN基板を真空炉に挿入し、真空炉を630℃の温度に加熱することにより、AlN基板の両面にAl板を接合した。
【0054】
次いで、AlN基板を真空炉中から取り出し、Al板の表面に所望の回路パターンのレジストを塗布し、このレジストをマスクとしてAl板とろう材を塩化鉄を含む水溶液でエッチングすることにより、AlN基板の表面及び裏面に回路パターンを形成し、レジストを除去した。
【0055】
次いで、回路パターンとAlN基板の接合強度を評価した結果、その接合強度は8kgf/cm以上であった。この際の評価方法は、実施例1と同様である。
【0056】
(比較例1)
セラミックス基板1として実施例1と同様のAlN基板を用意した。
【0057】
次いで、実施例1,2と同様の原料粉末に、アクリル系のビヒクルを加え、乳鉢、3本ロールミルで混錬し、ペースト状のろう材を作製した。この時のろう材製造時間は、約1時間であった。
【0058】
次いで、このろう材をAlN基板の両面にスクリーン印刷で配置(塗布)した。この際の塗布時間は約10秒であり、ろう材の厚さは20μmである。
【0059】
次いで、実施例1,2と同様に、AlN基板の表面に厚さ0.3mmのCu板を配置し、AlN基板の裏面に厚さ0.15mmのCu板を配置し、その後、50℃の温度で60分間乾燥させ、ビヒクル中の有機成分(例えば溶剤)等の一部を除去(蒸発)した。
【0060】
次いで、実施例1,2と同様に、AlN基板を真空炉に挿入し、真空炉を850℃の温度に加熱することにより、AlN基板の両面にCu板を接合する。この際、接合の前に、前記ビヒクル成分を分解させるために500℃で60分間保持する脱脂を行った。
【0061】
次いで、AlN基板を真空炉中から取り出し、Cu板の表面に所望の回路パターンのレジストを塗布し、このレジストをマスクとしてCu板を実施例1と同じ液でエッチングすることにより、AlN基板の表面及び裏面に回路パターンを形成し、レジストを除去した。さらに、実施例1と同様の方法で不要なろう材を除去した。
【0062】
次いで、回路パターンとAlN基板の接合強度を評価した結果、その接合強度は20kgf/cm以上であった。この際の評価方法は、実施例1と同様である。
(比較例2)
セラミックス基板1として実施例1と同様のAlN基板を用意した。
【0063】
次いで、実施例3と同様の原料粉末に、アクリル系のビヒクルを加え、乳鉢、3本ロールミルで混錬し、ペースト状のろう材を作製した。
【0064】
次いで、このろう材をAlN基板の両面にスクリーン印刷で配置(塗布)した。この際のろう材の厚さは20μmである。
【0065】
次いで、実施例3と同様に、AlN基板の表面に厚さ0.3mmのAl板を配置し、AlN基板の裏面に厚さ0.3mmのAl板を配置し、その後、50℃の温度で60分間乾燥させ、ビヒクル中の有機成分(例えば溶剤)等の一部を除去(蒸発)した。
【0066】
次いで、AlN基板を真空炉に挿入し、真空炉を630℃の温度に加熱することにより、AlN基板の両面にAl板を接合した。この際、接合の前に、前記ビヒクル成分を分解させるために500℃で60分間保持する脱脂を行った。
【0067】
次いで、AlN基板を真空炉中から取り出し、Al板の表面に所望の回路パターンのレジストを塗布し、このレジストをマスクとしてAl板を実施例3と同様にエッチングすることにより、AlN基板の表面及び裏面に回路パターンを形成し、レジストを除去した。
【0068】
次いで、回路パターンとAlN基板の接合強度を評価した結果、その接合強度は2kgf/cm以上であった。この際の評価方法は、実施例1と同様である。
【0069】
上記実施例1〜3によれば、コールドスプレー法によりろう材をセラミックス基板上に形成するため、比較例1,2に比べてろう材を容易に形成することができる。
【0070】
具体的には、実施例1〜3では、比較例1,2のようにろう材をペーストとする必要がなく、原料粉末のままでろう材を形成することができる。このため、比較例1,2のようなろう材の作製工程がなくなり、コスト及び時間を大幅に低減できる。また、ろう材成分である金属粉とビヒクルとの相性(ペースト化のしやすさ、ペーストの印刷のしやすさなど)の心配も不要となる。
【0071】
また、実施例1〜3では、コールドスプレー法によりろう材を形成するため、比較例1,2に比べてろう材の形成スピードを速くすることができる。詳細には、コールドスプレー法では厚さ30μmのろう材を1秒で形成することができるのに対し、スクリーン印刷では厚さ20μmのろう材を形成するのに10秒必要となる。
【0072】
また、実施例1〜3のコールドスプレー法ではろう材の組成を容易に変更することができる。また、コールドスプレー法では、溶射などと比較して、ろう材の成分が酸化しにくいという利点もある。
【0073】
また、実施例1〜3のコールドスプレー法では、セラミックス基板の表面のうねりや粗さにろう材を追従させることが容易であるため、ろう材の接合欠陥(ボイド)を低減させる効果もある。
【0074】
また、実施例1〜3のコールドスプレー法では、比較例1,2のように、接合時にろう材の脱脂・脱バインダー工程(50℃×60分の乾燥工程)、ビヒクルの分解時間(60分)が不要となり、ろう材形成工程の時間を短縮できるとともに、ろう材の品質を安定させることができる。
【0075】
また、実施例3では、コールドスプレー法によるアンカー効果により、混合粉末をセラミックス基板に確実に固着することができ、比較例2に比べて接合強度を向上させることができる。その他、実施例1,2においても、例えば比較例1と遜色のない、充分な接合強度を得ることができる。
【0076】
尚、本発明は上述した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【符号の説明】
【0077】
1 セラミックス基板
2 ろう材
3 金属板
3a 回路パターン
3b 金属板パターン
4 レジスト
10 ガス供給部
11 低温溶射装置
12 主配管
13 ガスヒーター部
14 枝配管
15 粉体供給部
16 粉末投入管
17 スプレーノズル
18 混合粉末及び作動ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板上にコールドスプレー法によりろう材を形成する工程と、
前記ろう材の上に金属板を配置する工程と、
前記金属板、前記ろう材及び前記セラミックス基板を加熱することにより、前記セラミックス基板に前記金属板を接合する工程と、
を具備することを特徴とする金属セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、前記コールドスプレー法によりろう材を形成する工程は、原料粉末を混合した混合粉末及び該混合粉末の融点以下に加温された作動ガスを前記セラミックス基板上に吹き付ける工程であることを特徴とする金属セラミックス接合基板の製造方法。
【請求項3】
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板上にろう材によって接合された金属板と、
を具備し、
前記ろう材は、コールドスプレー法により形成されていることを特徴とする金属セラミックス接合基板。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate