説明

金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含有する感光性組成物

【課題】金属ナノ粒子が有する大きな非線形光学効果を利用した回折格子を有する非線形光学薄膜素子を提供する。
【解決手段】(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物並びに該感光性組成物を用いて得られる硬化物、光学薄膜及び回折格子又はホログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子が有する3次非線形光学効果を利用した非線形光学素子およびその製造方法に関する。より詳細には、金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物、並びに該組成物を用いた非線形光学薄膜及び非線形回折格子などの非線形光学素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
数nm乃至数十nm程度の粒径を有する金属ナノ粒子は、バルク金属とは異なる種々の物理的、化学的特性を示すことが知られている。
これまでに、金属ナノ粒子をガラスや結晶、ポリマー等の光学的に透明なマトリクス中に分散させることにより、3次の非線形光学特性を発現させた種々の材料が報告されている。
【0003】
例えば金属超微粒子をポリマーマトリクスに添加することにより高屈折率化(特許文献1参照)や高速光学応答(特許文献2参照)を実現した複合材料や、金属超微粒子のプラズモン吸収を利用した金属超微粒子含有薄膜付き基板を用いた着色フィルター(特許文献3参照)などが提案されている。
また、金属ナノ粒子の表面プラズモン共鳴周波数付近での局所電場の増強に起因する3次の光非線形性の増大効果を利用して、金、銀、銅などの金属ナノ粒子を無機材料マトリックス中に分散し、超高速光スイッチなどの純光学型デバイス応用を目指した報告がなされている(非特許文献1)。
【0004】
これら材料において、金属ナノ粒子は、マトリクス中に一様に分散しているか、又は、スパッタ法やパルスレーザ蒸着法により薄膜状(単層)の形態にある。しかしながら、金属ナノ粒子などの非線形光学効果の大きな物質を三次元空間で周期的に配列させた回折格子状の構造は、これまでには報告されていない。
なお、光スイッチ若しくは光変調器デバイス向けの非線形光学応答を示すポリマーに非線形効果を増強する目的で金属ナノ粒子を分散させた複合材料(特許文献4)が提案されているが、これはポリマー中に一様に分散させたものであって、金属ナノ粒子の回折格子は作製されていない。
【0005】
一方、石英基板上に二次元周期配列させた単一層の金ナノ微粒子アレイにおける非線形光学効果の報告がなされている(非特許文献2)。この二次元周期配列構造を作成するために、ナノ球リソグラフィー法と呼ばれる方法を用いている。すなわち、直径700nmのポリスチレン球を石英基板上に自己配列させて単層膜を形成し、その上からポリスチレン粒子間の隙間へ金ナノ微粒子ゾルを滴下することで、単一層の金ナノ微粒子二次元アレイを実現している。
【0006】
このようなリソグラフィー法を必要としない簡便な一段階の回折格子の作成方法として、重合性化合物、光重合開始剤、無機微粒子からなる感光性組成物を干渉露光により屈折率分布を形成し体積ホログラムを記録する方法(特許文献5参照)や、重合性化合物、光重合開始剤、ハイパーブランチポリマー等の有機微粒子からなる感光性組成物を干渉露光により体積ホログラムを記録する方法(特許文献6参照)の報告がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−327836号公報
【特許文献2】特開2000−250080号公報
【特許文献3】特開平8−292309号公報
【特許文献4】特開平2−8822号公報
【特許文献5】特許第3965618号明細書
【特許文献6】国際公開第2006/101003号パンフレット
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Optics Letters 27, 1043 (2002)
【非特許文献2】Applied Surface Science 253,4673(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述の金ナノ微粒子二次元アレイは、煩雑な工程が必要であり、しかも、高回折効率のために必要とされる数10ミクロン以上の厚みを有する格子構造を形成することは困難である。そして、金属ナノ粒子を三次元空間で周期的に配列させた回折格子状の構造に関する報告はこれまでになされていない。
【0010】
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を重合性化合物中に均一に分散させた感光性組成物、並びに該組成物を用いることにより、金属ナノ粒子が有する大きな非線形光学効果を利用した硬化物、非線形光学薄膜、非線形回折格子及び非線形光学効果を有するホログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、官能基として、N,N−ジアルキルジチオカルバメート基を分子末端に有する分岐状及び/または線状高分子が、金属ナノ粒子と安定な複合体を形成することにより、該複合体の重合性化合物中への均一な分散を可能とし、そしてこれらを含む感光性組成物を干渉露光すると、金属ナノ粒子が周期的に配列し、屈折率の周期的な空間変調(屈折率変調)を有する回折格子又はホログラムを一段階で作成でき、そしてこの回折格子又はホログラムが入射光強度に依存した回折効率(=1次のブラッグ回折光強度/入射光強度)の特性をもつ、所謂、非線形ブラッグ回折特性を有することを見いだし、本発明を完成させた。
なお、ここで非線形ブラッグ回折とは、物質に光を照射した際、その物質の吸収係数や屈折率などの光学特性が光の強度に応じて変化(所謂、非線形光学効果)する現象を意味する。
【0012】
即ち、本発明は、第1観点として、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物。
第2観点として、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体含む非線形光学素子作成用の感光性組成物。
第3観点として、前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が、500乃至5000000の重量平均分子量を有しかつジチオカルバメート基を有する分岐状及び/又は線状高分子が、金属ナノ粒子に付着し又は配位して形成されてなる複合体である、第1観点又は第2観点記載の感光性組成物。
第4観点として、前記金属ナノ粒子が、金、銀、白金及び銅よりなる群より選択される少なくとも1種のナノ粒子である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第5観点として、前記金属ナノ粒子の平均粒径が1nm乃至10nmである、第1観点
乃至第4観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第6観点として、前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の平均粒径が3nm乃至100nmである、第1観点乃至第5観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第7観点として、前記感光性組成物を反応条件下においたとき、生成した前記(a)重合性化合物の重合体中に前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が粒子形態で分散しているものとなる、第1観点乃至第6観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第8観点として、前記(a)重合性化合物の重合体と(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の合計体積に占める(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の体積割合が、3体積%乃至60体積%である、第7観点記載の感光性組成物。
第9観点として、前記ジチオカルバメート基含有高分子が式(1):
【0013】
【化1】

【0014】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。A1は式(2)または式(3):
【0015】
【化2】

【0016】
(式中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞ
れ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。)で表される分岐状高分子である、第1観点乃至第8観点のうちいすれか一項に記載の感光性組成物。
第10観点として、前記ジチオカルバメート基含有高分子が式(4):
【0017】
【化3】

【0018】
(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。A1は式(5)または式(6):
【0019】
【化4】

【0020】
(式中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す
。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。)で表される線状高分子である第1観点乃至第8観点のうちいすれか一項に記載の感光性組成物。
第11観点として、前記(a)重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第12観点として、前記(a)重合性化合物が、カチオン重合性の部位を有する化合物であり、前記(b)光重合開始剤が光酸発生剤である、第1観点乃至第10観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
第13観点として、第1観点乃至第12観点記載の感光性組成物を露光して得られる非線形光学効果を有する硬化物。
第14観点として、第1観点乃至第12観点記載の感光性組成物からなる薄膜をパターン露光し、該組成物の構成成分の空間分布が露光前のものとは変化している非線形光学薄膜。
第15観点として、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形回折格子。
第16観点として、第1観点乃至第12観点のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形光学効果を有するホログラム。
【発明の効果】
【0021】
本発明の感光性組成物においては、そこに含まれる金属ナノ粒子が、ジチオカルバメート基含有高分子化合物と複合体を形成することにより、高分子マトリクス中で凝集することなく、一次粒子のまま分散することができる。
そして、本発明の感光性組成物にあっては、干渉露光などの光のパターンを用いて重合性化合物(感光性モノマー)を重合させることにより、金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が空間的な密度分布をもって存在する構造を有する回折格子又はホログラムを任意且つ容易に作成することができる。
【0022】
さらに、本発明により得られる回折格子又はホログラムは、屈折率又は吸収係数が周期的に空間変調された回折格子又はホログラムであり、前述の非線形ブラッグ回折特性を有することから、入射光自身あるいは外部制御光などの光によるブラッグ回折光あるいは透過光の制御が可能となるという特徴を有する。
そして、このような非線形光学特性を持つ(透過型又は反射型)回折格子又はホログラムは、光リミッター素子や超高速光スイッチング、光相安定(多安定)性、連続光から光パルス列や不規則パルス光の発生など、入出力に光のみを使う全光学型の光機能素子等の用途において使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、参考例3で得られた金ナノ粒子−HPS複合体のTHF溶液のUV−Visスペクトルを示す図である。
【図2】図2は、参考例3−2で得られた金ナノ粒子−HPS複合体のTHF溶液のUV−Visスペクトルを示す図である。
【図3】図3は、参考例3で得られた金ナノ粒子のSTEM像を示す図である。
【図4】図4は、図3の矢印で示された領域の、エネルギー分散型X線分析装置による元素分析結果を示す図である。
【図5】図5は、体積ホログラム記録媒体に対する二光束干渉露光を行う装置の概念図である。
【図6】図6は、実施例1における体積ホログラム記録媒体の回折効率の露光時間変化を表すグラフである。
【図7】図7は、実施例2における体積ホログラム記録媒体の回折効率の露光時間変化を表すグラフである。
【図8】図8は、実施例3における体積ホログラム記録媒体中の金ナノ粒子−HPS複合体の移動を示す透過顕微鏡写真である。
【図9】図9は、体積ホログラム記録媒体に対する非線形ブラッグ回折の評価を行う装置の概念図である。
【図10】図10は、実施例4における体積ホログラム記録媒体の回折効率の入射光強度依存性を表すグラフである。
【図11】図11は、実施例5における体積ホログラム記録媒体の回折効率の入射光強度依存性を表すグラフである。
【図12】図12は、測定試料に対するzスキャン法による非線形吸収および非線形屈折率を測定するための装置の概念図である。
【図13】図13は、zスキャン法によるオープンアパーチャー検出の場合の透過率変化△T0の設置位置依存性を表すグラフである。z0は集光ビームの光軸方向の深度を表す定数である。
【図14】図14は、zスキャン法によるクローズトアパーチャー検出の場合の透過率変化△T0の設置位置依存性を表すグラフである。z0は集光ビームの光軸方向の深度を表す定数である。
【図15】図15は、実施例6における測定試料のオープンアパーチャー検出の場合の透過率T0の設置位置依存性を表すグラフである。実線はzスキャン法の理論式によるフィッティング曲線である。
【図16】図16は、実施例6における測定試料のクローズトアパーチャー検出の場 合の透過率変化△T0の設置位置依存性を表すグラフである。実線はzスキャン法の理論式によるフィッティング曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の感光性組成物は、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む。以下、各成分について詳細に説明する。
【0025】
[(a)重合性化合物]
本発明における重合性化合物は、後述する(b)光重合開始剤の作用によって重合する重合性の部位を分子内に一個以上、好ましくは一個乃至六個有する化合物であれば特に制限はない。
前記重合性の部位を有する化合物としては、ラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合を有する化合物、あるいは、カチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、ビニルチオエーテル構造、エポキシ環やオキセタン環等の環状エーテル構造等を有する化合物を挙げることができる。
なお、本発明における「重合性化合物」の意味するところは、所謂高分子物質でない化合物である。従って、狭義の単量体化合物だけでなく、二量体、三量体、オリゴマーや反応性高分子をも包含するものである。
以下、重合性化合物の具体例を挙げるが、これら化合物に限定されるものではない。
【0026】
上記のラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合を有する化合物としては、例えば、不飽和カルボン酸、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物、脂環族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、脂環族ポリヒドロキシ化合物及び不飽和カルボン酸とのエステル化合物、脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物及び不飽和カルボン酸と多価カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステル化合物、脂肪族ポリアミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミド化合物等が挙げられる。
この中でも好ましいものとして、不飽和カルボン酸、また、上記不飽和カルボン酸との
各種エステル化合物として、炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基を3乃至20個有するエステル化合物が挙げられる。ここで炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基とはすなわち、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基等であり、これらの基はヒドロキシ基及びハロゲン等で置換されていても良い。
【0027】
前記不飽和カルボン酸としては、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸等が挙げられる。また、これらのアクリル酸エステル化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、及びマレエートに代えたマレイン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0028】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物のうち、炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基を3乃至20個有する重合性化合物としては、エトキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(平均エトキシ付加量としては2.4モル、4モル等が挙げられる)、プロポキシ変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート(平均プロポキシ付加量としては4モル、10モル等が挙げられる)、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エトキシ変性トリメチロールプロパントリアクリレート(平均エトキシ付加量としては3モル、6モル等が挙げられる)、プロピレングリコールジグリシジルエーテルのアクリル酸付加物等が挙げられる。また、その他の脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物としては、トリプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリブタンジオールジアクリレート等のアルキレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、グリセロールアクリレート等のアクリル酸エステル化合物も挙げることが出来る。また、これらのアクリル酸エステル化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、及びマレエートに代えたマレイン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0029】
前記脂環族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物のうち、炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基を3乃至20個有する重合性化合物としては、エトキシ変性水添ビスフェノールAジアクリレート(平均エトキシ付加量は4モルが挙げられる。)等が挙げられる。その他の脂環族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート等が挙げられる。また、これらのアクリル酸エステル化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、及びマレエートに代えたマレイン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0030】
前記芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物のうち、炭素原子数2乃至6のオキシアルキレン基を3乃至20個有する重合性化合物としては、エトキシ変性ビスフェノールAジアクリレート(平均エトキシ付加量としては3モル、4モル、10モル、20モル等が挙げられる)、プロポキシ変性ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ−プロポキシ変性ビスフェノールAジアクリレート(平均エトキシ、プロポキシ付加量としては18モル等が挙げられる)、エトキシ変性ビスフェノールFジアクリレート(平均エトキシ付加量としては4モル等が挙げられる)、プロポキシ変性ビスフェ
ノールFジアクリレート、エトキシ−プロポキシ変性ビスフェノールFジアクリレート等が挙げられる。その他の芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル化合物としては、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールFジアクリレート、ヒドロキノンジアクリレート、ヒドロキノンジメタクリレート、レゾルシンジアクリレート、レゾルシンジメタクリレート、p−ビス(β−メタクリロイルオキシエチルチオ)キシリレン、及びピロガロールトリアクリレート等及びこれらのエトキシ、プロポキシ変性物が挙げられる。また、これらのアクリル酸エステル化合物のアクリレート部分をメタクリレートに代えたメタクリル酸エステル化合物、同様にイタコネートに代えたイタコン酸エステル化合物、クロトネートに代えたクロトン酸エステル化合物、及びマレエートに代えたマレイン酸エステル化合物等も挙げられる。
【0031】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物及び芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸及び多価カルボン酸とのエステル化反応により得られるエステル化合物としては必ずしも単一物では無いが代表的な具体例を挙げれば、アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールの縮合物、アクリル酸、安息香酸及びトリメチロールプロパンの縮合物、アクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールの縮合物、アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンの縮合物等が挙げられる。
【0032】
本発明に用いられるエチレン性不飽和結合を有する化合物のその他の例としては、多価イソシアネートとヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステルとの反応によって得ることができるウレタン化合物や、多価エポキシ化合物とヒドロキシアルキル不飽和カルボン酸エステルとの反応によって得ることができる化合物や、リン酸基を有する多価アクリレート及びメタクリレートを挙げることができる。さらに、例えば、エチレン−ビスアクリルアミド等のアクリルアミド化合物、フタル酸ジアリル等のアリルエステル化合物、及びジビニルフタレート等のビニル基含有化合物等が有用である。
本発明においては、エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、特にアクリル酸エステル化合物またはメタクリル酸エステル化合物が特に好ましい。
これらのエチレン性不飽和結合を有する化合物は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
上記カチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造を有する重合性化合物としては、例えば、ビニル−2−クロロエチルエーテル、ビニル−ノルマルブチル−エーテル、トリエチレン−グリコールジビニルエーテル、1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、及びビニルグリシジルエーテル等を挙げることができる。
【0034】
上記エポキシ環を有する重合性化合物としては、例えば、ジグリセロールポリジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,4−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)シクロヘキサン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、1,6−へキサンジオールジグリシジルエーテル、ポリエチレン−グリコールジグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−ターシャリーブチル−フェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテル、o−フタル酸ジグリシジルエーテル、ジブロモフェニルグリシジルエーテル、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、1,6−ジメチロールパーフルオロヘキサンジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシパーフルオロイソプロピル)ジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルオキシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−3’,4’−エポキシ
−1,3−ジオキサン−5−スピロシクロヘキサン、1,2−エチレン−ジオキシ−ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメタン)、4’,5’−エポキシ−2’−メチルシクロヘキシルメチル−4,5−エポキシ−2−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、エチレン−グリコール−ビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ビス−(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、及びジ−2,3−エポキシシクロペンチルエーテル等を挙げることができる。
【0035】
上記オキセタン環を有する重合性化合物としては、例えば、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、3,3−ジエチルオキセタン、及び3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等のオキセタン環を一つ有する化合物、1,4−ビス{[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシ]メチル}ベンゼン、ジ(1−エチル(3−オキセタニル))メチルエーテル、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等のオキセタン環を二つ以上有する化合物を挙げることができる。
【0036】
これら重合性化合物は単独で用いても良いし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
[(b)光重合開始剤]
本発明における(b)光重合開始剤としては、後述するパターン露光によって前記(a)重合性化合物の重合を開始することができる機能を有する化合物であれば特に限定はない。
【0038】
前記(a)重合性化合物として、前記のラジカル重合性の部位であるエチレン性不飽和結合を有する化合物を使用する場合、光重合開始剤としてはパターン露光時に活性ラジカルを生成する光ラジカル重合開始剤が好ましい。
また、前記(a)重合性化合物として前記のカチオン重合性の部位であるビニルエーテル構造、エポキシ環またはオキセタン環等を有する化合物を使用する場合、光重合開始剤としては干渉露光時にルイス酸あるいはブレンステッド酸を生成する光酸発生剤が好ましい。
【0039】
前記光ラジカル重合開始剤としては、パターン露光時に活性ラジカルを生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ベンゾイン系化合物、α−アミノアルキルフェノン系化合物、チオキサントン系化合物、アゾ系化合物、アジド系化合物、ジアゾ系化合物、o−キノンジアジド系化合物、アシルホスフィンオキサイド系化合物、オキシムエステル系化合物、有機過酸化物、ベンゾフェノン類、ビスクマリン、ビスイミダゾール化合物、チタノセン化合物、チオール化合物、ハロゲン化炭化水素化合物、トリクロロメチルトリアジン化合物、あるいはヨードニウム塩化合物、スルホニウム塩化合物などのオニウム塩化合物等が用いられる。これら化合物のうち、特にチタノセン化合物が好ましい。光ラジカル重合開始剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0040】
前記チタノセン化合物は、特に限定はされないが、具体的には、ジシクロペンタジエニル−チタン−ジクロリド、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビスフェニル、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)、ジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,4−ジフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−チタン−ビス(2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペ
ンタジエニル)−チタン−ビス(2,3,5,6−テトラフルオロフェニル)、ビス(メチルシクロペンタジエニル)−チタン−ビス(2,6−ジフルオロフェニル)、及びジシクロペンタジエニル−チタン−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)等を挙げることができる。
【0041】
ベンゾイン系化合物としては、ベンゾインエチルエーテル、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1オン等を挙げることができる。
【0042】
α−アミノアルキルフェノン系化合物としては、2−メチル−1−(4−(メチルチオ)フェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1等を挙げることができる。
【0043】
チオキサントン系化合物としては、チオキサントン、1−クロロチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシ−チオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン等を挙げることができる。
【0044】
アシルホスフィンオキサイド系化合物としては、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0045】
オキシムエステル系化合物としては、1,2−オクタンジオン−1−(4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム))、エタノン−1−(9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル)−1−(O−アセチルオキシム)等を挙げることが出来る。
【0046】
アジド系化合物としては、p−アジドベンズアルデヒド、p−アジドアセトフェノン、p−アジド安息香酸、p−アジドベンザルアセトフェノン、4,4’−ジアジドカルコン、4,4’−ジアジドジフェニルスルフィド、2,6−ビス(4’−アジドベンザル)−4−メチルシクロヘキサノン、及びα−シアノ−4,4’−ジベンゾスチルベン等を挙げることができる。
【0047】
アゾ系化合物としては、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−5−スルホン酸エステル、及び1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0048】
ジアゾ系化合物としては、1−ジアゾ−2,5−ジエトキシ−4−p−トリルメルカプトベンゼンボロフルオリド、1−ジアゾ−4−N,N−ジメチルアミノベンゼンクロリド、及び1−ジアゾ−4−N,N−ジエチルアミノベンゼンボロフルオリド等を挙げることができる。
【0049】
o−キノンジアジド系化合物としては、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホン酸ナトリウム塩、1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−5−スルホン酸エステル、及び1,2−ナフトキノン−ジアジド(2)−4−スルホニルクロリド等を挙げることができる。
【0050】
ベンゾフェノン類としては、例えばベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、1,4−ジベンゾイルベンゼン、10−ブチル−2−クロロアクリドン、
2−ベンゾイルナフタレン、4−ベンゾイルビフェニル、4−ベンゾイルジフェニルエーテル、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン等を挙げることができる。
【0051】
ビスクマリンとしては、例えば3,3’−カルボニルビス(7−(ジエチルアミノ)−2H−クロメン−2−オン)等が挙げられ、これはみどり化学株式会社でBC(CAS[63226−13−1])として市販されている。
【0052】
ビスイミダゾール化合物としては、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラキス(3,4,5−トリメトキシフェニル)1,2’−ビスイミダゾール、及び2,2’−ビス(o−クロロフェニル)4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビスイミダゾール等を挙げることができる。
【0053】
前記光酸発生剤としては、パターン露光時にルイス酸あるいはブレンステッド酸を生成する化合物であれば特に限定されないが、例えば、ジアリルヨードニウム塩化合物、トリアリールスルホン酸塩化合物、ジアゾニウム塩化合物などのオニウム塩化合物、及び鉄アレーン錯体化合物等を挙げることができる。光酸発生剤は単独で用いてもよいし、必要に応じて二種以上を混合して用いてもよい。
【0054】
ジアリルヨードニウム塩化合物としては、例えば、ジフェニルヨードニウム、4,4’−ジクロロジフェニルヨードニウム、4,4’−ジメトキシジフェニルヨードニウム、4,4’−ジ−ターシャリーブチルジフェニルヨードニウム、(4−メチルフェニル)[4
−(2−メチルプロピル)フェニル]ヨードニウム、及び3,3'−ジニトロフェニルヨードニウム等のヨードニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、及びヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。
【0055】
トリアリールスルホン酸塩化合物としては、例えば、トリフェニルスルホニウム、4−ターシャリーブチル−トリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム、トリス(4−メトキシフェニル)スルホニウム、及び4−チオフェニルトリフェニルスルホニウム等のスルホニウムのテトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアルセネート、及びヘキサフルオロアンチモネート等を挙げることができる。
【0056】
鉄アレーン錯体化合物としては、ビスシクロペンタジエニル−(η6−イソプロピルベンゼン)−鉄(II)ヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。
【0057】
[(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体]
本発明に用いられる金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、ジチオカルバメート基含有高分子化合物が、その有するジチオカルバメート基の作用により、金属ナノ粒子に接触又は近接した状態で両者が共存し、粒子状の形態を為すものであり、言い換えると、ジチオカルバメート基含有高分子化合物のジチオカルバメート基が金属ナノ粒子に付着又は配位した構造を有する複合体であると表現される。
従って、本発明において「金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体」には、上述のように金属ナノ粒子と高分子化合物が結合して一つの複合体を形成しているものだけでなく、金属ナノ粒子とジチオカルバメート基含有高分子化合物が結合部分を形成することなく、夫々独立して存在しているものも含まれていてもよい。
該複合体は、ジチオカルバメート基を有する高分子を溶解した溶液中で、金属塩の水溶液及び還元剤を添加して、金属イオンを還元することによって得られる。
【0058】
前記金属ナノ粒子として用いられる金属には特に限定されず、例えば、金、銀、白金、
銅、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム等を挙げることができる。なかでも、金、銀、白金及び銅が好ましい。
金属塩としては、塩化金酸、硝酸銀、硫酸銅、硝酸銅、塩化第一白金、塩化パラジウム、酢酸パラジウム、硝酸パラジウム、塩化ロジウム、酢酸ロジウム、塩化ルテニウム、酢酸ルテニウム、塩化イリジウム、酢酸イリジウム等が挙げられる。
【0059】
本発明において用いられる還元剤としては、通常使用される各種のものを使用することができ、例えば、従来、還元剤として使用されている水素化ホウ素ナトリウム等のアルカリ金属水素化ホウ素塩、ヒドラジン化合物、クエン酸又はその塩、コハク酸又はその塩、アスコルビン酸又はその塩等を使用することができる。
上記還元剤の添加量は、上記金属イオン1molに対して1乃至50molが好ましい。1mol未満であると、還元が充分に行われず、50molを超えると、対凝集安定性が低下する。より好ましくは、1.5乃至10molである。
【0060】
本発明において、金属ナノ粒子と複合体を形成するジチオカルバメート基を有する(分岐状)高分子としては、例えば、上記式(1)で示すものが挙げられる。式(1)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原子数
1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、また、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。また、A1は式(2)又は式(3)で表される構造を表す。式(2)及び式(3
)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至30の
直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
また、本発明において、金属ナノ粒子と複合体を形成するジチオカルバメート基を有する(線状)高分子としては、例えば、上記式(4)で示すものが挙げられる。式(4)において、R1は水素原子又はメチル基を表す。R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基又は炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、また、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。また、A1は式(5)又は式(6)で表される構造を表す。式(5)及び式
(6)中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいてもよい炭素原子数1乃至3
0の直鎖状、分岐状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3及びY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1ないし20のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。
【0061】
アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、ノルマルプロピレン基、ノルマルブチレン基、ノルマルヘキシレン基等の直鎖状アルキレン基、イソプロピレン基、イソブチレン基、2−メチルプロピレン基等の分岐状アルキレン基が挙げられる。また環状アルキレン基としては、炭素数3乃至30の単環式、多環式、架橋環式の環状構造の脂環式脂肪族基が挙げられる。具体的には、炭素数4以上のモノシクロ、ビシクロ、トリシクロ、テトラシクロ、ペンタシクロ構造等を有する基を挙げることができる。炭素原子数1乃至20のアルキル基としては、メチル基、エチル基、イソプロピル基、シクロヘキシル基及びノルマルペンチル基等が挙げられる。炭素原子数1乃至20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、シクロヘキシルオキシ基及びノルマルペンチルオキシ基等が挙げられる。ハロゲン基としてはフルオロ基、クロロ基、ブロモ基及びヨード基である。Y1、Y2、Y3及びY4としては、水素原子又は炭素原子数1乃至
20のアルキル基が好ましい。
【0062】
なお、本発明で用いられるジチオカルバメート基を有する高分子は、ゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwが500乃至5000000であり、好ましくは1000乃至1000000であり、より好ましくは2000乃至500000であり、最も好ましくは3000乃至200000である。また、分散度Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)としては1.0乃至7.0であり、又は1.1乃至6.0であり、又は1.2乃至5.0である。
【0063】
前記複合体の形成にあたり、金属塩とジチオカルバメート基を有する高分子との割合は、金属塩100質量部に対してジチオカルバメート基を有する高分子50乃至2000質量部が好ましい。50質量部未満であると、上記金属ナノ粒子の分散性が不充分であり、2000質量部を超えると、金属ナノ粒子に付着又は配位していないジチオカルバメート基を有する高分子の含有量が多くなり、金属ナノ粒子の特性を発現する物性等に不具合が生じやすくなる。より好ましくは、100乃至1000質量部である。
【0064】
金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の平均粒径は3乃至100nmが好ましい。理由としては、複合体の平均粒径が100nmを超えると、散乱により薄膜の透過率が低下するためである。平均粒径としては、75nm以下が更に好ましく、3乃至30nmが特に好ましい。
また、金属ナノ粒子の平均粒子径は1乃至10nmが好ましく、さらには1乃至5nmが好ましい。
【0065】
本発明の感光性組成物を重合させると、重合した前記(a)重合性化合物中に、(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、粒子形態で分散している状態にある。
【0066】
そして、本発明の感光性組成物の回折効率や非線形効果は、該組成物の構成成分の体積比によって決定されるため、重合した感光性組成物の全体積に対する(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の体積比が大きいほど、回折効率や非線形効果が大きくなる。但し、組成物中に分散できる金属ナノ粒子の量には限界があり、あまり多いと分散が困難となる。これらのことを踏まえ、感光性組成物を重合させたとき、重合した前記(a)重合性化合物と(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバート基含有高分子複合体の合計体積に占める前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の割合が、3体積%乃至60体積%であることが好ましく、10体積%乃至45体積%が最も好ましい。
【0067】
[本発明の感光性組成物を用いた硬化物、薄膜、回折格子及びホログラム]
本発明の感光性組成物を用いて薄膜又は回折格子等の光学素子を作るには、(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物に、必要に応じて、増感剤及びバインダ樹脂とともに混合し、このまま無溶剤で支持体上に塗布するか、これらの混合物に溶剤または添加剤を加えて混合してもよく、これを支持体上に塗布、乾燥して感光層を形成する。感光層の厚さとしては、例えば1乃至1000μmであり、または10乃至500μmであり、または15乃至200μmである。
続いて、感光層上に支持体、あるいは酸素遮断のための保護層を設けることもできる。
これら支持体や保護層は、本発明の感光性組成物で構成される感光層が露光重合することにより発現される非線形光学効果を利用するために、光を透過させる場合には透明な物質である必要がある。
【0068】
上記支持体としては、透明なガラス板、アクリル板、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルムなどが用いられる。透明な樹脂フィルムとして、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルムなどが用いられる。塗布方法としては、直接滴下する方法に加え、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、及びカーテン塗布等を用いることができる。
【0069】
上記保護層としては、酸素による感度低下や保存安定性の劣化等の悪影響を防止するための公知技術、例えば、水溶性ポリマー等を塗布してを用いることもできる。
【0070】
なお、支持体への塗布時に溶剤を用いる場合、使用成分に対して十分な溶解度を持ち、良好な塗膜性を与える溶媒であれば特に制限はないが、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のプロピレングリコール系溶剤、酢酸ブチル、酢酸アミル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ジエチルオキサレート、ピルビン酸エチル、エチル−2−ヒドロキシブチレートエチルアセトアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシプロピオン酸メチル等のエステル系溶剤、ブタノール、ヘプタノール、ヘキサノール、ジアセトンアルコール、フルフリルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドN−メチルピロリドン等の高極性溶剤、あるいはこれらの混合溶剤、さらには、これらに芳香族炭化水素を添加したもの等が挙げられる。溶剤使用の割合は、本実施形態の感光性組成物の総量に対して、通常、質量比で1乃至20倍程度の範囲である。
【0071】
本発明の感光性組成物を用いてパターンを有する回折格子又はホログラムを形成するには、前述の通り、まず、当該組成物を樹脂フィルムなどの適当な支持体上に塗布し、塗布膜を形成し、次いで、その塗布膜にパターン露光を行い、非線形光学薄膜を得る。
パターン露光の方法としては、パターンを形成することのできる露光方法であれば特に制限はなく、例えば適当なマスクを通して露光するフォトマスク露光及びフェーズマスク露光、又は干渉露光等の方法が挙げられるが、非線形回折格子又はホログラムを得るには干渉露光が好適である。干渉露光の光源としては、一般に干渉性の高いレーザー光であり、前記(b)光重合開始剤に高感度であればよく、例えばアルゴンイオンレーザー(458nm、488nm、514.5nm)、クリプトンイオンレーザー(647.1nm)、Nd:YAGレーザー(532nm)、Nd:YVO4レーザー(532nm)、In
GaNレーザー(405nm)、He−Cdレーザー(325nm、442nm)等が使用される。
【0072】
本発明の感光性組成物は(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含んでなる。
したがって、該感光性組成物を露光すると、高い屈折率や高速光学応答などの非線形光学効果を有する硬化物が得られる。
そして、例えば、マスクを通して露光が行われると、露光された部分において重合性化合物の重合反応が起こり重合体となる。その結果、露光部分において重合性化合物の化学ポテンシャルが減少し、それを補うように非露光部から露光部へ重合性化合物の移動が起こる。
一方、露光部では重合性化合物の減少とともに、光重合に関与しない金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の化学ポテンシャルが増加するため、それを抑える
ように金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体は、露光部から非露光部への移動をする。
こうした各成分の移動は、光重合が完了するまで本質的に継続する。結果として、金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の空間分布は固定され、露光部と非露光部での成分と密度差によってパターンが形成される。
すなわち、本発明の感光性組成物より形成されるパターンは、パターン露光によって感光性組成物中の各成分の相互拡散が起こった結果、生じた各成分の空間分布の差を利用して形成されたものである。
【実施例】
【0073】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0074】
<参考例1:N,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレンの合成>
2Lの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]120g、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]181g、アセトン1400gを仕込み、撹拌下、40℃で1時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、−20℃の冷凍庫内でトルエン相から目的物を再結晶させた。再結晶物を濾過、真空乾燥して、白色粉末の目的物206g(収率97%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面百値)は100%であった。融点56℃。
【0075】
<参考例2:ジチオカルバメート基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマー(HPS)の合成>
300mLの反応フラスコに、参考例1で調製したN,N−ジエチルジチオカルバミルメチルスチレン108g、トルエン72gを仕込み、撹拌して淡黄色透明溶液を調製した後、反応系内を窒素置換した。この溶液の真ん中から100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]を点灯し、内部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で12時間行なった。次にこの反応液をメタノール3000gに添加してポリマーを高粘度な塊状状態で再沈させた後、上澄み液をデカンテーションで除いた。さらにこのポリマーをテトラヒドロフラン300gに再溶解した後、この溶液をメタノール3000gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈させた。このスラリーを濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物48gを得た。
得られた目的物(HPS)のゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは20,900、分散度Mw/Mnは4.9であった。元素分析の結果は、炭素64.6%、水素7.4%、窒素5.0%、硫黄25.3%であった。熱重量分析より、5%重量減少温度は248℃であった。
【0076】
<参考例3:金ナノ粒子−HPS複合体の調製>(Lot.070828−2)
下記の式(7)で表される参考例2で合成したジチオカルバメート基を分子末端に有するスチレン系ハイパーブランチポリマー(HPS)0.5gをテトラヒドロフラン(THF)溶液200mLに溶解し、これに30mM塩化金酸水溶液6.7mLを加えた。次いで0.1M水素化ホウ素ナトリウム水溶液10mLを5分間程度かけて滴下した。滴下に伴って溶液は褐色へと変化した。30分間攪拌を行った後、THFを減圧により留去すると水に不溶の黒色の沈殿が析出した。これを濾過してイオン交換水で洗浄した後、THF20mlを加えて溶解し、メタノールにより再沈殿を行った。得られた粉末を回収し、乾燥を行った。
【0077】
【化5】

【0078】
得られた上記粉末(金ナノ粒子−HPS複合体)のTHF溶液のUV−Visスペクトルを図1に示す。
図1のUV−Visスペクトルにおいて、540nm付近に金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が観察されることから、金ナノ粒子−HPS複合体がnmオーダーのサイズで分散していることが確認された。
また、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により金ナノ粒子−HPS複合体中の金含有量を求めた結果、9.0質量%であった。この結果得られたHPSと金ナノ粒子からなる複合体において、金属核(金ナノ粒子)の平均粒径は3.7nmであった。
さらに、乾式密度計(Micromeritics社製、AccuPyc1330)より求められた金ナノ粒子−HPS複合体の密度は、1.5455(g/cm3)であった

【0079】
また得られた金ナノ粒子−HPS複合体を、走査型透過型電子顕微鏡(STEM:JEOL製 JEM2100F)により高角散乱環状暗視野法(HAADF)法を用いて、観察を行った。その結果を図3に示す。
さらに、図3中の矢印で示された領域をエネルギー分散型X線分析装置(EDX)により元素分析を行った結果を図4に示す。図4の分析結果より、コントラストの強い矢印で示された領域に金原子が多く含まれていることがわかった。また、コントラストの弱い領域で観測されているのは、HPSによるものであった。このことより、HPSと金ナノ粒子が複合体を形成していることが実証された。HPSのジチオカルバメート基が金ナノ粒子に付着又は配位することによって、複合体が形成していると考えられる。
【0080】
<参考例3−2:金ナノ粒子−HPS複合体の調製>(Lot.071029)
上記参考例3と同様の手順を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体を調製した。
得られた上記粉末(金ナノ粒子−HPS複合体)のTHF溶液のUV−Visスペクトルを図2に示す。
図2のUV−Visスペクトルにおいて、520nm付近に金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が観察されることから、金ナノ粒子−HPS複合体がnmオーダーのサイズで分散していることが確認された。
また、誘導結合プラズマ発光分析装置(ICP−AES)により金ナノ粒子−HPS複合体中の金含有量を求めた結果、5.3質量%であった。この結果得られたHPSと金ナノ粒子からなる複合体において、金属核(金ナノ粒子)の平均粒径は2.8nmであった

さらに、乾式密度計(Micromeritics社製、AccuPyc1330)より求められた金ナノ粒子−HPS複合体の密度は、1.2551(g/cm3)であった

【0081】
<参考例4:1,2−ビス(N,N−ジエチルジチオカルバミル)エタン(EDC2)の合成>
1000mLの反応フラスコに、1,2−ジクロロエタン、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]109g、アセトン400gを仕込み、撹拌下、40℃で18時間反応させた。反応後、析出した塩化ナトリウムを濾過して除き、その後エバポレーターで反応溶液からアセトンを留去させ、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエンに再溶解させ、トルエン/水系で分液後、トルエンを留去させて白色の粗結晶を得た。この粗結晶をトルエン180g用いて再結晶を行い、目的の白色結晶(EDC2)48g(収率75%)を得た。液体クロマトグラフィーによる純度(面百値)は99%であった。
【0082】
<参考例5:直鎖状ポリクロロメチルスチレン(LPS−Cl)の合成>
100mLの反応フラスコに、クロロメチルスチレン[セイミケミカル(株)製、CMS−14(商品名)]20g、トルエン20g、参考例4にて合成したEDC2 0.24gを仕込み、反応系内を窒素置換した。この溶液を100Wの高圧水銀灯[セン特殊光源(株)製、HL−100]から距離5cmの位置に固定し、外部照射による光重合反応を、撹拌下、室温で5時間行なった。この時の転化率は20%だった。トルエン60gをいれて希釈した後、この反応液を1000gのメタノールを用いて再沈精製を実施し、減圧濾過を行い、白色固体を得た。得られた固体をキシレン10gで再溶解し、メタノール1000gを用いて再沈精製を行い、減圧濾過、真空乾燥を実施して目的のLPS−Clを2.8g得た。得率14%。
【0083】
<参考例6:ジチオカルバメート基を側鎖に有する直鎖状ポリスチレン(LPS)の合成>
100mLの反応フラスコに、比較例5にて合成したLPS−Cl 2.0g、N,N−ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム3水和物[関東化学(株)製]4.0g、N−メチルプロパン(NMP)48gを仕込み、撹拌下、40℃で18時間反応させた。反応後、反応溶液からNMPを留去し、反応粗粉末を得た。この反応粗粉末をトルエン20gに再溶解し、トルエン/水で分液後、トルエンを留去して白色固体を得た。この白色固体をトルエン20g用いて溶解し、メタノール600gを用いて再沈精製を行い、減圧濾過、真空乾燥を実施して目的のLPSを3.2g得た。得率91%。
【0084】
得られたLPSのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは35,000、分散度Mw/Mnは2.2であった。絶対分子量を測定したところ重量平均分子量Mwは42,000であった。分岐の程度を示す指標として分岐度を絶対分子量Mw/相対分子量Mwと定義した。この時分岐度は1.20であった。
得られたLPSの粘度測定にあたり、LPS 0.6g、トルエン0.9gの均一溶液(40質量%トルエン溶液)を作成し、粘度計(東機産業(株)VISCOMETER TV−22 TV−L)で粘度を測定したところ、該粘度は測定温度20℃で95mPa・sであった。
【0085】
<参考例7:金ナノ粒子−LPS複合体の調製>
参考例3における式(7)で表されるスチレン系ハイパーブランチポリマー(HPS)の代わりに、下記の式(8)で表される直鎖状ポリスチレン(LPS)を用いたこと以外は参考例4と同様に複合体の調製を行った。得られた金ナノ粒子−LPS複合体のTHF
溶液のUV−Visスペクトルより、520nm付近に金ナノ粒子の表面プラズモン吸収が観察されることから、金ナノ粒子−LPS複合体がnmオーダーのサイズで分散していることが確認された。
【0086】
【化6】

【0087】
<参考例8:銀ナノ粒子−HPS複合体の調製>
参考例3における塩化金酸の代わりに、硝酸銀を用いたこと以外は参考例3と同様の手順を用いて複合体の調製を行った。
ICP−AESを用いて得られた銀ナノ粒子−HPS複合体の銀含有量を求めた結果、1.3質量%であった。また、この結果得られたHPSと銀ナノ粒子からなる複合体の金属核(銀ナノ粒子)の平均粒径は、2.3nmであった。
【0088】
<実施例1>
[感光性組成物1の調製]
参考例3(Lot.071029)で調製した金ナノ粒子−HPS複合体0.064gを、トルエン1.255gに溶解し、重合性化合物としてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート(新中村化学工業(株)製、製品名:NKエステル DCP)0.256gを加え均一に分散した後、光重合開始剤としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェ
ニル)チタニウム(チバジャパン(株)製、商品名:Irgacure784)0.0026gを加えて溶解し、感光性組成物1を調製した。
【0089】
[屈折率の測定]
波長589nmの光に対する、金ナノ粒子−HPS複合体の屈折率は1.68、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートから得られた重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率の差は0.15であった。
なお、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の屈折率の測定は、以下の手順で行った。まず、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートに対してIrgacure784を1質量%溶解させた組成物を調製した。この組成物を、スライドグラスの両端部にスペーサとして厚さ20μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼
ったスライドガラスの中央(スペーサに挟まれた領域)に滴下し、スライドグラスをかぶせ固定した。これに、波長532nmの連続光Nd:YVO4レーザーを、露光強度10
0mW/cm2で30分間一様露光して、フィルム形成した。得られたフィルムをスライ
ドグラスから剥離し、アッベ屈折計((株)アタゴ社製、DR−M4型、干渉フィルタ:589nm)を用いて屈折率を測定した。
【0090】
[密度の測定]
金ナノ粒子−HPS複合体の密度は1.5455g/cm3であり、感光性組成物1に
おける該複合体の体積は0.064/1.5455=0.0414cm3である。
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の密度は1.25g/cm3
であり、感光性組成物1における該重合体の体積は0.256/1.25=0.2048cm3である。
従って金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める、金ナノ粒子−HPS複合体の割合は、0.0414/(0.0414+0.2048)=0.168、即ち16.8体積%であった。
【0091】
また、金ナノ粒子−HPS複合体の質量に占める、金ナノ粒子の質量割合は、参考例3(Lot.070828−2)より9質量%である。
HPSと金原子の密度はそれぞれ1.17g/cm3、19.32g/cm3であるから、金ナノ粒子−HPS複合体の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は、0.59体積%となり、金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は16.8×0.0059=0.099体積%であった。
【0092】
[回折効率の測定]
スライドガラスの両端部にスペーサとして厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)に上記感光性組成物1を滴下し、オーブン中、80℃で約30分間乾燥し、ホログラム記録層を形成した。その後、スライドガラスをかぶせ、膜厚が約17μmの体積位相型ホログラム記録媒体を作製した。
本記録媒体に対し、図5に示す装置によって、二光束干渉露光を行い、体積ホログラムの記録を試みた。ホログラム記録媒体1に対し、波長532nmの連続光Nd:YVO4
レーザー2を用いて、露光強度300mW/cm2で二光束干渉露光(格子間隔1μm)
を行った。連続光Nd:YVO4レーザー2から出射した光は、ビームエキスパンダ3を
経てハーフミラー13で2本に分割され、それぞれミラー5〜11を経てホログラム記録媒体1に照射され、両光の干渉縞が記録されホログラムが形成される。
同時に、ホログラム記録媒体が感光しない波長632.8nmの連続光ヘリウムネオン(He−Ne)レーザー4をホログラム記録媒体に照射し回折光を光検出器で検出することによりホログラム形成過程をモニターし、回折効率を評価した。本サンプルの回折効率の時間による変化を表すグラフを図6に示す。回折効率は急激に増加し、約60秒で10%に達し、その後も高い回折効率が維持された。すなわち回折効率が約14%の体積位相型ホログラムが永続的に形成されることが確認できた。
【0093】
<実施例2>
[感光性組成物2の調製]
参考例3−2(Lot.071029)で調製した金ナノ粒子−HPS複合体0.1166gを、トルエン0.489gに溶解し、重合性化合物としてトリシクロデカンジメタノールジメタクリレート0.2234gを加え均一に分散した後、光重合開始剤としてビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−(
1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム(チバジャパン(株)製、商品名:
Irgacure784)0.002gを加えて溶解し、感光性組成物2を調製した。
【0094】
[屈折率の測定]
波長589nmの光に対する金ナノ粒子−HPS複合体の屈折率は1.68、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートから得られた重合体の屈折率は1.53であり、両者の屈折率の差は0.15であった。
なお、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の屈折率の測定は実施例1と同様に行なった。
【0095】
[密度の測定]
金ナノ粒子−HPS複合体の密度は1.2551g/cm3であり、感光性組成物2に
おける該複合体の体積は0.1166/1.2551=0.0929cm3である。
トリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合体の密度は1.25g/cm3
であり、感光性組成物2における該重合体の体積は0.2234/1.25=0.1787cm3である。
従って金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める金ナノ粒子−HPS複合体の割合は、0.0929/(0.0929+0.1787)=0.342、即ち34.2体積%であった。
【0096】
また、金ナノ粒子−HPS複合体の質量に占める、金ナノ粒子の質量割合は、参考例3−2(Lot.071029)より5.3質量%である。
HPSと金原子の密度はそれぞれ1.17g/cm3、19.32g/cm3であるから、金ナノ粒子−HPS複合体の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は、0.336体積%となり、金ナノ粒子−HPS複合体とトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートの重合状態の体積に占める金ナノ粒子の体積割合は34.2×0.00336=0.115体積%であった。
【0097】
[回折効率の測定]
実施例1と同様の手順により、膜厚が約22μmの体積ホログラム記録媒体を作製した。そして、実施例1と同様の方法によって回折効率を測定した。本サンプルの回折効率の時間による変化を表すグラフを図7に示す。実施例1同様、回折効率は急激に増加し、約100秒で30%に達し、その後も高い回折効率が維持された。すなわち回折効率が約39%の体積位相型ホログラムが永続的に形成されることが確認できた。
【0098】
<実施例3>
[透過型電子顕微鏡での観測]
実施例1と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.070828−2)が16.8体積%となる感光性組成物3を調製した。この組成物3を実施例1と同様の方法で、体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、体積位相ホログラムを作成した。
得られたフィルムを、直接、ミクロトームで面内方向に数10nm程度の厚みに薄片化し、透過型電子顕微鏡(日立製作所(株)製、H8000)で観測した。その結果を図8に示す。図中の黒い影の箇所が金ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を表し、金ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体がホログラフィック露光により純光学的に周期配列していることが確認できた。
【0099】
<実施例4>
[非線形ブラッグ回折の観測1]
実施例1と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.070828−2)が16.8体積%となる感光性組成物3を調製した。この組成物3を実施例1と同様の方法で、体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、膜厚17.4μmの体積ホログラム
を作成した。得られたフィルムに対して、図9に示す装置によって、非線形ブラッグ回折を測定した。
このホログラム記録媒体(格子間隔1μm)に対し、パルス幅が約35ピコ秒、繰り返し周波数が10Hz、パルス発振の波長が532nmのNd:YAGパルスレーザーを用いて、焦点距離20cmのレンズにより集光して1パルス当たりの入射光強度(Iin)0.1〜1GW/cm2、ブラッグ角θBで光をホログラム記録媒体へ入射し、その透過光強度(It)と回折光強度(Id)を光検出器で検出することにより、回折効率の入射光強度依存性を評価した。得られた結果を図10に示す。
このサンプルでは金ナノ粒子による表面プラズモン共鳴周波数が540nm付近にあり、プロープ光波長(532nm)よりも長波長であるため、3次の非線形屈折率変化は正の値となり、回折効率は入射光強度の増加とともに増加し、入射光強度に依存する非線形ブラッグ回折が生じていることが確認できた。
【0100】
<実施例5>
[非線形ブラッグ回折の観測2]
実施例2と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.071029)が34.2体積%となる感光性組成物4を調製した。この組成物4を実施例1と同様の方法で、体積位相型ホログラム記録媒体を作製し、膜厚21.8μmの体積ホログラムを作成した。得られたフィルムに対して、図9に示す装置によって、非線形ブラッグ回折を測定した。
このホログラム記録媒体に対して、実施例4と同様の手法を用いて回折効率の入射光強度依存性を評価した。得られた結果を図11に示す。
このサンプルでは金ナノ粒子による表面プラズモン共鳴周波数が520nm付近にあり、プロープ光波長(532nm)よりも短波長であるため、3次の非線形屈折率変化は負の値となり、回折効率は入射光強度の増加とともに減少し、入射光強度に依存する非線形ブラッグ回折が生じていることが確認できた。
【0101】
<実施例6>
[非線形吸収と非線形屈折率の測定]
実施例1と同様の手法を用いて、金ナノ粒子−HPS複合体(Lot.070828−2)が16.8体積%となる感光性組成物5を調製した。スライドガラスの両端部にスペーサとして厚さ10μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを貼り、スライドガラス中央(スペーサに挟まれた領域)にこの感光性組成物5を滴下し、オーブン中、80℃で約30分間乾燥し、記録層を形成した。その後、スライドガラスをかぶせ、膜厚が約27μmの記録媒体を作製した。この記録媒体に対し、波長532nmの連続光Nd:YVO4レーザーを用いて、露光パワー密度300mW/cm2で記録層全面に一様露光を行い、記録媒体を一様に光硬化させて、非線形吸収と非線形屈折率の測定のための測定試料とした。図12に示す装置によって非線形吸収と非線形屈折率を測定した。
【0102】
波長532nmのNd:YVO4パルスレーザーから10Hzの繰り返しで出射する光
パルスビーム(光パルス幅約30ピコ秒)を焦点距離20cmの凸レンズにより集光し、その焦点距離の位置あるいはその前後の位置に測定試料を設置して、測定試料からの透過光パワーを測定した。測定試料中の光パルスビームの光強度の大きさは測定試料の設置する位置z(集光点から前は−z方向、後は+z方向)に強く依存するので、測定試料中で生じる光吸収変化(非線形光吸収)あるいは屈折率変化(非線形屈折率)による透過光パルスビームのパワーや波面の変化も設置する位置に強く依存する。このように非線形光学効果を受けて測定試料を透過した光パルスビームは、測定試料の後方に設置された可変な開口を有する光検出器により透過光パルスビームの全てあるいは中心部分を含む一部の光パワーが検出され、測定試料の位置zの関数として透過率T0(=透過光パルス検出パワー/入射光パルス全パワー)が測定される。図12に示すように、可変な開口が測定試料を
透過した光パルスビームの全ての光パワーを検出するように開口を全開にする場合(オープンアパーチャー)には測定試料の非線形光吸収が、一部の光パワーを検出するように開口を開けた場合(クローズトアパーチャー)には非線形屈折率が精度良く測定できる。このような非線形吸収および非線形屈折率の測定方法はM.Sheik−Bahaeらにより1990年に提案され「zスキャン法 (z−scan method)」として知られている。その詳細は文献(IEEE J. Quantum Electronics 26,
760 (1990))に説明されているが、基本的な測定原理は次のように説明できる。光パルスビームはレンズの焦点位置でその光強度が一番高くなるため、そこに非線形光学効果を有する測定試料が設置されたときには集光された光パルスビームは非線形吸収を一番強く受ける。一方、測定試料がレンズの焦点位置以外に設置されている場合には測定試料中での光強度が低くなるために非線形吸収は低くなる。従って、図13に示すようにオープンアパーチャー検出の場合には、zの変化に対して透過率変化△T0(=T0(非線形効果が生じる高光強度入射のとき)−T0(非線形光学効果が無視できる低光強度入射の
とき))はレンズの焦点位置を中心とした谷型(光強度が高いと非線形吸収も高くなる場合)あるいは山型(光強度が高いと非線形吸収が低くなる場合)の依存性となる。また、非線形屈折率が生じる場合には、非線形屈折率が正の場合(光強度が高いと非線形屈折率変化が増加する場合)には光パルスビーム断面において最も光強度が高い中心部分の屈折率がより増加するために測定試料が凸レンズの役割を果たすことになる。従って、集光点の前側(後側)に測定試料が設置されると、図12に示すように測定試料を透過後の光パルスビームのビーム幅は光検出器が設置された場所において拡がる(狭まる)ことになる。すなわち、クローズトアパーチャー検出の場合には図14に示すように△T0はzの関
数としてS字型となる。一方、非線形屈折率が負の場合(光強度が高いと非線形屈折率変化が減少する場合)には△T0はzの関数として逆S字型となる。
【0103】
本実施例では、空気中における集光点での光パルスビームの光強度を1.7GW/cm2としたときの測定試料に対する非線形光吸収の測定として、オープンアパーチャー検出の場合のzスキャン法の測定結果を図15に示す。レンズ焦点値(z=0)でT0は最大となり
負の非線形吸収特性を持つことが確認できた。このような結果を異なる光強度に対して同様に測定し、それらの結果をzスキャン法の理論式にフィッティングした結果、3次の複素非線形電気感受率の虚部として+1.1×10-10esuを得た。図16には測定試料
に対する非線形屈折率の測定としてクローズトアパーチャー検出の場合のzスキャン法の測定結果を示す。△T0はS字型を示すことから測定試料は正の非線形屈折率特性を持つ
ことが確認でき、実施例4での結果と一致した。このような結果を異なる光強度に対して同様に測定し、それらの結果をzスキャン法の理論式にフィッティングした結果、3次の複素非線形電気感受率の実部として+1.5×10-10esuを得た。
【符号の説明】
【0104】
1 ホログラム記録媒体
2 連続光Nd:YVO4レーザー
3 ビームエキスパンダ
4 He−Neレーザー
5、6、7、8、9、10、11 ミラー
12 ビームサンプラー
13 ハーフミラー
14、15 半波長板
16、17 偏光プリズム
18、19、20 光検出器
21 ピコ秒Nd:YAGレーザ
22、24 偏光プリズム
23 半波長板
25、26、 ミラー
27 アパーチャー(開口)
28 ハーフミラー
29 レンズ
30 ホログラム記録媒体
31、32、33 光検出器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体を含む感光性組成物。
【請求項2】
(a)重合性化合物、(b)光重合開始剤、及び(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体含む非線形光学素子作成用の感光性組成物。
【請求項3】
前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が、500乃至5000000の重量平均分子量を有しかつジチオカルバメート基を有する分岐状及び/又は線状高分子が、金属ナノ粒子に付着し又は配位して形成されてなる複合体である、請求項1又は請求項2記載の感光性組成物。
【請求項4】
前記金属ナノ粒子が、金、銀、白金及び銅よりなる群より選択される少なくとも1種のナノ粒子である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子の平均粒径が1nm乃至10nmである、請求項1乃至請求項4のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の平均粒径が3nm乃至100nmである、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記感光性組成物を重合反応条件下においたとき、生成した前記(a)重合性化合物の重合体中に前記(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体が粒子形態で分散しているものとなる、請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記(a)重合性化合物の重合体と(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の合計体積に占める(c)金属ナノ粒子−ジチオカルバメート基含有高分子複合体の体積割合が、3体積%乃至60体積%である、請求項7記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記ジチオカルバメート基含有高分子が式(1):
【化1】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。A1は式(2)または式(3):
【化2】

(式中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。)で表される分岐状高分子である、請求項1乃至請求項8のうちいすれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項10】
前記ジチオカルバメート基含有高分子が式(4):
【化3】

(式中、R1は水素原子又はメチル基を表し、R2及びR3は、それぞれ独立して、炭素原
子数1乃至5のアルキル基、炭素原子数1乃至5のヒドロキシアルキル基または炭素原子数7乃至12のアリールアルキル基を表し、または、R2とR3は互いに結合し、窒素原子と共に環を形成していてもよい。A1は式(5)または式(6):
【化4】

(式中、A2はエーテル結合又はエステル結合を含んでいても良い炭素原子数1乃至30
の直鎖状、枝分かれ状又は環状のアルキレン基を表し、Y1、Y2、Y3又はY4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1乃至20のアルキル基、炭素原子数1乃至20のアルコキシ基、ニトロ基、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基又はシアノ基を表す。)を表し、nは繰り返し単位構造の数であって2乃至100,000の整数を表す。)で表される線状高分子である請求項1乃至請求項8のうちいすれか一項に記載の感光性組成物。
【請求項11】
前記(a)重合性化合物が、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物である、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項12】
前記(a)重合性化合物が、カチオン重合性の部位を有する化合物であり、前記(b)光重合開始剤が光酸発生剤である、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の感光性組成物。
【請求項13】
請求項1乃至請求項12記載の感光性組成物を露光して得られる非線形光学効果を有する硬化物。
【請求項14】
請求項1乃至請求項12記載の感光性組成物からなる薄膜をパターン露光し、該組成物の構成成分の空間分布が露光前のものとは変化している非線形光学薄膜。
【請求項15】
請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形回折格子。
【請求項16】
請求項1乃至請求項12のうち何れか一項に記載の感光性組成物を干渉露光し形成された非線形光学効果を有するホログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−256657(P2009−256657A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−74594(P2009−74594)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【出願人】(000003986)日産化学工業株式会社 (510)
【Fターム(参考)】