説明

金属パターン形成方法

【課題】金属アセチリドを基体上に形成する装置としてインクジェットを使用しても、ノズル部の詰まりや不吐出、流路閉塞などが生じず、金属パターンを基体上に直接描画することが可能な金属パターンの形成方法を提供する。
【解決手段】金属塩溶液12と、下記一般式(I)で表されるアセチレン化合物溶液13との2種類の溶液を、基体11上に別々に付与し、基体11上にて金属アセチリド化合物を合成して金属粒子を析出させることにより所望の金属パターン14を形成する。また溶液を付与する装置の少なくとも1つとしてインクジェット装置を使用することにより、金属パターンを直接描画することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属パターン形成方法に関し、特に、アセチレン化合物と金属塩溶液インクを基板上に付与し、基板上にて金属アセチリドを合成することにより、金属パターンを形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、金属パターンを形成する方法としてフォトリソグラフィ法(以下、「フォトリソ」ともいう)が用いられている。フォトリソは、絶縁層と銅箔からなる銅張積層板上にドライフィルムレジスト又は液レジストによりレジスト層を形成する。そして、このレジスト層を、フォトマスクを用いて紫外線照射し、その後現像することによりレジストのパターニングを行う。ついで、レジストで被覆されていない銅箔を燐酸などによりエッチングして除去することで金属パターンを得る。上記はサブトラクティブ法について説明したが、同様にセミアディティブ法、アディティブ法においても、メッキのマスクとしてフォトレジストのパターニングが用いられている。
【0003】
しかしながら、フォトリソではフォトマスクの作成に一ヶ月などの長い時間を必要とするうえ一般的に高価であること、なおかつエッチング液・現像液・レジストストリッパーなど環境に対する負荷が高いと思われる薬液を大量に使用すること、またプロセスが全体的に冗長であるなどの事柄が課題として挙げられる。
【0004】
これに対して、下記の特許文献1には、インクジェット方式などの描画方法を用いて金属粒子インクを基体上にパターニングし、電解めっきにより金属パターンを形成する方法が開示されている。しかし、特許文献1に記載されている方法は、銀コロイド分散系を用いるため、基板との密着性が懸念されていた。また、触媒を発現させるために、銀微粒子表面の分散剤を脱脂するが、そのために、150℃〜300℃で15分ほどの長時間加熱工程が必要であった。したがって、熱に弱い基板に対しては適用することが難しいという課題があった。
【0005】
また、本出願人は、下記の特許文献2に、金属含有重合体の製造方法として、金属アセチリド化合物を加熱する方法、および、アセチレン化合物を金属元素の存在下で加熱する方法を提案している。この方法は、きわめて安定で、溶解性・膜厚制御性に優れており、無電界メッキの触媒膜や導電性膜への適用が考えられる。また、高価なパラジウムを使うことなく、比較的低温処理で触媒活性が得られ、かつ、熱工程において化学変化を起こし基板と反応するため、基板との密着力も強い。また、加工工程も100〜180℃で数秒〜1分程度で充分であり、熱に弱い基板に対しても適用することができる。
【0006】
さらに、本出願人は、下記の特許文献3において、支持体上に金属アセチリドを含有する塗布液を塗布し、加熱処理することにより導電層を形成し、この導電層上にめっき層を形成する導電性フィルムの製造方法を開示している。
【特許文献1】特開2002−134878号公報
【特許文献2】特公平7−53777号公報
【特許文献3】特開2001−154215号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献3では金属アセチリド溶液(例えば銀アセチリド溶液)をバーコータにより塗布して導電層を形成している。しかし、金属アセチリド溶液をインクジェット
装置で基体上に打滴することができれば、金属パターンを基体上に直接描画できるという大きなメリットがある。
【0008】
しかしながら、特許文献3のように、金属アセチリド溶液を、基体上に付与する装置としてバーコータ等の塗布装置を用いる場合には問題ないが、付与装置としてインクジェット装置を用いてノズル部から金属アセチリド溶液を吐出して基体上にメッキ触媒のためのパターンや電気回路等のための導電性パターン等の金属パターンを直接描画しようとすると、以下のような問題が生じる。
【0009】
(1)銀塩モノマーとしてσ錯体を利用した場合には、ノズル部での液体蒸発濃縮によりモノマーが析出し、ノズルつまり、不吐出が起こりやすい。
【0010】
(2)銀塩モノマーとしてπ錯体を利用した場合には、π錯体は熱的に不安定であるため、無溶媒状態となると激しく分解してしまい、安定して使うことができなかった。また、インクジェット吐出時には、経時によりヘッド内部に銀鏡が生じ、流路を閉塞してしまう。
【0011】
そして、インクジェット固有の一般的な課題である、着弾したインクが濡れ拡がり精細パターニングができない、着弾した液滴同士が干渉しあい、パターン精度が劣化する、とう課題も解消できていなかった。
【0012】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、比較的低温で且つ短時間で、基板密着性と触媒活性発現を同時に実現できる優れた特性を備えた金属アセチリドを基体上に形成する装置としてインクジェットを使用しても、ノズル部の詰まりや不吐出、更には流路閉塞等を生じないので、例えばメッキ触媒のためのパターンや電気回路等のためのパターン等の金属パターンを基体上に直接描画することができる金属パターンの形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1は、前記目的を達成するために、金属塩溶液と、下記一般式(I)で表されるアセチレン化合物溶液との2種類の溶液を、基体上に別々に付与し、該基体上にて金属アセチリド化合物を合成して金属粒子を析出させることにより所望の金属パターンを形成すると共に、前記2種類の溶液を別々に付与する装置の少なくとも1つとしてインクジェット装置を使用することにより、前記金属パターンを基体上に直接描画することを特徴とする。
【0014】
【化1】

{上記一般式(I)において、Aはポリオキシエーテル基、ポリアミノエーテル基、またはポリチオエーテル基を表す。Rは金属元素、水素元素、カルボキシル基もしくはその塩、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表す。Lは炭素−炭素三重結合とAとを連結する化合物もしくは(k+m)価の基を表す。kおよびlは、それぞれ1以上の整数である。またmは0以上の整数である。}
請求項1によれば、金属塩溶液とアセチレン化合物溶液との2種類の溶液を、基体上に別々に付与し、基体上で、金属粒子を析出している。そのため、基体上に付与する前に、液を混合する必要がないため、金属塩モノマーが形成されず、インクジェット装置を使用しても、ノズルがつまることを防止することができる。したがって、安定して、溶液の吐出を行うことができる。
【0015】
また、常に、1液目の薄層の上に2液目をパターニングするため、2液目の付与の相手は1液目の薄層であり、相手が同一である。したがって、基体の種類によらずパターニングが可能であり、安定して金属パターンを形成することができる。さらに、2種類の溶液の両方をインクジェット装置により付与することで、溶液の使用量を削減することができ、膜厚の均一化を図ることができる。
【0016】
請求項2は請求項1において、前記2種類の溶液のうちの一方の溶液を、塗布装置で前記基体上に塗布して薄膜層を形成し、該薄膜層の上に、前記インクジェット装置を用いて他方の溶液を打滴しながら前記金属パターンをパターニングしていくことを特徴とする。
【0017】
請求項2によれば、2種類の溶液のうち一方を基体上に塗布し薄膜層を形成し、その後、インクジェット装置を用いて打滴しながら金属パターンのパターニングを行っている。したがって、目的の金属パターンを基体上に直接描画することができる。
【0018】
さらに、アセチレン化合物と金属塩が反応すると、まず、金属アセチリドπ錯体が形成される。この金属アセチリドπ錯体は、発熱を伴う激しい反応であるため、インクジェットの着弾打滴点で、短時間で還元金属化(固体化)されるため、望まない打滴広がりや打滴同士の干渉を防止することができる。したがって、金属パターンの精度を向上させることができる。
【0019】
請求項3は請求項1または2において、前記金属塩溶液を付与した後、加熱することを特徴とする。
【0020】
請求項3によれば、金属塩溶液を付与した後に加熱することにより、金属塩溶液を1液目に付与した場合は、金属塩溶液の溶媒を乾燥させ、金属塩を基体上に析出させることができる。そして、その後にアセチレン化合物溶液を付与することにより、基体上で、金属の析出反応を促進させることができる。また、1液目と2液目を付与したのち、加熱することにより、アセチレン化合物部分の一部が加熱分解され、還元性を示す基が発現する。その効果によって銀が還元されて金属化し、金属パターンを形成することができる。
【0021】
請求項4は請求項3において、前記加熱温度が100℃から180℃であり、かつ、加熱時間が1分以下であることを特徴とする。
【0022】
請求項4は、溶液を付与後の加熱条件を規定したものであり、上記温度、時間で行うことにより、良好な金属パターンを形成することができる。また、従来の方法に比べ、低温で、短時間で行うことができるので、熱に弱い基体に対しても適用することができる。
【0023】
請求項5は請求項1から4において、前記金属塩溶液が、長周期律表で8族、9族または10族の元素を含む貴金属の塩溶液であり、前記金属粒子を析出した後、メッキ処理を行うことを特徴とする。
【0024】
インクジェットを用いて直接描画する金属パターンの形成においては、液量が少ないため、膜厚が1μm以下と非常に薄くなってしまう。請求項5によれば、金属粒子を析出した後、メッキ処理を行うことにより、容易に金属パターンの厚膜化を行うことができる。また、メッキ処理により、厚膜化を行うためには、金属塩溶液が長周期律表で、8族、9族または10族の元素を含む貴金属の塩溶液であることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、金属塩溶液とアセチレン化合物用溶液との2種類の溶液を、別々に基体上に付与して基体上で金属アセチリドを合成するようにしたので、2種類の溶液が付与前に混合することがない。これにより、2種類の溶液を付与する装置の少なくとも一つとしてインクジェット装置を使用しても、ノズル部からの吐出不良等の問題が生じない。従って、インクジェット装置により金属パターンを精度良く直接描画することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0027】
本発明の金属パターンの形成方法は、金属塩溶液と、アセチレン化合物との2種類の溶液を、基体上に別々に付与し、基体上にて金属アセチリド化合物を合成し、金属粒子を析出させることにより所望の金属パターンを形成する。このとき、溶液を付与する装置として、少なくとも一つをインクジェット装置を使用することにより、金属パターンを基体上に直接描画し、金属パターンを形成する。
【0028】
≪金属塩溶液≫
まず、金属塩溶液について説明する。本発明の金属塩溶液含まれる金属は、長周期率表で、8族、9族、10族および11族の元素を含む金属であり、例えば、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、白金、銅、銀、金などが挙げられ、銀または銅であることが好ましい。また、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。このような金属は、金属塩または金属錯体として用い、金属塩としては、硝酸銀、酢酸銀、四フッ化ホウ素酸銀、塩化パラジウム、塩化第一銅、塩化白金などが好ましく用いられる。また、金属錯体としては、ジ−μ−クロロビス(η−2−メチルアリル)ジパラジウム(II)錯体、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム錯体、ジ−μ−クロロテトラカルボニルジロジウム(I)錯体、1,4,7,10,13−ペンタオキシシクロドデカン・ナトリウムテトラクロルバナジナイト、ジシクロペンタジエン−金(I)クロリドなどを挙げることができる。
【0029】
上記の金属塩または金属錯体を溶解する有機溶媒としては、金属塩および金属錯体を溶解するものであり、基体上に付与した後に形成される金属塩モノマーを溶解するものであれば、特に制限されず用いることができる。例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトンのようなケトン類、クロロホルム、塩化メチレンのようなハロゲン化合物、酢酸エチルのようなエステル類、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドンのようなアミド類、アセトニトリルのようなニトリル類、ジエチルエーテル、エチルメチルエーテルなどのエーテル類、メトキシエチルアセテート、メトキシプロピルアセテートなどのアセテート類が挙げられる。
【0030】
金属塩および金属錯体の濃度は、特に限定するものではないが、形成後の金属パターンの膜の均一性を考慮すれば濃度は低い方が好ましい。
【0031】
≪アセチレン化合物溶液≫
次にアセチレン化合物溶液について説明する。アセチレン化合物溶液は下記一般式(I)で表されるアセチレン化合物を含む溶液である。
【0032】
【化2】

{上記一般式(I)において、Aはポリオキシエーテル基、ポリアミノエーテル基、またはポリチオエーテル基を表す。Rは金属元素、水素元素、カルボキシル基もしくはその塩、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表す。Lは炭素−炭素三重結合とAとを連結する化合物もしくは(k+m)価の基を表す。kおよびlは、それぞれ1以上の整数である。またmは0以上の整数である。}
一般式(I)中、Rが表すアルキル基としては、炭素原子数1〜10のアルキル基が好ましく、アルキル基は直鎖状であっても分岐していてもよい。また、シクロアルキル基としては、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基が好ましい。アルケニル基としては、炭素原子数2〜10のアルケニル基が好ましく、アルケニル基は直鎖状であっても分岐していてもよい。アルキニル基としては、炭素原子数2〜10のアルキニル基が好ましくアルキニル基は直鎖状であっても分岐していてもよい。アリール基としては、炭素原子数6〜10のアリール基が好ましい。アラルキル基としては、炭素原子数7〜10のアラルキル基が好ましい。複素環基としては、窒素原子、硫黄原子、または酸素原子を含む、5〜6員環からなる複素環基が好ましい。Rが表すアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基および複素環基は各々置換されていてもよく、置換基としては、水酸基、アセチル基、エポキシ基、カルボキシル基、スルホン酸などが挙げられる。
【0033】
また、金属元素としては、長周期律表で、水素を除く1族(アルカリ金属)、11族(銅族)、2族(アルカリ土類金属)、12族(亜鉛族)、ホウ素を除く13族、炭素とケイ素を除く14族、8、9、10族(鉄族および白金族)、3族、4族、5族、6族、7族に属する元素とアンチモン、ビスマス、ボロニウムを挙げることができる。
【0034】
Aは、さらに、水酸基、アミノ基、メルカプト基、スルフィノ基もしくはその塩、スルホ基もしくはその塩、カルボキシル基もしくはその塩、または重合性の基で置換されていてもよい。重合性の基としては、例えば、グリシジル基、ビニル基、イソシアナート基等が挙げられる。
【0035】
Lは、炭素−炭素三重結合とAを連結する化学結合、もしくは(k+m)価の基を表す。例えばLは、各々置換されていてもよいアルキレン基、アリール基、アラルキレン基、ビニレン基、シクロアルキレン基、グルタロイル基、フタロイル基、ヒドラゾ基、ウレイレン基、チオ基、カルボニル基、オキシ基、イミノ基、スルフィニル基、スルホニル基、チオカルボニル基、オキザリル基、アゾ基などを表す。また、前記いずれかの基を2種以上組み合わせた基であってもよい。尚、Lは、さらに種々の置換基で置換されていてもよく、該置換基としては、Aの置換基として例示した基が挙げられる。
【0036】
kおよびlは、各々、1以上の整数を表す。kは1〜4の整数であるのが好ましく、lは1〜2の整数であるのが好ましい。また、mは0以上の整数を表し、中でも、1〜3の整数であるのが好ましい。
【0037】
また、上述したように、一般式(I)で表される化合物は、その分子中に、ポリオキシエーテル基、ポリアミノエーテル基およびポリチオエーテル基のうち少なくとも一つを含むことが好ましく、特に、ポリオキシエーテル基を含むことが好ましい。このような基を
有するアセチレン化合物を用いることにより、この化合物それ自体で、また「金属元素との混合物」として、有機溶媒に対して、高い溶解性を示すので、均一な膜や繊維の形態をした金属含有重合体を容易に得ることができる。
【0038】
以下に好ましい具体的モノマーを挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0039】
【化3】

【0040】
【化4】

上記化合物の中で、アセチレン化合物としては、(1)が好ましい。
【0041】
アセチレン化合物溶液に用いられる有機溶媒としては、金属塩溶液と同様の有機溶媒を用いることができ、濃度も同等の濃度で行うことができる。
【0042】
また、上述した金属塩溶液およびアセチル化合物溶液には、分散性および/または溶解性を向上させることを目的として、各々の塗布液中に界面活性剤を含有させることができる。界面活性剤としては、フッ素系、アンモニウム塩系、スルホン酸塩系、エチレンオキサイド系界面活性剤などを挙げることができる。その他、それぞれに、バインダ樹脂、可塑剤、増粘剤などを含有させることもできる。
【0043】
≪基体≫
本発明に用いられる基体としては、金属パターンの形成に耐えられる基体である必要がある。例えば、銅、鉄、チタン、ガラス、石英、セラミックス、炭素、ポリエチレン、ポリフェノール、ポリフェノール、ポリプロピレン、ABS重合体、エポキシ樹脂、ガラス繊維強化エポキシ樹脂、ポリエステルが挙げられ、また、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルハライド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、木綿、もしくはウールまたはそれらの混合物の、あるいは上記したモノマーの共重合体の織物シート(布も含む)、糸および繊維、紙のような繊維の集合体、シリカのような粒状物等が挙げられる。また、基体は必要に応じて表面を親水性にするなどの処理を行うことも可能である。
【0044】
[付与方法]
本発明の形成方法において、金属塩溶液およびアセチル化合物溶液のいずれか一方は、インクジェット方式により付与を行い、金属パターンに基づく配線を行う。また、他方は、インクジェット方式によるパターンどおりの付与もしくは全面塗布、またはバーコータなどによる全面塗布を行うことが可能である。しかしながら、「液の使用量を低減することができる」、「金属パターンの膜厚を均一にすることができる」ため、インクジェット方式により付与することが好ましい。
【0045】
また、溶液を付与する順番は、金属塩溶液、アセチレン化合物溶液のいずれからも行うことが可能である。金属塩溶液を付与した後、あるいは、両方を付与した後に加熱することが好ましい。
【0046】
金属塩溶液およびアセチレン化合物溶液の2液を基体上に付与することにより、基体上にて、金属塩モノマーが形成される。ここで、さらに加熱することにより、アセチレン化合物部分の一部が加熱分解され、還元性を示す基が発現する。その効果によって金属が還元されて析出し、金属パターンを形成することができる。また、金属塩溶液のみを基体上に付与した後に、加熱することにより、金属塩を基体上に析出させることができる。そして、金属塩を基体状に析出させた後に、アセチレン化合物溶液を付与することにより、基体上での金属アセチリドの生成反応および金属の析出を促進させることができ、金属の析出を低温にて行うことができる。したがって、2液を付与した後の加熱を省略することができる。
【0047】
加熱の方法としては、基体の裏面から伝導による加熱でもよく、加熱空気を供給することにより伝達加熱でもよく、また、放射加熱、レーザー加熱による加熱でもよい。
【0048】
また、金属塩溶液を沸点の低い溶媒を用いて行った場合は、金属塩溶液付与後の加熱を省略することも可能である。この場合、金属塩溶液塗布後、自然乾燥により金属塩溶液の溶媒を除去し、アセチル化合物溶液を付与することにより、金属パターンを形成することができる。
【0049】
以上のことをまとめると、以下のような、付与工程および乾燥工程の順番が考えられるが、本発明はこれに限定されない。なお、以下、溶液1:金属塩溶液、溶液2:アセチレン化合物溶液、IJ:インクジェット方付与、SC:スプレーコーター塗布、を示す。
【0050】
(i)溶液1をSCなどで全面塗布 → 溶液2をIJパターニング → 加熱により乾燥および合成
(ii)溶液2をSCなどで全面塗布 → 溶液1をIJパターニング → 加熱により乾燥および合成
(iii)溶液1をIJにより所定領域に付与 → 溶液2をIJパターニング → 加熱で乾燥および合成
(iv)溶液2をIJにより所定領域に付与 → 溶液1をIJパターニング → 加熱で乾燥および合成
(v)溶液1をSCなどで全面塗布 → 基板を加熱し溶液1を乾燥 → 溶液2をIJパターニング
(vi)溶液1をIJで所定領域に付与 → 基板を加熱し溶液1を乾燥 → 溶液2をIJパターニング
溶液1で沸点の低い溶媒を用いた場合は、溶液1を付与後の乾燥において、加熱を省略することができる。
【0051】
(vii)溶液1をSCなどで全面塗布 → 溶液1を基板上で自然乾燥 → 溶液2をIJでパターニング
(viii)溶液1をIJで所定領域に付与 → 溶液1を基板上で自然乾燥 → 溶液2をIJでパターニング
なお、本発明の形成方法は上記の方法に限定されず、他に様々な組み合わせで成形することが可能である。
【0052】
なお、(i)、(ii)のように、基体の全面に塗布した後、インクジェット方式による付与によりパターニングを行うと最初に塗布した液が基体上に残るが、これは、最初に塗布した溶液の溶媒などにより除去することが可能である。
【0053】
なお、加熱する際の加熱温度は100℃以上180℃以下であることが好ましい。また、加熱時間は数秒から約1分であることが好ましい。上記範囲内で加熱することにより、溶媒の蒸発を早め、乾燥させることができるので、金属の析出が可能となる。上記範囲を超えると、基板が熱に弱い場合は適用することが難しくなるため、好ましくない。
【0054】
上記のように、インクジェットにより形成した金属パターン配線の厚みは、インクジェットの液量ゆえ、非常に薄く形成される。したがって、インクジェット方式により金属パターンを形成した後、無電解メッキ、電解メッキなどのメッキ処理を行うことが好ましい。
【0055】
メッキ処理は、通常の方法に従って実施することができる。メッキ浴に含有させる金属としては、ニッケル、アルミニウム、銅、銀、金、パラジウムを好ましく用いることができる。メッキ浴として銅メッキ浴を使用する場合、硫酸銅浴、ピロリン酸銅浴などが挙げられる。また、銀メッキ浴としては、シアン化銀カリウム浴を一般的に用いることができる。メッキ浴のpHは8〜9、メッキ浴の温度は50℃〜70℃に維持されるのが好ましい。メッキ処理後において、金属パターンの膜厚は、形成条件、用いる材料により、適宜調節して形成することが可能であり、数μm〜数10μmの範囲で調節することができる。
【0056】
本発明の製造方法の1例として、上記(i)の順番による製造方法を、図1を用いて説明する。まず、基体11(図1(a))上に、金属塩溶液12をスプレーコーターにより全面に塗布する(図1(b))。次に、アセチレン化合物溶液13をインクジェット方式により付与し、パターニングを行う(図1(c))。そして、基体を加熱により乾燥することで、金属を析出させ、金属パターン14を得る(図1(d))。その後、最初に塗布した溶液の溶媒などを用いて洗浄を行い、不要な金属塩溶液12を除去した後(図1(e))、メッキ処理により膜厚化した金属パターン15を得ることができる(図1(f))。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の製造方法を説明する工程図である。
【符号の説明】
【0058】
11…基体、12…金属塩溶液、13…アセチレン化合物溶液、14、15…金属パターン、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属塩溶液と、下記一般式(I)で表されるアセチレン化合物溶液との2種類の溶液を、基体上に別々に付与し、該基体上にて金属アセチリド化合物を合成して金属粒子を析出させることにより所望の金属パターンを形成すると共に、
前記2種類の溶液を別々に付与する装置の少なくとも1つとしてインクジェット装置を使用することにより、前記金属パターンを基体上に直接描画することを特徴とする金属パターン形成方法。
【化1】

{上記一般式(I)において、Aはポリオキシエーテル基、ポリアミノエーテル基、またはポリチオエーテル基を表す。Rは金属元素、水素元素、カルボキシル基もしくはその塩、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アラルキル基または複素環基を表す。Lは炭素−炭素三重結合とAとを連結する化合物もしくは(k+m)価の基を表す。kおよびlは、それぞれ1以上の整数である。またmは0以上の整数である。}
【請求項2】
前記2種類の溶液のうちの一方の溶液を、塗布装置で前記基体上に塗布して薄膜層を形成し、該薄膜層の上に、前記インクジェット装置を用いて他方の溶液を打滴しながら前記金属パターンをパターニングしていくことを特徴とする請求項1に記載の金属パターン形成方法。
【請求項3】
前記金属塩溶液を付与した後、加熱することを特徴とする請求項1または2に記載の金属パターン形成方法。
【請求項4】
前記加熱温度が100℃から180℃であり、かつ、加熱時間が1分以下であることを特徴とする請求項3に記載の金属パターン形成方法。
【請求項5】
前記金属塩溶液が、長周期律表で8族、9族または10族の元素を含む貴金属の塩溶液であり、前記金属粒子を析出した後、メッキ処理を行うことを特徴とする請求項1から4いずれかに記載の金属パターン形成方法。

【図1】
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【公開番号】特開2009−99970(P2009−99970A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248032(P2008−248032)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】