説明

金属プレート付き樹脂成形品および金属プレート付き樹脂成形品の取付構造

【課題】金属プレートの表面に成形される樹脂部の量を減らして反りの発生を防ぐ。
【解決手段】金属プレート20と、金属プレート20の表面に装着された油圧スイッチ50と、一対の接続端部41A,41Bを有し、一方の接続端部41Aが油圧スイッチ50に接続された金属製のバスバー40と、バスバー40の両接続端部41A,41Bを除く中間部分を覆う絶縁性の樹脂部30とを備え、バスバー40は、油圧スイッチ50から金属プレート20の外側縁24に交差するように延出され、この金属プレート20の外側縁24から片持ち梁状に張り出す形態とされている構成としたところに特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属プレート付き樹脂成形品および金属プレート付き樹脂成形品の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属プレートと樹脂部を一体に成形した金属プレート付き樹脂成形品として、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。このものは、金属プレートの表面に複数の電子部品が装着されており、これらの電子部品は一対の端子部を備えている。一方の端子部は金属プレートに接続されており、他方の端子部はバスバーの端部に接続されている。このバスバーは、金属プレートの表面に沿って配設されており、このバスバーを絶縁すべく金属プレートの表面に樹脂部が一体に成形されている。
【0003】
ところで、上記の金属プレートは長尺状であることに加えて、金属プレートの一方の面のみに樹脂部が成形されているため、反りが発生しやすくなっている。反りが発生する理由は、金属プレートと樹脂部を一体に成形して、樹脂部が冷え固まる際に、樹脂部と金属プレートの収縮率の差が生じるためである。そこで、少しでも反りの問題を解消すべく樹脂部に複数の溝部が形成されており、これらの溝部によって樹脂部の内部に生じる引っ張り応力を解放するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−341562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の構成によると、バスバーのほぼ全域が金属プレートの表面に沿って配設されているため、金属プレートを避けて樹脂部を成形することが困難である。このため、金属プレートの表面に成形される樹脂部の領域が増えてしまう。また、金属プレートを金属ケースに固定する際には、金属カラーを介してボルト止めしており、この金属カラーを樹脂部によって金属プレートに固定する必要があるため、金属プレートの表面に成形される樹脂部の領域がさらに増えてしまう。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、金属プレートの表面に成形される樹脂部の領域を減らして反りの発生を防ぐことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、金属プレートと、金属プレートの表面に装着された電子部品と、一対の接続端部を有し、一方の接続端部が電子部品に接続された金属製のバスバーと、バスバーの両接続端部を除く中間部分を覆う絶縁性の樹脂部とを備え、バスバーは、電子部品から金属プレートの外縁に交差するように延出され、この金属プレートの外縁から片持ち梁状に張り出す形態とされている構成としたところに特徴を有する。
【0008】
このような構成によると、バスバーが電子部品から金属プレートの外縁に向かい、ここから片持ち梁状に張り出すため、バスバーのほぼ全域を金属プレートの表面に沿って配設する場合よりも金属プレートの表面に成形されるバスバーの領域を減らすことができる。したがって、樹脂部の内部に生じる引っ張り応力を低減させることができ、反りの発生を防ぐことができる。
【0009】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
電子部品は、一対の端子部を有しており、一方の端子部を金属プレートに接続し、他方の端子部をバスバーの一方の接続端部に接続することで電子部品が金属プレートの表面に装着されている構成としてもよい。
このような構成によると、電子部品の両端子部を金属プレートとバスバーとに接続すればよく、電子部品を金属プレートの表面に装着する部位を別途設けなくてもよい。
【0010】
バスバーの他方の接続端部には、相手コネクタと嵌合可能な嵌合部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、金属プレートの反りを防ぐことにより嵌合部の位置精度を向上させることができ、相手コネクタを嵌合部に対して円滑に嵌合させることができる。
【0011】
また、本発明は、上記の金属プレート付き樹脂成形品と、この金属プレート付き樹脂成形品が取り付けられる金属ケースとを備え、金属プレートの外縁に、ボルトを挿通可能な挿通孔が開口してなる取付座が露出して形成されており、この取付座は、金属ケースの外面に直接接触させるべく金属プレートに対して段付き状に形成されており、挿通孔にボルトを挿通して金属ケースに締め込むことで金属プレート付き樹脂成形品が金属ケースに固定されている構成としてもよい。
【0012】
このような構成によると、取付座を段付き状に形成することで、金属ケースの外面の高さに合わせて取付座の高さを自由に設定することができる。この結果、取付座を金属ケースの外面に直接接触させた状態で金属プレート付き樹脂成形品を金属ケースに固定することができる。したがって、金属カラーを廃止して部品点数を削減することができる。
【0013】
また、金属カラーの廃止に伴って金属カラーを金属プレートに固定するための樹脂部も不要となる。したがって、金属プレートの表面に成形される樹脂部の領域をさらに減らして反りの発生を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、金属プレートの表面に成形される樹脂部の領域を減らして反りの発生を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】実施形態における金属プレート付き樹脂成形品の平面図
【図2】金属プレート付き樹脂成形品の右側面図
【図3】金属プレート付き樹脂成形品の底面図
【図4】金属プレート付き樹脂成形品の背面図
【図5】金属プレート付き樹脂成形品の取付構造を示す平面図であって、図1に対応する図
【図6】金属プレート付き樹脂成形品の取付構造を示す右側面図であって、図2に対応する図
【図7】金属プレート付き樹脂成形品の取付構造を示す背面図であって、図4に対応する図
【発明を実施するための形態】
【0016】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図7の図面を参照しながら説明する。本実施形態における油圧スイッチ体(本発明の「金属プレート付き樹脂成形品」の一例)10は、図3に示すように、金属プレート20、絶縁性の樹脂部30、金属製のバスバー40、油圧スイッチ(本発明の「電子部品」の一例)50などを備えて構成されている。この油圧スイッチ体10は、図5ないし図7に示すように、トランスミッションケースなどの金属ケース60の外面に取り付け固定されるようになっている。金属ケース60において油圧スイッチ50と対応する位置には、貫通孔(図示せず)が設けられており、この貫通孔を通して油圧スイッチ50がトランスミッションオイルに接触している。このように、金属プレート20は、油圧スイッチ50を背面側から支える支持部材としての機能を有している。
【0017】
金属プレート20は金属製の板材によって構成され、図1に示すように、油圧スイッチ50よりも一回り大きい外形を有している。金属プレート20は、略長方形状をなしており、金属プレート20の長手方向における両端部と、長手方向と交差する方向における側縁部とには、複数の取付座21が形成されている。各取付座21は、それぞれ油圧スイッチ50を中心としてほぼ放射状に延びる形態をなし、金属プレート20の外縁から段付き状をなして張り出す形態とされている。また、各取付座21は外部に露出しており、樹脂部30に覆われていない。各取付座21には、ボルト70が挿通される挿通孔22が貫通して形成されている。油圧スイッチ体10は、図5に示すように、各挿通孔22にボルト70を通して金属ケース60側に締め込むことで、金属ケース60に固定されている。
【0018】
油圧スイッチ50は略円柱状をなすスイッチ本体51を有しており、そのスイッチ本体51の径方向両端部に、一対の端子部52A,52Bが張り出し形成されている。両端子部52A,52Bは、スイッチ本体51の底面側に配設されている。このため、スイッチ本体51の底面側を金属プレート20の表面23に向けて装着した状態では、両端子部52A,52Bが金属プレート20の表面23にほぼ接した状態で配置される。両端子部52A,52Bは、それぞれ金属プレート20の長手方向を向くように配置されている。
【0019】
両端子部52A,52Bのうち一方の端子部52Aは、金属プレート20に対してリベット止めにより接続されており、他方の端子部52Bは、バスバー40の端部に対してリベット止めにより接続されている。バスバー40の両端部には、一対の接続端部41A,41Bが形成されており、このうち一方の接続端部41Aに他方の端子部52Bが接続されている。他方の接続端部41Bには、これを囲むようにして前方に開口する嵌合部31が形成されている。この嵌合部31は、樹脂部30と一体に成形されている。嵌合部31の内部には相手コネクタ(図示せず)が嵌合可能である。
【0020】
バスバー40の両接続端部41A,41Bを除く中間部分は、樹脂部30によって覆われている。すなわち、樹脂部30は、バスバー40を電気的に絶縁する絶縁材としての機能を有している。また、樹脂部30において他方の端子部52Bと対応する位置には、図1に示すように、凹部26が形成されている。この凹部26には、リベット止めをするための圧着治具(図示せず)が挿通可能とされている。
【0021】
さて、バスバー40は、図3に示すように、金属プレート20の外縁から片持ち梁状に張り出す形態で配設されている。具体的に説明すると、金属プレート20の外縁のうち図3における左端側の外側縁(図1における右端側の外側縁)24に対して直交する配置でバスバー40が配設されている。これは、スイッチ本体51の他方の端子部52Bから金属プレート20の外側縁24までの距離が最短となるようにバスバー40が配設されていることを意味している。したがって、他方の端子部52Bから金属プレート20の外側縁24にかけての範囲に成形される樹脂部30の領域を最小限に抑えることができる。
【0022】
本実施形態では、バスバー40全体のうち約3分の1が金属プレート20と重なり合っているものの、残りの約3分の2は金属プレート20と重なり合わないようになっている。さらに油圧スイッチ体10全体の割合で考えると、バスバー40が金属プレート20と重なり合う領域は、油圧スイッチ体10の5分の1〜6分の1程度に過ぎない。このため、樹脂部30と金属プレート20の収縮率の違いに起因して樹脂部30の内部に引っ張り応力が発生しても、油圧スイッチ体10全体に与える影響は極めて小さいものとなる。したがって、油圧スイッチ体10の反りを防ぐことができる。
【0023】
さらに本実施形態では、取付座21が金属プレート20に対して段付き状に形成されている。例えば、図2と図6あるいは図4と図7を比較すればわかるように、各取付部21は、これらが取り付けられる金属ケース60の外面の高さに合わせて配置されている。これにより、各取付部21は、金属ケース60の外面に対して直接接触することになる。したがって、金属カラーを用いることなく油圧スイッチ体10を金属ケース60に固定することができる。なお、各取付部21は、樹脂部30の高さ範囲内に配置されているため、油圧スイッチ体10が高さ方向に大型化することはない。
【0024】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、金属プレート20とバスバー40を成形用金型の成形空間内にセットしておき、成形空間内に溶融樹脂を注入する。この後、金型を冷却するに伴い溶融樹脂が冷えて固まると、樹脂部30が成形される。このとき、金属プレート20と樹脂部30との収縮率の差によって、金属プレート20と一体に成形された樹脂部30の内部に引っ張り応力が発生することになる。
【0025】
しかしながら、本実施形態では金属プレート20の表面23に成形される樹脂部30の領域が極めて小さくなるように設定されており、樹脂部30の内部に発生した引っ張り応力が油圧スイッチ体10全体に与える影響は極めて小さいものとなっている。このため、油圧スイッチ体10が反る事態には至らない。また、金属カラーを廃止したことに伴って金属カラーを固定するのに必要となる樹脂部30が不要となっているため、金属プレート20の表面23に成形される樹脂部30の領域がさらに小さくなっている。これによっても、油圧スイッチ体10の反りが規制されている。
【0026】
次に、油圧スイッチ体10を金属ケース60の外面に取り付けるに際しては、油圧スイッチ体10を金属ケース60の外面における所定の取付位置に載置する。このとき、各取付座21は、金属ケース60の外面に直接接触することになる。そして、ボルト70を挿通孔22に通して金属ケース60に対して締め込むことにより油圧スイッチ体10が金属ケース60に取り付け固定される。このように、金属カラーを廃止したことで部品点数を削減することができる。また、金属カラーの高さがそれぞれ異なる場合に、これらの金属カラーの高さに合わせてボルト70の高さを個別に設定する必要がないため、ボルト70の高さを統一することができ、ボルト70の種類を一つにまとめることができる。
【0027】
以上のように本実施形態では、バスバー40が他方の端子部52Bから金属プレート20の外側縁24に交差するように延出され、この金属プレート20の外側縁24から片持ち梁状に張り出す形態としたから、金属プレート20と樹脂部30が一体に成形される領域を最小限に抑えることができる。したがって、油圧スイッチ体10の反りを防ぐことができる。これに伴って、油圧スイッチ体10の嵌合部31の位置精度を高めることができる。
【0028】
また、金属プレート20の外縁に複数の取付座21を露出して形成したから、樹脂部30の高さ範囲内において取付座21の高さ位置を自由に設定することができる。この結果、金属カラーを廃止して金属ケース60の外面に取付座21を直接接触させることができ、部品点数を削減することができる。また、金属カラーを金属プレート20に固定する樹脂部30が不要になるため、金属プレート20の表面23に成形される樹脂部30の領域をさらに小さくすることができる。これによっても、油圧スイッチ体10の反りを規制することができる。
【0029】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態ではバスバー40を金属プレート20の外側縁24と直交するように配置しているものの、本発明によると、バスバー40を交差する外縁は、外側縁24に限定されず、外側縁24に連なる外側縁25と交差するようにバスバー40を配置してもよい。
(2)上記実施形態ではバスバー40が金属プレート20の外側縁24から図1における図示右側に張り出す形態とされているものの、本発明によると、バスバー40を金属プレート20の外側縁24から図1の紙面と直交する方向における手前側に張り出す形態としてもよい。
【0030】
(3)上記実施形態では油圧スイッチ50の両端子部52A,52Bを金属プレート20とバスバー40に対してリベット止めしているものの、本発明によると、両端子部52A,52Bを金属プレート20とバスバー40に対して溶着あるいはボルト止めしてもよい。
(4)上記実施形態では他方の接続端部41Bに嵌合部31が形成されているものの、本発明によると、嵌合部31を形成しないで他方の接続端部41Bを外部に露出させてもよい。
(5)上記実施形態では金属カラーを廃止した油圧スイッチ体10の取付構造を例示しているものの、本発明によると、金属カラーを用いた油圧スイッチ体としてもよい。
【符号の説明】
【0031】
10…油圧スイッチ体(金属プレート付き樹脂成形品)
20…金属プレート
21…取付座
22…挿通孔
23…表面
24…外側縁(外縁)
30…樹脂部
31…嵌合部
40…バスバー
41A…一方の接続端部
41B…他方の接続端部
50…油圧スイッチ体(電子部品)
52A…一方の端子部
52B…他方の端子部
60…金属ケース
70…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属プレートと、
前記金属プレートの表面に装着された電子部品と、
一対の接続端部を有し、一方の前記接続端部が前記電子部品に接続された金属製のバスバーと、
前記バスバーの両接続端部を除く中間部分を覆う絶縁性の樹脂部とを備え、
前記バスバーは、前記電子部品から前記金属プレートの外縁に交差するように延出され、この金属プレートの外縁から片持ち梁状に張り出す形態とされていることを特徴とする金属プレート付き樹脂成形品。
【請求項2】
前記電子部品は、一対の端子部を有しており、一方の前記端子部を前記金属プレートに接続し、他方の前記端子部を前記バスバーの前記一方の接続端部に接続することで前記電子部品が前記金属プレートの表面に装着されていることを特徴とする請求項1に記載の金属プレート付き樹脂成形品。
【請求項3】
前記バスバーの他方の前記接続端部には、相手コネクタと嵌合可能な嵌合部が形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属プレート付き樹脂成形品。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の金属プレート付き樹脂成形品と、
この金属プレート付き樹脂成形品が取り付けられる金属ケースとを備え、
前記金属プレートの外縁に、ボルトを挿通可能な挿通孔が開口してなる取付座が露出して形成されており、この取付座は、前記金属ケースの外面に直接接触させるべく前記金属プレートに対して段付き状に形成されており、前記挿通孔にボルトを挿通して前記金属ケースに締め込むことで前記金属プレート付き樹脂成形品が前記金属ケースに固定されていることを特徴とする金属プレート付き樹脂成形品の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−243546(P2011−243546A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−117433(P2010−117433)
【出願日】平成22年5月21日(2010.5.21)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】