説明

金属中和スルホン化ブロックコポリマー、これらの調製方法およびこれらの使用

本開示は、スルホン化ブロックコポリマーを金属化合物で中和するための方法、金属中和ブロックコポリマーおよび、例えば金属中和ブロックコポリマーを含む水蒸気透過性メンブレンの形態にある、金属中和ブロックコポリマーを含む様々な物品に関する。本開示は、さらに、極性化合物、例えば、金属化合物を非極性液相中に保存し、および安定化するための手段および方法であって、非極性液相中のスルホン化ブロックコポリマーのミセル内に極性成分を閉じ込めることによる方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スルホン化ブロックコポリマーを金属化合物で中和するための方法、金属中和ブロックコポリマーおよび、例えば金属中和ブロックコポリマーを含む水蒸気透過性メンブレンの形態にある、金属中和ブロックコポリマーを含む様々な物品に関する。本開示は、さらに、極性成分、例えば、金属化合物を非極性液相中に保存し、および安定化するための手段および方法であって、非極性液相中のスルホン化ブロックコポリマーのミセル内に極性成分を閉じ込めることによる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スチレンブロックコポリマーの調製は当分野において周知である。一般には、スチレンブロックコポリマー(「SBC」)は、化学的に異なるモノマータイプを含み、これにより特定の望ましい特性をもたらす、内部ポリマーブロックおよび末端エンドポリマーブロックを含むことができる。一例として、より一般的な形態において、SBCは共役ジエンの内部ブロックおよび芳香族アルケニルアレンを有する外部ブロックを有することができる。ポリマーブロックの異なる特性の相互作用は異なるポリマー特性を得ることを可能にする。例えば、内部共役ジエンブロックのエラストマー特性は「より硬い」芳香族アルケニルアレン外部ブロックと共に著しく多様な用途に有用であるポリマーを一緒に形成する。このようなSBCは連続重合および/またはカップリング反応によって調製することができる。
【0003】
これらの特徴をさらに改変するため、SBCを官能化できることも公知である。この一例はポリマー主鎖へのスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基の付加である。最初のこのようなスルホン化ブロックコポリマーのうちの1つは、例えば、WinklerのUS3,577,357に開示される。得られるブロックコポリマーは一般配置A−B−(B−A)1−5を有するものと特徴付けられ、式中、各々のAは非弾性スルホン化モノビニルアレンポリマーブロックであり、各々のBは実質的に飽和した弾性α−オレフィンポリマーブロックであり、該ブロックコポリマーは全ポリマー内で少なくとも1重量%のイオウをもたらし、および各々のモノビニルアレン単位に1つまでのスルホン化構成要素をもたらすのに十分な程度までスルホン化される。これらのスルホン化ポリマーはこれらの酸、アルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアミン塩のような形態として、またはこのような形態で用いることができる。Winklerによると、ポリスチレン−水素化ポリイソプレン−ポリスチレントリブロックコポリマーを1,2−ジクロロエタン中で三酸化イオウ/トリエチルホスフェートを含むスルホン化剤で処理した。スルホン化ブロックコポリマーは吸水特性を有するものとして説明され、これは水精製メンブレン等において有用であり得るが、後にフィルムにキャストし得ないことが見出された(US5,468,574)。
【0004】
より最近では、WillisらのUS2007/0021569がスルホン化ポリマーの調製を開示し、とりわけ、少なくとも2つのポリマーエンドブロックおよび少なくとも1つの飽和ポリマー内部ブロックを含み、各々のエンドブロックがスルホン化に抵抗性のポリマーブロックであり、少なくとも1つの内部ブロックがスルホン化に感受性の飽和ポリマーブロックであり、および少なくとも1つの内部ブロックがブロック内のスルホン化感受性モノマーの10から100モルパーセントの程度までスルホン化されている、水中で固体であるスルホン化ブロックコポリマーを説明した。スルホン化ブロックコポリマーは、水の存在下での良好な寸法安定性および強度を同時に有しながら多量の水蒸気を輸送することが可能であり、ならびに良好な湿潤強度、良好な水およびプロトン輸送特性、良好なメタノール耐性、容易なフィルムまたはメンブレン形成、障壁特性、柔軟性および弾性の制御、調整可能な硬度ならびに熱/酸化安定性の組み合わせを必要とする最終用途に有用な材料であるものと記述される。
【0005】
加えて、DadoらのWO2008/089332は、スルホン化ブロックコポリマーの調製方法であって、例えば、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックがスルホン化に抵抗性のポリマーブロックであり、各々のBブロックがスルホン化に感受性のポリマーブロックであり、ならびに該AおよびBブロックがオレフィン性不飽和を実質的に含まない前駆体ブロックポリマーのスルホン化を説明する方法を開示する。この前駆体ブロックポリマーを、少なくとも1種類の非ハロゲン化脂肪族溶媒をさらに含む反応混合物中で硫酸アシルと反応させた。Dadoらによると、この方法は定義可能なサイズおよび分布のスルホン化ポリマーのミセルおよび/または他のポリマー凝集体を含む反応生成物を生じる。
【0006】
スルホン化ポリマーを様々な化合物で中和できることも報告されている。例えば、PottickらのUS5,239,010およびBalasらのUS5,516,831は、スルホン化ブロックコポリマーをイオン性金属化合物と反応させて金属塩を得ることによってスルホン酸官能基を有するスチレンブロックを中和できることを示す。
【0007】
加えて、WillisらのUS2007/0021569は、例えばイオン性金属化合物に加えて様々なアミンを含む、様々な塩基物質でのスルホン化ブロックコポリマーの少なくとも部分的な中和を示した。さらに、スルホン化ブロックコポリマーの酸中心を中和するのに十分な強さではないものの水素結合相互作用によるブロックコポリマーへの有意の吸引を達成するには十分な強さである、塩基物質との水素結合相互作用によってスルホン化ブロックコポリマーを修飾できることを提示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第5,468,574号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0021569号明細書
【特許文献3】国際公開第2008/089332号
【特許文献4】米国特許第3,577,357号明細書
【特許文献5】米国特許第5,239,010号明細書
【特許文献6】米国特許第5,516,831号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本技術は、一般には、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックがスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、ならびに各々のBブロックがBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックである、非中和スルホン化ブロックコポリマーを中和するための方法に関する。一般には、この方法は、
非中和スルホン化ブロックコポリマーおよび有機溶媒を含む溶液を提供し、ならびに
少なくとも1種類の金属化合物を溶液に添加する
ことを含み、ここで金属は少なくとも11種の原子数を有する。
【0010】
特定の態様において、ここで説明される方法は以下の条件のうちの1つ以上を満たす:
溶液はミセル形態にある溶解した非中和スルホン化ブロックコポリマーを含み、および/または
約80%から約100%のスルホン酸もしくはスルホン酸エステル官能基が中和され、および/または
金属化合物を、非中和スルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸もしくはスルホン酸エステル官能基1当量あたり約0.8から約10金属当量の量で添加し、および/または
有機溶媒は非ハロゲン化脂肪族溶媒であり、および/または
有機溶媒が少なくとも第1および第2脂肪族溶媒を含み、Bブロックは第1溶媒に実質的に可溶であり、Aブロックは第2溶媒に実質的に可溶であり、および/または
金属化合物は、有機金属化合物、金属水素化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、金属カルボネート、金属水素カルボネートおよび金属カルボキシレートの群より選択され、および/または
金属化合物はナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウムもしくは水銀を含み、および/または
金属化合物の金属は少なくとも12種の原子数を有し、および/または
金属化合物はマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉛、チタン、銅もしくは亜鉛を含み、および/または
金属は+2、+3もしくは+4の酸化状態にある。
【0011】
ここで説明される技術は、さらに、一般には、水中で固体であり、少なくとも2つのポリマーエンドブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内部ブロックBを含む中和スルホン化ブロックコポリマーであって、
a.各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、およびBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックであり、ならびに
b.スルホン化Bブロックの80%から100%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基が金属化合物で中和され、この金属は少なくとも11種の原子数を有する、
中和スルホン化ブロックコポリマーに関する。
【0012】
特定の態様において、ここで説明される中和スルホン化ブロックコポリマーは以下の条件のうちの1以上を満たす:
金属化合物はナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウムもしくは水銀を含み、および/または
金属化合物はマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉛、チタン、銅もしくは亜鉛を含み、および/または
金属化合物は+2、+3もしくは+4の酸化状態にあり、および/または
中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値以下である吸水値を有し、および/または
中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの湿潤引張係数以上である湿潤引張係数を有し、および/または
中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値の80%未満の吸水値を有し、および/または
中和スルホン化ブロックコポリマーは乾燥重量の50重量%未満の吸水値を有し、および/または
中和スルホン化ブロックコポリマーは乾燥重量の少なくとも0.1重量%の吸水値を有し、および/または
中和スルホン化ブロックコポリマーは水和形態にある。
【0013】
ここで説明される技術は、一般には、中和ブロックコポリマーの乾燥重量を基準にして少なくとも0.1重量%の水を組み込まれた形態で含む、水和中和スルホン化ブロックコポリマーにも関する。特定の態様において、ここで説明される水和中和スルホン化ブロックコポリマーは以下の条件のうちの1以上を満たす:
水和中和スルホン化ブロックコポリマーは少なくとも約15,000g/m/日/ミルの水蒸気輸送速度を有し、および/または
水和中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の水輸送速度の少なくとも約50%の水輸送速度を有し、および/または
水和中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の湿潤引張係数以上である湿潤引張係数を有し、および/または
水和中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の水輸送速度の少なくとも約75%の水輸送速度を有する。
【0014】
ここで説明される技術は、さらに、メンブレンを含む装置、例えば、湿度を制御するための装置、電気透析を促進するための装置、逆電気透析用の装置、圧力抑制浸透のための装置、浸透を促進するための装置、逆浸透用の装置、水を選択的に添加するための装置、水を選択的に除去するための装置およびバッテリに関する。それぞれの装置は、各々の場合において、前述の中和スルホン化ブロックコポリマーを含有するメンブレンを含む。
【0015】
さらに、ここで説明される技術は、一般には、非極性液相ならびに、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、各々のBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックであるスルホン化ブロックコポリマーを含む極性成分を保存するための手段であって、非極性液相が極性成分を閉じ込めるのに適するミセル形態の前記スルホン化ブロックコポリマーを含む手段に関する。
【0016】
ここで説明される技術は、さらに一般には、非極性液相中で極性成分を安定化または保存するための方法に関する。一般には、この方法は、
a.非極性液相ならびに、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、各々のBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックである、スルホン化ブロックコポリマーを含む溶液であって、スルホン化ブロックコポリマーをミセル形態で含む溶液を提供し、ならびに
b.少なくとも1種類の極性成分を溶液(a)に添加し、これにより極性成分をミセル内に閉じ込める
ことを含む。
【0017】
この方法の特定の態様において、極性成分は金属化合物である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の詳細な説明をここに開示する。しかしながら、開示される実施形態は単に本発明の例示であり、開示される実施形態の様々な代替形態で本発明を具現化できることは理解されるべきである。従って、ここで実施形態を説明する上で取り組まれる特定の構造的および機能的詳細は限定するものと解釈されるべきではなく、単に請求の範囲の基礎として、および本発明を様々に使用するように当業者を教示するための代表的基盤として解釈されるべきである。
【0019】
他に具体的に述べられない限り、ここで用いられる全ての技術用語は当業者が一般に理解する通りの意味を有する。
【0020】
さらに、他に具体的に述べられない限り、ここで用いられる以下の表現は以下の意味を有するものと理解される。
【0021】
ここで用いられる「非中和スルホン化ブロックコポリマー」および「前駆体スルホン化ブロックコポリマー」という表現は、本質的にアミン、金属または他の極性化合物によって中和されておらず、ならびにスルホン酸および/またはスルホン酸エステル官能基を含むスルホン化ブロックコポリマーを指す。
【0022】
ここで用いられる「中和ブロックコポリマー」という表現は、少なくとも部分的に中和されているスルホン化ブロックコポリマーを指す。
【0023】
ここで用いられる「エンジニアリング熱可塑性樹脂」という表現は様々なポリマー、例えば、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリウレタン、ポリ(アリールエーテル)およびポリ(アリールスルホン)、ポリカーボネート、アセタール樹脂、ポリアミド、ハロゲン化熱可塑性物質、ニトリルバリア樹脂、ポリ(メチルメタクリレート)ならびに環状オレフィンコポリマーを包含し、US4,107,131(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)においてさらに定義される。
【0024】
吸水の文脈においてここで用いられる「平衡」という表現は、ブロックコポリマーによる吸水の速度がブロックコポリマーによる水損失の速度と釣り合っている状態を指す。平衡状態は、一般には、本発明のスルホン化ブロックコポリマーまたは中和ブロックコポリマーを水中に24時間(1日)浸漬させることによって到達することができる。平衡状態は他の湿潤環境においても到達することができるが、平衡に到達する時間は異なるものであり得る。
【0025】
ここで用いられる「水和」ブロックコポリマーという表現は、相当量の水を吸収しているブロックコポリマーを指す。
【0026】
ここで用いられる「湿潤状態」という表現は、ブロックコポリマーが平衡に到達しているか、または水中に24時間浸漬されている状態を指す。
【0027】
ここで用いられる「乾燥状態」という表現は、本質的に水を吸収していないか、またはほんの僅かな量の水を吸収しているブロックコポリマーの状態を指す。例えば、単に雰囲気と接触しているスルホン化または中和ブロックコポリマーは一般に乾燥状態のままである。
【0028】
ここで用いられる「吸水値」という表現は、元の乾燥物質の重量と比較した平衡状態にあるブロックコポリマーによって吸収される水の重量を指し、パーセンテージとして算出される。低い吸水値は、吸収される水が少なく、従って、より良好な寸法安定性に相当することを示す。
【0029】
ここで挙げられる全ての刊行物、特許出願および特許は参照によりこれらの全体が組み込まれる。矛盾する場合、定義を含む本明細書が制御する。
【0030】
さらに、ここに開示される全ての範囲は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲が具体的に列挙されないとしても、挙げられる上限および下限のあらゆる組み合わせを含むことが意図される。
【0031】
本開示の幾つかの実施形態によると、驚くべきことに、スルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液を金属化合物と直接接触させることによって中和スルホン化ポリマーを得ることができることが見出されている。この方法により、広く様々な金属化合物をスルホン化ブロックコポリマーの中和ならびにこれに続くこの中和ブロックコポリマーからのメンブレンおよび物品の形成に用いることができる。さらに、幾つかの実施形態による方法は、金属化合物およびスルホン化ブロックコポリマーの緊密な接触を可能とし、非中和スルホン化ブロックコポリマーの特性と比較して予期せぬほど優れた特性のバランスを示すメンブレン材料として適する中和ブロックコポリマーを生じる。これらの特性には、これらに限定されるものではないが、以下が含まれる。
【0032】
(1)並外れて高い水蒸気輸送速度、
(2)低吸水値および低膨潤によって立証される、湿潤条件下での寸法安定性、
(3)対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのものと比較して増加した湿潤引張係数、
(4)湿潤および乾燥の両状態において一貫した引張り強さ。
【0033】
従って、ここに提示される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは実施する上で様々な用途に広く適し、水が関与するか、または湿潤環境において実施される用途において特に有用である。
【0034】
幾つかの実施形態において、本開示の実施形態に従って中和することができる前駆体スルホン化ブロックポリマーにはWillisらのUS2007/021569に記載される非中和スルホン化ブロックコポリマーが含まれ、この開示全体は参照によりここに組み込まれる。US2007/021569に記載される非中和スルホン化ブロックコポリマーを含む前駆体スルホン化ブロックポリマーは、DadoらのWO2008/089332の方法に従って調製することができ、この開示全体は参照によりここに組み込まれる。
【0035】
本発明のスルホン化ブロックコポリマーの調製に必要なブロックコポリマーは、アニオン重合、減速アニオン重合、カチオン重合、チーグラー・ナッタ重合およびリビング鎖または安定フリーラジカル重合を含む幾つかの異なる方法によって製造することができる。アニオン重合は以下により詳細に説明され、参照文献に記載される。スチレンブロックコポリマーを製造するための減速アニオン重合法は、例えば、US6,391,981、US6,455,651およびUS6,492,469に開示され、これらの各々は参照によりここに組み込まれる。ブロックコポリマーを調製するためのカチオン重合法は、例えば、US6,515,083およびUS4,946,899に記述され、これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0036】
ブロックコポリマーの製造に用いることができるリビング・チーグラー・ナッタ重合法は、近年、G.W.Coates、P.D.HustadおよびS.ReinartzによりAngew.Chem.Int.Ed.,41,2236−2257(2002)において再考され、H.ZhangおよびK.Nomuraによる次の刊行物(J.Am.Chem.Soc.,Comm.,2005)はスチレンブロックコポリマーを製造するためのリビング・チーグラー・ナッタ技術を具体的に記載する。窒素酸化物介在リビング・ラジカル重合化学の分野における大規模な研究が再考察されている;C.J.Hawker,A.W.Bosman,and E.Harth,Chem.Rev.,101(12),3661−3688(2001)を参照。この再考において概述されるように、リビングまたは安定フリーラジカル技術によってスチレンブロックコポリマーを合成することができる。前駆体ポリマーを調製するときは、窒素酸化物介在重合法が好ましいリビング鎖または安定フリーラジカル重合法である。
【0037】
1.ポリマー構造
ここに開示される発明の一態様は中和スルホン化ブロックコポリマーのポリマー構造に関する。一実施形態において、本発明によって製造される中和ブロックコポリマーは少なくとも2つのエンドポリマーまたは外部ブロックAおよび少なくとも1つの飽和ポリマー内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン化に抵抗するポリマーブロックでありならびに各々のBブロックはスルホン化に感受性であるポリマーブロックである。
【0038】
好ましいブロックコポリマー構造は一般配置A−B−A、(A−B)n(A)、(A−B−A)n、(A−B−A)nX、(A−B)nX、A−B−D−B−A、A−D−B−D−A、(A−D−B)n(A)、(A−B−D)n(A)、(A−B−D)nX、(A−D−B)nXまたはこれらの混合を有し、式中、nは2から約30の整数であり、Xはカップリング剤残基であり、ならびにA、BおよびDは以下で定義される通りである。
【0039】
最も好ましい構造は直線構造、例えば、A−B−A、(A−B)2X、A−B−D−B−A、(A−B−D)2X、A−D−B−D−Aおよび(A−D−B)2Xならびに放射状構造、例えば、(A−B)nXおよび(A−D−B)nX(式中、nは3から6である。)である。このようなブロックコポリマーは、典型的には、アニオン重合、安定フリーラジカル重合、カチオン重合またはチーグラー・ナッタ重合によって製造される。好ましくは、ブロックコポリマーはアニオン重合によって製造される。当業者は、あらゆる重合において、ポリマー混合物が特定量のA−Bジブロックコポリマーをあらゆる直鎖および/または放射状ポリマーに加えて含むことを理解するであろう。本発明の実施に不利益であるそれぞれの量は見出されていない。
【0040】
Aブロックは重合した(i)パラ置換スチレンモノマー、(ii)エチレン、(iii)3から18個の炭素原子のαオレフィン、(iv)1,3−シクロジエンモノマー、(v)水素化前に35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役ジエンのモノマー、(vi)アクリル酸エステル、(vii)メタクリル酸エステルおよび(viii)これらの混合物から選択される1以上のセグメントである。Aセグメントが1,3−シクロジエンまたは共役ジエンのポリマーである場合、ブロックコポリマーの重合の後でおよびブロックコポリマーのスルホン化の前にこれらのセグメントを水素化する。
【0041】
パラ置換スチレンモノマーはパラ−メチルスチレン、パラ−エチルスチレン、パラ−n−プロピルスチレン、パラ−イソ−プロピルスチレン、パラ−n−ブチルスチレン、パラ−sec−ブチルスチレン、パラ−イソ−ブチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレン、パラ−デシルスチレンの異性体、パラ−ドデシルスチレンの異性体および上記モノマーの混合物から選択される。好ましいパラ置換スチレンモノマーはパラ−t−ブチルスチレンおよびパラ−メチルスチレンであり、パラ−t−ブチルスチレンが最も好ましい。モノマーは、特定の源に依存して、モノマーの混合物であってもよい。パラ置換スチレンモノマーの全体の純度は、少なくとも90重量%、好ましくは少なくとも95重量%さらにより好ましくは少なくとも98重量%の望ましいパラ置換スチレンモノマーであることが望ましい。
【0042】
Aブロックがエチレンのポリマーセグメントであるとき、上で引用されるG.W.Coatesによる再考論文中の参考文献(この開示は参照によりここに組み込まれる。)において教示されるように、チーグラー・ナッタ法によってエチレンを重合することが有用であり得る。US3,450,795(この開示は参照することにより本明細書に組み込まれる。)において教示されるアニオン重合技術を用いてエチレンブロックを製造することが好ましい。このようなエチレンブロックのブロック分子量は、典型的には、約1,000から約60,000である。
【0043】
Aブロックが3から18個の炭素原子のαオレフィンのポリマーであるとき、このようなポリマーは、G.W.Coatesらによる上で引用される再考における参考文献で教示されるように、チーグラー・ナッタ法によって調製される。好ましくは、α−オレフィンはプロピレン、ブチレン、ヘキサンまたはオクタンであり、プロピレンが最も好ましい。このようなα−オレフィンブロックの各々のブロック分子量は、典型的には、約1,000から約60,000である。
【0044】
Aブロックが1,3−シクロジエンモノマーの水素化ポリマーであるとき、このようなモノマーは1,3−シクロヘキサジエン、1,3−シクロヘプタジエンおよび1,3−シクロオクタジエンからなる群より選択される。好ましくは、シクロジエンモノマーは1,3−シクロヘキサジエンである。このようなシクロジエンモノマーの重合はUS6,699,941(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に開示される。シクロジエンモノマーを用いるときは、非水素化重合シクロジエンブロックはスルホン化に感受性であるため、Aブロックを水素化することが必要である。従って、1,3−シクロジエンモノマーでAブロックを合成した後、このブロックコポリマーを水素化する。
【0045】
Aブロックが水素化前に35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役非環式ジエンの水素化ポリマーであるとき、共役ジエンは1,3−ブタジエンであることが好ましい。水素化前のポリマーのビニル含有率は35モルパーセント未満、好ましくは、30モルパーセント未満であることが必要である。特定の実施形態において、水素化前のポリマーのビニル含有率は25モルパーセント未満、さらにより好ましくは20モルパーセント未満で、15モルパーセント未満でさえあり、より有利な水素化前のポリマーのビニル含有率の1つは10モルパーセント未満である。このようにして、Aブロックはポリエチレンに類似する結晶構造を有する。このようなAブロック構造はUS3,670,054およびUS4,107,236に開示され、これらの開示の各々は参照によりここに組み込まれる。
【0046】
Aブロックはアクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルのポリマーセグメントでもあり得る。このようなポリマーブロックはUS6,767,976(この開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に開示される方法に従って製造することができる。メタクリル酸エステルの具体例には、一級アルコールおよびメタクリル酸のエステル、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、メトキシエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、トリフルオロメチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート;二級アルコールおよびメタクリル酸のエステル、例えば、イソプロピルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレートおよびイソボルニルメタクリレート;ならびに三級アルコールおよびメタクリル酸のエステル、例えば、tert−ブチルメタクリレートが含まれる。アクリル酸エステルの具体例には、一級アルコールおよびアクリル酸のエステル、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、ラウリルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、トリメトキシシリルプロピルアクリレート、トリフルオロメチルアクリレート、トリフルオロエチルアクリレート;二級アルコールおよびアクリル酸のエステル、例えば、イソプロピルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートおよびイソボルニルアクリレート;ならびに三級アルコールおよびアクリル酸のエステル、例えば、tert−ブチルアクリレートが含まれる。必要であれば、原料(1種類以上)として、1以上の他のアニオン重合性モノマーを本発明において(メタ)アクリル酸エステルと共に用いることができる。場合により用いることができるアニオン重合性モノマーの例には、メタクリル酸またはアクリル酸モノマー、例えば、トリメチルシリルメタクリレート、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジイソプロピルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−メチルエチルメタクリルアミド、N,N−ジ−tert−ブチルメタクリルアミド、トリメチルシリルアクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジ−イソプロピルアクリルアミド、N,N−メチルエチルアクリルアミドおよびN,N−ジ−tert−ブチルアクリルアミドが含まれる。さらに、これらの分子中に2以上のメタクリルまたはアクリル構造、例えば、メタクリル酸エステル構造またはアクリル酸エステル構造を有する多官能性アニオン重合性モノマー(例えば、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレート)を用いることができる。
【0047】
アクリルまたはメタクリル酸エステルポリマーブロックを製造するのに用いられる重合法においては、ただ1種類のモノマー、例えば、(メト)アクリル酸エステルを用いることもでき、またはこれらの2種類以上を組み合わせて用いることもできる。2種類以上のモノマーを組み合わせて用いるとき、モノマーの組み合わせおよび重合系にモノマーを添加するタイミング(例えば、2以上のモノマーの同時添加または所定の時間の間隔での別々の添加)のような条件を選択することにより、ランダム、ブロック、テーパードブロック等の共重合形態から選択されるあらゆる共重合形態を達成することができる。
【0048】
Aブロックは、15モルパーセントまでのビニル芳香族モノマー、例えば、以下でより詳細に取り組むBブロック内に存在するものを含むこともできる。幾つかの実施形態において、Aブロックは10モルパーセントまで、好ましくは僅かに5モルパーセントまで、特に好ましくは僅かに2モルパーセントまでのBブロックについて言及されるビニル芳香族モノマーを含むことができる。しかしながら、最も好ましい実施形態においては、AブロックはBブロック内に存在するビニルモノマーを含まない。Aブロックにおけるスルホン化レベルはAブロック内の全モノマーの0から15モルパーセントまでであり得る。当業者は、特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0049】
飽和Bブロックは、各々の場合において、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマーおよびこれらの混合物から選択される1以上の重合ビニル芳香族モノマーのセグメントを含む。上述のモノマーおよびポリマーに加えて、Bブロックは、このようなモノマーと1,3−ブタジエン、イソプレンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンとの、20から80モルパーセントの間のビニル含有率を有する水素化コポリマーを含むこともできる。これらの水素化ジエンとのコポリマーはランダムコポリマー、テーパードコポリマー、ブロックコポリマーまたは制御分布コポリマーであり得る。好ましい実施形態の1つにおいて、Bブロックは水素化され、共役ジエンとこの段落において注記されるビニル芳香族モノマーとのコポリマーを含む。別の好ましい実施形態において、Bブロックは、モノマーの性質のために飽和であり、水素化の追加処理工程を必要としない、非置換スチレンモノマーブロックである。制御分布構造を有するBブロックはUS2003/0176582に開示され、この開示は参照により本明細書に組み込まれる。US2003/0176582は、本発明のブロックコポリマー構造ではないものの、スルホン化ブロックコポリマーの調製も開示する。スチレンブロックを含むBブロックがここで説明される。好ましい実施形態において、Bブロックは非置換スチレンで構成され、別の水素化工程を必要としない。
【0050】
本発明の別の態様において、ブロックコポリマーは、少なくとも1つの、20℃未満のガラス転移温度を有する衝撃改質剤ブロックDを含む。一実施形態において、衝撃改質剤ブロックDはイソプレン、1,3−ブタジエンおよびこれらの混合物から選択される共役ジエンの水素化ポリマーまたはコポリマーを含み、このポリマーブロックのブタジエン部分は20から80モルパーセントの間の水素化前のビニル含有率を有し、このポリマーブロックは1,000から50,000の間の数平均分子量を有する。別の実施形態において、衝撃改質剤ブロックDは1,000から50,000の数平均分子量を有するアクリレートまたはシリコーンポリマーを含む。さらに別の実施形態において、衝撃改質剤ブロックDブロックは、1,000から50,000の数平均分子量を有する、イソブチレンのポリマーブロックである。
【0051】
各々のAブロックは約1,000から約60,000の間の数平均分子量を独立に有し、各々のBブロックは約10,000から約300,000の間の数平均分子量を独立に有する。好ましくは、各々のAブロックは2,000から50,000の間、より好ましくは3,000から40,000の間、さらにより好ましくは3,000から30,000の間の数平均分子量を有する。好ましくは、各々のBブロックは15,000から250,000の間、より好ましくは20,000から200,000の間、さらにより好ましくは30,000から100,000の間の数平均分子量を有する。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定される数平均分子量のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。これらの分子量は光散乱測定によって最も正確に決定され、数平均分子量として表される。好ましくは、スルホン化ポリマーは約8モルパーセントから約80モルパーセント、好ましくは約10から約60モルパーセントのAブロック、より好ましくは15モルパーセントを上回るAブロック、さらにより好ましくは約20から約50モルパーセントのAブロックを有する。
【0052】
スルホン化ブロックコポリマー中の非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーの相対量は、約5から約90モルパーセント、好ましくは、約5から約85モルパーセントである。代わりの実施形態において、この量は約10から約80モルパーセント、好ましくは約10から約75モルパーセント、より好ましくは約15から約75モルパーセントであり、最も好ましいのは約25から約70モルパーセントである。当業者は、特定の組み合わせがここで列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0053】
好ましい実施形態において、各々のBブロック内の、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントは、約10から約100モルパーセント、好ましくは約25から約100モルパーセント、より好ましくは約50から約100モルパーセント、さらにより好ましくは約75から約100モルパーセント、最も好ましくは100モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0054】
スルホン化の典型的なレベルは各々のBブロックが1以上のスルホン酸官能基を含むようなものである。スルホン化の好ましいレベルは、各々のBブロック内の非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマーおよび1,2−ジフェニルエチレンモノマーであるビニル芳香族モノマーのモルパーセントを基準にして、10から100モルパーセント、より好ましくは約20から95モルパーセント、さらにより好ましくは約30から90モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるモルパーセントのあらゆる組み合わせがスルホン化の適切な範囲に含まれることを理解するであろう。スルホン化のレベルは、テトラヒドロフラン中に再溶解されている乾燥ポリマーサンプルの、混合アルコールおよび水溶媒中のNaOHの標準化溶液を用いる滴定によって決定する。
【0055】
2.ポリマーを調製するための全アニオン工程
アニオン重合法はリチウム開始剤を用いて溶媒中で適切なモノマーを重合することを含む。重合ビヒクルとして用いられる溶媒は、形成されるポリマーのリビングアニオン鎖エンドと反応せず、商用重合ユニット内での扱いが容易であり、および生成物ポリマーに適切な可溶性特性を付与するあらゆる炭化水素であり得る。例えば、一般にはイオン性水素原子を欠く、非極性脂肪族炭化水素が特に適切な溶媒を形成する。環状アルカン、例えば、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタンおよびシクロオクタンが頻繁に用いられ、これらの全てが比較的非極性である。他の適切な溶媒は当業者に公知であって処理条件の所定の組において有効に実施されるように選択することができ、重合温度は考慮される主要要素の1つである。
【0056】
本発明のブロックコポリマーを調製するための出発物質には上述の初期モノマーが含まれる。アニオン共重合のための他の重要な出発物質には1種類以上の重合開始剤が含まれる。本発明において、このような出発物質には,例えば、アルキルリチウム化合物、例えば、s−ブチルリチウム、n−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、アミルリチウム等および、複開始剤(di−initiators)例えば、m−ジイソプロペニルベンゼンのジ−sec−ブチルリチウム付加物を含む、他の有機リチウム化合物が含まれる。他のこのような複開始剤はUS6,492,469に開示され、この開示は参照によりここに組み込まれる。開始剤は、重合混合物(モノマーおよび溶媒を含む。)中、所望のポリマー鎖あたり開始剤1分子に基づいて算出される量で用いることができる。リチウム開始剤法は周知であって、例えば、US4,039,593およびUS Re.27,145に記述され、これらの各々の開示は参照によりここに組み込まれる。
【0057】
本発明のブロックコポリマーを調製するための重合条件は、典型的には、アニオン重合に一般に用いられるものに類似する。重合は、好ましくは約−30℃から約150℃、より好ましくは約10℃から約100℃、最も好ましくは、産業上の制約の観点から、約30℃から約90℃の温度で行う。重合は、不活性雰囲気中、好ましくは、窒素の下で行い、約0.5から約10barsの範囲内の圧力下で達成することもできる。この重合は、一般には、約12時間未満を必要とし、温度、モノマー成分の濃度および望まれるポリマーの分子量に依存して、約5分から約5時間で達成することができる。2種類以上のモノマーを組み合わせて用いるとき、ランダム、ブロック、テーパードブロック、制御分布ブロック等の共重合形態から選択されるあらゆる共重合形態を用いることができる。
【0058】
当業者は、ルイス酸、例えば、アルミニウムアルキル、マグネシウムアルキル、亜鉛アルキルまたはこれらの組み合わせを添加することによってアニオン重合の工程を減速できることを理解するであろう。重合工程に対する添加されたルイス酸の効果は、
1)リビングポリマー溶液の粘度を低下させて、より高いポリマー濃度で稼動し、従って、用いられる溶媒が少ない工程を可能にすること、
2)リビングポリマー鎖エンドの熱安定性を高めてより高い温度での重合を可能にし、および、ここでも、ポリマー溶液の粘度を低下させて溶媒の使用を少なくすることを可能にすること、ならびに
3)反応の速度を遅くし、標準アニオン重合法において用いられているものと同じ、反応の熱を除去するための技術を用いながら、より高い温度での重合を可能にすること
である。
【0059】
減速アニオン重合技術にルイス酸を用いる処理上の利点はUS6,391,981、US6,455,651およびUS6,492,469に開示され、これらの各々の開示は参照によりここに組み込まれる。関連情報がUS6,444,767およびUS6,686,423に開示され、これらの各々の開示は参照によりここに組み込まれる。このような減速アニオン重合法によって製造されるポリマーは通常のアニオン重合法を用いて調製されるものと同じ構造を有することができ、このようなものとして、この方法は本発明のポリマーの製造において有用であり得る。ルイス酸減速アニオン重合法では100℃から150℃の間の反応温度が好ましく、これは、これらの温度で、非常に高いポリマー濃度での反応の実施を利用できるためである。化学量論的過剰のルイス酸を用いることもできるが、ほとんどの場合、過剰のルイス酸の追加経費を正当化するのに十分な処理改善の利益は存在しない。減速アニオン重合技術での処理性能の改善を達成するにはリビングアニオン鎖エンドのモルあたり約0.1から約1モルのルイス酸を用いることが好ましい。
【0060】
放射状(分岐)ポリマーの調製には「カップリング」と呼ばれる重合後工程が必要である。上記放射状式において、nは3から約30、好ましくは約3から約15、より好ましくは3から6の整数であり、Xはカップリング剤の残部または残基である。様々なカップリング剤が当分野において公知であり、これらをブロックコポリマーの調製において用いることができる。これらカップリング剤には、例えば、ジハロアルカン、ハロゲン化ケイ素、シロキサン、多官能性エポキシド、シリカ化合物、一価アルコールのカルボン酸とのエステル(例えば、安息香酸メチルおよびアジピン酸ジメチル)およびエポキシ化油が含まれる。星状ポリマーは、例えば、US3,985,830、US4,391,949およびUS4,444,953に開示されるように、ポリアルケニルカップリング剤で調製される。CA716,645に加えて、これらの各々の開示は参照によりここに組み込まれる。適切なポリアルケニルカップリング剤にはジビニルベンゼン、好ましくは、m−ジビニルベンゼンが含まれる。テトラ−アルコキシシラン、例えば、テトラ−メトキシシラン(TMOS)およびテトラ−エトキシシラン(TEOS)、トリ−アルコキシシラン、例えば、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、脂肪族ジエステル、例えば、アジピン酸ジメチルおよびアジピン酸ジエチルならびにジグリシジル芳香族エポキシ化合物、例えば、ビス−フェノールAおよびエピクロロヒドリンの反応から誘導されるジグリシジルエーテルが好ましい。
【0061】
重合後「カップリング」工程によって直鎖ポリマーを調製することもできる。しかしながら、放射状ポリマーとは異なり、上記式における「n」は整数2であり、Xはカップリング剤の残部または残基である。
【0062】
3.水素化ブロックコポリマーの調製方法
既述のように、幾つかの場合において、即ち、(1)B内部ブロック内にジエンが存在するとき、(2)Aブロックが1,3−シクロジエンのポリマーであるとき、(3)衝撃改質剤ブロックDが存在するとき、および(4)Aブロックが35モルパーセント未満のビニル含有率を有する共役ジエンのポリマーであるとき、スルホン化に先立って、ブロックコポリマーを選択的に水素化してあらゆるエチレン性不飽和を除去することが必要である。水素化は、一般には、最終ポリマーの熱安定性、紫外線安定性、酸化安定性および、従って、耐候性を改善し、AブロックまたはDブロックをスルホン化する危険性を低減する。
【0063】
水素化は従来技術において公知の幾つかの水素化または選択的水素化法のいずれかによって行うことができる。このような水素化は、例えば、US3,595,942、US3,634,549、US3,670,054、US3,700,633およびUS Re.27,145(これらの各々の開示は参照によりここに組み込まれる。)において教示されるような方法を用いて達成されている。これらの方法はエチレン性不飽和を含むポリマーを水素化するように作用し、適切な触媒の作用に基づく。このような触媒または触媒前駆体は、好ましくは、適切な還元剤、例えば、アルミニウムアルキルまたは元素周期律表の1、2および13族から選択される金属、特には、リチウム、マグネシウムもしくはアルミニウムの水素化物と組み合わされた、8から10族金属、例えば、ニッケルまたはコバルトを含む。この調製は、適切な溶媒または希釈剤中、約20℃から約80℃の温度で達成することができる。有用である他の触媒にはチタン系触媒系が含まれる。
【0064】
水素化は、共役ジエン二重結合の少なくとも約90パーセントが還元され、およびアレン二重結合の0から10パーセントが還元されるような条件下で行うことができる。好ましい範囲は共役ジエン二重結合の少なくとも約95パーセントが還元され、より好ましくは、共役ジエン二重結合の約98パーセント還元される。
【0065】
ひとたび水素化が完了したら、ポリマー溶液を比較的多量の水性酸(好ましくは、1から30重量パーセントの酸)と、約0.5部水性酸対1部ポリマー溶液の体積比で、共に撹拌することによって触媒を酸化および抽出することが好ましい。酸の性質は重要ではない。適切な酸には、リン酸、硫酸および有機酸が含まれる。酸素および窒素の混合物を散布しながら、この撹拌を約50℃で約30から約60分間継続する。この工程においては酸素および炭化水素の爆発性混合物が形成されることを回避するように注意を払わなければならない。
【0066】
4.スルホン化ポリマーの製造方法
ここに開示される複数の実施形態によると、上で調製されたブロックコポリマーをスルホン化し、溶液状態およびミセル形態にあるスルホン化ポリマー生成物を得る。このミセル形態において、メンブレンのキャスティングに先立ってスルホン化ブロックコポリマーを中和することができ、同時に、溶液状態のままスルホン化ブロックコポリマーのゲル化および/または沈殿の危険性が低減する。
【0067】
いかなる特定の理論によっても束縛されることなしに、スルホン化ブロックコポリマーのミセル構造は、相当量の消費されたスルホン化剤残滓を有するスルホン化ブロックを含むコアを有し、これらの残滓はスルホン化抵抗性ブロックによって取り囲まれ、次にこれらのブロックは有機非ハロゲン化脂肪族溶媒によって膨潤しているものと説明できるとするのが現在信じられるところである。以下でより詳細にさらに説明されるように、スルホン化ブロックはスルホン酸および/またはスルホン酸エステル官能基が存在するために非常に極性が高い。従って、このようなスルホン化ブロックはコア内に隔離され、一方で外部スルホン化抵抗性ブロックは非ハロゲン化脂肪族溶媒によって溶媒和するシェルを形成する。個別のミセルを形成することに加えて、ポリマー凝集体の形成もあり得る。いかなる特定の理論によっても拘束されることなしに、ポリマー凝集はミセルに与えられた説明以外の方法でのポリマー鎖の会合および/または2以上の個別のミセルの緩やかに凝集した群から生じる離散的または非離散的構造と記述することができる。従って、ミセル形態にある溶媒和したスルホン化ブロックコポリマーには個別のミセルおよび/またはミセルの凝集体が含まれ、このような溶液はミセル構造以外の構造を有する凝集ポリマー鎖が場合により含まれる。
【0068】
ミセルはスルホン化工程の結果として形成することができ、または代わりに、スルホン化に先立ってブロックコポリマーをミセル構造に配置することもできる。
【0069】
幾つかの実施形態においては、ミセルを形成するため、WO2008/089332に記述されるスルホン化法を実施することができる。これらの方法はUS2007/021569に記述されるスルホン化スチレンブロックコポリマーの調製に有用である。
【0070】
重合後、スルホン化剤、例えば、少なくとも1種類の非ハロゲン化脂肪族溶媒中の硫酸アシルを用いてスルホン化することができる。幾つかの実施形態においては、前駆体ポリマーを、前駆体ポリマーの製造から生じる反応混合物からの単離、洗浄および乾燥の後、スルホン化することができる。幾つかの他の実施形態においては、前駆体ポリマーを、前駆体ポリマーの製造から生じる反応混合物から単離することなしに、スルホン化することができる。
【0071】
a)溶媒
有機溶媒は、好ましくは、非ハロゲン化脂肪族溶媒であり、コポリマーの1以上のスルホン化抵抗性ブロックまたは非スルホン化ブロックを溶媒和する役割を果たす第1非ハロゲン化脂肪族溶媒を含む。第1非ハロゲン化脂肪族溶媒には、約5から10個の炭素を有する置換または非置換環状脂肪族炭化水素が含まれ得る。非限定的な例には、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタンおよびこれらの混合物が含まれる。最も好ましい溶媒はシクロヘキサン、シクロペンタンおよびメチルシクロヘキサンである。第1溶媒はポリマーブロックのアニオン重合に重合ビヒクルとして用いられるものと同じ溶媒であってもよい。
【0072】
幾つかの実施形態においては、第1溶媒のみを用いる場合でさえ、ブロックコポリマーはスルホン化に先立ってミセル形態であり得る。第1非ハロゲン化脂肪族溶媒中の前駆体ポリマーの溶液への、第2非ハロゲン化脂肪族溶媒の添加はポリマーミセルおよび/または他のポリマー凝集体の「前形成」を生じるか、またはこれを支援し得る。他方、第2非ハロゲン化溶媒は、好ましくは、第1溶媒と混和性ではあるが、処理温度範囲内では前駆体ポリマーのスルホン化感受性ブロックに対する貧溶媒であり、スルホン化反応を妨げもしないように選択される。換言すると、好ましくは、前駆体ポリマーのスルホン化感受性ブロックは処理温度範囲内で第2非ハロゲン化溶媒に実質的に不溶である。前駆体ポリマーのスルホン化感受性ブロックがポリスチレンである場合、ポリスチレンに対する貧溶媒であって第2非ハロゲン化溶媒として用いることができる適切な溶媒には、約12個までの炭素の直鎖および分岐鎖脂肪族炭化水素、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、2−エチルヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、パラフィン系油、混合パラフィン性溶媒等が含まれる。第2非ハロゲン化脂肪族溶媒の好ましい例の1つはn−ヘプタンである。
【0073】
予備形成ポリマーミセルおよび/または他のポリマー凝集体は、第2溶媒の添加なしに達成することができるものよりもかなり高い濃度でのゲル化を本質的に無効化することなしに、ポリマーのスルホン化を進行させることを可能にする。加えて、このアプローチは、ポリマースルホン化変換率および副生物の最少化の観点で、より極性の硫酸アシル、例えば、C3硫酸アシル(硫酸プロピオニル)の有用性を実質的に改善することができる。換言すると、このアプローチはより極性のスルホン化剤の有用性を改善することができる。このような硫酸アシルは以下にさらに記述される。
【0074】
b)ポリマー濃度
幾つかの実施形態によると、少なくともスルホン化の早期段階の間、前駆体ポリマー濃度を前駆体ポリマーの限界濃度未満に維持することにより、反応混合物、反応生成物またはこの両者におけるポリマー沈殿が実質的なく、およびゲル化の無効化がない方法で、高レベルのスチレンスルホン化を達成することができる。当業者は、ポリマー沈殿が実質的にない混合物中での処理の工程で、局所的溶媒蒸発の結果として少量のポリマーが表面上に堆積し得ることを理解するであろう。例えば、幾つかの実施形態によると、混合物中の沈殿しているポリマーが5%以下であるとき、混合物はポリマー沈殿が実質的にないものと見なされる。
【0075】
スルホン化を行うことができるポリマー濃度は出発ポリマーの組成に依存し、これは、これを下回るとポリマーのゲル化が障害とならず、または無視することができる限界濃度がポリマー組成に依存するためである。上述のように、この限界濃度は他の要素、例えば、用いられる溶媒または溶媒混合液の素性および望ましいスルホン化の程度にも依存し得る。一般には、ポリマー濃度は、好ましくはハロゲン化溶媒を実質的に含まない、反応混合物の総重量を基準にして、約1重量%から約30重量%、代わりに約1重量%から約20重量%、代わりに約1重量%から約15重量%、代わりに約1重量%から約12重量%または代わりに約1重量%から約10重量%の範囲内にある。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0076】
ここで説明される技術の幾つかの実施形態によると、前駆体ブロックポリマーまたは前駆体ブロックポリマーの混合物の初期濃度は、前駆体ポリマーの限界濃度未満、代わりに、反応混合物の総重量を基準にして、約0.1重量%から前駆体ポリマーの限界濃度未満である濃度まで、代わりに約0.5重量%から前駆体ポリマーの限界濃度未満である濃度まで、代わりに約1.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度まで、代わりに約2.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度まで、代わりに約3.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度まで、代わりに約5.0重量%から前駆体ポリマーの限界濃度を約0.1重量%下回る濃度までの範囲内に維持するべきである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0077】
少なくとも幾つかの実施形態においては、ポリマー濃度を限界濃度未満に維持することで、ゲル化につながる高濃度条件に対して副生物カルボン酸の濃度が減少している反応混合物が生じ得る。
【0078】
しかしながら、当業者は、特には半バッチまたは連続製造工程での、本技術の幾つかの実施形態におけるスルホン化ポリマーの製造の間、反応混合物中のポリマーの合計濃度が前駆体ポリマーの限界濃度を上回り得ることを理解するであろう。
【0079】
c)スルホン化剤
複数の実施形態によると、重合ブロックポリマーをスルホン化するのに硫酸アシルを用いることができる。アシル基は、好ましくは、CからC、代わりにCからC、代わりにCからCの、直鎖、分岐鎖もしくは環状のカルボン酸、無水物もしくは酸塩化物またはこれらの混合物から誘導される。好ましくは、これらの化合物は非芳香族炭素−炭素二重結合、ヒドロキシル基または硫酸アシルと反応性であるか、もしくはスルホン化反応条件下で容易に分解するあらゆる他の官能基を含まない。例えば、カルボニル官能基からα位に脂肪族四級炭素を有するアシル基(例えば、無水トリメチル酢酸から誘導される硫酸アシル)はポリマースルホン化反応の最中に容易に分解するものと思われ、好ましくは、ここで説明される技術においては回避するべきである。芳香族カルボン酸、無水物および酸塩化物、例えば、無水安息香酸およびフタル酸から誘導されるものも本技術における硫酸アシルの生成に有用なアシル基の範囲に含まれる。より好ましくは、アシル基はアセチル、プロピオニル、n−ブチリルおよびイソブチリルの群より選択される。さらにより好ましくは、アシル基はイソブチリルである。硫酸イソブチリルは高いポリマースルホン化の程度および比較的僅かな副生物形成をもたらすことが見出されている。
【0080】
無水カルボン酸および硫酸からの硫酸アシルの形成は以下の反応によって表すことができる:
【0081】
【化1】

硫酸アシルは、下記式のα−スルホン化カルボン酸を形成するスルホン化反応の工程の最中、ゆっくりとした分解を受ける:
【0082】
【化2】

【0083】
ここで説明される技術の一実施形態において、硫酸アシル試薬は、無水カルボン酸および硫酸から、非ハロゲン化脂肪族溶媒中のポリマーの溶液への添加に先立って別の「予備生成」反応において実施される反応において得られる。予備生成反応は溶媒の有無に関わらず実施することができる。硫酸アシルの予備生成に溶媒を用いるとき、溶媒は、好ましくは、ハロゲン化されていない。代わりに、非ハロゲン化脂肪族溶媒中のポリマーの溶液内でのその場反応において、硫酸アシル試薬を得ることもできる。本技術のこの実施形態によると、無水物の硫酸に対するモル比は約0.8から約2、好ましくは、約1.0から約1.4であり得る。この好ましい方法において用いられる硫酸は、好ましくは、約93重量%から約100重量%の濃度を有し、より好ましくは、約95重量%から約100重量%の濃度を有する。当業者は、発煙硫酸強度が反応混合物の意図しない炭化を回避または最少化するのに十分な低さであるのであれば、硫酸の代わりとしてその場反応において発煙硫酸を硫酸アシルの生成に使用できることを理解するであろう。
【0084】
本技術の別の実施形態においては、無水カルボン酸および発煙硫酸から、脂肪族溶媒中のポリマー溶液への添加に先立って別の「予備生成」において実施される反応であって、発煙硫酸強度が約1%から約60%遊離三酸化イオウ、代わりに約1%から約46%遊離三酸化イオウ、代わりに約10%から約46%遊離三酸化イオウの範囲にあり、無水物の発煙硫酸中に存在する硫酸に対するモル比が約0.9から約1.2である反応において硫酸アシル試薬を得ることができる。
【0085】
加えて、硫酸アシル試薬は無水カルボン酸から、硫酸、発煙硫酸または三酸化イオウの任意の組み合わせとの反応によって、調製することができる。さらに、硫酸アシル試薬は、カルボン酸からクロロスルホン酸、発煙硫酸、三酸化イオウまたはこれらのあらゆる組み合わせとの反応によって調製することができる。さらに、硫酸アシル試薬は、カルボン酸塩化物から硫酸との反応によって調製することもできる。代わりに、硫酸アシルは、カルボン酸、無水物および/または酸塩化物のあらゆる組み合わせから調製することができる。
【0086】
硫酸アシルでのポリマースチレン反復単位のスルホン化は、以下の反応によって表すことができる:
【0087】
【化3】

【0088】
硫酸アシル試薬は、ポリマー溶液中に存在するスルホン化感受性モノマー反復単位のモルに対して、軽度にスルホン化されるポリマー生成物の非常に低いレベルから高度にスルホン化されるポリマー生成物の高いレベルまでの範囲の量で用いることができる。硫酸アシルのモル量は所定の方法から生成することができる硫酸アシルの理論量と定義することができ、この量は反応における限定試薬によって規定される。本技術の幾つかの実施形態による硫酸アシルのスチレン反復単位(即ち、スルホン化感受性単位)に対するモル比は、約0.1から約2.0、代わりに約0.2から約1.3、代わりに約0.3から約1.0の範囲であり得る。
【0089】
ここで説明される技術の少なくとも幾つかの実施形態によると、ブロックポリマー中のスルホン化に感受性であるビニル芳香族モノマーのスルホン化の程度は、スルホン化ポリマーのグラムあたり約0.4ミリ当量(meq)スルホン酸(0.4meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約0.6meqスルホン酸(0.6meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約0.8meqスルホン酸(0.8meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約1.0meqスルホン酸(1.0meq/g)を上回り、代わりにスルホン化ポリマーのグラムあたり約1.4meqスルホン酸(1.4meq/g)を上回る。例えば、上述の前駆体ポリマーがここで説明される技術の方法に従ってスルホン化された後、スルホン化の典型的なレベルは各々のBブロックが1以上のスルホン酸官能基を含むものである。スルホン化の好ましいレベルは、各々のBブロック内のスルホン化感受性ビニル芳香族モノマー(これは、例えば、非置換スチレンモノマー、オルト置換スチレンモノマー、メタ置換スチレンモノマー、α−メチルスチレンモノマー、1,1−ジフェニルエチレンモノマー、1,2−ジフェニルエチレンモノマー、これらの誘導体またはこれらの混合物であり得る。)のモルパーセントを基準にして、約10から約100モルパーセント、代わりに約20から95モルパーセント、代わりに約30から90モルパーセント、代わりに約40から約70モルパーセントである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせがスルホン化レベルの適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0090】
スルホン化ポリマーのスルホン化のレベルまたは程度は、当業者に公知のNMRおよび/もしくは滴定法、ならびに/または下記実施例に記載され、当業者によって認められ得る2つの別々の滴定を用いる方法によって測定することができる。例えば、本技術の方法から得られる溶液をH−NMRによって約60℃(±20℃)で分析することができる。スチレンスルホン化パーセントはH−NMRスペクトルにおける芳香族シグナルの積分から算出することができる。別の例については、反応生成物を2つの別々の滴定によって分析し(「2滴定法」)、スチレンポリマースルホン酸、スルホン酸および非ポリマー副生物スルホン酸(例えば、2−スルホ−アルキルカルボン酸)の濃度を決定した後、質量バランスに基づいてスチレンスルホン化の程度を算出することができる。代わりに、スルホン化のレベルは、アルコールおよび水の混合液中のNaOHの標準化溶液を用いる、テトラヒドロフラン中に再溶解されている乾燥ポリマーサンプルの滴定によって決定することもできる。後者の場合、副生物酸の厳密な除去が好ましく保証される。
【0091】
硫酸アシル試薬の文脈においてポリマーのスルホン化の実施形態を上に記したが、他のスルホン化試薬の有用性も考慮される、例えば、三酸化イオウとホスフェートエステル、例えば、トリエチルホスフェートとの錯化/反応から誘導されるスルホン化試薬の使用が本技術において示されている。このようなスルホン化試薬の化学は、かなりの程度のスルホン酸アルキルエステル組み込みを伴う芳香族スルホン化をもたらすことが当分野において公知である。このようなものとして、生じるスルホン化ポリマーはスルホン酸およびスルホン酸アルキルエステル基の両者を同様に含む。他の考慮されるスルホン化試薬には、これらに限定されるものではないが、三酸化イオウと五酸化リン、ポリリン酸、1,4−ジオキサン、トリエチルアミン等との反応または錯化から誘導されるものが含まれる。
【0092】
d.反応条件
硫酸アシルとスルホン化感受性ブロックコポリマー、例えば、芳香族含有ポリマー(例えば、スチレンブロックコポリマー)とのスルホン化反応は、約20℃から約150℃、代わりに約20℃から約100℃、代わりに約20℃から約80℃、代わりに約30℃から約70℃、代わりに約40℃から約60℃の範囲内の反応温度で(例えば、約50℃で)行うことができる。反応時間は、反応の温度に依存して、約1分未満から約24時間以上の範囲内であり得る。無水カルボン酸および硫酸のその場反応を利用する幾つかの好ましい硫酸アシル実施形態において、反応混合物の初期温度は目的とするスルホン化反応温度とほぼ同じであり得る。代わりに、初期温度は目的とする次のスルホン化反応温度より低くてもよい。好ましい実施形態においては、約20℃から約40℃で(例えば、約30℃で)、約0.5から約2時間、代わりに約1から約1.5時間、その場で硫酸アシルを生成させた後、反応混合物を約40℃から約60℃に加熱して反応の完了を促進することができる。
【0093】
必要ではないものの、反応停止剤の添加により任意の反応停止工程を行うことができ、この反応停止剤は、例えば、水またはヒドロキシル含有化合物、例えば、メタノール、エタノールまたはイソプロパノールであり得る。典型的には、このような工程において、少なくとも残留する未反応硫酸アシルと反応するのに十分な量の反応停止剤を添加することができる。
【0094】
ここで説明される技術の幾つかの実施形態において、非ハロゲン化脂肪族溶媒中の芳香族含有ポリマーのスルホン化は、芳香族含有ポリマーをスルホン化剤とバッチ反応で、または半バッチ反応で接触させることによって行うことができる。本技術の幾つかの他の実施形態においては、スルホン化は連続反応で行うことができ、これは、例えば、連続撹拌タンク反応器または一連の2以上の連続撹拌タンク反応器を用いることによって可能にすることができる。
【0095】
スルホン化の結果として、ミセルコアは、ブロックコポリマーのスルホン化抵抗性ブロックを含む外部シェルによって取り囲まれる、スルホン酸および/またはスルホン酸エステル官能基を有するスルホン化感受性ブロックを含む。溶液中での(ミセル形成を生じる)この相分離の駆動力はスルホン化ブロックコポリマーのスルホン化ブロックと非スルホン化ブロックとの極性のかなりの相違に帰因する。後者のブロックは非ハロゲン化脂肪族溶媒、例えば、上で開示される第1溶媒によって自由に溶媒和され得る。他方、スルホン化ポリマーブロックはミセルのコア内に集中するように配置することができる。
【0096】
e.極性成分の保存および安定化
少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のブロックAは本質的にスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含まず、各々のブロックBはブロックB内に存在するモノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックであるスルホン化ブロックコポリマーの、1種類の非極性液相中のミセル溶液は、驚くべきことに、極性成分の存在下で安定であることが見出されている。実際、このスルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液は、ミセル構造を崩壊させることなしに、極性成分と「反応」することが見出されている。代わりに、極性成分が非極性液相中のスルホン化ブロックコポリマーのミセルによって閉じ込められ、これにより極性成分が非極性液相中で保存および/または安定化されることが見出されている。
【0097】
一実施形態において、極性成分の保存および/または安定化に適するスルホン化ブロックコポリマーおよび非極性液相のミセル溶液は、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のブロックAは本質的にスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含まず、各々のブロックBはブロックB内に存在するモノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックであるスルホン化ブロックコポリマーを1種類の非極性液相に溶解することによって得られる。
【0098】
幾つかの実施形態において、非極性液相は、好ましくはハロゲン化されていない、1種類以上の非プロトン性非極性溶媒によって形成される。説明用の例には4から12個の炭素原子を有する炭化水素が含まれる。炭化水素は直鎖、分岐鎖または単環もしくは多環であり得、および直鎖、分岐鎖に加えて単環もしくは多環炭化水素基、例えば、直鎖、分岐鎖もしくは環状ペンタン、(モノ−、ジ−もしくはトリ−)メチルシクロペンタン、(モノ−、ジ−もしくはトリ−)エチルシクロペンタン、直鎖、分岐鎖もしくは環状ヘキサン、(モノ−、ジ−もしくはトリ−)メチルシクロヘキサン、(モノ−、ジ−もしくはトリ−)エチルシクロヘキサン、直鎖、分岐鎖もしくは環状ヘプタン、直鎖、分岐鎖もしくは(一もしくは二)環状オクタン、2−エチルヘキサン、イソオクタン、ノナン、デカン、パラフィン油、混合パラフィン溶媒等を含み得る。
【0099】
特定の実施形態において、非極性液相はシクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、シクロヘプタン、シクロオクタンならびにこれらとシクロヘキサンおよび/またはシクロペンタンおよび/またはメチルシクロヘキサンとの混合液から選択される少なくとも1種類の溶媒を含む。
【0100】
さらなる実施形態において、非極性液相は、各々好ましくはハロゲン化されていない、少なくとも2種類の非プロトン性溶媒によって形成される。さらなる特定の実施形態において、非極性液相はヘキサン、ヘプタンおよびオクタンならびにこれらとシクロヘキサンおよび/またはメチルシクロヘキサンとの混合液から選択される少なくとも1種類の溶媒を含む。
【0101】
非極性液相中のスルホン化ブロックコポリマーの濃度はスルホン化ブロックポリマーの組成に依存し、これは、これを下回るとポリマーのゲル化が障害にならないか、または無視できる限界濃度がポリマー組成に依存するためである。上述のように、限界濃度は他の要素、例えば、溶媒または溶媒混合液の素性にも依存し得る。一般には、ポリマー濃度は、好ましくはハロゲン化溶媒を実質的に含まない、反応混合物の総重量を基準にして、約1重量%から約30重量%、代わりに約1重量%から約20重量%、代わりに約1重量%から約15重量%、代わりに約1重量%から約12重量%、または代わりに約1重量%から約10重量%の範囲内にある。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0102】
ミセル溶液を得るための非極性液相中でのスルホン化ブロックコポリマーの溶解は、例えば、必要量のスルホン化ブロックコポリマーおよび溶媒を約20℃から用いられる溶媒の沸点までの温度で組み合わせることによって達成することができる。一般には、溶解温度は約20℃から約150℃、代わりに約20℃から約100℃、代わりに約20℃から約80℃、代わりに約30℃から約70℃、代わりに約40℃から約60℃(例えば、約50℃)の範囲にある。溶解時間は、混合物の温度に依存して、おおよそ1分未満から約24時間以上までの範囲であり得る。
【0103】
代わりに、対応するブロックコポリマー前駆体を前述の方法でスルホン化することによってスルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液を調製することもできる。
【0104】
ミセルのスルホン化ポリマーコア内に封入するのに適する極性成分には、例えば、金属化合物および/または金属塩、特には、元素周期律表の1から14族の金属の化合物および/または塩が含まれる。説明としての金属化合物および/または塩には、例えば、リチウム(I)、ナトリウム(I)、金(I)ならびにコバルト(II)、ロジウム(II)、イリジウム(II)、ニッケル(II)、パラジウム(II)、白金(II)、亜鉛(II)、鉄(II)、マグネシウム(II)、カルシウム(II)および銅(II)に加えて、アルミニウム(III)、鉄(III)、鉛(IV)およびチタン(IV)の化合物および/または塩が含まれる。
【0105】
スルホン化ポリマーミセルのコア内に有用に閉じ込めることができる他の適切な極性成分には、例えば、医薬的活性剤、農業において用いられる薬剤、染料、着火および難燃剤化合物、伝導特性を有する物質ならびに特定の光学特性を有する薬剤が含まれる。吸収特性を有する極性物質もスルホン化ポリマーミセルのコア内に含めることができる。場合により、これらの物質は塩形態で提示することができる。
【0106】
極性成分は「物質状態で」スルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液に添加することができ、または溶媒との混合物、分散体または溶液の形態で添加することができる。極性成分の混合、分散または溶解に用いることができる溶媒は一般には重要ではない。幾つかの実施形態において、溶媒は水であり得、または有機溶媒であり得る。この文脈における有機溶媒はプロトン性でも非プロトン性でもよく、非プロトン性極性溶媒および非プロトン性非極性溶媒ならびに同じであるかもしくは異なる性質の2以上の溶媒の混合液が含まれる。
【0107】
スルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液に添加することができる極性成分の量は、極性化合物の性質、溶媒の性質および組成ならびにスルホン化ブロックコポリマーの性質およびスルホン化の程度に依存する。幾つかの実施形態においては、極性成分をスルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液に、スルホン化ブロックコポリマーの量を基準にして、0.01から100重量%の量で添加することができる。さらなる実施形態においては、極性成分をスルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液にスルホン化ブロックコポリマーの少なくとも0.05、好ましくは少なくとも0.1、より好ましくは少なくとも1重量%の量で添加することができる。さらなる実施形態においては、極性成分をスルホン化ブロックコポリマーのミセル溶液にスルホン化ブロックコポリマーの多くとも80、好ましくは多くとも65、より好ましくは多くとも50重量%の量で添加することができる。当業者は、たとえ組み合わせおよび範囲が具体的にここに列挙されないとしても、指定された限界値のあらゆる組み合わせが適切な量の範囲に含まれることを理解するであろう。
【0108】
5.スルホン化ポリマーを中和する方法
一般には、非中和ブロックコポリマーおよび有機溶媒の溶液を提供し、ならびに少なくとも1種類の、少なくとも11種の原子数を有する金属の化合物をブロックコポリマーの酸性官能基に対して塩基として作用する金属化合物と共に溶液に添加することによってスルホン化ブロックコポリマーを中和する。
【0109】
幾つかの実施形態によると、非中和ブロックコポリマーの溶液はブロックコポリマーを前述の方法でスルホン化した後に得られる反応混合物であり得る。他の実施形態においては、スルホン化ブロックコポリマーを有機溶媒に溶解することによって非中和ブロックコポリマーの溶液を提供することができる。スルホン化ブロックコポリマーを溶媒に溶解するとき、スルホン化反応器において生成されたままの未加工スルホン化生成物溶液を利用することができる。当業者は、スルホン化反応混合物から単離されており、洗浄されているか他の方法で精製されており、および/または乾燥されているスルホン化ブロックコポリマーを用いることが同様に可能であることを理解するであろう。しかしながら、このような手段は一般には必要であることが見出されず、処理工程経済のような考慮がこのような手段を望ましくないものとし得る。
【0110】
非中和ブロックコポリマーの溶液を提供するのに適する有機溶媒には、一般には、非スルホン化ポリマーブロックを実質的に溶解するか、またはこれらを溶媒和ミセル内に分散させるのに適する全ての溶媒および溶媒混合液が含まれる。このようなものとして、溶媒は非プロトン性極性または非極性有機溶媒、例えば、場合により部分的に、または完全にハロゲン化される炭素(炭化水素)、場合によりハロゲン化されるエステル、場合によりハロゲン化されるエーテル等から選択される。環境的な考慮を視野に入れた特定の実施形態においては、有機溶媒は非ハロゲン化非プロトン性極性または非極性溶媒である。好ましい実施形態の幾つかにおいては、溶媒は非プロトン性および非極性の、例えば、5から15、または5から12、または6から12個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖および環状炭化水素、例えば、n−ペンタン、イソ−ペンタン、シクロペンタン、メチル−シクロペンタン、n−ヘキサン、イソ−ヘキサン、シクロヘキサン、メチル−シクロヘキサン、n−ヘプタン、イソ−ヘプタン等である。
【0111】
有機溶媒中のスルホン化ブロックコポリマーの濃度は、一般には、提供される溶液のゲル化が回避されるように調整される。通常、ゲル化が生じ得る濃度はこれらのスルホン化の程度を含めたスルホン化ブロックコポリマーの性質に依存し、および選択された溶媒または溶媒混合液に依存する。一般には、ポリマー濃度は、好ましくはハロゲン化溶媒を実質的に含まない反応混合物の総重量を基準にして、約1重量%から約30重量%、代わりに約1重量%から約20重量%、代わりに約1重量%から約15重量%、代わりに約1重量%から約12重量%、または代わりに約1重量%から約10重量%の範囲内にあり得る。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されたモルパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0112】
中和方法の特定の実施形態において、有機溶媒中のスルホン化ブロックコポリマーの溶液は、前の節において取り組まれるように、ミセル形態にある非中和ブロックコポリマーを含む。
【0113】
スルホン化ブロックコポリマーは、少なくとも1種類の、少なくとも11種の原子数を有する金属の化合物をスルホン化ブロックコポリマーの場合によるミセル溶液に添加することによって中和する。この文脈において用いられる「金属」という表現は当分野において金属として理解される元素を指そうとするものであり、当分野において半金属元素として理解される元素を明確に排除しようとするものである。半金属元素はこれらの元素状態において展性または延性がなく、良好な導体でも良好な絶縁体でもなく、例えば、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム アンチモン、テルル、ポロニウムおよびアスタチンであり、これらの全ては当業者によって半金属であると理解される。このようなものとして、この態様の文脈において用いられる「金属」という表現は、少なくとも11種の原子数を有し、元素周期律表において上述の半金属原子の左または下に列挙される全ての元素を本質的に包含する。
【0114】
幾つかの実施形態において、金属は元素周期律表の第3、4、5または6周期の金属から選択される。他の実施形態において、金属は元素周期律表の第2から14族から選択される。特定の実施形態において、金属は第3から6周期および第2から14族の金属のうちから選択される。第3周期の代表的な金属はナトリウム、マグネシウムおよびアルミニウムである。第4周期の代表的な金属はカリウム、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛およびガリウムである。第5周期の代表的な金属はストロンチウム、ジルコニウム、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カドミウムおよびスズである。第6周期の代表的な金属はバリウム、ハフニウム、白金、金、水銀および鉛である。
【0115】
さらなる実施形態において、金属は第2、4、6、11、12、13および14族の金属から選択される。第2族の代表的な金属はマグネシウム、カルシウム、ストロンチウムおよびバリウムである。第4族の代表的な金属はチタン、ジルコニウムおよびハフニウムである。第6族の代表的な金属はクロム、モリブデンおよびタングステンである。第11族の代表的な金属は銅、銀および金である。第12族の代表的な金属は亜鉛、カドミウムおよび水銀である。第13族の代表的な金属はアルミニウム、ガリウム、インジウムおよびタリウムである。第14族の代表的な金属はスズおよび鉛である。特定の実施形態において、金属は第3から6周期および第2、4、6、11、12、13および14族の金属のうちから選択される。
【0116】
さらなる実施形態において、金属はナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウムまたは水銀、特には、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、チタン、クロム、銅または亜鉛である。
【0117】
金属は中和工程において化合物の形態で用いられ、金属はこの化合物中に少なくとも+1の酸化状態で存在する。幾つかの実施形態において、金属は金属化合物中に少なくとも+4の酸化状態で存在する。特定の実施形態において、金属は化合物中に+1、+2もしくは+3の酸化状態または+2、+3もしくは+4の酸化状態で存在する。当業者は、金属化合物が単一の金属を1以上の酸化状態で含むことができ、同じであるかまたは異なる酸化状態を有する1以上の金属の組み合わせを含むことができることを理解するであろう。
【0118】
金属化合物が非中和ブロックコポリマーの溶液中で、金属化合物と非中和ブロックコポリマーとの接触を確実なものとし、および金属化合物がブロックコポリマーの酸性部位の存在下で塩基として反応するのに十分なほど可溶であるか、または分散性である限り、様々な金属化合物をこの方法に従って用いることができる。適切な化合物には、例えば、無機化合物、例えば、ハロゲン化物、酸化物、水酸化物、硫化物、亜硫酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、ホウ酸塩、水素化物等;有機化合物、例えば、ホルメート、カルボキシレート、アルコラートおよび、いわゆる「有機金属化合物」、即ち、ヒドロカルビル基を含む金属化合物等;これらに加えて、無機に加えて有機部分を含む化合物、例えば、有機金属ハロゲン化物が含まれる。
【0119】
適切な化合物には、特には、金属が、金属とスルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホン酸エステル基との間の配位よりも弱い配位を金属と形成する少なくとも1つの基との組み合わせで存在する化合物が含まれる。当業者は、金属の性質が、問題の基に対する金属の配位がスルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホン酸エステル基に対する金属の配位よりも弱いかどうかを決定し得ることを理解するであろう。
【0120】
適切な化合物には、特には、金属が、スルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸のプロトンまたはスルホン酸エステル基と反応して金属よりも安定な配位または結合を形成することができる少なくとも1つの基との組み合わせで存在する化合物も含まれる。例えば、水素化物またはオルガニル基はプロトンと反応して水素または有機化合物を形成し得る。同様に、炭酸塩または炭酸水素塩はプロトンの影響下で二酸化炭素および水を形成することができ、酸化物および水酸化物はプロトンの影響下で水を形成することができる。
【0121】
幾つかの実施形態において、金属化合物は少なくとも1つの基、例えば、酸化物、水酸化物、アルコラート、ホルメート、炭酸塩、炭酸水素塩またはカルボキシレートを含む。アルコラート基は、一般には、少なくとも1つの炭素原子を有し、および8個までの炭素原子を有することができ、炭化水素部分は直鎖、分岐鎖、環状またはこれらの組み合わせである。このようなアルコラート基の説明用の例には、メトキシレート、エトキシレート、n−プロポキシレート、イソ−プロポキシレート、エチルヘキシルオキシレート、シクロヘキシルオキシレート、メチルシクロヘキシルオキシレート等が含まれる。カルボキシレート基は、一般には、少なくとも2個の炭素原子を有し、および8個までの炭素原子を有することができ、炭化水素部分は直鎖、分岐鎖、環状またはこれらの組み合わせである。このようなカルボキシレート基の説明用の例には、アセテート、n−プロピオネート、イソ−プロピオネート、エチルヘキサノエート、ステアレート、シクロヘキシルカルボキシレート、メチルシクロヘキシルカルボキシレート等が含まれる。
【0122】
他の実施形態において、金属化合物は少なくとも1つの水素化物またはヒドロカルビル基を含む。このような化合物のヒドロカルビル基は、一般には、少なくとも1個で、10個まで、または8個まで、または6個までの炭素原子を有し、直鎖、分岐鎖、環状またはこれらの組み合わせであり得る。説明用の例には、メチル、エチル、n−およびイソ−プロピル、n−、イソ−およびtert−ブチル、n−、イソ−、ネオ−およびシクロペンチル、n−、イソ−、ネオ−およびシクロヘキシル、フェニル、トリル等が含まれる。
【0123】
金属化合物の取り扱いの容易さに加えて経済的考慮が金属化合物の選択を支配し得る。従って、酸化物、水酸化物、アルコラート、ホルメート、炭酸塩、炭酸水素塩、カルボキシレート等のような金属化合物が好ましいものであり得る。
【0124】
加えて、例えばメンブレン用の材料としての、中和スルホニル化ブロックコポリマーの経済的な精製の観点から、生成物の容易な精製を可能にする基、即ち、反応して容易に分離される化合物、例えば、水素、二酸化炭素、炭化水素、アルコール、カルボン酸等を形成する基を含む金属化合物を用いることが好ましいものであり得る。当業者は、金属化合物の取り扱いおよび処理工程経済性においてあらゆる欠点および利点の均衡をとる方法を理解するであろう。
【0125】
スルホン化ブロックコポリマーの中和に用いられる金属化合物の量はスルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホン酸エステル基のモルおよび望ましい中和のレベルに依存する。金属化合物の量がスルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホン酸エステル基に関する化学量論的量の約80%未満であるとき、金属化合物は、通常、定量的に反応する。約80%を上回る中和のレベルについては、金属化合物を過剰に用いることが有利であることが見出されている。通常、金属化合物の量はスルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基に関する化学量論的量の約50%から約2000%の範囲の量で用いることができる。
【0126】
幾つかの実施形態においては、スルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホン酸エステル基に関する化学量論的量の少なくとも約60%、特には少なくとも約70%、とりわけ少なくとも約80%または少なくとも約100%で金属化合物を添加することができる。さらに、スルホン化ブロックコポリマー中に存在するスルホン酸またはスルホネート基に関する化学量論的量の多くとも約1500%、特には多くとも約750%、とりわけ多くとも約500%、または多くとも約250%、または多くとも約200%で金属化合物を添加することができる。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定された化学量論的量のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0127】
スルホン化ブロックコポリマーの中和に用いられる金属化合物の量は、さらに、金属の酸化状態に依存する。いかなる特定の理論によっても束縛されることを望むことなしに、1つのスルホン酸またはスルホン酸エステル基は金属化合物中の1電荷当量の金属によって中和できるものと信じられる。従って、+1の酸化状態にある金属は1つのスルホン酸またはスルホネート基を中和することができ、+2の酸化状態にある金属は2つのスルホン酸またはスルホン酸エステル基を中和することができる等である。従って、前述の金属化合物の化学量論的量は金属化合物中の金属の電荷当量に基づく。
【0128】
中和のレベルは広範な範囲内で調整することができ、例えば、ブロックコポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり少なくとも1電荷当量から1モルの金属化合物によって約70%から約100%のスルホン酸またはスルホン酸エステル基が中和される。他の実施形態においては、中和のレベルは、ブロックコポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり少なくとも1電荷当量で1モルまでの金属化合物によって中和される、少なくとも約80%、特には少なくとも約85%、とりわけ少なくとも約90%のスルホン酸またはスルホン酸エステル基である。幾つかの実施形態においては、ブロックコポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり少なくとも1電荷当量で1モルまでの金属化合物によって多くとも約95%、好ましくは多くとも約98%、とりわけ100%のスルホン酸またはスルホン酸エステル基が中和される。
【0129】
実施形態の幾つかにおいて、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が低い場合、中和のレベルはより高いものであり得、例えば、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が約10から約70mol%の範囲にある場合、中和のレベルは90から100%の範囲であり得る。他の実施形態において、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が高い場合、中和のレベルはより低いものであり得、例えば、中和されていないブロックコポリマーのスルホン化の程度が約65から100mol%の範囲にある場合、中和のレベルは約75%から100%の範囲であり得る。驚くべきことに、高レベルの中和が、水性環境において用いたときに膨潤する中和スルホン化ブロックコポリマーの傾向を低減することが見出されている。
【0130】
一般には、金属化合物は「物質状態で」スルホン化ブロックコポリマーの溶液に添加することができ、または溶媒との混合物、分散液もしくは溶液として添加することができる。金属化合物の混合、分散または溶解に用いることができる溶媒は一般には重要ではない。幾つかの実施形態において、溶媒は水であり得、または有機溶媒であり得る。この文脈における有機溶媒はプロトン性であっても非プロトン性であってもよく、これには非プロトン性極性溶媒および非プロトン性非極性溶媒ならびに同じであるか異なる性質の2種類以上の溶媒の混合液が含まれる。当業者は、幾つかの金属化合物、例えば、金属水素化物、有機金属化合物および有機金属ハロゲン化物が実質的に有害であり得、金属化合物を不活性溶媒または希釈剤中の分散形態で、または溶液として扱うことが必要であり得ることを理解するであろう。これらの金属化合物が溶媒中でプロトン性種と反応しないことは重要である。加えて、これらの金属水素化物、有機金属化合物および有機金属ハロゲン化物の多くが酸素と激しく反応し、酸素が存在しない状態で扱わなければならないことに注意することが重要である。従って、これらの環境下で、全ての相当の注意を払うことが好ましい。
【0131】
中和方法の一態様においては、他の点での有害条件による制約から離れて、金属化合物を実質的にスルホン化ブロックコポリマーの溶液に添加する。
【0132】
中和方法の別の態様においては、ここでも他の点での有害条件による制約から離れて、金属化合物を水または有機溶媒との混合物、分散液または溶液としてスルホン化ブロックコポリマーの溶液に添加する。この態様の幾つかの実施形態において、溶媒は水であるか、またはプロトン性もしくは非プロトン性極性溶媒、例えば、アルコール、例えば、メタノール、エタノール等;カルボン酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸等、エーテル、例えば、メチル−tert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン等、エステル、例えば、酢酸エチル等、ケトン、例えば、メチル−イソ−ブチルケトン(MIBK)等、ホルムアミド、例えば、ジメチルホルムアミド(DMF)等、スルホキシド、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等である。当業者は、金属化合物の混合、分散または溶解に用いられる溶媒が単一の溶媒、即ち、水または前述の有機プロトン性もしくは非プロトン性極性溶媒のうちの1つであっても、水および1以上の有機溶媒の組み合わせであっても、1以上の有機溶媒の組み合わせであってもよいことを理解するであろう。
【0133】
中和方法のさらに別の態様において、金属化合物の混合、分散または溶解に用いられる溶媒は水、1から4個の炭素原子を有するアルコール、1から5個の炭素原子を有するカルボン酸ならびに非プロトン性極性および非プロトン性非極性溶媒から選択される。この態様の幾つかの実施形態において、溶媒は水、C1−C4−アルコールおよびC1−C5−カルボン酸から選択される。この態様の他の実施形態において、溶媒は非プロトン性極性および非プロトン性非極性溶媒から選択される。特定の実施形態において、溶媒は非プロトン性非極性非ハロゲン化溶媒から選択される。
【0134】
中和反応は、通常、−40℃から溶媒または溶媒混合液の沸点までの範囲の温度で行うことができる。反応は、金属化合物の性質、金属化合物を添加する時間あたりの量、およびブロックコポリマーをスルホン化する程度に依存して発熱性であり得、即ち、反応媒体の温度が約10から20℃増加し得る。実施形態の幾つかにおいて、温度は約−40℃から約+100℃、または約20℃から約+60℃の範囲にあり得る。
【0135】
「物質状態にある」かまたは混合物、分散体もしくは溶液の状態にある金属化合物およびスルホン化ブロックコポリマーの溶液は、金属化合物をスルホン化ブロックコポリマーの溶液中に計り入れることによって、スルホン化ブロックコポリマーを金属化合物中に計り入れることによって(金属化合物は「物質状態」または混合物、分散体もしくは溶液の状態、好ましくは、混合物、分散体もしくは溶液の状態で存在する。)、または金属化合物およびスルホン化ブロックコポリマーの溶液を、同時にではあるが別々に、反応媒体中に計り入れることによって組み合わせることができる。幾つかの実施形態においては、「物質状態」または混合物、分散体もしくは溶液の状態にある金属化合物を秤量することが好ましく、金属化合物をスルホン化ブロックコポリマーの溶液に計り入れることによってスルホン化ブロックコポリマーの溶液を組み合わせることができる。
【0136】
当業者は反応時間が反応温度および金属化合物の反応性に依存することを理解するであろう。この文脈における「反応時間」という表現は、全ての反応体が結合しているときに開始し、中和反応が完了に到達しているときに終了する時間の間隔であるものと理解される。一般には、反応時間はほぼ1分未満から約24時間以上までの範囲をとり得る。好ましくは、約1時間以内または30分以内に完了に到達する。
【0137】
中和スルホン化ブロックコポリマーは、場合により減圧で、および場合により高温で、反応溶媒を蒸発させることによって反応混合物から分離することができる。幾つかの実施形態においては、中和スルホン化ブロックコポリマーを含む反応混合物をさらに処理することなしにフィルムまたはメンブランのキャスティングに用いることができる。
【0138】
6.中和ブロックポリマーの特性
ここで説明される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは予期せぬ優れた性能特性を有する。一方では、前述の金属化合物でのスルホン化ブロックコポリマーの中和は湿潤状態にあるスルホン化ブロックコポリマーに対して強化効果をもたらすことが見出されている。換言すると、水中に浸漬するとき、金属中和ブロックコポリマーは湿潤状態にある対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーよりも高い引張係数を示す。他方では、水中に浸漬しないとき、金属中和スルホン化ブロックコポリマーは乾燥状態にある対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの係数と本質的に同じであるか、または低い乾燥引張係数を示す。従って、幾つかの実施形態によると、湿潤状態および乾燥状態にある金属中和ブロックコポリマーの係数の間の差は湿潤状態および乾燥状態にある対応する非中和ブロックコポリマーの係数の間の差よりも小さい。これには水性環境に導入するとき、または水性環境において用いるとき、対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーを用いる場合よりも金属中和ブロックコポリマーが柔らかくなりそうもないという利点があり、これは金属中和スルホン化ブロックコポリマーを湿潤条件下での寸法安定性を必要とする用途に有意により適するものとする。金属中和スルホン化ブロックコポリマーからのフィルムまたはメンブレンキャストはこの非中和類似体を上回る湿潤環境における剛性の改善を示す。
【0139】
幾つかの実施形態において、金属中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのもの以下である湿潤引張係数を有する。他の実施形態において、湿潤引張係数は対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の100%から500%を上回る範囲まで増加する。他の実施形態において、湿潤引張係数は対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の100%から1000%を上回る範囲まで増加する。さらなる実施形態において、湿潤引張係数は対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの引張係数の100%から3000%を上回る範囲まで増加する。さらなる実施形態において、湿潤引張係数は対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの200%から3000%を上回る範囲まで増加する。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0140】
別の態様において、金属中和ブロックコポリマーの引張係数は湿潤および乾燥状態の両方において同じであるか、または類似し得る。従って、幾つかの実施形態において、ここで説明される金属中和ブロックコポリマーは乾燥引張係数の10%以上である湿潤引張係数を有する。他の実施形態において、湿潤引張係数は乾燥引張係数の20%以上である。さらなる実施形態において、湿潤引張係数は乾燥引張係数の40%以上である。他の実施形態において、湿潤引張係数は乾燥引張係数の100%以上である。他の実施形態において、湿潤引張係数は金属中和スルホン化ブロックコポリマーの乾燥引張係数を超える。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0141】
さらに、幾つかの実施形態において、金属中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さの少なくとも約40%である。他の実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さの少なくとも約50%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さの少なくとも約75%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの湿潤破断点引張り強さは乾燥破断点引張り強さとほぼ同じである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。当業者は、前述の最少パーセントの参照が、各々の場合において、湿潤引張り強さが乾燥引張り強さを超える実施形態を含むことを理解するであろう。
【0142】
加えて、驚くべきことに、ここで説明される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは有利な吸水特性を有することが見出されている。幾つかの実施形態において、金属中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値は対応する非中和ブロックコポリマーの吸水値以下である。他の実施形態において、金属中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値の80%未満、好ましくは50%未満、さらにより好ましくは20%未満の吸水値を有する。幾つかの実施形態において、金属中和スルホン化ブロックコポリマーは乾燥重量の約50重量%未満、好ましくは約40重量%未満、さらにより好ましくは約25重量%未満の吸水値を有する。金属中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水特性は、湿潤状態における寸法安定性に関して、対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーと比較して、この中和ブロックコポリマーを有意に改善されたものともする。
【0143】
さらに、幾つかの実施形態において、金属中和ブロックコポリマーの吸水値は5重量%から100重量%の範囲をとり得る。他の実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は20重量%から75重量%の範囲をとり得る。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は20重量%から50重量%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は20重量%から40重量%である。さらなる実施形態において、中和ブロックコポリマーの吸水値は20重量%から35重量%である。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0144】
ここで説明される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは水性環境において幾らかの水、例えば、乾燥重量を基準にして少なくとも0.1重量%を吸収するが、驚くべきことに、この吸水は、一般には、湿潤/乾燥循環で体積の著しい変化を生じないことが見出されている。この驚くべき有利な寸法安定性は、水管理メンブラン、即ち、メンブランが搭載装置内に拘束され、メンブランの寸法の僅かな変化がバックリングおよびテアリングを生じ、これにより装置の性能の低下または故障さえも必然的に生じ得る用途において望ましい。この驚くべき有利な寸法安定性は、例えば、脱塩用途、湿度調節装置、バッテリ隔離板、燃料電池交換膜、医療用管材用途等にも望ましい。
【0145】
加えて、驚くべきことに、ここに開示される金属中和ブロックコポリマーは、非常に良好な寸法安定性を同時に有しながら、高い水蒸気輸送速度を有することが見出されている。驚くべきことに、金属中和スルホン化ブロックコポリマーの水蒸気輸送速度(WVTR)は対応する非中和ブロックコポリマーのWVTRと同じであるか、またはこれに類似し、幾つかの実施形態においては、対応する非中和ブロックコポリマーのWVTRを超えさえもし得ることが見出された。従って、幾つかの実施形態において、金属中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約50%である。他の実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約65%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約75%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約85%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約90%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約95%である。さらなる実施形態において、WVTRは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRの少なくとも約99%である。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定されるパーセントのあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0146】
金属中和スルホン化ブロックコポリマーのWVTRは、1日に1ミル厚で1m2の露出表面積を有するメンブレンを通して輸送される水のグラム(g/m2/日/ミル)を単位として定量することができる。幾つかの実施形態において、ここに開示される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは少なくとも約15,000g/m2/日/ミルのWVTRを有する。他の実施形態においては、WVTRは少なくとも約18,000g/m/日/ミルである。さらなる実施形態においては、WVTRは少なくとも約20,000g/m/日/ミルである。さらなる実施形態においては、WVTRは少なくとも約22,000g/m/日/ミルである。さらなる実施形態においては、WVTRは少なくとも約23,000g/m/日/ミルである。当業者は、たとえ特定の組み合わせおよび範囲がここに列挙されないとしても、指定された速度のあらゆる組み合わせが適切な範囲に含まれることを理解するであろう。
【0147】
7.中和ブロックコポリマーの適用
中和スルホン化ブロックコポリマーはコポリマーの特性に悪影響を及ぼさない他の成分と混合することができる。中和ブロックコポリマーは、オレフィンポリマー、スチレンポリマー、親水性ポリマーおよびエンジニアリング熱可塑性樹脂を含む、様々な他のポリマー、ポリマー液および他の流体、例えば、イオン性液体、天然油、芳香剤、ならびに充填剤、例えば、ナノクレー、カーボンナノチューブ、フラーレンおよび伝統的な充填剤、例えば、タルク、シリカ等と配合することができる。
【0148】
加えて、中和スルホン化ブロックコポリマーは従来のスチレン/ジエンおよび水素化スチレン/ジエンブロックコポリマー、例えば、Kraton Polymers LLCから入手可能なスチレンブロックコポリマーと配合することができる。例示的スチレンブロックコポリマーには、直鎖S−B−S、S−I−S、S−EB−S、S−EP−Sブロックコポリマーが含まれる。イソプレンおよび/またはブタジエンと共にスチレンをベースとする放射状ブロックコポリマーならびに選択的水素化放射状ブロックコポリマーも含まれる。ブロックコポリマー前駆体、スルホン化前のブロックコポリマーとの配合物が特に有用である。
【0149】
オレフィンポリマーには、例えば、エチレンホモポリマー、エチレン/α−オレフィンコポリマー、プロピレンホモポリマー、プロピレン/α−オレフィンコポリマー、高衝撃性ポリプロピレン、ブチレンホモポリマー、ブチレン/α−オレフィンコポリマーおよび他のα−オレフィンコポリマーまたはインターポリマーが含まれる。代表的なポリオレフィンには、例えば、これらに限定されるものではないが、実質的に直鎖のエチレンポリマー、均一分岐直鎖エチレンポリマー、不均一分岐直鎖エチレンポリマーが含まれ、不均一分岐直鎖エチレンポリマーには直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、極または超低密度ポリエチレン(ULDPEまたはVLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)および高圧低密度ポリエチレン(LDPE)が含まれる。以下に含まれる他のポリマーは、エチレン/アクリル酸(EEA)コポリマー、エチレン/メタクリル酸(EMAA)イオノマー、エチレン/酢酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレン/ビニルアルコール(EVOH)コポリマー、エチレン/環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレンホモポリマーおよびコポリマー、プロピレン/スチレンコポリマー、エチレン/プロピレンコポリマー、ポリブチレン、エチレン一酸化炭素インターポリマー(例えば、エチレン/一酸化炭素(ECO)コポリマー、エチレン/アクリル酸/一酸化炭素ターポリマー等)である。以下に含まれるさらに他のポリマーは塩化ポリビニル(PVC)およびPVCと他の材料との配合物である。
【0150】
スチレンポリマーには、例えば、結晶性ポリスチレン、高衝撃性ポリスチレン、中衝撃性ポリスチレン、スチレン/アクリロニトリルコポリマー、スチレン/アクリロニトリル/ブタジエン(ABS)ポリマー、シンジオタクチックポリスチレン、スルホン化ポリスチレンおよびスチレン/オレフィンコポリマーが含まれる。代表的なスチレン/オレフィンコポリマーは、好ましくは少なくとも20、より好ましくは25%−wt以上の共重合スチレンモノマーを含む、実質的にランダムのエチレン/スチレンコポリマーである。
【0151】
親水性ポリマーには、酸との相互作用に利用可能な電子対を有するものと特徴付けられるポリマー性塩基が含まれる。このような塩基の例には、ポリマー性アミン、例えば、ポリエチレンアミン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルピリデン等;窒素含有物質のポリマー性類似物、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ナイロン、ABS、ポリウレタン等;酸素含有化合物のポリマー性類似物、例えば、ポリマー性エーテル、エステルおよびアルコール;ならびに、グリコールと結合するときの酸−塩基水素結合相互作用、例えば、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等、ポリテトラヒドロフラン、エステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、脂肪族ポリエステル等を含む。)、およびアルコール(ポリビニルアルコールを含む。)、多糖、およびデンプンが含まれる。利用することができる他の親水性ポリマーにはスルホン化ポリスチレンが含まれる。親水性液体、例えば、イオン性液体を本発明のポリマーと組み合わせて膨潤導電性フィルムまたはゲルを形成することができる。イオン性液体、例えば、US5,827,602およびUS6,531,241(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。)に記載されるものを、予めキャスティングされたメンブランを膨潤させることにより、またはメンブランのキャスティング、フィルムのコーティングもしくは繊維の形成の前に溶媒系に添加することにより、中和スルホン化ポリマーに導入することができる。
【0152】
さらなる成分として用いることができる例示的物質には、限定なしに、(1)顔料、酸化防止剤、安定化剤、界面活性剤、ワックスおよび流動促進剤、(2)微粒子、充填剤および油、ならびに(3)溶媒および組成物の加工性および取り扱いを強化するために添加される他の物質が含まれる。
【0153】
顔料、酸化防止剤、安定化剤、界面活性剤、ワックスおよび流動促進剤は、中和スルホン化ブロックコポリマーと組み合わせて用いるとき、組成物の総重量を基準にして、10重量%以下の量、即ち、0から10%の量で含めることができる。これらの成分のいずれか1種類以上が存在するとき、これらは約0.001から約5重量%、より好ましくは、約0.001から約1重量%の量で存在し得る。
【0154】
微粒子、充填剤および油は、組成物の総重量を基準にして、50重量%以下、0から50%の量で存在し得る。これらの成分のいずれか1種類以上が存在するとき、これらは約5から約50重量%、好ましくは、約7から約50重量%の量で存在し得る。
【0155】
当分野における通常の技術を有する者は、溶媒ならびに組成物の加工性および取り扱いを強化するために添加される他の物質の量が、多くの場合、配合される特定の組成物に加えて添加される溶媒および/または他の物質に依存することを理解するであろう。典型的には、このような量は組成物の総重量を基準にして50%を超えない。
【0156】
ここで説明される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは様々な用途および最終使用において用いることができ、これらの特性プロフィールはこれらを、水中に浸漬するときの高いモジュラス、良好な湿潤強さ、良好な寸法安定性、良好な水およびプロトン輸送特性、良好なメタノール耐性、容易なフィルムまたはメンブレン形成、良好な障壁特性、制御された柔軟性および弾性、調整可能な硬度ならびに熱/酸化安定性を必要とする用途における材料として特に適するものとする。
【0157】
本発明の一実施形態において、金属中和スルホン化ブロックコポリマーは電気化学用途、例えば、燃料電池(分離相)、燃料電池用のプロトン交換膜、燃料電池のものを含む電極組立において用いるためのスルホン化ポリマーセメント中の金属含浸炭素粒子の分散体、水電解槽(電解質)、酸蓄電池(電解質隔離板)、超コンデンサ(電解質)、金属回収工程用の分離セル(電解質障壁)、センサー(特には、湿度感知用の)等において用いることができる。金属中和スルホン化ブロックコポリマーは脱塩メンブレンとして、および多孔性メンブレン上のコーティングにおいても用いられる。気体の輸送におけるこれらの選択性はこれらを気体分離用途に有用なものとする。加えて、金属中和スルホン化ブロックコポリマーは、メンブレンまたは織物の一方の側から他方へ水を急速に輸送するこれらの能力の結果として所定レベルの快適性を提供しながら、例えば、発汗からの湿気を着用者の皮膚の表面からメンブレンまたは織物の外部に逃がし、およびこの逆を行いながら、メンブレン、コート済み織物および貼り合わせ布が様々な環境要素(風、雨、雪、化学薬品、生物学的薬剤)からの保護障壁を提供し得る防御服および通気性織物用途において用いられる。このようなメンブランおよび織物から製造される完全密封スーツは、煙、化学薬品漏出または様々な化学的もしくは生物学的薬剤への露出の可能性がある緊急の場面で最初の応答者を保護し得る。同様の必要性が、危険性が生物学的危害への露出である医療用途、特には、手術において生じる。これらのタイプのメンブランから製造される手術用手袋およびドレープが医療環境において有用であり得る他の用途である。これらのタイプのメンブランから製造される物品はUS6,537,538、US6,239,182、US6,028,115、US6,932,619およびUS5,925,621において報告されるように抗菌および/または抗ウイルスおよび/または抗微生物特性を有する可能性があり、ここではポリスチレンスルホネートがHIV(人免疫不全ウイルス)およびHSV(単純ヘルペスウイルス)に対する阻害剤として作用することが注記される。個人用衛生用途においては、他の体液の漏れに対する障壁を提供しながら発汗からの水蒸気を輸送し、湿潤環境において強度特性を依然として保持する本発明のメンブランまたは織物が有利である。おむつおよび成人用失禁構築物におけるこれらのタイプの材料の使用は、既存の技術を上回る改善である。
【0158】
従って、幾つかの実施形態において、ここで説明される金属中和スルホン化ブロックコポリマーは、特には、湿潤または水性環境において用いられる水蒸気輸送メンブレン用の材料として用いられる。このようなメンブランは、例えば、湿度を制御するための装置、電気透析を促進するための装置、逆電気透析のための装置、圧力抑制浸透のための装置、浸透を促進するための装置、逆浸透のための装置、水を選択的に添加するための装置、水を選択的に除去するための装置およびバッテリにおいて有用である。
【実施例】
【0159】
8.実施例
以下の例は説明のみを目的とするものであり、いかなる意味においても、本発明の範囲を制限しようとするものでもこのように解釈するべきものでもない。
【0160】
a.材料および方法
ここに記載される乾燥状態での引張係数はASTM D412に従って測定した。
【0161】
ここに記載される湿潤状態での引張係数は、試験前に水の下で24時間平衡化され、試験のための完全に水没させたサンプルを用いて、ASTM D412による方法と同様に測定した。
【0162】
ヘプタン、シクロヘキサンおよびエチルi−ブチレートの混合物
全ての引張りデータは74°F(23.3℃)および50%相対湿度の環境制御室内で収集した。
【0163】
ここに記載されるWVTRはASTM E 96/E96Mと同様に測定した。このASTM法を、小さいバイアルを用い、10mlの水を用い、および露出メンブランの面積を(ASTM法による1000mmとは反対に)160mmとすることによって改変した。水を添加してバイアルをメンブラン試験種で密封した後、バイアルを反転させ、25℃の温度および50%の相対湿度を有する空気を、メンブランを通して吹き込んだ。重量損失を時間に対して測定し、水輸送速度をこれらの測定に基づいてg/mとして、または、試験したメンブランの厚みについて標準化するときには、gミル/mとして算出した。
【0164】
ここに記載され、滴定によって決定されるスルホン化の程度は、以下の電位差滴定法によって測定した。非中和スルホン化反応生成物溶液を2回の別々の滴定(「2滴定法」)によって分析し、スチレンポリマースルホン酸、硫酸および非ポリマー性副生物スルホン酸(2−スルホイソ酪酸)の濃度を決定した。各々の滴定について、反応生成物溶液約5グラムのアリコートを約100mLのテトラヒドロフランおよび約2mLの水に溶解し、約2mLのメタノールを添加した。第1滴定においては、この溶液をメタノール中の0.1Nシクロヘキシルアミンで電位差的に滴定して2つの終点を得た。第1終点はサンプル中の全てのスルホン酸基に加えて硫酸の第1酸性プロトンに対応し、第2終点は硫酸の第2酸性プロトンに対応していた。第2滴定においては、溶液を約3.5:1 メタノール:水中の0.14N水酸化ナトリウムで電位差的に滴定し3つの終点を得た。第1終点はサンプル中の全てのスルホン酸基に加えて硫酸の第1および第2酸性プロトンに対応し、第2終点は2−スルホイソ酪酸のカルボン酸に対応し、および第3終点はイソ酪酸に対応していた。
【0165】
第1滴定における硫酸の第2酸性プロトンの選択的検出は、第2滴定における2−スルホイソ酪酸のカルボン酸の選択的検出と共に、酸成分濃度の算出を可能にした。
【0166】
ここに記載され、H−NMRによって決定されるスルホン化の程度は、以下の手順を用いて測定した。約2グラムの非中和スルホン化ポリマー生成物溶液を数滴のメタノールで処理し、50℃真空オーブン内で約0.5時間乾燥させることによって溶媒を奪った。乾燥ポリマーの30mgサンプルを約0.75mLのテトラヒドロフラン−d(THF−d)に溶解した後、これに濃HSOの部分液滴を添加し、次のNMR解析における妨害性不安定プロトンシグナルを芳香族プロトンシグナルから低磁場側にシフトさせた。得られる溶液を約60℃でH−NMRによって分析した。約7.6百万分率(ppm)のH−NMRシグナルの積分からスチレンスルホン化パーセンテージを算出し、これはスルホン化スチレン単位上の芳香族プロトンの1/2に相当する。このような芳香族プロトンの他の半分に相当するシグナルは非スルホン化スチレン芳香族プロトンおよびtert−ブチルスチレン芳香族プロトンに相当するシグナルと重複していた。
【0167】
ここに記載されるイオン交換能力は上述の電位差滴定法によって決定し、スルホン化ブロックコポリマーのグラムあたりのスルホン酸官能基のミリ当量として報告した。
【0168】
ミセルの形成は、シクロヘキサンで約0.5から0.6重量%の濃度に希釈したポリマーサンプル溶液を用いる、UKのMalvern Instruments Limitedから入手可能なMalvern Zetasizer Nano Series動的光散乱機器、モデル番号ZEN3600での粒子サイズ分析によって確認した。希釈したポリマー溶液サンプルを1cmアクリルキュベットに入れ、これにサイズ分布を強度の関数として決定するための機器の汎用アルゴリズム(A.S.Yeung and C.W.Frank,Polymer,31,pages 2089−2100 and 2101−2111(1990)を参照)を施した。
【0169】
b.実験
(I)非中和スルホン化ブロックコポリマーSBC−1の調製
配置A−D−B−D−Aを有するペンタブロックコポリマーを、Aブロックがパラ−tert−ブチルスチレン(ptBS)のポリマーブロックであり、Dブロックが水素化イソプレン(Ip)のポリマーブロックを含んでなり、およびBブロックが非置換スチレン(S)のポリマーブロックを含んでなる連続アニオン重合によって調製した。sec−ブチルリチウムを用いてシクロヘキサン中でのt−ブチルスチレンのアニオン重合を開始し、15,000g/molの分子量を有するAブロックを得た。次に、イソプレンモノマーを添加し、9,000g/molの分子量を有する第2ブロック(ptBS−Ip−Li)を得た。続いて、スチレンモノマーをリビング(ptBS−Ip−Li)ジブロックコポリマー溶液に添加し、重合してリビングトリブロックコポリマー(ptBS−Ip−S−Li)を得た。ポリマースチレンブロックはポリスチレンのみで構成され、28,000g/molの分子量を有していた。この溶液にイソプレンモノマーの他のアリコートを添加し、11,000g/molの分子量を有するイソプレンブロックを得た。従って、これはリビングテトラブロックコポリマー構造(ptBS−Ip−S−Ip−Li)をもたらした。パラ−tert−ブチルスチレンモノマーの第2アリコートを添加し、メタノールを添加することによってこれらの重合を停止させて約14,000g/molの分子量を有するptBSブロックを得た。その後、標準Co2+/トリエチルアルミニウム法を用いてこのptBS−Ip−S−Ip−ptBSを水素化し、ペンタブロックのイソプレン部分内のC=C不飽和を除去した。次に、無水i−酪酸/硫酸試薬を用いて、(さらなる処理なしに、酸化、洗浄をせず、「仕上げ」もせずに)このブロックポリマーを直接スルホン化した。ヘプタン(ブロックコポリマー溶液の体積あたりおおよそ等体積のヘプタン)を添加することにより、この水素化ブロックコポリマー溶液を約10%固体まで希釈した。十分な無水i−酪酸および硫酸(1/1(mol/mol))を添加し、ブロックコポリマーのgあたり2.0meqのスルホン化ポリスチレン官能基を得た。エタノール(2モルエタノール/無水i−酪酸のモル)を添加することによってスルホン化反応を停止させた。生じるポリマーは、電位差滴定により、2.0meqの−SO3H/ポリマーgの「イオン交換能力(IEC)」を有することが見出された。このスルホン化ポリマーの溶液は約10%wt/wtの固体レベルを有していた。
【0170】
(II)トリエチルアルミニウムでのミセル溶液の中和
(I)において得られた溶液の100gアリコート(10g ポリマー、20meqの−SOH)をさらに40gのシクロヘキサンで希釈した。不活性雰囲気中で、トリエチルアルミニウム(13.84g、20mmol)を撹拌スルホン化コポリマー溶液に滴下により添加した。20℃の発熱が観察された。生じる溶液を大気に晒した。
【0171】
(III)金属化合物でのミセル溶液の中和
トリエチルアルミニウムの代わりに以下の金属化合物を以下の量で用いて(II)における手順を反復した。
【0172】
【表1】

【0173】
(IV)メンブレンのキャスティング
(II)、(III.a)、(III.b)、(III.c)、(III.d)において得られた中和ポリマー溶液の各々および(I)において得られた溶液の20ミル厚キャスティングを16”×16”シリカ処理(silicanized)ガラスプレート上に引き出した。各々のプレートをキャスティングチャンバー内、1気圧、50%の相対湿度および室温(約23℃)で一晩乾燥させ、1ミル厚を僅かに超えるメンブレンを得た。
【0174】
(V)スルホン化ブロックコポリマーから製造されるメンブレンの中和
(I)において得られた対応する非中和スルホン化ブロックコポリマー溶液を(IV)において説明される通りにメンブレンにキャストした。このメンブレンを幾つかの細片に切断した。これらのフィルムの細片を、以下の脱イオン(D.I.)水中の水酸化ナトリウムの溶液を過剰に収容するプラスチックバッグ内に別々に入れた。
【0175】
【表2】

【0176】
サンプルをNaOH溶液と接触させて暗所で1週間保存した。上記の湿潤引張り試験手順を用いて得られる中和メンブレンを評価した。これらの物質の性能プロフィールを以下で表2において報告する。対照サンプルは出発メンブレンのサンプルを脱イオン水中に1週間浸漬ことによって調製した。「乾燥引張り」分析は、1週間浸漬し、脱イオン水ですすぎ、真空下、50Cで乾燥させたサンプルを用いた。
【0177】
c)結果および論考
アルミニウム中和ポリマー溶液(IIおよびIII.a)および亜鉛中和ポリマー溶液(III.cおよびIII.d)は、非中和スルホン化ブロックコポリマー(I)の溶液からのメンブレンのキャスティングについてと同じ技術を用いて均一なメンブレンに容易にキャストすることができた。リチウム中和ポリマー溶液(III.b)はこれらの条件下では容易に均一なメンブレンにキャストすることができなかった。リチウム中和ブロックコポリマーをキャスティングすることによって得られるメンブレンは外見がまだらであり、凸凹な表面がもたらされた。
【0178】
代表的なメンブレンの機械的特性に属するデータを下記表1(ミセル溶液中で中和した後、メンブレンにキャストしたサンプル)および2(メンブレン形成後に中和したサンプル)に書き集める。
【0179】
【表3】

【0180】
【表4】

【0181】
表1および2に集められたデータはメンブレンの機械的特性に対する中和の効果を示す。この効果はメンブレンを水中で平衡化させた後(湿潤条件)に最も顕著であった。とりわけ、ポリマー中のスルホン酸官能基の当量あたり1モルのアルミニウム試薬を用いて得られたメンブレン(II)は水との接触時に軟化しなかった(表1を参照)。著しさでは劣るものの、アルミニウムの量を減少させたとき(III.a)またはアルミニウムの代わりに亜鉛を用いたとき(III.cおよびIII.d)に同様の機械的特性の改善が観察された。
【0182】
一価イオンLi+およびNa+でのスルホン化ブロックコポリマーの中和も、程度はより小さいが、水の存在下でのメンブレンに対する強化効果を有していた。対照メンブレン(I)とは異なり、Li+で中和されている溶液からキャストされたメンブレンには湿潤引張り試験における低伸長での十分に定義された降伏現象があった。これらの材料は、対照メンブレンよりも湿潤であるとき、モジュラスがより高かった。しかしながら、Li+およびNa+イオンで改変されたメンブレンは多価イオンで中和されているスルホン化ブロックコポリマーから得られているメンブレンよりも水に対する耐性が低かった。とはいえ、一価イオン中和材料は対照メンブレン(I)よりも良好な水中での機械的特性をもたらした。
【0183】
非中和スルホン酸の形態にあるスルホン化ブロックコポリマーからキャストされたメンブレンは、水中に浸漬されるとき、重量が有意に増加することが見出され、この重量の増加は水の存在下における膨潤の尺度であると考えられた。さらに、重量の増加はメンブレンの寸法の増加に直接関連することが見出され、即ち、非中和スルホン化ブロックコポリマーから得られるメンブレンは水の影響下で膨潤する傾向を示す。これらとは対照的に、驚くべきことに、金属化合物で中和されており、この金属が少なくとも11種の原子数を有するスルホン化ブロックコポリマーから得られるメンブレンは水で平衡化されているときに示される膨潤がかなり小さく、この結果に基づくと、寸法安定性がまた改善されていた。
【0184】
アルミニウムおよび亜鉛中和メンブレン(II、III.a、III.cおよびIII.d)は、驚くべきことに、優れた寸法安定性を示した。これらのメンブレンは、水中に浸漬したとき、平衡時に水中でこれらの重量の約30%を吸収した。しかしながら、測定の誤差の範囲内で、これらのメンブレンの寸法は湿潤および乾燥条件下の両方で同じであり、即ち、それぞれのメンブレンは反復湿潤/乾燥循環で体積の変化がなかった。
【0185】
リチウム中和メンブレン(III.b)はこの試験においては明瞭に劣っていた。その上、上述のように、リチウム中和スルホン化ブロックコポリマーは外見が均一であるメンブランをもたらさず、このメンブランは引張り試験において弱いものであった。
【0186】
それぞれのメンブレンの吸水および水蒸気輸送特性に属するデータを下記表3および4に書き集める。
【0187】
【表5】

【0188】
【表6】

【0189】
中和反応の出発物質として役立つスルホン化ブロックコポリマーの特に有用な特性は、これらを、他の化学物質の輸送は拒絶しながら水を高速で輸送することが可能であるメンブランにキャストできることである。毎日表面積m2あたり水20リットルを超える輸送速度が約1ミル厚のメンブレンで観察されている。これがこれらの材料に望ましい性能特性の1つである。
【0190】
驚くべきことに、金属中和スルホン化ブロックコポリマーが水の輸送において等しく有効であるメンブレンをもたらすことが見出されている(表3を参照)。メンブレンを通して水を輸送する高い速度は、このメンブレンが水輸送を可能にする連続相を有することを必要とする。イオン含有相が連続ではなくて球状ミセル構造のものであり、従って、必要であれば分散されている溶液からメンブランがキャストされるため、驚くべきことに、水をメンブレンの一方の表面から他方へ移動させることを可能にするメンブレンが形成された。
【0191】
加えて、驚くべきことに、多価イオンで中和されている溶液からキャストされたメンブレンはイオン含有相の有意の膨潤を示すことなく多量の水を輸送することが可能であった(表3を参照)。対照ポリマー(I)の場合、メンブレンを通しての高い水流速に水との接触での実質的な膨潤が付随した。
【0192】
表3に記載されるデータによって示されるように、Li+イオンによって中和されているスルホン化ブロックコポリマーからキャストされるメンブレンは過度の膨潤を示した。水酸化ナトリウムの水溶液での既にキャストされたメンブレンの中和は対照メンブレン(I)と比較して改善された寸法安定性をもたらした。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、ならびに各々のBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックである、非中和スルホン化ブロックコポリマーを中和するための方法であって、
非中和スルホン化ブロックコポリマーおよび有機溶媒を含む溶液を提供し、ならびに
少なくとも1種類の金属化合物を溶液に添加する
ことを含み、ここで金属は少なくとも11種の原子数を有する、
方法。
【請求項2】
溶液がミセル形態にある溶解した非中和スルホン化ブロックコポリマーを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
スルホン酸またはスルホン酸エステル官能基の約80%から約100%が中和される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
金属化合物を非中和スルホン化ブロックコポリマーのスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基の1当量あたり約0.8から約10金属当量の量で添加する、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
有機溶媒が非ハロゲン化脂肪族溶媒である、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
有機溶媒が少なくとも第1および第2脂肪族溶媒を含み、Bブロックが第1溶媒に実質的に可溶であり、およびAブロックが第2溶媒に実質的に可溶である、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
金属化合物が、有機金属化合物、金属水素化物、金属酸化物、金属水酸化物、金属アルコキシド、金属カルボネート、金属水素カルボネートおよび金属カルボキシレートの群より選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
金属化合物がナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウムまたは水銀を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
金属化合物の金属が少なくとも12種の原子数を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
金属化合物がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉛、チタン、銅または亜鉛を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
金属が+2、+3または+4の酸化状態にある、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
水中で固体であり、少なくとも2つのポリマーエンドブロックAおよび少なくとも1つのポリマー内部ブロックBを含む中和スルホン化ブロックコポリマーであって、
a.各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、および各々のBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックであり、ならびに
b.スルホン化Bブロックの80%から100%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基が金属化合物で中和され、この金属は少なくとも11種の原子数を有する、
中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項13】
金属化合物がナトリウム、カリウム、セシウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、バナジウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、銀、亜鉛、カドミウムまたは水銀を含む、請求項12に記載の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項14】
金属化合物がマグネシウム、カルシウム、アルミニウム、鉛、チタン、銅または亜鉛を含む、請求項12に記載の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項15】
金属が+2、+3または+4の酸化状態にある、請求項12に記載の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項16】
a.中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値以下である吸水値を有し、および/または
b.中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの湿潤引張係数以上である湿潤引張係数を有する、
という規定の一方または両方を満たす、請求項12の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項17】
対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの吸水値の80%未満の吸水値を有する、請求項16の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項18】
乾燥重量の50重量%未満の吸水値を有する、請求項12の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項19】
乾燥重量の少なくとも0.1重量%の吸水値を有する、請求項16の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項20】
水和形態にある、請求項12の中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項21】
中和ブロックコポリマーの乾燥重量を基準にして少なくとも0.1重量%の水を組み込まれた形態で含む、請求項20の水和中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項22】
少なくとも約15,000g/m2/日/ミルの水蒸気輸送速度を有する、請求項20の水和中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項23】
a.水和中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の水輸送速度の少なくとも約50%の水輸送速度を有する;
b.水和中和スルホン化ブロックコポリマーは対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の湿潤引張係数以上である湿潤引張係数を有する、
という規定の一方または両方を満たす、請求項20の水和中和スルホン化ブロックコポリマー
【請求項24】
対応する非中和スルホン化ブロックコポリマーの水和形態の水輸送速度の少なくとも約75%の水輸送速度を有する、請求項20の水和中和スルホン化ブロックコポリマー。
【請求項25】
メンブレンを含む装置であって:
湿度を制御するための装置、電気透析を促進するための装置、逆電気透析用の装置、圧力抑制浸透のための装置、浸透を促進するための装置、逆浸透用の装置、水を選択的に添加するための装置、水を選択的に除去するための装置およびバッテリからなる群より選択され、メンブレンが請求項12において定義される中和スルホン化ブロックコポリマーを含む装置。
【請求項26】
非極性、液相ならびに、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、各々のBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックであるスルホン化ブロックコポリマーを含む極性成分を保存するための手段であって、
非極性、液相が極性成分を閉じ込めるのに適するミセル形態のスルホン化ブロックコポリマーを含む手段。
【請求項27】
非極性液相中で極性成分を安定化または保存するための方法であって、
a.非極性液相ならびに、少なくとも1つのエンドブロックAおよび少なくとも1つの内部ブロックBを有し、各々のAブロックはスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を本質的に含まず、各々のBブロックはBブロックのスルホン化感受性モノマー単位の数を基準にして約10から約100モル%のスルホン酸またはスルホン酸エステル官能基を含むポリマーブロックである、スルホン化ブロックコポリマーを含む溶液であって、スルホン化ブロックコポリマーをミセル形態で含む溶液を提供し、ならびに
b.少なくとも1種類の極性成分を溶液(a)に添加し、これにより極性溶媒をミセル内に閉じ込める
ことを含む方法。
【請求項28】
極性成分が金属化合物である、請求項27の方法。

【公表番号】特表2013−507518(P2013−507518A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−534201(P2012−534201)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【国際出願番号】PCT/US2010/049286
【国際公開番号】WO2011/046709
【国際公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【出願人】(510145211)クレイトン・ポリマーズ・ユー・エス・エル・エル・シー (10)
【Fターム(参考)】