説明

金属化表面の形成方法、金属化表面およびその使用

金属化繊維表面の形成方法であって、(A)少なくとも1つの金属粉末(a)を成分として含有する配合物を、パターン化して、または均等に施し、(B)他の金属を繊維表面上に付着させ、(C)炭素をカーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたはグラフェンの形で含有する他の層を施すことによって特徴付けられる、金属化表面の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
(A)少なくとも1つの金属粉末(a)を成分として含有する配合物を、パターン化して、または均等に施し、
(B)他の金属を繊維表面上に付着させ、および
(C)炭素をカーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたはグラフェンの形で含有する他の層を施すことによって特徴付けられる、金属化表面の形成方法に関する。
【0002】
更に、本発明は、本発明による方法により形成された表面に関する。更に、本発明は、金属化表面の使用に関する。
【0003】
金属化シート材料の製造は、大きな成長潜在性を有する作業分野である。金属化シート材料、例えばホイルおよび金属化繊維は、数多くの使用分野を見出している。殊に、金属化繊維シート材料は、例えば加熱マントルとして使用することができ、さらにファッション製品、例えば発光繊維として、または予防法を含めて医学で使用されてよい繊維の製造のため、例えば器官およびその機能の監視のために使用することができる。更に、金属化繊維シート材料は、電磁線の仕切りのために使用することができる。
【0004】
しかし、殊に、この種の金属化繊維を製造するための従来法は、依然として極めて費用が掛かり、融通が利かなかった。特殊な装備が必要とされ、例えば織機のような従来の装置は、使用することができない。即ち、例えば金属糸を繊維に組み込むことは、公知である。殊に、炭素繊維、シルバー繊維またはスチール繊維を織布上に施すか、またはシルバー繊維または銅繊維を織り合わせることは、公知である。しかし、多くの場合には、例えば銅糸およびポリエステル糸を満足のいく方法で互いに組み合わせて織布に変えることは、不可能である。それというのも、特殊な織機が必要であり、さらに製造プロセスの最初から、どのような形で金属を組み込むかを確定しなければならないからである。従って、顧客の望みに対して融通の利く取り組み方は、不可能である。
【0005】
WO 2007/074090には、金属化繊維の製造方法が開示されている。この開示された方法は、例えば加熱可能な繊維の簡単な製造を可能にする。この方法は、金属粉末、特にカルボニル鉄粉末が印刷される繊維から出発する。もう1つの工程においては、例えば電気メッキによって金属化される。極めて簡単に複雑化された金属化パターンを形成させることができる。
【0006】
WO 2008/101917には、1つの付加的な作業工程において電流を発生させるかまたは電流を消費する製品を供給する、金属化繊維の製造方法が開示されている。
【0007】
双方の開示された方法は、繊維の金属化において極めて簡単で安価な方法を可能にする。しかし、若干の場合には、欠点も観察される。即ち、印刷された電流導電路の1つに破壊またはねじれが存在する場合に、電気抵抗の形成に帰因する"ホットスポット"が生じることが確認される。この種の"ホットスポット"は、火災の危険を意味しうる。それというのも、長期に使用されかつ機械的応力下にある繊維において導電路の破壊およびねじれは、多くの場合に回避することができないからである。
【0008】
この種の欠点は、別の基体が繊維として選択された場合にも観察することができる。ホットスポットは、金属化プラスチックホイルにおいても望ましいものではない。
【0009】
即ち、長期間の機械的応力下でも"ホットスポット"を全く形成しない、金属化繊維ならびに別の金属化基体を製造することができる方法を提供するという課題が課された。更に、簡単に製造することができ、長期間の機械的応力下でも"ホットスポット"を全く形成しない金属化繊維を提供するという課題が課された。
【0010】
それに応じて、冒頭に定義された方法が見出された。
【0011】
金属化表面を形成させるための本発明による方法は、
(A)少なくとも1つの金属粉末(a)を成分として含有する配合物を、均等に施すかまたは特にパターン化して施し、
(B)他の金属を繊維表面上に付着させ、および
(C)炭素をカーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたはグラフェンの形で含有する他の層を施すことによって特徴付けられる。
【0012】
本発明による方法は、任意の、特に酸安定性の材料から形成されていてよい、基体の表面を提供することによって実施される。例えば、手で折り曲げることができる基体、例えばプラスチックホイル、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンおよび/またはポリスチレンのコポリマー、例えばABSまたはSAN、さらにポリ塩化ビニルが適している。
【0013】
1つの実施態様において、基体の表面は、織物表面、本発明の範囲内で略して繊維とも呼称される、例えば形成されたループ状編み物、リボン、フィルムテープ、ニットウェアまたは有利に織布またはフリース材料(不織布)である。
【0014】
本発明の範囲内で繊維は、剛性であってもよいし、特に可撓性であってもよい。好ましくは、1回または数回、例えば手で折り曲げることができる繊維であり、その際、折り曲げ前と折り曲げた状態からの復帰後との間に差異を確認することはできない。
【0015】
本発明の範囲内で繊維は、天然繊維または合成繊維、または天然繊維と合成繊維との混合物から構成されていてよい。天然繊維については、例えば羊毛、亜麻および有利に木綿を挙げることができる。合成繊維については、例えばポリアミド、ポリエステル、変性ポリエステル、ポリエステル混紡、ポリアミド混紡、ポリアクリルニトリル、トリアセテート、アセテート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエステルミクロ繊維が挙げられ、好ましくは、ポリエステルおよび木綿と合成繊維との混紡、殊に木綿とポリエステルとの混紡である。
【0016】
本発明の範囲内で繊維は、未処理であってよいし、好ましくは、前処理されていてよい。前処理法の例は、漂白、染色、塗布および仕上げ処理、例えば防しわ仕上げ処理である。
【0017】
繊維上に第1の作業工程(A)、略して工程(A)とも呼称される、で、成分として少なくとも1つの金属粉末(a)を含有する配合物が均等に、またはパターン化して施され、この場合当該金属は、元素の電気化学的系列において特に水素より強い負の標準電位を有する。
【0018】
工程(A)の配合物は、特に液状の配合物、特に有利に水性配合物である。この場合、水性配合物の連続相は、溶剤としての水を少なくとも50%、有利に少なくとも66%、特に有利に少なくとも90%含む。本発明の1つの好ましい実施態様において、水性配合物は、連続相が有機溶剤を全く含有しない。
【0019】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)の配合物は、金属粉末(a)を1〜70質量%含有する。
【0020】
本発明の1つの実施態様において、金属粉末(a)をベースとする金属は、元素の電気化学的系列において水素より強い負の標準電位を有する。その金属が元素の電気化学的系列において特に水素より強い負の標準電位を有する金属粉末(a)は、本発明の範囲内で略して金属粉末(a)と呼称される。
【0021】
金属粉末(a)は、特に粉末状の形の1つの金属または複数の金属であり、この場合単数または複数の金属は、特に水素より貴な金属である。好ましくは、金属粉末(a)として、銀、錫、ニッケル、亜鉛または前記金属の1つ以上の合金が選択される。
【0022】
本発明の1つの実施態様において、金属粉末(a)の粒子は、1〜250nm、有利に10〜100nm、特に有利に15〜25nmの範囲内の平均直径を有する。
【0023】
本発明の1つの実施態様において、金属粉末(a)の粒子は、例えば機器Microtrac X100でレーザー回折測定によって測定した、0.01〜100μm、有利に0.1〜50μm、特に有利に1〜10μmの平均粒径を有する。
【0024】
本発明による方法の1つの実施態様において、基体、殊に繊維には、工程(A)で少なくとも1つの金属粉末(a)を含有する、印刷用配合物、特に水性印刷用配合物が印刷され、この場合当該金属は、元素の電気化学的系列において特に水素より強い負の標準電位を有する。
【0025】
印刷用配合物の例は、印刷用インキ、例えばグラビア印刷用インキ、オフセット印刷用インキ、液状印刷用インキ、例えばValvoline法、有利に印刷用ペースト、特に水性印刷用ペーストのためのインキである。
【0026】
金属粉末(a)は、例えば純粋に、または混合物として、または前記金属の互いの合金または別の金属との合金の形で、粉末状Zn、Ni、Cu、Sn、Co、Mn、Fe、Mg、Pb、CrおよびBiから選択されてよい。適した合金は、例えばCuZn、CuSn、CuNi、SnPb、SnBi、SnCu、NiP、ZnFe、ZnNi、ZnCoおよびZnMnである。有利に使用可能な金属粉末(a)は、1つの金属だけを含み、特に有利には、鉄粉末および銅粉末、殊に有利に鉄粉末である。
【0027】
本発明の1つの実施態様において、金属粉末(a)は、0.01〜100μm、有利に0.1〜50μm、特に有利に1〜10μmの平均粒径を有する(例えば機器Microtrac X100でレーザー回折測定によって測定した)。
【0028】
1つの実施態様において、金属粉末(a)は、粒径分布によって特徴付けられる。例えば、d10値は、0.01〜5μmの範囲内であってよく、d50値は、1〜10μmの範囲内であってよく、およびd90値は、3〜100μmの範囲内であってよく、この場合には、次の通りである:d10<d50<d90。この場合には、特に何れの粒子も100μmを上廻る直径を有しない。
【0029】
金属粉末(a)は、不動態化された形で、例えば少なくとも部分的に被覆された(コーティングされた)形で使用することができる。適した被覆として、例えば無機層、例えば当該金属の酸化物、SiO2、またはSiO2aqまたは例えば当該金属の燐酸塩が挙げられる。
【0030】
金属粉末(a)の粒子は、原則的に全ての任意の形を有することができ、例えば針状、層板状または球状の粒子が使用可能であり、好ましくは、球状および層板状の粒子である。
【0031】
特に有利には、球状の粒子を有する金属粉末(a)、有利に主に球状の粒子を有する金属粉末(a)、殊に有利にいわゆる球状の粒子を有するカルボニル鉄粉末が使用される。
【0032】
金属粉末(a)の製造は、自体公知である。例えば、通常の市販製品または自体公知の方法により、例えば当該金属の塩の溶液からの電着または化学的還元によって、または例えば水素による酸化物粉末の還元によって、殊に冷却媒体、例えばガスまたは水中への金属溶融液の噴霧またはジェッティングによって製造された金属粉末(a)が使用されてよい。
【0033】
特に有利には、鉄ペンタカルボニルの熱分解によって製造された金属粉末(a)が使用され、本発明の範囲内でカルボニル鉄粉末も挙げられる。
【0034】
殊に、鉄ペンタカルボニルFe(CO)5の熱分解によるカルボニル鉄粉末の製造は、例えばUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,第5版,第A14卷,第599頁中に記載されている。鉄ペンタカルボニルの分解は、例えば常圧および例えば200〜300℃の範囲内の高められた温度で、例えば加熱テープ、加熱ワイヤまたは熱媒体が貫流する加熱マントルからなる加熱装置によって包囲されている、耐熱性材料、例えば石英ガラスまたはV2A鋼の管を特に垂直方向の位置で含む、加熱可能な分解装置中で行なうことができる。
【0035】
カルボニル鉄粉末の平均粒径は、処理パラメーターおよび分解段階に関連する反応管理によって幅広い範囲内で制御されてよく、および数平均に関連して一般に0.01〜100μm、有利に0.1〜50μm、特に有利に1〜8μmの範囲内にある。
【0036】
工程(A)の1つの実施態様において、金属粉末(a)は、金属粉末(a)の粒子が既に電流を伝導することができるように互いに近接して存在するように印刷されてよい。工程(A)の別の実施態様において、金属粉末(a)は、金属粉末(a)の粒子が電流を伝導することができないように互いに遙かに離れているように印刷されてよい。
【0037】
好ましくは、工程(A)において、金属粉末(a)は、インターデジタル構造が発生するように施される。インターデジタル構造とは、要素が接触することなく、指形で互いの中へ係合するパターンである。
【0038】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)の配合物は、結合剤(b)、有利に少なくとも1つの被膜形成ポリマー、例えばポリアクリレート、ポリブタジエン、少なくとも1つのビニル芳香族化合物と少なくとも1つの共役ジエンおよび場合により他のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つの水性分散液、例えばスチレン−ブタジエン結合剤を含有することができる。更に、適した結合剤は、ポリウレタン、特にアニオン性ポリウレタンまたはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーから選択される。結合剤(b)は、本発明の範囲内でバインダー(b)とも呼称されてよい。
【0039】
バインダー(b)として適したポリアクリレートは、本発明の範囲内で例えば、少なくとも1つの(メタ)アクリル酸−C1〜C10アルキルエステル、例えばアクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸−n−ブチルエステル、メタクリル酸−n−ブチルエステル、アクリル酸−2−エチルヘキシルエステルと少なくとも1つの他のコモノマー、例えば他のメタクリル酸−C1〜C10アルキルエステル、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレートまたはビニル芳香族化合物、例えばスチレンとの共重合によって得られる。
【0040】
バインダー(b)として適した、特にアニオン性のポリウレタンは、本発明の範囲内で例えば、1つ以上の芳香族または特に脂肪族または脂環式ジイソシアネートと1つ以上のポリエステルジオール、特に1つ以上のヒドロキシカルボン酸、例えばヒドロキシ酢酸、または特にジヒドロキシカルボン酸、例えば1,1−ジメチロールプロピオン酸、1,1−ジメチロール酪酸または1,1−ジメチロールエタン酸、またはジアミノカルボン酸、例えば(メタ)アクリル酸へのエチレンジアミンのマイケル付加生成物との反応によって得られる。
【0041】
結合剤(b)として特に適したエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えばエチレン、(メタ)アクリル酸および場合により少なくとも1つの他のコモノマー、例えば(メタ)アクリル酸−C1〜C10アルキルエステル、無水マレイン酸、イソブテンまたは酢酸ビニルの共重合、特に190〜350℃の範囲内の温度および1500〜3500、有利に2000〜2500バールの範囲内の圧力での共重合によって得られる。
【0042】
結合剤(b)として特に適したエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えばエチレン90質量%までを重合導入して含有することができ、および120℃で測定した、60mm2/秒〜10000mm2/秒、有利に100mm2/秒〜5000mm2/秒の範囲内の溶融粘度vを有することができる。
【0043】
結合剤(b)として特に適したエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーは、例えばエチレン90質量%までを重合導入して含有することができ、および160℃およびEN ISO 1133による325gの荷重で測定した、1〜50g/10分、有利に5〜20g/10分、特に有利に7〜15g/10分の範囲内のメルトフローレート(MFR)を有することができる。
【0044】
結合剤(b)として特に適した、少なくとも1つのビニル芳香族化合物と少なくとも1つの共役ジエンおよび場合により他のコモノマーとのコポリマー、例えばスチレン−ブタジエン結合剤は、少なくとも1つのエチレン系不飽和カルボン酸またはジカルボン酸または適した誘導体、例えば相応する無水物を重合導入して含有する。特に適したビニル芳香族化合物は、パラ−メチルスチレン、α−メチルスチレンおよび殊にスチレンである。特に適した共役ジエンは、イソプレン、クロロプレンおよび殊に1,3−ブタジエンである。特に適したエチレン系不飽和カルボン酸またはジカルボン酸またはその適した誘導体として、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸または無水イタコン酸が例示的に挙げられる。
【0045】
本発明の1つの実施態様において、結合剤(b)として、少なくとも1つのビニル芳香族化合物と少なくとも1つの共役ジエンおよび場合により他のコモノマーとの特に適したコポリマーは、重合導入した形で次のものを含有する:
ビニル芳香族化合物19.9〜80質量%、
共役ジエン19.9〜80質量%、
エチレン系不飽和カルボン酸またはジカルボン酸または適した誘導体、例えば相応する無水物0.1〜10質量%。
【0046】
本発明の1つの実施態様において、結合剤(b)は、例えばHaake粘度計を用いる、例えば回転粘度測定法によって測定した、23℃で10〜100dPa・s、有利に20〜30dPa・sの範囲内の動的粘度を有する結合剤から選択される。
【0047】
更に、工程(A)の配合物は、1つ以上の添加剤、例えば1つ以上の乳化剤または1つ以上の増粘剤または1つ以上の定着剤を含有することができる。乳化剤、増粘剤、定着剤および場合により他の使用すべき添加剤は、さらに下記に記載されている。
【0048】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)の配合物は、1〜90%の範囲内、有利に30〜80%の範囲内の固体含量を有する。
【0049】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)で、金属粉末(a)での基体、殊に繊維の付着量が20〜200g/m2、有利に40〜80g/m2の範囲内にあるように大量の配合物が施される。
【0050】
工程(A)からの配合物の施与後に、例えば光化学的または特に熱処理によって、実際に1つ以上の工程で硬化することができる。熱処理のために複数の工程を実施する場合には、同じ温度または特に異なる温度で複数の工程を実施することができる。
【0051】
硬化の目的のために、例えば50〜200℃の範囲内温度で処理することができる。
【0052】
硬化の目的のために、例えば10秒ないし15分、有利に30秒ないし10分の時間に亘って処理することができる。
【0053】
特に有利には、第1の工程で熱処理のために、例えば50〜110℃の範囲内の温度で、30秒ないし5分の時間に亘って、および引続き第2の工程において130℃〜200℃の範囲内の温度で30秒ないし15分の時間に亘って処理が行なわれる。
【0054】
熱処理が実施される温度が基体の融点に適合していることは、評価されるであろう。
【0055】
硬化の目的のためにそれぞれの個々の工程は、自体公知の機器、例えば乾燥キャビネット、テンターまたは真空乾燥キャビネット中で実施することができる。
【0056】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)で有利に次のものを含有する水性印刷用配合物が使用される:
(a)少なくとも1つの金属粉末、この場合当該金属は、元素の電気化学的系列において特に水素より強い負の標準電位を有し、好ましくは、カルボニル鉄粉末であり、
(b)少なくとも1つの結合剤、
(c)アニオン性、カチオン性または有利に非イオン性であってよい、少なくとも1つの乳化剤、
(d)場合により少なくとも1つのレオロジー変性剤。
【0057】
工程(A)の印刷用配合物は、少なくとも1つの結合剤(b)、有利に少なくとも1つの被膜形成ポリマー、例えばポリアクリレート、ポリブタジエン、少なくとも1つのビニル芳香族化合物と少なくとも1つの共役ジエンおよび場合により他のコモノマーとのコポリマーの少なくとも1つの水性分散液、例えばスチレン−ブタジエン結合剤を含有することができる。更に、適した結合剤(b)は、ポリウレタン、特にアニオン性ポリウレタンまたはエチレン−(メタ)アクリル酸コポリマーから選択される。結合剤(b)は、本発明の範囲内でバインダー(b)とも呼称されてよい。
【0058】
乳化剤(c)として、アニオン性、カチオン性または特に非イオン性の界面活性剤が使用されてよい。
【0059】
適したカチオン性乳化剤(c)は、例えばC6〜C18−アルキル基、C7〜C18−アラルキル基または複素環基を有する第1級、第2級、第3級または第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩ならびにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩である。例示的に、ドデシルアンモニウムアセテートまたは相応する塩酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの塩化物または酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルフェートならびにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドならびにジェミニ界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドが挙げられる。
【0060】
適したアニオン性乳化剤(c)の例は、アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(エトキシル化度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシ化されたエトキシ化されたアルキルフェノール(エトキシル化度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)およびスルホスクシネート、例えばスルホコハク酸モノエステルまたはスルホコハク酸ジエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0061】
好ましいのは、アリール置換またはアルキル置換ポリグリコールエーテル、さらに米国特許第4218218号明細書中に記載された物質、および10〜37の範囲内のy(米国特許第4218218号明細書に記載の式から)を有する同族体である。
【0062】
特に好ましいのは、非イオン性乳化剤(c)、例えば有利に3〜100モルのC2〜C4酸化アルキレンを有する、1回または有利に数回アルコキシル化されたC10〜C30アルカノール、殊に酸化エチレンによりアルコキシル化されたオキソアルコールまたは脂肪アルコールである。
【0063】
特に適した数回アルコキシル化された脂肪アルコールおよびオキソアルコールの例は、n−C1837O−(CH2CH2O)80−H、n−C1837O−(CH2CH2O)70−H、n−C1337O−(CH2CH2O)60−H、n−C1837O−(CH2CH2O)50−H、n−C1837O−(CH2CH2O)25−H、n−C1837O−(CH2CH2O)12−H、n−C1633O−(CH2CH2O)80−H、n−C1633O−(CH2CH2O)70−H、n−C1633O−(CH2CH2O)60−H、n−C1633O−(CH2CH2O)50−H、n−C1633O−(CH2CH2O)25−H、n−C1633O−(CH2CH2O)12−H、n−C1225O−(CH2CH2O)11−H、n−C1225O−(CH2CH2O)18−H、n−C1225O−(CH2CH2O)25−H、n−C1225O−(CH2CH2O)50−H、n−C1225O−(CH2CH2O)80−H、n−C3061O−(CH2CH2O)8−H、n−C1021O−(CH2CH2O)9−H、n−C1021O−(CH2CH2O)7−H、n−C1021O−(CH2CH2O)5−H、n−C1021O−(CH2CH2O)3−H、および前記乳化剤の混合物、例えばn−C1837O−(CH2CH2O)50−Hとn−C1633O−(CH2CH2O)50−Hとの混合物であり、
この場合係数は、それぞれ平均値(数平均)として解釈される。
【0064】
本発明による1つの実施態様において、工程(A)で使用される特に水性の印刷用配合物は、増粘剤とも呼称される濃稠化剤(d1)および粘度を低下させる薬剤(d2)から選択される少なくとも1つのレオロジー変性剤(d)を含有することができる。
【0065】
適した濃稠化剤(d1)は、例えば天然の濃稠化剤または特に合成濃稠化剤である。天然の濃稠化剤は、天然産生物であるかまたは例えば天然産生物の後処理、例えば精製操作、殊に抽出によって得ることができる濃稠化剤である。無機の天然の濃稠化剤の例は、層状珪酸塩、例えばベントナイトである。有機の天然の濃稠化剤の例は、特に蛋白質、例えばカゼインまたは有利に多糖類である。特に好ましい天然の濃稠化剤は、寒天、カラゲーン、アラビアゴム、アルギン酸塩、例えばアルギン酸ナトリウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸カルシウムおよびアルギン酸プロピレン、ペクチン、多糖類(Polyosen)、イナゴマメ穀粉(Carubin)およびデキストリンから選択される。
【0066】
一般に、例えば白油中または水溶液としての合成ポリマー、殊にアクリレートの溶液、および例えば噴霧乾燥によって製造された粉末としての乾燥された形の合成ポリマーから選択された合成濃稠化剤を使用することは、好ましい。濃稠化剤(d1)として使用される合成ポリマーは、完全に中和されているかまたは或る程度の百分率でアンモニアで中和された酸基を含有する。定着プロセスの経過中にアンモニアは、遊離され、それによってpH値は、低下され、実際の定着が開始する。それとは別に、定着に必要とされる、pH値の低下は、非揮発性の酸、例えばクエン酸、コハク酸、グルタル酸またはリンゴ酸の添加によって行なうことができる。
【0067】
殊に好ましい合成濃稠化剤は、アクリル酸85〜95質量%、アクリルアミド4〜14質量%および100000〜2000000g/molの範囲内の分子量を有する、式I
【化1】

〔式中、基R1は、同一でも異なっていてもよく、メチルまたは水素を表わすことができる〕で示される(メタ)アクリルアミド誘導体0.01〜最大1質量%のコポリマーから選択される。
【0068】
更に、適した濃稠化剤(d1)は、脂肪族ジイソシアネート、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートまたはドデカン−1,12−ジイソシアネートと特に2当量の数回アルコキシル化された脂肪アルコールまたはオキソアルコール、例えば10〜150回エトキシル化されたC10〜C30脂肪アルコールまたはC11〜C30オキソアルコールとの反応生成物から選択される。
【0069】
粘度を低下させる適した薬剤(d2)は、例えば有機溶剤、例えばジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチルピロリドン(NMP)、N−エチルピロリドン(NEP)、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブチルグリコール、ジブチルグリコール、および例えば残留アルコール不含のアルコキシル化n−C4〜C8アルカノール、有利に残留アルコール不含の1回ないし10回、特に有利に3回ないし6回エトキシル化されたn−C4〜C8アルカノールである。この場合、残留アルコールは、それぞれアルコキシル化されていないn−C4〜C8アルカノールである。
【0070】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)で使用される印刷用配合物は、
10〜90質量%、有利に50〜85質量%、特に有利に60〜80質量%の範囲内で金属粉末(a)、
1〜20質量%、有利に2〜15質量%の範囲内で結合剤(b)、
0.1〜4質量%、有利に2質量%までの範囲内で乳化剤(c)、
0〜5質量%、有利に0.2〜1質量%の範囲内でレオロジー変性剤(d)を含有し、この場合質量%での記載は、それぞれ工程(A)で使用される全印刷用配合物に関連し、および結合剤(b)の場合には、それぞれの結合剤(b)の固体含量に関連する。
【0071】
本発明の1つの実施態様において、本発明による方法の工程(A)では、金属粉末(a)および場合により結合剤(b)、乳化剤(c)および場合によりレオロジー変性剤(d)と共に少なくとも1つの助剤(e)を含有する印刷用配合物で印刷することができる。助剤として、感触改良剤(Griffverbesserer)、消泡剤、湿潤剤、乳化剤、尿素、活性剤、例えば殺生剤または難燃剤が例示的に挙げられる。
【0072】
適した消泡剤は、例えばシリコーン含有消泡剤、例えばアルコキシル化されていないかまたは20当量までのアルキレンオキシド、殊に酸化エチレンでアルコキシル化された、式HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH332および
HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32OSi(CH33]で示される消泡剤である。また、シリコーン不含の消泡剤、例えば数回アルコキシル化されたアルコール、例えば脂肪アルコールアルコキシレート、有利に2〜50回エトキシル化された、特に非分枝鎖状のC10〜C20アルカノール、非分枝鎖状のC10〜C20アルカノールおよび2−エチルヘキサン−1−オールが適している。更に、適した消泡剤は、脂肪酸−C8〜C20アルキルエステル、有利にステアリン酸−C10〜C20アルキルエステルであり、この場合C8〜C20アルキル、有利にC10〜C20アルキルは、非分枝鎖状または分枝鎖状であってよい。
【0073】
適した湿潤剤は、例えば非イオン性、アニオン性またはカチオン性界面活性剤、殊に脂肪アルコールのエトキシル化生成物および/またはプロポキシル化生成物または酸化プロピレン−酸化エチレンブロックコポリマー、エトキシル化またはプロポキシル化脂肪アルコールまたはオキソアルコール、さらに油酸またはアルキルフェノールのエトキシレート、アルキルフェノールエーテルスルフェート、アルキルポリグリコシド、アルキルホスホネート、アルキルフェニルホスホネート、アルキルホスフェートまたはアルキルフェニルホスフェートである。
【0074】
適した乳化剤は、例えば500〜5000g/mol、有利に800〜2000g/molの範囲内の分子量Mnを有する、酸化エチレンと酸化プロピレンとのブロックコポリマーである。例えば、式EO8PO7EO8〔式中、EOは、酸化エチレンを表わし、POは、酸化プロピレンを表わす〕で示される酸化プロピレン/酸化エチレンのブロックコポリマーは、殊に好ましい。
【0075】
適した殺生剤は、例えばプロキセル(Proxel)のブランドで市場で入手可能である。例示的には、次のものが挙げられる:Avecia Lim.社のProxel(登録商標)のブランドで商業的に入手可能である1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン("BIT")およびそのアルカリ金属塩;別の適した殺生剤は、2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン("MIT")および5−クロロ−2−メチル−2H−イソチアゾール−3−オン("CIT")。
【0076】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)で使用される印刷用配合物は、金属粉末(a)、結合剤(b)、乳化剤(c)および場合によりレオロジー変性剤(d)からの総和に対して助剤(e)を30質量%まで含有する。
【0077】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)では、少なくとも1つの金属粉末(a)を含有する印刷用配合物で均等に印刷する。別の実施態様において、金属粉末(a)の1つのパターンは、基体、殊に繊維を幾つかの位置で、金属粉末(a)を含有する印刷用配合物で印刷し、他の位置では印刷しないことにより、印刷される。好ましくは、金属粉末(a)が真っ直ぐの、または特に湾曲したストリップ状パターンまたは線状パターンの形で基体、殊に繊維上に配置されているパターンが印刷され、この場合記載された線は、例えばそれぞれ0.1μm〜5mmの範囲内の幅および厚さを有していてよく、および記載されたストリップは、5.1mm〜例えば10cmまたは場合によりそれ以上の範囲内の幅および0.1μm〜5mmの厚さを有していてよい。
【0078】
本発明の1つの好ましい実施態様において、複数のストリップまたは線が接触もしないし交差もしない、金属粉末(a)のストリップ状パターンまたは線状パターンが印刷される。殊に有利には、インターデジタル構造であるパターンが印刷される。この場合、ストリップまたは線は、2〜3mmの範囲内の最小間隔を有することができる。
【0079】
本発明の1つの実施態様において、工程(A)では、自体公知である方法により印刷する。本発明の1つの実施態様において、金属粉末(a)を含有する印刷用配合物がスクイジーで押圧されるステンシルが使用される。前記方法は、スクリーン印刷法に属する。更に、適した印刷法は、グラビア印刷法およびフレキソ印刷法である。更に適した印刷法は、バルブジェット法から選択される。バルブジェット法の場合には、特に濃稠化剤(d1)を含有しない印刷用配合物が使用される。
【0080】
本発明による方法を実施するために、工程(B)でもう1つの金属は、基体、殊に繊維シート材料の表面上に付着する。この場合、"繊維シート材料"は、先に工程(A)で加工された繊維である。
【0081】
工程(B)で複数の他の金属を付着することができるが、しかし、他の1つの金属だけを付着するのが好ましい。
【0082】
本発明の1つの実施態様において、金属粉末(a)としてカルボニル鉄粉末が選択され、および他の金属として銀、金および殊に銅が選択される。
【0083】
本発明の1つの実施態様、以下、工程(B1)とも呼称される、において、工程(B1)では外部電圧源なしに作業され、および工程(B1)で他の金属が元素の電気化学的系列においてアルカリ性溶液または特に酸性溶液中で、金属粉末(a)をベースとする金属より強くかつ水素より強い正の標準電位を有することが設けられている。
【0084】
そのために、例えば先に工程(A)および工程(B)で加工された基体、殊に繊維を、他の金属の塩および場合により1つ以上の還元剤の塩基性、中性または特に酸性の、特に水溶液で、例えば前記繊維を当該溶液中に装入することにより処理することが設けられていてよい。
【0085】
本発明の1つの実施態様において、工程(B1)では、0.5分〜12時間までの範囲内、有利に30分までで処理が行なわれる。
【0086】
本発明の1つの実施態様において、工程(B1)では、0〜100℃、有利に10〜80℃の範囲内の温度を有する、他の金属の塩の塩基性、中性または特に酸性の溶液で処理が行なわれる。
【0087】
付加的に工程(B1)では、1つ以上の還元剤が添加されてよい。例えば、銅を他の金属として選択した場合には、還元剤として、例えばアルデヒド、殊に還元糖または還元剤としてのホルムアルデヒドを添加することができる。例えば、ニッケルを他の金属として選択した場合には、例えばアルカリ金属次亜リン酸塩、殊にNaH2PO2・2H2O、またはボラネート、殊にNaBH4を還元剤として添加することができる。
【0088】
本発明の別の実施態様、以下、工程(B2)とも呼称される、において、工程(B2)では外部電圧源を用いて作業され、および工程(B2)で他の金属が元素の電気化学的系列において酸性またはアルカリ性溶液中で、金属粉末(a)をベースとする金属より強いかまたは弱い正の標準電位を有しうることが設けられている。特に、そのために、金属粉末(a)としてカルボニル鉄粉末を選択することができ、および他の金属としてニッケル、亜鉛または殊に銅を選択することができる。この場合には、工程(B2)で他の金属が元素の電気化学的系列において水素より強くかつ金属粉末(a)をベースとする金属より強い正の標準電位を有する場合に、付加的に工程(B1)と同様に他の金属が付着されることが設けられている。
【0089】
工程(B2)を実施するために、例えば10〜100A、有利に12〜50Aの範囲内の強さを有する電流を印加することができる。
【0090】
工程(B2)を実施するために、例えば1〜60分の時間に亘って外部電圧源を使用して作業することができる。
【0091】
本発明の1つの実施態様において、最初に外部電圧源なしに、その後に外部電圧源を用いて作業し、他の金属を工程(B)で、元素の電気化学的系列において金属粉末(a)をベースとする金属より強い正の標準電位を有することができるように工程(B1)と工程(B2)とが組み合わされる。
【0092】
本発明の1つの実施態様において、他の金属の溶液に1つ以上の助剤が添加される。助剤として、例示的に次のものが挙げられる:緩衝液、界面活性剤、ポリマー、殊に粒径が10nm〜10μmの範囲内にある粒子状ポリマー、消泡剤、1つ以上の有機溶剤、1つ以上の錯形成剤。
【0093】
特に好適な緩衝液は、酢酸/酢酸塩緩衝液である。
【0094】
特に好適な界面活性剤は、カチオン性、アニオン性および殊に非イオン性の界面活性剤から選択される。
【0095】
カチオン性界面活性剤として、例示的に次のものが挙げられる:C6〜C18−アルキル基、C6〜C18−アラルキル基または複素環基を有する第1級、第2級、第3級または第4級アンモニウム塩、アルカノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩、オキサゾリニウム塩、モルホリニウム塩、チアゾリニウム塩ならびにアミンオキシドの塩、キノリニウム塩、イソキノリニウム塩、トロピリウム塩、スルホニウム塩およびホスホニウム塩。例示的に、ドデシルアンモニウムアセテートまたは相応する塩酸塩、種々の2−(N,N,N−トリメチルアンモニウム)エチルパラフィン酸エステルの塩化物または酢酸塩、N−セチルピリジニウムクロリド、N−ラウリルピリジニウムスルフェートならびにN−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N−ドデシル−N,N,N−トリメチルアンモニウムブロミド、N,N−ジステアリル−N,N−ジメチルアンモニウムクロリドならびにジェミニ界面活性剤N,N’−(ラウリルジメチル)エチレンジアミンジブロミドが挙げられる。
【0096】
適したアニオン性界面活性剤の例は、アルキルスルフェート(アルキル基:C8〜C12)、エトキシ化されたアルカノール(エトキシル化度:4〜30、アルキル基:C12〜C18)およびエトキシ化されたアルキルフェノール(エトキシル化度:3〜50、アルキル基:C4〜C12)の硫酸半エステル、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12〜C18)、アルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9〜C18)およびスルホスクシネート、例えばスルホコハク酸モノエステルまたはスルホコハク酸ジエステルのアルカリ金属塩およびアンモニウム塩である。
【0097】
好ましいのは、アリール置換またはアルキル置換ポリグリコールエーテル、さらに米国特許第4218218号明細書中に記載された物質、および10〜37の範囲内のy(米国特許第4218218号明細書に記載の式から)を有する同族体である。
【0098】
特に好ましいのは、非イオン性界面活性剤、例えば有利に3〜100モルのC2〜C4酸化アルキレンを有する、1回または有利に数回アルコキシル化されたC10〜C30アルカノール、殊に酸化エチレンによりアルコキシル化されたオキソアルコールまたは脂肪アルコールである。
【0099】
適した消泡剤は、例えばシリコーン含有消泡剤、例えばアルコキシル化されていないかまたは20当量までのアルキレンオキシド、殊に酸化エチレンでアルコキシル化された、式HO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH332およびHO−(CH23−Si(CH3)[OSi(CH33][OSi(CH32OSi(CH33]で示される消泡剤であるまた、シリコーン不含の消泡剤、例えば数回アルコキシル化されたアルコール、例えば脂肪アルコールアルコキシレート、有利に2〜50回エトキシル化された、特に非分枝鎖状のC10〜C20アルカノール、非分枝鎖状のC10〜C20アルカノールおよび2−エチルヘキサン−1−オールが適している。更に、適した消泡剤は、脂肪酸−C8〜C20アルキルエステル、有利にステアリン酸−C10〜C20アルキルエステルであり、この場合C8〜C20アルキル、有利にC10〜C20アルキルは、非分枝鎖状または分枝鎖状であってよい。
【0100】
適した錯形成剤は、キレートを形成する化合物である。少なくとも1個のカルボン酸基を有する、アミン、ジアミンおよびトリアミンから選択された錯形成剤は、好ましい。例示的に、ニトリロトリ酢酸、エチレンジアミンテトラ酢酸およびジエチレンペンタアミンペンタ酢酸ならびに相応するアルカリ金属塩が挙げられる。
【0101】
本発明の1つの実施態様において、100nm〜100μm、有利に1μm〜10μmの範囲内の層厚が形成されるように大量の他の金属が付着される。
【0102】
工程(B)を実施する場合には、金属粉末(a)は、多くの場合に部分的に、または全部が他の金属によって代替され、この場合付着される他の金属の形態は、金属粉末(a)の形態と同一である必要はない。
【0103】
本発明による方法の1つの実施態様において、(B)の後に熱処理を、1つ以上の工程で実施することができる。熱処理のために複数の工程を実施する場合には、同じ温度または特に異なる温度で複数の工程を実施することができる。工程(B)後の熱処理は、工程(A)に引き続いて前記されたような熱処理と同様に実施することができる。
【0104】
本発明による方法の工程(C)で、炭素をカーボンブラックまたは特に炭素ナノチューブの形で含有するかまたは特に有利にグラフェンの形で含有する配合物が均等に施される。この場合、"均等に"とは、前面に亘って、または幅広い領域で、例えば少なくとも1cm幅のストリップ、有利に少なくとも2cm幅のストリップであることを意味する。
【0105】
この施与は、例えばドクターブレードを用いて行なうことができる。この施与の他の可能な形は、スクリーン印刷、例えば回転印刷またはフラットベッド印刷、および/または繊維のパディング加工である。
【0106】
本発明による1つの実施態様において、炭素をカーボンブラックの形で、または特にグラフェンの形で含有する、配合物、特に水性配合物は、均等に施される。
【0107】
本発明の1つの実施態様において、炭素をカーボンブラック、例えばオーブンブラックまたはランプブラック、有利にフレームブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、殊にファーネスブラックとして含有する配合物は、均等に施される。
【0108】
本発明の1つの好ましい実施態様において、炭素ナノチューブ(Kohlenstoffnanorohren、略してCNTまたは英語でCarbon nanotubes)、例えばシングルウォールカーボンナノチューブ(英語でsingle−walled carbon nanotubes,SW CNT)および有利にマルチウォールカーボンナノチューブ(英語でmulti−walled carbon nanotubes,MW CNT)を含有する配合物が均等に施される。
【0109】
炭素ナノチューブは、自体公知である。炭素ナノチューブの製造方法および性質は、例えばA. Jess et.al.,Chemie Ingenieur Technik 2006,78,94−100中に記載されている。
【0110】
本発明の1つの実施態様において、炭素ナノチューブは、0.4〜50nm、有利に1〜25nmの範囲内の直径を有する。
【0111】
本発明の1つの実施態様において、炭素ナノチューブは、10nm〜1mm、有利に100nm〜500nmの範囲内の長さを有する。
【0112】
炭素ナノチューブは、自体公知の方法により製造することができる。例えば、揮発性の炭素含有化合物、例えばメタンまたは一酸化炭素またはエチレン、または揮発性炭素含有化合物の混合物、例えば合成ガスは、1つ以上の還元剤、例えば水素および/または他のガス、例えば窒素の存在下で分解しうる。別の適したガス混合物は、一酸化炭素とエチレンとの混合物である。分解に適した温度は、例えば400〜1000℃、有利に500〜800℃の範囲内にある。分解に適した圧力条件は、例えば常圧ないし100バールの範囲内、有利に10バールまでである。
【0113】
シングルウォールカーボンナノチューブまたはマルチウォールカーボンナノチューブは、例えば炭素含有化合物をアーク中で、しかも分解触媒の存在下または不在下で分解することによって得ることができる。
【0114】
1つの実施態様において、揮発性炭素含有化合物または炭素含有化合物の分解は、分解触媒、例えばFe、Coまたは有利にNiの存在下で実施される。
【0115】
特に有利には、工程(C)での炭素は、グラフェンである。グラフェンは、本発明の範囲内で炭素原子が約1〜500個分の厚さである、本質的に層内にsp2混成した炭素原子の層を含む炭素多形である。
【0116】
本発明の1つの実施態様において、グラフェンは、それぞれ10nm〜1000μmの範囲内の長さおよび幅を有し、および0.3nm〜1μmの範囲内、有利に1〜50nmの範囲内、特に有利に5nmまでの厚さを有する材料から選択される。
【0117】
本発明の1つの好ましい実施態様において、グラフェンは、50:1、有利に100:1、特に有利に200:1、殊に有利に500:1の範囲内の原子比炭素:異質原子を有する材料から選択される。この場合、異質原子は、同一かまたは異なり、本質的に酸素、硫黄、窒素、燐および水素から選択され、有利に硫黄および酸素から選択され、殊に水素である。異質原子の割合は、本質的に当該グラフェンの製造プロセスによって定められる。
【0118】
本発明の1つの実施態様において、グラフェンは、グラファイトの機械的または化学的剥離(薄片状の粒子の分離、1つまたは若干の層の剥離、特に500個までの炭素単層の剥離)によって得ることができる材料から選択される。
【0119】
本発明の別の実施態様において、グラフェンは、グラファイトから酸化グラファイトへの部分的酸化、機械的剥離および引続く還元によって製造することができる材料から選択される。
【0120】
本発明の別の実施態様において、グラフェンは、グラファイトまたはグラファイト層間化合物をアルカリ金属、過酸化水素、ハロゲンまたはブチルリチウム、例えばn−ブチルリチウムで拡大させ、引続き層を剥離することによって得ることができる材料から選択される。
【0121】
この場合、本発明の範囲内で、剥離とは、薄片状粒子の分離または1つまたは若干の層、特に2〜1000まで、特に有利に3〜500までの炭素単層の剥離である。
【0122】
本発明の1つの実施態様において、グラフェンは、1〜200Ω、特に15〜40Ωの範囲内の導電率を有する。この導電率は、例えば被覆された全面積、例えば工程(C)後の全ての層に亘って測定される。
【0123】
本発明の1つの実施態様において、工程(C)で特に水性配合物は、例えばナイフ塗布、印刷、噴霧、パディングまたは貼合せによって施され、好ましいのは、ナイフ塗布および印刷である。水性配合物は、カーボンブラック、炭素ナノチューブまたはグラフェンを含有する。
【0124】
本発明の1つの実施態様において、工程(C)で配合物1kg当たり1〜300gの範囲内、特に30〜60gのカーボンブラック、炭素ナノチューブまたはグラフェンを含有する水性配合物が施される。
【0125】
本発明の1つの実施態様において、工程(C)でカーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたはグラフェンと共に少なくとも1つの添加剤、例えば1つ以上の分散剤(g)、1つ以上のレオロジー変性剤、定着剤または乳化剤を含有する水性配合物が施される。
【0126】
本発明の1つの実施態様において、工程(C)で使用される水性配合物は、少なくとも1つの結合剤(b)を含有することができる。
【0127】
適した分散剤の例は、実際に遊離酸または殊にアルカリ金属塩としての、芳香族モノ−またはジスルホン酸と1つ以上のアルデヒド、殊にホルムアルデヒドとの縮合生成物である。分散剤の1つの好ましい例は、実際にカリウム塩またはナトリウム塩としての、ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物である。
【0128】
本発明による1つの実施態様において、分散剤(g)は、本発明による水性配合物中で全部かまたは部分的に1つ以上の乳化剤(c)によって代替されてよい。
【0129】
本発明の1つの実施態様において、工程(C)で使用される水性配合物は、全体的に0.5〜20質量%、有利に1〜15質量%の添加剤を含有する。
【0130】
本発明に1つの実施態様において、工程(C)で基体、殊に繊維の表面積1m2当たりカーボンブラック、炭素ナノチューブまたはグラフェン1〜50gが施される。
【0131】
本発明の1つの実施態様において、カーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたは殊にグラフェンの施与後に熱処理を行なうことができる。熱処理の条件は、前記に記載されている。
【0132】
他の金属を付着しかつ炭素をカーボンブラック、ナノチューブまたは特にグラフェンの形で施与した後、本発明による金属化基体、殊に本発明による金属化繊維シート材料が得られる。本発明による金属化基体、殊に本発明による金属化繊維シート材料は、例えば水で1回以上洗浄することができる。
【0133】
例えば、電気的に加熱可能な、自動車の座席の製造に使用される繊維シート材料の製造のために、なお両端部には、自体公知の方法で電力ケーブルを、例えばロウ付けによって固定することができる。
【0134】
本発明の好ましい実施態様において、工程(C)後に
(D)腐蝕抑制層の施与または
(E)可撓性層の施与から選択された、少なくとも1つの他の工程が実施され、
この場合腐蝕抑制層は、剛性、例えば折り曲げ不可能であってよいか、または可撓性であってよい。
【0135】
腐蝕抑制層として、例えば次の材料の1つ以上からなる層を挙げることができる:ワックス、殊にポリエチレンワックス、ラッカー、例えば水性ラッカー、1,2,3−ベンゾトリアゾールおよび塩、殊にスルフェートおよび第4級脂肪アミンのメトスルフェート、例えばラウリル/ミリスチル−トリメチルアンモニウムメトスルフェート。
【0136】
可撓性の層として、例えばホイル、殊に例えばポリエステル、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン(TPU)または殊にポリオレフィン、例えばポリエチレンまたはポリプロピレンからなるポリマーホイルを挙げることができ、この場合ポリエチレンおよびポリプロピレンは、それぞれエチレンまたはプロピレンのコポリマーでもある。
【0137】
本発明の別の実施態様において、可撓性層として、工程(B)からの場合により印刷される結合剤(b)と同一でもよいし、または異なっていてもよい結合剤(b)が施される。
【0138】
施与は、それぞれ貼合せ、接着、溶接、ナイフ塗布、印刷、噴霧または注型によって行なうことができる。
【0139】
工程(E)で結合剤を施した場合には、その後に再び熱処理を行なうことができる。
【0140】
更に、本発明の対象は、少なくとも1つの繊維基体、特にインターデジタル構造でパターン中に施された他の金属の少なくとも1つの層、およびカーボンブラックまたは特にグラファイトの形で炭素を含有する少なくとも1つの層を含む、金属化シート材料、殊に金属化繊維シート材料である。
【0141】
更に、本発明の対象は、前記方法により得られた、金属化シート材料または基体、殊に金属化繊維シート材料である。本発明による金属化シート材料は、良好に意図的に製造することができるだけでなく、即ち例えば金属粉末(a)の印刷パターンの種類および付着された他の金属の量によって、例えば可撓性および導電率は、意図的に影響を及ぼされうる。また、本発明による金属化シート材料は、例えば導電性繊維のための使用において、可撓性で使用可能である。
【0142】
本発明の1つの実施態様において、本発明により線状またはストリップ状パターンで印刷された金属化シート材料は、室温で当該ストリップまたは線に沿って測定した、1mΩ/cm2〜1MΩ/cm2の範囲内、または1μΩ/cm〜1MΩ/cmの範囲内の比抵抗を有する。
【0143】
本発明の1つの実施態様において、本発明により線状またはストリップ状パターンで印刷された金属化シート材料は、線またはストリップのそれぞれの端部で自体工程の方法で固定、例えばロウ付けされた、少なくとも2本のケーブルを含む。
【0144】
更に、本発明の対象は、例えば加熱可能な繊維、殊に加熱可能な、自動車の座席および加熱可能なカーペット、ウォールカバーおよび服飾品を製造するための、本発明による金属化繊維シート材料の使用である。
【0145】
更に、本発明の対象は、電流を熱に変換する繊維、さらに天然または人造の電界を遮断しうる繊維、繊維が組み込まれた電子部品およびRFID繊維としての、またはこれらの繊維を製造するための、本発明による金属化繊維シート材料の使用である。RFID繊維とは、例えばトランスポンダーまたは英語でRFIDタグと呼称される機器を用いて、高周波を同定することができる繊維である。この種の機器は、内部電源を全く必要としない。
【0146】
繊維が組み込まれた電子部品の例は、繊維が組み込まれたセンサー、トランジスター、チップ、LED(発光ダイオード、英語:light emitting diodes)、ソーラーモジュール、ソーラーセルおよびペルティエ素子である。センサー、例えば殊に繊維が組み込まれたセンサーは、乳児または老人の身体機能を監視するのに適している。更に、適した用途は、極めて派手な服飾品、例えば極めて派手なチョッキである。
【0147】
従って、本発明の対象は、本発明による金属化繊維シート材料を使用して、加熱可能な繊維、例えば加熱可能なウォールカバー、カーペットおよびドレープ、加熱可能な自動車の座席および加熱可能なカーペットを製造するため、さらに電流を熱に変換する繊維、さらに電界を遮断しうる繊維、繊維が組み込まれた電子部品およびRFID繊維を製造するための方法である。本発明による金属化繊維シート材料を使用して、加熱可能な繊維、電流を熱に変換する繊維、さらに電界を遮断しうる繊維およびRFID繊維を製造するための本発明による方法は、例えば本発明による金属化繊維シート材料を仕上げプロセスに掛けるように実施することができる。
【0148】
特に、本発明の対象は、本発明による金属化繊維を使用して製造された、加熱可能な、自動車の座席である。本発明による加熱可能な、自動車の座席は、例えば心地よい座席温度を発生させるために、僅かに電流を必要とし、したがって自動車のバッテリーを注意深く取り扱うようにし、このことは、殊に冬期において好ましい。更に、融通の利く設計で本発明による方法により加熱可能な、自動車の座席を製造することができ、このことは、心地よい熱分布を保証する。本発明による金属化繊維は、長期の利用後でも優れた性質を有し、例えば殆ど"ホットスポット"を有しない。
【0149】
特に、本発明の対象は、本発明による金属化繊維を使用して製造されたかまたは本発明による金属化繊維からなる、ウォールカバー、カーペットおよびドレープである。
【0150】
更に、本発明の対象は、グラフェン、
(d)特に増粘剤から選択された、少なくとも1つのレオロジー変性剤、および
(g)少なくとも1つの分散剤
および場合により少なくとも1つの結合剤(b)を含有する水性配合物である。
【0151】
この場合、レオロジー変性剤および分散剤は、前記のものである。
【0152】
本発明による1つの実施態様において、分散剤(g)は、本発明による水性配合物中で全部かまたは部分的に1つ以上の乳化剤(c)によって代替されてよい。
【0153】
本発明の1つの実施態様において、本発明による水性配合物は、0.01〜5質量%、有利に0.1〜3.5質量%、特に有利に2〜3質量%のグラフェン、場合により0.1〜20質量%、有利に4質量%〜8質量%のレオロジー変性剤(d)および場合により0.1〜10質量%、有利に1〜6質量%の分散剤を含有する。
【図面の簡単な説明】
【0154】
【図1】印刷用ペーストを用いて、メッシュ80のスクリーンでポリエステル織物に印刷した、ストリップパターンを示す略図。
【実施例】
【0155】
本発明は、作業例によって説明される。
【0156】
作業例
一般的な注釈:
別記しない限り、百分率での記載は、質量%を示す。
【0157】
結合剤中のコモノマーの質量部での記載は、それぞれ全ての固体に対するものである。
【0158】
分散剤の場合のgでの記載は、常に報告されたグロスである。
【0159】
I.印刷用ペーストの製造
成分:
金属粉末(a.1):顕微鏡的に薄手の酸化鉄層で不動態化された、カルボニル鉄粉末、d103μm、d504.5μm、d909μm
グラフェン:長さnm、直径nm。
【0160】
結合剤(b.1):水性分散液、pH値6.6、固体含量44.8質量%、グリシジルメタクリレート1質量部、アクリル酸1質量部、スチレン28.3質量部、n−ブチルアクリレート59.7質量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート10質量部のランダムな乳化共重合体、クールター・カウンターによって測定した、平均粒径(質量平均)150nm、Tg:19℃、動的粘度(23℃)70mPa.s。
【0161】
結合剤(b.2):
アジピン酸、ヘキサン−1,6−ジオールおよびネオペンチルグリコール(モル割合1:0.8:0.2)を重縮合することによって製造された、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびポリエステルジオールから構成されたポリウレタンの水性分散液、pH値7.9、固体含量40%、DIN 53240によるOH価55mg KOH/g、クールター・カウンターによって測定した、平均粒径(質量平均)100nmの2’−アミノエチル−2−アミノエタンスルホン酸のNa塩、Tg:−47℃、動的粘度(23℃)45mPa.s。
【0162】
添加剤:
(e.1):増粘剤:白油中の油中水型エマルジョン中の、アンモニアで定量的に中和された(水中で25質量%)、アクリル酸(92質量%)、アクリルアミド(7.6質量%)、メチレンビスアクリルアミドからなるランダムな共重合体、約150000g/molの分子量Mw、固体含量27%。
【0163】
(e.2):増粘剤:イソプロパノール/水(容積割合2:3)中のヘキサメチレンジイソシアネートとn−C1837(OCH2CH215OHとの反応生成物の51質量%の溶液
(e.3)定着剤(エチレングリコールでエーテル化された、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体)
(f.1):2,2’,2’’−ニトリロトリエタノール中に溶解された、2,2’,2’’−ニトリロトリス[エタノール]と4−[(2−エチルヘキシル)アミノ]−4−オキソイソクロトン酸との化合物(1:1)(含量(W/W):30%)
【0164】
分散剤(g.1):NaOHで完全に中和された、ナフタリンスルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合生成物。
【0165】
1.2金属粉末(a)を含有する印刷用ペーストの製造
次のものを互いに攪拌した:
水54g
金属粉末(a.1)700g
結合剤(b.1)125g
定着剤(e.3)10g
乳化剤(c.1)20g
増粘剤(e.2)20g
腐蝕抑制剤(f.1)20g
【化2】

【0166】
5000rpm(Ultra−Thurrax)で20分間に亘り攪拌した。Haakeによる回転粘度計で測定した、23℃で80dPa・sの動的粘度を有する印刷用ペーストが得られた。
【0167】
水性印刷用ペースト(A.1)が得られた。
【0168】
II. グラフェンを含有する本発明による配合物の製造
攪拌容器中で次のものを混合した:
グラフェン3g、
結合剤(b.2)60g、
濃稠化剤(e.1)8g、
定着剤(e.3)2g、
さらに、結合剤(b.3)27g、
分散剤(g.1)4.1g
を含有する、水性グラフェン配合物100g。
【0169】
本発明による配合物が得られた。
【0170】
III. 繊維の印刷、工程(A)、および熱処理
1.2からの印刷用ペーストを用いてストリップパターンを有する、メッシュ80のスクリーンでポリエステル織物を印刷した。このパターンは、図1に略示されていることを見出すことができる。
【0171】
引続き、乾燥キャビネット中で100℃で10分間の時間に亘って乾燥し、150℃で5分間硬化させた。印刷されかつ熱処理されたポリエステル織物が得られた。
【0172】
IV. 他の金属の付着、工程(B)、および他の層の施与、工程(C)
IV.1 外部電圧源なしの銅の付着
II.からの印刷されかつ熱処理されたポリエステル織物を30分の時間に亘り、次のような組成を有する浴(室温)中で処理した:
CuSO4・5H2O1.47kg
2SO4382g
蒸留水5.1 l
NaCl 1.1g
13/C15−アルキル−O−(EO)10(PO)5−CH3 5g
(EO:CH2−CH2−O、PO:CH2−CH(CH3)−O)。
【0173】
このポリエステル織物を取出し、流水で2回洗浄し、および90℃で15分の時間に亘り乾燥した。
【0174】
金属化ポリエステル織物PES−1が得られた。
【0175】
IV.2グラフェンを有する層の施与
金属化ポリエステル織物PES−1を印刷テーブル上でスクリーン印刷用ステンシルおよびスクイジーを用いて導体トラック間または導体トラックを横切ってII.からの配合物で均等に印刷した。
【0176】
こうした印刷された織物を80℃で10分間乾燥し、引続き150℃で5分間硬化させた。
【0177】
電圧を印加した後に、グラフェンを含有する本発明による配合物で印刷された表面を、例えば14.3Vで約50℃に加熱することにより、本発明による織物が得られた。しかし、ホットスポットは、全く観察されず、均一な昇温が観察された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化表面の形成方法において、
(A)少なくとも1つの金属粉末(a)を成分として含有する配合物を、パターン化して、または均等に施し、
(B)他の金属を繊維表面上に付着させ、
(C)炭素をカーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたはグラフェンの形で含有する他の層を施すことを特徴とする、金属化表面の形成方法。
【請求項2】
工程(A)で使用される配合物は、次のもの:
(a)少なくとも1つの金属粉末、
(b)少なくとも1つの結合剤、
(c)少なくとも1つの乳化剤、
(d)場合により少なくとも1つのレオロジー変性剤を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程(B)で、少なくとも1つの金属粉末(a)を含有する印刷用配合物を印刷する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
工程(C)での炭素をグラフェンから選択する、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の熱処理工程(D)を工程(A)、(B)または(C)に続けて実施する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
金属粉末(a)は、鉄ペンタカルボニルの熱分解によって取得された金属粉末である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
工程(C)で外部電圧源なしに作業し、他の金属は、工程(C)で元素の電気化学的系列において金属粉末(a)をベースとする金属より強い正の標準電位を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程(C)で外部電圧源を用いて作業し、他の金属は、工程(C)で元素の電気化学的系列において金属粉末(a)をベースとする金属より強いかまたは弱い正の標準電位を有する、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(B)の後、電流を必要とするかまたは発生させる1つ以上の製品を表面上に固定する、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
パターンを工程(B)でインターデジタル構造から選択する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(C)後に、
(D)腐蝕抑制層の施与または
(E)可撓性層の施与から選択された、少なくとも1つの他の工程を実施し、
この場合腐蝕抑制層は、可撓性であってもよいし、剛性であってもよい、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
繊維表面に関連する、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の方法により得られた金属化表面。
【請求項14】
電流を熱に変換する繊維、電界を遮断しうる繊維、繊維が組み込まれた電子部品、表示装置、自動車のルーフライナーおよび電流を発生させることができる繊維としての、または電流を熱に変換する繊維、電界を遮断しうる繊維、繊維が組み込まれた電子部品、表示装置、自動車のルーフライナーおよび電流を発生させることができる繊維を製造するための請求項13記載の金属化繊維表面の使用。
【請求項15】
請求項13記載の金属化繊維表面を使用して製造された、電流を熱に変換する繊維、電界を遮断しうる繊維、繊維が組み込まれた電子部品、表示装置、自動車のルーフライナーおよび電流を発生させることができる繊維。
【請求項16】
少なくとも1つの基体、
パターン中に施された、他の金属の少なくとも1つの層、および
炭素をカーボンブラックまたは炭素ナノチューブまたはグラフェン形で含有する、少なくとも1つの層を含む金属化シート材料。
【請求項17】
水性印刷用配合物において、グラフェン、
(d)少なくとも1つのレオロジー変性剤および
(g)少なくとも1つの分散剤を含有する、水性印刷用配合物。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513737(P2013−513737A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−543644(P2012−543644)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2010/069459
【国際公開番号】WO2011/082961
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】