説明

金属含有メソポアシリケート、その製造方法およびその用途

【課題】酸化触媒活性を示す新規な固体触媒を提供すること。
【解決手段】タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステ
ン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし
、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸
化物を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せ
しめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応
せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめてなることを特徴とする
タングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも
一種を含有する金属含有メソポアシリケート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な金属含有メソポアシリケート、その製造方法およびその用途を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
過酸化水素は、安価で、取扱いが容易で、しかも反応後には無害な水となるクリーンで優れた酸化剤であるため、過酸化水素を酸化剤とする酸化反応が、環境にやさしい製造プロセスの一つとして、脚光を浴びてきている。過酸化水素を酸化剤とする酸化反応の開発においては、該酸化反応の触媒の開発が重要であり、特に工業的な観点から、反応系からの触媒の分離・回収の面で有利な固体触媒の開発が期待されており、例えば固体触媒の一つであるチタン含有メソポアシリケートについては、オレフィン類のエポキシ化触媒やケトン類のアンモオキシメーション化触媒としての工業的な利用が検討されてきている。
【0003】
一方で、チタン以外の金属を含有させて、チタン含有メソポアシリケートとは異なる触媒性能や触媒活性を有する固体触媒の開発も行われており、例えばシクロヘキセンと過酸化水素を反応させて、シクロヘキサンジオールを製造するための触媒として、タングステン酸アンモニウムを原料として調製したタングステン含有メソポアシリケート(例えば非特許文献1、非特許文献2参照。)が報告されている。しかしながら、かかるタングステン酸アンモニウムを原料として調製されたタングステン含有メソポアシリケートは、それ単独では活性が低く、十分な活性を得るためには、反応溶媒として、酢酸を使用する必要があった。
【0004】
また、過酸化水素を酸化剤として、オレフィン類からジオール類を製造する方法以外にも、オレフィン類から2−アルコキシアルコール類を製造する方法、環状ケトン類をバイヤービリガー酸化する方法、芳香族アルデヒド類から芳香族エステル類を製造する方法も重要であり、固体触媒を用いる方法が開発されている。例えば酸化触媒能を有するチタニアシリケート触媒とアルキル化触媒能を有するZSM−5触媒という二種の性能の異なる固体触媒を併用し、オレフィン類、過酸化水素および一級または二級アルコール類を反応させて、一段階で2−アルコキシアルコール類を製造する方法(例えば特許文献1参照。)が知られているが、二種類の高価な触媒を併用しなければならないという点で、工業的にはさらなる改善が望まれていた。
【0005】
また、ケトン類を過酸化水素でバイヤービリガー酸化して、ラクトン類またはエステル類を得る方法としては、例えばスズを担持したゼオライト−β触媒を用いる方法(例えば非特許文献3、非特許文献4参照。)やフッ化アンチモンを担持したシリカ触媒を用いる方法(例えば特許文献2参照。)等が知られているが、毒性のあるスズや、高価なフッ化アンチモンを用いており、いずれも必ずしも工業的な方法とは言えなかった。
【0006】
さらに、芳香族アルデヒド類をアルコール類の共存下に過酸化水素で酸化し、芳香族エステル類を製造する方法としては、TS−1触媒を用いる方法(例えば非特許文献5参照。)や酸化バナジウム触媒を用いる方法(例えば非特許文献6参照。)が知られているが、前者の方法は、触媒が比較的高価であるという点で、後者の方法は、過塩素酸を併用しなければならないという点で、工業的な観点からは、さらなる改善が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第6239315号公報
【特許文献2】特開2001−232205号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Applied Catalysis A,179,11(1999)
【非特許文献2】Chem.Commun.,241(1998)
【非特許文献3】Nature,412,423(2001)
【非特許文献4】Chem.Commun.,2190(2001)
【非特許文献5】Synlett.,267(2002)
【非特許文献6】Organic Letters,2,577(2000)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況の下、本発明者は、酸化触媒活性を示す新規な固体触媒を開発すべく、鋭意検討したところ、入手容易なタングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属等と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に、反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめた金属含有メソポアシリケートが、有機化合物と過酸化水素との反応において、良好な酸化触媒活性を示すこと、さらには、酸化触媒活性のみならず、アルキル化反応においても触媒活性を示すことを見出し、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明は、タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸化物を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめてなることを特徴とするタングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する金属含有メソポアシリケートおよびその用途を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、入手容易なタングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属等と過酸化水素を反応せしめてなる金属酸化物とケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に、反応せしめ、得られた固体を焼成処理または洗浄処理して得られる新規なタングステン等金属含有メソポアシリケートは、酸化反応触媒能を有すると共に、アルキル化反応触媒能も有しており、工業的な観点から、有利な触媒となる。例えば、本発明の金属含有メソポアシリケート触媒の存在下に、安価な酸化剤である過酸化水素と、オレフィン類、ケトン類、芳香族アルデヒド類等の有機化合物を反応させることにより、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類やジオール類、ラクトン類、2−アルコキシアルコール類、芳香族エステル類等の含酸素有機化合物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
まず本発明の新規な金属含有メソポアシリケートについて説明する。本発明の金属含有メソポアシリケートは、タングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有しており、タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸化物を除く。)からなる群から選ばれる少なくとも一種(以下、金属化合物と略記する。)と過酸化水素を反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめて得られる金属含有メソポアシリケートである。
【0013】
タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属としては、通常市販のものが用いられる。かかる金属と過酸化水素の接触効率を高め、金属酸化物調製時の制御をより容易にするという点で、例えば粉末状のタングステン金属等粒径の小さな金属を用いることが好ましい。
【0014】
タングステン化合物としては、タングステン酸化物を除く、例えばホウ化タングステン等のタングステンと第IIIb族元素とからなるタングステン化合物、例えば炭化タングステン、ケイ化タングステン等のタングステンと第IVb族元素とからなるタングステン化合物、例えばチッ化タングステン、リン化タングステン等のタングステンと第Vb族元素とからなるタングステン化合物、例えば硫化タングステン等のタングステンと酸素を除く第VIb族元素とからなるタングステン化合物等が挙げられる。
【0015】
モリブデン化合物としては、モリブデン酸化物を除く、例えばホウ化モリブデン等のモリブデンと第IIIb族元素とからなるモリブデン化合物、例えば炭化モリブデン、ケイ化モリブデン等のモリブデンと第IVb族元素とからなるモリブデン化合物、例えばチッ化モリブデン、リン化モリブデン等のモリブデンと第Vb族元素とからなるモリブデン化合物、例えば硫化モリブデン等のモリブデンと酸素を除く第VIb族元素とからなるモリブデン化合物等が挙げられる。
【0016】
バナジウム化合物としては、バナジウム酸化物を除く、例えばホウ化バナジウム等のバナジウムと第IIIb族元素とからなるバナジウム化合物、例えば炭化バナジウム、ケイ化バナジウム等のバナジウムと第IVb族元素とからなるバナジウム化合物、例えばチッ化バナジウム、リン化バナジウム等のバナジウムと第Vb族元素とからなるバナジウム化合物、例えば硫化バナジウム等のバナジウムと酸素を除く第VIb族元素とからなるバナジウム化合物等が挙げられる。
【0017】
かかる金属化合物の中でも、タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属が好ましい。なお、かかる金属化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。また、かかる金属化合物のなかには、水和物が存在するものがあるが、本発明には、水和物を用いてもよいし、無水物を用いてもよい。
【0018】
かかる金属化合物と反応せしめる過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん、過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよいが、取扱いがより容易であるという点で、過酸化水素水を用いることが好ましい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水溶液を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0019】
金属酸化物を調製する際の過酸化水素の使用量は、金属化合物に対して、通常3モル倍以上、好ましくは5モル倍以上であり、その上限は特にない。
【0020】
金属化合物と過酸化水素との反応は、通常水溶液中で実施される。もちろん例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒、メタノール、エタノール、tert−ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等の有機溶媒中または該有機溶媒と水との混合溶媒中で実施してもよい。
【0021】
金属化合物と過酸化水素との反応は、通常その両者を混合、接触させることにより行われ、金属化合物と過酸化水素の接触効率を向上させるため、金属酸化物調製液中で金属化合物が十分分散するよう攪拌しながら反応を行うことが好ましい。金属酸化物の調製時の調製温度は、通常−10〜100℃である。
【0022】
金属化合物と過酸化水素とを水中、有機溶媒中もしくは水と有機溶媒の混合溶媒中で反応させることにより、金属化合物の全部もしくは一部が溶解し、金属酸化物を含む均一溶液もしくは懸濁液を調製することができるが、該金属酸化物を、例えば濃縮処理等により調製液から取り出して、本発明の金属含有メソポアシリケートを調製する原料として用いてもよいし、該調製液をそのまま原料として用いてもよい。
【0023】
ケイ素化合物としては、例えばテトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン等のテトラアルコキシシラン等が挙げられ、金属酸化物中の金属原子1モルに対して、通常ケイ素原子が4モル倍以上となる量のケイ素化合物が用いられる。
【0024】
有機テンプレートとしては、例えばアルキルアミン、第四級アンモニウム塩、ノニオン系界面活性剤等が挙げられ、アルキルアミン、第四級アンモニウム塩が好ましい。アルキルアミンとしては、例えばオクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、エイコシルアミン等の炭素数8〜20のアルキル基で置換された一級アミン、これら一級アミンのアミノ基の一つの水素原子が、例えばメチル基等のアルキル基に置換した、例えばメチルオクチルアミン等の二級アミン、これら一級アミンのアミノ基の二つの水素原子が、例えばメチル基等のアルキル基に置換した三級アミン等が挙げられ、一級アミンが好ましい。第四級アンモニウム塩としては、例えば水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化トリメチルオクチルアンモニウム等の水酸化第四級アンモニウム塩、前記水酸化第四級アンモニウム塩の水酸イオンが、例えば塩素イオン、臭素イオン等に置換した、塩化第四級アンモニウム塩、臭化第四級アンモニウム塩等が挙げられ、水酸化第四級アンモニウム塩が好ましい。ノニオン系界面活性剤としては、例えばポリエチレングリコール類等が挙げられる。
【0025】
かかる有機テンプレートは、そのまま用いてもよいし、後述する水等の溶媒と混合して用いてもよい。有機テンプレートの使用量は、ケイ素化合物に対して、通常0.03〜1モル倍である。
【0026】
有機テンプレートの存在下、金属酸化物とケイ素化合物との反応は、通常溶媒の存在下に実施され、溶媒としては、例えば水、親水性有機溶媒の単独または混合溶媒が挙げられ、好ましくは水、水と親水性有機溶媒との混合溶媒が挙げられる。親水性有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等の親水性アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル等の親水性ニトリル系溶媒、例えばジオキサン等の親水性エーテル系溶媒等が挙げられ、好ましくは親水性アルコール系溶媒が挙げられ、なかでもメタノール、エタノールが特に好ましい。かかる溶媒の使用量は、アルキルアミンまたは第四級アンモニウム塩に対して、通常1〜1000モル倍である。
【0027】
反応温度としては通常、0〜200℃である。
【0028】
反応終了後、反応液中に存在する固体を濾取し、洗浄処理または焼成処理せしめることにより、本発明の金属含有メソポアシリケートを得ることができる。
【0029】
洗浄処理は、通常上記で得られた固体と、水、アルコール系溶媒等の溶媒を混合し、必要に応じて加熱処理した後、濾過処理することにより実施される。溶媒の使用量は、特に制限されない。
【0030】
焼成処理は、通常上記で得られた固体を、通常300〜700℃、好ましくは500〜600℃で、加熱処理することにより実施される。処理時間は、通常0.5〜20時間程度である。上記洗浄処理を行った後、焼成処理してもよい。
【0031】
かくして得られる金属含有メソポアシリケートは、その平均細孔径(窒素吸着法、BHJ法)は、10〜100オングストロームであり、また、その比表面積(窒素吸着法、BET多点法(p/p0=0.1))は、100m2/g以上である。
【0032】
本発明の金属含有メソポアシリケートは、有機化合物と過酸化水素とを反応させて、該有機化合物を酸化する酸化反応の触媒能を有すると共に、アルキル化反応の触媒能も有している。
【0033】
以下、本発明の金属含有メソポアシリケートを触媒とする有機化合物の酸化反応について、説明する。
【0034】
まず、有機化合物として、オレフィン類を用いた場合について説明する。有機化合物として、オレフィン類を用い、反応を行った場合には、含酸素有機化合物として、ジオール類またはβ−ヒドロキシヒドロペルオキシド類が得られる。かかる反応を一級または二級アルコール類の共存下に実施することにより、オレフィン類の酸化反応と共に、O−アルキル化反応が進行し、2−アルコキシアルコール類を得ることができる。
【0035】
オレフィン類としては、オレフィン性炭素−炭素二重結合を有する有機化合物であれば特に制限されず、該二重結合に水素原子のみが結合した無置換オレフィン(すなわちエチレン)、該二重結合に一つの置換基と三つの水素原子が結合した一置換オレフィン類、該二重結合に二つの置換基と二つの水素原子が結合した二置換オレフィン類、該二重結合に三つの置換基と一つの水素原子が結合した三置換オレフィン類、該二重結合に四つの置換基が結合した四置換オレフィン類が挙げられる。なお、炭素−炭素二重結合に結合した置換基が一緒になって環構造の一部を形成していてもよい。
【0036】
かかる置換基としては、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アラルキル基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、カルボアルキル基、カルボアリール基、カルボアラルキル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ基、カルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基等が挙げられる。
【0037】
アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−デシル基、シクロプロピル基、2,2−ジメチルシクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メンチル基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルキル基が挙げられる。かかるアルキル基は、後述するアルコキシ基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子、カルボアルキル基、カルボアリール基、カルボアラルキル基、カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ基、カルボアラルキルオキシ基、カルボキシル基、カルボニル基等で置換されていてもよく、かかる置換基で置換されたアルキル基としては、例えばクロロメチル基、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、メトキシメチル基、エトキシメチル基、メトキシエチル基、カルボメトキシメチル基等が挙げられる。
【0038】
アルコキシ基としては、上記したアルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−デシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、メンチルオキシ基等の直鎖状、分枝鎖状または環状の炭素数1〜20のアルコキシ基が挙げられる。かかるアルコキシ基は、上記したアルキル基と同様、例えばハロゲン原子、アルコキシ基等の置換基で置換されていてもよい。かかる置換基で置換されたアルコキシ基としては、例えばクロロメトキシ基、フルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等が挙げられる。
【0039】
アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。かかるアリール基は、上記したアルキル基、アリール基、アルコキシ基、後述するアラルキル基、アリールオキシ基、アラルキルオキシ基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。かかるアリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、4−メチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、3−フェノキシフェニル基等が挙げられる。アリールオキシ基としては、上記したアリール基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばフェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−クロロフェノキシ基、4−メチルフェノキシ基、4−メトキシフェノキシ基、3−フェノキシフェノキシ基等が挙げられる。
【0040】
アラルキル基としては、上記したアリール基と上記したアルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジル基、4−クロロベンジル基、4−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−フェノキシベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル基等が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、上記したアラルキル基と酸素原子とから構成されるものが挙げられ、例えばベンジルオキシ基、4−クロロベンジルオキシ基、4−メチルベンジルオキシ基、4−メトキシベンジルオキシ基、3−フェノキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジルオキシ基、2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられる。
【0042】
カルボアルキル基、カルボアリール基およびカルボアラルキル基としては、カルボニル基と上記したアルキル基、アリール基およびアラルキル基とから構成されるものが挙げられ、例えばカルボメチル基、カルボエチル基、カルボフェニル基、カルボベンジル基等が挙げられる。
【0043】
カルボアルコキシ基、カルボアリールオキシ基およびカルボアラルキルオキシ基としては、それぞれカルボニル基と上記したアルコキシ基、アリールオキシ基およびアラルキルオキシ基とから構成されるものが挙げられ、例えばカルボメトキシ基、カルボエトキシ基、カルボフェノキシ基、カルボベンジルオキシ基等が挙げられる。
【0044】
かかるオレフィン類としては、例えば1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ドデセン、スチレン、4−メチルスチレン、1,7−オクタジエン、アリルベンゼン、アリルアニソール、アリルクロリド、アリルエチルエーテル、アリルベンジルエーテル、イソブテン、2−メチル−1−ペンテン、2,4,4−トリメチル−1−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、α−メチルスチレン、α−フェニルスチレン、メチレンシクロブタン、メチレンシクロペンタン、メチレンシクロヘキサン、β−ピネン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン、3−メチルシクロペンテン、4−メチルシクロペンテン、3,4−ジメチルシクロペンテン、3,5−ジメチルシクロペンテン、3,4,5−トリメチルシクロペンテン、3−クロロシクロペンテン、3−メチルシクロヘキセン、4−メチルシクロヘキセン、3,4−ジメチルシクロヘキセン、3,5−ジメチルシクロヘキセン、3,4,5−トリメチルシクロヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、5−ドデセン、ノルボルネン、フェナントレン、1,2,3,6−テトラヒドロ無水フタル酸、ジシクロペンタジエン、インデン、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、
【0045】
2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、3−エチル−2−ペンテン、2−メチル−2−ヘキセン、3−メチル−2−ヘキセン、2−メチル−1−フェニルプロペン、2−フェニル−2−ブテン、1−メチルシクロペンテン、1,3−ジメチルシクロペンテン、1,4−ジメチルシクロペンテン、1,5−ジメチルシクロペンテン、1,3,5−トリメチルシクロペンテン、1,3,4−トリメチルシクロペンテン、1,4,5−トリメチルシクロペンテン、1,3,4,5−テトラメチルシクロペンテン、1−メチルシクロヘキセン、1,3−ジメチルシクロヘキセン、1,4−ジメチルシクロヘキセン、1,5−ジメチルシクロヘキセン、1,3,5−トリメチルシクロヘキセン、1,3,4−トリメチルシクロヘキセン、1,4,5−トリメチルシクロヘキセン、1,3,4,5−テトラメチルシクロヘキセン、イソホロン、2−カレン、3−カレン、α−ピネン、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸イソプロピル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸tert−ブチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸シクロヘキシル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸メンチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸ベンジル、
【0046】
3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(4−クロロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1−プロペニル)シクロプロパンカルボン酸(3−フェノキシベンジル)、2,3−ジメチル−2−ブテン、1,2−ジメチルシクロペンテン、1,2−ジメチルシクロヘキセン、1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロナフタレン、1−イソプロピリデン−2−カルボエトキシ−3−メチルシクロペンタン、シクロヘキシリデンシクロヘキサン、テトラフェニルエチレン、2,3−ジメチル−4−メトキシインデン、2,3−ジ(4−アセトキシフェニル)−2−ブテン等が挙げられる。
【0047】
かかるオレフィン類の中には、その分子内に不斉炭素を有しており、光学異性体が存在するものがあるが、本発明には、光学異性体の単独または混合物のいずれも用いることができる。
【0048】
金属含有メソポアシリケートの使用量は、オレフィン類に対して、通常0.001重量倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、オレフィン類に対して、5重量倍以下である。
【0049】
過酸化水素は、通常水溶液として用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水もしくは有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により調製したものを用いればよい。
【0050】
オレフィン類と反応させる過酸化水素の使用量は、オレフィン類に対して、通常1モル倍以上であり、使用量の上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、オレフィン類に対して、10モル倍以下である。
【0051】
オレフィン類と過酸化水素との反応は、通常水溶媒または有機溶媒中で実施される。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、tert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。水溶媒または有機溶媒の使用量は特に制限されないが、容積効率等を考慮すると、実用的には、オレフィン類に対して、100重量倍以下である。
【0052】
オレフィン類と過酸化水素とを、本発明の金属含有メソポアシリケート触媒の存在下に反応させることにより、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類およびジオール類が得られる。オレフィン類の構造や反応条件等によって、その生成比率が異なるため、目的に応じて、適宜反応条件等を選択すればよい。また、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類およびジオール類以外の含酸素有機化合物も副生することがある。
【0053】
例えば有機溶媒中で反応を実施すると、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類が主生成物として得られやすい。また、反応系内の水分含量が少ないほど、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類が得られやすいため、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類を選択性よく得るためには、例えば反応系内に脱水剤を共存させる等して、反応系内の水分含量が低い条件下で反応を行うことが好ましい。脱水剤としては、例えば無水硫酸マグネシウム、無水硫酸ナトリウム、無水ホウ酸、ポリリン酸、五酸化二リン等が挙げられ、その使用量は、反応系内に存在する水分量に応じて、適宜決めればよい。有機溶媒としては、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばメチルtert−ブチルエーテル等のエーテル系溶媒等が挙げられる。
【0054】
反応温度があまり低過ぎると、酸化反応が進行しにくく、また反応温度があまり高過ぎると、原料オレフィン類の重合等副反応が進行する恐れがあるため、実用的な反応温度は、0〜200℃の範囲である。反応温度が低い場合は、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類が生成しやすく、反応温度が高くなるに従い、ジオール類が生成しやすくなるため、β−ヒドロキシヒドロペルオキシド類を選択的に得る場合には、0〜55℃の範囲で、ジオール類を選択的に得る場合には、55〜200℃の範囲で反応を実施することが好ましい。
【0055】
オレフィン類と過酸化水素との反応は、通常オレフィン類、過酸化水素および金属含有メソポアシリケートを接触、混合することにより実施され、その混合順序は特に制限されない。常圧条件下で反応を実施してもよいし、加圧条件下で実施してもよい。また、反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、核磁気共鳴スペクトル分析、赤外吸収スペクトル分析等の通常の分析手段により確認することができる。
【0056】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、金属含有メソポアシリケートを濾別した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、生成した含酸素有機化合物を分離し、取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、含酸素有機化合物を分離し、取り出すことができる。取り出した含酸素有機化合物は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ等の手段によりさらに精製してもよい。
【0057】
水に不溶の有機溶媒としては、例えばトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、例えばジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、例えば酢酸エチル等のエステル系溶媒等が挙げられ、その使用量は特に制限されない。
【0058】
反応液から濾過処理、分液処理等により分離された金属含有メソポアシリケートあるいは金属含有メソポアシリケートを含む溶液は、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度オレフィン類と過酸化水素との反応に触媒として再使用することができる。
【0059】
かくして得られるβ−ヒドロキシヒドロペルオキシド類としては、例えば1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシヘキサン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシヘキサン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシヘプタン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシヘプタン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシオクタン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシオクタン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシドデカン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシドデカン、1−ヒドロキシ−2−フェニル−2−ヒドロペルオキシエタン、1−ヒドロキシ−2−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロペルオキシエタン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシ−3−フェニルプロパン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシ−3−フェニルプロパン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシ−3−クロロプロパン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシ−3−クロロプロパン、1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシ−3−エトキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシ−3−エトキシプロパン、(3−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシプロピル)ベンジルエーテル、(2−ヒドロキシ−3−ヒドロペルオキシエチル)ベンジルエーテル、3,3−ジメチル−2−(1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシエチル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシエチル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシエチル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシエチル)シクロプロパンカルボン酸エチル、
【0060】
2−ヒドロペルオキシ−2−メチル−1−プロパノール、2,4,4−トリメチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ペンタノール、2−エチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ブタノール、2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ペンタノール、2−ヒドロペルオキシ−2−フェニル−1−プロパノ-ル、2,2−ジフェニル−2−ヒドロペルオキシエタノール、1−ヒドロペルオキシ−1−(ヒドロキシメチル)シクロブタン、1−ヒドロペルオキシ−1−(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1−ヒドロペルオキシ−1−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[3.1.1]−2−ヒドロペルオキシ−2−(ヒドロキシメチル)−6,6−ジメチルヘプタン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロペンタン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロヘプタン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロオクタン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシ−3−メチルシクロペンタン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシ−4−メチルシクロペンタン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシ−3,4−ジメチルシクロヘキサン、1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシ−3,4,5−トリメチルシクロヘキサン、2−ヒドロペルオキシ−3−ヒドロキシヘキサン、3−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−ヒドロペルオキシ−3−オール、3,3−ジメチル−2−(1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(1−ヒドロキシ−2−ヒドロペルオキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−1−ヒドロペルオキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、
【0061】
2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−3−ヒドロキシペンタン、3−メチル−3−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシヘキサン、1−メチル−1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロペンタン、1,3−ジメチル−1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、3−ヒドロペルオキシ−4−ヒドロキシカレン、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸イソプロピル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸tert−ブチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸シクロヘキシル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メンチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸ベンジル、
【0062】
3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(4−クロロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(3−フェノキシベンジル)、
【0063】
2,3−ジメチル−2−ヒドロペルオキシキシ−3-ヒドロキシブタン、1,2−ジメチル−1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロペンタン、1,2−ジメチル−1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、ビシクロ[4.4.0]−1−ヒドロペルオキシ−6−ヒドロキシデカン、1−ヒドロペルオキシ−1−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2,3−ジメチルシクロペンタン、1−ヒドロキシ−1−(1−ヒドロペルオキシ−1−メチルエチル)−2,3−ジメチルシクロペンタン、1−ヒドロペルオキシ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)シクロヘキサン、1−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2−ヒドロペルオキシ−3−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−4−メトキシインダン、2−ヒドロキシ−3−ヒドロペルオキシ−2,3−ジメチル−4−メトキシインダン、2,3−ジ(4−アセトキシフェニル)−2−ヒドロペルオキシ−3−ヒドロキシブタン等が挙げられる。
【0064】
ジオール類としては、例えば1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ドデカンジオール、フェニルエチレングリコール、(4−メチルフェニル)エチレングリコール、3−フェニル−1,2−プロパンジオール、3−(4−メトキシフェニル)−1,2−プロパンジオール、3−クロロ−1,2−プロパンジオール、3−エトキシ−1,2−プロパンジオール、3−ベンジルオキシ−1,2−プロパンジオール、3,3−ジメチル−2−(1,2−ジヒドロキシエチル)シクロプロパンカルボン酸メチル、1,2−シクロペンタンジオール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘプタンジオール、1,2−シクロオクタンジオール、3−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、4−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、3,4−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジオール、3,4,5−トリメチル−1,2−シクロヘキサンジオール、2,3−ヘキサンジオール、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3−ジオール、3,3−ジメチル−2−(1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、
【0065】
2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,2−ペンタンジオール、2,4,4−トリメチル−1,2−ペンタンジオール、2−エチル−1,2−ブタンジオール、2−フェニル−1,2−プロパンジオール、1,1−ジフェニル−1,2−エタンジオール、1−(ヒドロキシメチル)シクロブタノール、1−(ヒドロキシメチル)シクロペンタノール、1−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサノール、ビシクロ[4.1.1]−2−ヒドロキシメチル−6,6−ジメチルヘプタン−2−オール、2−メチル−2,3−ペンタンジオール、3−メチル−2,3−ヘキサンジオール、1−メチル−1,2−シクロペンタンジオール、1−メチル−1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジオール、1,3,5−トリメチル−1,2−シクロヘキサンジオール、3,4−カレンジオール、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸イソプロピル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸tert−ブチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸シクロヘキシル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メンチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸ベンジル、
【0066】
3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(4−クロロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−1,2−ジヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(3−フェノキシベンジル)、ピナコール、1,2−ジメチル−1,2−シクロペンタンジオール、1,2−ジメチル−1,2−シクロヘキサンジオール、1,2−ジ(4−アセトキシフェニル)−1、2−ブタンジオール、ビシクロ[4.4.0]デカン−1,6−ジオール、1,1,2,2−テトラフェニルエチレングリコール、2,3−ジヒドロキシ−2,3−ジメチル−4−メトキシインダン等が挙げられる。
【0067】
なお、オレフィン類として、光学活性体を用いた場合には、不斉炭素の位置に応じて、光学活性な含酸素有機化合物が得られる。
【0068】
また、前記したオレフィン類と過酸化水素との反応を、一級または二級アルコール類(以下、アルコール類と略記する。)の共存下に実施することにより、オレフィン類の酸化反応と同時に、O−アルキル化反応が進行し、2−アルコキシアルコール類が選択的に得られる。
【0069】
アルコール類としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール等の炭素数1〜4の一級または二級アルコール類が挙げられる。
【0070】
アルコール類の使用量は、用いるオレフィン類に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特になく、例えば反応溶媒を兼ねて、オレフィン類に対して、大過剰量を用いてもよい。
【0071】
反応温度は、通常0〜200℃であるが、反応温度が高くなるほど、2−アルコキシアルコール類が生成しやすくなる。
【0072】
2−アルコキシアルコール類としては、例えば1−ヒドロキシ−2−メトキシヘキサン、2−ヒドロキシ−1−メトキシヘキサン、1−ヒドロキシ−2−エトキシヘプタン、2−ヒドロキシ−1−エトキシヘプタン、1−ヒドロキシ−2−プロポキシオクタン、2−ヒドロキシ−1−プロポキシオクタン、1−ヒドロキシ−2−メトキシドデカン、2−ヒドロキシ−1−メトキシドデカン、1−ヒドロキシ−2−フェニル−2−エトキシエタン、1−ヒドロキシ−2−(4−メチルフェニル)−2−エトキシエタン、1−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−フェニルプロパン、2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−フェニルプロパン、1−ヒドロキシ−2−エトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン、2−ヒドロキシ−1−エトキシ−3−(4−メトキシフェニル)プロパン、1−ヒドロキシ−2−プロポキシ−3−クロロプロパン、2−ヒドロキシ−1−プロポキシ−3−クロロプロパン、1−ヒドロキシ−2−メトキシ−3−エトキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−メトキシ−3−エトキシプロパン、(3−ヒドロキシ−2−エトキシプロピル)ベンジルエーテル、(2−ヒドロキシ−3−エトキシエチル)ベンジルエーテル、
【0073】
2−メトキシ−2−メチル−1−プロパノール、2,4,4−トリメチル−2−メトキシ−1−ペンタノール、2−エチル−2−エトキシ−1−ブタノール、2−メチル−2−プロポキシ−1−ペンタノール、2−メトキシ−2−フェニル−1−プロパノ-ル、2,2−ジフェニル−2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−1−(ヒドロキシメチル)シクロブタン、1−エトキシ−1−(ヒドロキシメチル)シクロペンタン、1−メトキシ−1−(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、ビシクロ[3.1.1]−2−エトキシ−2−(ヒドロキシメチル)−6,6−ジメチルヘプタン、1−メトキシ−2−ヒドロキシシクロペンタン、1−エトキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、1−プロポキシ−2−ヒドロキシシクロヘプタン、1−ブトキシ−2−ヒドロキシシクロオクタン、1−メトキシ−2−ヒドロキシ−3−メチルシクロペンタン、1−エトキシ−2−ヒドロキシ−4−メチルシクロペンタン、1−プロポキシ−2−ヒドロキシ−3,4−ジメチルシクロヘキサン、1−ブトキシ−2−ヒドロキシ−3,4,5−トリメチルシクロヘキサン、2−メトキシ−3−ヒドロキシヘキサン、3−エトキシ−2−ヒドロキシヘキサン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−プロポキシ−3−オール、3,3−ジメチル−2−(1−ヒドロキシ−2−エトキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−1−メトキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(1−ヒドロキシ−2−メトキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−ヒドロキシ−1−ブトキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、
【0074】
2−メチル−2−メトキシ−3−ヒドロキシペンタン、3−メチル−3−エトキシ−2−ヒドロキシヘキサン、1−メチル−1−プロポキシ−2−ヒドロキシシクロペンタン、1,3−ジメチル−1−ブトキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、1,3,5−トリメチル−1−メトキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、3−エトキシ−4−ヒドロキシカレン、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−メトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−エトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸エチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−プロポキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸イソプロピル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ブトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸tert−ブチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−メトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸シクロヘキシル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−メトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸メンチル、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−エトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸ベンジル、
【0075】
3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−エトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(4−クロロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−プロポキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−プロポキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ブトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−ブトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(2,3,5,6−テトラフルオロ−4−メトキシメチルベンジル)、3,3−ジメチル−2−(2−メチル−2−メトキシ−1−ヒドロキシプロピル)シクロプロパンカルボン酸(3−フェノキシベンジル)、2,3−ジメチル−2−メトキシ−3-ヒドロキシブタン、1,2−ジメチル−1−ヒドロペルオキシ−2−エトキシシクロペンタン、1,2−ジメチル−1−エトキシ−2−ヒドロキシシクロヘキサン、ビシクロ[4.4.0]−1−プロポキシ−6−ヒドロキシデカン、1−プロポキシ−1−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2,3−ジメチルシクロペンタン、1−ヒドロキシ−1−(1−メトキシ−1−メチルエチル)−2,3−ジメチルシクロペンタン、1−メトキシ−1−(1−ヒドロキシシクロヘキシル)シクロヘキサン、1−エトキシ−1−ヒドロキシ−1,1,2,2−テトラフェニルエタン、2−プロポキシ−3−ヒドロキシ−2,3−ジメチル−4−メトキシインダン、2−ヒドロキシ−3−ブトキシ−2,3−ジメチル−4−メトキシインダン、2,3−ジ(4−アセトキシフェニル)−2−メトキシ−3−ヒドロキシブタン等が挙げられる
【0076】
続いて、有機化合物として、環状ケトン類を用いた場合について説明する。有機化合物として環状ケトン類を用いた場合には、含酸素有機化合物として、バイヤービリガー反応生成物であるラクトン類が得られる。
【0077】
環状ケトン類の環構造としては、例えばシクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、シクロノナン環、シクロデカン環、シクロドデカン環、アダマンタン環等が挙げられ、かかる環は、例えばアルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。ここで、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、ハロゲン原子等の置換基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0078】
かかる環状ケトン類としては、例えばシクロブタノン、3−メチルシクロブタノン、3−フェニルシクロブタノン、シクロペンタノン、2−メチルシクロペンタノン、2−フェニルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2−フェニルシクロヘキサノン、4−メチルシクロヘキサノン、4−フェニルシクロヘキサノン、4−クロロシクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロオクタノン、シクロデカノン、シクロドデカノン、1,4−シクロヘキサンジオン、アダマンタノン等が挙げられる。
【0079】
環状ケトン類と過酸化水素との反応における金属含有メソポアシリケート触媒の使用量は、環状ケトン類に対して、通常0.001重量倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面を考慮すると、実用的には、環状ケトン類に対して、1重量倍以下である。
【0080】
過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。
また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0081】
過酸化水素の使用量は、環状ケトン類に対して、通常0.4モル倍以上、好ましくは1モル倍以上である。その上限は特にないが、あまり多くなると経済的に不利になりやすいので、実用的には10モル倍以下である。
【0082】
環状ケトン類と過酸化水素との反応は、無溶媒で行ってもよいし、水溶媒中、有機溶媒中もしくは水と有機溶媒との混合溶媒中で行ってもよい。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジグライム等のエーテル系溶媒、例えばtert−ブタノール等の第三級アルコール系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられる。
【0083】
環状ケトン類と過酸化水素との反応は、通常金属含有メソポアシリケート、環状ケトン類および過酸化水素を接触、混合させることにより行われ、その混合順序は特に制限されない。
【0084】
反応温度は、通常−10〜130℃であり、通常常圧条件下で反応は実施されるが、減圧あるいは加圧条件下で実施してもよい。
【0085】
反応の進行と共に、バイヤービリガー反応生成物であるラクトン類が生成するが、かかる反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0086】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、金属含有メソポアシリケートを濾過処理等により分離した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とするラクトン類を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、ラクトン類を取り出すこともできる。取り出したラクトン類は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ、再結晶等通常の精製方法によりさらに精製してもよい。
【0087】
濾過処理、分液処理等により分離された金属含有メソポアシリケートあるいは金属含有メソポアシリケートを含む溶液は、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度環状ケトン類と過酸化水素との反応の触媒として、再使用することができる。
【0088】
かくして得られるラクトン類としては、例えばβ−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、β−メチル−γ−ブチロラクトン、β−フェニル−γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−バレロラクトン、α−フェニル−δ−バレロラクトン、δ−フェニル−δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、α−メチル−ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、α−フェニル−ε−カプロラクトン、ε−フェニル−ε−カプロラクトン等が挙げられる。
【0089】
最後に、有機化合物として、芳香族アルデヒド類を用い、アルコール類の存在下に反応を実施し、芳香族エステル類を得る方法について説明する。
【0090】
芳香族アルデヒド類としては、例えばフェニル基、ナフチル基等の芳香環にホルミル基が結合したものであれば特に制限されず、前記芳香環は、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等の置換基で置換されていてもよい。ここで、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子等の置換基としては、上記したものと同様のものが挙げられる。
【0091】
かかる芳香族アルデヒド類としては、例えばベンズアルデヒド、2−フルオロベンズアルデヒド、2−クロロベンズアルデヒド、2−ブロモベンズアルデヒド、3−フルオロベンズアルデヒド、3−クロロベンズアルデヒド、3−ブロモベンズアルデヒド、4−フルオロベンズアルデヒド、4−クロロベンズアルデヒド、4−ブロモベンズアルデヒド、2,4−ジフルオロベンズアルデヒド、2,4−ジクロロベンズアルデヒド、3,5−ジフルオロベンズアルデヒド、3−フェノキシベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、3−トリフルオロベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、1−ナフチルベンズアルデヒド等が挙げられる。
【0092】
アルコール類としては、前記したものと同様のものが挙げられ、その使用量は、芳香族アルデヒド類に対して、通常1モル倍以上であり、その上限は特になく、例えば反応溶媒を兼ねて大過剰量用いてもよい。
【0093】
アルコール類の存在下、芳香族アルデヒド類と過酸化水素との反応における金属含有メソポアシリケート触媒の使用量は、芳香族アルデヒド類に対して、通常0.001重量倍以上であり、その上限は特にないが、経済的な面も考慮すると、実用的には、芳香族アルデヒド類に対して、1重量倍以下である。
【0094】
過酸化水素としては、通常水溶液が用いられる。もちろん過酸化水素の有機溶媒溶液を用いてもよい。過酸化水素水もしくは過酸化水素の有機溶媒溶液中の過酸化水素濃度は特に制限されないが、容積効率、安全面等を考慮すると、実用的には1〜60重量%である。過酸化水素水は、通常市販のものをそのままもしくは必要に応じて、希釈、濃縮等により濃度調整を行なったものを用いればよい。
また過酸化水素の有機溶媒溶液は、例えば過酸化水素水を有機溶媒で抽出処理する、もしくは有機溶媒の存在下に蒸留処理する等の手段により、調製したものを用いればよい。
【0095】
過酸化水素の使用量は、芳香族アルデヒド類に対して、通常0.4モル倍以上、好ましくは1モル倍以上である。その上限は特にないが、あまり多くなると経済的に不利になりやすいので、実用的には10モル倍以下である。
【0096】
芳香族アルデヒド類と過酸化水素との反応は、水溶媒中、有機溶媒中もしくは水と有機溶媒との混合溶媒中で行ってもよい。有機溶媒としては、例えばジエチルエーテル、メチルtert−ブチルエーテル、ジグライム等のエーテル系溶媒、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒等が挙げられ、また前記したように、アルコール類を溶媒として用いてもよい。
【0097】
アルコール類の共存下に行う芳香族アルデヒド類と過酸化水素との反応は、通常金属含有メソポアシリケート、芳香族アルデヒド類、アルコール類および過酸化水素を接触、混合させることにより行われ、その混合順序は特に制限されない。
【0098】
反応温度は、通常−10〜130℃であり、通常常圧条件下で反応は実施されるが、減圧あるいは加圧条件下で実施してもよい。
【0099】
反応の進行と共に、芳香族エステル類が生成するが、かかる反応の進行は、例えばガスクロマトグラフィ、高速液体クロマトグラフィ、薄層クロマトグラフィ、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
【0100】
反応終了後、反応液をそのままもしくは必要に応じて残存する過酸化水素を、例えば亜硫酸ナトリウム等の還元剤で分解した後、金属含有メソポアシリケートを濾過処理等により分離した後、濃縮処理、晶析処理等することにより、目的とする芳香族エステル類を取り出すことができる。また、反応液に、必要に応じて水および/または水に不溶の有機溶媒を加え、抽出処理し、得られる有機層を濃縮処理することにより、芳香族エステル類を取り出すこともできる。取り出した芳香族エステル類は、例えば蒸留、カラムクロマトグラフィ、再結晶等通常の精製方法によりさらに精製してもよい。
【0101】
濾過処理、分液処理等により分離された金属含有メソポアシリケートあるいは金属含有メソポアシリケートを含む溶液は、そのままもしくは必要に応じて濃縮処理等を行った後、再度アルコール類の共存下、芳香族アルデヒド類と過酸化水素との反応の触媒として、再使用することができる。
【0102】
かくして得られる芳香族エステル類としては、例えば安息香酸メチル、2−フルオロ安息香酸メチル、2−クロロ安息香酸メチル、2−ブロモ安息香酸メチル、3−フルオロ安息香酸メチル、3−クロロ安息香酸メチル、3−ブロモ安息香酸メチル、4−フルオロ安息香酸メチル、4−クロロ安息香酸メチル、4−ブロモ安息香酸メチル、2,4−ジフルオロ安息香酸メチル、2,4−ジクロロ安息香酸メチル、3,5−ジフルオロ安息香酸メチル、3−フェノキシ安息香酸メチル、4−メチル安息香酸メチル、3−トリフルオロメチル安息香酸メチル、2−メトキシ安息香酸メチル、1−カルボメトキシナフタレン等が挙げられる。
【実施例】
【0103】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、分析はガスクロマトグラフィ(以下、GCと略記する。)および高速液体クロマトグラフィ(以下、LCと略記する。)により実施した。それぞれの分析条件は、以下のとおりである。また、得られた金属含有メソポアシリケートの比表面積および平均細孔径は、いずれもQuantachrome社製Autosorb−6を用い、150℃、1.35×10-5Kg/cm-2(0.013kPa相当)の脱気条件下で窒素吸着法により測定した(なお、比表面積については、BET多点法(p/p0=0.1)を用い、平均細孔径については、BHJ法を用い、それぞれ算出した。)。
【0104】
<GC分析条件>
カラム:DB−1(φ0.25μm×30m、膜厚1.0μm)
キャリアガス:ヘリウム(流速:1m/分)
スプリット比:1/10、試料注入量:1μL
カラム温度:100℃(0分)→180℃(昇温速度:2℃/分、180℃での保持時間:0分)→300℃(昇温速度:10℃/分、300℃での保持時間:15分)
注入口温度:200℃、検出器温度:250℃
【0105】
<LC分析条件>
カラム:SUMIPAX ODS A−212(5μm,φ6mm×15cm) 移動相:A液;0.1体積%トリフルオロ酢酸水溶液
B液;0.1体積%トリフルオロ酢酸/アセトニトリル溶液
A液/B液=90/10(体積比)から40分で直線的に、A液/B液=10/90(体積比)に組成変化させ、A液/B液=10/90(体積比)の組成比で、20分保持。
流量:1.0mL/分、試料注入量:10μL、検出波長:220nm
【0106】
実施例1<アルキルアミンを用いたタングステン含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、タングステン金属(粉末)1gとイオン交換水5gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液3gを30分かけて滴下し、同温度で1時間保持し、タングステン酸化物含有溶液を得た。該タングステン酸化物含有溶液に、イオン交換水100gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、ドデシルアミン10gを30分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、テトラエトキシシラン41.6gを30分かけて滴下した。内温25℃で攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となったが、さらに同温度で24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、110℃で6時間乾燥した。この白色固体を、550℃で6時間焼成し、白色のタングステン含有メソポアシリケート15.0gを得た。
【0107】
XRDスペクトル:d値3.79オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示し、酸化タングステンに帰属されるピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3471,1636,1080,972,804cm-1
元素分析値;W:2.43%,Si:35.6%
比表面積:696m2/g、細孔径:32オングストローム
【0108】
実施例2<第四級アンモニウム塩を用いたタングステン含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、タングステン金属(粉末)5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で1時間保持し、タングステン酸化物含有溶液を得た。該タングステン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、水酸化テトラブチルアンモニウム8gを30分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、テトラエトキシシラン41.6gを30分かけて滴下した。内温25℃で攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となったが、さらに同温度で24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で24時間乾燥し、白色固体33.0gを得た。この白色固体のうち16.0gを550℃で6時間焼成し、白色のタングステン含有メソポアシリケート7.8gを得た。
【0109】
XRDスペクトル:d値3.79オングストロームに頂点を持つブロードなピークと、酸化タングステンに帰属されるシャープなピークが混合したスペクトルであった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3484,1642,1081,950,813、783cm-1
元素分析値;W:23.9%,Si:28.4%
比表面積:514m2/g、細孔径:32オングストローム
これらの結果から、得られた白色のタングステン含有メソポアシリケートには、酸化タングステンが混じっていることがわかった。
【0110】
実施例3<第四級アンモニウム塩を用いたタングステン含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、タングステン金属(粉末)5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で2時間保持し、タングステン酸化物含有溶液を得た。該タングステン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、40重量%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液20gを10分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、同温度で攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となったが、さらに同温度で24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で24時間乾燥し、白色固体38.0gを得た。この白色固体を550℃で6時間焼成し、白色のタングステン含有メソポアシリケート16.5gを得た。
【0111】
XRDスペクトル:d値3.77オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化タングステンに帰属されるシャープなピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3478,1638,1078,960,806、557cm-1
元素分析値;W:9.8%,Si:39.5%
比表面積:543m2/g、細孔径:16オングストローム
【0112】
実施例4<第四級アンモニウム塩を用いたタングステン含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、タングステン金属(粉末)5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で2時間保持し、タングステン酸化物含有溶液を得た。該タングステン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、10重量%水酸化テトラプロピルアンモニウム水溶液40gを10分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、同温度で攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となったが、さらに同温度で24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で24時間乾燥し、白色固体38.0gを得た。この白色固体を550℃で6時間焼成し、白色のタングステン含有メソポアシリケート17.3gを得た。
【0113】
XRDスペクトル:d値3.76オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化タングステンに帰属されるシャープなピークがわずかに見られた。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3480,1638,1078,956,800cm-1
元素分析値;W:11.0%,Si:31.4%
比表面積:573m2/g、細孔径:22オングストローム
【0114】
実施例5<アルキルアミンを用いたモリブデン含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、モリブデン金属(粉末)2gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持し、モリブデン酸化物含有溶液を得た。該モリブデン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、ドデシルアミン10gを10分かけて滴下した。すぐに固体が析出してスラリー状となったが、内温25℃に冷却し、24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、110℃で6時間乾燥し、次いで550℃で6時間焼成し、白色のモリブデン含有メソポアシリケート15.5gを得た。
【0115】
XRDスペクトル:d値3.8オングストロームに頂点を持つブロードなピークと酸化モリブデンに帰属されるシャープなピークの混合したスペクトルであった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3470,1640,1090,956,915,802cm-1
元素分析値;Mo:13.9%,Si:32.4%
比表面積:171m2/g、細孔径:73オングストローム
これらの結果から、得られた白色のモリブデン含有メソポアシリケートには、酸化モリブデンが混じっていることがわかった。
【0116】
実施例6<第四級アンモニウム塩を用いたモリブデン含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、モリブデン金属(粉末)2.5gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、60重量%過酸化水素水溶液15gを1時間かけて滴下し、同温度で1時間保持し、モリブデン酸化物含有溶液を得た。該モリブデン酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、40重量%水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液20gを10分かけて滴下した。15分程度経過すると固体が析出してスラリー状となったが、イオン交換水200gを加え、内温25℃に冷却し、24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、110℃で6時間乾燥し、次いで550℃で6時間焼成し、白色のモリブデン含有メソポアシリケート15.9gを得た。
【0117】
XRDスペクトル:d値3.79オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化モリブデンに帰属されるシャープなピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:3470,1640,1080,956,913,796cm-1
元素分析値;Mo:5.22%,Si:37.0%
比表面積:649m2/g、細孔径:22オングストローム
【0118】
実施例7<第四級アンモニウム塩を用いたバナジウム含有メソポアシリケートの調製>
誘導攪拌器付き500mLフラスコに、バナジウム金属(粉末)1.3gとイオン交換水25gを加え、内温40℃に昇温した後、30重量%過酸化水素水溶液15gを30分かけて滴下し、同温度で1時間保持し、バナジウム酸化物含有溶液を得た。該バナジウム酸化物含有溶液に、イオン交換水75gおよびエタノール80gを加えた後、内温40℃で、テトラエトキシシラン41.6gを10分かけて仕込んだ後、40重量%テトラ−n−プロピルアミン水溶液40gを10分かけて滴下した。その後、内温25℃まで冷却し、攪拌を継続していると、30分程度で固体が析出してスラリー状となったが、同温度でさらに24時間攪拌、保持した。得られたスラリー液から、固体を濾取し、イオン交換水100gで2回洗浄し、130℃で8時間乾燥し、次いで550℃で6時間焼成し、褐色のバナジウム含有メソポアシリケート16.0gを得た。
【0119】
XRDスペクトル:d値3.85オングストロームに頂点を持つブロードなピークを示した。酸化バナジウムに帰属されるシャープなピークは見られなかった。
IRスペクトル(KBr)
νmax:1050,956,794,629cm-1
元素分析値;V:5.56%,Si:36.1%
【0120】
実施例8<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするオレフィン類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、実施例1で調製したタングステン含有メソポアシリケート800mg、60重量%過酸化水素水800mg、tert−ブタノール2gおよび1−ヘプテン400mgを加え、内温40℃で16時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にメチルtert−ブチルエーテル5gを加え、攪拌した後、静置した。有機層をLC分析したところ、2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシヘプタンおよび1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシヘプタンが生成していた。該有機層をGC分析したところ、2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシヘプタンおよび1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシヘプタンは、注入口部で熱分解し、1−ヘキサナールとして検出されたため、GC分析(内部標準法)により、1−ヘキサナールの収率を求め、これを2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシヘプタンおよび1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシヘプタンの収率とした。収率:22%。1−ヘキセンが67%回収された。
【0121】
実施例9<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするオレフィン類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgと60重量%過酸化水素水760mg、tert−ブタノール3gおよび1−オクテン500mgを加え、内温50℃で16時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液にメチルtert−ブチルエーテル5gを加え、攪拌した後、静置した。上澄みの有機層をLC分析したところ、2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシオクタンおよび1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシオクタンが生成していた。該有機層をGC分析したところ、2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシオクタンおよび1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシオクタンは、注入口部で熱分解し、1−ヘプタナールとして検出されるため、GC分析(内部標準法)により、1−ヘプタナールの収率を求め、これを2−ヒドロペルオキシ−1−ヒドロキシオクタンおよび1−ヒドロペルオキシ−2−ヒドロキシオクタンの収率とした。収率:42%。
【0122】
実施例10<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、実施例1で調製したタングステン含有メソポアシリケート200mg、60重量%過酸化水素水285mg、エタノール24gおよびシクロヘキセン410mgを加え、内温80℃で6時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液をGC分析(内部標準法)して、生成物の収率を求めた。
2−エトキシシクロヘキサノール 収率:50%。
1,2−シクロヘキサンジオール 収率:5%
原料シクロヘキセンが40%回収された。
【0123】
実施例11<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、実施例3で調製したタングステン含有メソポアシリケート200mg、60重量%過酸化水素水285mg、エタノール24gおよびシクロヘキセン410mgを加え、内温80℃で6時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液をGC分析(内部標準法)して、生成物の収率を求めた。
2−エトキシシクロヘキサノール 収率:61%。
1,2−シクロヘキサンジオール 収率:2%
原料シクロヘキセンが35%回収された。
【0124】
実施例12<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した100mLフラスコに、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mg、メタノール10gおよびシクロヘキセン3.1gを仕込み、内温65℃に昇温した。攪拌しながら、30重量%過酸化水素水4.3gとメタノール10gからなる混合液を、3時間かけて滴下し、その後同温度で1時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液をGC分析(内部標準法)して、生成物の収率を求めた。
2−メトキシシクロヘキサノール 収率:33%。
1,2−シクロヘキサンジオールは検出されず、原料シクロヘキセンが65%回収された。
【0125】
実施例13<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
実施例12において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgに代えて、実施例3で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgを用いた以外は実施例12と同様に実施して、2−メトキシシクロヘキサノールを、収率42%で得た。1,2−シクロヘキサンジオールは検出されず、原料シクロヘキセンが55%回収された。
【0126】
実施例14<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
実施例12において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgに代えて、実施例4で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgを用いた以外は実施例12と同様に実施して、2−メトキシシクロヘキサノールを、収率64%で得た。1,2−シクロヘキサンジオールが、収率1%で生成しており、原料シクロヘキセンが、33%回収された。
【0127】
実施例15<モリブデン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
実施例12において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgに代えて、実施例5で調製したモリブデン含有メソポアシリケート300mgを用いた以外は実施例12と同様に実施して、2−メトキシシクロヘキサノールを、収率55%で得た。1,2−シクロヘキサンジオールが、収率1%で生成しており、原料シクロヘキセンが、42%回収された。
【0128】
実施例16<モリブデン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下のオレフィン類の酸化>
実施例12において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート300mgに代えて、実施例6で調製したモリブデン含有メソポアシリケート300mgを用いた以外は実施例12と同様に実施して、2−メトキシシクロヘキサノールを、収率29%で得た。1,2−シクロヘキサンジオールは検出されず、原料シクロヘキセンが、70%回収された。
【0129】
実施例17<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下の芳香族アルデヒド類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した100mLフラスコに、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート50mg、メタノール5gおよびベンズアルデヒド500mgを仕込み、内温65℃に昇温した。攪拌しながら、30重量%過酸化水素水1.6gとメタノール5gからなる混合液を、3時間かけて滴下し、同温度でさらに1時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液をGC分析(内部標準法)したところ、安息香酸メチルが、収率71%で生成しており、原料ベンズアルデヒドが25%回収された。
【0130】
実施例18<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下の芳香族アルデヒド類の酸化>
実施例17において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート50mgに代えて、実施例4で調製したタングステン含有メソポアシリケート50mgを用いた以外は実施例17と同様に実施して、安息香酸メチルを収率75%で得た。原料ベンズアルデヒドは20%回収された。
【0131】
実施例19<モリブデン含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下の芳香族アルデヒド類の酸化>
実施例17において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート50mgに代えて、実施例5で調製したモリブデン含有メソポアシリケート50mgを用いた以外は実施例17と同様に実施して、安息香酸メチルを収率75%で得た。原料ベンズアルデヒドは20%回収された。
【0132】
実施例20<バナジウム含有メソポアシリケートを触媒とするアルコール類共存下の芳香族アルデヒド類の酸化>
実施例17において、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート50mgに代えて、実施例7で調製したバナジウム含有メソポアシリケート50mgを用いた以外は実施例17と同様に実施して、安息香酸メチルを収率95%で得た。原料ベンズアルデヒドは2%回収された。
【0133】
実施例21<タングステン含有メソポアシリケートを触媒とする環状ケトン類の酸化>
磁気回転子および還流冷却管を付した50mLフラスコに、実施例2で調製したタングステン含有メソポアシリケート100mg、60重量%過酸化水素水340mg、アセトニトリル5gおよびシクロペンタノン500mgを加え、内温80℃で4時間攪拌、保持し、反応させた。得られた反応液をGC分析(内部標準法)したところ、δ−バレロラクトンが収率22%で生成していた。原料シクロペンタノンは77%回収された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸化物を除く。
)からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめてなることを特徴とするタングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する金属含有メソポアシリケート。
【請求項2】
有機テンプレートが、アルキルアミンまたは第四級アンモニウム塩である請求項1に記載の金属含有メソポアシリケート。
【請求項3】
イ素化合物が、テトラアルコキシシランである請求項1に記載の金属含有メソポアシリケート。
【請求項4】
アルキルアミンが、一級アミンである請求項2に記載の金属含有メソポアシリケート。
【請求項5】
第四級アンモニウム塩が、水酸化テトラアルキルアンモニウムである請求項2に記載の金属含有メソポアシリケート。
【請求項6】
平均細孔径が10〜100オングストロームの細孔を有する請求項1に記載の金属含有メソポアシリケート。
【請求項7】
比表面積が、100m2/g以上である請求項1に記載の金属含有メソポアシリケート。
【請求項8】
タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸化物を除く。
)からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめることを特徴とするタングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する金属含有メソポアシリケートの製造方法。
【請求項9】
有機テンプレートが、アルキルアミンまたは第四級アンモニウム塩である請求項8に記載の金属含有メソポアシリケートの製造方法。
【請求項10】
ケイ素化合物が、テトラアルコキシシランである請求項8に記載の金属含有メソポアシリケートの製造方法。
【請求項11】
アルキルアミンが、一級アミンである請求項9に記載の金属含有メソポアシリケートの製造方法。
【請求項12】
第四級アンモニウム塩が、水酸化テトラアルキルアンモニウムである請求項9に記載の金属含有メソポアシリケートの製造方法。
【請求項13】
タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸化物を除く。
)からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめてなるタングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する金属含有メソポアシリケートの存在下に、過酸化水素と有機化合物とを反応させることを特徴とする有機化合物の酸化方法。
【請求項14】
タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム(ただし、バナジウム酸化物を除く。)化合物からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめてなる、過酸化水素と有機化合物とを反応させて、該有機化合物を酸化するためのタングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する金属含有メソポアシリケート触媒。
【請求項15】
タングステン金属、モリブデン金属、バナジウム金属、タングステン化合物(ただし、タングステン酸化物を除く。)、モリブデン化合物(ただし、モリブデン酸化物を除く。)およびバナジウム化合物(ただし、バナジウム酸化物を除く。
)からなる群から選ばれる少なくとも一種と過酸化水素とを反応せしめてなる金属酸化物と、ケイ素化合物とを、有機テンプレートの存在下に反応せしめ、得られた固体を洗浄処理または焼成処理せしめてなるタングステン、モリブデンおよびバナジウムからなる群から選ばれる少なくとも一種を含有する金属含有メソポアシリケートの存在下に、過酸化水素と有機化合物とを反応させることを特徴とする含酸素有機化合物の製造方法。
【請求項16】
有機化合物が、オレフィン類であり、含酸素有機化合物が、ジオール類またはβ−ヒドロキシヒドロペルオキシド類である請求項15に記載の含酸素有機化合物の製造方法。
【請求項17】
有機化合物が、オレフィン類であり、一級または二級アルコール類の共存下に反応を実施し、含酸素有機化合物が、β−アルコキシアルコール類である請求項15に記載の含酸素有機化合物の製造方法。
【請求項18】
有機化合物が、環状ケトン類であり、含酸素有機化合物が、ラクトン類である請求項15に記載の含酸素有機化合物の製造方法。
【請求項19】
有機化合物が、芳香族アルデヒド類であり、一級または二級アルコール類の共存下に反応を実施し、含酸素有機化合物が、芳香族エステル類である請求項15に記載の含酸素化合物の製造方法。

【公開番号】特開2010−100528(P2010−100528A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26221(P2010−26221)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【分割の表示】特願2003−18435(P2003−18435)の分割
【原出願日】平成15年1月28日(2003.1.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】