説明

金属含有組成物およびそれを使用する方法

【課題】良好な触媒活性を示すと同時に環境に優しい触媒を用いて、不溶性粒子または固体を生成することなしに、低着色のエステルおよびポリエステルを製造する方法の提供。
【解決手段】触媒の存在下でカルボニル化合物とアルコールとを接触させる工程を含む、エステル化、エステル交換または重縮合のための方法であって:触媒は、チタン化合物と、グリコールと、第1のリン化合物または水のいずれかとを組合わせることにより製造され;カルボニル化合物が、式RCOORを有し;チタン化合物が、式Ti(OR)を有し;第1のリン化合物が、ポリリン酸またはその塩、ホスホン酸エステル、ピロリン酸またはその塩、ピロ亜リン酸またはその塩、またはこれらの2つ以上の組合わせであることを特徴とする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン化合物およびリン化合物を含むか、またはこれらから製造される組成物、並びに、触媒組成物およびリン化合物の存在下におけるカルボニル化合物のエステル化、エステル交換反応、または重合に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、およびポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルは、一般に「ポリアルキレンテレフタレート」と称され、工業的に重要なポリマーの部類である。これらは、繊維、フィルム、および成形用途に広範に使用される。
【0003】
ポリエステルは、ジメチルテレフタレート(DMT)などのエステルをグリコールとエステル交換した後、重縮合することにより、またはテレフタル酸(TPA)などの酸をグリコールと直接エステル化した後、重縮合することにより製造され得る。触媒は、エステル化、エステル交換反応、および/または重縮合に使用される。
【0004】
例えば、ポリエステルは、TPAとグリコールとのスラリー混合物を約80℃でエステル化反応器(esterifier)に注入することにより製造され得る。240℃〜290℃の温度の1つまたは2つのエステル化反応器中で、重合度が10未満の直鎖オリゴマーが形成される。その後、オリゴマーを1つまたは2つの予備重合反応器(prepolymerizer)中で、次いで250℃から300℃の温度の最終重合反応器(final polymerizer)または終了反応器(finisher)中で重合させる。TPAエステル化は、酸のカルボキシル基によって触媒作用を受ける。
【0005】
アンチモンは、重合または重縮合反応に使用されることが多い。しかし、アンチモンは、不溶性のアンチモン錯体を形成し、これは、繊維紡糸口金を詰まらせ、紡糸口金から堆積したアンチモン化合物をきれいに拭い取るため、繊維紡糸を頻繁に停止させることに繋がる。アンチモンをベースにする触媒は、特に食品と接触する用途では、増大した環境圧力と一定の制御の下で使用されている。
【0006】
チタン触媒をエステル化、エステル交換反応、および重縮合反応に使用することができる。しかし、チタン化合物は、水と接触して加水分解し、グリコールに不溶性のオリゴマー種を形成する傾向があり、このため触媒活性が失われる。有機チタン酸塩から製造されるポリエステルは、また、黄色い変色を発生させる。チタンビスアンモニウムラクテート、ビストリエタノールアミンチタネート、またはクエン酸チタンナトリウム触媒などの水と混和性のあるチタン酸塩でも、ポリエステル化触媒として使用される場合は、得られるポリマー中に顕著な黄色い変色を発生させる(特許文献1)。同様に、エステルを製造する有機金属化合物が開示されている(特許文献2)。有機金属化合物は、チタン、ジルコニウム、またはアルミニウムのオルトエステル、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有するアルコール、有機リン化合物、および塩基の反応生成物を含む。しかし、ポリエステル化触媒として使用される場合は、有機金属化合物は、また、最終生成物中に望ましくない顕著な黄色い変色を発生させることが見い出された。
【0007】
【特許文献1】EP812818号明細書
【特許文献2】WO99/28033号明細書
【特許文献3】米国特許第6,066,714号明細書
【特許文献4】米国特許第6,166,170号明細書
【特許文献5】米国特許第5,674,801号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、効率的であり、着色が低減したポリマーを製造し、良好な触媒活性を示し、繊維紡糸口金の詰まりを生じさせず、環境に優しい新規な触媒を開発することが、ますます必要とされている。
【0009】
本発明の利点の1つは、本発明の触媒を使用して製造されるポリマーは、有機チタン触媒を単独で使用して製造されるポリマーと比較して、光学的特性が改善している(例えば、望ましくない着色が少ない)ことである。本発明を以下にさらに完全に開示するにつれ、他の利点がさらに明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
チタン化合物およびリン化合物を含み、ポリエステルの製造に使用され得る組成物を提供する。
【0011】
また、チタン化合物を含む触媒組成物およびリン化合物の存在下で、カルボニル化合物とアルコールとを接触させることを含む、ポリエステルの製造に使用され得る方法を提供する。
【0012】
さらに、含有する不溶性の粒子または固体が減少したポリマーを製造するのに使用することができ、触媒組成物とリン化合物の存在下で接触させることを含む方法を提供するが、該方法中、該触媒は金属を含み、該リン化合物はリン酸ではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
「不溶性の粒子が減少した」または「固体が減少した」の用語は、リン酸が慣用的な方法に存在する慣用的な方法により製造される量と比較した場合の、本発明の方法により製造されるポリエステルなどのポリマー中に存在する不溶性粒子および固体の量のことを言う。
【0014】
本発明の一実施形態によれば、本発明の組成物は、(A)チタン化合物と;(B)(i)錯化剤および任意選択で第1の溶媒、または(ii)錯化剤、次亜リン酸またはその塩、および任意選択で第1の溶媒、ジルコニウム化合物、またはその両方、または(iii)(i)と(ii)との組合わせのいずれかと;(C)リン化合物と;任意選択で第2の溶媒とを含むか、これらから本質的になるか、またはこれらからなることができるか、またはこれらを組合わせることにより製造される。
【0015】
本発明によれば、成分(A)に使用される好ましいチタン化合物は、例えば、本明細書ではテトラアルキルチタネートとも称されるチタンテトラヒドロカルビルオキシドなどの有機チタン化合物であるが、これは、それらが容易に入手可能であり、効果的なためである。好適なチタンテトラヒドロカルビルオキシドの例には、式Ti(OR)4を有するものが挙げられ、式中、各Rは、1つの基につき1〜約30個、好ましくは2〜約18個、最も好ましくは2〜12個の炭素原子を含有する、アルキル、シクロアルキル、アルカリール、ヒドロカルビル基から個々に選択され、各Rは、同じであっても異なっていてもよい。直鎖または分岐アルキル基である、ヒドロカルビル基の1つの基につき2〜約12個の炭素原子を含有するチタンテトラヒドロカルビルオキシドが最も好ましいが、これは、それらが比較的安価であり、より容易に入手可能であり、溶液の形成に有効なためである。好適なチタンテトラヒドロカルビルオキシドには、以下に限定されないが、チタンテトラエトシキド、チタンテトラプロポキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−ブトキシド、チタンテトラヘキソキシド、チタンテトラ2−エチルヘキソキシド、チタンテトラオクトキシド、および、これらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。チタンテトラヒドロカルビルオキシドは、当業者に周知である。(例えば、米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4))それらの記載は本明細書に参照として組み込まれる。市販の有機チタン化合物の例には、以下に限定されないが、本願特許出願人から入手可能な、タイゾール(TYZOR)(登録商標)TPTおよびタイゾール(TYZOR)(登録商標)TBT(それぞれ、テトライソプロピルチタネート、およびテトラn−ブチルチタネート)などが挙げられる。
【0016】
本発明によれば、チタンテトラヒドロカルビルオキシドをジルコニウム化合物と組合わせて、チタンテトラヒドロカルビルオキシドとジルコニウムテトラヒドロカルビルオキシドとを含む混合物を製造することができる。現在のところ好ましいジルコニウムテトラヒドロカルビルオキシドには、以下に限定されないが、ジルコニウムテトラエトキシド、ジルコニウムテトラプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトラ−n−ブトキシド、ジルコニウムテトラヘキソキシド、ジルコニウムテトラ−2−エチルヘキソキシド、ジルコニウムテトラオクトキシド、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。Ti/Zrのモル比は、約0.001:1〜約10:1の範囲とすることができる。
【0017】
(B)(i)および(B)(ii)で使用するのに好適な錯化剤は、ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、アミノカルボン酸、またはこれらの2つ以上の組合わせとすることができる。錯化剤は、ヒドロカルビル基またはアルキル基の、1つの基につき1〜約15個、好ましくは1〜10個の炭素原子を有するα−ヒドロキシカルボン酸、アルカノールアミン、またはα−アミノカルボン酸、およびこれらの2つ以上の組合わせであることが現在のところ好ましい。好適な錯化剤の例には、以下に限定されないが、乳酸、グリコール酸、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラヒドロキシイソプロピルエチレンジアミン、グリシン、ビス−ヒドロキシエチルグリシン、ヒドロキシエチルグリシン、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。
【0018】
例えば、タイゾール(TYZOR)(登録商標)LAは、チタン化合物および乳酸から製造される反応生成物である、錯化剤である。これは、タイゾール(TYZOR)(登録商標)TPT(テトライソプロピルチタネート)に、2モルの乳酸を添加した後、水を添加し、副生物のイソプロピルアルコールを除去し、28%の水酸化アンモニウム水溶液で中和することにより製造される、チタンビス−アンモニウムラクテートの水溶液である。
【0019】
本発明によれば、成分(B)(ii)は、式H2P(O)OMを有する次亜リン酸またはその塩を含むこともできるが、式中、Mは、水素、アンモニウムイオン、金属イオン、またはこれらの2つ以上の組合わせであり、リン原子は、2つの水素原子と結合している。金属イオンは、任意の金属イオンとすることができる。金属イオンは、アルカリ金属イオンであることが現在のところ好ましい。次亜リン酸またはその金属塩は、水溶液として市販されており、本明細書では全般に水溶液として使用される。
【0020】
本発明によれば、錯化剤とチタン化合物とのモル比は、約1:1〜約10:1、好ましくは約1:1〜約7:1、最も好ましくは1:1〜4:1の範囲とすることができる。次亜リン酸またはその塩と、チタン化合物とのモル比(P:Ti)は任意の比とすることができ、該組成物を触媒として使用しポリエステルを製造する場合、ポリエステルの黄色味を低減することができる。好ましい比は、約0.1:1〜約10:1、好ましくは約0.5:1〜約7:1、最も好ましくは約1:1〜約4:1の範囲とすることができる。可溶性または実質的に可溶性の組成物を製造するように、溶媒は組成物中に存在し得る。
【0021】
好ましい第1の溶媒は、水、または1分子につき1〜約10個、好ましくは1〜約8個、最も好ましくは1〜5個の炭素原子を有するアルコール、例えば、アルキレングリコール、ポリアルキレングリコール、アルコキシル化アルコール、またはこれらの組合わせとすることができる。好適な溶媒の例には、以下に限定されないが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、2−エチルヘキサノール、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。好ましい第2の溶媒は、第1の溶媒と同じものとすることができる。
【0022】
チタン化合物、錯化剤、および次亜リン酸またはその塩から得られる組成物は、当業者に既知の任意の手段によって製造することができる(米国特許公報(特許文献4))。
【0023】
成分(C)では、このようなリン化合物を含まない触媒から製造されるポリエステルと比較して、チタン含有触媒と共に使用され、黄色味の少ないポリエステルを製造することができるリン化合物を使用することができる。好適なリン化合物の例には、以下に限定されないが、ポリリン酸またはその塩、ホスホン酸エステル、ピロリン酸またはその塩、ピロ亜リン酸またはその塩、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。ポリリン酸は、式Hn+2n3n+1を有するものとすることができ、式中、n≧2である。ホスホン酸エステルは、式(R1O)2P(O)ZCO21を有するものとすることができ、式中、各R1は同じであっても異なっていてもよく、独立にH、C1~4アルキル、またはこれらの組合わせとすることができ、Zは、C1~5アルキレン、C1~5アルキリデン、またはこれらの組合わせ、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルホスホネート、およびこれらの2つ以上の組合わせである。塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはこれらの2つ以上の組合わせとすることができる。
【0024】
好適なリン化合物の実例には、以下に限定されないが、三リン酸カリウム、三リン酸ナトリウム、四リン酸カリウム、五リン酸ナトリウム、六リン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ピロ亜リン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム十水和物、ピロ亜リン酸ナトリウム、エチルホスホネート、プロピルホスホネート、ヒドロキシメチルホスホネート、ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルホスホネート、メチルホスホノアセテート、エチルメチルホスホノアセテート、メチルエチルホスホノアセテート、エチルエチルホスホノアセテート、プロピルジメチルホスホノアセテート、メチルジエチルホスホノアセテート、トリエチルホスホノアセテート、またはこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。現在のところ好ましいリン化合物は、三リン酸塩およびエステルである。
【0025】
組成物は、約0.0001重量%〜約10重量%、好ましくは0.01重量%〜10重量%、最も好ましくは0.1重量%〜8重量%の範囲でチタンを含有することができる。組成物は、P/Tiのモル比が、約0.001:1〜約20:1、好ましくは約0.01:1〜約10:1、最も好ましくは約0.1:1〜約1:1の範囲となるように、成分(C)に由来するリンを含有することができる。水、およびグリコールなどの溶媒は、存在する場合、組成物の残部を構成することができる。
【0026】
本発明の組成物は、前述の第2の溶媒に実質的に可溶性である。「実質的に」の用語は、重要な意味を持つ。組成物は、溶媒に完全に可溶性であることが好ましい。しかし、組成物の相当の部分が溶媒中に懸濁または分散されるものとすることもできる。
【0027】
組成物は、当業者に既知の任意の手段によって製造することができ、その記載は本明細書では簡潔さのため省略されている(米国特許公報(特許文献3)および米国特許公報(特許文献4))。
【0028】
発明の別の実施形態によれば、エステル化、エステル交換反応、または重合方法は、触媒組成物およびリン化合物の存在下において、ポリマーの製造を実施するのに十分な条件で、カルボニル化合物とアルコールとを接触させること含むことができる。
【0029】
触媒組成物は、ポリエステルの製造に通常採用されるコバルト、アンチモン、マンガン、または亜鉛触媒とすることができ、このような触媒は当業者に周知であるため、本明細書ではその記載を省略する。触媒組成物は、また、チタン錯体およびリン化合物を含むことができる。
【0030】
チタン錯体は、(A)チタン化合物と、(B)(i)錯化剤および任意選択で第1の溶媒、または(ii)錯化剤、次亜リン酸またはその塩、および任意選択で第1の溶媒、ジルコニウム化合物、またはその両方、(iii)溶解促進剤、リン供給源、および任意選択で第1の溶媒の組合わせ、(iv)グリコールと、任意選択でリン化合物および水との組合わせ、または(v):(i)(ii)(iii)および(iv)のうち任意の2つの組合わせ、のいずれかとを含む組成物とすることができる、これらから本質的になるか、またはこれらからなるか、またはこれらを組合わせることにより製造される。
【0031】
リン化合物は、本明細書に組み込まれる、組成物成分(C)で前記に開示されるものと同じである。
【0032】
チタン錯体の各成分(A)、(B)(i)、(B)(ii)、および(B)(iv)、定義、範囲、および量は前記に開示されるものと同じであり、その記載は本明細書に組み込まれる。
【0033】
溶解促進剤は、オルトシリケート、オルトジルコネート、またはこれらの組合わせとすることができる。(B)(iii)の好ましい溶解促進剤は、有機シリケート、有機ジルコネート、またはこれらの組合わせとすることができる。最も好ましい溶解促進剤は、室温(約25℃)で、組成物を調製するのに使用される溶媒に、組成物中に存在する本質的に全てのチタンを溶解させることを容易にすることができる。このような溶解促進剤には、以下に限定されないが、有機オルトシリケート、有機オルトジルコネート、またはこれらの組合わせなどが挙げられる。有機オルトシリケートは、式Si(OR)4を有し、有機オルトジルコネートは、式Zr(OR)4を有し、式中、各Rは前記に開示されるものと同じである。これらの溶解促進剤は、一般に、市販されているか、または例えば、四塩化珪素、または四塩化ジルコニウムを溶媒に導入し、塩素を溶媒中のR基で置換することにより製造することができる。好適な溶解促進剤の例には、以下に限定されないが、テトラエチルオルトシリケート、テトラ−n−プロピルオルトシリケート、テトラn−プロピルオルトジルコネート、テトラn−ブチルオルトジルコネート、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。テトラエチルオルトシリケートおよびテトラ−n−プロピルオルトシリケートは、市販されている。テトラn−プロピルオルトジルコネート、テトラn−ブチルオルトジルコネートは、本願特許出願人から「タイゾール(TYZOR)(登録商標)」の商標で市販されている有機ジルコネートである。
【0034】
リン供給源は、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィン、またはこれらのうち2つ以上の組合わせとすることができる。(B)(iii)のリン供給源は、ホスホン酸、ホスフィン酸、ホスフィン、またはこれらの組合わせから選択されることが好ましく、これらのそれぞれは、リン原子に直接結合したアルキル、アルケニル、アルカリール、アリールアルキル、またはアリール基を有するものとすることができる。各基は、1つの基につき1〜約25個、好ましくは1〜約20個、最も好ましくは1〜約15個の炭素原子を有し、例えば、メチル基、エチル基、フェニル基、またはナフチル基などがある。さらに、酸のヒドロキシ基も置換することができる。例えば、ホスホン酸のリン原子に結合している1つまたは2つのOH基をエステル化することができる。
【0035】
好適なリン供給源の例には、以下に限定されないが、フェニルホスフィン酸、ジフェニルホスフィン酸、および3−(ヒドロキシフェニルホスフィニル)プロパン酸、1,2−ビス−ジフェニルホスフィノエタン、1,3−ビス−ジフェニルホスフィノプロパン、1,4−ビス−ジフェニルホスフィノブタン、ビス−4−トリルホスフィンオキシド、ビス−3,5−キシリルホスフィンオキシド、またはこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。
【0036】
成分(B)(iii)は、スルホン酸をさらに含むことができ、または任意選択でその塩を本発明に使用することができる。好ましいスルホン酸は、前記に開示される溶媒中に実質的に可溶性とすることができる、任意のアリール、またはアルキルスルホン酸とすることができる。好適なスルホン酸の例には、以下に限定されないが、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。スルホン酸の塩は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、またはこれらの2つ以上の組合わせとすることができる。
【0037】
成分(B)(iv)では、グリコールは、以下に限定されないが、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。現在のところ好ましいグリコールは、エチレングリコールである。
【0038】
成分(B)(iv)のリン化合物は、組成物成分(C)について前記に開示されるのと同じものとすることができる。チタン化合物、グリコール、並びに任意選択的なリン化合物((B)(iv))および水を、組成物または反応生成物の製造に有効な好適な条件下で、当業者に既知の任意の手段で組合わせることができる。この条件は、約0℃〜約200℃、好ましくは約50℃〜約120℃、および最も好ましくは50℃〜80℃の範囲の温度を含み、これらの温度範囲に適応できる圧力下で、組成物または反応生成物を製造するのに十分な時間とすることができる。主な反応生成物の1つは、おそらく、リン化合物と錯化することができるチタングリコラートである。例えば、テトライソプロピルチタネート/グリコール/三リン酸カリウムの溶液を40℃〜200℃の間、好ましくは60℃〜120℃の間に加熱し、イソプロピルアルコールを除去し、凝縮することができる。100%に等しい組成物の総重量を基準にして、(B)(iv)を含むチタン錯体は、チタンを約0.0001%〜約20%、好ましくは約0.001%〜約10%含み;組成物の約30%〜約99.999%、好ましくは約50%〜約99.999%はグリコールに由来し;水を約0.01%〜約50%含む。リンが組成物中に存在する場合、リンとチタンとのモル比は、約0.001:1〜約20:1、好ましくは約0.01:1〜約10:1の範囲とすることができる。
【0039】
触媒組成物は、助触媒をさらに含むことができる。助触媒の例には、以下に限定されないが、コバルト/アルミニウム触媒、アンチモン化合物、およびこれらの組合わせなどが挙げられる。コバルト/アルミニウム触媒は、コバルト塩とアルミニウム化合物とを含み、該触媒中のアルミニウムとコバルトとのモル比は、0.25:1〜16:1の範囲である。コバルト/アルミニウム触媒が、開示されており、その開示内容は参照により本明細書に組み込まれる(米国特許公報(特許文献5))。
【0040】
好ましいアンチモン化合物は、前記に開示される溶媒に実質的に可溶性の任意のアンチモン化合物とすることができる。好適なアンチモン化合物の例には、以下に限定されないが、酸化アンチモン、酢酸アンチモン、水酸化アンチモン、ハロゲン化アンチモン、硫化アンチモン、カルボン酸アンチモン、アンチモンエーテル、アンチモングリコラート、アルコール酸アンチモン、硝酸アンチモン、硫酸アンチモン、リン酸アンチモン、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。
【0041】
本発明によれば、アルコールと組合わせられてエステルまたはポリエステルを製造することができる任意のカルボニル化合物を使用することができる。このようなカルボニル化合物には、以下に限定されないが、酸、エステル、アミド、酸無水物、酸ハロゲン化物、酸に由来する繰返し単位を有するカルボン酸オリゴマーまたはポリマーの塩、またはこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。現在のところ好ましい酸は、カルボン酸などの有機酸またはその塩である。
【0042】
エステルまたはポリエステルを製造するのに好ましい方法は、反応媒体を、前記に開示される触媒組成物と接触させることを含む、それから本質的になる、またはそれからなる。反応媒体は、アルコールと、(1)有機酸、その塩、そのエステル、若しくはこれらの組合わせ、または(2)有機酸またはエステルに由来する繰返し単位を有するオリゴマー、のいずれかを含む、それから本質的になる、またはそれからなることができる。
【0043】
有機酸、またはそのエステルは、式R2COOR2を有するものとすることができ、式中、各R2は、独立に、(1)ハロゲン、(2)末端にカルボン酸基を有するヒドロカルボキシル基、または(3)各基は、1つの基につき1〜約30個、好ましくは約3〜約15個の炭素原子を有し、アルキル、アルケニル、アリール、アルカリール、アラルキル基、またはこれらの2つ以上の組合わせとすることができるヒドロカルビル基、とすることができる。現在のところ好ましい有機酸またはそのエステルは、式R22CACO22を有し、式中、Aは、アルキレン基、アリーレン基、アルケニレン基、またはこれらの2つ以上の組合わせであり、R2は前記と同じである。各Aは、1つの基につき約2〜約30個、好ましくは約3〜約25個、さらに好ましくは約4〜約20個、最も好ましくは4〜15個の炭素原子を有する。好適な有機酸の例には、以下に限定されないが、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、グルタル酸、アクリル酸、シュウ酸、安息香酸、マレイン酸、プロペン酸、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。現在のところ好ましい有機二酸は、テレフタル酸であるが、これは、テレフタル酸から製造されるポリエステルには広範な工業用の用途があるためである。好適なエステルの例には、以下に限定されないが、アジピン酸ジメチル、フタル酸ジメチル、テレフタル酸ジメチル、安息香酸メチル、グルタル酸ジメチル、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。
【0044】
酸をエステル化してエステルまたはポリエステルを製造することができる任意のアルコールを本発明に使用することができる。好適なアルコールの例には、アルキレングリコールおよびポリアルコールなどが挙げられる。ポリアルコールの例には、以下に限定されないが、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(テトラメチレングリコール)、t−1,4−ブテンジオールポリブチレン、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。アルキレングリコールは、式(HO)nA(OH)nを有するものとすることができ、式中、Aおよびnは、前記に開示されるものと同じである。好適なアルキレングリコールの例には、以下に限定されないが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、t−1,4−ブテンジオール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノール、およびこれらの2つ以上の組合わせなどが挙げられる。これらのアルコールは、市販されている。例えば、ポリ(テトラメチレングリコール)は、本願特許出願人から入手できる。
【0045】
TPAなどのカルボニル化合物とアルコールとのオリゴマーは、一般に、カルボニル化合物とアルコールに由来する繰返し単位を合計で、約2〜約100、好ましくは約2〜約20有する。
【0046】
任意の好適な手段により、触媒の存在下でカルボニル化合物とアルコールとの接触を実施することができる。
【0047】
エステルまたはポリエステルの製造を実施するのに好適な任意の条件は、約150℃〜約500℃、好ましくは約200℃〜約400℃、および最も好ましくは約250℃〜約300℃の範囲の温度を含み、約0.001〜約1気圧の範囲の圧力下で、約0.2〜約20時間、好ましくは約0.3〜約15時間、最も好ましくは約0.5〜約10時間とすることができる。
【0048】
アルコールとカルボニル化合物とのモル比は、その比がエステルまたはポリエステルの製造を実施できる限り、どのような比とすることもできる。一般に、この比は、約1:1〜約10:1、好ましくは約1:1〜約5:1、最も好ましくは約1:1〜約4:1の範囲とすることができる。
【0049】
Co、Sb、Mn、ZnまたはTi元素として表される触媒は、カルボニル化合物とアルコールとを含む媒体の、約0.001〜約30,000重量ppm、好ましくは約0.1〜約1,000重量ppm、最も好ましくは1〜100重量ppmの範囲で存在することができる。共触媒が存在する場合、反応媒体の約0.01〜約1,000ppmの範囲で存在することができる。
【0050】
本発明の方法は、任意の慣用的な溶融または固体状態の技術を使用し、製造されるポリエステルの着色を低減するトナー化合物の存在または非存在下で実施することができる。トナー化合物の例には、以下に限定されないが、アルミン酸コバルト;酢酸コバルト;アントラキノン;アントラピリドン;米国ロードアイランド州コベントリー、ヘキスト−セラニーズ(Hoechst−Celanese,Coventry,Rhode Island,USA)から、または米国オハイオ州シンシナチ、サンケミカル社(Sun Chemical Corp,Cincinnati,Ohio,USA)から市販のカルバゾールバイオレット(Carbazole violet)(C.I.ピグメントバイオレット(Pigment Violet)23);全てスイスのクラリアント(Clariant)から市販のエストフィルブルー(Estofil Blue)S−RLS(登録商標)、ポリシンスレンブルー(Polysynthren Blue)RLS(ソルベントブルー(Solvent Blue)45)、ポリシンスレンブルー(Polysynthren Blue)R(登録商標)(C.I.ソルベントブルー(Solvent Blue)122)、ポリシンスレンレッド(Polysynthren Red)GFP(ソルベントレッド(Solvent Red)135)、ポリシンスレンレッド(Polysynthren Red)BB(ソルベントレッド(Solvent Red)195)、およびC.I.ソルベントバイオレット(Solvent Violet)49;共にスイスのサンド(Sandoz)、スイスのクラリアント(Clariant)、または米国ノースカロライナ州シャーロットのサンドケミカルズ(Sandoz Chemicals,Charlotte,North Carolina,USA)から市販の、サンドプラストブルー(Sandplast Blue)2B(C.I.ソルベントブルー(Solvent Blue)104)およびサンドプラスト(Sandplast)RBS−FP;CuPcブルー(米国オハイオ州シンシナチ、サンケミカル社(Sun Chemical Corp,Cincinnati,Ohio,USA)製);全てホリデーピグメンツ(Holliday Pigments)(英国キングストンアポンハル(Kingston upon Hull,England))から市販の、C.I.ピグメントレッド(Pigment Red)263、C.I.ピグメントブルー(Pigment Blue)29、C.I.ピグメントバイオレット(Pigment Violet)15、ホリデーピグメンツウルトラマリンブルー(Holliday Pigments Ultramarine blue)ARグレード、3ミクロン粒子、ホリデーピグメンツウルトラマリンブルー(Holliday Pigments Ultramarine blue)DRMグレード、2ミクロン粒子、およびホリデーピグメンツウルトラマリンブルー(Holliday Pigments Ultramarine blue)DRFXグレード、1ミクロン粒子、などが挙げられる。頭字語「C.I.」は、染物師およびカラリスト協会(The Society of Dyers and Colourists)(英国ウエストヨークシャー(West Yorkshire,England))から発行されているカラーインデックスを表す。これらのトナー化合物は当業者に周知であり、本明細書ではその記載を省略する。製造されるポリエステルの重量を基準にして、トナー化合物を約0.1ppm〜1000ppm、好ましくは約1ppm〜約100ppm、さらに好ましくは約1ppm〜約10ppmの量で、本明細書に開示される触媒と共に使用することができる。
【0051】
本発明の方法は、慣用的な溶融または固体状態の技術のいずれかを使用し、製造されるポリエステルの黄色味を低減する光学的増白化合物の存在または非存在下で実施することができる。光学的増白化合物の例には、以下に限定されないが、7−ナフトトリアジニル−3−フェニルクマリン(商品名「ルーコピュア(Leucopure)EGM」、米国ノースカロライナ州シャーロット、サンドケミカル(Sandoz Chemicals,Charlotte,North Carolina,USA)製)、4,4’−ビス(2−ベンゾキサゾルイル)スチルベン(商品名「イーストブライト(Eastobrite)」、米国テネシー州キングスポート、イーストマンケミカル(Eastman Chemical,Kingsport,Tenessee,USA)製)などが挙げられる。これらの光学的増白化合物は、当業者に周知であり、本明細書ではその記載を省略する。製造されるポリエステルの重量を基準にして、光学的増白化合物を約0.1ppm〜10000ppm、好ましくは約1ppm〜1000ppmの量で、本明細書に開示される触媒と共に使用することができる。
【0052】
本発明の方法により製造されるポリエステルは、チタンを重量で約1〜約200(ppm)、およびリンを約1〜約200ppm、好ましくは約5〜約100ppm含むことができる。
【0053】
本発明によれば、リン化合物は、有機酸またはそのエステルがエステル化またはエステル交換される前、その間、またはその後に、反応媒体中に存在することができる。同様に、それは、重縮合工程前、その間、またはその後に存在することができる。リン化合物は、チタン含有触媒の触媒活性を抑制するために、チタン含有触媒を使用して製造されるポリエステルの変色を低減するために、またはその両方のために使用することができる。触媒をポリエステル反応プロセスに導入する前に、リン化合物をチタン、アンチモン、マンガン、亜鉛などの触媒と混合することができる。或いはまた、触媒を導入する前、またはその後に、別々にプロセスに導入することができる。
【0054】
例えば、背景技術の項で開示されるTPAプロセスでは、チタン触媒を単独で、またはアンチモンなどの他の触媒と組合わせて、オリゴマー用の重縮合触媒として使用することができる。或いはまた、チタン含有触媒は、エステル転換反応を促進するエステル交換器中に、またはエステル化反応を促進するエステル化反応器中に存在することができる。一般に、チタン含有触媒は、エステル化またはエステル交換反応中よりも重縮合反応中に、より活性が高い。エステル化、またはエステル交換反応用のチタン含有触媒の適切な濃度は、重縮合用を超過する濃度とすることができる。エステル化反応器、またはエステル交換器(エステル交換反応器)中に存在するチタン含有触媒が、重縮合を超過する場合、または重縮合がアンチモンなどのチタン非含有触媒を用いると意図される場合、チタン触媒の一部または全部は、ポリマーの変色を回避するため、エステル化またはエステル交換反応後、組成物成分(C)で前記に開示されるリン化合物で不活性化されるまたは抑制されることが好ましい。
【0055】
ポリマー中に存在するチタン含有触媒は、前途の加工において劣化および黄色味の増加を引き起こし得る。ポリマーの変色を回避するため、重合後、チタン触媒の一部または全部を、組成物成分(C)で前記に開示されるリン化合物で不活性化するまたは抑制することができる。
【0056】
同様に、マンガン、亜鉛、または他の触媒が、エステル化またはエステル交換反応触媒として使用され、チタン含有触媒が重縮合触媒として使用される場合、これらの触媒を、組成物成分(C)で前記に開示されるリン化合物の存在により不活性化することができる。
【0057】
さらに、ボトル用樹脂などの多くの包装材料には、ポリマーの低濁度が必要である。包装材料用のポリエステルを製造するのに、通常、アンチモンおよびコバルトをリン酸と組合わせて使用する。残念ながら、リン酸はアンチモンおよびコバルトと反応して不溶性の固体を形成し、これが高濁度につながる。従って、好ましい方法は、アンチモンおよびコバルトなどの金属または金属含有化合物と反応して不溶性の固体を形成しない、リン化合物を導入することである。リン化合物は、成分(C)で前記に開示されるのと同じものとすることができる。リン化合物は、重縮合の前、その間またはその後に存在し得る。
【0058】
本発明の別の実施形態によれば、不溶性の粒子または固体が減少したポリエステルを製造する方法が提供される。この方法は、金属または金属化合物の存在下で、カルボニル化合物をアルコールと接触させることを含むことができる。カルボニル化合物およびアルコールは、前記に開示されるのと同じものとすることができる。金属または金属化合物は、以下に限定されないが、TiO2、酸化アンチモン、アンチモングリコラート、酢酸アンチモン、酢酸マンガン、酸化亜鉛、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、アルミニウム化合物、ゲルマニウム化合物、チタン組成物、またはこれらの2つ以上の組合わせなどの、金属または金属含有化合物とすることができる。これらの金属または金属化合物は、当業者に周知である。
【0059】
繊維の製造において、製造プロセス中に通常使用されるリン酸は、アンチモン、マンガン、コバルト、アルミニウムおよび/または二酸化チタンと反応して、不溶性の粒子または固体を形成する。不溶性の固体は、繊維製造装置の紡糸口金、またはポリマーフィルターパックを詰まらせる可能性があり、高いパック圧力を引き起こし、紡糸口金またはフィルターパックを交換するため、頻繁にプロセスを停止することになる。従って、好ましい方法は、金属または金属含有化合物で固体を形成しないリン化合物を製造プロセスに導入することである。リン化合物は、成分(C)で前記に開示されるのと同じものとすることができる。リン化合物は、重縮合の前、その間またはその後に存在し得る。
【実施例】
【0060】
本発明をさらに説明するため、以下の実施例を記載するが、それらは本発明の範囲を不当に制限するものと解釈されるべきではない。実施例に記載される全てのタイゾール(TYZOR)(登録商標)製品は、本願特許出願人から入手された。濃度(%、またはppm(百万分の1))は全て、別途明記されない限り、重量濃度である。
【0061】
アンチモングリコラート溶液を以下のように調製した。エルフ・アトケム(Elf Atochem)(米国ケンタッキー州キャロルトン(Carollton,Kentucky,U.S.A.))から入手したアンチモングリコラート(1.421kg)を混合槽中でエチレングリコール(81.6kg)と混合した。混合物を撹拌し、100℃まで加熱し、30分間100℃で保温した。アンチモングリコラートをグリコール中に完全に溶解させ、溶液はSbを1%含有した。
【0062】
触媒A溶液を以下のように調製した。環境温度の撹拌混合槽中のエチレングリコール163kgに、タイゾール(TYZOR)(登録商標)TPT(テトライソプロピルチタネート;TPT;0.97kg)をゆっくり添加した。溶液はTiを0.1%含有した。
【0063】
触媒B溶液を以下のように調製した。エチレングリコール(8.12kg)および三リン酸カリウム(KTPP;0.3kg)を混合槽に装填し、60℃で1時間撹拌して、透明な溶液を製造し、その溶液にTPT、1.13kgを添加し、Tiを2%含有する透明な溶液を製造した。この溶液をエチレングリコール181.4kgと混合し、Tiを0.1%含有する溶液を製造した。
【0064】
触媒C溶液を以下のように調製した。撹拌機、N2引入口、加熱用マントル、滴下漏斗および凝縮器を装備した250mlのフラスコにタイゾール(TYZOR)(登録商標)LA100g(0.17モル)、即ち、乳酸2モルをTPTに添加した後、水を添加し、副生成物のイソプロピルアルコールを除去し、28%の水酸化アンモニウム水溶液で中和することにより調製したチタンビス‐アンモニウムラクテートの水溶液を装填した。撹拌を開始し、次亜リン酸ナトリウムの50%水溶液30g(0.17モル)を添加した。反応物を室温で2時間撹拌し、Tiを6.3%含有する無色透明の溶液130gが得られた。
【0065】
(実施例1)
テレフタル酸(TPA)から以下のように、連続プロセスパイロットプラント中でポリエチレンテレフタレート繊維を製造した。ポリエステルエステル化、重縮合、および紡糸方法は、当業者に周知であり、本明細書では簡潔な記載に留める。
【0066】
TPAスラリー槽にTPAおよびエチレングリコールを44〜57kg/時間、連続的に装填した。装填速度は動力スクリュ供給機で制御され、54〜66kg/時間の所望のポリマーフローレートを維持した。エチレングリコールとTPAとのモル比が2.2になるように、エチレングリコールフローレートを質量流量計で制御した。エチレングリコールは、未使用のグリコールと、エステル化反応器および予備重合反応器および終了反応器から凝縮された蒸気からリサイクルされたグリコールとの混合物であった。スラリー槽の温度は、約80℃であった。TPAスラリーは、所望のポリマーフローレートとエステル化反応器中で一定のオリゴマー液体濃度を維持する速度で、再循環エステル化反応器に注入された。エステル化反応器の温度は282〜284℃に制御された。エステル化反応器からの蒸気は凝縮され、エチレングリコールと水に分離され、グリコールは予備重合装置および終了反応器からの蒸気から凝縮されたグリコールと混合された後、未使用のグリコールと混合され、TPAスラリーに装填された。
【0067】
エステル化反応器からのオリゴマーの重合度は5〜10であった。触媒などの添加剤、艶消し剤TiO、禁止剤、および色制御剤を第1の予備重合反応器の前でオリゴマーラインに注入した。注入速度を計量ポンプで制御し、ビュレットチェックで較正し、ポリマー中の所望の濃度が得られた。1%Sb溶液、または0.1%Ti溶液をオリゴマーラインに注入し、静的混合機で混合し、ポリマー中に所望の触媒濃度が得られた。次いで、アナターゼTiO2(グレードLW−S−U、ドイツ、デュースブルク、ザハトレーベンヒェミー社(Sachtleben Chemie GmbH,Duisburg,Germany)製)スラリーを、オリゴマーラインに注入した後、配管中の静的混合機で混合した。透明なポリマーでは、TiO2を5%含むエチレングリコールスラリーを注入し、ポリマー中のTiO2は0.025〜0.045%となった。半艶消しポリマーでは、TiO2を10%含むエチレングリコールを注入し、ポリマー中のTiO2は0.25〜0.35%となった。艶消しポリマーでは、TiO2を20%含むエチレングリコールを注入し、ポリマー中のTiO2は1.4〜1.6%となった。前述のカルバゾールバイオレットをTiO2スラリーと共に注入し、ポリマー中のカルバゾールバイオレットは、アンチモン触媒の場合を除き2ppmとなった。
【0068】
ジ(ポリオキシエチレン)ヒドロキシメチルホスホネート(「ビクタスタブ(Victastab)」HMP、米国ケンタッキー州ルイスビル、アクゾノーベル製(Akzo Nobel,Louisville,Kentucky,USA)、1.523kg)を環境温度の撹拌混合槽中のエチレングリコール80.3kgに添加し、リンを0.158%含有する溶液を作製した。同様に、H3PO4を5%含むエチレングリコール溶液(2.27kg)をエチレングリコール20.4kgに添加し、H3PO4を0.5%またはリンを0.158%含有する溶液を作製した。触媒およびTiO2の後、これらの溶液をオリゴマーラインに注入した後、静的混合機で混合し、ポリマー中の目的とするリン濃度が得られる。
【0069】
オリゴマーは、275℃、絶対圧力120mmHg(16kPa)に制御された第1の予備重合反応器にポンプで送られた。第1の予備重合反応器からのプレポリマーは、第2の予備重合装置に流入した後、最終重合反応器または終了反応器に流入した。第2の予備重合反応器は、280℃、および絶対圧力30mmHg(4kPa)に制御された。最終重合反応器または終了反応器は、285℃、およびオンライン溶融粘度計で制御される絶対圧力に制御された。オンライン溶融粘度計を使用してポリマー分子量を決定し、それを実験室でポリマー溶液粘度により較正した。2つの予備重合反応器および終了反応器から蒸発したグリコールおよび水は、凝縮され、エステル化反応器からのリサイクルグリコールと混合された後、未使用のグリコールと混合され、計量されてTPAスラリー槽に供給された。
【0070】
最終重合反応器からのポリマーを紡糸機械にポンプで送った。ポリマー移送ライン温度は、285℃に制御された。全デニールが265g/9000mであり、フィラメントを34本有する部分配向糸(POY)をチューブに巻き付け、8本のチューブが同時に巻かれた。フィラメントは、円形の断面を有した。紡糸速度は、3,283メートル/分であった。巻かれたチューブを巻き取り機械から1時間毎に取り外し去た。スピンパックのポリマーフローレートを計量ポンプで制御し、調節し、所望のデニールが得られた。スピンパック中のポリマーフローレートは、約46.4kg/時間であった。紡糸機械に流入しないバラストポリマーを廃棄ドラムにポンプで送った。
【0071】
仕上げ加工を施す前に、紡糸機械のポリマーサンプルを取り、実験室で固有粘度(I.V.)、TiO2、P、Sb、Mn、Co並びにジエチレングルコールおよびカルボキシル末端基(COOH)の成分濃度を分析した。POYチューブの、ハンター色差計(Hunter color instrument)における色、並びにデニール、引張り張力、強靭性、伸び、煮沸収縮、および乾燥熱収縮などの物理的特性を分析した。
【0072】
結果を以下の表に記載する。ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中の溶液粘度により測定されるI.V.分析では、重量測定したポリマーサンプルをHFIPに溶解し、4.75%溶液を作製した。オクタビスク(Octavisc)(登録商標)自動粘度計システムの定容量粘度計を使用して、25℃の溶液の滴下時間を測定した。
【0073】
得られるオリゴマー、およびそれから製造される任意のポリマーの色を、ハンター色差計を使用してL値およびb値について測定した。L値は白色度を示し、示す数値が大きいほど、白色度が高い(望ましい)。b値は、黄色味の程度を示し、示す数値が高いほど、黄色味が高い(望ましくない)。
【0074】
この実施例は、チタン触媒より20%高い重合速度を達成すると同時に、同等の光学的特性を維持する能力を例証する。アンチモン触媒の場合を除いて、カルバゾールバイオレットをトナーとして使用し、アンチモン触媒の場合およびチタン触媒の1つの場合を除いて、HMPを色安定剤として使用した。結果を下記の表1に示す。
【0075】
【表1】

【0076】
(実施例2)
この実施例は、ポリマーフローレート56kg/時間におけるジメチルテレフタレート(DMT)からのポリエステル繊維の製造を例証する。ポリエチレンテレフタレート繊維は、DMTから以下のように連続プロセスパイロットプラント中で製造された。ポリエステルエステル交換反応、重縮合、および紡糸プロセスは、当業者に周知であり、本明細書では簡潔な記載に留める。
【0077】
エステル交換器は、20段のプレートを有する垂直反応蒸留カラムであり、底部プレートは1番目のプレートであり、上部プレートは20番目のプレートであった。175℃の溶融DMTを、約56〜57kg/時間で16番目のプレートに連続的に装填し、56kg/時間のポリマーフローレートが得られた。185℃の触媒含有エチレングリコール溶液を、17番目のプレートに連続的に装填した。未使用のエチレングリコールを底部カランドリア(熱交換器)に連続的に装填した。触媒作用を受けたグリコールと未使用のグリコールとのモル比は、4.0であり、全グリコールとDMTとのモル比は、2.0であった。触媒含有グリコール溶液は、バッチで作製され、各バッチに対して、エチレングリコール544kg、酢酸マンガン四水和物0.590kg(ポリマー中のMn、125ppm)、酢酸ナトリウム0.115kg、およびアンチモングリコラート0.888kg(アンチモン触媒の場合)を撹拌混合槽中で混合した。13番目のプレートの温度は、約180℃に制御された。19番目のプレート温度はメタノール還流により110〜115℃に制御された。
【0078】
エステル交換器装置カランドリアからのモノマーを第1の予備重合反応器にポンプで送った。禁止剤および色制御剤などの添加剤、艶消し剤TiO、およびチタン触媒を、第1の予備重合反応器の前で、モノマーラインに注入した。成分注入速度は、計量ポンプで制御され、ビュレットチェックで較正され、ポリマー中に所望の成分濃度が得られた。
【0079】
HMP(3.153kg)をエチレングリコール81.6kgに添加し、リンを0.316%含有する溶液を作製した。トリエチレンホスホノアセテート(TEPA、米国バージニア州リッチモンド、オルブライトアンドウィルソンアメリカ(Albright&Wilson America,Richmond,Virginia,U.S.A.)製、1.913kg)をエチレングリコール81.6kgに添加し、リンを0.316%含有する溶液を作製した。三リン酸カリウム(KTPP、米国ペンシルバニア州フィラデルフィア、FMC社(FMC Corp.Philadellphia,Pennsylvania,USA)製、0.714kg)をエチレングリコール22.7kgに添加し、リンを0.316%含有する溶液を作製した。H3PO4を10%含有するエチレングリコール溶液(11.4kg)をエチレングリコール11.3kgに添加し、H3PO4を5.0%、リンを5.0%または1.58%含有する溶液を作製した。これらの禁止剤溶液をモノマーラインに注入した後、静的混合機で混合し、ポリマー中に所望のリン濃度が得られた。
【0080】
次いで、アナターゼTiO2スラリーをモノマーラインに注入した後、静的混合器で混合した。透明なポリマーでは、TiO2を5%含むエチレングリコールスラリーを注入し、ポリマー中のTiO2は0.025〜0.045%となった。半艶消しポリマーでは、TiO2を10%含むエチレングリコールを注入し、ポリマー中のTiO2は0.25〜0.35%となった。艶消しポリマーでは、TiO2を20%含むエチレングリコールを注入し、ポリマー中のTiO2は1.4〜1.6%となった。前述のカルバゾールバイオレットをTiO2スラリーと共に注入し、ポリマー中のカルバゾールバイオレットは、アンチモン触媒の場合を除き、2ppmとなった。チタン触媒の場合、0.1%Ti溶液をモノマーラインに注入した後、静的混合器で混合し、ポリマー中に所望の触媒濃度が得られた。
【0081】
第1の予備重合反応器の温度を250℃に制御し、絶対圧力は100mmHg(13.33kPa)であった。第1の予備重合反応器からのプレポリマーは、第2の予備重合反応器に流入した後、最終重合反応器または終了反応器に流入した。第2の予備重合反応器、終了反応器、ポリマー移送ライン、紡糸プロセス、並びにポリマーおよび糸の特性の分析は、実施例1に記載のものと同じであった。
【0082】
表2に示すように、チタン含有触媒およびリン化合物安定剤を使用して製造されたポリマーの光学的特性は、アンチモン触媒で達成されたものと同様であった。
【0083】
【表2】

【0084】
(参考例3)
この参考例は、アンチモン触媒およびチタン触媒を用いて製造されたポリマーおよび部分配向糸(POY)の特性を例証する。ポリマーおよびPOYは、実施例1に記載される方法で製造された。POYは、34本のフィラメントを有し、デニールは全体で、265g/9000mであり、フィラメントの断面は円形であった。紡糸速度は3,283メートル/分であった。次の表の結果は、5〜15の事例の平均であり、各事例は2つの取出物(doff)の平均であり、各取出物は8本のチューブの平均であった。表3に示されるように、同じ紡糸条件では、チタン触媒のPOYの方が、引張り張力、収縮、および強靭性が低く、伸びが大きかった。
【0085】
固有粘度(I.V.)の分析を実施例1に記載した。引張り張力、煮沸収縮、乾燥熱収縮、強靭性、および伸びの分析は、当業者に周知であり、本明細書では簡潔な記載に留める。引張り張力分析では、糸は、引張り張力機械に169メートル/分で供給され、185℃に加熱され、ドロー比は1.71であり、供給ロールと引張りロール(draw roll)の間でピンに掛かる応力を記録した。煮沸収縮分析では、長さ約30cmのフィラメントを100℃の沸騰水中に約30分間入れ、その前後の長さを測定した。乾燥熱収縮では、長さ約30cmのフィラメントを160℃のオーブン中に約30分間入れ、その前後の長さを測定した。強靭性および伸びは、モデル1122または1123インストロン(Instron)により測定された応力歪曲線から得られた。インストロン(Instron)は、力を正確に測定する歪ゲージ、制御可能な一定の速度で移動する「クロスヘッド」、力対クロスヘッド移動のグラフを記録するチャートレコーダー、および力と運動のデータを読み取り、処理するコンピュータにインターフェイスするプロビジョンを装備した市販の試験装置である。
【0086】
【表3】

【0087】
(実施例4)
この実施例は、TPAをベースにしたプロセスの連続パイロットプラントにおいてポリマーフローレート54.4kg/時間でボトル樹脂を製造した。この実施例では、米国ジョージア州アルファレッタ、アモコ(Amoco,Alpharetta,Georgia,USA)製の精製TPAおよび精製イソフタル酸(IPA)を使用したが、例外として、触媒Bの最後の事例では、実施例1に記載される「ポリマーグレード」TPAおよび精製IPAを使用した。ポリマー中のTPAとIPAとのモル比は、98:2であった。アンチモンおよびチタン触媒の両方でポリマーの黄色味を低減するため、酢酸コバルトをオリゴマーラインに添加した。アンチモン触媒の場合、リン酸溶液をTPAスラリー槽に注入するか、またはTEPAをオリゴマーラインに注入した。チタン触媒の場合、HMPまたはTEPAをオリゴマーラインに注入した。
【0088】
エステル化および重縮合方法は、実施例1に記載のものと同様であったが、例外としてエステル化温度は284℃であり、第1の予備重合反応器は265℃、90mmHg(12kPa)で運転され、第2の予備重合反応器は275℃、35mmHg(4.67kPa)で運転され、終了反応器の温度は282℃であった。終了反応器から注型機械への移送ラインのポリマー温度は、282℃であった。溶融ポリマーは冷却水を用いて注型され、切断され粒子25個当り0.44gのフレークが得られた。
【0089】
固有粘度、L色、およびb色を前記に開示されるように決定した。濁度はポリマー樹脂の曇り度の尺度であり、重量を測定したフレークサンプルをHFIPに溶解させた後、ハッハモデル2100AN濁度計で読み取ることにより決定された。濁度数が低いほどポリマーは透明である。
【0090】
アセトアルデヒドは、以下のように測定される。(1)サンプル調製。ポリマー四(4)グラムを微粉砕用の管に添加した。管を液体窒素で1.5分間冷却した。次いで、3分間衝撃粉砕し、室温まで90分間冷却した。材料約1gを22mlのバイアル瓶のヘッドスペースに装填して密封し、重量を記録した。(2)ガスクロマトグラフ。次いで、ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)5890ガスクロマトグラフ装置に結合された、ヒューレットパッカード(Hewlett Packard)HP7694自動ヘッドスペースサンプラーでサンプルを注入した。インジェクターの温度は160℃であり、検出器の温度は250℃であり、カラムは、ID0.53mm、長さ30メートル、1.0ミクロンのフィルム厚さを有するDB−waxであり、検出器の種類は水素炎イオン化であった。アセトアルデヒド濃度は、標準と比較した面積から計算された。
【0091】
表4の結果から、リン酸と比較して、TEPAはアンチモン触媒を含有するポリマーの濁度を低下させ、L色およびb色を改善したことが分かる。また、この結果から、TEPAおよび/またはHMPと組合わせたチタン触媒で製造したポリマーは、リン酸と組合わせたアンチモンで製造したポリマーと比較して濁度が低かったことも分かる。TEPAおよび/またはHMPと組合わせたチタン含有触媒の使用により、ポリマーの色が改善した。
【0092】
【表4】

【0093】
(実施例5)
この実施例は、本発明のチタン含有触媒をエステル化触媒として使用する能力を例証する。エステル化、重縮合、およびフレーク注型プロセスは、実施例4に記載のものと同じであった。この方法のエステル化工程の前に、前記に開示される触媒B(ポリリン酸のアルカリ金属塩で安定化されたチタンのグリコール溶液)をTPAスラリーに添加した。使用したTi濃度は、ポリマーの25ppmであり、ポリマーフローレートは、ポリマー54.4kg/時間であった。
【0094】
TPAのカルボキシル末端基の数は、オリゴマー中の重合の程度を示すものの1つである。実施例4では、エステル化反応器に触媒を添加せず、オリゴマーの平均カルボキシル末端基は、687meq/kgであった。実施例5では、触媒Bの25ppmのTiをエステル化反応器の前に添加し、オリゴマーカルボキシル末端基は、同じ通過量およびプロセス条件で400meq/kgに減少した。このことから、エステル化反応器能力がチタン触媒と共に増加し得ることが分かった。
【0095】
この試験では、TPAスラリーに添加されたチタン触媒は、エステル化の後であるが、重縮合の前にTEPAを添加することにより不活性化された。注入されたリンは、ポリマーの40ppmであり、X線により測定されたポリマー中のリンは、27ppmであり、これは、注入したTEPAの一部が蒸発したことを示す。アンチモンは、オリゴマーラインに重縮合触媒として注入された。酢酸コバルトをアンチモンと共に添加して、ポリマーの色を制御し、注入されたコバルトは、ポリマーの30ppmであった。無定形ポリマーフレークは、L色が51.9およびb色が2.5であった。
【0096】
(実施例6)
この実施例から、チタン化合物と、錯化剤、または溶解促進剤とリン供給源との組合わせのいずれかとを含有する、またはこれらから製造される触媒組成物は、また、リン化合物と共に使用される場合、良好な光学的特性を有するポリマーを製造することがさらに分かる。
【0097】
下記の表では、触媒Cは、前記に開示されるものと同じであった。触媒Dは、以下のように製造される。撹拌機、凝縮器、滴下漏斗、およびN2パージを装備した500mlのフラスコに、エチレングリコール109g(1.76モル)を装填した。撹拌を開始し、フェニルホスフィン酸100g(0.704モル)を添加した。スラリーを固体が溶解するまで35℃〜45℃に加熱した後、TPT50g(0.176モル)を35℃で1滴ずつ1時間に渡り添加した。添加が完了した時、反応物を30分間撹拌し、次いで、テトラエチルオルトシリケート109.8g(0.528モル)を30分に渡り添加した。チタンを2.3%含有する透明な溶液が得られた。
【0098】
1リットルの樹脂釜に、40rpmで回転するジフィーミキサー(Jiffy Mixer)撹拌機、熱電対、凝縮器、および窒素掃引を装備した。表1に示される触媒、エチレングリコール160mg、前記の実施例1で調製されるテレフタル酸オリゴマー500mgをこの釜に添加した。撹拌器を作動させ、温度を約2.5時間に渡り275℃まで上昇させた。275℃および120mmHg(16.0kPa)で20分間、280℃および30mmHg(4kPa)でさらに20分間、撹拌し続けることにより、内容物を重合させた。次いで、エレクトロクラフトモトマティック(Electro−Craft Motomatic)トルク制御器で測定される場合、15オンス−インチ(0.106ニュートン−メートル)に達するように、内容物を十分な時間、285℃で1〜2mmHgの圧力で撹拌し続けた。この工程の時間は、終了時間として記録され、使用する触媒によって様々であった。次いで、ポリマー溶融物を水浴に注ぎ入れて溶融物を固化させ、得られた固体を150℃で12時間アニールし、前述の分光器を使用して色計測を行うため、粉砕して2mmのフィルターを通過させた。下記の表5および6に結果を示す。
【0099】
【表5】

【0100】
【表6】

【0101】
これらの2つの表から、実験2および4(本発明の方法)は、実験1および3よりも良好な光学的特性(高いL色、低いb色、および良好なa色)を有するポリマーを製造したことが分かる。この結果から、本発明の方法は、通常使用されるアンチモン含有触媒に適用可能であることがさらに分かる。
【0102】
(実施例7)
この実施例から、リン化合物の幾つかは、チタングリコラートを有するエチレングリコール中で透明な溶液を形成しないことが分かる。チタングリコラート溶液(Ti1%)と、リン酸、亜リン酸(H3PO3)、亜リン酸トリフェニル(TPP)、若しくはフェニルホスフィン酸(PPA)との混合または反応により、濁った溶液またはコロイドが形成される。チタングリコラート溶液と、TEPAおよびHMPとの混合または反応により、透明な溶液が形成される。下記の表7(EG、エチレングリコール)は、TEPAまたはHMPをチタン触媒と共に使用し、ポリマー中の不溶性の粒子または固体を減少させることができることを示している。
【0103】
【表7】

【0104】
(参考例8)
この参考例から、通常使用されるリン酸は、アンチモン、コバルト、またはTiOと反応し、不溶性の固体または凝集体を形成し、ポリマーフィルタおよび繊維紡糸口金にさらに多くの堆積と、ポリマー樹脂中の高懸濁度を生じさせることが分かる。
【0105】
前述の1%アンチモングリコラート溶液の一部(10g)と、リン酸溶液(H3PO4を1%含むエチレングリコール)1gとを開いたガラスビーカー中で混合した。振とう後、濁った溶液が形成された。この1%リン酸溶液をさらに9g添加した際、混合物は濁ったままであった。
【0106】
この濁った溶液は、リンを0.158重量%、およびアンチモンを0.500%含有した。2時間後、上部の6mlは透明な液体となり、底部の12mlは、アンチモンコロイドになり、小さい泡が上がった。54時間後、上部の8mlは、主にエチレングリコールの透明な液体であり、底部の10mlは、乳白色のアンチモンコロイドであった。11日後、同じ状態のままであった。
【0107】
コバルト溶液は、エチレングリコール(36g)中に酢酸コバルト四水和物(CoAc・4H2O、4g)を溶解させ、酢酸コバルト四水和物を10%含有するコバルトグリコラート溶液を作ることにより得られた。60分間撹拌した後、大きい粒子は溶解し、均一な赤紫色の溶液となった。酢酸コバルト四水和物溶液の一部(9g)と、リン酸溶液(H3PO4を10%含むエチレングリコール)1gを開いたガラスビーカー中で混合した。振とう後、濃い青紫色の凝集体が、ガラスビーカーの底部に形成した。10日後、上部の3mlは、主にエチレングリコールの赤色の液体であり、底部の7mlは、濃い紫色の凝集体であった。
【0108】
TiO2を20%含むエチレングリコールスラリーは、TiO2を55%含むエチレングリコールスラリーをサンドミルで2回粉砕し、エチレングリコールで20%に希釈し、濾過して大きい粒子を除去することにより調製された。
【0109】
TiO2を含むエチレングリコールスラリー(TiO220%、20g)およびリン酸を含むエチレングリコール溶液(H3PO41%、10g)を開いた目盛り付きのシリンダ中で混合し、総容量は約25mlとなった。3日後、それは、主にエチレングリコールの透明な液体である上部の3mlと、TiO2凝集体である底部の22mlの2相に分離した。
【0110】
TiO2を含むエチレングリコールスラリー(TiO220%、20g)およびリン酸を含むエチレングリコール溶液(H3PO41%、12g)を開いた目盛り付きのシリンダ中で混合し、総容量は約27mlとなった。3日後、それは、主にエチレングリコールの透明な液体である上部の3.6mlと、TiO2凝集体である底部の23.4mlの2相に分離した。
【0111】
(参考例9)
この参考例から、TEPAは、アンチモン、コバルト、TiOおよび他の金属と混合した時、不溶性の固体、または凝集体を形成しないことが分かる。従って、通常使用されるリン酸をTEPAで置換する場合、ポリマー中の不溶性の固体または凝集体が、顕著に減少し得る。この実施例では、アンチモンを1%含むエチレングリコール溶液、酢酸コバルト四水和物を10%含むエチレングリコール溶液、およびTiO2を20%含むエチレングリコールスラリーを実施例7に開示されるように調製した。
【0112】
アンチモン溶液の一部(9g)と、TEPA溶液1gとを開いたガラスビーカー中で混合した。振とう後、透明な溶液となった。開いたガラスビーカーの中で、3日後、溶液は透明なままであった。
【0113】
酢酸コバルト四水和物溶液をアンチモン溶液の替わりに使用した場合、透明な溶液が生じ、10日後、透明なままであった。
【0114】
同様に、TiO2スラリー20gをTEPA液体2gと混合すると、単一相の白色スラリーが生じた。3日後、それは、相分離のない均一な白色のTiO2であった。10日後、それは、まだ単一相であり、相分離はなく、底部に極少量のTiO2粒子が沈殿したが、これはTEPAなしでも生じた。
【0115】
(参考例10)
この参考例から、HMPは、アンチモン、およびコバルト溶液と混合される場合、不溶性固体または凝集体を形成しないが、TiO2スラリーを凝集させることが分かる。従って、通常使用されるリン酸の替わりにHMPが使用される場合、ポリマー中のTiO2を除く金属含有化合物からの不溶性固体または凝集体は、顕著に低下し得る。この参考例では、アンチモン溶液、酢酸コバルト四水和物溶液、およびTiO2スラリーは、参考例7に開示されるように調製される。
【0116】
アンチモン溶液9gと、HMP液体1gを混合し、開いたガラスビーカー中で振とうした後、リンを0.77%と、アンチモンを0.91%含有する透明な溶液が生じた。11日後、それは透明なままであった。
【0117】
同様に、TiO2スラリー20gと、HMP液体2gを開いた目盛り付きのシリンダ中で混合した。振とう後、それは単一相の白色スラリーとなった。54時間後、それは2相に分離し、上部の3mlは主にエチレングリコールの透明な液体であり、下部の17mlは白色のTiO2スラリーと凝集体であった。10日後、上部の8mlは、主にグリコールの透明な液体であり、下部の12mlはTiO2凝集体と沈殿物であった。
【0118】
(参考例11)
この参考例から、Hn+2n3n+1(n≧2)の式を有するポリリン酸の塩は、アンチモン溶液などの金属含有触媒溶液と混合された場合、固体を形成しないことが分かる。
【0119】
ピロリン酸カリウム(KPP、10g)をエチレングリコール(90g)と混合した。混合物を約70℃で約1時間加熱し、KPPを完全に溶解させた。このKPP溶液、五(5)グラムを、前述の1%Sb溶液10gに添加した。得られたSb/KPP/グリコール溶液は、Sbを0.67%とPを0.63%含有した。溶液は透明であった。開いたガラスビーカー中の溶液は、フードの下に置かれ、2時間後、まだ透明であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エステル化、エステル交換または重縮合のための方法であって、該方法は、触媒の存在下で、カルボニル化合物とアルコールとを接触させる工程を含み、
前記触媒は、チタン化合物と、グリコールと、第1のリン化合物または水のいずれかとを組合わせることにより製造され、
前記カルボニル化合物が、式R2COOR2を有し;各R2が、(1)水素、(2)末端にカルボン酸基を有する、ヒドロカルボキシル基、または(3)各基は、1つの基につき1〜30個の炭素原子を有し、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルカリール基、またはアラルキル基である、ヒドロカルビル基、(4)5−スルホイソフタレート金属塩またはそのエステル、または(5)これらの2つ以上の組合わせ、であり、
前記チタン化合物が、式Ti(OR)4を有し;各Rは、独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、またはこれらの2つ以上の組合わせであり;各Rは1つの基につき1〜約30個の炭素原子を含有し;
前記第1のリン化合物がポリリン酸またはその塩、ホスホン酸エステル、ピロリン酸またはその塩、ピロ亜リン酸またはその塩、またはこれらの2つ以上の組合わせである
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ヒドロカルビル基が3〜15個の炭素原子を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記チタン化合物が、テトライソプロピルチタネート、テトラn−ブチルチタネート、またはこれらの組合わせであることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルボニル化合物が、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、ナフタル酸、コハク酸、アジピン酸、フタル酸、グルタル酸、アクリル酸、シュウ酸、安息香酸、マレイン酸、プロペン酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム塩のビス−グリコール酸エステル、またはこれらの2つ以上の組合わせであり;
前記アルコールが、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、ブチレングリコール、1−メチルプロピレングリコール、t−1,4−ブテンジオール、ペンチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、2−エチルヘキサノール、ポリエチレングリコール、t−1,4−ブテンジオールポリブチレン、4ポリ(テトラメチレングリコール)、またはこれらの2つ以上の組合わせである
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記方法に第2のリン化合物を導入する工程をさらに含む方法であって、前記第2のリン化合物がリン酸、亜リン酸、ポリリン酸またはその塩、ホスホン酸エステル、ピロリン酸またはその塩、ピロ亜リン酸またはその塩、またはこれらの2つ以上の組合わせであることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記方法が、(1)エステル化またはエステル交換反応、および(2)重縮合を含み、前記第1のリン化合物が(i)前記エステル化またはエステル交換反応の後に、(ii)前記重縮合と同時に、または(iii)前記重縮合の後に、前記方法に導入されることを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記カルボニル化合物がテレフタル酸またはそのエステルであり、前記アルコールがエチレングリコールであることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記方法が、トナーの存在下で実施され、前記トナーが、
アルミン酸コバルト、酢酸コバルト、アントラキノン、アントラピリドン、カルバゾールバイオレット(C.I.ピグメントバイオレット23)、エストフィルブルーS−RLS(登録商標)、ポリシンスレンブルーRLS(C.I.ソルベントブルー45)、ポリシンスレンブルーR(C.I.ソルベントブルー122)、ポリシンスレンレッドGFP(C.I.ソルベントレッド135)、ポリシンスレンレッドBB(ソルベントレッド195)、C.I.ソルベントバイオレット49、サンドプラストブルー2B(C.I.ソルベントブルー104)、サンドプラストRBS−FP、CuPcブルー、C.I.ピグメントレッド263、C.I.ピグメントブルー29、C.I.ピグメントバイオレット15、ホリデーピグメンツウルトラマリンブルーARグレード、ホリデーピグメンツウルトラマリンブルーDRMグレード、およびホリデーピグメンツウルトラマリンブルーDRFXグレード、または2つ以上の組合わせであり、C.I.はカラーインデックスであることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の方法。

【公開番号】特開2007−284694(P2007−284694A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203581(P2007−203581)
【出願日】平成19年8月3日(2007.8.3)
【分割の表示】特願2002−568005(P2002−568005)の分割
【原出願日】平成14年1月9日(2002.1.9)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】