説明

金属屋根の緑化システム

【課題】強固な構造でありながら、より簡単且つ迅速な施工が可能であり、メンテナンス性にも優れた金属屋根の緑化技術を提供する。
【解決手段】緑化システム1は、上にいくに従って外方に傾斜するように設けられた側面部と、側面部の上端において外方に折り返し形成されたつば部を有する緑化用トレー2と、上部に固定ボルトを立設され、所定の間隔で設置される支持部材4と、押え部が形成された断面視略逆ハット形状をなし、固定ボルトを挿通して支持部材4に支持され、金属屋根3の流れ方向に略直交して複数列置される長尺のレール部材5と、を備える。緑化用トレー2の側面部の上端が、押え部の下面に位置するように、緑化用トレー2が圧入して配置され、押え部が、複数の緑化用トレー2のつば部上面と当接して、緑化用トレー2の浮揚を防止するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属屋根上部の緑化を行う緑化システムに関し、特に、複数の金属板を、ハゼ継ぎ部を介して、左右方向に連結してなる金属屋根において、緑化用トレーを左右前後に複数敷設して、金属屋根上部の緑化を行う緑化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境への負荷軽減等の観点から、建物の屋上や屋根上部を緑化する技術が注目されており、実際に施工される例も増加している。
一方、工場、倉庫、スーパーマーケット等の大規模建物等において、コスト低減や工期短縮等のために、折板屋根や瓦棒葺屋根等の金属屋根を用いて建物が施工される場合が多く見受けられる。折板屋根は、鋼板等を折り曲げてW形を連続させた断面形状を持つ屋根であり、瓦棒葺屋根は、屋根の傾斜に沿って一定間隔に瓦棒を配置し、その位置で金属板の横方向の接続を行うようにした屋根であるが、これらの屋根は、その特殊な形状ゆえに、通常の屋上で用いられる緑化技術をそのまま適用することは困難である。
【0003】
これに対して、折板屋根の緑化技術について記載した文献として、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3590020号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載されるものは、折板屋根のハゼ継ぎ部等に支持具を装着し、支持具上に溝板を載置固着して、隣接する溝板を溝板連結部材で連結した上で、溝板上に植栽マット材を敷設し、さらに押え部材で植栽マット材を押え付けるとともに、植栽マット材を保護網によって被覆する必要があったため、施工が複雑で時間がかかり、容易にメンテナンスを行うこともできないという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、強固な構造でありながら、より簡単且つ迅速な施工が可能であり、メンテナンス性にも優れた金属屋根の緑化技術を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の緑化システムは、複数の金属板を、ハゼ継ぎ部を介して、左右方向に連結してなる金属屋根において、緑化用トレーを左右前後に複数敷設して、金属屋根上部の緑化を行う緑化システムであって、上部が開放された箱型容器状で、上にいくに従って外方に傾斜するように設けられた側面部と、該側面部の上端において外方に折り返し形成されたつば部を有するとともに、培養土が充填され、緑化植物が予め植栽された緑化用トレーと、上部に固定ボルトを立設されるとともに、金属屋根の屋根面から突出するハゼ継ぎ部を挟持し、所定の間隔で設置される支持部材と、幅方向両側に、且つ長さ方向に連続して、押え部が形成された断面視略逆ハット形状をなし、該固定ボルトを挿通して該支持部材に支持され、金属屋根の流れ方向に略直交して複数列置される長尺のレール部材と、を備え、緑化用トレーの該側面部の上端が、該押え部の下面に位置するように、緑化用トレーが圧入して配置され、該押え部が、左右に隣り合う複数の緑化用トレーの該つば部上面と当接して、緑化用トレーの浮揚を防止するように構成される。
【0008】
本発明の緑化システムは好ましくは、該緑化用トレーが、底面部の周縁に設けられた排水口および脚部を備え、該底面部に、中心部を水上として、該排水口に向かう水勾配が形成され、該脚部により、該底面部が底上げされた状態で保持される。
【0009】
本発明の緑化システムは好ましくは、該緑化用トレーの該底面部に、中心部から放射状に補強リブが形成され、該補強リブの先端に相当する位置に該脚部が形成される。
【0010】
本発明の緑化システムは好ましくは、幅方向両側に、且つ長さ方向に連続して、緑化用トレーを載置支持するための載置面が形成された断面視略ハット形状をなし、該レール部材と互いに上下に位置するように、該固定ボルトを挿通して該支持部材に支持される長尺の載置レール部材と、をさらに備え、該押え部と該載置面との間に、左右に隣り合う複数の緑化用トレーを挟持するように構成される。
【0011】
本発明の緑化システムは好ましくは、該支持部材が、該ハゼ継ぎ部の左右方向にスライド可能な一対のコ型金物によって構成される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の金属板を、ハゼ継ぎ部を介して、左右方向に連結してなる金属屋根において、緑化用トレーを左右前後に複数敷設して、金属屋根上部の緑化を行う緑化システムであって、上部が開放された箱型容器状で、側面部の上端において外方に折り返し形成されたつば部を有するとともに、培養土が充填され、緑化植物が予め植栽された緑化用トレーと、上部に固定ボルトを立設されるとともに、金属屋根の屋根面から突出するハゼ継ぎ部を挟持し、所定の間隔で設置される支持部材と、幅方向両側に、且つ長さ方向に連続して、押え部が形成された断面視略逆ハット形状をなし、該固定ボルトを挿通して該支持部材に支持され、金属屋根の流れ方向に略直交して複数列置される長尺のレール部材と、を備え、該押え部が、左右に隣り合う複数の緑化用トレーの該つば部上面と当接して、緑化用トレーの浮揚を防止するようになされた緑化システムであるため、強固な構造でありながら、より簡単且つ迅速な施工が可能であり、メンテナンス性にも優れた金属屋根の緑化技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る緑化システムを示す斜視図である。
【図2】本発明に係る緑化システムを示す平面図である。
【図3】図1におけるX-X’線断面図である。
【図4】図1におけるY-Y’線断面図である。
【図5】緑化用トレーの平面図である。
【図6】緑化用トレーの側面断面図である。
【図7】緑化用トレーの底面図である。
【図8】緑化用トレーを底面から見た斜視図である。
【図9】(a)トレー連結具の平面図である。(b)トレー連結具の底面図である。(c)トレー連結具の側面図である。
【図10】支持部材の組立状況を示す斜視図である。
【図11】コ型金物を示す斜視図である。
【図12】支持部材の設置状況を示す側面図である。
【図13】レール部材の設置状況を示す斜視図である。
【図14】(a)レール部材を示す拡大斜視図である。(b)端部用レール部材を示す拡大斜視図である。
【図15】(a)接合部材の平面図である。(b)接合部材の側面図である。(c)接合部材の斜視図である。
【図16】試験装置を示す図である。
【図17】荷重載荷ステップを示す図である。
【図18】変位量測定位置を示す図である。
【図19】試験結果を示す図である。
【図20】レール部材(押え金物)のたわみ量を示す図である。
【図21】緑化用トレーのたわみ量を示す図である。
【図22】レール部材(押え金物)と鋼製折板の相対変位量を示す図である。
【図23】レール部材(押え金物)の変位量を示す図である。
【図24】実施例4に係る緑化システムを示す概略平面図である。
【図25】図24におけるS-S’線断面図である。
【図26】図24におけるT-T’線断面図である。
【図27】(a)支持部材を示す正面図である。(b)支持部材を示す側面図である。
【図28】(a)レール部材を示す斜視図である。(b)載置レール部材を示す斜視図である。
【図29】実施例5に係る緑化システムを示す概略平面図である。
【図30】図29におけるU-U’線断面図である。
【図31】図29におけるV-V’線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に係る緑化システムは、緑化用トレーを複数敷設して、金属屋根上部の緑化を行うものである。
緑化用トレーは、金属屋根の流れ方向と略直交する方向(左右方向)に対しては、
左右に隣接して配置され、金属屋根の流れ方向(前後方向)に対しては、レール部材を挟んで前後に隣接して配置される。
本発明の緑化システムを適用可能な折板屋根は、山部と谷部とが所定の間隔で交互に連続し、山部に支持部材を挟持可能なハゼ継ぎ部等の突出部を有するものである。山部には、緑化用トレーを安定して載置できるように、略平坦な頂面が形成されていることが好ましい。
【0015】
緑化用トレーは、上部が開放された箱型容器状で、緑化用トレーには培養土を充填し、緑化のための緑化植物を敷設に先立ち予め植栽しておく。
緑化用トレーは、1人又は2人程度で運搬可能な大きさ、重量とすることが好ましく、軽量化のために、例えば合成樹脂製にて成形する。緑化用トレーは、折板屋根への積載荷重を低減するために、なるべく浅く構成することが好ましい。
緑化用トレーの平面形状等に限定は無いが、載置される折板屋根の山部の間隔に対応した横(左右)寸法を有する平面視略矩形状とし、折板屋根の隣り合う山部の頂面に丁度架設できる大きさ・形状とすれば、安定した載置が可能となるとともに、施工性が向上し好ましい。
【0016】
また、本発明に係る緑化システムは、金属屋根のハゼ継ぎ部を挟持し、所定の間隔で着脱可能に設置される支持部材を備えている。支持部材は、ハゼ継ぎ部を両側面から挟持可能な締付手段を有し、上部にレール部材を支持できる構成のものであれば、如何なる形状・構造等であってもよい。
支持部材の配置間隔は、金属屋根の流れ方向(前後方向)に対しては、緑化用トレーの奥行き(前後)寸法と略等しい間隔とする(千鳥に配置してもよい)が、金属屋根の流れ方向と略直交する方向(左右方向)に対しては、強度及び施工性との兼ね合いを考慮しつつ、例えば山部一つおき又は二つおき程度の間隔(約800〜1500mm程度)とすることが好ましい。
【0017】
さらに、本発明に係る緑化システムは、上記支持部材に支持され、金属屋根の流れ方向に略直交して複数列、着脱可能に設置されるレール部材を備えている。レール部材は、金属屋根の横方向(左右方向)に隣接して並置される複数の緑化用トレーを同時に保持固定可能とするものである。レール部材には、押え部を形成するものとし、押え部が、緑化用トレーの側面部上端に当接して、緑化用トレーの浮揚を防止するように構成する。
レール部材は、長尺、短尺の何れでもよいが、施工性及びメンテナンス時の交換が容易となる点を考慮して、全長約1500〜3000mmとして、接合して用いることが好ましい。
押え部は、レール部材の長さ方向に沿って、一定の間隔で設けてもよいが、連続して設けることとすれば、より強固に緑化用トレーを保持できる。
【0018】
また、レール部材は、メンテナンス用の歩行通路と兼用されるように構成することが好ましい。本発明によれば、左右方向に連続して安定した歩行通路を、前後方向に一定間隔で設置することができ、メンテナンス時に便宜である。
【0019】
緑化用トレーに予め植栽される緑化植物としては、丈が低く、乾燥や高低温に強い草木、芝、苔類、多肉植物等を制限無く用いることができるが、特にセダム類(ベンケイソウ科マンネングサ属で、例えばメキシコマンネングサ)は、常緑で乾燥に強く、管理が殆ど不要であるため適している。
【0020】
緑化用トレーに充填される培養土としては、上記緑化植物を栽培し育成することが可能な適宜の自然土壌や人工土壌、あるいはこれらの混合物を用いることができる。例えば、パーライト、バーミキュライト、ピートモス、チャフコン、ゼオライト等の公知の資材を、保水性及び排水性のバランスを考慮して、適量配合して用いることができる。
【0021】
金属屋根の場合、通常の屋上と異なり、荷重について非常に敏感であるため、金属屋根の構造への荷重負荷を軽減するため、人工軽量土壌等を用いてなるべく培養土の軽量化を図ることが好ましい。人工軽量土壌としては、真珠岩系パーライト等の岩石の焼成物やリサイクルセラミック、火山砂利等から得られる無機質系人工土壌、主に分解の遅い針葉樹の樹皮やココピート(登録商標)、ピートモス、草炭等を加工して得られる有機質系人工土壌、あるいは軽量無機質骨材に有機質資材を混合加工した有機無機混合型人工土壌等を用いることができる。
また、本発明者は、培養土として、ピートモス、パーライト、有機堆肥、真砂土等を主成分とし、これらを所定の割合で配合したものを用いれば、軽量化を図ることができるとともに、保水性及び排水性のバランスを良好に保つことができ、緑化植物の栽培及び育成に好適であることを見出したものである。培養土は、特にパーライトを5〜10体積%含んで構成することが好ましい。パーライトの含有率が5体積%未満となると、全体の軽量化を図ることが難しくなり、10体積%を超えると、保水性を保つことが難しく、植物の育成に支障が生じる。パーライトは、真珠岩系パーライト、黒ヨウ石パーライトの何れであっても、多孔質で軽量化を実現可能であるが、真珠岩系パーライトを用いることとすれば、より保水性に優れており好ましい。
さらに、ピートモス、有機堆肥、真砂土の配合比率を、概ね4:1:1(体積比)となるように構成すれば、特にセダム類の栽培及び育成に最適な土壌を形成することができる。ピートモスに替えて、椰子の実から種子を取り除いた椰子殻から得られるココピート(登録商標)を用いてもよい。
その他、貝化石、有機マグカリン、ロング肥料、炭等を、必要により適宜、微量ずつ配合してもよい。
【実施例1】
【0022】
本発明に係る緑化システムの一実施形態について、図1〜図15を参照して説明する。図1は本発明に係る緑化システムを示す斜視図、図2は本発明に係る緑化システムを示す平面図、図3は図1におけるX-X’断面図、図4は図1におけるY-Y’断面図、図5は緑化用トレーの平面図、図6は緑化用トレーの側面断面図、図7は緑化用トレーの底面図、図8は緑化用トレーを底面から見た斜視図、図9(a)はトレー連結具の平面図、図9(b)はトレー連結具の底面図、図9(c)はトレー連結具の側面図、図10は支持部材の組立状況を示す斜視図、図11はコ型金物を示す斜視図、図12は支持部材の設置状況を示す側面図、図13はレール部材の設置状況を示す斜視図、図14(a)はレール部材を示す拡大斜視図、図14(b)は端部用レール部材を示す拡大斜視図、図15(a)は接合部材の平面図、図15(b)は接合部材の側面図、図15(c)は接合部材の斜視図である。
【0023】
本実施例に係る緑化システム(1)は、図1〜図4に示すように、複数の緑化用トレー(2)を敷設して折板屋根(3)の上部を緑化するものである。緑化システム(1)は、主として、緑化用トレー(2)、支持部材(4)、レール部材(5)(5a)等から構成されている。
折板屋根(3)は、図1〜図2に示すように、鋼板を山形に屈曲形成してなる長尺の折板(3a)を、両側縁部のハゼ継ぎ部(3b)を介して、左右に複数連結し、山部(3c)と谷部(3d)とが交互に連続するようにして形成されたものである。折板屋根(3)は、図3に示すように、タイトフレーム(3’)によって、躯体鉄骨梁(フランジ)(3’’)に支持されている。
【0024】
緑化用トレー(2)は、図5〜図8に示すように、合成樹脂(ポリプロピレン、厚3mm)を用いて成形されたもので、上部が開放された箱型容器状をなし、平面視略正方形の底面部(10)と、その外周に立設される側面部(11)とから底浅(深さ約60mm)に構成されている。側面部(11)は、上にいくに従って、外方にやや傾斜するように設けられており、側面部(11)の上端には、つば部(12)が外方に折り返し形成されている。本実施例では、緑化用トレー(2)を、前後左右どちら向きでも使用できるように、前後左右対称に構成している。
図6〜図8に示すように、底面部(10)の裏面には、中心部から縦横斜めの放射状に補強リブ(14)が形成されるとともに、つば部(12)裏面の適宜の位置においても補強リブ(14’)が形成されている。
【0025】
底面部(10)と側面部(11)との取り合いには、図5〜図8に示すように、底面部(10)の1辺に対して2箇所ずつ、細長形状の排水口(15)が設けられ、トレー(2)内の水を下方に排水するようになされている。
図6〜図8に示すように、底面部(10)の裏面外周縁における、補強リブ(14)の先端に相当する位置には、脚部(16)が形成され、底面部(10)が底上げされた状態で保持されるようになっている。
本実施例では、トレー(2)内の排水性向上のために、底面部(10)の中心部を水上として、排水口(15)に向かう水勾配を底面部(10)に形成している。
【0026】
上記の如く構成された緑化用トレー(2)は、培養土が側面部(11)上端から約10mm程度下がった位置まで平坦に充填され、セダム類等の緑化植物が植栽された上で(図示は省略)、図1〜図4に示すように、折板屋根(3)の隣り合う山部(3c)の頂面に架け渡して配置される。緑化用トレー(2)の底面部(10)の横幅は、ハゼ継ぎ部(3b)に干渉せず、かつ山部(3c)頂面に架設可能なように、折板屋根(3)の山部(3c)の間隔W(本実施例では500mm)よりもわずかに小さく形成する。
山部(3c)の頂面には、図3に示すように、脚部(16)が当接され、頂面上に位置する排水口(15)からの排水が効率よく行われるようになっている。
【0027】
つば部(12)の適宜の位置には、図5、図7に示すように、連結孔(18)が各辺2個ずつ設けられ、図9(a)〜(c)に示す形状の連結具(19)を用いて、図1〜図3に示す如く横方向に隣接して配置される緑化用トレー(2)を相互に連結できるようになっている。連結具(19)の裏面には、図9(b)(c)に示すように、爪部(20)が、上記連結孔(18)の間隔に対応した位置に2個ずつ並べて突設されており、各爪部(20)を隣接する緑化用トレー(2)の連結孔(18)にそれぞれ嵌合係止することによって、連結が行われる。
【0028】
支持部材(4)は、図10〜図12に示すように、一対のコ型金物(23)(24)によって構成される。コ型金物(23)は、図11に示すように、矩形平板状(40mm×57mm×2.3mm)の締付部(25)の上下端を、それぞれ一方向に略直角に延設して、載置部(26)、挟持部(27)を形成し、断面略コ型としたものである。挟持部(27)の延設長さは、載置部(26)の延設長さ(45mm)の1/3と短く形成している。締付部(25)には、図12に示す如く締付ボルト(M8×70mm)(40)を貫通可能なボルト孔(29)が穿孔されるとともに、載置部(26)には、固定ボルト(M8×20mm)(43)の軸径よりもわずかに大きい幅にて切欠された切欠部(30)が形成されている。
コ型金物(24)もコ型金物(23)と共通する構成で、締付部(33)、載置部(34)、挟持部(35)、ボルト孔(37)を有するが、図10に示すように、載置部(34)には切欠部に替えて、固定ボルト(43)を貫通可能なボルト孔(38)が穿孔されている。
【0029】
このように構成された一対のコ型金物(23)(24)を、図10に示す如く、載置部(26)の上面に載置部(34)の下面を重ね合せ、締付部(25)(33)が対向するように組み立てることによって、支持部材(4)が形成される。
支持部材(4)は、折板屋根(3)のハゼ継ぎ部(3a)に、適宜の間隔で着脱可能に取り付けられるものであり、図12に示すように、挟持部(27)(35)を、山部(3c)の頂面(7a)(7b)にそれぞれ載置し、挟持部(27)(35)の先端を、ハゼ継ぎ部(3b)の付け根付近に両側面から当接し、さらに締付部(25)(33)を貫通して装着される締付ボルト(40)を、ナット(41)を螺着して締め付けることによって、載置部(26)先端を締付部(33)内面上端に当接させるとともに、挟持部(27)(35)でハゼ継ぎ部(3b)を挟持して、支持部材(4)が折板屋根(3)の山部(3c)に強固に固着されるようになされている。
【0030】
固定ボルト(43)は、後述するレール部材(5)や端部用レール部材(5a)を、支持部材(4)上に載置固定するためのもので、図12に示すように、載置部(26)(34)を下方から貫通して略垂直状に装着される。
また、図10〜図12に示すように、載置部(26)に設けられた切欠部(30)によって、締付ボルト(40)及び固定ボルト(43)を嵌装したまま、コ型金物(24)が左右方向にスライド可能とされ、施工性の向上が図られている。
【0031】
レール部材(5)は、図13〜図14(a)に示すように、長さ方向にわたって同一断面をなす長物材として構成されており、図14(a)に示すように、細長平板状の底板部(50)を、幅方向両側において上方に延設して立上り部(51)(52)を形成し、さらに立上り部(51)(52)上端部を、それぞれ外方に延設して押え部(53)(54)が形成されている。底板部(50)と押え部(53)(54)とは略平行をなし、立上り部(51)(52)は、底板部(50)、押え部(53)(54)に対して、略垂直をなすようにして形成されている。
具体的には、底板部(50)、押え部(53)(54)をそれぞれ幅30mm(厚1.5mm)、立上り部(51)(52)を高さ15mm(厚1.5mm)とし、レール部材(5)の全長が2mとなるように形成している。
【0032】
底板部(50)の適宜の位置には、上記の支持部材(4)から突設される固定ボルト(43)を貫通し、図4に示す如く、上方からナット(44)を螺着してレール部材(5)を支持部材(4)の上面に載置固定するための、ボルト孔(56)が設けられている(図13)。
【0033】
レール部材(5)は、図1〜図2に示すように、折板屋根(3)の流れ方向(傾斜方向)に対して略直交するように、着脱可能に配置される。押え部(53)(54)は、折板屋根(3)の上に載置された緑化用トレー(2)の風や振動等による浮き上がりを防止する働きをなすもので、図1〜図4に示すように、折板屋根(3)の谷部(3d)上方に位置する、緑化用トレー(2)の側面部(11)上端(つば部(12)上面)を、押え部(53)又は(54)がわずかに下方に押圧した状態で、レール部材(5)が支持部材(4)上に支持固定されるようにする。このために、緑化用トレー(2)の高さと、支持部材(4)の挟持部(27)(35)下面からレール部材(5)の押え部(53)(54)下面までの高さとが、略等しくなるように構成する。
押え部(53)(54)下面と側面部(11)上端(つば部(12)上面)とは、緑化用トレー(2)のがたつきが生じない程度に相当接していることが好ましい。
本実施例のように、レール部材(50)の幅方向両側に押え部(53)(54)を形成することとすれば、レール部材(50)を挟んで前後2列の緑化用トレー(2)を同時に保持固定できるため、効率が良い。
【0034】
また、本実施例では、図1〜図2に示すように、最前列及び最後列において、レール部材(5)を変形した形状の端部用レール部材(5a)を用いている。
端部用レール部材(5a)は、図14(b)に示すように、底板部(50a)の幅方向一側においてのみ立上り部(51a)と押え部(53a)とが形成されたものである。
【0035】
レール部材(50)及び端部用レール部材(50a)は、図15に示す形状の接合部材(57)を用いて、図13に示す如く長さ方向に接合して用いることができる。接合部材(57)は、図13〜図15に示すように、レール部材(5)及び端部用レール部材の底板部(50)及び(50a)と略等しい横幅を有する平板状で、ボルト孔(58)が長さ方向に2個並設されるとともに、ボルト孔(58)が貫通する裏面にはナット(59)が溶着されており、レール部材(5)及び端部用レール部材(5a)の両端部に設けられるボルト孔(60)(60a)を貫通して装着されるボルトを螺着可能に構成されている。
【0036】
また、図13に示すように、レール部材(5)及び端部用レール部材(5a)の左右端において、レール部材(5)及び端部用レール部材(5a)の小口を塞ぐための、カバー部材(63)を用いることとしてもよい。カバー部材(63)は、例えば断面L型に形成し、ボルト等を介して、レール部材(5)及び端部用レール部材(5a)に固定することができる。
【0037】
なお、本実施例では、耐候性や強度、コストを考慮して、支持部材(4)、レール部材(5)、端部用レール部材(5a)、カバー部材(63)はいずれも、高耐食溶融メッキ鋼板にて形成したが、本発明の目的を達成し得る限り、他の材料を適宜用いることができる。
【0038】
次に、本実施例に係る緑化システム(1)の施工方法について、図1〜図4を参照して、その手順の一例を説明する。
[1]緑化システム(1)の施工に先立ち、緑化用トレー(2)に培養土を充填し、セダム類等の緑化植物を植え付けて育成しておく。植栽がなされた緑化用トレー(2)を用いて、以下の作業を行う。
[2]支持部材(4)を、折板屋根(3)のハゼ継ぎ部(3b)に所定の間隔(本実施例では1000mm間隔)で最前列横一列に取り付け、上部に端部用レール部材(5a)を固着する。
[3]最前列の緑化用トレー(2)を、端部用レール部材(5a)に沿って、隣接して並置する。このとき、緑化用トレー(2)の前方の側面部(11)上端が、端部用レール部材(5a)の押え部(53a)下面に位置するように、緑化用トレー(2)を圧入して配置する。
[4]次列の支持部材(4)及びレール部材(5)を固着し、レール部材(5)の一方の押え部(53)によって、[3]によって敷設した緑化用トレー(2)の後方の側面部(11)上端を押圧固定する。
[5]次列の緑化用トレー(2)を、レール部材(5)に沿って、隣接して並置する。このとき、緑化用トレー(2)の前方の側面部(11)上端が、レール部材(5)の他の押え部(54)下面に位置するように、緑化用トレー(2)を圧入して配置する。
[6]最後列に支持部材(5)及び端部用レール部材(5a)を固着し、端部用レール部材(5a)の押え部(53a)によって、[5]によって敷設した緑化用トレー(2)の後方の側面部(11)上端を押圧固定する。
【0039】
なお、図1〜図4では説明のために、緑化用トレー(2)を前後2列計4個のみ配置する例を示したが、緑化面積に応じて、緑化用トレー(2)を適宜増加してよいことは勿論である。その場合、左右方向においては、上述した接合部材(57)を用いることによって、前後方向においては、端部用レール部材(5a)の間に、レール部材(5)を所定の間隔で複数列配置することによって、容易に本実施例の緑化システム(1)を拡張することができる。特に本発明は、緑化面積が広大な場合に、高い効果が期待できる。
【0040】
本実施例に係る緑化システム(1)によれば、主として緑化用トレー(2)、支持部材(4)、レール部材(5)(5a)等によって、上記の如く構成されるため、納まりが非常に簡潔であり、専門的で特殊な技能を要することなく、誰でも簡単・迅速に施工を行うことができる。
メンテナンス面においても、該当箇所の緑化用トレー(2)、支持部材(4)、レール部材(5)等を取り外し、部分的に交換等すれば足りるため、非常に容易に行える。また、レール部材(5)は、幅計90mmを有するため、メンテナンス用の歩行通路としても兼用でき、便宜である。
【0041】
本実施例の緑化システム(1)では、一定の長さを有するレール部材(50)(50a)を用いて、緑化用トレー(2)を保持固定するようにしたため、例えば、緑化用トレー(2)の四隅を固定金物(支持部材)によって把持固着する方法に比べて、簡単かつ安価に強固な構造を達成でき、しかも折板屋根本体の施工誤差が生じている場合であっても、その施工誤差を吸収して簡単・迅速に施工を行うことが可能である。
【実施例2】
【0042】
実施例1に係る緑化システムの耐風圧性能を調べるために、以下の試験を行った。試験は、財団法人日本建築総合試験所に依頼して行った。
図16は試験装置を示す図、図17は荷重載荷ステップを示す図、図18は変位量測定位置を示す図、図19は試験結果を示す図、図20はレール部材(押え金物)のたわみ量を示す図、図21は緑化用トレーのたわみ量を示す図、図22はレール部材(押え金物)と鋼製折板の相対変位量を示す図、図23はレール部材(押え金物)の変位量を示す図である。
【0043】
[試験体]
試験体は、母屋(スパン1450mm)を想定した鋼製枠にタイトフレームを介して葺かれた鋼製折板の試験片(左右幅2000mm×前後奥行き1700mm)上に支持部材とレール部材を用いて緑化用トレー4個(前後2列)を載置固定した緑化システムである(図1〜図2参照)。
支持部材は、既存折板の山部のハゼ継ぎ部を挟み込む方法で固定され、その支持部材にレール部材(押え金物)を固定ボルトで固定する。緑化用トレーは、レール部材(押え金物)の折板の流れ方向に直交する2辺で支持される。
従って、トレーが受ける風圧は、レール部材(押え金物)、支持部材、折板、タイトフレーム、母屋の順に伝達される。支持部材は、トレーの角ごと(左右方向には1000mm間隔)に配置されるので、最大で4個の隣り合うトレーに掛かる風圧の一部を負担する。本試験では4個のトレーを設置し、それらの交点にある支持部材の強度に注目した。
【0044】
[試験方法]
試験は、図16に示すように、試験体の天地を反転し、トレーに砂袋を吊下げることにより風圧による浮き上り力に相当する荷重を作用させる方法で行った。トレーの裏面には2本の丸棒(径20mm×150mm)を設置し、4等分2線荷重となるようにした。試験時の荷重載荷ステップを図17に示す。試験体各部の変位量測定は、図18に示す位置に設置した変位計(感度:1/50mm、非直線性:0.2%F.S.)を用いて行った。
【0045】
[試験結果]
試験結果の詳細を図19〜図23に示す。
レール部材(押え金物)と鋼製折板の相対変位は載荷荷重−2.00kN/mまで載荷にしたがって増大(図22参照)し、それ以降は変位が急激に増加したが載荷荷重−3.53kN/m時においても緑化システムは破壊しなかった。
設計風荷重(標準的な外装材用風荷重)の算定例としては、−1880N/mの値が計算され、本発明に係る緑化システムが、簡易な構成であるにもかかわらず、強固な構造(耐風圧性能)を有していることが確認された。
【実施例3】
【0046】
本実施例では、緑化用トレーに充填される培養土について、以下の実験を行った。緑化用トレーとしては、実施例1と同一の構成のものを使用した。
【0047】
[実験例1]
ピートモス28%(%は体積%、以下同様)、パーライト4%、有機堆肥45%、真砂土20%と、有機マグカリンを微量混合して、培養土Pを得た。
重量を計測したところ、約4.5kg重/12リットルであった。
培養土Pを、緑化用トレーに充填し、セダム類(メキシコマンネングサ)の小苗を植え付けたものを1000トレー(約250m2)用意して、兵庫県下の農場にて6ヶ月間栽培した。
セダムの成長面において特に問題は無く、6ヶ月経過後には、育成が完了した。
【0048】
[実験例2]
ピートモス35%、バーミキュライト2%、パーライト7%、有機堆肥40%、真砂土11%と、貝化石、有機マグカリン、ロング肥料、炭をそれぞれ微量混合して、培養土Qを得た。
培養土Qの重量を計測したところ、約3.9kg重/12リットルであった。
培養土Qを、同様に緑化用トレーに充填し、セダム類(メキシコマンネングサ)の苗を植え付けたものを1000トレー(約250m2)用意して、培養土Xと同一の条件にて6ヶ月間栽培した。
この場合も、セダムの成長面において特に問題は無く、6ヶ月経過後には、育成が完了した。
【0049】
[実験例3]
ピートモス60%、バーミキュライト4%、パーライト13%、有機堆肥9%、真砂土9%と、貝化石、有機マグカリン、ロング肥料、炭をそれぞれ微量混合して、培養土Rを得た。
培養土Rの重量を計測したところ、約2.9kg重/12リットルであった。
培養土Rを、同様に緑化用トレーに充填し、セダム類(メキシコマンネングサ)の苗を植え付けたものを1000トレー(約250m2)用意して、培養土Pと同一の条件にて6ヶ月間栽培した。
この場合、培養土P、Qを使用したものに比較して、セダムの成長がかなり劣っていた。これは、土の保水性がかなり低下したことが主原因と考えられる。
6ヶ月間の栽培では育成未完了の状態で、その後栽培を続けた結果、完成品となるまでに実験開始から1年を要した。
【0050】
上記実験例における培養土P、Q、Rは、折板屋根の緑化に用いることを想定して、何れも従来の培養土と比較して、軽量に構成したものである。
培養土Rは、最も軽量となったが、緑化植物の栽培育成に長期間を要した。培養土P、Qについては、緑化植物の成長面において特に問題が無く、特に培養土Qは、培養土Pより約15%軽量で、本発明に係る緑化システムに好適に用いることが可能である。
【実施例4】
【0051】
本発明に係る緑化システムの他の実施形態について、図24〜図28を参照して説明する。図24は本実施例に係る緑化システムを示す概略平面図、図25は図24におけるS-S’線断面図、図26は図24におけるT-T’線断面図、図27(a)は支持部材を示す正面図、図27(b)は支持部材を示す側面図、図28(a)はレール部材を示す斜視図、図28(b)は載置レール部材を示す斜視図である。
【0052】
本実施例に係る緑化システム(1’)は、図24〜図26に示すように、多数の緑化用トレー(2)を左右前後に敷設して折板屋根(70)の上部を緑化するものであり、主として、緑化用トレー(2)、支持部材(4’)、レール部材(5’)、載置レール部材(5’’)等から構成されている。
本実施例の折板屋根(70)は、図24〜図26に示すように、折板(70a)を、屋根面から突出するタイプのハゼ継ぎ部(70b)を介して、左右に複数連結し、山部(70c)と谷部(70d)とが交互に連続するようにして形成したものであるが、ハゼ継ぎ部(70b)のピッチW’が333mmと比較的狭くなっている。
本実施例の緑化システム(1’)は、載置レール部材(5’’)をさらに備えた構成により、緑化用トレー(2)を、折板屋根(70)の隣り合う山部(70c)に架設するのではなく、ハゼ継ぎ部(70b)よりも高い位置において敷き並べることができるようにしたものである。
【0053】
緑化用トレー(2)は、実施例1のものと同一構成であるため、細部の説明は省略するが、一辺が約500mmの正方形状をなす底面部(10)と、その四辺に立設される側面部(11)と、側面部(11)の上端において外方に折り返し形成されるつば部(12)と、を備えている。なお、緑化用トレー(2)に充填される培養土及びセダム類等の緑化植物については図示を省略している。
【0054】
支持部材(4’)は、図27(a)(b)に示すように、コ型金物(23’)を用いて構成されている。コ型金物(23’)は、所定のサイズの平板を断面視略コ字状に折り曲げ、折り曲げ端部が下方に位置する形状となされ、さらに一方の下端を内方に折り返して、挟持用ツメ(27’)が形成されたものである。コ型金物(23’)の上面には、載置レール部材(5’’)を安定して載置するための、平滑な載置部(26’)が形成されている。そして、挟持用ツメ(27’)に対向する面にはボルト孔(29’)が穿孔されており、締付ボルト(40’)を螺嵌できるようになっている。
このようなコ型金物(23’)の構成を採用することにより、施工性を向上させることができるとともに、加工コストを低減することができる。
コ型金物(23’)の上面略中心位置には、図27(a)(b)に示すように、溶接等の固着手段によって、固定ボルト(43’)が立設されている。固定ボルト(43’)は、レール部材(5’)及び載置レール部材(5’’)を支持固定するためのものである。
【0055】
支持部材(4’)は、図24に示すように、折板屋根(70)のハゼ継ぎ部(70b)に、所定の間隔で着脱可能に取り付けられるものである。支持部材(4’)の取り付けは、図25に示すように、コ型金物(23’)の挟持用ツメ(27’)とは反対側の下端を、山部(70c)の頂面に載置するとともに、挟持用ツメ(27’)の先端を、ハゼ継ぎ部(70b)の付け根付近に片側面から当接し、さらにボルト孔(29’)を貫通して締付ボルト(40’)を締め付けることによって、ハゼ継ぎ部(70b)を左右両側から挟持して行う。
【0056】
レール部材(5’)は、実施例1のレール部材(5)と共通の構成のものである。すなわち、図28(a)に示すように、長さ方向にわたって略逆ハット形状の同一断面をなし、且つ長さ方向に接合可能な長物材として構成されており、細長平板状の底板部(50’)を、幅方向両側において上方に延設して立上り部(51’)(52’)を形成し、さらに立上り部(51’)(52’)上端部を、それぞれ外方に延設して押え部(53’)(54’)が形成されている。このような略逆ハット形状の断面とすることにより、部材の強度を向上させることができるとともに施工性を向上させることができる。
底板部(50’)の適宜の位置には、上記支持部材(4’)における固定ボルト(43’)を挿通し、図25〜図26に示す如く、上方からナット(44’)を螺着してレール部材(5’)を支持部材(4’)に支持固定するための、ボルト孔(56’)が設けられている。
各々のレール部材(5’)は、約3000mmの全長を有しており、押え部(53’)(54’)がそれぞれ、左右に隣り合って配設される6個の緑化用トレー(2)のつば部(12)と連続的に当接可能となされている。
【0057】
載置レール部材(5’’)は、上記のレール部材(5’)と略上下対称の構成をなすものである。すなわち、図28(b)に示すように、長さ方向にわたって略ハット形状の同一断面をなしており、細長平板状の天板部(50’’)を、幅方向両側において下方に延設して垂下部(51’’)(52’’)を形成し、さらに垂下部(51’’)(52’’)下端部を、それぞれ外方に延設して載置面(53’’)(54’’)が形成されている。このような略ハット形状の断面とすることにより部材の強度を向上させることができるとともに施工性を向上させることができる。
載置レール部材(5’’)の幅方向両側に、且つ長さ方向に連続して設けられる載置面(53’’)(54’’)は、図25〜図26に示すように、それぞれ左右に隣り合う複数の緑化用トレー(2)を、連続して同時に載置支持するためのもので、レール部材(5’)の押え部(53’)(54’)よりも突出長を長く形成されている。天板部(50’’)の適宜の位置には、レール部材(5’)と同様に、上記支持部材(4’)における固定ボルト(43’)を挿通し、図25〜図26に示す如く、載置レール部材(5’’)を支持部材(4’)に支持固定するための、ボルト孔(56’’)が設けられている。
各々の載置レール部材(5’’)は、約3000mmの全長を有しており、載置面(53’’)(54’’)がそれぞれ、左右に隣り合って配設される6個の緑化用トレーを同時に載置支持可能となされている。
【0058】
レール部材(5’)及び載置レール部材(5’’)は、図24〜図26に示すように、折板屋根(70)の流れ方向(傾斜方向)に対して略直交するように、且つ互いに上下に位置するようにして配置される。
レール部材(5’)の押え部(53’)(54’)は、緑化用トレー(2)の風や振動等による浮き上がりを防止する働きをなし、一方で、載置レール部材(5’’)の載置面(53’’)(54’’)は、緑化用トレー(2)を安定して載置する働きをなすものである。
図25〜図26に示すように、緑化用トレー(2)は、ハゼ継ぎ部(70b)よりも高い位置で載置されるようにする。このために、載置面(53’’)(54’’)下端がハゼ継ぎ部(70b)の上端よりも高い位置にくるようになされている。
【0059】
また、図26に示すように、緑化用トレー(2)のつば部(12)上面と、レール部材(5’)の押え部(53’)(54’)下面とが面的に当接するとともに、つば部(12)の先端が、レール部材(5’)の立上り部(51’)(52’)と押え部(53’)(54’)とによってそれぞれ形成される隅部(コーナー部)に当接するようにすれば、緑化用トレー(2)のぐらつきや浮き上がりを効果的に防止することができ、しかも施工がきわめて簡易になる。
そして、それぞれ左右に隣り合う複数の緑化用トレー(2)が、レール部材(5’)の押え部(53’)(54’)と載置レール部材(5’’)の載置面(53’’)(54’’)との間に、連続して同時に挟持されることとなるが、緑化用トレー(2)のつば部(12)上面を、押え部(53)(54)下面がわずかに下方に押圧した状態で、レール部材(5)が固定ボルト(43’)にナット(44’)を介して支持固定されるようにすることが好ましい。
【0060】
なお、本実施例では、説明を省略するが、実施例1の端部用レール部材(5a)やカバー部材(63)と同様の構成の部材を、さらに用いてもよいことは勿論である。
各部材の材質等は、耐候性や強度を考慮して任意のものを使用することができるが、特に高耐食性溶融めっき鋼板、溶融亜鉛‐アルミニウム‐マグネシウム合金めっき鋼板(例えば日新製鋼社製「ZAM」)によれば、アルミニウムやステンレスに比べて、コスト、耐久性、施工性等の面で有利であり好ましい。
【0061】
次に、本実施例に係る緑化システム(1’)の施工方法について、その手順の一例を説明する。
[1]緑化システム(1’)の施工に先立ち、緑化用トレー(2)に培養土を充填し、セダム類等の緑化植物を植え付けて育成しておく。植栽がなされた緑化用トレー(2)を用いて、以下の作業を行う。
[2]支持部材(4’)を、折板屋根(70)のハゼ継ぎ部(70b)に所定の間隔(本実施例では二山おき=約1000mm間隔)で最前列横一列に取り付け、その上部に載置レール部材(5’’)を長さ方向に接続しながら設置する。載置レール部材(5’’)の設置は、ボルト孔(56’’)を支持部材(4’)の固定ボルト(43’)に挿通させるとともに、載置面(53’’)(54’’)下端を載置部(26’)に載置するだけでよい。
[3]次列の支持部材(4’)及び載置レール部材(5’’)を同様にして設置する。支持部材(4’)は、緑化用トレー(2)のサイズに対応して、折板屋根(70)の流れ方向に対して約500mm間隔で設置する。
[4]最前列のレール部材(5’)を長さ方向に接続しながら設置するとともに、最前列の緑化用トレー(2)を、最前列及び次列の載置レール部材(5’’)の載置面(53’’)(54’’)に架設することにより、最前列のレール部材(5’)に沿って横一列に並べてゆく。レール部材(5’)の設置は、ボルト孔(56’)を支持部材(4’)の固定ボルト(43’)に挿通させるとともに、ナット(44’)を上方から螺着させることによって行い、レール部材(5’)の押え部(53’)(54’)が、緑化用トレー(2)の側面部(11)上端及びつば部(12)上面を、わずかに下方に押圧した状態となるようにして、ナット(44’)を締め付ける。
このとき、レール部材(5’)、及び載置レール部材(5’’)が、それぞれ断面視略逆ハット形状、及び略ハット形状をなしているため、緑化用トレー(2)の横ズレが防止されるとともに、緑化用トレー(2)の位置決めが容易となり、施工性の向上が図られる。
[5]次列のレール部材(5’)及び緑化用トレー(2)を同様にして設置する。
[6]以上の手順を繰り返し、緑化用トレー(2)を順次敷き並べてゆけば、緑化システム(1’)を完成させることができる。
【0062】
本実施例に係る緑化システム(1’)によれば、長尺のレール部材(5’)及び載置レール部材(5’’)を用いて、左右に隣り合う複数の緑化用トレー(2)を連続して同時に挟持するようにしたため、納まりが非常に簡潔であり、専門的で特殊な技能を要することなく、誰でも簡単・迅速に施工を行うことができる。また、メンテナンスも非常に容易に行えるものである。
しかも、本実施例に係る緑化システム(1’)では、特に載置レール部材(5’’)を設ける構成としたことにより、緑化用トレー(2)のサイズ(左右幅)やハゼ継ぎ部(70b)の位置・ピッチ等によらずに、緑化用トレー(2)を安定して載置支持することが可能となり、あらかじめハゼ継ぎ部(70b)の位置・ピッチ等を指定することができない既存建物の改修工事等において、特に効果をあげることができる。
【実施例5】
【0063】
本発明に係る緑化システムの、さらにその他の実施形態について、図29〜図31を参照して説明する。図29は本実施例に係る緑化システムを示す概略平面図、図30は図29におけるU-U’線断面図、図31は図29におけるV-V’線断面図である。
本実施例は、本発明の緑化システムを瓦棒葺屋根に適用する例を示したものである。
【0064】
本実施例に係る緑化システム(1’’)は、実施例5のものと基本的な構成が共通しており、図29〜図31に示すように、主として、緑化用トレー(2)、支持部材(4’’)、レール部材(5’)、載置レール部材(5’’)等から構成されている。実施例5と共通の構成については、同一の符号を付して、説明を省略する。
【0065】
図29〜図31に示すように、瓦棒葺屋根(80)は、屋根の傾斜に沿って一定間隔(W’’=418mm)に瓦棒(81)を配置し、金属板(80a)を、ハゼ継ぎ部(80b)を介して左右方向に複数連結して形成されたものである。図30に示すように、下地(83)に釘等を用いて取り付けられたチャンネル型の吊り子(84)に、キャップ(85)を被装させることによって、瓦棒(81)が形成されるとともに、吊り子(84)とキャップ(85)と金属板(80a)の左右端とをハゼに組むことによって、屋根面から突出するハゼ継ぎ部(80b)が形成されている。
【0066】
支持部材(4’’)は、図30〜図31に示すように、コ型金物(23’’)を用いて構成されている。コ型金物(23’’)は、所定のサイズの平板を断面視略コ字状に折り曲げ、折り曲げ端部が下方に位置する形状となされ、左右下端には、ハゼ継ぎ部(80b)をしっかりと把持して挟み込むことのできる形状の挟持部(27’’)が形成されている。コ型金物(23’’)の上面には、載置レール部材(5’’)を安定して載置するための、平滑な載置部(26’’)が形成されている。
支持部材(4’’)のハゼ継ぎ部(80b)への取り付けは、図30〜図31に示すように、コ型金物(23’’)を瓦棒(81)の所定の位置において上方から装着し、挟持部(27’’)がハゼ継ぎ部(80b)を両外側面から把持した状態とした後、締付ボルト(40’’)とナット(41’’)とで締め付けることによって行う。ハゼ継ぎ部(80b)の座屈を防止するために、ハゼ継ぎ部(80b)の左右端凸部を内側面から支持する補助金物(28’’)を用いてもよい。
【0067】
そして、実施例5と同様の施工手順を用いて、瓦棒葺屋根(80)のハゼ継ぎ部(80b)に所定の間隔で支持部材(4’’)を取り付けるとともに、支持部材(4’’)の固定ボルト(43’)にレール部材(5’)及び載置レール部材(5’’)を挿通支持させ、レール部材(5’)の押え部(53’)(54’)と載置レール部材(5’’)の載置面(53’’)(54’’)との間に緑化用トレー(2)を敷き込むことにより、緑化システム(1’’)を完成させることができる。
【0068】
本実施例に係る緑化システム(1’’)によれば、瓦棒葺屋根(80)上部の緑化を、非常に簡単に且つ迅速に行うことが可能となる。また、載置レール部材(5’’)によって、緑化用トレー(2)がハゼ継ぎ部(80b)の上方で支持されるようにしたため、緑化用トレー(2)のサイズ(左右幅)や瓦棒(81)、ハゼ継ぎ部(80b)の位置・ピッチ等にかかわらず容易に施工を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、強固な構造でありながら、より簡単且つ迅速な施工が可能であり、メンテナンス性にも優れた金属屋根の緑化技術を提供するものであり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0070】
1 緑化システム
2 緑化用トレー
3 折板屋根
3b ハゼ継ぎ部
4 支持部材
5 レール部材
5a 端部用レール部材
7a、7b 頂面
10 底面部
11 側面部
12 つば部
19 連結具
23、24 コ型金物
27、35 挟持部
50、50a 底板部
51、52、51a 立上り部
53、54、53a 押え部
57 接合部材
1’、1’’ 緑化システム
4’、4’’ 支持部材
5’ レール部材
5’’ 載置レール部材
23’、23’’ コ型金物
26’、26’’ 載置部
27’ 挟持用ツメ
27’’ 挟持部
50’ 底板部
50’’ 天板部
51’、52’ 立上り部
51’’、52’’ 垂下部
53’、54’ 押え部
53’’、54’’ 載置面
70 折板屋根
70b ハゼ継ぎ部
80 瓦棒葺屋根
80b ハゼ継ぎ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属板を、ハゼ継ぎ部を介して、左右方向に連結してなる金属屋根において、緑化用トレーを左右前後に複数敷設して、金属屋根上部の緑化を行う緑化システムであって、
上部が開放された箱型容器状で、上にいくに従って外方に傾斜するように設けられた側面部と、該側面部の上端において外方に折り返し形成されたつば部を有するとともに、培養土が充填され、緑化植物が予め植栽された緑化用トレーと、
上部に固定ボルトを立設されるとともに、金属屋根の屋根面から突出するハゼ継ぎ部を挟持し、所定の間隔で設置される支持部材と、
幅方向両側に、且つ長さ方向に連続して、押え部が形成された断面視略逆ハット形状をなし、該固定ボルトを挿通して該支持部材に支持され、金属屋根の流れ方向に略直交して複数列置される長尺のレール部材と、を備え、
緑化用トレーの該側面部の上端が、該押え部の下面に位置するように、緑化用トレーが圧入して配置され、
該押え部が、左右に隣り合う複数の緑化用トレーの該つば部上面と当接して、緑化用トレーの浮揚を防止するようになされた緑化システム。
【請求項2】
該緑化用トレーが、底面部の周縁に設けられた排水口および脚部を備え、
該底面部に、中心部を水上として、該排水口に向かう水勾配が形成され、
該脚部により、該底面部が底上げされた状態で保持された請求項1に記載の緑化システム。
【請求項3】
該緑化用トレーの該底面部に、中心部から放射状に補強リブが形成され、該補強リブの先端に相当する位置に該脚部が形成された請求項2に記載の緑化システム。
【請求項4】
幅方向両側に、且つ長さ方向に連続して、緑化用トレーを載置支持するための載置面が形成された断面視略ハット形状をなし、該レール部材と互いに上下に位置するように、該固定ボルトを挿通して該支持部材に支持される長尺の載置レール部材と、をさらに備え、
該押え部と該載置面との間に、左右に隣り合う複数の緑化用トレーを挟持するようになされた請求項1乃至3の何れかに記載の緑化システム。
【請求項5】
該支持部材が、該ハゼ継ぎ部の左右方向にスライド可能な一対のコ型金物によって構成された請求項1乃至4の何れかに記載の緑化システム。







【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【公開番号】特開2012−132309(P2012−132309A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−38356(P2012−38356)
【出願日】平成24年2月24日(2012.2.24)
【分割の表示】特願2007−130219(P2007−130219)の分割
【原出願日】平成19年5月16日(2007.5.16)
【出願人】(505329819)ブルー・ジー・プロ株式会社 (5)
【Fターム(参考)】