説明

金属帯状材の巻取方法

【課題】 簡単な構成でもって切断後の金属帯状材の尾端部を、テレスコを防止して巻取り得る金属帯状材の巻取り方法を提供する。
【解決手段】 巻取用ピンチロール5とテンションリール6がB/(B+C)>0.7を満たすように配置されてなる巻取装置を用いて金属帯状材1の切断後の尾端部を巻取る金属帯状材の巻取方法であって、更に切断機2と巻取用ピンチロール5との間に、一方が昇降可能、また一方が軸にエアブレーキ16を有する上下一対のフリーロール9、10からなる拘束ロール3を、金属帯状材1を挟むように、且つ、D/B≧0.60を満たすように設け、その拘束ロール3で切断後の金属帯状材1の尾端部を巻取る際に金属帯状材1を挟持するとともに、エアブレーキ16の制動力を利用して金属帯状材1に張力を付与しながら尾端部を巻取る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属帯状材の巻取方法に関し、詳細には、めっき設備、圧延設備、焼鈍設備などで処理された金属帯状材を巻取装置でコイルに巻取らせている際の、切断後の尾端部を巻取る際に生じる巻きが徐々にずれていくテレスコープ状の巻きずれ(以下、テレスコと称す)を起こすことなく巻取る、金属帯状材の巻取方法に関するものである。なお、金属帯状材としては、鋼帯や銅、アルミなどの非鉄金属帯材などがあるが、以下は、鋼帯を例に説明する。
【背景技術】
【0002】
めっき設備、圧延設備、焼鈍設備などの各種処理ラインにおいては、処理ラインで処理された鋼帯は、ライン後面のテンションリールに連続して送られ、テンションリールに巻取られてコイルとなる。この巻取りにおいて、所定量の鋼帯を巻取った時点でテンションリールの上流側に設置されている切断機により鋼帯が切断され、その切断後の尾端部を巻取ってコイルの巻取りが終了する。
【0003】
上記鋼帯の巻取りにおいて、切断機により巻取り中の鋼帯の切断が行われる前までは、鋼帯には、テンションリールと切断機より上流側に位置するブライドルロールなどの設備との間で張力を付与しつつ巻取りが行われる。しかし、切断機により鋼帯が切断されると、一般にはテンションリールとの間で張力を付与することは不可能となるので、テンションリールと切断機の間にピンチロールを設け、このピンチロールにより鋼帯を挟持しつつ巻取りが行われている(例えば特開昭62−93027号公報(特許文献1)参照)。なお、本発明では、前記ピンチロールを巻取用ピンチロールと称し、上下共ピンチロールの場合や、下がデフレクタロールで上がピンチロールなどの形式を含むものである。
【0004】
一方、近年、上記各種処理ラインにおいては、処理前又は処理後に鋼帯を付き合わせ接合し、鋼帯の連続化が行われるようになり、ライン後面のテンションリールにはその連続化された鋼帯が送られてくる。このため、連続化された鋼帯を効率よく巻取り処理を行うため、巻取り方向の前後に複数台(通常2台)のテンションリールを設置し、次々に送られてくる鋼帯を交互に巻取ることが行われている(例えば特開2001−71027号公報(特許文献2)参照)。
【0005】
ところで、上述した1台のテンションリールを備えてのコイルの巻取り、あるいは2台のテンションリールを前後に備えてのコイルの交互巻取りにおいては、切断機により鋼帯が切断されると、一般にはテンションリールとの間で張力を付与することが不可能となり、切断開始に当たってコイルの巻取速度を大きく減速(例えば、平常の巻取速度の1/7程度の速度)して切断するものの、切断後の鋼帯の尾端部が徐々にずれて巻かれるテレスコープ状の巻きずれ(テレスコ)を起こしたり、巻き緩みを生じたりするなどの不具合が起こる。そこで、上述のようにテンションリールと切断機の間に巻取用ピンチロールを設け、切断後も鋼帯の尾端部を、この巻取用ピンチロールにより挟持して巻取ることが行われているが、依然として切断後の鋼帯の尾端部が徐々にずれて巻かれるテレスコが発生する。
【特許文献1】特開昭62−93027号公報
【特許文献2】特開2001−71027号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の如き事情に着目してなしたものであって、その目的は、簡単な構成でもって切断後の金属帯状材の尾端部を寸法や形状の不具合を起こすことなくテレスコを防止して巻取り得る金属帯状材の巻取り方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記の課題を見出した後、図6に示すような、切断機2以降に鋼帯1の幅端部の位置制御装置(端部検出器)4、巻取用ピンチロール5、テンションリール6を備える巻取装置を用いて、鋼帯1の切断後のコイルの巻取り状態をビデオカメラVで撮影し、テレスコの発生状態を解析した。その結果、切断後、切断機2から3m程度の長さまではテレスコは発生していないが、4mを過ぎる辺りから徐々にテレスコが発生し始め、5mを越えるとより大きなテレスコとなることが分かり、更に鋭意研究を重ねた結果、切断機2と巻取用ピンチロール5との設置距離及び巻取用ピンチロール5とテンションリール6との設置距離が影響することが判明し、以下に示す本発明を成すに至ったものである。
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明(請求項1)に係る金属帯状材の巻取方法は、切断機と巻取用ピンチロールの中心間距離をB及び巻取用ピンチロールとテンションリールの中心間距離をCとした場合に、巻取用ピンチロールとテンションリールがB/(B+C)>0.7を満たすように配置されてなる巻取装置を用いてテンションリールに巻取らせている金属帯状材の切断後の尾端部を巻取る金属帯状材の巻取方法であって、更に切断機と巻取用ピンチロールとの間に、一方が昇降可能、また一方が軸にエアブレーキを有する上下一対のフリーロールからなる拘束ロールを、金属帯状材を挟むように、且つ、切断機からの中心間距離をDとした場合にD/B≧0.60を満たすように設け、その拘束ロールで切断後の金属帯状材の尾端部を巻取る際に金属帯状材を挟持するとともに、エアブレーキの制動力を利用して金属帯状材に張力を付与しながら尾端部を巻取るものである。
【0009】
また、本発明(請求項2)に係る金属帯状材の巻取方法は、切断機の下流に少なくとも2つのテンションリールが下流方向に前後して設置され、切断機と後段の巻取用ピンチロールの中心間距離をB及び後段の巻取用ピンチロールと後段のテンションリールの中心間距離をCとした場合に、後段の巻取用ピンチロールと後段のテンションリールがB/(B+C)>0.7を満たすように配置されてなる巻取装置を用いて後段のテンションリールに巻取らせている金属帯状材の切断後の尾端部を巻取る金属帯状材の巻取方法であって、更に切断機と後段の巻取用ピンチロールとの間に、一方が昇降可能、また一方が軸にエアブレーキを有する上下一対のフリーロールからなる拘束ロールを、金属帯状材を挟むように、且つ、切断機からの中心間距離をDとした場合にD/B≧0.60を満たすように設け、その拘束ロールで切断後の金属帯状材の尾端部を巻取る際に金属帯状材を挟持するとともに、エアブレーキの制動力を利用して金属帯状材に張力を付与しながら尾端部を巻取るものである。
【0010】
上記構成では、切断機により切断された後の金属帯状材の尾端部を巻取る時点で、拘束ロールの上フリーロールを下フリーロールに向けて下降させ、金属帯状材を下フリーロールに押付け挟持し拘束する。このように拘束することで上下のフリーロールは巻取り速度に同調して回転しようとするが、一方のフリーロールに設けたエアブレーキによって制動力が作用し、張力が付与されるので、エアブレーキにより金属帯状材に応じた張力を付与することができ、切断後の金属帯状材の尾端部を寸法や形状の不具合を起こすことなくテレスコを防止して巻取ることができる。また、拘束ロールの構成は簡単な構成でよく、保全もし易い。
【0011】
そして、拘束ロールを設置して金属帯状材を巻取る場合、巻取装置として、切断機と後段の巻取用ピンチロールの中心間距離をB及び後段の巻取用ピンチロールと後段のテンションリールの中心間距離をCとした場合に、後段の巻取用ピンチロールと後段のテンションリールがB/(B+C)>0.7を満たすように配置された巻取装置を対象とするのは、B/(B+C)が0.7以下の巻取装置の場合にはテレスコが生じにくく、拘束ロールを設置する意味合いが無いためである。また、拘束ロールの設置位置を、切断機からの中心間距離をDとした場合にD/B≧0.60を満たすように設けるのは、D/Bが0.60未満となる設置位置に拘束ロールを設けても、テレスコを抑制する効果が期待できないためである。その理由は明らかではないが、推測するに、拘束ロールと巻取用ピンチロールの中心間距離が広くなるため、切断機による尾端部の切断と同時に金属帯状材を拘束ロールと巻取用ピンチロールで同時に押え張力を付与するが、十分な張力が付与されにくいためと思われる。従ってより好ましくはD/B≧0.80を満たすように設けるのがよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る金属帯状材の巻取り方法によれば、切断機により切断された後の金属帯状材の尾端部を巻取る時点で、拘束ロールの一方のフリーロールに設けたエアブレーキによって制動力が作用し、このエアブレーキにより金属帯状材に応じた張力を付与することができ、切断後の金属帯状材の尾端部を寸法や形状の不具合を起こすことなくテレスコを防止して巻取ることができる。また、拘束ロールの構成は簡単な構成でよく、保全もし易い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明に係る金属帯状材の巻取り方法を適用した巻取りラインの模式図である。この模式図は、金属帯状材がめっき設備、圧延設備、焼鈍設備などで処理された後の切断機からコイルに巻取られる部分を示すものであって、1は鋼帯、2は切断機、3は拘束ロール装置、4は端部検出器、5は巻取用ピンチロール、6はテンションリールである。また、Bは切断機2と巻取用ピンチロール5の中心間距離、Cは巻取用ピンチロール5とテンションリール6の中心間距離、Dは切断機2と拘束ロール装置の中心間距離をそれぞれ示す。
【0014】
拘束ロール3装置は、詳細を図2〜図4に示すように、巻取りラインの左右(鋼帯1の両端)の基台7上にU字形状の軸受箱収容フレーム8を取付け、この軸受箱収容フレーム8の下側に下フリーロール9の軸受箱10を高さ調整用のシム(図示せず)を介して取付ける一方、上フリーロール11の軸受箱12を、取付けフレーム13を介して昇降用シリンダ14のロッド15に取付け、そのシリンダ14を、上フリーロール11の軸受箱12が軸受箱収容フレーム8の内側を摺動して昇降可能なように軸受箱収容フレーム8の上端部に取付けるとともに、更に本例では上フリーロール11の片側の軸部16を軸受箱12を貫通して延在せしめ、その延在する軸部16に、軸受箱12に取付けたエアブレーキ17の可動盤を取付けて構成されている。従って、鋼帯1が上下フリーロール9、11間を通板している時に、昇降用シリンダ13を作動して上フリーロール11を下降させ、鋼帯1を下フリーロール9に押付けるとともに、エアブレーキ17にエアホース18を介して空気圧を導入し可動盤を固定盤に押付けることで、上フリーローラ11に制動を掛けることができる。
【0015】
なお、下フリーロール9は、通板中の鋼帯1の下面とは数十mm、好ましくは10〜30mm程度離して設置することが好ましく、このように間隔を設けることにより、鋼帯を切断した後の必要時以外は、通板する鋼帯に接触しないので、万一、下フリーロール9が回転不良を起こしても、通板中の製品への疵が防止できるためである。また、摩耗が少なくでき、メンテナンスが軽減されるためである。
【0016】
上記構成の巻取りラインにおいては、巻取用ピンチロール5とテンションリール6の設置位置はB/(B+C)>0.7を満たすように配置されており、また上述の拘束ロール装置3はD/B≧0.60を満たすように設けられており、切断機2の上流側の設備で処理された鋼帯1は、切断機2、拘束ロール装置3、端部検出器4、巻取用ピンチロール5をこの順に通板されてテンションリール6により巻取られる。この巻取りにおいて、所定量の鋼帯1を巻取った時点で切断機2により鋼帯1が切断される。
【0017】
そして、本発明では、上記切断と同時に図示省略する制御装置より制御信号が出力され、拘束ロール装置3が作動する。この作動で上フリーロール11が下降し、鋼帯1を下フリーロール9に押付けるとともに、エアブレーキ17に空気圧が導入され可動盤を固定盤に押付ける。これにより、鋼帯1の切断後の尾端部は、拘束ロール装置3の上下フリーロール9、11間に制動をかけられながら挟持されて巻取られていくことになるため、鋼帯1に張力が作用し、特に鋼帯1の尾端部における寸法や形状の不具合を起こすことなくテレスコを防止した巻取りができる。
【0018】
因みに、B/(B+C)=約0.71の上記構成の巻取装置(リコイラー用)において、D/B=約0.86の位置に拘束ロール装置3を設けて鋼帯の巻取りを行ったところ、拘束ロール装置3を設けなかったときはテレスコが発生していたのが、テレスコの発生が見られなくなった。
【0019】
また、図5に模式的に示す2台のテンションリール6を前後に備え、コイルを交互巻取りし得る巻取装置(めっきライン用)において、後段の巻取用ピンチロール5の前方で且つD/B=約0.9の位置に拘束ロール装置3を設けて鋼帯の巻取りを行ったところ、拘束ロール装置3を設けなかったときはテレスコが発生していたのが、テレスコの発生が見られなくなった。なお、この巻取装置の後段の巻取用ピンチロール5とテンションリール6の設置位置は、B/(B+C)=約0.77である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る金属帯状材の巻取り方法を適用した巻取りラインの模式図である。
【図2】本発明に係る拘束ロール装置の正面図である。
【図3】図2の上面図である。
【図4】図2の左側面図である。
【図5】本発明に係る金属帯状材の巻取り方法を適用した別の実施形態の巻取りラインの模式図である。
【図6】従来の巻取装置の模式図である。
【符号の説明】
【0021】
1:鋼帯 2:切断機 3:拘束ロール装置
4:端部検出器 5:ピンチロール装置 6:テンションリール
7:基台 8:軸受箱収容フレーム 9:下フリーロール
10:軸受箱 11:上フリーロール 12:軸受箱
13:取付けフレーム 14:昇降用シリンダ 15:ロッド
16:軸部 17:エアブレーキ 18:エアホース
B:切断機と巻取用ピンチロールの中心間距離
C:巻取用ピンチロールとテンションリールの中心間距離
D:切断機と拘束ロール装置の中心間距離


【特許請求の範囲】
【請求項1】
切断機と巻取用ピンチロールの中心間距離をB及び巻取用ピンチロールとテンションリールの中心間距離をCとした場合に、巻取用ピンチロールとテンションリールがB/(B+C)>0.7を満たすように配置されてなる巻取装置を用いてテンションリールに巻取らせている金属帯状材の切断後の尾端部を巻取る金属帯状材の巻取方法であって、更に切断機と巻取用ピンチロールとの間に、一方が昇降可能、また一方が軸にエアブレーキを有する上下一対のフリーロールからなる拘束ロールを、金属帯状材を挟むように、且つ、切断機からの中心間距離をDとした場合にD/B≧0.60を満たすように設け、その拘束ロールで切断後の金属帯状材の尾端部を巻取る際に金属帯状材を挟持するとともに、エアブレーキの制動力を利用して金属帯状材に張力を付与しながら尾端部を巻取ることを特徴とする金属帯状材の巻取方法。
【請求項2】
切断機の下流に少なくとも2つのテンションリールが下流方向に前後して設置され、切断機と後段の巻取用ピンチロールの中心間距離をB及び後段の巻取用ピンチロールと後段のテンションリールの中心間距離をCとした場合に、後段の巻取用ピンチロールと後段のテンションリールがB/(B+C)>0.7を満たすように配置されてなる巻取装置を用いて後段のテンションリールに巻取らせている金属帯状材の切断後の尾端部を巻取る金属帯状材の巻取方法であって、更に切断機と後段の巻取用ピンチロールとの間に、一方が昇降可能、また一方が軸にエアブレーキを有する上下一対のフリーロールからなる拘束ロールを、金属帯状材を挟むように、且つ、切断機からの中心間距離をDとした場合にD/B≧0.60を満たすように設け、その拘束ロールで切断後の金属帯状材の尾端部を巻取る際に金属帯状材を挟持するとともに、エアブレーキの制動力を利用して金属帯状材に張力を付与しながらの尾端部を巻取ることを特徴とする金属帯状材の巻取方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−102780(P2006−102780A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−293913(P2004−293913)
【出願日】平成16年10月6日(2004.10.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】