説明

金属微粒子発生装置

【課題】装置自体を小型化することができるとともに、大量かつ安定して金属微粒子を生成することができる金属微粒子発生装置を提供する。
【解決手段】金属微粒子発生装置10には、一次側電極13,14への電圧印加に基づく電気−機械−電気変換により二次側電極15にて高電圧を発生させる圧電振動子11が設けられている。そして、二次側電極15にて発生した高電圧を金属材料からなる放電電極18に印加して放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電によって金属微粒子を発生させる金属微粒子発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電極の間に放電を形成することで、金属微粒子を発生させる金属微粒子発生装置が知られている。例えば、特許文献1には、毛髪の乾燥や髪型をセットするヘアードライヤに金属微粒子発生装置を設けた技術が開示されている。この金属微粒子発生装置によって、例えば毛髪の乾燥と同時に毛髪に対して金属(白金)微粒子を供給することで、紫外線により生じた活性酸素にてダメージを受けた(例えばキューティクルの剥がれ)毛髪が白金微粒子の持つ抗酸化作用により回復されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−23063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような金属微粒子発生装置では、放電を形成するためには電極の間に高電圧を印加する必要があるため昇圧トランスが必要となり、装置自体が大型化してしまっていた。一方、装置の大型化を抑制しようとすると、昇圧トランスにおける形状等の制約が生じ、数kV程度の電圧しか発生させることができず、大量かつ安定して金属微粒子を生成することができなかった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、装置自体を小型化することができるとともに、大量かつ安定して金属微粒子を生成することができる金属微粒子発生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、一次側電極への電圧印加に基づく電気−機械−電気変換により二次側電極にて高電圧を発生させる圧電振動子と、金属材料からなるとともに前記圧電振動子にて発生した高電圧が印加されることで放電を行う放電電極と、を備えたことを要旨とする。
【0007】
この発明によれば、放電電極により放電させるために放電電極には高電圧が印加されるが、この高電圧を発生させるために圧電振動子が用いられる。このため、高電圧を発生させるために、従来のような体格の大きい昇圧トランスが必要ないため、装置自体を小型化することができる。また、圧電振動子により高電圧を得ることができるため、装置自体を小型化しつつも、従来のような昇圧トランスにおける形状等の制約が生じて数kV程度の電圧しか発生させることができなくなるといったことがなく、高電圧を放電電極に印加することができ、放電電極により放電させることで金属微粒子を大量かつ安定して生成することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記放電電極は、その先端が尖状に形成されていることを要旨とする。
この発明によれば、高電圧が印加された放電電極の先端に電界が集中しやすくなるため、空気中の電荷を帯びた粒子が放電電極の先端に集中していき衝突しやすくなり、金属微粒子をより効率良く生成することができる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の発明において、前記放電電極が複数設けられていることを要旨とする。
この発明によれば、放電電極が一つ設けられた金属微粒子発生装置に比べて、金属微粒子の生成量を増加させることができる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の発明において、接地された電極をさらに設けたことを要旨とする。
この発明によれば、放電電極と、接地された電極との間に電圧を印加することで、より確実に放電を行うことができる。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の発明において、前記放電電極の主成分が白金又は亜鉛であることを要旨とする。
この発明によれば、放電電極の主成分が白金の場合、例えば、発生した白金微粒子を毛髪に付着させると、毛髪の劣化を促す活性酸素を除去する抗酸化作用が働く。よって、白金微粒子を毛髪等に供給することで紫外線より生じた活性酸素によるダメージ(キューティクルの剥がれ)を回復させることができる。また、放電電極の主成分が亜鉛の場合であっても、例えば、発生した亜鉛微粒子を毛髪に付着させることで、毛髪のダメージ(キューティクルの剥がれ)を回復させることができる。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、装置自体を小型化することができるとともに、大量かつ安定して金属微粒子を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態における金属微粒子発生装置を模式的に示す断面図。
【図2】(a)は圧電振動子の断面図、(b)は接触部材を介して放電電極が設けられた圧電振動子を示す斜視図。
【図3】対向電極の正面図。
【図4】(a)は別の実施形態における接触部材を介して放電電極が設けられた圧電振動子を示す斜視図、(b)は別の実施形態における圧電振動子に放電電極が設けられた状態を示す斜視図。
【図5】(a)〜(c)は別の実施形態における接触部材を介して放電電極が設けられた圧電振動子を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図3にしたがって説明する。なお、以下に示す各図は、金属微粒子(本実施形態では白金微粒子)を生成するためのメカニズムを説明する上で必要な構成のみを図示した金属微粒子発生装置10の模式図となっており、金属微粒子発生装置10におけるその他の構成については図示及び説明を省略している。
【0015】
図1に示すように、金属微粒子発生装置10には、その外郭を形成する図示しないハウジングに、圧電振動子11(圧電トランス)及び接地された電極としての対向電極21が所定の位置に固定されている。また、金属微粒子発生装置10はファン12を備えている。
【0016】
図2(a)及び(b)に示すように、チタン酸ジルコン亜鉛(PZT)系材料からなる矩形板状の圧電振動子11は、その長手方向(図2に示す矢印Xの方向)と厚み方向(図2に示す矢印Yの方向)の二方向に分極されて構成されている。圧電振動子11の長手方向における一方側であって、圧電振動子11の厚み方向における両面には、電力供給面を構成する一次側電極13,14がそれぞれ設けられている。また、圧電振動子11の長手方向における他方の端面側には、高電圧出力面15aを有する二次側電極15が設けられている。なお、圧電振動子11の厚み方向及び長さ方向の寸法比は、入力電圧及び出力電圧の略増幅比に相当し、本実施形態では10〜20倍程度に設定されている。
【0017】
図1に示すように、一次側電極13,14は電力(交流電圧)を供給する電力供給部16と電気的に接続されるとともに、電力供給部16により圧電振動子11の長手方向における長さに対応した共振周波数の交流電圧が一次側電極13,14に印加されるようになっている。
【0018】
電力供給部16により一次側電極13,14に交流電圧が印加されると、圧電振動子11の長手方向に強い機械振動が生じるとともに、図1に二点鎖線で示す波長1/2λを形成する定在波Wモードで振動する。なお、本来、定在波Wは縦波の振動であるが、図1においては説明の都合上、横波で図示している。
【0019】
この機械振動により二次側電極15では、圧電効果による電荷が発生するとともに、電力供給部16から一次側電極13,14に印加された電圧よりも昇圧された高電圧が発生する。昇圧された二次側電極15の高電圧出力面15aにおいても同様に昇圧された高電圧が発生している。
【0020】
また、高電圧出力面15aの中央部には接触部材17の一端が点接触されるとともに、接触部材17の他端には放電電極18の基端が点接触されている。よって、二次側電極15に生じる高電圧は、接触部材17を介して放電電極18に印加されるようになっている。接触部材17は、ステンレス鋼(SUS)、銅及びアルミ等の金属材料にて弾性を有するように形成され、圧電振動子11で生じる機械振動が放電電極18に伝達されることを抑制する振動抑制手段として機能する。
【0021】
また、圧電振動子11における定在波Wの節Fとなる位置には、圧電振動子11を保持する保持部材19が、圧電振動子11を厚み方向に挟むように設けられている。保持部材19は弾性体からなる。この保持部材19により、圧電振動子11において長手方向に機械振動が生じても、節Fに引張・圧縮応力が集中することが抑制される。
【0022】
放電電極18は、金属材料からなるとともにその主成分が白金にて構成され、略円柱状をなしている。放電電極18の先端は平坦面となるように形成されるとともに、この平坦面は、放電電極18の軸方向と直交するように形成されている。
【0023】
さらに、金属微粒子発生装置10には、放電電極18と対向するように対向電極21が設けられている。対向電極21は、放電電極18近傍であるとともに白金微粒子雰囲気に位置するように設けられている。図3に示すように、対向電極21は、正面視するとリング状になっている。そして、放電電極18と対向電極21との間に高電圧を印加することで放電が行われるようになっており、この放電により生成される白金微粒子の大部分が対向電極21の孔21aを介して対向電極21を通過できるようになっている。
【0024】
上記構成の金属微粒子発生装置10において、白金微粒子を生成させるメカニズムとしては、まず、放電電極18が負極、対向電極21が正極となるように高電圧を印加し、放電電極18の先端から放電を生じさせる。この放電により、空気中の電荷を帯びた粒子が放電電極18の先端に衝突し、プラスイオンによってスパッタリング現象が生じ、微細な白金微粒子が大量かつ安定して生成され、生成された白金微粒子は対向電極21側に向けて放出される。そして、放電電極18の先端から放出された白金微粒子は、対向電極21の孔21aを通過して外部へ放出される。
【0025】
この白金微粒子は、活性酸素を除去する抗酸化作用として機能するため、例えば、白金微粒子を毛髪等に供給することで紫外線による活性酸素によるダメージ(キューティクルの剥がれ)を回復することができる。
【0026】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)金属微粒子発生装置10には、高電圧を発生させるために圧電振動子11が設けられている。よって、従来のような体格の大きい昇圧トランスを必要としないため、装置自体を小型化することができる。また、圧電振動子11により高電圧を発生させることができるため、装置自体を小型化しつつも、従来のような昇圧トランスにおける形状等の制約が生じて数kV程度の電圧しか発生させることができなくなるといったことがなく、高電圧を放電電極18に印加することができる。そして、放電電極18により放電させることで白金微粒子を大量かつ安定して生成することができる。
【0027】
(2)金属微粒子発生装置10には、接地された対向電極21が設けられている。よって、放電電極18と対向電極21との間に電圧を印加することで、より確実に放電を行うことができる。
【0028】
(3)放電電極18の主成分が白金にて構成されている。放電電極18により白金微粒子が生成されるとともに、この白金微粒子を毛髪に付着させると、毛髪の劣化を促す活性酸素を除去する抗酸化作用が働く。よって、白金微粒子を毛髪等に供給することで紫外線より生じた活性酸素によるダメージ(キューティクルの剥がれ)を回復させることができる。
【0029】
(4)放電電極18と圧電振動子11の二次側電極15とは、接触部材17を介して電気的に接続されている。よって、接触部材17により圧電振動子11で生じる機械振動が放電電極18に伝達されることを抑制することができる。
【0030】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態において、放電電極18の先端は平坦面となるように形成されるとともに、この平坦面は、放電電極18の軸方向と直交するように形成されていたが、これに限らず、例えば、図4(a)に示すように、放電電極18の先端が尖状に形成されていてもよい。これによれば、高電圧が印加された放電電極18の先端に電界が集中しやすくなるため、空気中の電荷を帯びた粒子が放電電極18の先端に集中していき衝突しやすくなり、白金微粒子をより効率良く生成することができる。
【0031】
また、図4(b)に示すように、放電電極18は、二次側電極15における高電圧出力面15aと同じサイズの端面18aを有するとともに、端面18aと連続して設けられる両側面18b,18cが端面18aから先端に向かうにつれて曲線状に縮幅するように構成されていてもよい。なお、放電電極18は、端面18aが高電圧出力面15aに接触するように設けられている。
【0032】
○ 実施形態において、放電電極18を複数設けてもよい。例えば、図5(a)に示すように、一端が高電圧出力面15aに接触する接触部材17を複数設けるとともに、各接触部材17の他端に放電電極18を一つずつ設けてもよい。これによれば、放電電極18が一つ設けられた金属微粒子発生装置10に比べて、白金微粒子の生成量を増加させることができる。
【0033】
また、図5(b)に示すように、接触部材17を介して複数の放電電極18の基端を高電圧出力面15aに接触させてもよく、さらに、図5(c)に示すように、高電圧出力面15aから外方に延在する複数の接触部材17それぞれに放電電極18を一つずつ設けてもよい。
【0034】
○ 実施形態において、放電電極18の主成分は白金であったが、これに限らず、例えば、亜鉛であってもよい。これによれば、放電電極18の主成分が白金の場合と同様に、放電電極18から生成された亜鉛微粒子を毛髪に付着させることで、毛髪のダメージ(キューティクルの剥がれ)を回復させることができる。
【0035】
○ 実施形態において、対向電極21は放電電極18と対向するように設けられたが、これに限らず、放電電極18が放電可能であれば、対向電極21の配置位置は特に限定されない。また、対向電極21に相当する部分を帯電除去板や金属微粒子発生装置10のハウジングで構成してもよい。
【0036】
○ 実施形態において、金属微粒子発生装置10に対向電極21を設けなくてもよい。
○ 実施形態において、放電電極18と圧電振動子11の二次側電極15との間に接触部材17を設けなくてもよい。
【0037】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記二次側電極と前記放電電極とは、前記圧電振動子の機械振動が前記放電電極に伝達されることを抑制するための振動抑制手段を介して電気的に接続されていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の金属微粒子発生装置。
【符号の説明】
【0038】
10…金属微粒子発生装置、11…圧電振動子、13,14…一次側電極、15…二次側電極、17…振動抑制手段としての接触部材、18…放電電極、21…接地された電極としての対向電極。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側電極への電圧印加に基づく電気−機械−電気変換により二次側電極にて高電圧を発生させる圧電振動子と、
金属材料からなるとともに前記圧電振動子にて発生した高電圧が印加されることで放電を行う放電電極と、を備えたことを特徴とする金属微粒子発生装置。
【請求項2】
前記放電電極は、その先端が尖状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の金属微粒子発生装置。
【請求項3】
前記放電電極が複数設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属微粒子発生装置。
【請求項4】
接地された電極をさらに設けたことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の金属微粒子発生装置。
【請求項5】
前記放電電極の主成分が白金又は亜鉛であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の金属微粒子発生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−63870(P2011−63870A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217742(P2009−217742)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】