説明

金属接合方法及び金属接合装置

【課題】絶縁内皮の溶融を防止して芯線とシールド部の短絡を防止でき、かつ、シールド部と導電部材とを確実に接合できる金属接合方法及び金属接合装置を提供する。
【解決手段】同軸ケーブル3の外周に接地端子4を巻き付け、接地端子4の同軸ケーブル3に巻き付けられた部分を一対の電極11、12間に挟んで、これら一対の電極11、12を互いに近づける方向に加圧した状態で一対の電極11、12間に電流を通電する。前記電流は、絶縁外皮34が当該絶縁外皮34の融点以上に加熱され、かつ、絶縁内皮32が当該絶縁内皮32の融点を下回る温度に加熱されるように通電する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シールド電線のシールド部と導電部材とを接合する金属接合方法及び金属接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、導電性の芯線と当該芯線を被覆した絶縁性の被覆部とを備えた被覆電線の芯線と、導電部材としての端子金具を接合する際に、金属接合装置として、従来から周知の抵抗溶接装置を用いることがある。抵抗溶接装置は、一対の電極を備え、これら一対の電極間に複数の接合対象物を挟み、一対の電極を互いに近づく方向に加圧して、一対の電極間に電流(所謂、溶接電流)を通電する。抵抗溶接装置は、前記接合対象物に抵抗発熱を発生させて接合対象物を溶融する等して、複数の接合対象物同士を溶接して接合する。
【0003】
前述した抵抗溶接装置を用いて被覆電線の芯線と端子金具を接合する際には、例えば、端子金具に当該端子金具の外縁部を断面略C字状(断面略U字状)に曲げて、電線接続部を設けることがある(例えば、特許文献1及び2参照)。そして、この電線接続部を被覆電線の外周に巻き付け、電線接続部の被覆電線に巻き付けられた部分を一対の電極間に挟み、一対の電極を加圧して当該一対の電極間に電流を通電する。
【0004】
すると、電線接続部の前述した抵抗発熱によって、被覆部が当該被覆部の融点以上に加熱される。このとき、一対の電極は互いに近づく方向に加圧されているので、溶融した被覆部が電線接続部と芯線の間から押し出され、芯線と電線接続部が接触する。そして、芯線と電線接続部が互いに溶接されて接合され、芯線と端子金具が互いに接合される。
【0005】
このように被覆電線と端子金具とを接合することで、予め被覆部を皮剥きして芯線を露出させる工程が必要なくなり、作業性を効率化できる。また、芯線を露出させた後に端子金具を加締める場合と比較すると、端子金具と芯線を確実に密着させることができるので、端子金具や芯線の腐食等を防止でき、端子金具と芯線の電気的な接続を長期に亘って安定化できる。
【0006】
そこで、前述した抵抗溶接装置を、シールド電線と、導電部材としての接地端子とを接合する際に用いることが考えられる。シールド電線は、導電性の芯線と、芯線を被覆した絶縁内皮と、絶縁内皮を被覆した導電性のシールド部としての編組線と、編組線を被覆した絶縁外皮とを備えている。接地端子は、導電性の板金等にプレス加工を施して得られる。接地端子は、前述した電線接続部を備えている。接地端子は、電線接続部が編組線と溶接されて接合され、編組線のシールドした電気的なノイズを外部に逃がす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−73476号公報
【特許文献2】特開2006−31980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した抵抗溶接装置を用いてシールド電線と接地端子を接合する際には、前述した被覆電線と端子金具とを接合する場合と同様に、接地端子の電線接続部をシールド電線の外周に巻き付け、電線接続部のシールド電線に巻き付けられた部分を一対の電極間に挟み、一対の電極を加圧して当該一対の電極間に電流を通電する。すると、絶縁外皮が当該絶縁外皮の融点以上に加熱され、溶融した絶縁外皮が電線接続部と編組線の間から押し出されて、編組線と電線接続部が接触する。そして、編組線と電線接続部が互いに接合され、編組線即ちシールド電線と接地端子とが互いに接合される。
【0009】
しかしながら、前述したようにシールド電線と接地端子とを接合すると、絶縁内皮を当該絶縁内皮の融点以上に加熱してしまう虞がある。そして、絶縁内皮が溶融すると、編組線と芯線が短絡する虞がある。このため、前述した抵抗溶接装置は、シールド電線と接地端子を接合する際に用いることができなかった。
【0010】
本発明は、このような問題を解決することを目的としている。即ち、本発明は、絶縁内皮の溶融を防止して芯線とシールド部の短絡を防止でき、かつ、シールド部と導電部材とを確実に接合できる金属接合方法及び金属接合装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載された発明は、導電性の芯線と、前記芯線を被覆した絶縁内皮と、前記絶縁内皮を被覆した導電性のシールド部と、前記シールド部を被覆した絶縁外皮と、を備えたシールド電線と導電部材とを一対の電極間に挟んで、これら一対の電極を互いに近づける方向に加圧した状態で前記一対の電極間に電流を通電して前記シールド部と前記導電部材とを接合する金属接合方法であって、前記シールド電線の外周に前記導電部材を巻き付けて、前記導電部材の前記シールド電線に巻き付けられた部分を前記一対の電極間に挟み、前記絶縁外皮が当該絶縁外皮の融点以上に加熱され、かつ、前記絶縁内皮が当該絶縁内皮の融点を下回る温度に加熱されるように、前記一対の電極間に前記電流を通電することを特徴とした金属接合方法である。
【0012】
請求項2に記載された発明は、導電性の芯線と、前記芯線を被覆した絶縁内皮と、前記絶縁内皮を被覆した導電性のシールド部と、前記シールド部を被覆した絶縁外皮と、を備えたシールド電線の前記シールド部と導電部材とを接合する金属接合装置であって、前記導電部材の前記シールド電線の外周に巻き付けられた部分を互いの間に挟む一対の電極と、前記絶縁外皮が当該絶縁外皮の融点以上に加熱され、かつ、前記絶縁内皮が当該絶縁内皮の融点を下回る温度となるように加熱されるように、前記一対の電極間に通電される電流を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とした金属接合装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載された発明によれば、溶融した絶縁外皮がシールド部と導電部材との間から押し出されて、シールド部と導電部材が接触してこれらシールド部と導電部材が接合されるが、このとき、絶縁内皮は溶融しない。したがって、芯線とシールド部の短絡を確実に防止でき、かつ、シールド部と導電部材とを確実に接合できる。
【0014】
請求項2に記載された発明によれば、溶融した絶縁外皮がシールド部と導電部材との間から押し出されて、シールド部と導電部材が接触してこれら導電部材とシールド部が接合されるが、このとき、絶縁内皮は溶融しない。したがって、シールド部と芯線の短絡を確実に防止でき、かつ、シールド部と導電部材とを確実に接合できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態にかかる金属接合装置の接合装置本体の構成を示す説明図である。
【図2】図1に示された金属接合装置の構成を示すブロック図である。
【図3】図1に示された金属接合装置で接合された編組線と接地端子とを示す斜視図である。
【図4】図3中のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図2に示された金属接合装置で編組線と接地端子とを接合する際の通電時間と温度との関係を示すグラフである。
【図6】図4に示された編組線と接地端子の接合前の状態のものを一対の電極間に挟んだ状態を示す断面図である。
【図7】図6に示された編組線と接地端子を接合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態にかかる金属接合装置1を図1ないし図7を参照して説明する。図1及び図2に示す本発明の一実施形態にかかる金属接合装置1は、図3及び図4に示す同軸ケーブル(シールド電線に相当する)3の編組線(シールド部に相当する)33と接地端子(導電部材に相当する)4とを抵抗溶接して接合し、同軸ケーブル3と接地端子4とを電気的かつ機械的に接続する装置である。
【0017】
同軸ケーブル3は、図3及び図4に示すように、導電性の芯線31と、芯線31を被覆した絶縁内皮32と、絶縁内皮32を被覆した導電性の編組線33と、編組線33を被覆した絶縁外皮34とを備えている。
【0018】
芯線31は、導電性の金属で構成され、例えば銅で構成されている。芯線31は、断面円形の線状に形成されている。なお、図示例では芯線31は一本の素線で構成されているが、複数の素線が撚り合わされて構成されていてもよい。
【0019】
絶縁内皮32は、絶縁性の合成樹脂で構成され、例えばポリエチレンで構成されている。絶縁内皮32は、芯線31の全周を略全長に亘って覆っている。
【0020】
編組線33は、複数の素線33aが互いに編まれて、網状に形成されている。素線33aは、導電性の金属で構成され、例えば銅で構成されている。さらに、編組線33は、長尺な筒状に形成され、絶縁内皮32の全周を略全長に亘って覆っている。編組線33は、芯線31を電気的にシールドして、芯線31から編組線33外に電気的なノイズが漏洩したり、芯線31内に外部から電気的なノイズが流入したりすることを防止する。なお、編組線33は、導電性の金属で箔状に形成された金属箔を筒状にしたものであってもよい。
【0021】
絶縁外皮34は、絶縁性の合成樹脂で構成されている。絶縁外皮34は、絶縁外皮34を構成するポリエチレンよりも難燃性の高いポリエチレンで構成されている。絶縁外皮34は、絶縁内皮32の融点Ta(図5)よりも高い融点Tb(図5)の材料で構成されている。絶縁外皮34は、筒状に形成され、編組線33の全周を略全長に亘って覆っている。このため、絶縁外皮34の外周は、同軸ケーブル3の外周をなしている。
【0022】
接地端子4は、導電性の板金にプレス加工等を施して得られる。接地端子4の表面には、銅めっきが施されている。接地端子4の表面は、編組線33と同種の金属材料で構成されていると好ましい。接地端子4は、図3及び図4に示すように、接地部41と、電線接続部42とを一体に備えている。
【0023】
接地部41は、矩形平板状に形成されている。接地部41は、例えば図示しないねじ留め用の貫通孔を備え、自動車のボディパネル等にねじ留めされることで当該ボディパネルに固定され、接地端子4を接地する。こうして、接地端子4に電気的に接続された同軸ケーブル3が接地されることになる。
【0024】
電線接続部42は、接地部41の外縁部を断面略C字状(断面略U字状)に曲げて形成されている。電線接続部42の内径は、同軸ケーブル3の外径(絶縁外皮34の外径)よりも若干大きく形成されている。電線接続部42は、同軸ケーブル3の外周に巻き付けられて、内側に同軸ケーブル3を位置付ける。電線接続部42の一部の内面は、抵抗溶接によって、編組線33の一部の外面と電気的かつ機械的に接続される。接地端子4は、電線接続部42が編組線33と電気的に接続されることで、編組線33のシールドした電気的なノイズを、接地部41を介して外部に逃がす。
【0025】
本実施形態の金属接合装置1は、同軸ケーブル3の外周に接地端子4の電線接続部42を巻き付けて、同軸ケーブル3と接地端子4、即ち、接地端子4の同軸ケーブル3に巻き付けられた部分、を一対の電極11、12間に挟んで、編組線33と接地端子4の電線接続部42とを溶接して接合する。
【0026】
金属接合装置1は、図2に示すように、接合装置本体10(図1)と、シリンダ21と、電源23と、電流値測定手段としての電流計24と、電圧値測定手段としての電圧計25と、タイマ26と、制御装置27とを備えている。
【0027】
接合装置本体10は、図1に示すように、ベース板10aと、このベース板10aから立設した立設板部10bと、一対の電極11、12とを備えている。ベース板10aは、厚手の平板状に形成され、工場のフロア等に設置される。立設板部10bは、ベース板10aから上方に向かって立設している。
【0028】
一対の電極11、12は、それぞれ、ホルダ13と、電極本体14とを備えている。電極本体14は、棒状に形成され、ホルダ13に取り付けられている。一方の電極11のホルダ13は、ベース板10aから上方に立設した格好でベース板10aに固定されている。一方の電極11の電極本体14は、ホルダ13から鉛直方向に沿って上方に向かって立設した状態で、前記ホルダ13に取り付けられている。
【0029】
他方の電極12のホルダ13は、一方の電極11の電極本体14と他方の電極12の電極本体14とが鉛直方向に沿って相対する状態で、シリンダ21の後述するロッド21bに取り付けられている。他方の電極12の電極本体14は、ホルダ13から鉛直方向に沿って下方に向かって立設した状態で、前記ホルダ13に取り付けられている。
【0030】
一対の電極11、12は、シリンダ21の後述するロッド21bが伸長すると電極本体14同士が互いに近づき、シリンダ21のロッド21bが縮むと電極本体14同士が互いに離れる。このように、一対の電極11、12の電極本体14は、シリンダ21のロッド21bが伸縮することで、互いに接離する(近づいたり離れたりする)。
【0031】
シリンダ21は、図1及び図2に示すように、筒状のシリンダ本体21aと、シリンダ本体21aから伸縮自在に設けられた棒状のロッド21bとを備えている。シリンダ本体21aは、ロッド21bの長手方向が鉛直方向に沿いかつロッド21bがシリンダ本体21aから下方に向かって伸長する状態で、立設板部10bに取り付けられている。シリンダ21は、シリンダ本体21a内に加圧された気体が供給される等して、ロッド21bがシリンダ本体21aから伸縮する。シリンダ21は、ロッド21bがシリンダ本体21aから伸縮することで、一対の電極11、12の電極本体14同士を互いに接離させる。
【0032】
電源23は、図2に示すように、制御装置27と接続しており、制御装置27からの命令に基づいて一対の電極11、12間に電流(所謂、溶接電流)を通電する。
【0033】
電流計24は、図2に示すように、電源23と他方の電極12との間に設けられ、かつこれらと電気的に接続している。また、電流計24は、制御装置27と接続している。電流計24は、前述した電流の電流値を測定し、当該電流値を制御装置27に向かって出力する。
【0034】
電圧計25は、図2に示すように、一対の電極11、12双方と電気的に接続している。また、電圧計25は、制御装置27と接続している。電圧計25は、前述した電流が通電したときに一対の電極11、12間の電圧値を測定し、当該電圧値を制御装置27に向かって出力する。
【0035】
タイマ26は、図2に示すように、制御装置27と接続している。タイマ26は、制御装置27から後述するリセット信号が入力するとリセットされる。また、タイマ26は、制御装置27から後述する測定開始信号が入力すると、当該測定開始信号が入力してからの経過時間の測定を開始する。タイマ26は、前記経過時間に応じた情報をパルス信号として常時制御装置27に向かって出力する。
【0036】
制御装置27は、周知のRAMと、ROMと、CPU等を備えたコンピュータである。制御装置27は、前述したシリンダ21と、電源23と、電流計24と、電圧計25と、タイマ26等と接続して、金属接合装置1全体の制御をつかさどる。
【0037】
制御装置27は、シリンダ21のロッド21bを伸長させて、一対の電極11、12間に同軸ケーブル3に巻き付けられた接地端子4の電線接続部42を挟み、シリンダ21に予め定められた所定の力で一対の電極11、12を互いに近づける方向に加圧させ、一対の電極11、12間の同軸ケーブル3と電線接続部42とを互いに近づける方向に加圧させる。
【0038】
また、制御装置27は、電源23に向かって通電開始信号を出力して、一対の電極11、12を前述のように加圧させた状態で一対の電極11、12間に電流を通電させる。制御装置27は、電流計24からの電流値に基づいて、電源23の電流値等を前記所定の電流値に保つ。
【0039】
また、制御装置27は、タイマ26に向かって当該タイマ26をリセットするリセット信号を出力した後に、前記通電開始信号と同時に測定開始信号を出力して、タイマ26に前記通電開始信号(測定開始信号)が入力してからの経過時間を測定させる。
【0040】
また、制御装置27は、後述する所定の時間T0を記憶している。そして、制御装置27は、タイマ26からの情報により前記経過時間が所定の時間T0以上になったと判定すると、電源23に向かって通電終了信号を出力して電源23の通電を停止し、シリンダ21による加圧を停止する。
【0041】
所定の時間T0とは、図5に示すように、金属接合装置1において同軸ケーブル3に巻き付けられた接地端子4を互いの間に挟んだ一対の電極11、12間に前記所定の電流値の電流を通電した際に、絶縁外皮34が当該絶縁外皮34の融点Tb以上に加熱されて溶融し、編組線33と接地端子4がそれぞれの融点以上に加熱されて溶接して接合し、絶縁内皮32が当該絶縁内皮32の融点Taを下回る温度となるように加熱されて溶融しない時間、を指している。
【0042】
前述した所定の時間T0は、接合対象となる同軸ケーブル3の絶縁内皮32、編組線33及び絶縁外皮34を構成する材料やこれらの形状、接地端子4を構成する材料や接地端子4の形状、及び、電流の電流値、等によって決定されるものである。本実施形態において、所定の時間T0は、金属接合装置1や接合対象である同軸ケーブル3及び接地端子4を用いて、予め一対の電極11、12間に前記所定の電流値の電流を通電した際の絶縁内皮32や絶縁外皮34の温度(縦軸)等を複数の通電時間において測定して図5に示すようなグラフを作成し、このグラフから得ている。所定の時間T0は、図5中の範囲T内の任意の時間とすることができる。なお、この所定の時間T0は、計算等によって算出してもよい。
【0043】
一般に、抵抗溶接を行った際の同軸ケーブル3の各部(絶縁内皮32や絶縁外皮34等)や接地端子4の各発熱量Q(J)は、同軸ケーブル3の各部や接地端子4の各部材抵抗R(Ω)、溶接電流I(A)、通電時間t(s)とすると、
Q=R×I2×t
で示される。上式に示すように、前述した所定の時間T0及び前記所定の電流値を変更することで、同軸ケーブル3の前記各部や接地端子4の発熱量を変更できる。このため、本実施形態の同軸ケーブル3や接地端子4と異なる材料や形状の同軸ケーブルや接地端子、さらには同軸ケーブル以外のシールド電線や接地端子以外の導電部材等であっても、金属接合装置1を用いて、絶縁外皮を当該絶縁外皮の融点以上に加熱し、シールド部と導電部材をそれぞれの融点以上(融点近傍)に加熱し、絶縁内皮を当該絶縁内皮の融点を下回る温度となるように加熱することができる。
【0044】
こうして、制御装置27は、通電開始信号を出力してから通電終了信号を出力するまでの間(即ち所定の時間T0の間)に亘って電流を通電することで、絶縁外皮34が当該絶縁外皮34の融点Tb以上に加熱され、編組線33と接地端子4がそれぞれの融点以上(融点近傍)に加熱され、絶縁内皮32が当該絶縁内皮32の融点Taを下回る温度に加熱されるように、一対の電極11、12間に通電される電流を制御する。タイマ26と制御装置27とは、特許請求の範囲に記載の制御手段をなしている。
【0045】
そして、制御装置27は、電流計24からの電流値及び電圧計25からの電圧値に基づいて、予め定められた所定の品質で同軸ケーブル3の編組線33と接地端子4の電線接続部42とを抵抗溶接して接合する。
【0046】
前述した金属接合装置1を用いて同軸ケーブル3の編組線33と接地端子4とを接合する際には、まず、同軸ケーブル3の長手方向における所定の位置に接地端子4の電線接続部42を巻き付ける。そして、図6に示すように、接地端子4の同軸ケーブル3の外周に巻き付けられた部分、即ち電線接続部42を、一対の電極11、12の電極本体14間に挟む。
【0047】
その後、制御装置27は、シリンダ21のロッド21bを伸張させて所定の力で一対の電極11、12を互いに近づける方向に加圧するとともに、電源23に通電開始信号を出力して前記所定の電流値の電流を一対の電極11、12間に通電する。また、制御装置27は、タイマ26に向かってリセット信号及び測定開始信号を出力し、通電開始信号(測定開始信号)が入力してからの経過時間を測定させる。
【0048】
すると、一対の電極11、12間に接地端子4の電線接続部42を介して電流が流れて、電線接続部42に抵抗発熱が生じる。このとき、前記加圧によって電線接続部42の一部の内面と絶縁外皮34の一部の外面とが互いに接触するので、電線接続部42の前記内面に生じた抵抗発熱が絶縁外皮34の前記外面に熱伝導して、絶縁外皮34が発熱する。そして、絶縁外皮34が当該絶縁外皮34の融点Tb以上に加熱される。
【0049】
すると、溶融した絶縁外皮34が前記加圧によって電線接続部42と編組線33の間から押し出されて一対の電極11、12が互いに徐々に近づいていき、電線接続部42の前記内面と編組線33の一部の外面とが互いに接触する。そして、一対の電極11、12間に電線接続部42及び編組線33を介して電流が流れて、編組線33にも抵抗発熱が生じる。そして、電線接続部42及び編組線33がそれぞれの融点以上に加熱され、図7に示すように、互いに接触した電線接続部42の前記内面と編組線33の前記外面がそれぞれ溶融する。
【0050】
そして、制御装置27は、タイマ26からの情報によって通電開始信号からの経過時間が所定の時間T0以上になったと判定すると、電源23に向かって通電終了信号を出力して電源23の通電を停止するとともに、シリンダ21による加圧を停止する。このとき、絶縁内皮32は、編組線33や電線接続部42の抵抗発熱等によって加熱されているが、電線接続部42から絶縁外皮34よりも離れており、当該絶縁内皮32の融点Tbまでは加熱されていない(当該絶縁内皮32の融点Tbを下回る温度となるように加熱されている)。
【0051】
その後、互いに接触した電線接続部42の内面と編組線33の外面とは、一部が溶融しているので、電流が通電しなくなると冷却されて徐々に金属結合する。こうして、電線接続部42と編組線33とが抵抗溶接によって互いに接合(機械的に固定)され、接地端子4と同軸ケーブル3とが抵抗溶接によって互いに接合される。
【0052】
本実施形態によれば、溶融した絶縁外皮34が編組線33と接地端子4との間から押し出されて、編組線33と接地端子4が接触してこれら編組線33と接地端子4が接合されるが、このとき、絶縁内皮32は溶融しない。したがって、芯線31と編組線33の短絡を確実に防止でき、かつ、編組線33と接地端子4とを確実に接合できる。
【0053】
前述した実施形態においては、前述した金属接合装置1を用いて、電線接続部42及び編組線33をそれぞれの融点以上に加熱して溶融させ、これら電線接続部42及び編組線33を溶接することで接合していた。しかしながら本発明では、前述した金属接合装置1(または他の装置)を用いて、電線接続部42及び編組線33を電線接続部42の内面と編組線33の外面とが拡散接合するような温度、即ちそれぞれの融点を下回りかつ融点近傍の温度に加熱して、これら電線接続部42及び編組線33を溶融させることなく拡散接合によって接合してもよい。
【0054】
また、前述した実施形態においては、タイマ26が通電開始信号の入力してからの経過時間を測定していたが、所定の時間T0の長さによっては、作業者が前記経過時間を測定し、前記経過時間が所定の時間T0以上になったときに制御装置27を操作する等して加圧及び通電を停止させてもよい。
【0055】
また、前述した実施形態においては、シールド電線を同軸ケーブル3を例にして説明したが、同軸ケーブル3以外のシールド電線であってもよい。また、前述した実施形態においては、導電部材を接地端子4を例にして説明したが、接地端子4以外の端子金具や金属板等であってもよい。
【0056】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0057】
1 金属接合装置
3 同軸ケーブル(シールド電線)
4 接地端子(導電部材)
11 一方の電極
12 他方の電極
26 タイマ(制御手段)
27 制御装置(制御手段)
31 芯線
32 絶縁内皮
33 編組線(シールド部)
34 絶縁外皮
Ta 絶縁内皮の融点
Tb 絶縁外皮の融点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の芯線と、前記芯線を被覆した絶縁内皮と、前記絶縁内皮を被覆した導電性のシールド部と、前記シールド部を被覆した絶縁外皮と、を備えたシールド電線と導電部材とを一対の電極間に挟んで、これら一対の電極を互いに近づける方向に加圧した状態で前記一対の電極間に電流を通電して前記シールド部と前記導電部材とを接合する金属接合方法であって、
前記シールド電線の外周に前記導電部材を巻き付けて、前記導電部材の前記シールド電線に巻き付けられた部分を前記一対の電極間に挟み、
前記絶縁外皮が当該絶縁外皮の融点以上に加熱され、かつ、前記絶縁内皮が当該絶縁内皮の融点を下回る温度に加熱されるように、前記一対の電極間に前記電流を通電することを特徴とする金属接合方法。
【請求項2】
導電性の芯線と、前記芯線を被覆した絶縁内皮と、前記絶縁内皮を被覆した導電性のシールド部と、前記シールド部を被覆した絶縁外皮と、を備えたシールド電線の前記シールド部と導電部材とを接合する金属接合装置であって、
前記導電部材の前記シールド電線の外周に巻き付けられた部分を互いの間に挟む一対の電極と、
前記絶縁外皮が当該絶縁外皮の融点以上に加熱され、かつ、前記絶縁内皮が当該絶縁内皮の融点を下回る温度となるように加熱されるように、前記一対の電極間に通電される電流を制御する制御手段と、を備えたことを特徴とする金属接合装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate