説明

金属材料の溶解供給方法および溶解供給装置

【課題】金属材料の溶解時間を低減して、溶解供給サイクルを短縮化させた金属材料の溶解供給方法および溶解供給装置を提供する。
【解決手段】誘導加熱により金属材料2を溶解し、溶解した金属材料2を鋳造装置4に供給する金属材料2の溶解供給方法であって、予め所定量の溶湯3を保持した溶解炉7に金属材料2を供給する金属材料供給工程S100と、金属材料供給工程S100にて溶解炉7に供給された金属材料2を誘導加熱により溶解する溶解工程S110と、溶解炉7内に溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3を供給する溶湯供給工程S120とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料の溶解供給方法および溶解供給装置の技術に関し、より詳細には、誘導加熱により金属材料を溶解し、溶解した金属材料を鋳造装置に供給する金属材料の溶解供給方法および溶解供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属材料を溶解して溶解金属とし、溶解した金属材料(溶湯)をダイカストマシンなどの鋳造装置に供給する金属材料の溶解供給方法としては、例えば、大型溶解炉を用いて、まず複数回の鋳造に必要な量の金属材料のインゴットを溶解して、大型溶解炉に多量の溶湯を保持し、次いで給湯用のラドルやポンプ等で多量の溶湯の中から一回の鋳造に必要な量を計量して供給する方法が公知となっている。
【0003】
ところで、上述した大型溶解炉を用いた溶解供給方法では、大型溶解炉内に保持する溶湯の表面積が広く熱拡散量が多いことから、熱効率が悪く、その結果、電気やガスエネルギーの使用量が多くなってランニングコストが増大するといった問題があった。また、休日や夜間等の装置停止時においても溶湯を保持していることが多く、そのため溶解炉が破損等することによる湯漏れを防止する必要があり、溶解供給装置の装置構成が複雑化し、設備コストが増大するといった問題もあった。
【0004】
かかる観点から、従来の金属材料の溶解供給方法において、鋳造ごとに一回の鋳造に必要な量の金属材料を溶解して供給する溶解供給方法が提案されている。具体的には、従来の金属材料の溶解供給方法としては、特許文献1及び特許文献2に開示されるように、鋳造装置に対して所定の位置に配置された溶解炉を高温雰囲気下でかつ不活性ガス雰囲気下におき、かかる溶解炉に必要量の金属材料を鋳造ごとに供給して誘導加熱によりこれを溶解させ、溶解炉を傾動させることで溶湯を鋳造装置に供給する方法が提案されている。
【0005】
上述した特許文献1及び特許文献2に開示された金属材料の溶解供給方法によれば、確かに、鋳造ごとに一回の鋳造に必要な量の金属材料を溶解して、一回の鋳造に必要な量の溶湯のみを供給するため、溶解炉内に保持する溶湯の量が少なくて済み、上述した大型溶解炉を用いた溶解供給方法に比べて熱効率を向上でき、また溶解供給装置を簡易に構成することが可能となる。しかしながら、かかる従来の金属材料の溶解供給方法では、溶解炉内に保持された溶湯を一回の鋳造で全て使用するものであり、鋳造ごとに溶解炉に新たな金属材料を供給して溶解炉内に溶湯を補充する必要があるため、特に、誘導加熱を用いて金属材料を溶解させる場合には、金属材料の溶解時間及び加熱容量が増大し、鋳造サイクルの短縮化が困難で運転効率に劣るといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−1397号公報
【特許文献2】特開2002−103023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明では、金属材料の溶解供給方法および溶解供給装置に関し、前記従来の課題を解決するもので、金属材料の溶解時間を低減して、溶解供給サイクルを短縮化させた金属材料の溶解供給方法および溶解供給装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
すなわち、請求項1においては、誘導加熱により金属材料を溶解し、溶解した金属材料を鋳造装置に供給する金属材料の溶解供給方法において、予め所定量の溶湯を保持した溶解炉に金属材料を供給する金属材料供給工程と、前記金属材料供給工程にて溶解炉に供給された金属材料を誘導加熱により溶解する溶解工程と、前記溶解炉内に溶湯を残存させつつ、前記鋳造装置にて一回の鋳造に必要な量の溶湯を供給する溶湯供給工程と、を有するものである。
【0010】
請求項2においては、前記金属材料供給工程は、金属材料を所定温度に加熱して前記溶解炉に供給するものである。
【0011】
請求項3においては、前記溶解炉に保持された溶湯を誘導加熱により加熱する予備加熱工程を有するものである。
【0012】
請求項4においては、前記予備加熱工程は、前記溶湯供給工程にて溶湯を供給した後に直ちに加熱を開始するものである。
【0013】
請求項5においては、誘導加熱により金属材料を溶解し、溶解した金属材料を鋳造装置に供給する金属材料の溶解供給装置において、金属材料を供給する供給装置と、前記鋳造装置にて一回の鋳造に必要な量の溶湯よりも多い溶湯を保持可能な容量に形成され、前記供給装置にて供給された金属材料を収容する溶解炉と、前記溶解炉に収容された金属材料を誘導加熱により溶解する誘導加熱装置とを具備してなり、前記溶解炉は、予め保持した所定量の溶湯と前記供給装置から供給された金属材料を溶解した溶湯とを保持した状態で、溶湯を残存させつつ、前記鋳造装置にて一回の鋳造に必要な量の溶湯を供給するように傾動されるものである。
【0014】
請求項6においては、前記供給装置は、金属材料を所定温度に加熱する加熱装置が設けられ、前記加熱装置にて金属材料を所定温度に加熱して前記溶解炉に供給するものである。
【0015】
請求項7においては、前記加熱装置は、金属材料に所定温度の熱風を吹き付けて加熱する熱風加熱装置が用いられるものである。
【0016】
請求項8においては、前記誘導加熱装置は、前記溶解炉に保持された溶湯を誘導加熱により加熱するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、金属材料の溶解時間を低減して、溶解供給サイクルを短縮化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施例に係る金属材料の溶解供給送装置の構成を示した図。
【図2】本実施例の金属材料の溶解供給送方法を示したフローチャート。
【図3】溶解供給サイクルにおける金属材料の溶解供給装置の動作を示した図。
【図4】別実施例の金属材料の溶解供給送方法を示したフローチャート。
【図5】別実施例に係る金属材料の溶解供給送装置の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、発明の実施の形態を説明する。
【0020】
まず、本実施例の金属材料2の溶解供給装置1の全体構成について、以下に概説する。
図1に示すように、本実施例の金属材料2の溶解供給装置1は、誘導加熱により金属材料2を溶解し、溶解した金属材料2(溶湯3)を鋳造装置4に供給する装置である。具体的には、本実施例の溶解供給装置1は、ハウジング5と、溶解炉7へ金属材料2を供給する供給装置6と、供給装置6にて供給された金属材料2を収容する溶解炉7と、溶解炉7に収容された金属材料2を誘導加熱により溶解する誘導加熱装置8等とで構成されており、予め所定量の溶湯3を保持した溶解炉7に金属材料2を供給してこれを溶解させ、溶解炉7内に所定量の溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3を供給するようにしたものである。
【0021】
金属材料2としては、アルミニウム合金又は亜鉛合金の他に、マグネシウム合金、銅又はそれらの合金、鉄系合金など任意の金属が選択される。金属材料2の形状は特に限定されず、主に粒状、ペレット状若しくはインゴット状に成形されたもの、又は形状や大きさの異なる異形片や鉄屑等を用いることができる。以下、本実施例の溶解供給装置1では、インゴット状の金属材料2が用いられる場合について説明している。
【0022】
鋳造装置4は、鋳造法によりダイカスト製品を得るための鋳造用金型40を備えたダイカストマシンとして構成されている。通常、このような鋳造装置4としては、溶解供給装置1から給湯口を介して供給された溶湯3を鋳造用金型40のキャビティ内に射出して充填させる射出スリーブなどが設けられており、鋳造用金型40のキャビティに充填された溶湯4が凝固することで目的とするダイカスト製品が得られる。
【0023】
ハウジング5は、壁部材50によって内部に外部空間と遮断された閉空間51が形成されるように構成されており、壁部材50の一の側面に供給装置6が連設されるとともに、閉空間51内に溶解炉7及び誘導加熱装置8が配設される。なお、壁部材50は、例えば、表面処理されたステンレスなど、金属材料2よりも高融点の高耐熱性の材料より成形される。
【0024】
ハウジング5の壁部材50の他の一側面には、外部空間と閉空間51とを連通させる供給口52が開口されており、この供給口52はシャッタ部材53により開閉可能とされている。供給口52は、溶解炉7に保持された溶湯3を鋳造装置4に供給するための開口部であって、具体的には、溶解炉7が傾動されることで供給口52を介して溶湯3が外部空間(ハウジング5外)に排出され、排出された溶湯3が供給口52の下方に配設された鋳造装置4に供給される。シャッタ部材53は、金属材料2を溶解する際には、供給口52を閉鎖するように動作されて閉空間51からの外部空気の流入が防止され、一方、溶湯3を供給する際には、供給口52を開放するように動作されて外部空間と閉空間51とが連通される。
【0025】
また、本実施例のハウジング5にはガス供給装置54が接続されており、このガス供給装置54によって閉空間51内にアルゴンガスや窒素ガス等の不活性ガスが供給されて、閉空間51内が不活性ガス雰囲気となるように構成されている。このようにガス供給装置54によって閉空間51に不活性ガスが供給されることで、溶解炉7にて保持される溶湯3の酸化が防止される。
【0026】
供給装置6は、ハウジング5内に配設された溶解炉7に金属材料2を供給するための装置であって、本実施例の供給装置6は、溶解炉7へ供給する金属材料2の供給量と温度を任意に調整することができるように構成されている。具体的には、供給装置6は、ハウジング5に連設された搬送ダクト60と、上面に金属材料2を載置して搬送する搬送コンベア61と、搬送コンベア61にて搬送される金属材料2を所定温度に加熱する加熱装置としての加熱ヒータ62等とで構成されている。
【0027】
搬送ダクト60は、断面矩形の管状に形成されており、ハウジング5の壁部材50を貫通して閉空間51内へと延出され、開口端には搬送ダクト60内を搬送された金属材料2が排出されて溶解炉7へと供給される開口端部60aが形成されている。また、搬送ダクト60の他端には金属材料2の投入口60bが開口され、投入口60bを介して金属材料2が搬送ダクト60内へ投入される。本実施例の搬送ダクト60は、開口端部60aが溶解炉7(の本体部70)の略垂直上方に位置するように形成されている。
【0028】
搬送コンベア61は、搬送ダクト60の内部空間に敷設され、上面に常時複数の金属材料2・2・・・が載置されており、かかる金属材料2が開口端部60a方向へと順次搬送されるように駆動制御される。供給装置6は、搬送コンベア61により所望の量の金属材料2が溶解炉7に供給されるように調整される。本実施例では、搬送コンベア61により供給される金属材料2の供給量は、後述する溶解供給サイクルあたり鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3に相当する量の金属材料2が溶解炉7に供給されるように調整される。ただし、かかる金属材料2の供給量は、金属材料2の種類や鋳造装置4に供給される溶湯3の量などによって変更して調整可能である。
【0029】
加熱ヒータ62は、ホットプレートやシーズヒータ等の汎用ヒータが用いられ、搬送コンベア61の下方位置に金属材料2の搬送方向に沿って敷設されている。加熱ヒータ62は、搬送コンベア61の上面に載置された金属材料2が所定温度となるように加熱制御される。このような金属材料2の加熱制御方法としては、例えば、搬送ダクト60内に設けられた図示せぬ加熱センサにより検出される搬送コンベア61上の金属材料2の温度が所定温度となるように調整されることで行われる。加熱ヒータ62により加熱される金属材料2の温度は、金属材料2が溶解しない程度の高温であって、用いられる金属材料2の種類や量にもよるが好ましくは約200℃〜400℃程度となるように調整される。
【0030】
なお、本実施例の供給装置6は、搬送ダクト60の開口端部60aに搬送ダクト60の内部空間とハウジング5の閉空間51とを遮断する図示せぬシャッタ部材が設けられており、上述したガス供給装置54によって供給される不活性ガスが搬送ダクト60を介して外部空間に漏出しないように構成されている。
【0031】
溶解炉7は、高耐熱性の素材よりなる断面U字形状の本体部70より形成され、本体部70の上面縁部には径方向に突出された注湯口71が設けられている。溶解炉7(本体部70及び注湯口71)は、セラミックスなどの絶縁性素材や、銅又は黒鉛などの導電性素材などにより成形される。本体部70では、供給装置6により供給された金属材料2が収容され、収容された金属材料2が後述する誘導加熱装置8にて溶解され、溶湯3が保持される。
【0032】
溶解炉7(の本体部70)は、少なくとも鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3よりも多い溶湯3を保持可能な容量に形成され、具体的には、予め保持される所定量の溶湯3と、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3とを合わせて保持可能な容量に形成されている。本実施例の溶解炉7では、予め所定量の溶湯3が保持され、かつ、かかる溶湯3を保持した状態で供給装置6より金属材料2が供給され、これが溶解されることで、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3が追加して保持される。この予め保持された溶湯3によって、溶解炉7に供給される金属材料2の溶解が促進される。なお、その保持量は、用いられる金属材料2の種類や量、又は鋳造装置4に供給される溶湯3の量などによって変更される。
【0033】
また、溶解炉7は、ハウジング5内において、図示せぬ傾動機構によって本体部70が傾動されてハウジング5に設けられた供給口52を介して注湯口71から溶湯3を排出可能となるように取り付けられている。この傾動機構の構成としては特に限定されないが、一例として、溶解炉7を傾動自在に支持する傾動軸部や傾動軸部を回転駆動させる図示せぬサーボモータ等より構成することができる。
【0034】
溶解炉7の傾動動作について説明すると、まず、本体部70が上方に向けて開口された基準位置P1で溶解炉7が停止された状態で、供給装置6により供給された金属材料2が収容され、後述する誘導加熱装置8により金属材料2が誘導加熱により溶解され、溶湯3が保持される。一方、図示せぬ傾動機構により基準位置P1から傾動操作されて、注湯口71がハウジング5の供給口52から外部空間に突出された溶湯供給位置P2で溶解炉7が停止された状態で、保持された溶湯3が注湯口71から鋳造装置4へと供給される。
【0035】
このとき、本実施例の溶解炉7は、溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3を供給するように基準位置P1から溶湯供給位置P2に傾動される。換言すると、溶解炉7は、保持された全ての溶湯3の中から、溶解炉7内に溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3のみを供給するように傾動操作されるの。このような溶解炉7における溶湯3の供給量(残存量)の制御方法としては、例えば、図示せぬ傾動機構において溶解炉7の傾動角を検出する角度センサ等を別途設け、かかる角度センサにより検出される傾動角に基づいて溶解炉7から排出される溶湯3の量(又は溶解炉7に残存される溶湯3の量)が制御されることにより行われる。なお、溶湯3の残存量は、用いられる金属材料2の種類や量、又は鋳造装置4に供給される溶湯3の量などによって変更される。
【0036】
誘導加熱装置8は、誘導加熱コイル80と、誘導加熱コイル80に接続された高周波電源81等とより構成されている。誘導加熱コイル80は、ハウジング5内にて溶解炉7の本体部70の外周面に沿うように螺旋状に配設される。本実施例の誘導加熱コイル80は、内部中空の管材より形成されて、かかる内部中空に冷却水が供給されるとともに、外周面にはセラミックス等の絶縁性素材が被覆されている。
【0037】
誘導加熱装置8により溶解炉7に保持された金属材料2を溶解させる際には、高周波電源81から交流の高周波電流を誘導加熱コイル80に供給して、誘導加熱コイル80に交番磁束を発生させる。この交番磁束は金属材料2にうず電流を誘起させるため、金属材料2に発生したうず電流による抵抗発熱と誘導加熱コイル80からの交番磁束によるヒステリシス損から生じる発熱によって、金属材料2が加熱される。このようにして金属材料2が溶解温度にまで加熱されることで、金属材料2が溶解される。
【0038】
誘導加熱装置8は、誘導加熱により溶解炉7に供給された金属材料2を溶解させるだけでなく、溶解炉7に保持された溶湯3を誘導加熱により加熱して溶湯3の温度制御が可能なように構成されている。このような誘導加熱装置8による加熱制御方法としては、例えば、ハウジング5内に設けられた図示せぬ温度センサにより検出される溶解炉7内の溶湯3の温度が所定温度となるように高周波電源81から出力される電流周波数が制御されて、誘導加熱コイル80による加熱状態が制御されることにより行われる。特に、本実施例では、溶解炉7に溶湯3が常時保持されるため、誘導加熱装置8によりかかる溶湯3が所望の設定温度となるように温度制御される。
【0039】
次に、本実施例の溶解供給装置1を用いた金属材料2の溶解供給方法について、以下に説明する。なお、本実施例では、金属材料2を溶解して鋳造装置4に溶湯3を供給するまでのサイクル(以下、溶解供給サイクルという)について説明する。
【0040】
図2及び図3に示すように、本実施例の金属材料2の溶解供給方法は、誘導加熱により金属材料2を溶解し、溶解した金属材料2を鋳造装置4に供給する金属材料2の溶解供給方法であって、予め所定量の溶湯3を保持した溶解炉7に金属材料2を供給する金属材料供給工程S100と、金属材料供給工程S100にて溶解炉7に供給された金属材料2を誘導加熱により溶解する溶解工程S110と、溶解炉7内に溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3を供給する溶湯供給工程S120と、を有するものである。
【0041】
ここで、溶解炉7に予め保持される溶湯3を保持用溶湯3aといい、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3を供給用溶湯3bといい、保持用溶湯3aと供給用溶湯3bとを合わせた溶湯3を全溶湯3cという(図3参照)。
【0042】
まず、金属材料供給工程S100では、供給装置6にて金属材料2が溶解炉7に供給される。ハウジング5内は、ガス供給装置54にて供給された不活性ガス雰囲気に調整されている。溶解炉7は、基準位置P1にて停止されており、予め保持用溶湯3aが保持されている(図3(a)参照)。このとき、溶解炉7に保持された保持用溶湯3aは、誘導加熱装置8による誘導加熱により加熱されて所定温度に調整されている(予備加熱工程)。
【0043】
供給装置6では、加熱ヒータ62にて金属材料2が加熱されて所定温度に調整され、かかる加熱状態の金属材料2が搬送コンベア61にて搬送ダクト60内を搬送される。そして、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3に相当する量の金属材料2が開口端部60aより排出されて、溶解炉7の本体部70に収容される(図3(b)参照)。
【0044】
次いで、溶解工程S110では、誘導加熱装置8により高周波電源81が制御されることで誘導加熱コイル80により加熱状態が変更されて、金属材料2の溶解温度にまで加熱さて溶解炉7に供給された金属材料2が溶解される。このようにして、溶解炉7には、保持用溶湯3aと鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の供給用溶湯3bとを合わせた全溶湯3aが保持される(図3(c)参照)。
【0045】
そして、溶湯供給工程S120では、ハウジング5のシャッタ部材53が操作されて開口部52が開口された状態で、溶解炉7が基準位置P1から溶湯供給位置P2へと傾動操作されることで、溶解炉7に保持された全溶湯3cの中から、保持用溶湯3aと同じ量の溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3すなわち供給用溶湯3bが注湯口71から鋳造装置4へと供給される(図3(d)参照)。そして、鋳造装置4への溶湯3の供給が完了すると、溶解炉7は再び傾動操作されて溶湯供給位置P2から基準位置P1へと戻される。
【0046】
そして、本実施例では、上述した溶解供給サイクルが連続して繰り返し行われることで、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3が鋳造装置4に連続して供給される。
【0047】
以上のように、本実施例の金属材料2の溶解供給方法は、誘導加熱により金属材料2を溶解し、溶解した金属材料2を鋳造装置4に供給する金属材料2の溶解供給方法であって、予め所定量の溶湯3を保持した溶解炉7に金属材料2を供給する金属材料供給工程S100と、金属材料供給工程S100にて溶解炉7に供給された金属材料2を誘導加熱により溶解する溶解工程S110と、溶解炉7内に溶湯3を残存させつつ、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3を供給する溶湯供給工程S120とを有するため、金属材料の溶解時間を低減して、溶解供給サイクルを短縮化させることができるのである。
【0048】
すなわち、本実施例の溶解供給方法によれば、予め所定量の溶湯3を保持した溶解炉7に金属材料2を供給し、かかる状態で金属材料2を溶解させるものであるため、金属材料2を溶解させる際の熱効率が高く金属材料2の溶解時間を低減でき、誘導加熱時の電気エネルギーの使用量を低減できる。
また、本実施例の溶解供給方法では、溶解炉7内に保持された溶湯3を一回の鋳造で全て使用するのではなく、溶解炉7に溶湯3を残存させるものであるため、鋳造ごとに溶解炉7に新たな金属材料2を供給して溶湯3を補充する際であっても、溶解炉7に保持された溶湯3に新たな金属材料2を供給すればよいことから、上述したような金属材料2の溶解時間が低減される効果と相まって、ひいては溶解供給サイクルを短縮化することができ、このような溶解供給サイクルが連続されることで溶解供給装置1の運転効率を飛躍的に向上できる。
さらに、本実施例の溶解供給方法では、予め保持された溶湯3に追加して金属材料2が溶解されるため、鋳造装置4に供給される溶湯3の量や温度のバラつきが抑制されて、鋳造品質を向上させることができる。
【0049】
特に、本実施例の溶解供給方法では、金属材料供給工程S100において金属材料2を所定温度に加熱して溶解炉7に供給するものであるため、溶解炉7に供給する金属材料を予め加熱して供給することで、溶解炉7での金属材料2の溶解時間をより低減できるのである。
【0050】
以上、本実施例の金属材料2の溶解供給方法および溶解供給装置1の構成としては、上述した実施例に限定されず、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0051】
すなわち、上述した実施例の溶解供給方法においては、予め所定量の溶湯3が保持された溶解炉7に金属材料2を供給する際には、溶解炉7に保持された溶湯3を誘導加熱により加熱して所定温度に調整する予備加熱工程を有するのが好ましい。このように溶解炉7に保持された溶湯3を温度制御しておくことで、金属材料2の溶解時間をより効果的に低減することができる。
【0052】
特に、図4に示すように、溶解供給サイクルが連続して繰り返し行われる場合には、溶湯供給工程S120から金属材料供給工程S100に戻って溶解供給サイクルが繰り返される際に、予備加熱工程S130として、溶湯供給工程S120にて鋳造装置4に溶湯3が供給された後直ちに、溶解炉7に残存された溶湯3を誘導加熱により金属材料2の溶解温度にまで加熱しておくのが好ましい。このように、溶湯供給工程S120にて溶湯を供給した後に直ちに加熱を開始することで、溶解工程S110における金属材料2の溶解時間をより低減することができる。
【0053】
また、本実施例の溶解供給方法においては、少なくとも溶湯供給工程S120で鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な量の溶湯3が供給可能であればよく、溶解炉7に予め保持される溶湯3の量(保持量)、溶湯供給工程S120にて溶解炉7に残存される溶湯3の量(残存量)、及び金属材料供給工程S100にて供給される金属材料2の供給量をそれぞれ任意の量に変更することができる。鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な溶湯3の量が鋳造ごとに異なる場合も想定されるからである。つまり、上述した実施例の溶解供給方法では、溶解炉7における溶湯3の保持量及び残存量が等しくなる場合について説明したが(図3参照)、かかる溶湯3の保持量と残存量とが異なるように調整されてもよい。また、供給装置6による金属材料2の供給量も、鋳造装置4にて一回の鋳造に必要な溶湯3の量と異なるように調整されてもよい。
【0054】
なお、上述した実施例の溶解供給装置1では、鋳造装置4として射出スリーブを介して鋳造用金型40のキャビティ内に溶湯3を供給する構成とされているが、鋳造装置4の構成及び鋳造装置4への供給プロセスはこれに限定されず、例えば、溶解炉7に保持された溶湯3を一旦取り鍋に給湯し、かかる取り鍋を介して鋳造用金型40のキャビティ内に溶湯3を供給するように構成してもよい。
【0055】
また、上述した実施例の溶解供給装置1では、インゴット状の金属材料2を供給する供給装置6の構成について説明したが、かかる供給装置6の構成はこれに限定されず、例えば、粒状の金属材料2が用いられる場合には、金属材料2を保持したホッパ装置により金属材料2を溶解炉7に自重落下させて供給するように構成してもよい。
【0056】
特に、図5に示すように、金属材料2として形状や大きさの異なる異形片や鉄屑等が用いられる場合には、供給装置106に設けられる加熱装置としては、上述した実施例(図1参照)の加熱ヒータ62のように輻射加熱により金属材料2を加熱する構成と異なり、搬送コンベア161にて搬送される金属材料2を熱風により所定温度に加熱する熱風加熱装置162が設けられるのが好ましい。熱風加熱装置162としては、搬送コンベア161上の金属材料2に対して上下方向又は水平方向から所定温度の熱風を吹き付けるように構成される。図5に示す実施例では、熱風加熱装置162が搬送コンベア161の下方に配置され、搬送コンベア161の下方から上方に向けて金属材料2に熱風を吹き付けて加熱するように構成されている。このように、加熱装置として熱風加熱装置162を用いることにより、形状や大きさの異なる金属材料2であっても効率よく加熱することができる。なお、搬送コンベア161の上下方向から熱風を吹き付けるように構成される場合には、搬送コンベア161としては搬送面がメッシュ状に形成されたコンベアが用いられる。
【符号の説明】
【0057】
1 溶解供給装置
2 金属材料
3 溶湯
4 鋳造装置
5 ハウジング
6 供給装置
7 溶解炉
8 誘導加熱装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導加熱により金属材料を溶解し、溶解した金属材料を鋳造装置に供給する金属材料の溶解供給方法において、
予め所定量の溶湯を保持した溶解炉に金属材料を供給する金属材料供給工程と、
前記金属材料供給工程にて溶解炉に供給された金属材料を誘導加熱により溶解する溶解工程と、
前記溶解炉内に溶湯を残存させつつ、前記鋳造装置にて一回の鋳造に必要な量の溶湯を供給する溶湯供給工程と、
を有することを特徴とする金属材料の溶解供給方法。
【請求項2】
前記金属材料供給工程は、金属材料を所定温度に加熱して前記溶解炉に供給することを特徴とする請求項1に記載の金属材料の溶解供給方法。
【請求項3】
前記溶解炉に保持された溶湯を誘導加熱により加熱する予備加熱工程を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の金属材料の溶解供給方法。
【請求項4】
前記予備加熱工程は、前記溶湯供給工程にて溶湯を供給した後に直ちに加熱を開始することを特徴とする請求項3に記載の金属材料の溶解供給方法。
【請求項5】
誘導加熱により金属材料を溶解し、溶解した金属材料を鋳造装置に供給する金属材料の溶解供給装置において、
金属材料を供給する供給装置と、
前記鋳造装置にて一回の鋳造に必要な量の溶湯よりも多い溶湯を保持可能な容量に形成され、前記供給装置にて供給された金属材料を収容する溶解炉と、
前記溶解炉に収容された金属材料を誘導加熱により溶解する誘導加熱装置とを具備してなり、
前記溶解炉は、予め保持した所定量の溶湯と前記供給装置から供給された金属材料を溶解した溶湯とを保持した状態で、溶湯を残存させつつ、前記鋳造装置にて一回の鋳造に必要な量の溶湯を供給するように傾動されることを特徴とした金属材料の溶解供給装置。
【請求項6】
前記供給装置は、
金属材料を所定温度に加熱する加熱装置が設けられ、
前記加熱装置にて金属材料を所定温度に加熱して前記溶解炉に供給することを特徴とする請求項5に記載の金属材料の溶解供給装置。
【請求項7】
前記加熱装置は、金属材料に所定温度の熱風を吹き付けて加熱する熱風加熱装置が用いられることを特徴とする請求項6に記載の金属材料の溶解供給装置。
【請求項8】
前記誘導加熱装置は、前記溶解炉に保持された溶湯を誘導加熱により加熱することを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の金属材料の溶解供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−143444(P2011−143444A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5940(P2010−5940)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(594020248)株式会社幸和電熱計器 (11)
【Fターム(参考)】