説明

金属板の成形装置

【課題】種々の曲げ角度に対応することが容易であり、特にブラインドコーナー部曲げを容易に行うことができ金属板の成形装置を提供する。
【解決手段】金属帯板2を、タンデムに配置された複数の成形スタンド3に設けた成形シュー10を通過させて折り曲げ成形する金属板の成形装置である。各成形スタンド3の成形シュー10は、金属帯板をその曲げ位置より帯板エッジ側部分を除いて受ける凸型8と、金属帯板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝11を備えた角度可変凹型9とからなる。角度可変凹型9は回転支軸13を中心として回転して所望の傾斜角度αに角度設定可能である。少なくとも折り曲げの最終段階又は最終に近い段階の成形スタンドにおける成形シュー10は、凸型8の帯板エッジ側端部が金属帯板を角度可変凹型9の逆V溝11内に押し込む態様で折り曲げを行うようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形シューを用いて主として金属帯板を折り曲げ成形する金属板の成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属帯板を、タンデムに配置した複数の成形スタンドを通過させて所望の断面形状に成形する成形装置として、ロール成形装置が一般的である。
ロール成形装置は、各成形スタンドが上下1対の成形ロールを備えており、金属帯板を、上下ロール間の隙間として形成された成形孔形を通過させて、所望の断面形状に成形するものである。
【0003】
また、主として薄板成形用として採用されるものであるが、回転するロールではなく成形スタンドに設けた静止の成形シュー(成形金型)で金属帯板を成形するいわゆるシュー成形法がある。
【0004】
例えば、図18に示した特許文献1の成形装置81は、成形シューとして、単なる平板82aに、成形すべき断面形状に対応する成形孔(成形口)82bをあけた成形シュー82を用いるものであり、各成形スタンド83の成形シュー82における成形孔82bは順次、最終的な断面形状に近づいていく。
金属帯板2は、それぞれの成形シュー82の成形孔82bを通過することで、その成形孔82bの形状に成形されて、最終的な断面形状に成形される。シュー成形法は特に、ロール成形では困難が伴うブラインドコーナー部(90°を越える曲げコーナー部)の曲げに適用して好適である。
なお、ロール成形装置の場合は、金属帯板を挟んで回転する上下ロールが金属帯板を送り駆動するが、シュー成形装置では金属帯板を送り駆動する駆動手段を別に設ける。
【0005】
また、図19に示した特許文献2の成形装置91は、造管装置(電縫管製造装置)の場合であるが、予備曲げロール92の次に、湾曲形からU字形までの成形を行うための、下側の受けブロック93及び左右1対の当て板(U字形成形あて板)94を設け、その次に、U字形からC字形までの成形を行うための、下側の受けブロック95及び一対の当て板(C字形成形あて板)96を設け、予備曲げされた金属帯板2が金属帯板2の左右両側に配置された左右の当て板94、94又は96、96の間を通る間に、横断面U字形からC字形に漸次丸め成形されるようにした構成である。97は溶接トーチである。
【特許文献1】特開2005−46876
【特許文献2】特開平10−137842
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の成形装置81は、板材に孔(成形孔82b)をあけて成形シュー82を構成するものであるから、専用の成形シューを用いる必要があり、種々の断面形状に対応すること、特に種々の曲げ角度に対応することがきない。
【0007】
特許文献2の成形装置91は、造管装置の場合であり、金属帯板を湾曲させる成形のみであるから、受けブロック93、95と成形当て板94、96とによるだけのシュー成形も可能となるが、溝形断面等のように折り曲げが必要となる成形には適用困難である。
【0008】
本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、シュー成形法による成形装置であって、種々の曲げ角度に対応することが容易であり、特にブラインドコーナー部曲げを容易に行うことができ金属板の成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明は、金属帯板を、タンデムに配置された複数の成形スタンドに設けた静止の成形シューを通過させて折り曲げ成形する金属板の成形装置であって、
各成形スタンドの成形シューは、
金属帯板をその曲げ位置より帯板エッジ側部分を除いて受ける凸型と、
金属帯板の曲げ位置より帯板エッジ側における曲げ位置近傍の金属帯板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の帯板エッジ側の端部近傍における金属帯板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転して所望の傾斜角度αに角度設定可能な角度可変凹型とを備え、
少なくとも折り曲げの最終段階又は最終に近い段階の成形スタンドにおける成形シューは、凸型の帯板エッジ側端部が金属帯板を角度可変凹型の逆V溝内に押し込む態様で折り曲げを行うようになっていることを特徴とする。
【0010】
請求項2は、請求項1の成形装置における凸型が、帯板エッジ側が薄型縦断面形状又は鋭角断面形状をなしていることを特徴とする。
【0011】
請求項3は、請求項1又は2の成形装置において、折り曲げ角度が小さい段階の成形スタンドにおける角度可変凹型が、金属帯板のエッジを受け止めるストッパ面を有することを特徴とする。
【0012】
請求項4は、請求項1〜3のいずれかの成形装置における角度可変凹型が、その逆V溝の回転支軸側の肩部の近傍が金属帯板を凸型側に押し付けるような輪郭を有することを特徴とする。
【0013】
請求項5は、請求項3又は4の成形装置における角度可変凹型が、ストッパ面と逆V溝との間に、ストッパ面とともに横向きL字形をなす平坦面部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項6は、請求項1〜5のいずれかの成形装置において、各成形スタンドの成形シューが概ね同じ形状であり、各成形スタンドにおける角度可変凹型の傾斜角度αを調節するのみで、通過する金属帯板が所望の断面形状に成形されるようになっていることを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、金属帯板を、タンデムに配置された複数の成形スタンドを通過させて折り曲げ成形する金属板の成形装置であって、
前記複数の成形スタンドは回転する成形ロールによる成形スタンドと静止の成形シューによる成形スタンドとからなり、
前記成形シューは、
金属帯板をその曲げ位置より帯板エッジ側部分を除いて受ける凸型と、
金属帯板の曲げ位置より帯板エッジ側における曲げ位置近傍の金属帯板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の帯板エッジ側の端部近傍における金属帯板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転して所望の傾斜角度αに角度設定可能な角度可変凹型とを備えた構成であり、
かつ、少なくとも一部の成形シューは、凸型の帯板エッジ側端部が金属帯板を角度可変凹型の逆V溝内に押し込む態様で折り曲げを行うようになっていることを特徴とする。
【0016】
請求項8は、請求項1〜7のいずれかの金属板の成形装置において、曲げ加工対象の金属板として、金属帯板に代えて切り板を用いることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1の発明において、金属帯板は、各成形スタンドにおいて、成形シューの凸型と角度可変凹型の逆V溝との間を通過するが、その際、凸型の先端部で逆V溝内に押込まれる態様で通過することで、角度可変凹型の設定傾斜角度αに対応した曲げ角度に折り曲げられる。
この曲げ成形は、凸型の先端部で金属帯板を逆V溝内に押し込んで折り曲げる曲げ成形なので、凸型の先端部の角度を90°より小さくすることで、90°を越えて折り曲げる曲げ(即ちブラインド曲げ)を容易に行うことができる。
凸型の先端部で金属帯板を逆V溝内に押し込んで折り曲げるこの曲げ成形は、曲げ作用がコーナー部に集中する曲げ成形なので、上記のように単にブラインド曲げが可能というだけでなく、金属帯板の曲げ部内角がかなり鋭角となる曲げ成形も可能となる。
また、単に曲げ位置を折り曲げるだけの曲げ成形でなく、凸型の先端部で金属帯板を逆V溝内に押し込んで折り曲げる曲げ成形であるから、1つの成形シューにおける成形量を大きく設定することができる。したがって、成形スタンドの段数を少なくすることが可能であり、成形設備全体をコンパクトにすることが可能である。
【0018】
各成形スタンドにおける角度可変凹型は、回転支軸を中心として下方に回転して傾斜角度αに自由に設定可能なので、必ずしも曲げ角度を厳格に決定することを要しない中間の成形スタンドでは、概ね無段階の任意の曲げ角度に曲げることができる。
【0019】
金属帯板の曲げ加工の特に初期段階の成形スタンドにおける成形シューでは、請求項3のように、角度可変凹型に金属帯板の先端を受け止めるストッパ面を設けることが、金属帯板が逆V溝内に押し込まれる作用を生じさせるために適切である。
【0020】
請求項4によれば、角度可変凹型が、その逆V溝の回転支軸側の肩部の近傍が金属帯板を凸型側に押し付けるような輪郭を有するので、金属帯板が浮き上がることなく逆V溝に押し込まれる変形が円滑に行なわれる。
【0021】
請求項5のように、金属帯板の曲げ加工の初期段階の成形スタンドにおける成形シューでは、角度可変凹型のストッパ面と逆V溝との間に、ストッパ面とともに横向きL字形をなす平坦面部を有すると、特に曲げの初期段階の成形シューの場合に、平坦面部が金属帯板を当該成形シューへ誘い込む作用を果たすことができるので、金属帯板の曲げ加工が円滑に行なわれる。
【0022】
請求項6のように、各成形スタンドにおける成形シューの角度可変凹型及び凸型の形状を同一にしても、各成形スタンドにおける角度可変凹型の傾斜角度αを各成形スタンド毎に所定の角度に設定することで、中間の成形スタンドでは最終形状に向けた途中段階の曲げ角度に折り曲げることができ、最終成形スタンドによって金属帯板を所望の断面形状に成形できる。
この構成によれば、成形シュー自体が簡単な構造であること、及び、各成形スタンドに共通の成形型(成形シュー)を用いることができることで、極めて簡単な構造の成形装置を実現できる。また、装置を著しく安価に製作できる。
【0023】
請求項7の金属板の成形装置のように、
成形スタンドとして、回転する成形ロールによる成形スタンドと静止の成形シューによる成形スタンドとを混在させる構成とすれば、金属帯板を凸型の先端部で逆V溝内に押し込む作用で曲げ成形をする極めて構造が簡単で安価な成形シューの特長と、構造が簡単ではなく高価であるが断面形状を精度よく決定し易い成形ロールの特長とが共に活かされて、全体として構造が簡単かつ安価でしかも精度の高い成形が可能な金属板の成形装置を実現できる。
この成形装置は、例えば単なる溝形断面のように、ブラインド曲げのない断面形状を行う場合に特に有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の金属板の成形装置の実施例を図1〜図17を参照して説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の一実施例の金属板の成形装置1の概略正面図、図2は同概略平面図である。これらの図において、2は金属帯板、3は成形スタンドを示す。図3は成形スタンド3の縦断面(図2のA−A断面図)、図4は成形スタンド3の水平断面図(図3のB−B断面図)である。図5は図3の要部の拡大図、図6は図4の要部の拡大図である。
この実施例では、4つの成形スタンド3がタンデムに配置され、その上流側及び下流側にそれぞれ送り駆動のための駆動スタンド4、5が配置されている。4つの成形スタンド3のそれぞれを、上流側から順に第1成形スタンド3A、第2成形スタンド3B、第3成形スタンド3C、第4成形スタンド3Dと呼ぶ。
上流側の駆動スタンド4はいずれも駆動される上下一対の円筒状ロールからなるピンチロール6を備え、その出側に金属帯板2の両エッジを案内するガイドロール7が設けられている。金属帯板2はコイル状に巻かれた帯板コイルから繰り出される。
【0026】
各成形スタンド3はいずれも、凸型8と角度可変凹型9とからなる静止の成形シュー10を備えている。第1成形スタンド3Aの成形シューを第1成形シュー10A、第2成形スタンド3Bの成形シューを第2成形シュー10B、第3成形スタンド3Cの成形シューを第3成形シュー10C、第4成形スタンド3Dの成形シューを第4成形シュー10Dと呼ぶ。
凸型8は金属帯板2の曲げ位置(曲げ予定位置)Qより板幅エッジ側(図5では左側)部分を除いて受ける受け面8aを持つ。凸型8の先端側は、各成形スタンド3において、金属帯板2の折り曲げた先の部分が凸型8の裏面に当たらない断面形状である必要がある。実施例は金属帯板2を90°を超えて曲げる場合なので、凸型8の先端側は薄形縦断面形状又は鋭角縦断面形状である。
【0027】
前記角度可変凹型9は、金属帯板2の曲げ位置Qより帯板エッジ側における曲げ位置近傍の金属帯板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝11を備えている。また、前記凸型8の帯板エッジ側の端部近傍における金属帯板を挟んで凸型8と反対側(すなわち図3、図5で金属帯板2の上方)に位置する回転支軸13を中心として回転して所望の傾斜角度α(図7参照)に角度設定可能である。なお、図3、図5では角度可変凹型の傾斜角度αが0°の状態で示している。
また、角度可変凹型9は、逆V溝11の帯板エッジ側の肩部11aのさらに帯板エッジ側(図5でさらに左側)にストッパ面12を備えている。ストッパ面12は、曲げ成形の初期段階において金属帯板2のエッジを受けとめる作用をする。
ストッパ面12と逆V溝11との間に、ストッパ面12とともに横向きL字形をなす平坦面部14を有している。
前記逆V溝11の回転支軸13側の肩部11bは、凸型8の先端部近傍にあり、角度可変凹型9は、その傾斜角度αがそれほど大でない時は、回転支軸側肩部11bの近傍が金属帯板2を凸型8側に押し付けるような輪郭とされている(後述の図7(イ)〜(ハ)参照)。
【0028】
本発明の成形装置における、少なくとも折り曲げの最終段階又は最終に近い段階の成形スタンドにおける成形シューでは、凸型の帯板エッジ側端部が金属帯板を角度可変凹型の逆V溝内に押し込む態様で折り曲げが行われる。すなわち、例えば最終成形スタンドを示す図7(ニ)のように、角度可変凹型9を回転支軸13を中心として回転させてその傾斜角度αを例えば最終成形スタンドにおける傾斜角度αに調節した時、凸型8の先端部が角度可変凹型9の逆V溝11内の奥に深く入り込むような相互形状関係かつ相対位置関係にある。
【0029】
実施例では、各成形スタンド3の成形シュー10として、すべて同じ形状のものを用いており、図7(イ)〜(ニ)に示すように、成形スタンド3毎に角度可変凹型9の傾斜角度αを変えている(図示のように角度可変凹型9の傾斜角度αを順に大きくしている)。
【0030】
本発明において金属帯板2が成形スタンド3の成形シュー10を通過して曲げ成形が進行する際の金属帯板2の変形の仕方は、少なくとも曲げがある程度進行した段階では、単に曲げ位置を折り曲げる単なる曲げでなく、金属帯板2が角度可変凹型9の逆V溝11の内面と摩擦しながら逆V溝11内に入り込んで変形するものなので、主として薄板金属板が加工対象となる。
したがって、逆V溝11の内面との摩擦により金属帯板2に傷が生じる恐れがある場合は、角度可変凹型9の材質を例えばMCナイロンその他の硬質のプラスチックとするのが適切である。
【0031】
この実施例は、図2の右端側に示した成形材2’のように、溝形断面形状の両フランジ2a’が90°を越えて折り曲げられた内側傾斜溝形断面を形成する場合のもので、前述の成形シュー10が左右対称に設けられている。
【0032】
成形シュー10の前記回転支軸13は、図示は省略するが例えばキー結合やスプライン結合等により角度可変凹型9と一体結合している。
この回転支軸13は、装置フレーム16に軸受け15で回転可能に支持されるとともに、このフレーム16の側面外側に設置した駆動機構18により回転駆動されるようになっている。すなわち回転支軸13の上記フレーム16の側面の外側に位置した端部にウォームホイル19が固定され、このウォームホイル19と噛み合うウォーム20がフレーム16に設置した駆動モータ21により回転駆動される駆動軸22に固定されている。駆動軸22は、フレーム16に固定した軸受け23で回転可能に支持されている。
なお、この実施例では、駆動機構18を装置フレーム16の外側の側面に配置しているが、装置フレーム16の内部の天井面に設置することも可能であり、その他適宜設計変更することができる。
【0033】
下流側の駆動スタンド5は、図9に示すように、両側にフランジロール25a’を持つ上側駆動ロール25aと、この上側駆動ロール25aとで成形材2’の水平部を狭持する円筒状の下側駆動ロール25bとからなる駆動ロール25を備えている。上側駆動ロール25aのフランジロール25a’は成形材2’のガイドとなる。上下の駆動ロール25a、25bを駆動する駆動シャフト26a、26bの駆動源は省略する。
【0034】
上記成形装置1による金属帯板の曲げ成形状況を説明する。
金属帯板2は入側の駆動スタンド4のピンチロール6で駆動されて、成形ゾーン(成形スタンド3の領域)に入る。
図7は第1〜第4の四つの成形スタンド3A〜3Dのそれぞれ第1〜第4の各成形シュー10A〜10Dにおける角度可変凹型9の傾斜状態(傾斜角度α)及び、その成形シュー10において金属帯板2が曲げ加工される態様を説明するのものである。
送り駆動された金属帯板2は第1成形スタンド3Aの成形シュー(第1成形シュー)10Aに入り、その第1成形シュー10Aを通過する際、図7(イ)のように、傾斜した角度可変凹型9で折り曲げられると同時に、金属帯板2のエッジが角度可変凹型9のストッパ面12にあたることで、金属帯板2の凸型先端部近傍部分が上に凸に湾曲して逆V溝11内に部分的に入り込み、逆V溝11の回転軸側肩部11bの近傍になじむ。
この第1成形シュー10Aにおいて金属帯板2は概ね、第1成形シュー10Aの入側(図6の下側)では角度可変凹型9の平坦面部14に接触して導入され、出側(図6の上側)では平坦面部14から離れ肩部11aに当たる態様で出て行く。
続いて、金属帯板2は第2成形スタンド3Bの成形シュー(第2成形シュー)10Bを通過するが、その際、第1成形シュー10Aで湾曲した部分が、図7(ロ)のように逆V溝11内にさらに深く入り込み、さらに深く曲げられる。
続いて第3成形スタンド3Cの成形シュー(第3成形シュー)10Cを通過するが、その際、第2成形シュー10Bで湾曲した部分が、図7(ハ)のように逆V溝11内にさらに深く入り込み、さらに深く曲げられる。
続いて第4成形スタンド3Dの成形シュー(第4成形シュー)10Dを通過するが、その際、第3成形シュー10Cで湾曲した部分が、逆V溝11内にさらに深く入り込むと同時に、図7(ニ)のように凸型8の先端部が金属帯板2の湾曲部を逆V溝11の奥端側に深く押し込むので、概ね角度β、すなわち逆V溝11の下側内面11cと凸型の受け面8aとのなす角度βに曲げられる。このように最終段階で凸型8の先端部が金属帯板2の湾曲部分を逆V溝11の奥端に押し込むことで、シャープな曲げ成形が行われる。
上記の曲げ成形において、角度可変凹型9がその逆V溝11の回転支軸13側の肩部11bの近傍で金属帯板2を凸型8側に押し付けるような輪郭を有することで、金属帯板2が浮き上がることなく逆V溝に押し込まれる変形が円滑に行なわれる。
曲げ最終段階の成形シュー10(図7(ニ))における角度可変凹型9の逆V溝11の溝角度βを、図8に示すように水平方向に対する下側内面11cの角度βと水平方向に対する上側内面11dの角度βとに分けた場合、金属帯板2の最終的な曲げ部内角は前記の通り概ね角度βとなる。このように、逆V溝11の下側内面11cの角度βが概ね最終的な曲げ部内角に関与する。
一方、逆V溝11の上側内面11dは、例えば図7(ニ)のように金属帯板2の最終的な曲げ部内角に必ずしも関与しない。したがって、逆V溝11の上側内面11dの角度βは厳格に設定しなくてもよい。但し、例えば図7(ニ)のように下側内面11dで金属帯板2を凸型8側に押し付けるようにする場合は、それに応じた適切な角度βとする。
続いて、出側の駆動スタンド5に入りその駆動ロール25により駆動されて送り出される。
なお、最初に金属帯板2の先端部を成形スタンド3に導入する際には、何らかの補助作業により、金属帯板2の先端部がそれぞれの成形スタンド3の成形シュー10を通過するように適宜案内する。そして、金属帯板2が出側の駆動スタンド5の駆動ロール25まで達した後は、その駆動ロール25による連続的な送り駆動が可能になるので、各成形スタンド3の成形シュー10による連続的な成形が行われる。
【0035】
上述の実施例では、各成形スタンドにおける成形シューとして共通の成形シュー10を用い、各成形スタンド毎に角度可変凹型9の傾斜角度αを変える構成としたが、各成形スタンド毎に異なる成形シューを設置してもよい。
この場合、各成形スタンドについて凸型は同じとし、角度可変凹型の形状や回転支軸の位置等を変えることができる。角度可変凹型の形状を変える場合、各成形スタンドに応じて逆V溝の溝角度を変える変更、逆V溝の位置の変更などが考えられる。また、金属帯板2の曲げ角度が進行した段階(例えば図7の(ロ)〜(ニ))では、ストッパ面は不要である。
【実施例2】
【0036】
図10、図11に角度可変凹型9の傾斜角度αを調整をするための駆動機構の他の実施例を示す。
この実施例の駆動機構28は、角度可変凹型9に、回転支軸13を中心とする円弧状の垂直な円弧状ウォームホイール30を固定し、この円弧状ウォームホイール30と噛み合うウォーム31を垂直な駆動軸32に固定し、この垂直な駆動軸32を装置フレーム40の天板部40aの外側に突出させてその上端に傘歯車33aを固定し、この傘歯車33aと噛み合う傘歯車33bを駆動する駆動モータ34を装置フレーム40の天板部40aの外面に設置した構成である。
駆動モータ34を駆動し傘歯車33b、33aを介して駆動軸32を回転させ、これと一体のウオーム31により円弧状ウォームホイ−ル30を所定の角度だけ回転させることで、これと一体の角度可変凹型9を所定の傾斜角度αに設定することができる。
【実施例3】
【0037】
図12〜図16に他の実施例の金属板の成形装置51を示す。この成形装置51は、金属帯板42を図13に示した鳩尾状の断面形状に曲げ成形するもので、左右両側に第1の曲げ位置Q及び第2の曲げ位置Qの2箇所の曲げ位置をそれぞれに持つ断面形状に成形する成形装置である。
図12は成形装置51の概略の平面図である。図示例では8つの成形スタンド53を備え、各成形スタンド53はそれぞれ両側(図12で上下両側、図14で左右両側)に左右対称の成形シュー60(又は70)を備えている。
第1〜4の成形スタンド53A〜53Dの成形シュー60A〜60Dで図13の第1曲げ位置Qの曲げ成形を行い、第5〜8の成形スタンド53E〜53Hの成形シュー70E〜70Hで第2曲げ位置Qの曲げ成形を行う。
第1曲げ位置Qの曲げ成形を行う第1〜4の成形シュー60A〜60Dは、前述した図1〜図7で説明した第1〜4の成形シュー10A〜10Dと基本的には同様な構成である。
第2曲げ位置Qの曲げ成形を行う第5〜8の成形シュー70E〜70Hは、金属帯板42の水平な部分の折り曲げでなく傾斜した部分の折り曲げ成形を行うので、回転方向の姿勢が異なるが、基本構造はやはり、前述した図1〜図7で説明した第1〜4の成形シュー10A〜10Dと基本的には同じ構成である。
【0038】
各成形シュー60、70は模式的に示しているが、いずれも、凸型68、78と角度可変凹型69、79とからなる。凸型68、78及び角度可変凹型69、79の構造は基本的に実施例1で説明した凸型8及び角度可変凹型9と同様であり、詳細説明は省略するが、その一部を図14〜図16に示す。角度可変凹型69、79は逆V溝61、71及びストッパ面62、72を有し、回転支軸63、73を中心として回転させて傾斜角度αを調整可能である。
実施例では、第1〜第4の成形シュー60A〜60Dにおける凸型68及び角度可変凹型69はそれぞれ同じ形状のものを傾斜角度αを変えて用い、第5〜第8の成形シュー70E〜70Hにおける各凸型78及び角度可変凹型79はそれぞれ同じ形状のものを傾斜角度αを変えて用いている。
図14は8つの成形スタンド53の成形シュー60、70のうちの第1の成形シュー60A、第4の成形シュー60D、第5の成形シュー70E、第8の成形シュー70Hのみを重ね合わせて図示したものである。
図15は図14中の第1の成形シュー60Aと第4の成形シュー60D、図16は図14中の第5の成形シュー70E、第8の成形シュー70Hを示している。
第2曲げ位置Qの曲げ成形を行う成形シュー70E〜70Hでは、図16に示すように、凸型78が金属帯板42の第1曲げ位置Qで折り曲げられた先の傾斜部分(エッジ側部分)を受けるように傾斜している。角度可変凹型79も金属帯板42の第1曲げ位置Qで折り曲げられた先の傾斜部分の傾斜に対応する姿勢を取っている。
なお、第5〜第8成形シュー70E〜70Hにおいても、図16に示すように、第1〜第4成形シュー60A〜60Dにおける凸型68と同様な形状の部材68’を金属帯板42の保持ないしガイドとして、配置するとよい。
【0039】
金属帯板42は、図15(イ)に示すように、第1成形シュー60Aで金属帯板42のエッジがストッパ面62にあたって、部分的に一部が逆V溝61内に入り込む。第2成形シュー60B、第3成形シュー60Cを通り、第4成形シュー60Dにおいて、図15(ロ)のように第1曲げ位置Qの曲げ成形が完了する。
【0040】
図15(ロ)のように第1曲げ位置Qを曲げ成形された金属帯板2は、図16(イ)に示すように、第5成形シュー70Eに入る。第5成形シュー70Eで金属帯板42のエッジが角度可変凹型79のストッパ面72にあたって、部分的に一部が逆V溝内に入り込む。第6成形シュー70F、第7成形シュー70Gを通り、第8成形シュー70Hにおいて、図16(ロ)のように第2曲げ位置Qの曲げ成形が完了する。
図14〜図16では模式的に示したが、第1曲げ位置Qの曲げ成形は概ね図7(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)と同様であり、第2曲げ位置Qの曲げ成形も、姿勢は異なるが基本的には同様なプロセスで曲げ成形が行われる。
【実施例4】
【0041】
上述の各実施例は、成形装置のすべての成形スタンドが成形シューによる成形スタンドであるが、一部の成形スタンドを成形ロールによる成形スタンドとすることもできる。
成形しようとする断面形状がブラインドコーナのない断面形状であれば、全成形スタンドにおける例えば最終成形スタンドでは成形ロールによる成形スタンドを設置し、それより上流側の成形スタンドにおいて、成形シューによる成形スタンドを設置することができる。
例えば、溝形断面を成形する場合であれば、図1、図2における出側の駆動スタンド5、すなわち図9のように成形材2’の水平部を挟んで単に送り駆動する駆動ロール25による駆動スタンド5に代えて、図17に示すように、最終断面形状に合わせた上下の成形ロール75a、75bからなる成形ロール75による成形スタンド76を設置することができる。
これにより極めて構造が簡単で安価な成形シューの特長と、構造が簡単ではなく高価であるが断面形状を精度よく決定し易い成形ロールの特長とが共に活かされて、全体として構造が簡単かつ安価でしかも精度の高い成形が可能な金属板の成形装置を実現できる。
また、最終成形スタンドだけでなく、最終成形スタンドに近い成形スタンドにも成形ロールによる成形スタンドを設置してもよい。さらに、全成形スタンドにおける適宜箇所に成形ロールによる成形スタンドを設置することができる。
また、成形スタンドの成形ロールとして、上下ロールによる成形ロールに限らずロール軸が垂直な竪ロールあるいは、ロール軸が傾斜した傾斜軸成形ロールを用いることも可能である。
また、上述の各実施例では、曲げ加工対象の金属板として、帯板コイルから繰り出される金属帯板を用いているが、切板を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施例の金属板の成形装置の概略正面図である。
【図2】図1の金属板の成形装置の概略平面図である。
【図3】図1における1つの成形スタンドの構造を説明する図(図2のA−A断面図相当)である。
【図4】図3のB−B断面図である。
【図5】図3の要部拡大図である。
【図6】図4の要部拡大図である。
【図7】上記成形装置における金属帯板の曲げプロセスを説明するもので、(イ)は第1成形シュースタンド、(ロ)は第2成形シュースタンド、(ハ)は第3成形シュースタンド、(ニ)は第4成形シュースタンドのそれぞれ曲げプロセスを示す。
【図8】角度可変凹型における逆V溝の角度について説明する図であり、図7(ニ)の要部拡大図である。
【図9】上記成形装置の出側駆動ロールスタンドを示すもので、図2のC−C断面図に相当する。
【図10】上記成形装置における駆動機構の別の実施例を示すもので、図5に対応する図である。
【図11】図10のD−D断面図である。
【図12】本発明の他の実施例の金属板の成形装置の概略平面図である。
【図13】図12の成形装置で成形しようとする断面形状を示す図である。
【図14】図12の成形装置で図13の断面形状を成形する際の成形プロセスの全体を模式的に説明する図である。
【図15】図12の成形装置で図13の断面形状を成形する際の成形プロセスを個別に示したもので、(イ)は第1成形シュー成形スタンド、(ロ)は第4成形シュースタンドのそれぞれ曲げプロセスを示す。
【図16】図12の成形装置で図13の断面形状を成形する際の成形プロセスを個別に示したもので、(イ)は第5成形シュー成形スタンド、(ロ)は第8成形シュースタンドのそれぞれ曲げプロセスを示す。
【図17】一部の成形スタンドに成形ロールによる成形スタンドを設置する実施例を説明するもので、最終成形スタンドとして設置した成形ロールによる成形スタンドの正面図である。
【図18】従来のシュー成形装置の一例を示す図である。
【図19】従来のシュー成形装置の他の例(電縫管製造装置に適用した場合のもの)を示す図である。
【符号の説明】
【0043】
1、51 金属板の成形装置
2、42 金属帯板
2’、42’ 成形品
2a’ フランジ
3(3A、3B、3C、3D) 成形スタンド
4 入側の駆動スタンド
5 出側の駆動スタンド
6 ピンチロール
7 ガイドロール
8 凸型
8a 受け面
9 角度可変凹型
10(10A、10B、10C、10D) 成形シュー
11 逆V溝
11a (帯板エッジ側の)肩部
11b (回転支軸側の)肩部
12 ストッパ面
13 回転支軸
14 平坦面部
15 軸受け
16 装置フレーム
18 駆動機構
19 ウォームホイル
20 ウォーム
21 駆動モータ
22 駆動軸
23 軸受け
25 出側の駆動ロール
26a、26b 駆動シャフト
28 駆動機構
30 円弧状ウォームホイール
31 ウォーム
32 駆動軸
33a、33b 傘歯車
34 駆動モータ
40 装置フレーム
40a 天板部
53(53A〜53H) 成形スタンド
60(60A〜60D) 成形シュー
70(70E〜70H) 成形シュー
α 角度可変凹型の傾斜角度
Q 曲げ位置
第1曲げ位置
第2曲げ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属帯板を、タンデムに配置された複数の成形スタンドに設けた静止の成形シューを通過させて折り曲げ成形する金属板の成形装置であって、
各成形スタンドの成形シューは、
金属帯板をその曲げ位置より帯板エッジ側部分を除いて受ける凸型と、
金属帯板の曲げ位置より帯板エッジ側における曲げ位置近傍の金属帯板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の帯板エッジ側の端部近傍における金属帯板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転して所望の傾斜角度αに角度設定可能な角度可変凹型とを備え、
少なくとも折り曲げの最終段階又は最終に近い段階の成形スタンドにおける成形シューは、凸型の帯板エッジ側端部が金属帯板を角度可変凹型の逆V溝内に押し込む態様で折り曲げを行うようになっていることを特徴とする金属板の成形装置。
【請求項2】
前記凸型は、帯板エッジ側が薄型縦断面形状又は鋭角断面形状をなしていることを特徴とする請求項1記載の金属板の成形装置。
【請求項3】
折り曲げ角度が小さい段階の成形スタンドにおける角度可変凹型は、金属帯板のエッジを受け止めるストッパ面を有することを特徴とする請求項1又は2記載の金属板の成形装置。
【請求項4】
前記角度可変凹型は、その逆V溝の回転支軸側の肩部の近傍が金属帯板を凸型側に押し付けるような輪郭を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の金属板の成形装置。
【請求項5】
前記角度可変凹型は、ストッパ面と逆V溝との間に、ストッパ面とともに横向きL字形をなす平坦面部を有することを特徴とする請求項3又は4記載の金属板の成形装置。
【請求項6】
各成形スタンドの成形シューが概ね同じ形状であり、各成形スタンドにおける角度可変凹型の傾斜角度αを調節するのみで、通過する金属帯板が所望の断面形状に成形されるようになっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の金属板の成形装置。
【請求項7】
金属帯板を、タンデムに配置された複数の成形スタンドを通過させて折り曲げ成形する金属板の成形装置であって、
前記複数の成形スタンドは回転する成形ロールによる成形スタンドと静止の成形シューによる成形スタンドとからなり、
前記成形シューは、
金属帯板をその曲げ位置より帯板エッジ側部分を除いて受ける凸型と、
金属帯板の曲げ位置より帯板エッジ側における曲げ位置近傍の金属帯板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の帯板エッジ側の端部近傍における金属帯板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転して所望の傾斜角度αに角度設定可能な角度可変凹型とを備えた構成であり、
かつ、少なくとも一部の成形シューは、凸型の帯板エッジ側端部が金属帯板を角度可変凹型の逆V溝内に押し込む態様で折り曲げを行うようになっていることを特徴とする金属板の成形装置。
【請求項8】
曲げ加工対象の金属板として、金属帯板に代えて切り板を用いることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の金属板の成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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