説明

金属板の曲げ加工方法及び装置

【課題】主として薄い金属板を対象として任意の曲げ角度に対応することができる曲げ加工方法又は装置を提供する。
【解決手段】曲げ加工装置1は凸型3と回転凹型7とを有する。凸型3は先端側が薄形縦断面形状又は鋭角縦断面形状である。回転凹型7は、金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝4を備えるとともに、凸型3の上方で凸型前端近くに位置する回転支軸6を中心として下方に回転可能である。回転凹型7を、回転支軸6を中心として下方に回転させて凸型3の先端部を相対的に回転凹型7の逆V溝4内に入り込ませることにより、金属板2を折り曲げる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、新規な曲げ加工法による金属板の曲げ加工方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼板等の金属板の曲げ加工には一般に、金型を設置した機械式あるいは油圧式のプレス機が用いられる。
金属板を例えば溝形断面形状に曲げ加工をする場合、固定の凸又は凹型と直線的に上下動作する可動の凹又は凸型との一対からなる金型を用いて曲げ加工することができる。図13に示した金型70では、固定凸型72に金属板2を載せ、可動凹型71を直線的に下降させることで、金属板2を押し下げて溝形断面形状に曲げ加工する。図13(イ)は加工前、同図(ロ)は加工後を示す。
【0003】
溝形断面等のように曲げ角度θが90°以下である断面形状の曲げ加工の場合であれば、上記のように固定凸型72と直線的な動作をする可動凹型71との単なる一対からなる金型70で曲げ加工が可能であるが、曲げ角度θが90°を超える曲げを行おうとする場合、複雑な機構が必要となる。
【0004】
例えば、特許文献1の金型80は、図14に示すように、上型81にエアシリンダ82及びリンク83を介して連結された傾動体84に可動曲刃85を固定し、下型87に設けた左右方向のスライダ88に固定曲刃89を固定し、さらに、上型81側の駆動カム91と下型87側の従動カム92とからなる駆動機構93を設けた複雑な構造である。図14図(イ)は加工前、同図(ロ)は加工後を示す。
この金型80において、図14(イ)の状態から上型81が下降した時、まず、可動曲刃85が金属板2に対して直角な姿勢で曲げ加工を行うことにより、直角に屈曲された折曲部(破線で示す折曲片のA部)が形成され、さらに上型81が下降すると、駆動カム91と従動カム92との係合により可動曲刃85が同図(ロ)のような姿勢に回動変位させられ、前記の直角に屈曲されている折曲部がさらに曲げられ、これにより90°を超えて折り曲げられた折曲部Bが得られる。
【特許文献1】特開平9−239444
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、曲げ角度が90°以下であれば、図13の金型70のように、固定の凸又は凹型と直線的な動作をする可動の凹又は凸型との単なる一対からなる金型で容易に曲げ加工できるが、90°を超える曲げを行おうとすると、例えば特許文献1の金型80のように2段階の曲げ動作をする極めて複雑な構造を採用する必要に迫られる。構造が複雑であるから、曲げ角度を変更する場合、その変更も煩雑なものとなり、種々の曲げ加工への対応が極めて困難である。
【0006】
また、直線的な動作をする可動型を用いる金型では、小物でなくある程度の広さを持つ金属板を曲げ加工する場合には、金型のサイズもある程度の大きさが必要となり、金型の費用が高くなる。
また、金型に直線ストローク動作をさせるプレス機も一般には、比較的大型でありかつ高価である。
【0007】
本発明は上記背景のもとになされたもので、主として薄い金属板を対象として、種々の曲げ角度への対応が容易であり、曲げ加工をする型も小形かつ安価に済み、型を駆動する駆動部も小形かつ安価に済む金属板の曲げ加工方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する請求項1の発明は、金属板を折り曲げる金属板の曲げ加工方法であって、
金属板をその曲げ位置(曲げ予定位置)Qより先端側部分を除いて受ける凸型と、金属板の曲げ位置より先端側における曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の先端部近傍における金属板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転可能な回転凹型とを用い、
前記回転凹型を、前記回転支軸を中心として回転させて前記凸型の先端部を相対的に回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、凸型と逆V溝とで金属板を折り曲げることを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、金属板を折り曲げる金属板の曲げ加工装置であって、
金属板をその曲げ位置より先端側部分を除いて受ける凸型と、金属板の曲げ位置より先端側における曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の先端部近傍における金属板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転可能な回転凹型とを備え、
前記回転凹型を、前記回転支軸を中心として回転させて前記凸型の先端部を相対的に回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、凸型と逆V溝とで金属板を折り曲げるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項3は、請求項2の金属板の曲げ加工装置における凸型が、その先端側が薄型縦断面形状又は鋭角断面形状をなしていることを特徴とする。
【0011】
請求項4は、請求項2又は3の金属板の曲げ加工装置における回転凹型が、曲げ加工の初期段階における金属板の先端を受け止めるストッパ面を有することを特徴とする。
【0012】
請求項5は、請求項2〜4のいずれかの金属板の曲げ加工装置において、
回転凹型における逆V溝の回転支軸側の肩部の位置が凸型の先端部近傍にあり、回転凹型が回転支軸を中心として回転する際に、回転凹型の逆V溝の回転支軸側の肩部近傍が金属板を凸型側に押し付けるようになっていることを特徴とする。
【0013】
請求項6は、請求項4又は5の金属板の曲げ加工装置において、
回転凹型がストッパ面と逆V溝との間に、ストッパ面とともに横向きL字形をなす平坦面部を有することを特徴とする。
【0014】
請求項7の発明は、金属板に対して第1曲げ位置Q及び第2曲げ位置Qの2つの曲げ位置を互いに逆向きに折り曲げる金属板の曲げ加工装置であって、
金属板をその第1曲げ位置より先端側部分を除いて受ける第1凸型と、
金属板の第1曲げ位置より先端側における第1曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記第1凸型の先端部近傍における金属板を挟んで第1凸型と反対側に位置する第1回転支軸を中心として回転可能な第1回転凹型とを備え、
前記第1回転凹型を、前記第1回転支軸を中心として回転させて前記第1凸型の先端部を相対的に第1回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、第1凸型と逆V溝とで金属板の第1曲げ位置を折り曲げるようにした第1曲げ型と、
金属板の第2曲げ位置より先端側部分を除いて受ける第2凸型と、
金属板の第2曲げ位置より先端側における第2曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記第2凸型の先端部近傍における金属板を挟んで第2凸型と反対側に位置する第2回転支軸を中心として回転可能な第2回転凹型とを備え、
前記第2回転凹型を、前記第2回転支軸を中心として回転させて前記第2凸型の先端部を相対的に第2回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、第2凸型と逆V溝とで金属板の第2曲げ位置を折り曲げるようにした第2曲げ型とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の金属板の曲げ加工方法又は装置において、回転凹型を回転支軸を中心として回転させた時、凸型の先端部は相対的に回転凹型の逆V溝に入り込むが、その際、凸型の先端部によって、金属板が逆V溝内に押し込まれ、したがって、金属板は凸型の先端部を起点として折り曲げられる。
回転凹型の逆V溝の角度を適切に設定することにより、金属板を所望の曲げ角度に曲げることができる。特に、90°を超えて曲げるいわゆるブラインド曲げを容易に行うことができる。
また、2段階の曲げ動作をする従来金型80等と異なり、90°を超える曲げ加工を、回転凹型の回転という1動作で済む極めて簡潔な構造によって実現できる。
また、曲げ加工をする回転凹型は小形かつ安価に済む。
また、可動型(回転凹型)は回転動作により曲げ加工を行なうので、直線ストロークによる曲げ金型と比べて、動く範囲が狭く済み、可動型を駆動する駆動部も小形かつ安価に済む。
【0016】
請求項5によれば、回転凹型が回転支軸を中心として回転する際に、回転凹型の逆V溝の回転支軸側の肩部近傍が金属板を凸型側に押し付けるようになっていることで、金属板が浮き上がらないように拘束することができ、かつ、金属板が逆V溝に押し込まれる変形が円滑に行なわれる。
【0017】
請求項6のように回転凹型のストッパ面と逆V溝との間に平坦面部を形成すると、金属板の曲げ加工の初期段階において、金属板の曲げ加工が円滑に行なわれる。
【0018】
請求項7によれば、金属板の少なくとも片側部分に、第1曲げ位置と第2曲げ位置との2箇所の曲げ部を持つ断面形状、例えばZ形断面形状の曲げ加工を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の金属板の曲げ加工方法及び装置の実施例を、図1〜図11を参照して説明する。
【実施例1】
【0020】
図1は本発明の一実施例の金属板の曲げ加工装置1の、装置フレーム10を断面で示した正面図、図2は図1のA−A矢視断面図、図3は図1の要部の拡大図である。
これらの図に示すように、この曲げ加工装置1は、金属板を折り曲げる金属板の曲げ加工装置であって、凸型3と回転凹型7とを有する。
【0021】
前記凸型3は、金属板2をその曲げ位置(曲げ予定位置)Qより先端側(図1〜図3で左側)の部分を除いて受ける受け面3aを持つ。実施例は金属板2を90°を超えて曲げる装置なので、凸型3の先端側は薄形縦断面形状又は鋭角縦断面形状である。凸型3の先端側は、金属板2を目的とする角度まで折り曲げた時(後述の図4(ニ)参照(曲げ角度θ))、その折り曲げた部分が凸型3の裏面に当たらない断面形状である必要がある。
【0022】
回転凹型7は、金属板2の曲げ位置Qより先端側における曲げ位置近傍に、金属板2の上面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型3の先端部近傍における上方に位置(金属板2を挟んで凸型と反対側に位置)する回転支軸6を中心として回転可能である。また、曲げ加工の初期段階における金属板2の先端を受け止めるストッパ面5を備えている。また、ストッパ面5と逆V溝4との間に、ストッパ面5とともに横向きL字形をなす平坦面部8を有している。
前記逆V溝4の回転支軸6側(図1〜図3で右側)の肩部4bの位置は、凸型3の先端部近傍にあり、回転凹型7が回転支軸6を中心として下方に回転する際に、逆V溝4の回転支軸側の肩部4bの近傍が金属板2を凸型3側に押し付ける(後述の図4(ロ)、(ハ)参照)ようになっている。
回転凹型7の逆V溝4と凸型3との関係は、回転凹型7が回転支軸6を中心として所定角度だけ下方に回転した時に、凸型3の先端部が回転凹型7の逆V溝4の奥に入り込むような相互形状関係かつ相対位置関係にある。
そして回転凹型7を、回転支軸6を中心として下方に回転させて凸型3の先端部を相対的に回転凹型7の逆V溝4内に入り込ませることにより、凸型3と逆V溝4とで凸型3の先端部を起点として金属板2を折り曲げる。
曲げ加工が進行する際の金属板2の変形の仕方は、金属板2が回転凹型7の逆V溝4の内面と摩擦しながら逆V溝4の奥に入り込んで変形するものなので、主として薄板金属板が加工対象となる。
また、逆V溝内面との摩擦により金属板2に傷が生じる恐れがある場合は、特に回転凹型7の材質を例えばMCナイロンその他の硬質のプラスチックとするのが適切である。
【0023】
前記回転支軸6は、図示は省略するが例えばキー結合やスプライン結合等により回転凹型7と一体結合している。
この回転支軸6は、装置フレーム10に軸受け15で回転可能に支持されるとともに、フレーム10の側面外側に設置した駆動機構9により回転駆動されるようになっている。すなわち、回転支軸6の装置フレーム10の側面の外側に延出した端部にウオームホイール11が固定され、このウオームホイール11と噛み合うウオーム12が、フレーム10に設置した駆動モータ13により回転駆動される駆動軸14に固定されている。駆動軸14はフレーム10に固定した軸受け16で回転可能に支持されている。
なお、この実施例では、駆動機構9を装置フレーム10の外側の側面に配置しているが、装置フレーム10内部の天井面に設置することも可能であり、その他適宜設計変更することができる。
【0024】
上記曲げ加工装置1の動作を説明する。
金属板2を例えば図2に示すように、装置の前面側(図2の下側)から矢印のように挿入して凸型3の上に載せ、先端を回転凹型7のストッパ面5に当てる。
次いで、駆動機構9の駆動モータ13を駆動すると、駆動軸14が回転しこれと一体のウオーム12が回転し、これと噛み合うウオームホイール11が回転し、これと一体の回転支軸6が回転し、これと一体の回転凹型7が回転支軸6を中心として下方に回転する。これにより、図4(イ)〜(ニ)に示すように、金属板2が概ねV字形に折り曲げられる。
この工程を詳細に説明すると、回転凹型7が回転し始めると、金属板2は、まず回転凹型7の平坦面部8で押し下げられ、続いて逆V溝4の図4で左方の肩部4aの近傍で押し下げられるが、先端がストッパ面5で拘束されている金属板2は、回転凹型7の回転に伴って、概ね図4(ロ)のように、凸型3の先端に近い部分が上に凸に湾曲して逆V溝4の回転支軸側の肩部4bに近い内面になじむ。
回転凹型7がさらに回転すると、図4(ハ)のように、金属板2は概ね凸型3の先端部を基点として下方に押し曲げられていく。回転凹型7がさらに回転すると、相対的に凸型3の先端部が逆V溝4の奥端に向けて次第に入り込んでいくので、金属板2は、凸型3の先端部により逆V溝4の奥端側に押し込まれ、図4(ニ)のように、凸型3の先端部を曲げ支点としてV字形に折り曲げられる。
その後、駆動機構9の駆動により回転支軸6が逆向きに回転して、回転凹型7が上方に回転復帰する。
【0025】
なお、実施例では凸型3が下側で回転凹型7が上側にあるが、これと逆に凸型3が上側で回転凹型7が下側になる配置とすることもでき、また、上下に限らず、両者が傾いた姿勢で対応する構成(例えば図9の第2曲げ型51参照)とすることもできる。
また、この曲げ加工装置1への金属板2の挿入方向は任意であり、上述のように装置前面側(図2で下方)から挿入する場合に限らず、装置後面側(図2で上方)から挿入してもよいし、あるいは図1で右側から挿入することができる。
また、曲げ加工された金属板は、例えば装置後面側に送り出すことができ、また、装置前面側に取り出すこともできる。
【0026】
本発明において、回転凹型7と凸型3とによる金属板2の90°を超える曲げを実現するために、上述の通り、回転凹型7の逆V溝4が金属板2の曲げ位置Qより先端側における曲げ位置近傍にあり、また、回転支軸6が凸型3の先端近傍における凸型3の上方に位置(金属板2を挟んで凸型と反対側に位置)することが有効に機能しているが、このことについて図12を参照して、若干捕捉説明する。図12は逆V溝のない単なる平坦な回転凹型7’を用いた場合の可能曲げ角度θを説明する図である。
逆V溝のない単なる平坦な回転凹型7’であれば、図12(イ)のように、回転支軸6’が凸型3’の前端より前方に位置していなければならず、そして金属板2は90°迄しか曲げることができない。なお、この場合、凸型3’上の金属板2を押さえる板押さえが必須であり、また、曲げた状態では金属板2の先端が回転凹型7’の先端より延出した状態となるので、回転凹型7’にストッパ面を設けることはできない(なお、次の(ロ)、(ハ)の場合も同様)。
図12(ロ)のように、回転支軸6’の位置を前方にずらすと、金属板2を90°を超えて曲げることが一応可能とも言えるが、この場合は、曲げの途中では安定した曲げが行われず、シャープなコーナー形状を得ることは困難であり、実質的に90°を超える曲げを実現できない。
金属板の90°超の曲げを実現するには、図12(ハ)のように、回転支軸6’の位置を移動させながら、回転凹型7’を回転させなければならない。
これらに対して、本発明によれば、回転凹型7が逆V溝4を有し、かつ回転支軸6の位置が凸型3の上方で凸型先端に近い位置であることで、回転支軸6の位置を移動させることなく、90°超の曲げを実現することが可能となっている。
【実施例2】
【0027】
回転支軸6を駆動する実施例の駆動機構9は、駆動モータ13を動力とするウオーム12とウオームホイール11とによる駆動機構であるが、図5に示すように、流体圧シリンダ(空気圧ないし油圧シリンダ)17による駆動機構とすることもできる。
この場合、例えば、図示略の装置フレームに取り付けたシリンダ17のシリンダロッド17aを、回転凹型7に固定したブラケット18にピン19を介して連結する。なお、この場合は、流体圧シリンダ17が回転凹型7を直接回転駆動するので、回転凹型7と回転支軸6との間にキー等の結合手段は不要である。
図5(イ)の状態でシリンダ17のシリンダロッド17aが伸張すると、図5(ロ)に示すように、回転凹型7が駆動されて回転支軸6を中心として下方に回転し、金属板2を折り曲げる。
【実施例3】
【0028】
本発明の曲げ加工装置を一対、互いに逆向きに設置することで、金属板の左右両端の曲げ加工を同時に行うこともできる。
図6は例えば溝形断面形状を成形する場合の両端曲げ加工装置20であり、1対の曲げ加工装置21を、左右対称に設置する。各曲げ加工装置21は、凸型23と、逆V溝24を有し回転支軸26を中心として回転可能な回転凹型27とを備えており、基本構造は前述の曲げ加工装置1と同様である。
図6(イ)は曲げ加工前の状態であり、回転凹型7が回転すると、図6(ロ)のように金属板22の両端部が折り曲げられる。図示例は、直角に曲げ加工する場合であるが、逆V溝24の角度を鋭角にすることで、直角より大きな角度(ブラインド角度)の曲げ加工が可能である。また、回転凹型27の逆V溝24の角度を変えることで、所望の曲げ角度を容易に実現できる。
なお、図6、図7、図9〜図12において、回転支軸26、36、46、56,6’は、図示は省略したが、例えばキー結合やスプライン結合等によりそれぞれ回転凹型27、37、47、57、7’と一体結合している。
【実施例4】
【0029】
本発明の曲げ加工装置は、端部側の第1の曲げ位置が既に曲げ加工された金属板について、第2の曲げ位置の曲げ加工をすることができる。
図7に示した曲げ加工装置31は、端部側の第1の曲げ位置Qが既に直角(曲げ角度θ=90°)に曲げ加工された金属板32について、第2の曲げ位置Qを直角に曲げ加工をすることで、金属板の端部をコ字形に曲げ加工する曲げ加工装置である。
曲げ加工装置31は、凸型33と、逆V溝34を有し回転支軸36を中心として回転可能な回転凹型37とを備えており、基本構造は前述の曲げ加工装置1と同様である。
図7では金属板の一方の端部近傍において2箇所の曲げ位置Q、Qを折り曲げるものであるが、この曲げ加工装置31を図6と同様な態様で用いることで、すなわち、一対の曲げ加工装置31を図6と同様に左右対称に設置することで、リップ付き溝形断面形状を成形することができる。
なお、図示例の曲げ角度θは直角であるが、逆V溝34の角度を鋭角にすることで、直角より大きな角度(ブラインド角度)の曲げ加工が可能である。また、回転凹型37の逆V溝34の角度を変えることで、所望の曲げ角度を容易に実現できる。
【実施例5】
【0030】
金属板の片側の端部側に本発明の曲げ加工装置を2つ設置することで、金属板の片側の端部において2箇所の曲げ位置を曲げ加工することができる。
例えば、図9は、金属板を図8に示した鳩尾状の断面形状に曲げ加工する鳩尾状断面曲げ加工装置40である。
この鳩尾状断面曲げ加工装置40は、金属板42の一方の端部近傍において、第1及び第2の2つの曲げ型41、51からなるZ曲げ加工装置50を設置し、他方の端部近傍においてこれと対称的な配置で同じく第1及び第2の2つの曲げ型41、51からなるZ曲げ加工装置50を設置している。
第1曲げ型41は、金属板42をその第1曲げ位置Qより先端側部分を除いて受ける第1凸型43と、金属板42の第1曲げ位置Qより先端側における第1曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝44を備えるとともに前記第1凸型43の先端部近傍における上方に位置(金属板42を挟んで第1凸型43と反対側に位置)する第1回転支軸46を中心として回転可能な第1回転凹型47とを備え、前記第1回転凹型47を、前記第1回転支軸46を中心として回転させて前記第1凸型43の先端部を相対的に第1回転凹型47の逆V溝44内に入り込ませることにより、第1凸型43と逆V溝44とで金属板42の第1曲げ位置Qを折り曲げるようにした構成である。この第1曲げ型41は、前述した曲げ加工装置1に相当する。
第2曲げ型51は、金属板の第2曲げ位置Qより先端側部分を除いて受ける、図9で紙面と直交する方向に退避可能な第2凸型と、
金属板42の第2曲げ位置Qより先端側における第2曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝54を備えるとともに前記第2凸型53の先端部近傍における図9の左側部分で右上方に位置(金属板42を挟んで第2凸型53と反対側に位置)する第2回転支軸56を中心として回転可能な第2回転凹型57とを備え、
前記第2回転凹型57を、前記第2回転支軸56を中心として回転させて前記第2凸型53の先端部を相対的に第2回転凹型57の逆V溝54内に入り込ませることにより、第2凸型53と逆V溝54とで金属板42の第2曲げ位置Qを折り曲げるようにした構成である。この第2曲げ型51は、第2凸型53が退避可能である点及び姿勢が傾いている点を除けば、前述した曲げ加工装置1と概ね同様である。
第2曲げ型51は、第1曲げ型41の第1凸型43の概ね下方に配置されており、第1曲げ型41により第1の曲げ位置Qを折り曲げられた金属板における第2の曲げ位置Qを曲げ加工できるような態様で配置されている。
【0031】
この鳩尾状断面曲げ加工装置41で金属板42を図8の鳩尾状断面形状に成形する際の曲げ加工工程は、図10(イ)、(ロ)、及びこれに続く図11(ハ)、(ニ)の順に行われる。
片側の曲げ加工について説明すると、図10(イ)は曲げ加工前の状態である。第2曲げ型51の第2凸型53は紙面と直交する奥方に退避している(図10(イ)、(ロ)では図示を省略)。
第1曲げ型41の第1回転凹型47が下方に回転して、図10(ロ)のように金属板42の第1曲げ位置Qを折り曲げる。この時、金属板42の折り曲げられた部分の先端近傍が第2曲げ型51の第2回転凹型57に沿う態様となる。
次いで、図11(ハ)のように、第1曲げ型41の第1回転凹型47が上方に回転して元の位置に復帰した後、第2曲げ型51の退避していた第2凸型53が紙面の奥側から手前側に進出して、金属板42の第2曲げ位置Qより先端側部分を除いて受ける位置にくる。
次いで、第2曲げ型51の第2回転凹型57が図11(ハ)で左方に回転すると、図11(ニ)のように金属板42の第2曲げ位置Qが折り曲げられる。金属板42の左右において対称的な曲げ加工がされるので、金属板42は図8のような断面形状に成形される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施例の金属板の曲げ加工装置の、装置フレームを断面で示した正面図である。
【図2】図1のA−A矢視断面図である。
【図3】図1の要部の拡大図である。
【図4】上記曲げ加工装置により金属板が折り曲げられていく過程を説明する図で、(イ)〜(ニ)の順にV曲げ加工が行われる。
【図5】回転凹型を回転駆動する駆動機構としてエアシリンダを用いた実施例を示すもので、(イ)は回転凹型が回転する前の状態、(ロ)は回転凹型が回転して金属板が所定形状に曲げられた状態を示す。
【図6】本発明の曲げ加工装置で金属板の両端部を同時に曲げ加工する実施例を示す図であり、(イ)は曲げ加工前の段階、(ロ)は曲げ加工された段階を示す。
【図7】本発明の金属板の曲げ加工装置により、先端側の第1の曲げ位置が既に曲げられた金属板について第2の曲げ位置を曲げることで、金属板端部にコ字形断面を成形する場合の要領を説明するもので、(イ)は曲げ加工前の段階、(ロ)は曲げ加工後の段階を示す。
【図8】金属板を図9〜図11の曲げ加工装置で曲げ加工しようとする断面形状を示す図である。
【図9】図8の断面形状の曲げ加工を行う曲げ加工装置の実施例を示すもので、左右それぞれ2つの曲げ型部分について、曲げ工程の各段階を重ねて示した図である。
【図10】図9の曲げ加工装置による曲げ工程の最初の2工程を示した図である。
【図11】図9の曲げ加工装置による曲げ工程の、図10に続く2工程を示した図である。
【図12】金属板を90°超の曲げ加工する上で、本発明における回転凹型の逆V溝の存在、及び回転支軸の位置が有効に機能していることを説明する図であり、(イ)は仮に回転凹型に逆V溝がない場合の可能曲げ角度を説明する図、(ロ)は回転凹型に逆V溝がない場合で90°超の曲げを実現しようとして回転支軸の位置を前方にずらした場合の問題を説明する図、(ハ)は逆V溝のない回転凹型で90°超の曲げを実現するためには、回転支軸の位置を上下にも移動させる必要があることを説明する図である。
【図13】金属板を溝形断面形状に曲げ加工する従来の金型を示すもので、(イ)は加工前、(ロ)は加工後を示す。
【図14】金属板を90°超の曲げ加工可能な従来の金型を示すもので、(イ)は加工前、(ロ)は加工後を示す。
【符号の説明】
【0033】
1、21、31 曲げ加工装置
2、22、32 金属板
3、23、33 凸型
3a 上面
4、24、34 逆V溝
4a (前方側の)肩部
4b (後方側の)肩部
5 ストッパ面
6、26、36 回転支軸
7、27、37 回転凹型
8 平坦面部
9 駆動機構
10 装置フレーム
11 ウオームホイール
12 ウオーム
13 駆動モータ
14 駆動軸
15、16 軸受け
17 流体圧シリンダ
17a ピストンロッド
18 ブラケット
19 ピン
20 両端曲げ加工装置
40 鳩尾状断面曲げ加工装置
41 第1曲げ型(曲げ加工装置)
42 金属板
43 第1凸型
44 逆V溝
45 ストッパ面
46 第1回転支軸
47 第1回転凹型
50 Z曲げ加工装置
51 第2曲げ型(曲げ加工装置)
53 第2凸型
54 逆V溝
55 ストッパ面
56 第2回転支軸
57 第2回転凹型
Q 曲げ位置
第1曲げ位置
第2曲げ位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板を折り曲げる金属板の曲げ加工方法であって、
金属板をその曲げ位置Qより先端側部分を除いて受ける凸型と、
金属板の曲げ位置より先端側における曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の先端部近傍における金属板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転可能な回転凹型とを用い、
前記回転凹型を、前記回転支軸を中心として回転させて前記凸型の先端部を相対的に回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、凸型と逆V溝とで金属板を折り曲げることを特徴とする金属板の曲げ加工方法。
【請求項2】
金属板を折り曲げる金属板の曲げ加工装置であって、
金属板をその曲げ位置より先端側部分を除いて受ける凸型と、
金属板の曲げ位置より先端側における曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、前記凸型の先端部近傍における金属板を挟んで凸型と反対側に位置する回転支軸を中心として回転可能な回転凹型とを備え、
前記回転凹型を、前記回転支軸を中心として回転させて前記凸型の先端部を相対的に回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、凸型と逆V溝とで金属板を折り曲げるようにしたことを特徴とする金属板の曲げ加工装置。
【請求項3】
前記凸型は、その先端側が薄型縦断面形状又は鋭角断面形状をなしていることを特徴とする請求項2記載の金属板の曲げ加工装置。
【請求項4】
前記回転凹型は、曲げ加工の初期段階における金属板の先端を受け止めるストッパ面を有することを特徴とする請求項2又は3記載の金属板の曲げ加工装置。
【請求項5】
前記回転凹型における逆V溝の回転支軸側の肩部の位置が凸型の先端部近傍にあり、回転凹型が回転支軸を中心として回転する際に、回転凹型の逆V溝の回転支軸側の肩部近傍が金属板を凸型側に押し付けるようになっていることを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の金属板の曲げ加工装置。
【請求項6】
前記回転凹型は、ストッパ面と逆V溝との間に、ストッパ面とともに横向きL字形をなす平坦面部を有することを特徴とする請求項4又は5記載の金属板の曲げ加工装置。
【請求項7】
金属板に対して第1曲げ位置Q及び第2曲げ位置Qの2つの曲げ位置を互いに逆向きに折り曲げる金属板の曲げ加工装置であって、
金属板をその第1曲げ位置より先端側部分を除いて受ける第1凸型と、
金属板の第1曲げ位置より先端側における第1曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、
前記第1凸型の先端部近傍における金属板を挟んで第1凸型と反対側に位置する第1回転支軸を中心として回転可能な第1回転凹型とを備え、
前記第1回転凹型を、前記第1回転支軸を中心として回転させて前記第1凸型の先端部を相対的に第1回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、第1凸型と逆V溝とで金属板の第1曲げ位置を折り曲げるようにした第1曲げ型と、
金属板の第2曲げ位置より先端側部分を除いて受ける第2凸型と、
金属板の第2曲げ位置より先端側における第2曲げ位置近傍の金属板面に対向して逆V字形に窪む逆V溝を備えるとともに、
前記第2凸型の先端部近傍における金属板を挟んで第2凸型と反対側に位置する第2回転支軸を中心として回転可能な第2回転凹型とを備え、
前記第2回転凹型を、前記第2回転支軸を中心として回転させて前記第2凸型の先端部を相対的に第2回転凹型の逆V溝内に入り込ませることにより、第2凸型と逆V溝とで金属板の第2曲げ位置を折り曲げるようにした第2曲げ型とを備えたことを特徴とする金属板の曲げ加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate