説明

金属溶融メッキ鋼板の製造方法

【目的】 さざ波の発生しない金属溶融メッキ鋼板の製造方法を提供する。
【構成】 金属溶融メッキ層の付着量に応じて、1対の気体絞りノズル間の間隔を、添付図面図1に座標によって示される、点A(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量100g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔22mm)、点B(220g/m2 ,35mm)、点C(300g/m2 ,35mm)によって結ばれる、ノズル間隔線X以下に制御する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、アルミニウムを3 から7 wt.%含有する金属溶融メッキ層を有し、メッキ層の表面にさざ波状欠陥が発生することのない、金属溶融メッキ鋼板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】金属溶融メッキ鋼板の製造において、鋼板の表面上に形成される金属溶融メッキ層の付着量は、ライン速度、気体絞りノズルのノズル間隔および気体絞りノズルのノズル圧力と相関がある。ライン速度は、鋼ストリップのサイズに応じて、焼鈍炉の能力により決定される。従来、金属溶融メッキ層の付着量の調整は、ノズル圧力を操作する方法によって行なわれている。その理由は、図2に示すノズル圧力計7によって検出されるノズル圧力を操作する方法のほうが、鋼ストリップを間に挟んだ両側に所定間隔をあけて設けられた、1対の気体絞りノズル5のノズル間隔6を変更する方法よりも、操作性に優れているからである。。従って、ノズル間隔が50mm、ノズル圧力が0.18kg/cm2となるような操業も行われている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のように、気体絞りノズル5のノズル間隔6が50mm、ノズル圧力が0.18kg/cm2となるような操業では、ノズル間隔6が大きすぎるので、金属溶融メッキ層の表面にさざ波状欠陥が発生するという問題がある。一般的には、さざ波状欠陥とは、家電あるいは自動車等の用途に使用される鋼板において、要求性能の激しい部位で問題となる欠陥である。さざ波状欠陥を解決するために、鋼板の表面に窒素(N2)シールワイピングを施こす方法もあるが、施工のための設備費が高く、製造原単位が悪いという問題がある。
【0004】従来の、アルミニウムを3 から7 wt.%含有する溶融金属メッキ層の付着量の調整は、上述したように気体絞りノズルのノズル間隔を変更しないで行なわれている。即ち、ノズル間隔は一定とし、ノズル圧力の変更を行なうことにより上記調整を行っており、ノズル間隔50mm、ノズル圧力0.18Kg/cm2といったような条件での操業も行われている。かように、気体絞りノズルと鋼ストリップとの距離が離れていることにより、鋼ストリップの表面で気体絞りノズルから噴出された流体が乱流となり、メッキ層の表層の振動に起因してメッキ層の表面にさざ波状欠陥が発生するという問題が発生する。
【0005】従って、この発明の目的は、上記の問題を解決し、目標とするメッキ量が得られるとともに、メッキ層の表面のさざ波状欠陥の発生を防止することができる、金属溶融メッキ鋼板の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】この発明は、溶融金属メッキ槽に連続的に鋼ストリップを浸漬し、前記溶融金属メッキ槽の上方に、鋼ストリップを間に挟んだ両側に所定間隔をあけて設けられた、1対の気体絞りノズルによってメッキ付着量を調整しながら、前記鋼ストリップの両方の表面上に、アルミニウムを3 から7 wt.%の範囲内含有する金属溶融メッキ層を形成する金属溶融メッキ鋼板の製造方法において、前記金属溶融メッキ層の付着量に応じて、前記1対の気体絞りノズル間の間隔を、添付図面図1に座標によって示される、点A(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量100g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔22mm)、点B(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量220g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)、点C(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量300g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)によって結ばれる、ノズル間隔線以下に制御することに特徴を有するものである。
【0007】次に、この発明を図面を参照しながら説明する。図1は鋼板の両面当たりの溶融金属メッキ層の付着量とノズル間隔との関係を示すグラフである。金属溶融メッキ層の付着量に応じて、図2に示す2つの気体絞りノズル5、5間の間隔6を、添付図面図1に座標によって示される、点A(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量100g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔22mm)、点B(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量220g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)、点C(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量300g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)によって結ばれる、ノズル間隔線X以下に制御する。図2において、1 はスナウト、2は溶融金属メッキ槽、3はシンクロール、4a、4bはサポートロール、7はノズル圧力計、8はノズル圧力調整弁、9は気体絞り用ブロワー、10は鋼ストリップである。このように、図1に示す、気体絞りノズル間の間隔が、点A、点B、点Cによって結ばれるノズル間隔線Xを超えると、鋼ストリップの表面にさざ波が発生する。
【0008】
【作用】アルミニウムを3 から7 wt.%含有する溶融金属メッキ鋼板、、例えば、Zn- 3〜7 wt.%Al合金溶融メッキ鋼板等の製造において、添付図面図1に座標によって示されるように、金属溶融メッキ層の付着量に応じて、1対の気体絞りノズル間の間隔を、点A(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量100g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔22mm)、点B(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量220g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)、点C(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量300g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)によって結ばれるノズル間隔線X以下に制御することにより、メッキ層の表面での流体の乱れを低減させ、それにより、メッキ層の表層の振動を軽減させる。かくして、メッキ層の表面のさざ波状欠陥は発生しない。
【0009】
【実施例】次に、この発明を実施例により説明する。図2R>2に示す装置によって、鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量に応じてノズル間隔を本発明の範囲内に制御し、または、本発明の範囲外に制御し、金属溶融メッキ鋼板を製造した。図3は、鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量およびノズル間隔が、さざ波状欠陥の発生に及ぼす影響を示すグラフである。図3において、P (Kg/cm2)はノズル圧力を示す。また、図3における、さざ波状欠陥の発生の程度による評価方法を下記に示す。
◎ :さざ波の山の高さが0.1 μm 以下であり、さざ波状欠陥の発生程度が優良。
○ :さざ波の山の高さが0.1 超から0.3 μm の範囲内であり、さざ波状欠陥の発生程度が良。
△ :さざ波の山の高さが0.3 超 から1.0 μm の範囲内であり、さざ波状欠陥の発生程度が劣。
△' :さざ波の山の高さ1.0 μm 超であり、さざ波状欠陥の発生程度が劣悪。
【0010】図3に示すように、金属溶融メッキ層の鋼板の両面当たりの付着量が220g/m2以上の場合には、ノズル間隔を50mm以上にすると、さざ波状欠陥の発生程度が劣悪となり、ノズル間隔が45から50mmでは、さざ波状欠陥の発生程度が劣となり、ノズル間隔が36mm以下では、さざ波状欠陥の発生しない、良好な金属溶融メッキ鋼板を得ることができることがわかる。
【0011】金属溶融メッキ層の鋼板の両面当たりの付着量が200g/m2 の場合には、ノズル間隔を40mm以上にすると、さざ波状欠陥の発生程度が劣となり、ノズル間隔が33mm以下では、さざ波状欠陥の発生しない、良好な金属溶融メッキ鋼板を得ることができることがわかる。
【0012】金属溶融メッキ層の鋼板の両面当たりの付着量が150g/m2 の場合には、ノズル間隔を30mm以上にすると、さざ波状欠陥の発生程度が劣となり、ノズル間隔が28mm以下では、さざ波状欠陥の発生しない、良好な金属溶融メッキ鋼板を得ることができることがわかる。
【0013】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、アルミニウムを3 から7 wt.%含有する金属溶融メッキ層を有する金属溶融メッキ鋼板の製造に関し、溶融金属メッキ層の付着量を調整するための装置である気体絞りノズルのノズル間隔を制御することにより、さざ波状欠陥の発生を防止でき、メッキ層の表面品質の良好な金属溶融メッキ鋼板を得ることができ、かくして、工業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】鋼板の両面当たりの溶融金属メッキ層の付着量とノズル間隔との関係を示すグラフ
【図2】溶融金属メッキ槽および溶融金属メッキ気体絞りノズルの機器構成を示す概略説明図
【図3】鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量およびノズル間隔が、さざ波状欠陥の発生に及ぼす影響を示すグラフ。
【符号の説明】
1 スナウト
2 溶融金属メッキ槽
3 シンクロール
4a、4b サポートロール
5 気体絞りノズル
6 気体絞りノズル間隔
7 ノズル圧力計
8 ノズル圧力調整弁
9 気体絞り用ブロワー
10 鋼ストリップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 溶融金属メッキ槽に連続的に鋼ストリップを浸漬し、前記溶融金属メッキ槽の上方に、鋼ストリップを間に挟んだ両側に所定間隔をあけて設けられた、1対の気体絞りノズルによってメッキ付着量を調整しながら、前記鋼ストリップの両方の表面上に、アルミニウムを3 から7 wt.%の範囲内含有する金属溶融メッキ層を形成する金属溶融メッキ鋼板の製造方法において、前記金属溶融メッキ層の付着量に応じて、前記1対の気体絞りノズル間の間隔を、添付図面図1に座標によって示される、点A(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量100g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔22mm)、点B(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量220g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)、点C(鋼板の両面当たりの金属溶融メッキ層の付着量300g/m2 ,気体絞りノズル間の間隔35mm)によって結ばれる、ノズル間隔線以下に制御することを特徴とする金属溶融メッキ鋼板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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