説明

金属空気電池

【課題】体積効率及びエネルギー密度に優れた金属空気電池を提供する。
【解決手段】酸素を活物質とする空気極層を有する空気極と、負極活物質を含む負極層を有する負極と、前記空気極層及び前記負極層の間に配置され、金属イオンの伝導を担う電解質層とが、積層された発電要素、並びに、該発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備える金属空気電池であって、前記空気極は、前記電解質層側から、前記空気極層と、導電性及び多孔質構造を有する空気極集電体とが、順に積層した構造を有し、前記可撓性外装体は、前記空気極集電体に連通する酸素取り込み孔を有し、前記可撓性外装体の外部から、前記酸素取り込み孔に酸素を供給する酸素含有ガスによって、前記発電要素がその積層方向に常圧以上の圧力で加圧されることを特徴とする、金属空気電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属空気電池に関する。
【背景技術】
【0002】
正極活物質として酸素を利用する金属空気電池は、エネルギー密度が高い、小型化及び軽量化が容易である等の利点を有する。そのため、現在、広く使用されているリチウム二次電池を超える高容量電池として注目を集めている。金属空気電池としては、例えば、リチウム空気電池、マグネシウム空気電池、亜鉛空気電池等が知られている。
金属空気電池は、空気極において酸素の酸化還元反応が行われ、負極において伝導イオン種の金属の酸化還元反応が行われることで、充放電が可能である。例えば、伝導イオンが一価の金属イオンである金属空気電池(二次電池)では、以下のような充放電反応が進むと考えられる。尚、下記式においてMは金属種を示す。
【0003】
[放電時]
負極 : M → M + e
正極 : 2M + O + 2e → M
[充電時]
負極 : M + e → M
正極 : M → 2M + O + 2e
【0004】
金属空気電池は、例えば、導電性材料や結着材を含有する空気極層と、空気極層の集電を行う空気極集電体と、負極活物質(金属や合金等)を含有する負極層と、負極層の集電を行う負極集電体と、空気極層及び負極層の間に介在する電解質層とを有する発電要素を備える。
具体的な金属空気電池としては、例えば、特許文献1〜3に開示されたものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2010/100749
【特許文献2】特開2010−244929号公報
【特許文献3】特開2005−116235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金属空気電池において、小型化は重要な技術課題であり、体積効率の向上が求められている。特に、より大きな電流値を得るべく、複数の単電池を接続する場合には、各発電要素に酸素を供給するための酸素供給路や、必要に応じて各単電池間の絶縁を確保するための絶縁部材等を設ける必要があり、体積効率及びエネルギー密度の向上が望まれる。
しかしながら、特許文献1のような従来の金属空気電池では、充分な体積効率及びエネルギー密度は得られていない。
【0007】
本発明は上記実情を鑑みて成し遂げられたものであり、本発明の目的は、体積効率及びエネルギー密度に優れた金属空気電池を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の金属空気電池は、酸素を活物質とする空気極層を有する空気極と、負極活物質を含む負極層を有する負極と、前記空気極層及び前記負極層の間に配置され、金属イオンの伝導を担う電解質層とが、積層された発電要素、並びに、該発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備える金属空気電池であって、
前記空気極は、前記電解質層側から、前記空気極層と、導電性及び多孔質構造を有する空気極集電体とが、順に積層した構造を有し、
前記可撓性外装体は、前記空気極集電体に連通する酸素取り込み孔を有し、
前記酸素取り込み孔に酸素を供給する酸素含有ガスによって、前記可撓性外装体の外部から、前記発電要素がその積層方向に常圧以上の圧力で加圧されることを特徴とする。
【0009】
本発明の金属空気電池において、発電要素は、該発電要素を収容する可撓性外装体の外部から、空気極へ酸素を供給するための酸素含有ガスによって、その積層方向に加圧されると共に、多孔質構造を有し酸素の流路としても機能する空気極集電体を通って空気極層への酸素供給がなされる。このように、本発明によれば、発電要素の拘束が空気極層へ酸素を供給するための酸素含有ガスにより行われ、しかも、空気極集電体が酸素ガスの流路も兼ねるため、体積効率及びエネルギー密度の高い金属空気電池を提供することができる。特に、2つ以上の発電要素を積層して直列接続する場合には、金属空気電池の体積効率及びエネルギー密度の向上効果に優れる。また、上記のような酸素含有ガスによる発電要素の拘束により、発電要素に均一な面圧を付与することができる上、空気極集電体による空気極層への均一な酸素供給が可能であるため、本発明の金属空気電池は、耐久性や発電効率にも優れている。
【0010】
前記空気極集電体の形態として、例えば、前記発電要素における積層方向と直交する面の外周縁が、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極の前記積層方向と直交する面の外周縁から延在する延在部を有するものが挙げられる。該延在部によって、可撓性外装体内に、前記積層方向における酸素含有ガスの流路を形成することができる。
上記のような酸素含有ガスの流路を備える形態の具体的な態様としては、例えば、前記空気極集電体が、前記直交面の外周縁が、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極の前記直交面の外周縁よりも一回り大きい寸法及び形状を有し、前記空気極集電体、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極が、前記直交面の中心点を重ね合わせて積層され、前記延在部が、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極の外周縁を取り囲んでいる態様が挙げられる。
【0011】
前記延在部は、少なくとも表面が絶縁性材料で被覆されている形態とすることができる。このような形態によって、酸素含有ガスの流路として機能する延在部において、電極反応が進行するのを防止することができる。延在部における電極反応の進行は、酸素含有ガスの流路となる延在部の閉塞等のデメリットが生じる場合がある。
【0012】
本発明の金属空気電池は、2つ以上の前記発電要素を備えていてもよい。具体的には、前記発電要素が2つ以上積層して直列接続されており、前記負極層に隣接する前記空気極集電体が、前記負極層と接触する領域において、前記多孔質構造が閉塞している形態が挙げられる。
上記のような形態では、前記空気極集電体に隣接する前記負極層を構成する材料と酸素との反応を抑制すると共に、積層された2つの発電要素間において、一方の発電要素から他方の発電要素へと酸素含有ガスが効率良く流れるようにすることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属空気電池は、体積効率及びエネルギー密度に優れている。また、本発明の金属空気電池は、発電要素が酸素含有ガスにより拘束されていることによって、空気極層への均一な酸素供給や、発電要素の均一な加圧が可能であり、発電効率や耐久性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の金属空気電池の一形態例を示す断面模式図である。
【図2】本発明の金属空気電池における空気極集電体の一形態例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の金属空気電池は、酸素を活物質とする空気極層を有する空気極と、負極活物質を含む負極層を有する負極と、前記空気極層及び前記負極層の間に配置され、金属イオンの伝導を担う電解質層とが、積層された発電要素、並びに、該発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備える金属空気電池であって、
前記空気極は、前記電解質層側から、前記空気極層と、導電性及び多孔質構造を有する空気極集電体とが、順に積層した構造を有し、
前記可撓性外装体は、前記空気極集電体に連通する酸素取り込み孔を有し、
前記酸素取り込み孔に酸素を供給する酸素含有ガスによって、前記可撓性外装体の外部から、前記発電要素がその積層方向に常圧以上の圧力で加圧されることを特徴とする。
【0016】
以下、本発明の金属空気電池について、図1を参照しながら説明する。
図1において、金属空気電池100は、空気極(正極)1と、負極4と、空気極1及び負極4との間に配置された電解質層5とが積層された発電要素6を備えている。空気極1は、電解質層5側から順に、酸素を活物質とする空気極層2と空気極層2の集電を行う空気極集電体3とが積層した構造を有しており、負極4は、負極活物質を含む負極層からなる。すなわち、発電要素6は、空気極集電体3、空気極層2、電解質層5、及び負極(負極層)4が順に積層した構造を有している。
空気極集電体3は、発電要素6の積層方向と直交する面の外周縁が、空気極層2、電解質層5、及び負極4の上記積層方向(発電要素6の積層方向)と直交する面の外周縁から延在する延在部3Aを有している。
【0017】
図1の金属空気電池100は、上記のような発電要素6が2つ(6A、6B)、積層されており、2つの発電要素の界面を形成する、発電要素6Aの負極4と発電要素6Bの空気極集電体3とが接触することによって、これら発電要素6Aと6Bとが直列接続されている。
2つの発電要素を構成する2つの空気極集電体3の延在部3Aに挟まれた空間9が、ガス流路として機能し、発電要素6Aの空気極集電体3及び空気極層2から、発電要素6Bの空気極集電体3の延在部3Aまで酸素含有ガスが流通できる。
また、発電要素6Bの負極4には、空気極集電体3と同様、導電性及び多孔質構造を有し且つ延在部10Aする導電性多孔質体10が隣接して設けられており、発電要素6Bの空気極集電体3の延在部3Aと導電性多孔質体10の延在部10Aとに挟まれた空間9がガス流路として機能し、発電要素6Bの空気極層3に供給された酸素含有ガスの未反応分が導電性多孔質体10まで流通できる。可撓性外装体7には、可撓性外装体7の外部に連通し、導電性多孔質体10から酸素含有ガスの未反応分を排出可能な排出口が設けられていてもよい(図示せず)。
【0018】
これら発電要素6は、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体7内に収容されており、可撓性外装体7の外側から、酸素含有ガス11によってその積層方向に加圧され、拘束されている。可撓性外装体7には、空気極集電体3に連通する酸素取り込み孔8が設けられており、酸素含有ガス11が酸素取り込み孔8から可撓性外装体7の内部へ取り込まれ、空気極層2へと供給される。
【0019】
金属空気電池100は、さらに、発電要素6Aの空気極集電体3に接続され、可撓性外装体7の外部へと延びる正極端子12と、発電要素6Bの負極と隣接する導電性多孔質体10に接続され、可撓性外装体7の外部へと延びる負極端子13とを有している。
【0020】
本発明の金属空気電池は、まず、発電要素が、該発電要素を収容する可撓性外装体の外部から、常圧以上の圧力のガスで、その積層方向に加圧される。このように、ガスによって発電要素が拘束されることによって、発電要素に加えられる圧力が均一となるため、拘束部材等を用いることによって局所的に高い圧力がかけられるような場合と比較して、発電要素を構成する部材の長寿命化が可能であり、金属空気電池の耐久性を向上させることができる。より具体的には、例えば、酸素不足に伴う電池部材の劣化や、放電時に生成する析出物が不均一に析出することによるサイクル劣化を抑制することができる。
【0021】
しかも、本発明においては、発電要素を拘束するガスが、空気極の活物質となる酸素を含有する酸素含有ガスであり、発電要素を拘束すると共に空気極への酸素供給も行うため、電池の構成部材点数を削減し、金属空気電池を小型化することができる。
【0022】
さらには、上記酸素含有ガスは、可撓性外装体の酸素取り込み孔から、可撓性外装体の内部へと入り、多孔質構造を有する空気極集電体を経て、空気極層へと酸素を供給する。すなわち、空気極集電体が、酸素含有ガスの流路としても機能するため、別途、酸素含有ガスの流路となるリブ等を設けなくても、空気極層への酸素供給が可能である。その結果、金属空気電池のさらなる小型化が可能である。
【0023】
特に、図1のように、2つ以上の発電要素を積層して直列接続する場合には、多孔質構造を有する空気極集電体が、隣接する発電要素間の酸素ガス流路としても機能し、小型化効果が特に高い。
【0024】
尚、本発明において、金属空気電池とは、正極活物質として酸素を用い、伝導イオンが金属イオンであるものであれば特に限定されず、一次電池であっても二次電池であってもよい。金属空気電池の具体例として、例えば、リチウム空気電池、ナトリウム空気電池、カリウム空気電池、マグネシウム空気電池、カルシウム空気電池、亜鉛空気電池、アルミニウム空気電池、鉄空気電池等を挙げることができる。
【0025】
以下、本発明の金属空気電池の各構成について、詳しく説明する。
[発電要素]
発電要素は、空気極と、電解質層と、負極と、がこの順で積層された構造を有する。本発明において、「発電要素の積層方向」とは、発電要素を構成する、これら空気極、電解質層及び負極の積層方向を意味する(図1参照)。
(空気極)
空気極は、導電性材料を少なくとも含む空気極層と、該空気極層の集電を行う空気極集電体とを備える。空気極において、空気極層と空気極集電体は、電解質層側から、空気極層、集電体の順に積層している。
【0026】
<空気極層>
空気極層は、供給された酸素と金属イオンとの反応場であり、導電性材料の表面にて酸素と金属イオンの反応(金属酸化物や金属水酸化物等の生成、分解)が起こる。空気極層は、通常、多孔質構造を有し、活物質である酸素の拡散性が確保される。
【0027】
導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、導電性炭素材料が挙げられる。
導電性炭素材料は特に限定されないが、空気極における反応場の面積や空間の観点から、高比表面積を有する炭素材料が好ましい。具体的には、導電性炭素材料は10m/g以上、特に100m/g以上、さらに600m/g以上の比表面積を有することが好ましい。高比表面積を有する導電性炭素材料の具体例として、カーボンブラック、活性炭、カーボン炭素繊維(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等)等を挙げることができる。ここで、導電性材料の比表面積は、たとえば、窒素吸着測定によるBET法によって測定することができる。
導電性炭素材料は、多孔質構造を有するものであってもなくてもよいが、反応場の空間を確保する観点から、多孔質構造を有するものが好ましく、特に1cc/g以上の高い細孔容積を有するものが好ましい。高い細孔容積を有する導電性炭素材料の具体例としては、カーボンブラック、活性炭、カーボン炭素繊維(例えばカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー等)等を挙げることができる。ここで、導電性材料の細孔容積は、たとえば窒素吸着測定によるBJH法によって測定することができる。
空気極層における導電性材料の含有量は、その密度や比表面積等にもよるが、例えば、10重量%〜99重量%の範囲であることが好ましい。
【0028】
空気極層は、空気極における酸素の反応を促進する空気極触媒を含有していてもよい。このような空気極触媒は、上記導電性材料に担持されていてもよい。
空気極触媒としては、特に限定されず、例えば、コバルトフタロシアニン、マンガンフタロシアニン、ニッケルフタロシアニン、スズフタロシアニンオキサイド、チタンフタロシアニン、ジリチウムフタロシアニン等のフタロシアニン系化合物;コバルトナフトシアニン等のナフトシアニン系化合物;鉄ポルフィリン等のポリフィリン系化合物等の有機材料や、MnO、CeO、Co、NiO、V、Fe、ZnO、CuO、LiMnO、LiMnO、LiMn、LiTi12、LiTiO、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、LiNiO、LiVO、LiFeO、LiFeO、LiCrO、LiCoO、LiCuO、LiZnO、LiMoO、LiNbO、LiTaO、LiWO、LiZrO、NaMnO、CaMnO、CaFeO、MgTiO、KMnO等の金属酸化物;Au、Pt、Ag等の貴金属等の無機材料等が挙げられる。また、上記材料の複数を組み合わせた複合体を空気極触媒として用いることもできる。
空気極層における空気極触媒の含有量は、例えば、1重量%〜90重量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
空気極層は、導電性材料や空気極触媒の固定化の観点から、さらに、結着材を含有することが好ましい。
結着材としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、PVDFとヘキサフルオロプロピレン(HFP)の共重合体、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、スチレンブタジエンゴム(SBR)等が挙げられる。
空気極層における結着材の含有量は、例えば、1重量%〜40重量%の範囲であることが好ましい。
【0030】
空気極層の厚さは、金属空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2μm〜500μmの範囲内、特に5μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
【0031】
<空気極集電体>
空気極集電体は、空気極層の集電を行うものであり、本発明においては、導電性に加えて多孔質構造を有するものを用いる。
空気極集電体は、所望の導電性(電子伝導性)を有し、且つ、酸素含有ガスの流通が可能な多孔質構造を有するものであれば、特に限定されない。
【0032】
空気極集電体の材料としては、例えば、ステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、銅等の金属材料、カーボンファイバー、カーボンペーパー等のカーボン材料、窒化チタン等の高電子伝導性セラミックス材料等が挙げられる。
【0033】
多孔質構造としては、例えば、構成繊維が規則正しく配列されたメッシュ構造、構成繊維がランダムに配列された不織布構造、独立孔や連結孔を有する三次元網目構造等が挙げられる。
空気極集電体における多孔質構造は、空気極集電体全体において、均一であってもよいし、不均一であってもよい。例えば、空気極集電体の厚み方向(発電要素の積層方向と同じ)において、空隙率(多孔度)が変化する空隙率分布を有していてもよい。尚、空隙率は、多孔質体全体の体積に対する細孔部分の体積の割合である。
具体的には、2つ以上の発電要素を積層し、直列接続させる場合、直列接続される発電要素の負極層と隣接する空気極集電体は、該負極層と接触する領域において、多孔質構造が閉塞していることが好ましい。このように、負極層と接触する領域の多孔質構造が閉塞していることによって、負極層を構成する材料が酸素を含むガスと接触して反応し、性能劣化することを防止することができ、また、酸素含有ガスが、酸素の必要な空気極層へ効率良く流れるような、酸素含有ガスの流れを形成するのにも効果的である。
このように負極層と接触する領域を閉塞させる場合、例えば、図2に示すように、隣接する負極層4側から順に、導電性非多孔質体3a、導電性多孔質体3b、導電性多孔質体3cを積層させたものを空気極集電体3として用いることも効果的である。ここで導電性非多孔質体3aは、負極層と接触する領域であるため、多孔質構造を有していない導電体であり、導電性多孔質体3bは、導電性多孔質体3cよりも空隙率が低いものである。このような多層構造を有する空気極集電体は、例えば、空隙率の異なる上記導電性非多孔質体3a、導電性多孔質体3b及び3cを、プレス成形することにより作製することができる。
尚、空隙率分布を有する空気極集電体は、図2に示す、多層型の空気極集電体のように、段階的にその空隙率が変化する形態の他、連続的に空隙率が変化する形態でもよい。
また、上記負極層と隣接する導電性非多孔質体を含め、負極層と接触する導電性部材は、負極層の集電体としてみなすこともできる。
【0034】
空気極集電体の形状は特に限定されず、適宜選択することができる。
可撓性外装体内での酸素含有ガスの流通、特に、2つ以上の発電要素を積層する場合の可撓性外装体内での酸素含有ガスの流通の観点から、空気極集電体は下記形状を有していることが好ましい。すなわち、発電要素における積層方向と直交する面の外周縁が、空気極層、電解質層及び負極(負極層)の上記直交面の外周縁から延在する延在部を有することが好ましい。このような延在部は、空気極集電体を、空気極層、電解質層、及び負極(負極層)を積層させた際に、酸素含有ガスの流路として機能し、可撓性外装体内の発電要素の積層方向における酸素含有ガスの流れを形成することができる。
延在部の具体的な形態は特に限定されず、適宜選択すればよい。例えば、上記直交面の外周が、空気極層、電解質層及び負極の上記直交面の外周縁よりも一回り大きい寸法及び形状を有する空気極集電体が挙げられる。このような空気極集電体は、空気極層、電解質層及び負極と、上記直交面の中心点を重ね合わせて積層した場合、空気極層、電解質層及び負極の外周縁を取り囲むように、延在部が設けられることになる。
【0035】
空気極集電体の延在部は、少なくとも表面が絶縁性材料で被覆されていることが好ましい。導電性を有している場合、空気極の反応場として機能することによって、放電時に生成する析出物等によりその多孔質構造が閉塞してしまうおそれがあったり、反応面積の変化(増減)に伴う、セル間の電流密度バラつきが発生するおそれがあるからである。
つまり、延在部は、酸素含有ガスの透過性を有していればよく、空気極層や負極と接触する領域とは異なる、絶縁性材料により形成されていてもよいが、製造工程の煩雑化等を考慮すると、導電性多孔質体の延在部となる領域の表面に選択的に絶縁処理を行うことが好ましいといえる。絶縁処理方法は、延在部の酸素含有ガス透過性を確保することができれば特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン等の絶縁性材料の塗布等が挙げられる。
【0036】
空気極集電体の厚さは特に限定されないが、例えば、10μm〜1000μmの範囲であることが好ましい。
【0037】
空気極の製造方法は、特に限定されない。例えば、導電性材料と、結着材等のその他の空気極層構成材料を混合した空気極材料を用いて、空気極を形成することができる。具体的には、空気極集電体の表面に、溶媒を含む空気極材料を、圧延又は塗布して成形し、必要に応じて、乾燥処理、加圧処理、加熱処理等を施すことで空気極層と空気極集電体とが積層した空気極を作製することができる。或いは、溶媒を含む空気極材料を圧延又は塗布して成形し、必要に応じて、乾燥処理、加圧処理、加熱処理等を施した空気極層を、空気極集電体を重ね合わせ、適宜、加圧や加熱等を行うことで、空気極層と空気極集電体とが積層した空気極を作製することができる。
空気極材料に用いる溶媒としては、揮発性を有していれば特に限定されず、適宜選択することができる。具体的には、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等が挙げられる。空気極材料の乾燥が容易になることから、沸点が200℃以下の溶媒が好ましい。
空気極材料を塗布する方法は特に限定されず、ドクターブレード法、インクジェット法、スプレー法等の一般的な方法を用いることができる。
【0038】
(電解質層)
電解質は、空気極と負極との間で金属イオンを伝導できれば、特に限定されず、電解液でもよいし、固体電解質でもよいが、電解液を用いた場合、酸素含有ガスによる拘束圧によって、漏液し、電圧降下が生じるおそれがあるため、固体状の電解質を用いることが好ましい。
固体状の電解質としては、例えば、電解液をゲル化したもの、固体無機電解質、固体有機電解質等を用いることができる。非水電解液のゲル化の方法としては、例えば、非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加する方法が挙げられる。
【0039】
電解液としては、非水系電解液や水系電解液が挙げられる。非水系電解液は、支持電解質塩及び非水溶媒を含有する。
非水溶媒としては、特に限定されず、例えば、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ビニレンカーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルプロピルカーボネート、イソプロピオメチルカーボネート、プロピオン酸エチル、プロピオン酸メチル、γ−ブチロラクトン、酢酸エチル、酢酸メチル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコージジエチルエーテル、アセトニトリル(AcN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジエトキシエタン、ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)等が挙げられる。
【0040】
また、イオン性液体を非水溶媒として用いることもできる。イオン性液体としては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:TMPA−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:PP13−TFSA]、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:P13−TFSA]、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:P14−TFSA]、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:DEME−TFSA]等の脂肪族4級アンモニウム塩;1−メチル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート[略称:EMIBF]、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:EMITFSA]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムブロマイド[略称:AEImBr]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[略称:AEImBF]、1−アリル−3−エチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:AEImTFSA]、1,3−ジアリルイミダゾリウムブロマイド[略称:AAImBr]、1,3−ジアリルイミダゾリウムテトラフルオロボラート[略称:AAImBF]、1,3−ジアリルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド[略称:AAImTFSA]等のアルキルイミダゾリウム4級塩等が挙げられる。
【0041】
酸素ラジカルに対する電気化学安定性という観点からは、非水溶媒として、AcN、DMSO、DME、PP13−TFSA、P13−TFSA、P14−TFSA、TMPA−TFSA、DEME−TFSA等が好ましい。
【0042】
支持電解質塩は、非水溶媒に対して溶解性を有し、所望の金属イオン伝導性を発現するものであればよい。通常、伝導させたい金属イオンを含む金属塩を用いることができる。例えば、リチウム空気電池の場合、支持電解質塩としてリチウム塩を用いることができる。リチウム塩としては、LiPF、LiBF、LiClO、LiAsF、LiOH、LiCl、LiNO、LiSO等の無機リチウム塩が挙げられる。また、CHCOLi、リチウムビスオキサレートボレート(略称 LiBOB)、LiN(CFSO(略称 LiTFSA)、LiN(CSO(略称 LiBETA)、LiN(CFSO)(CSO)等の有機リチウム塩を用いることもできる。
非水電解質において、非水溶媒に対する支持電解質塩の含有量は、特に限定されないが、例えば、非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5mol/L〜3mol/Lの範囲内である。
【0043】
水系電解液は、支持電解質塩及び水を含有する。支持電解質塩は、水に対して溶解性を有し、所望のイオン伝導性を発現するものであれば特に限定されない。通常、伝導させたい金属イオンを含む金属塩を用いることができる。例えば、リチウム空気電池の場合、例えば、LiOH、LiCl、LiNO、LiSO、CHCOOLi等のリチウム塩を用いることができる。
【0044】
電解液をゲル化して用いる場合、例えば、上記したようなポリマーと電解液とを混合した後、該混合液を基材上に流延塗布、乾燥し、基材から剥離した後、切断することで、ゲル状電解質膜を作製することができる。
【0045】
固体電解質としては、例えば、無機固体電解質が挙げられる。尚、無機固体電解質としては、ガラス、結晶、ガラスセラミックスのいずれでもよい。これら固体電解質を用いる場合、例えば、固体電解質を圧延又は固体電解質を溶媒と混合したスラリーを塗布、乾燥することによって、固体電解質層を作製することができる。
具体的な無機固体電解質は、伝導金属イオンに応じて適宜選択すればよい。
例えば、リチウム空気電池の場合、NASICON型酸化物としては、例えば、Li(XはB、Al、Ga、In、C、Si、Ge、Sn、Sb及びSeよりなる群から選択される少なくとも1種であり、YはTi、Zr、Ge、In、Ga、Sn及びAlよりなる群から選択される少なくとも1種であり、a〜eは、0.5<a<5.0、0≦b<2.98、0.5≦c<3.0、0.02<d≦3.0、2.0<b+d<4.0、3.0<e≦12.0の関係を満たす)で表される酸化物を挙げることができる。特に、上記式において、X=Al、Y=Tiである酸化物(Li−Al−Ti−P−O系NASICON型酸化物)、及び、X=Al、Y=Ge若しくはX=Ge、Y=Alである酸化物(Li−Al−Ge−Ti−O系NASICON型酸化物)が好ましい。
また、ペロブスカイト型酸化物としては、例えば、LiLa1−xTiO等で表される酸化物(Li−La−Ti−O系ペロブスカイト型酸化物)を挙げることができる。
【0046】
また、リチウム空気電池の場合、LISICON型酸化物としては、例えば、LiXO−LiYO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiAO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、AはMo及びSから選ばれる少なくとも1種である)、LiXO−LiZO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、ZはAl、Ga及びCrから選ばれる少なくとも1種である)、並びに、LiXO−LiBXO(XはSi、Ge,及びTiから選ばれる少なくとも1種であり、BはCa及びZnから選ばれる少なくとも1種である)、LiDO−LiYO(DはB、YはP、As及びVから選ばれる少なくとも1種である)等が挙げられる。特に、LiSiO−LiPO、LiBO−LiPO等が好ましい。
【0047】
また、リチウム空気電池の場合、ガーネット型酸化物としては、例えば、Li3+x2−v12で表される酸化物を挙げることができる。ここで、A、G、MおよびBは金属カチオンである。Aは、Ca、Sr、Ba及びMg等のアルカリ土類金属カチオン、又は、Zn等の遷移金属カチオンであることが好ましい。また、Gは、La、Y、Pr、Nd、Sm、Lu、Eu等の遷移金属カチオンであることが好ましい。また、Mとしては、Zr、Nb、Ta、Bi、Te、Sb等の遷移金属カチオンを挙げることができ、中でもZrが好ましい。また、Bは、例えばInであることが好ましい。xは、0≦x≦5を満たすことが好ましく、4≦x≦5を満たすことがより好ましい。yは、0≦y≦3を満たすことが好ましく、0≦y≦2を満たすことがより好ましい。zは、0≦z≦3を満たすことが好ましく、1≦z≦3を満たすことがより好ましい。vは、0≦v≦2を満たすことが好ましく、0≦v≦1を満たすことがより好ましい。なお、Oは部分的に、または、完全に二価アニオン及び/又は三価のアニオン、例えばN3−と交換されていてもよい。ガーネット型酸化物としては、LiLaZr12が等のLi−La−Zr−O系酸化物が好ましい。
【0048】
(負極)
負極は、金属イオン種を放出・取り込み可能な負極活物質を含有する負極層を備える。負極は、負極層に加えて、負極層の集電を行う負極集電体を備えていてもよい。
負極活物質は、金属イオン種の放出・取り込みが可能なものであれば特に限定されず、例えば、金属イオンを含有する単体金属、合金、金属酸化物、金属硫化物、及び金属窒化物等が挙げられる。また、炭素材料も負極活物質として用いることができる。負極活物質としては、単体金属又は合金が好ましく、特に単体金属が好ましい。負極活物質の単体金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、アルミニウム、亜鉛及び鉄等が挙げられ、合金としては、これら単体金属を少なくとも1種含む合金が挙げられる。
より具体的には、リチウム空気電池の負極活物質としては、例えば金属リチウム;リチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等のリチウム合金;スズ酸化物、ケイ素酸化物、リチウムチタン酸化物、ニオブ酸化物、タングステン酸化物等の金属酸化物;スズ硫化物、チタン硫化物等の金属硫化物;リチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等の金属窒化物;並びにグラファイト等の炭素材料等を挙げることができ、中でも金属リチウム及び炭素材料が好ましく、高容量化の観点から金属リチウムがより好ましい。
【0049】
負極層は、少なくとも負極活物質を含有してればよいが、必要に応じて、負極活物質を固定化する結着材を含有していてもよい。例えば、負極活物質として箔状の金属や合金を用いる場合には、負極層を負極活物質のみを含有する形態とすることができるが、粉末状の負極活物質を用いる場合には、負極層を負極活物質と結着材を含有する形態とすることができる。また、負極層は、導電性材料を含有していてもよい。結着材及び導電性材料の種類、使用量等については、上述した空気極層と同様であるため、ここでの説明は省略する。
【0050】
負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されない。例えば、ステンレス、ニッケル等が挙げられる。負極集電体の形状としては、例えば、箔状、板状、及びメッシュ状等が挙げられる。また、電池ケースが負極集電体としての機能を有していてもよい。
また、図1のように、2つ以上の発電要素を積層して直列接続する場合、末端の発電要素の負極集電体としては、空気極集電体のような導電性多孔質体(図1中の導電性多孔質体10)であることが好ましい。導電性多孔質体であることによって、酸素含有ガスの未反応分を外装体の外部へと効率よく排出するための流れを形成することができるからである。このように負極集電体が多孔質構造を有する場合、空気極集電体同様の理由から、延在部を有することが好ましく、特に延在部の少なくとも表面が絶縁性材料で被覆されていることが好ましい。また、空気極集電体同様の理由から、負極層と接触する領域の多孔質構造が閉塞されていることが好ましい。
【0051】
負極の製造方法は特に限定されない。例えば、箔状の負極活物質と負極集電体とを重ね合わせて加圧する方法が挙げられる。また、別の方法として、負極活物質と結着材とを含有する負極材混合物を調製し、該混合物を基材上又は負極集電体上に塗布、乾燥する方法を挙げることができる。
【0052】
発電要素は、上記のような空気極、電解質層、及び負極を積層したものであり、可撓性外装体の内部に収容される。
次に可撓性外装体について説明する。
【0053】
[可撓性外装体]
可撓性外装体は、可撓性フィルムから形成されており、外装体の内部に収容された発電要素に、外装体の外部からの酸素含有ガスによる圧力を負荷することができる。可撓性フィルムは、上記のように圧力を負荷できるものであれば特に限定されず、典型例として、ラミネートフィルムが挙げられる。ラミネートフィルムとしては、種々の電池の外装体として利用されているものから適宜選択して用いることが可能であり、例えば、アルミ層の一方の表面(外装体の外部側)に、耐衝撃性や材料補強を目的とした樹脂層(例えば、ポリエチレンテレフタレートやナイロン等)、が設けられ、他方の表面(外装体の内部)には、外装体の密封を目的とした接着層(例えば、ポリオレフィン製)が設けられたものが挙げられる。
【0054】
可撓性外装体には、可撓性外装体の内部に収容される発電要素の空気極集電体に連通する酸素取り込み孔が設けられる。酸素取り込み孔は、発電要素を可撓性外装体の外部から拘束する酸素含有ガスが、上記空気極集電体に到達することができれば、数、断面形状、配置位置、配置形態等に特に限定はない。例えば、図1に示すように、空気極集電体3の面方向と平行な面に設けられていてもよいし、或いは、図1における正極端子12が設けられた面(空気極集電体3の面方向と垂直な面)に設けられてもよい。
【0055】
可撓性外装体の外部から、発電要素を拘束し且つ酸素を供給する、酸素含有ガスは、常圧以上であって、発電要素をその積層方向に拘束可能であり、且つ、酸素を含有するものであればよい。
酸素含有ガスにより発電要素に負荷される圧力は、常圧(すなわち、大気圧)以上であればよいが、特に0.1MPa〜1MPa程度であることが好ましい。放電反応により酸素含有ガスが消費されても一定以上の圧力で加圧し続けることができるためである。
酸素含有ガスとしては、純酸素ガスの他、空気を用いることもでき、酸素濃度が15〜100体積%であることが好ましく、特に純酸素ガス(酸素濃度99.9体積%〜)であることが好ましい。尚、酸素含有ガス中に水分が含まれる場合、発電要素を構成する金属の腐食等が生じるおそれがあるため、酸素含有ガスは水分を含まない乾燥ガスであることが好ましい。
【0056】
[その他]
可撓性外装体の酸素取り込み孔には、酸素を選択的に透過させる酸素透過膜を配置してもよい。可撓性外装体外部からの水分や二酸化炭素などのガスの侵入を防止するためである。同様の観点から、酸素取り込み孔には、撥水性を有する撥水性膜を配置してもよい。
酸素透過膜としては、一般的なもの(例えば、ポリジメチルシロキサンなど)を用いることができ、配置位置は、可撓性外装体の内部であっても外部であってもよい。同様に、撥水性膜としては、一般的なもの(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)を用いることができ、配置位置は、可撓性外装体の内部であっても外部であってもよい。
【0057】
また、空気極及び負極には、それぞれ、外部との接続部となる端子を設けることができる。
本発明の金属空気電池の製造方法は特に限定されず、一般的な方法を採用することができる。
【実施例】
【0058】
[実施例1]
(金属空気電池の作製)
カーボンブラック(ケッチェンブラックインターナショナル製、ECP600JD)とポリテトラフルオロエチレン粉末とを、重量比で90:10となるように、エタノール溶媒で混合した後、ロールプレスにより圧延成形して、空気極層を作製した。
また、PP13TFSA(関東化学製)にLiTFSA(キシダ化学製)を0.32mol/kgの濃度となるように添加し、Ar雰囲気下で一晩攪拌混合溶解させたものと、PVdFとを、重量比で8:2となるようにアセトン溶媒を用いて混合した後、基材上に、流延塗布、乾燥させて膜化した。基材を剥離した後、膜を切断し、ゲル電解質層を得た。
一方、金属Li(本城金属製)(負極層)に、Ni箔(ニラコ製)を貼付した。
次に、多孔度の異なる3つのNi多孔質体(住友電工製)を、多孔度が順に大きくなるように積層し、プレス成形して導電性多孔質積層体を作製した。尚、導電性多孔質積層体は、上記空気極層、上記電解質層、及び、上記金属Li−Ni箔積層体の外周縁よりも、一回り大きい寸法及び形状とし、これら空気極層、電解質層、及び積層体とその中心点を重ね合わせた時にこれら各層の外周縁から延在する延在部の表面に、ポリテトラフルオロエチレン処理を行った。
上記にて作製した導電性多孔質積層体、空気極層、電解質層、及び、負極層−Ni箔積層体とを、この順序で積層し、発電要素を作製した。尚、導電性多孔質積層体は、多孔度が大きい層が空気極層側になるように積層した。また、負極層−Ni箔積層体は、負極層が電解質層側に成るように積層した。
上記発電要素を2つ作製し、2つの発電要素を、導電性多孔質積層体とNi箔とが接するように重ね合わせ、さらに、端部に位置するNi箔上に、導電性多孔質積層体を積層した。このとき、Ni箔上に積層した導電性多孔質積層体は、多孔度が小さい層がNi箔側になるように積層した。
得られた電極積層体を、酸素取り込み孔を有するアルミラミネートフィルムからなる外装体内に収容し、封止した。酸素取り込み孔には、テトラフルオロエチレンからなる撥水膜を配置した。
【0059】
(金属空気電池の評価)
上記外装体内に収容した電極積層体を、純酸素ガスを充填した密閉容器内(1.1気圧=0.11MPa)に設置し、該密閉容器を60℃で保持しながら、0.1mA/cmの一定電流密度下、充放電試験を行った。
開回路電圧が5.81Vであり、2.6Vでの放電平担部が認められ、さらには112時間の連続放電が可能であった。
【符号の説明】
【0060】
1…空気極
2…空気極層
3…空気極集電体
3A…延在部
4…負極(負極層)
5…電解質層
6…発電要素(6A、6B)
7…可撓性外装体
8…酸素取り込み孔
9…ガス流路
10…導電性多孔質体
11…酸素含有ガス
12…正極端子
13…負極端子
100…金属空気電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を活物質とする空気極層を有する空気極と、負極活物質を含む負極層を有する負極と、前記空気極層及び前記負極層の間に配置され、金属イオンの伝導を担う電解質層とが、積層された発電要素、並びに、該発電要素を収容する、可撓性フィルムで形成された可撓性外装体を備える金属空気電池であって、
前記空気極は、前記電解質層側から、前記空気極層と、導電性及び多孔質構造を有する空気極集電体とが、順に積層した構造を有し、
前記可撓性外装体は、前記空気極集電体に連通する酸素取り込み孔を有し、
前記酸素取り込み孔に酸素を供給する酸素含有ガスによって、前記可撓性外装体の外部から、前記発電要素がその積層方向に常圧以上の圧力で加圧されることを特徴とする、金属空気電池。
【請求項2】
前記空気極集電体は、前記発電要素における積層方向と直交する面の外周縁が、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極の前記積層方向と直交する面の外周縁から延在する延在部を有する、請求項1に記載の金属空気電池。
【請求項3】
前記空気極集電体は、前記直交面の外周縁が、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極の前記直交面の外周縁よりも一回り大きい寸法及び形状を有し、
前記空気極集電体、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極が、前記直交面の中心点を重ね合わせて積層され、前記延在部が、前記空気極層、前記電解質層及び前記負極の外周縁を取り囲んでいる、請求項2に記載の金属空気電池。
【請求項4】
前記延在部は、少なくとも表面が絶縁性材料で被覆されている、請求項2又は3に記載の金属空気電池。
【請求項5】
前記発電要素が2つ以上積層して直列接続されており、
前記負極層に隣接する前記空気極集電体が、前記負極層と接触する領域において、前記多孔質構造が閉塞している、請求項1乃至4のいずれかに記載の金属空気電池。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−37999(P2013−37999A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−174979(P2011−174979)
【出願日】平成23年8月10日(2011.8.10)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】