説明

金属箔片装飾素材及び金属箔装飾素材

【課題】本願発明は、味覚とともに視覚を重要視する食べ物に振りかけて使用される食用に適する装飾用素材であって、手間の掛からない工程で製造することができる装飾用素材を提供する。
【解決手段】所定量の水に所定量のアラビアガム、キサンタンガム及び/又はジェランガムを溶解する増粘多糖類溶解の第1の工程と、平滑な平板上に載置した剥離フィルム上に載置下金属箔表面に前記アラビアガム水溶液、キサンタンガム水溶液及び/又はジェランガム水溶液を所定量被覆する増粘多糖類水溶液被覆の第2の工程と、被覆された前記金属箔を所定環境下で乾燥させる第3の工程と、乾燥した前記金属箔を粉砕機で粉砕する第4の工程と、から製造される金属箔片装飾素材とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、生菓子やチョコレートなどに振りかけて使用される食用装飾素材に関する。
【背景技術】
【0002】
デコレーションケーキなどのような味覚とともに視覚を重要視する食品には、金粉や銀粉をまぶして豪華な印象を与えるように飾り立てることがおこなわれる。
【0003】
この金粉や銀粉は、金箔や銀箔を粉砕機で粉砕した切り廻しが使用されるが、金粉や銀粉は非常に軽量であり、均一にまぶすことはかなり難しいことから、本願出願人会社では、従来からフィルム状のプルランに金箔等を貼った後、粉砕機で粉砕して粒状にした金属箔被覆プルラン粒(以下、「金属箔被覆プルラン粒」という。)が使用される。
この本願出願人会社が使用する従来の金属箔被覆プルラン粒は、
(1)プルランシート((株)林原商事製商品名「プルラン無地フィルム40μm」)にシェラック((株)岐阜セラック製造所製商品名「ドラックA−25」)を塗布し乾燥させる。
(2)上記プルランシートを略75℃に暖めシェラックを塗布した面に金箔を貼り付ける。
(3)金箔を貼り付けたプルランシートを粉砕機で粉砕して粒状にする。
の工程を経て製造される。
なお、プルランシートとは、デンプンを原料として、黒酵母の一種であるAureobasidium pullulansを培養して得られる天然多糖類のマルトトリオース(グルコース3分子がα−1,4結合)が規則正しく、α−1,6結合した無味無臭の白色粉末であるプルランを水に溶かし、シート状に固めたものである。
【0004】
また、シェラック(「Shellac」:JIS K 59)とは、天然のラックカイガラムシが豆科・桑科の樹木に寄生して、樹液を吸って体外に分泌した樹脂状物質ある。ラックカイガラムシが群集して樹脂層に一塊りとなったものを粉砕し、ふるい分けをして水洗し、虫殻や木質、水溶性色素などを除去し、精製して得られるのが、天然のポリエステル樹脂であるシェラックである。天然樹脂としては唯一の熱硬化性樹脂で、常温でアルコールにゆっくりではあるがよく溶け、そして、熱に容易に溶融するが一度熱硬化したあとは、熱や溶剤にも侵されなくなる性質を有する。シェラックは、強靭な耐油性、 電気的不導体、すぐれた耐摩耗性を有し、ワニスで塗布されたシェラックの薄い皮膜は、光沢にすぐれ、耐摩耗性、密着性、耐久性に富んだ円滑な表面を形成する。
【0005】
一方、金箔または銀箔を層形成した可食性積層体として、例えば、特開2000−41591号公報に開示のものがある。このものは「脂質含有食品に対しても良く付着して、その食品を装飾できる可食性積層体を提供する」ことを目的として、「食用可能な装飾層と、その装飾層を食品に付着させるための食用可能な付着層とが積層されてなり、その付着層は、高級脂肪酸または(および)油脂素材が浸透することが可能な第1の層と、その第1の層よりも前記装飾層側に高級脂肪酸または(および)油脂素材を含有する第2の層とを少なくとも有する」構成とすることにより、上記の目的達成を図ったものである。
【特許文献1】特開2000−41591号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、前述した金属箔被覆プルラン粒では、プルランシートに金箔を貼り付ける(2)の工程において、プルランシートに直接金箔を貼り付けることは困難であることから、金箔を静電気によりあかうつし紙に貼り付けたあかうつし箔を使用している。すなわち、あかうつし箔のあかうつし紙のみからなる周縁部をカットした後、あかうつし箔の金箔面をプルランシートに向けて隙間なく張り詰め、その後、あかうつし紙のみを剥がす、という手間を要する工程が必要になる。
【0007】
また、特開2000−41591号公報に開示のものでは、前述したように「脂質含有食品」に対する付着性を考慮するものであるため、付着層として、高級脂肪酸または(および)油脂素材が浸透可能な第1の層や、その第1の層よりも装飾層側に高級脂肪酸または(および)油脂素材を含有する第2の層を少なくとも必須の構成としている。
【0008】
本願発明は、高級脂肪酸や油脂素材の浸透可能な層や高級脂肪酸や油脂素材含有層を必要とせずに、様々な素材に振りかけ、接着させることが可能であり、また、極めて簡単で手間の掛からない工程で製造することができる装飾用素材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本願請求項1に係る金属箔片装飾素材は、所定量の水に所定量のアラビアガム、キサンタンガム及び/又はジェランガムの一種又は二種を溶解する増粘多糖類溶解の第1の工程と、平滑な平板上に載置した剥離フィルム上に載置した金属箔表面に前記溶解したアラビアガム水溶液、キタンサンガム水溶液及び/又はジェランガム水溶液の一種又は二種を被覆する第2の工程と、被覆された前記金属箔を所定環境下で乾燥させる第3の工程と、乾燥した前記金属箔を粉砕機で粉砕する第4の工程と、により製造されることを特徴とする金属箔片装飾素材。
また、本願請求項2に係る金属箔片装飾素材は、請求項1に記載の金属箔片装飾素材であって、前記金属箔は金箔または銀箔であることを特徴としている。
そして、本願請求項3に係る金属箔片装飾素材は、前記第4の工程に代え、乾燥したアラビアガム被覆金属箔、キタンサンガム被覆金属箔及び/又はジェランガム被覆金属箔を所定の型で打ち抜きまたは裁断工程を経て、製造されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本願発明に係る金属箔片装飾素材を製造する第2の工程では、平滑な平板上に載置した剥離フィルム上の金属箔に第1の工程で製造されたアラビアガム水溶液を所定量塗布・被覆することとしていることから、従来の金属箔被覆プルラン粒の製造で使用されるあかうつし箔は不要である。また、直接平板上に載置した金属箔にアラビアガム水溶液を塗布・被覆することはそれほど熟練の技術を必要としない。さらに、前記の第2の工程以外のアラビアガム水溶液を製造する第1の工程、塗布・被覆された金属箔を乾燥させる第3の工程および金属箔片装飾素材を粉砕機で粉砕する第4の工程も、特殊な技能を必要とせず、かつ、極めて簡単な装置で実施することができるので、製品に掛かる原価は略材料費のみであり、経済的に製造することができる。
【0011】
また、第1の工程ないし第3の工程で製造される金属箔片装飾素材はシート状のアラビアガムの表面に金属箔が被覆されていて、乾燥したシート状のアラビアガム(厚さ約20μm)は、ほぼ無色透明であるため、裏面からも金色に見える。したがって、第4の工程で粉砕された粒状の金属箔片装飾素材(以下、「金属箔片装飾素材粒」という。)の外観は、金属粒状を呈することとなり、金属箔を金箔または銀箔とした場合には、見る者にとって、それぞれの集合体は、砂金または砂銀のような感じを与えることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本願発明を実施するための最良の形態に係る金属箔片装飾素材の実施例について、図1および図2を参照しながら説明する。
なお、図1は、実施例1に係る金属箔片装飾素材の作り方を示す工程図であり、図2は、実施例1に係る金属箔片装飾素材の断面模式図である。また、図2において、符号1は金属箔片装飾素材、符号2は金箔、符号3はアラビアガム、である。
なお、アラビアガムは、アラビアゴムノキ(学名:Acacia senegal Willdenow)等の樹皮の傷口からの分泌物を乾燥させたものであり、乾燥品は不規則な粒状や塊状を呈し、水に対する溶解性が高く、水溶液は強い粘性を示し、良好な乳化安定性を示すため、食品添加物のうち、乳化剤や安定剤として飲料や食品に広く用いられている。身近なところではアイスクリームなどの菓子類や、ガムシロップが典型的な用途であり、食品としての安全性が高い。
【0013】
(実施例1)
まず、実施例に係る金属箔片装飾素材の作り方について、主に、図1に基づいて説明する。
(1)材料
アラビアガム1Kgに対し以下の割合の各材料を用意する。
ア.顆粒状のアラビアガム(三栄薬品貿易(株)製)――1Kg
イ.金箔銅抜き三号または金箔四号――1,200枚
ウ.水――3,000cc
エ.台紙 37cm×25cm――200枚
オ.剥離フィルム 35cm×24cm((株)日東紙工製)――200枚
カ.9mm幅のマスキングテープ
【0014】
(2)製造工程
なお、製造に際しての作業環境は必ず温度18℃〜28℃、湿度40%〜70%で行うようにする。
(i)アラビアガム水溶液製造工程(第1の工程:図1の[S1、S2]で示す。)
第1の工程は、以下の2つの工程から構成される。
ア.容器に水3,000ccを入れ沸騰させ、アラビアガム1Kgを少しずつ攪拌させながら投入する。アラビアガムが固まりになっていると溶けにくいのでへらですり潰すように混ぜる。アラビアガム投入後、攪拌させながら15分間、中火で加熱する。この際、アラビアガムは焦げ付きやすいため熱をかけたまま放置しないようにする(図1の[S1])。
イ.アラビアガムが全て溶けきったら火を止め、流水で60分間冷まし、保存用容器へと移す。保管中はふたをして冷暗所にて保管する。なお、品質の劣化を防ぐため、作成日を含め2日以内に使いきるようにする(図1の[S2])。
【0015】
(ii)アラビアガム塗布・被覆工程(第2の工程:図1の[S3]で示す。)
第2の工程は、以下の3つの工程から構成される。
ア.平滑なテーブル上に台紙を置き、この台紙の略中央にくるように剥離フィルムを載せ、剥離フィルムの両端をマスキングテープで固定する。剥離フィルムは、PETシートの表面にシリコンが塗布されており、剥離性に優れている。
イ.金箔がシワにならないように1枚の剥離シートに対し6枚の金箔を並べて載せる。この時、金箔と金箔が重なると、発色の低下等の品質の低下の原因となるので注意するとともに、金箔と金箔との隙間が大きいとアラビアガム単体の透明部分が増えるため極力隙間は空けないようにする。
ウ.計量スプーンでアラビアガム液を10cc取り、金箔の上に流す。そして、塗装用へらで全体に均一に広げる。なお、へらを強く押しつけると箔に傷が付いてしまうのでへらを軽く持って広げるようにする。
【0016】
(iii)乾燥工程(第3の工程:図1の[S4]で示す。)
第3の工程は、以下の2つの工程から構成される。
ア.第2の工程を終えたアラビアガム被覆金箔を順次、乾燥台に載せる。乾燥台は25段からなり、1段あたり8シート載せることが可能であるため、25段で200シート載せることができるが、ホコリの付着防止のためのカバーをかけるので最上段は空けておくようにする。
イ.ホコリの付着防止の専用カバーをかけ、温度50℃〜60℃の乾燥機で2時間、好ましくは、温度18℃〜28℃、湿度40%〜70%で48時間乾燥させる。
(iv)粉砕工程(第4の工程:図1の[S5]で示す。)
第4の工程は、以下の3つの工程から構成される。
ア.第3の工程においてアラビアガムが完全に乾燥するとアラビアガム被覆金箔が反り、端部は自然に剥離する。そして、剥離用へらで台紙からアラビアガム被覆金箔を掻き落とす。
イ.掻き落としたアラビアガム被覆金箔を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径0.3mm〜1.0mm穴の網で篩いにかけて金属箔片装飾素材を製造する。
ウ.粉砕後のアラビアガム被覆金箔を20メッシュ〜80メッシュで濾す。20メッシュ〜80メッシュを通過した金属箔片装飾素材を製品とする。
エ.20メッシュ〜80メッシュで篩に残った金属箔片装飾素材を再度、粉砕機にかける。そして、20メッシュ〜80メッシュで濾した後、篩いに残った金属箔片装飾素材は不適合品として再生処理とする。
以上、第1の工程ないし第4の工程を経て、金属箔片装飾素材が製造される。
【0017】
なお、製品とするためには、さらなる粉砕工程(後工程:図1の[S5、S6]で示す。)が必要である。
この後工程において、20メッシュ〜80メッシュをパスした合格品は計量し、グラシン袋に入れ、乾燥剤と共にチャック付きPP袋に入れ明細(製品名、アラビアガム液の製作日、内包g数)を記入し保管する。
以上の工程を経て、金属箔片装飾素材は製品となる。
なお、本実施例においては、金箔を使用しているが、金箔に代えて銀箔等他の金属箔を用いることもできることは勿論である。
【0018】
このようにして製造された金属箔片装飾素材は、断面模式的には、図2に示されるような形状ないしは構造を有する。
図は、本実施例1に係る金属箔片装飾素材の断面を模式的に表した模式図である。金属箔片装飾素材1は、装飾層である金箔2および支持層である乾燥したアラビアガム3の二層から構成されている。そして、普通タイプの金属箔片装飾素材1自体の大きさは、直径が略1mmであり、金箔2の厚さは略0.1μmであり、アラビアガム3の厚さは略0.02mmである。
【0019】
(実施例2)
上記実施例1においては、第4の工程で掻き落としたアラビアガム被覆金箔を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径0.3mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イ))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を80メッシュで濾したが(第4工程(ウ))、その外にも、直径1.5mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イー2))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を20メッシュで濾すことにより(第4工程(ウー2))、粗タイプの金属箔片装飾素材とする。
【0020】
図3(a)は、本実施例2の粗タイプの金属箔片装飾素材集合(全体図)の写真(撮影者:弁理士大滝均、撮影日:平成18年8月3日)であり、同図3(b)はその拡大写真を模式的に表現した拡大図であり、別途提出の金属箔片装飾素材の拡大写真(50倍)を図面化したものである。この拡大写真は、石川県工業試験場(金沢市鞍月2丁目1番地:有田良児場長)において、平成18年7月25日に撮影したものである。図3(b)において、ハッチング(符号12)に示す部分がアラビアガム部分であり、ハッチング(符号20)で示す部分がその表面に被覆された金箔、さらには、白地(符号30)で示す部分が背景を示す部分である。
【0021】
図3(a)から明らかなように、集合する金属箔片装飾素材もその表面に金箔が被覆され、集合体にムラがなく、また図3(b)から明らかなように、一粒の金属箔片装飾素材12であっても、アラビアガム12の表面にしっかりと金箔20が被覆されている様子が窺われる。
【0022】
(実施例3)
また、上記実施例1においては、第4の工程で掻き落としたアラビアガム被覆金箔を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径1mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イ))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を80メッシュで濾したが(第4工程(ウ))、その外にも、直径1mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イー3))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を30メッシュで濾すことにより(第4工程(ウー3))、細タイプの金属箔片装飾素材とする。
【0023】
図4(a)は、本実施例3の細タイプの金属箔片装飾素材集合(全体図)の写真(撮影者:弁理士大滝均、撮影日:平成18年8月3日)であり、同図4(b)はその拡大写真を模式的に表現した拡大図であり、別途提出の金属箔片装飾素材の拡大写真(50倍)を図面化したものである。この拡大写真は、石川県工業試験場(金沢市鞍月2丁目1番地:有田良児場長)において、平成18年7月25日に撮影したものである。図4(b)において、ハッチング(符号12)に示す部分がアラビアガム部分であり、ハッチング(符号20)で示す部分がその表面に被覆された金箔、さらには、白地(符号30)で示す部分が背景を示す部分である。
【0024】
図4(a)から明らかなように、集合する金属箔片装飾素材もその表面に金箔が被覆され、集合体にムラがなく、また図4(b)から明らかなように、一粒の金属箔片装飾素材12であっても、アラビアガム12の表面に金箔20が被覆されている様子が窺われる。
【0025】
(実施例4)
また、上記実施例1においては、第4の工程で掻き落としたアラビアガム被覆金箔を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径1mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イ))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を80メッシュで濾したが(第4工程(ウ))、その外にも、直径0.85mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イー4))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を40メッシュで濾すことにより(第4工程(ウー4))、極細タイプの金属箔片装飾素材とする。
【0026】
(実施例5)
また、上記実施例1においては、第4の工程で掻き落としたアラビアガム被覆金箔を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径1mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イ))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を80メッシュで濾したが(第4工程(ウ))、その外にも、直径0.5mm穴の網で篩いにかけ(第4工程(イー5))、その後、粉砕後のアラビアガム被覆金箔を100メッシュで濾すことにより(第4工程(ウー5))、極々細タイプの金属箔片装飾素材とする。
【0027】
図5(a)は、本実施例5の極々細タイプの金属箔片装飾素材集合(全体図)の写真(撮影者:弁理士大滝均、撮影日:平成18年8月3日)であり、同図5(b)はその拡大写真を模式的に表現した拡大図であり、別途提出の金属箔片装飾素材の拡大写真(50倍)を図面化したものである。この拡大写真は、石川県工業試験場(金沢市鞍月2丁目1番地:有田良児場長)において、平成18年7月25日に撮影したものである。図5(b)において、ハッチング(符号12)に示す部分がアラビアガム部分であり、ハッチング(符号20)で示す部分がその表面に被覆された金箔、さらには、白地(符号30)で示す部分が背景を示す部分である。
【0028】
図5(a)から明らかなように、集合する金属箔片装飾素材もその表面に金箔が被覆され、集合体にムラがなく、また図5(b)から明らかなように、一粒の金属箔片装飾素材12であっても、アラビアガム12の表面に金箔20が被覆されている様子が窺われる。
【0029】
粉砕及び篩いの網目の大きさによって様々な大きさ(タイプ)の金属箔片装飾素材を製造することができるが、上記3つのタイプのものを各瓶に入れたものを写真にて示す。図6は、左から上記実施例2に係る粗タイプの金属箔片装飾素材、実施例3に係る細タイプの金属箔片装飾素材、実施例5に係る極々細タイプの金属箔片装飾素材である。図6から明らかなように、各装飾素材の大きさをうかがい知れる。
【0030】
金属箔片装飾素材1は、乾燥した砂や粉のようにサラサラとした感触を有していて、金粉と異なり指で扱っても指にこびりつくことがなく、扱いが容易である。また、前述したように乾燥したシート状のアラビアガムは半透明な淡黄色を呈し、裏面からも金色に見えることから、たとえば、装飾素材としてケーキ等に振りかけた場合であっても、振りかけた金属箔片装飾素材1が表面を向いていようが裏面を向いていようが、見る者にとって、砂金を振りかけたような感じを与えることになる。
【0031】
(実施例6)
上記第4の工程では、乾燥した前記金属箔を粉砕機で粉砕して、金属箔片装飾素材としたが、この第4の粉砕の工程に代え、乾燥した金属箔(アラビアガム層が裏面に形成されている)を一定の型で打ち抜きまたは裁断等を行うことによって、例えば、金・銀からなる装飾文字や図形(星形、雪片、花びら等)の形をした金属箔装飾素材を容易に製造することができる。
このことは、お菓子作りのセットに名前を入れたり、金色や銀色からなる星型やサンタクロース・トナカイ等の型抜き装飾素材とすることができ、食品装飾の幅が拡大するという効果を奏する。
(変形実施例1)
【0032】
上述した実施例1ないし実施例6では、いずれもアラビアガム水溶液を金箔等の金属箔に塗布・被覆したが、これは「アラビアガム水溶液」に限られない。本願発明者らは、上記のように水にアラビアガムを溶かし込んだ「アラビアガム水溶液」に代え、(A)アラビアガム溶液100mlに対し、キサンタンガム10%溶液10ccを添加したもの(以下「キサンタンガム添加アラビアガム水溶液」という)や、(B)アラビアガム溶液100mlに対し、ジェランガム10%溶液10ccを添加したもの(以下「ジェランガム添加アラビアガム水溶液」という)、(C)アラビアガム溶液100mlに対し、キサンタンガム10%溶液5cc、ジェランガム10%溶液5ccを添加したもの(以下「キサンタンガムージェランガム添加アラビアガム水溶液」という)の「添加アラビアガム水溶液」を作成し、この水溶液についても金属箔に塗布・被覆し、塗布・被覆が乾燥した後に、粉砕を実施した。
【0033】
ここに「キサンタンガム」とは、微生物(Xanthomonas campestris)から生産される多糖類で、マンノース、グルコース、グルクロンの糖で構成され、主鎖はβー1,4結合したグルコースからなり、側鎖は主鎖のグルコース残基1つおきにマンノース2分子とグルクロン酸が結合した物質であり、主として、様々な食品に粘度を付与する目的の増粘多糖類として知られており、少量の添加量で高い粘度を発現し、食品中の酸、塩分などの影響を受け難いこと、また、加工工程における熱にも強い等の特徴を有することから、安定性の高い増粘多糖類として知られているものである。
また、「ジェランガム」とは、水草から採取された微生物,シュードモナス・エロディア(Pseudomonasebdea)がブドウ糖等を栄養源として菌体外に産出する多糖類を分離・精製し、発酵によって得られ、食品用のゲル化・安定剤として知られている天然の多糖類である。
【0034】
その結果、上記(A)の実施品については、官能的評価による輝きは、従来技術として挙げた上記従来品(プルラン使用タイプ)よりも良好で、当初のアラビアガム単体タイプと比較すると同等レベルの物作りが可能という評価を得た。また、上記(B)の実施品については、官能的評価による輝きは、上記従来技術として挙げた従来品(プルラン使用タイプ)よりも良好で、当初のアラビアガム単体タイプと比較すると輝きも増し、同等レベル以上の物作りが可能という評価を得た。さらに、上記(C)の実施品については、官能的評価による輝きは、上記従来技術としてあげた従来品(プルラン使用タイプ)よりも良好で、当初のアラビアガム単体タイプと比較すると同等レベルの物作りが可能という評価を得た。
【0035】
上記のことから、上記(A)(B)(C)に掲げる添加アラビアガム水溶液を使用する場合には、特に(B)の実施品については、アラビアガム単体で使用するよりも、高輝度が向上し、より良い仕様となることが確認された。
【0036】
次に、上記「アラビアガム水溶液」に代え、(A)キサンタンガム単体、(B)ジェランガム単体、(C)キサンタンガムとジェランガムに同量組み合わせ添加について、その台紙への塗布・被覆工程、同乾燥工程、同粉砕工程を前記「アラビアガム水溶液」を使用した場合と同様にして、金属箔片装飾素材を作製した。
(変形実施例2)
具体的には、前記アラビアガム水溶液の代わりに、(A)95度の水300mlに対し、キサンタンガム1gを添加した(以下、この水溶液を「キサンタンガム水溶液」という)。なお、添加前のキサンタンガムは、濃度約3%程度のものであった。
そして、この「キサンタンガム水溶液」を前述した塗布・被覆工程(図1の[S3]で示される)において、前記「アラビアガム水溶液」に代え、剥離フィルム上に載置された金箔に塗布・被覆する。すなわち、
ア.平滑なテーブル上に台紙を置き、この台紙の略中央にくるように剥離フィルムを載せ、剥離フィルムの両端をマスキングテープで固定する。
イ.金箔がシワにならないように1枚の剥離シートに対し6枚の金箔を並べて載せる。
ウ.計量スプーンで「キサンタンガム水溶液」を10cc取り、金箔の上に流す。そして、塗装用へらで全体に均一に広げる。
等の工程により、上記「キサンタンガム水溶液」を金箔に塗布・被覆する。
【0037】
剥離フィルム上の金箔に「キサンタンガム水溶液」が塗布・被覆されたら、上述同様、次の乾燥工程(図1の[S4]で示される。)に移る。乾燥工程は、上述同様、具体的には、以下の2つの工程から構成される。
ア.前記塗布・被覆工程を終えたキタンサンガム水溶液が塗布・被覆された金箔(以下、「キタンサンガム被覆金箔」という)を順次、乾燥台に載せる。
イ.温度50℃〜60℃の乾燥機で2時間、好ましくは、温度18℃〜28℃、湿度40%〜70%で48時間乾燥させる。
【0038】
次に、上記乾燥工程が完了したら、粉砕工程(図1の[S5]で示される)に移る。
粉砕工程は、以下の3つの工程から構成される。
ア.前記工程でキサンタンガム水溶液から水分が除去され、キサンタンガム被覆金箔端部が自然に剥離フィルムから剥離する状態となる。このような状態になったら、剥離用へらで前記剥離フィルムから「キサンタンガム被覆金箔」を掻き落とす。
イ.掻き落とした「キサンタンガム被覆金箔」を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径0.3mm〜1.0mm穴の網で篩いにかけて金属箔片装飾素材(以下、「キサンタンガム被覆金属箔片装飾素材」という)を作製する。
ウ.その後、さらに、「キサンタンガム被覆金属箔片装飾素材」を20メッシュ〜80メッシュで濾す。20メッシュ〜80メッシュを通過した「キサンタンガム被覆金属箔片装飾素材製品」とする。
【0039】
この「キサンタンガム被覆金属箔片装飾素材」は、目視評価によると、その輝きは従来品(プルラン使用タイプ)よりも良好であるが、上記実施例1ないし実施例6に示したアラビアガム単体タイプと比較すると、膜厚が薄いためであろうか、表面に若干のシワを形成し、このため輝度が若干劣るが用途によってはこのような製品も実用域にあるという評価を得た。
【0040】
(変形実施例3)
次に、上記アラビアガム水溶液に代え、(B)95度の水300mlに対し、ジェランガム1gを添加した水溶液を作製する(以下、この水溶液を「ジェランガム水溶液」という)。なお、添加前のジェランガムの濃度は約3%程度であった。 そして、この「ジェランガム水溶液」を前述した塗布・被覆工程(図1の[S3]で示される)に従って剥離フィルム上に載置された金箔に塗布・被覆し、さらに、上述同様、上述の乾燥工程(図1の[S4]で示される。)に従って乾燥させる。そして、ジェランガム被覆金箔の端部が自然に剥離フィルムから剥離する状態となるまで乾燥したら、剥離用へらで前記剥離フィルムから「ジェランガム被覆金箔」を掻き落とし、掻き落とした「ジェランガム被覆金箔」を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径0.3mm〜1.0mm穴の網で篩いにかけて金属箔片装飾素材(以下、同様に「ジェランガム被覆金属箔片装飾素材」という)を作製する。
【0041】
この「ジェランガム被覆金属箔片装飾素材」は、目視的評価によると、その輝きは従来品(プルラン使用タイプ)よりも良好であるが、上記実施例1ないし実施例6に示したアラビアガム単体タイプと比較して、膜厚が薄いためであろうか、表面に若干のシワを形成し、このため輝度が若干下がるものの用途によっては、このような製品も実用域にあるという評価を得た。なお、この実施例については、溶液自体の透明度が高いため、前記変形実施例2と比較して、輝きが良好であり、製品としては、上記変形実施例2よりも、優れているという結果を得た。
【0042】
(変形実施例4)
ついで、上記アラビアガム水溶液に代え、95度の水300mlに対し、前記キサンタンガム0.5gと前記ジェランガム0.5gを添加した水溶液を作製した(以下、この水溶液を「キサンタンガム・ジェランガム水溶液」という。)。なお、添加前の「キサンタンガム」及び「ジェランガム」の濃度は各々約1.5%である。
そして、この「キサンタンガム・ジェランガム水溶液」を前述した塗布・被覆工程(図1の[S3]で示される)に従って剥離フィルム上に載置された金箔に塗布・被覆し、さらに、上述同様、上述の乾燥工程(図1の[S4]で示される。)に従って乾燥させる。そして、キサンタンガム・ジェランガム被覆金箔の端部が自然に剥離フィルムから反りあがる状態となるまで乾燥したら、剥離用へらで前記剥離フィルムから「キサンタンガム・ジェランガム被覆金箔」を掻き落とし、掻き落とした「キサンタンガム・ジェランガム被覆金箔」を粉砕機(相互産業株式会社製)に入れて粉砕し、その後、直径0.3mm〜1.0mm穴の網で篩いにかけて金属箔片装飾素材(以下、「キサンタンガム・ジェランガム被覆金属箔片装飾素材」という)を作製する。
【0043】
この「キサンタンガム・ジェランガム被覆金属箔片装飾素材」に関する目視評価によれば、その輝きは従来品(プルラン使用タイプ)よりも良好であり、また、上記実施例1ないし実施例6の当初のアラビアガム単体のものと比較すると、膜厚が薄いため、表面にシワを形成し、若干輝度が下がるが用途によっては実用に耐えうるという評価を得た。
【0044】
なお、前記剥離フィルムからの剥離作業等の作業性に関しては、上記変形実施例2ないし変形実施例4では、膜厚が薄いため粉砕した物は軽く、十分な注意がないと少しの風圧に対して舞い上がり等が生じて、離形作業等については、上記の実施例1ないし実施例6のアラビアガムのタイプものと比べて作業性が劣る点があるが、製品化に際して極端に支障となるものではなく、むしろ、重量感を要しない仕様や用途では別途の製品需要はあるものとされた。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】図1は、本実施例に係る金属箔片装飾素材の作り方を示す工程図である。
【図2】図2は、本実施例に係る金属箔片装飾素材の断面模式図である。
【図3】図3(a)は、本実施例2の粗タイプの金属箔片装飾素材集合(全体図)の写真であり、同図3(b)はその粒状態を示す拡大図である。
【図4】図4(a)は、本実施例3の細タイプの金属箔片装飾素材集合(全体図)の写真であり、同図4(b)はその粒状態を示す拡大図である。
【図5】図5(a)は、本実施例5の極々細タイプの金属箔片装飾素材集合(全体図)の写真であり、同図5(b)はその粒状態を示す拡大図である。
【図6】図6は、粗タイプ、細タイプ、極々細タイプの金属箔片装飾素材を比較した写真である。
【符号の説明】
【0046】
1 金属箔片装飾素材
2、20 金箔
3、12 アラビアガム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定量の水に所定量のアラビアガム、キサンタンガム及び/又はジェランガム一種又は二種を溶解する増粘多糖類溶解の第1の工程と、
平滑な平板上に載置した剥離フィルム上に載置した金属箔表面に前記溶解したアラビアガム水溶液、キタンサンガム水溶液及び/又はジェランガム水溶液の一種又は二種を被覆する増粘多糖類水溶液被覆の第2の工程と、
被覆された前記金属箔を所定環境下で乾燥させる第3の工程と、
乾燥した前記金属箔を粉砕機で粉砕する第4の工程と、
により製造されることを特徴とする金属箔片装飾素材。
【請求項2】
前記金属箔は金箔または銀箔であることを特徴とする請求項1に記載の金属箔片装飾素材。
【請求項3】
前記第4の工程に代え、乾燥したアラビアガム被覆金属箔、キタンサンガム被覆金属箔及び/又はジェランガム被覆金属箔を所定の型で打ち抜きまたは裁断工程を経て、製造されることを特徴とする金属箔装飾素材。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−109893(P2008−109893A)
【公開日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−295277(P2006−295277)
【出願日】平成18年10月31日(2006.10.31)
【出願人】(595064670)株式会社箔一 (5)
【Fターム(参考)】