説明

金属管曲げ加工装置及び水溶性潤滑剤の加圧方法

【課題】金属管の曲げ加工時に供給される大量の水溶性潤滑剤を循環使用することにより曲げ加工コストが増大するのを防止する。高出力のポンプを使用することなく大量の水溶性潤滑剤を高い圧力で加圧して噴射することができ、装置自体を小型化及び軽量化すると共に低コスト化する。
【解決手段】水溶性潤滑剤供給手段を、加圧部の中空部に軸線方向へ摺動可能に支持されたロッドを往復移動するシリンダ部を備え、該ロッドの往復移動に伴ってタンク内に溜められた水溶性潤滑剤を上記加圧部内に負圧吸引した後に加圧する増圧手段と、上記増圧手段により加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混合して圧力を増大する混合手段と、曲げ加工用マンドレルに設けられ、上記混合手段から供給される水溶性潤滑剤が所要の圧力以上になった際に金属管内へ水溶性潤滑剤を噴射可能にする開閉手段とから構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属管を所望の曲率で曲げ加工する金属管曲げ加工装置、詳しくは金属管内に適量の水溶性潤滑剤を供給する水溶性潤滑剤供給手段を備えた金属管曲げ加工装置及び水溶性潤滑剤の加圧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属管曲げ加工装置にあっては、曲げ加工される金属管の曲げ加工箇所に曲げ加工用マンドレルを挿入し、曲げ加工時における金属管の変形を防止している。その際、金属管内における加工用マンドレルの摩擦力が高くなって金属管の内周面に傷が形成されたり、金属管が振動したりして曲げ精度が悪くなるのを防止するため、特許文献1に示すようにマンドレルに潤滑油を吐出する潤滑油供給流路に接続されたノズルを設け、曲げ加工時にポンプを駆動してマンドレルと金属管の内周面の間に潤滑油を供給している。
【0003】
上記した曲げ加工時にマンドレルに供給される潤滑油は、マンドレルと金属管内周面の間に形成される油膜が膜切れし難く、曲げ加工時においては少量の潤滑油で傷や振動の発生を効率的に抑制することができる。しかし、曲げ加工後に金属管に溶接したりする際には、金属管に付着した潤滑油が溶接不良の原因になったり、溶接の熱で有毒な煙が発生して作業環境を汚染するため、溶接行に先立って金属管の内面に付着した潤滑油を除去するための洗浄作業を必要としている。
【0004】
上記した問題点は、曲げ加工時にマンドレルと金属管内周面の間に供給される潤滑剤として水溶性潤滑剤を用いることにより洗浄作業を省略することができる。しかし、水溶性潤滑剤自体、潤滑油に比べて膜切れし易いため、曲げ加工時に疵が形成されたり、振動が発生したりするのを抑制するには、曲げ加工時に大量の水溶性潤滑剤を供給しなければならず、水溶性潤滑剤の消費量が増大して曲げ加工コストが増大する問題を有している。
【0005】
また、曲げ加工時にマンドレルと金属管内周面の間に大量の水溶性潤滑剤を供給するには、水溶性潤滑剤を高い圧力で加圧して噴射する必要がある。この加圧手段として電動ポンプを使用して水溶性潤滑剤を所望の圧力に加圧しているが、所望の高圧力に加圧するには高出力の電動ポンプを使用しなければならず、装置自体が大型化及び重量化すると共に高コスト化する問題を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−39942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、潤滑油に比べて水溶性潤滑剤が膜切れし易いため、曲げ加工時に疵が形成されたり、振動が発生したりするのを抑制するには、大量の水溶性潤滑剤を供給しなければならず、曲げ加工コストが増大する点にある。また、曲げ加工時にマンドレルと金属管内周面の間に大量の水溶性潤滑剤を供給するには、高出力のポンプにより水溶性潤滑剤を高い圧力で加圧しなければならず、装置自体が大型化及び重量化すると共に高コスト化する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、金属管の曲げ加工個所に曲げ加工用マンドレルを挿入して金属管を曲げ加工する金属管曲げ加工装置において、加圧部の中空部に軸線方向へ摺動可能に支持されたロッドを往復移動するシリンダ部を備え、該ロッドの往復移動に伴ってタンク内に溜められた水溶性潤滑剤を上記加圧部内に負圧吸引した後に加圧する増圧手段と、上記増圧手段により加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混合して圧力を増大する混合手段と、曲げ加工用マンドレルに設けられ、上記混合手段から供給される水溶性潤滑剤が所要の圧力以上になった際に金属管内へ水溶性潤滑剤を噴射可能にする開閉手段を備えた水溶性潤滑剤供給手段を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、金属管の曲げ加工時に供給される大量の水溶性潤滑剤を循環使用することにより曲げ加工コストが増大するのを防止することができる。また、高出力のポンプを使用することなく大量の水溶性潤滑剤を高い圧力で加圧して噴射することができ、装置自体を小型化及び軽量化すると共に低コスト化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】金属管曲げ装置の概略を示す斜視図である。
【図2】曲げ加工用マンドレルの概略を示す略体斜視図である。
【図3】図2の中央縦断面図である。
【図4】水溶性潤滑剤供給手段を示す説明図である。
【図5】芯金による加圧された水溶性潤滑剤の噴射状態を示す説明図である。
【図6】増圧手段の変更例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
水溶性潤滑剤供給手段を、加圧部の中空部に軸線方向へ摺動可能に支持されたロッドを往復移動するシリンダ部を備え、該ロッドの往復移動に伴ってタンク内に溜められた水溶性潤滑剤を上記加圧部内に負圧吸引した後に加圧する増圧手段と、上記増圧手段により加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混合して圧力を増大する混合手段と、曲げ加工用マンドレルに設けられ、上記混合手段から供給される水溶性潤滑剤が所要の圧力以上になった際に金属管内へ水溶性潤滑剤を噴射可能にする開閉手段とから構成したことを最良の実施形態とする。
【実施例1】
【0012】
以下、実施例を示す図に従って本発明を説明する。
図1に示すように金属管曲げ装置1の本体3には曲げヘッド5が設けられ、該曲げヘッド5は長尺状の金属管7の曲げ半径に応じて形成された曲げ型9を備えている。該曲げ型9の外周には金属管7の外径に応じた溝9aが形成され、曲げ型9は曲げアーム11と共に回転可能に支承され、曲げアーム11は曲げアーム用シリンダ13により回動される。
【0013】
曲げアーム11には締め型15が曲げ型9に対向して移動可能に支承され、締め型15は締め型用シリンダ17により駆動されて金属管7を曲げ型9との協働により挟持するように構成される。また、本体3にはワイパ型19が曲げ型9に接近して配置されると共に圧力型21が該ワイパ型19に対向して移動可能に支持される。該圧力型21は連結された圧力型用シリンダ23により金属管7の外周面に当接するように駆動され、曲げ加工時の反力を受承するように構成される。
【0014】
本体3上には金属管7の軸線方向へ延出する一組のレール25が設けられ、該レール25には可動体27が移動可能に支持される。該可動体27はサーボモータ等の数値制御可能な電動モータ(図示せず)によりレール25上を往復移動される。
【0015】
上記可動体27には金属管7の他端側を把持する把持部材29が設けられ、該把持部材29は連結されたサーボモータ等の数値制御可能な電動モータ(図示せず)により把持した金属管7を回転させ。一方、本体3の後側には支持部材31が立設され、該支持部材31には金属管7と同軸状に配置された曲げ加工用マンドレル33が支持される。該曲げ加工用マンドレル33は金属管7の他端側から挿入された先端部が曲げ型9に対応する位置に延出される。
【0016】
図2に示すように曲げ加工用マンドレル33は支持部材31に基端部が固定され、金属管7内に挿入可能な外径で、軸線方向へ延出する中空部を有した長尺状の軸部材35と、該軸部材35の先端に取り付けられ、金属管7内に挿入可能な外径で、軸線方向へ延出する中空部を有したプラグ37とから構成される。該プラグ37は曲げ型9に応じた個所の軸部材35先端部に位置され、先端部には放射方向または後述する芯金43側へ傾斜して中空部と連通する複数の噴射孔37aが軸線周りに等しい間隔で形成される。また、プラグ37の先端部には金属管7の内径より若干小径からなる複数個の球状プラグ39が軸線方向に対して互いに自在に揺動するように軸支される。
【0017】
なお、上記球状プラグ39が揺動可能に支持されるプラグ37の先端面に複数の開口を形成し、これら開口から水溶性潤滑剤を球状プラグ39側へ噴射する構成としてもよい。
【0018】
上記プラグ37の中空部内には後述する水溶性潤滑剤供給手段41から供給される水溶性潤滑剤をプラグ37側へ噴射する芯金43が軸線を一致してねじ止めされる。図3に示すように芯金43は軸線方向へ延出して連通する中空部が形成される。該中空部は軸線方向中間部が後端側及び前端側に対して小径に形成される。該芯金43の後端側には水溶性潤滑剤供給手段41の一部を構成する後述する混合手段59からの供給ホース45が上記中空部と連通して接続される。また、芯金43の前端側中空部内には開閉手段の一部を構成するチェックボール43aが軸線方向へ移動可能に装着され、該チェックボール43aは前端側中空部内に装着された圧縮ばね等で、開閉手段の一部を構成する弾性部材43bの弾性力により小径中空部の開口を閉止可能にする。
【0019】
即ち、混合手段59から供給される水溶性潤滑剤の圧力が弾性部材43bの弾性力以下の場合には弾性部材43bの弾性力によりチェックボール43aを小径中空部の開口端に圧接して閉止して水溶性潤滑剤の噴射を規制する一方、水溶性潤滑剤の圧力が弾性部材43bの弾性力以上の場合には弾性部材43bの弾性力に抗して小径中空部の開口端に対するチェックボール43aの圧接を解除して水溶性潤滑剤の噴射を可能にするチェックバルブとして機能する。なお、図中の符号43cは前端側中空部内に装着された弾性部材43bを抜け止めする止めリングである。
【0020】
なお、上記で説明した金属管曲げ装置自体、公知であり、上記以外の構造で、以下に詳述する水溶性潤滑剤供給手段41を備えた金属管曲げ装置であれば、本発明として実施可能である。
【0021】
図4に示すように水溶性潤滑剤供給手段41の本体46にはタンク47が設けられ、該タンク47は回収タンク47a、金属粉回収タンク47b及び供給タンク47cに区画される。上記回収タンク47a及び金属粉回収タンク47bは仕切り壁47dの下部が互いに連通し、後述するように金属管7の内部に噴射されて回収される水溶性潤滑剤を回収タンク47a内に一時的に溜めた後に金属粉回収タンク47b内へ流入させる。該金属粉回収タンク47b内には永久磁石が取り付けられた金属粉吸着部材49が水没するように装着され、金属粉回収タンク47b内に流入した水溶性潤滑剤に含まれる金属粉を磁気吸着して回収する。
【0022】
金属粉回収タンク47b及び供給タンク47cの間には仕切り板47eが設けられ、金属粉回収タンク47b内にて金属粉が回収されて仕切り板47eをオーバーフローした水溶性潤滑剤を供給タンク47c内に溜める。
【0023】
上記本体46内には増圧手段51が設けられ、該増圧手段51と上記供給タンク47cは供給配管53が逆止弁55を設けて接続される。該増圧手段51は内部に中空部を有し、入力ポートに上記供給配管53が接続されると共に出力ポートに吐出配管57が接続される加圧部51aと、該加圧部51aの中空部内にて軸線方向へ摺動可能に挿嵌されて支持されるロッド51bと、後述する圧縮空気切換え制御手段63から供給される圧縮空気により上記ロッド51bを往復作動するシリンダ部51cとから構成される。
【0024】
上記増圧手段51は加圧部51aの中空部内にてロッド51bが非加圧側へ移動されると、中空部内を負圧形成して供給タンク47c内に溜められた水溶性潤滑剤を負圧吸引して中空部内に流入させた後、ロッド51bが加圧側へ移動されると、中空部内に溜められた水溶性潤滑剤を所要の圧力に加圧して吐出させる。また、上記吐出配管57は混合手段59に接続される。
【0025】
上記本体46内には電磁バルブ、圧力調整弁等から構成される圧縮空気切換え制御手段63が設けられ、該圧縮空気切換え制御手段63は増圧手段制御部63a及び圧縮空気制御部63bから構成される。増圧手段制御部63aは圧縮空気発生源64から供給される圧縮空気を上記シリンダ部51cの正圧室及び背圧室へ切換え制御してロッド51bを往復移動させる。また、圧縮空気制御部63bは上記混合手段59に接続された空気配管65に対し、ロッド51bが加圧方向へ移動するタイミングで圧縮空気を吐出するように制御する。
【0026】
なお、増圧手段51による水溶性潤滑剤の加圧力を調整する手段としては、シリンダ部51cから突出するロッド51bの非作動側端部に作動駒(図示せず)を位置調整可能に取付けると共に所望の加圧力位置に応じたロッド51bの移動位置にリミットスイッチ等の位置検知器(図示せず)を取り付け、水溶性潤滑剤の加圧時に突出したロッド51bの作動駒により位置検知器がON作動されたタイミングでシリンダ部51cに対する圧縮空気の供給を遮断制御して水溶性潤滑剤をロッド51bの移動ストロークに応じた圧力で加圧するように制御する。
【0027】
上記した吐出配管57及び空気配管65は混合手段59の入力ポートに接続され、該混合手段59の出力ポートは芯金43の接続口部に接続された供給ホース45が接続される。該混合手段59はそれぞれの配管57・65に逆止弁59a・59bを設け、上記増圧手段51により加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混ぜて更に増圧させる。上記混合手段59により圧縮空気が混合されて増圧された水溶性潤滑剤は無数の気泡を含んだ状態で芯金43へ吐出される。
【0028】
金属管曲げ装置1にセットされた金属管7の一端側には水溶性潤滑剤回収パン69が配置され、該水溶性潤滑剤回収パン69の底面には他端部が上記回収タンク47aに接続される排出管71の一端部が電動ポンプ、エアーポンプ等のポンプ73を設けて接続される。該水溶性潤滑剤回収パン69は曲げ加工時に金属管7内に噴射された流出した余分な水溶性潤滑剤を回収して回収タンク47aへ戻して循環可能にさせる。
【0029】
次に、上記のように構成された金属管曲げ装置1の作用を説明する。
先ず、金属管曲げ装置1による金属管7の曲げ作用の概略を説明すると、曲げ加工される直線状の金属管7の中空部内にプラグ37、軸部材35を挿入して端部を把持部材29に把持させた後、可動体27を移動制御して金属管7の曲げ加工箇所を曲げ型9の溝9aに装着させる。
【0030】
次に、電動モータを駆動して把持部材29を金属管7の軸線周りへ所定の角度で回動して金属管7を回転させる。金属管7の回転角度は金属管7に対して複数の曲げ加工を行う際に、各曲げ加工位置における曲げ方向に合わせて設定される。
【0031】
次に、締め型用シリンダ17を作動して締め型15を移動し、曲げ型9と締め型15により金属管7を把持させる。また、圧力型用シリンダ23を作動して圧力型21を移動し、ワイパ型19と圧力型21により金属管7を挟持させる。
【0032】
次に、曲げアーム用シリンダ13を作動して曲げ型9を中心に曲げアーム11を回動して締め型15を曲げ型9の周りに沿って移動させることにより金属管7に対して曲げ加工を行った後、締め型用シリンダ17を復動して締め型15による金属管7の把持を解除させると共に圧力型用シリンダ23を復動して圧力型21による金属管7の把持を解除させる。そして曲げアーム用シリンダ13を復動して曲げアーム11を原位置へ戻して金属管7の曲げ加工を終了する。
【0033】
なお、金属管7を複数回、曲げ加工する場合には、可動体27を移動制御して金属管7の曲げ加工箇所を曲げ型9の溝9aに装着させる。また、次の曲げ加工において曲げ方向が異なる場合には、電動モータを駆動制御して把持部材29を回動して金属管7を所要の角度で回転させた後、前述した動作の繰り返しにより曲げ加工を行う。
【0034】
次に、水溶性潤滑剤の供給作用に付いて説明すると、例えば上記した各工程、即ち金属管7の中空部内に曲げ加工用マンドレル33、従ってプラグ37及び軸部材35を挿入した後に可動体27を移動して金属管7の曲げ加工個所を曲げ型9の溝9aに装着した際、把持部材29を回動して金属管7を回転させる際、締め型15を移動して曲げ型9と締め型15により金属管7を把持する際、曲げ型9を中心にして曲げアーム11を回転して締め型15を曲げ型9の周りに沿って移動させる際、締め型15及び圧力型21による金属管7の把持を解放する際、曲げアーム11を原位置へ戻す際、プラグ37箇所の金属管7の内周面へ水溶性潤滑剤をミスト状に噴射するように水溶性潤滑剤供給手段41を以下のように作動制御する。
【0035】
なお、本実施例においては上記したそれぞれのタイミングで水溶性潤滑剤を噴射する例により説明するが、本発明にあっては金属管7の中空部内にプラグ37及び軸部材35を挿入した後から締め型15及び圧力型21による金属管7の把持を解放するまでの曲げ加工作業中の全体に亘って金属管7内におけるプラグ37箇所へ水溶性潤滑剤を噴射してもよい。
【0036】
先ず、圧縮空気切換え制御手段63は金属管7内のプラグ37箇所に対して水溶性潤滑剤を噴射供給するのに先立って増圧手段51におけるシリンダ部51cの正圧室及び背圧室に対して圧縮空気を交互に供給してロッド51bを往復移動させる。
【0037】
上記動作によりロッド51bが縮小する方向へ移動されると、加圧部51a内を負圧形成して供給タンク47c内に溜められた水溶性潤滑剤を負圧吸引して加圧部51a内に流入させた後に伸長する方向へ移動するロッド51bにより加圧部51a内の水溶性潤滑剤を圧縮して加圧して吐出配管57へ吐出させる。また、圧縮空気切換え制御手段63は上記シリンダ部51cの正圧室に対する圧縮空気の供給動作と並行して圧縮空気を空気配管65へ吐出して混合手段59へ至らせる。
【0038】
上記混合手段59においては上記増圧手段51により加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混合して更に加圧させる。そして上記のように加圧された水溶性潤滑剤は芯金43へ供給される。
【0039】
該芯金43において上記のように加圧された水溶性潤滑剤が弾性部材43bの弾性力以下の圧力の場合には、弾性部材43bの弾性力により付勢されたチェックボール43aが小径中空部の開口に圧接して閉止して水溶性潤滑剤の噴射を規制する。そして弾性部材43bの弾性力により付勢されたチェックボール43aにより水溶性潤滑剤の噴射が規制された芯金43内の圧力が所定の圧力に達した際に増圧手段51による水溶性潤滑剤の加圧及び空気配管65に対する圧縮空気の吐出を中断して待機させる。(図3参照)
【0040】
上記状態にて上記各工程の処理を実行するのに先立つタイミング、即ち金属管7の中空部内にプラグ37及び軸部材35が挿入された際、把持部材29を回動する際、締め型15を移動する際、曲げ型9を中心にして曲げアーム11を回転する際、締め型15及び圧力型21による金属管7の把持を解放する際、曲げアーム11を原位置へ戻す際に、それぞれの個所に設けられた検出器からの信号に基づいて増圧手段51を作動して供給タンク47c内に溜められた水溶性潤滑剤を負圧吸引して加圧部51a内に流入させた後に伸長する方向へ移動するロッド51bにより加圧部51a内の水溶性潤滑剤を圧縮して加圧して吐出管57へ吐出させると共に圧縮空気を空気配管65へ吐出して混合手段59へ至らせる。
【0041】
そして混合手段59に至った水溶性潤滑剤は混合される圧縮空気により更に加圧されて芯金43内に至り、該芯金43における水溶性潤滑剤の圧力が弾性部材43bの弾性力以上の圧力に達すると、チェックボール43aが弾性部材43bの弾性力に抗して移動して小径中空部を開放することにより加圧された水溶性潤滑剤を金属管7内へ噴射させる。(図5参照)
【0042】
このとき、金属管7内に噴射される水溶性潤滑剤は増圧手段51及び混合手段59において吐出される圧縮空気により高い圧力に加圧されるため、金属管7の内周面及びボール状プラグ39を含むプラグ37に対して水溶性潤滑剤を全体的にわたってミスト状に噴射して塗付させることができ、曲げ加工時に金属管7の内面がプラグ39により傷付けられたり、金属管7に振動が発生したりして曲げ加工精度が悪くなるのを防止する。
【0043】
なお、上記したように金属管7の曲げ加工時に各工程毎に水溶性潤滑剤の噴射を継断するのではなく、曲げ加工作業の全体に亘って水溶性潤滑剤の噴射を継続してもよい。
【0044】
上記のように金属管7の内周面及び球状プラグ39を含むプラグ37に噴射塗付された水溶性潤滑剤の内、余剰の水溶性潤滑剤は金属管7の端部から水溶性潤滑剤回収パン69内へ排出されて集められる。そして水溶性潤滑剤回収パン69内に回収された水溶性潤滑剤が所定の量に達すると、ポンプ73を駆動して水溶性潤滑剤回収パン69内の水溶性潤滑剤を排出管71を経て回収タンク47aへ戻した後、金属粉吸着部材49により含まる金属粉を吸着して除去した後に供給タンク47c内に溜められて循環使用される。
【0045】
本実施例は、増圧手段51により加圧された水溶性潤滑剤を混合手段59において吐出される圧縮空気により更に増圧することができ、従来のように光出力のポンプを使用して加圧する場合に比べて装置自体を小型化及び軽量化して低コスト化することができる。
【0046】
また、上記のように水溶性潤滑剤を高い圧力で加圧して噴射することにより金属管7の内周面及びボール状プラグ39を含むプラグ37に対して水溶性潤滑剤を全体的に塗付することができ、曲げ加工時に金属管7の内面に傷が発生したり、金属管7が振動したりして曲げ精度が悪くなるのを防止することができる。
【0047】
上記説明は、シリンダ部51cの一方側に1個の加圧部51aを設け、ロッド51bが縮小する方向へ移動した際に加圧部51a内に水溶性潤滑剤を負圧吸引した後にロッド51bが伸長する方向へ移動した際に加圧部51a内の水溶性潤滑剤を圧縮して加圧するシングル作動型として構成としたが、図6に示すように1個のシリンダ部51cの軸線方向両側に2個の加圧部51aをそれぞれ設け、各加圧部51aの中空部内にロッド51bの軸端部をそれぞれ軸線方向へ摺動するように挿嵌し、軸線方向に対するロッド51bの往復移動に伴って一方の加圧部51a内において水溶性潤滑剤を負圧吸引すると共に他方の加圧部51a内において水溶性潤滑剤を圧縮して加圧する作用を交互に行うダブル作動型として構成してもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 金属管曲げ装置
3 本体
5 曲げヘッド
7 金属管
9 曲げ型
9a 溝
11 曲げアーム
13 曲げアーム用シリンダ
15 締め型
17 締め型用シリンダ
19 ワイパ型
21 圧力型
23 圧力型用シリンダ
25 レール
27 可動体
29 把持部材
31 支持部材
33 曲げ加工用マンドレル
35 軸部材
37 プラグ
39 球状プラグ
41 水溶性潤滑剤供給手段
43 芯金
43a 開閉手段の一部を構成するチェックボール
43b 開閉手段の一部を構成する弾性部材
43c 止めリング
45 供給ホース
46 本体
47 タンク
47a 回収タンク
47b 金属粉回収タンク
47c 供給タンク
47d 仕切り板
47e 仕切り板
49 金属粉吸着部材
51 増圧手段
51a 加圧部
51b ロッド
51c シリンダ部
53 供給配管
55 逆止弁
57 吐出配管
59 混合手段
61 逆止弁
63 圧縮空気切換え制御手段
65 空気配管
69 水溶性潤滑剤回収パン
71 排出管
73 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属管の曲げ加工個所に曲げ加工用マンドレルを挿入して金属管を曲げ加工する金属管曲げ加工装置において、
加圧部の中空部に軸線方向へ摺動可能に支持されたロッドを往復移動するシリンダ部を備え、該ロッドの往復移動に伴ってタンク内に溜められた水溶性潤滑剤を上記加圧部内に負圧吸引した後に加圧する増圧手段と、
上記増圧手段により加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混合して圧力を増大する混合手段と、
曲げ加工用マンドレルに設けられ、上記混合手段から供給される水溶性潤滑剤が所要の圧力以上になった際に金属管内へ水溶性潤滑剤を噴射可能にする開閉手段と、
を備えた水溶性潤滑剤供給手段を設けた金属管曲げ加工装置。
【請求項2】
請求項1において、上記開閉手段は、曲げ加工用マンドレルの中空部内に取付けられ、混合手段からの水溶性潤滑剤が供給される芯金に設けられた中空部内にて軸線方向へ移動可能に支持されるチェックボールと、該チェックボールを上記中空部を閉止するように付勢する弾性部材からなり、混合手段から供給される水溶性潤滑剤の圧力が上記弾性部材の弾性力より低い場合には、チェックボールによる中空部の閉止状態を保つ一方、混合手段から供給される水溶性潤滑剤の圧力が上記弾性部材の弾性力より高い場合には、弾性部材の弾性力に抗してチェックボールを移動して中空部を開放して水溶性潤滑剤を噴射可能にする金属管曲げ加工装置。
【請求項3】
金属管の曲げ加工個所に曲げ加工用マンドレルを挿入して金属管を曲げ加工する金属管曲げ加工装置において曲げ加工用マンドレルから金属管の曲げ加工個所へ水溶性潤滑剤を噴射する際に、
タンク内から負圧吸引された水溶性潤滑剤を増圧手段により加圧した後、
加圧された水溶性潤滑剤に対して圧縮空気を混合して増圧する水溶性潤滑剤の加圧方法。
【請求項4】
請求項3において、曲げ加工用マンドレルの中空部内に取付けられ、圧縮空気が混合された増圧された水溶性潤滑剤が供給される芯金の中空部内における水溶性潤滑剤の圧力が所要の圧力より低い場合には、金属管内に対する水溶性潤滑剤の噴射を規制する一方、芯金の中空部内における水溶性潤滑剤の圧力が所要の圧力より高い場合には、金属管内に対する水溶性潤滑剤の噴射を可能にする水溶性潤滑剤の加圧方法。
【請求項5】
請求項4において、芯金の中空部内にて軸線方向へ移動可能に支持されるチェックボールを弾性部材により付勢し、圧縮空気が混合されて増圧された水溶性潤滑剤の圧力が上記弾性部材の弾性力より低い場合には、チェックボールによる中空部の閉止状態を保つ一方、増圧された水溶性潤滑剤の圧力が上記弾性部材の弾性力より高い場合には、弾性部材の弾性力に抗してチェックボールを移動して中空部を開放して水溶性潤滑剤を噴射可能にする水溶性潤滑剤の加圧方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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