説明

金属缶本体および金属缶

【課題】横溝にて生じた座屈の影響が縦溝に伝播するのを防止すると共に、縦方向の加重に対して比較的強い金属缶本体および金属缶を提供する。
【解決手段】底部(13)と缶胴部(15)とを有する有底円筒状の金属缶本体(12)において、缶胴部の外周面には、缶胴部の軸線方向に対して概ね平行に少なくとも部分的に延びる少なくとも一つの第一溝(21a、21b)と、缶胴部の略周方向に少なくとも部分的に延びる少なくとも一つの第二溝(22a〜22c、22a’〜22c’)とが形成されており、第二溝は第一溝から離間している。さらに、第二溝は缶胴部の少なくとも四分の一にわたって延びるのが好ましい。さらに、そのような金属缶本体の開口部に、缶蓋(11)が巻締められてなることを特徴とする金属缶(10)も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビール、発泡酒、ソフトドリンク等の内容物のための金属缶本体および金属缶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ビール、発泡酒、ソフトドリンク等の内容物を充填するのに金属缶、例えばアルミニウム合金製の缶が使用されている。通常は、底部と缶胴部とを有する有底円筒状の金属缶本体に内容物を充填し、缶蓋を開口部に巻締めて、金属缶を形成している。
【0003】
図4は従来技術における金属缶の側面図である。図4に示されるように、従来技術の金属缶100には、デザインの自由度を増すために、金属缶100の缶胴部150の外周面に周方向に延びる複数の横溝220が形成される場合がある。このような横溝は、特許文献1および特許文献2に開示される金属缶にも形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−13933号公報
【特許文献2】特開2007−254008号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図5(a)および図5(b)は従来技術における金属缶の部分断面図である。これら図面に示されるように、縦方向の加重が金属缶に加えられると、横溝220が座屈して金属缶100の外周面150が変形する。このような座屈作用は、複数の金属缶100を積重ねたときだけでなく、缶蓋を金属缶本体の開口部に巻締めるときにも生じる場合がある。巻締めの際に座屈を起こすと、充填されている内容物ともども廃棄損となる。金属缶本体の肉厚を高めれば座屈を起こし難くすることもできるが、飲用後に缶を潰し難くなり、リサイクルの面等で不都合を生じる。つまり、缶胴部150の肉厚を高めることなく缶胴部150の外周面に横溝220のみを形成するのは、金属缶100の縦方向の強度を維持し、特に缶蓋を巻締める際の廃棄損を抑制する観点からは難しい。
【0006】
また、特許文献1および特許文献2に開示される金属缶はその使用後に容易に潰すことを目的として、横溝を缶胴部150の外周面に形成するようにしている。つまり、引用文献1および引用文献2では、金属缶100の縦方向の強度を維持することは想定していない。
【0007】
一方、軸線方向に延びる縦溝(図示しない)を缶胴部150の外周面に形成した場合には、金属缶100を縦方向の加重に対して強化することができる。しかしながら、このような縦溝と前述した横溝とが互いに接している場合には、横溝にて生じた座屈の影響が縦溝にまで伝播し、縦溝を変形させる可能性がある。特に、縦溝に隣接して商品表示領域(図示しない)が外周面150に配置されている場合には、商品表示領域自体の変形を引起こしうる。
【0008】
そこで、本発明者は上記課題を克服すべく鋭意研究を重ねた結果、縦溝と横溝とを互いに離間させることにより、横溝にて生じた座屈の影響を縦溝に伝播させないようにできるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、横溝にて生じた座屈の影響が縦溝に伝播するのを防止すると共に、デザインの自由度を高めつつ、縦方向の加重に対して比較的強い金属缶本体および金属缶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達成するために1番目の発明によれば、底部と缶胴部とを有する有底円筒状の金属缶本体において、前記缶胴部の外周面には、前記缶胴部の軸線方向に対して概ね平行に少なくとも部分的に延びる少なくとも一つの第一溝と、前記缶胴部の略周方向に少なくとも部分的に延びる少なくとも一つの第二溝とが形成されており、前記第二溝は前記第一溝から離間している、金属缶本体が提供される。
【0011】
すなわち1番目の発明においては、第一溝(縦溝)が形成されているので、縦方向の加重に対して金属缶本体を強化できる。また、第一溝と第二溝(横溝)とが互いに離間しているので、第二溝が座屈したとしても、その影響は第一溝までは伝播するのを防止できる。さらに、第一溝と第二溝とが形成されているので、金属缶本体のデザインの自由度を高めることも可能である。
【0012】
2番目の発明によれば、1番目の発明において、前記第一溝は、前記缶胴部の外周面に配置された商品表示領域と前記第二溝との間に位置している。
すなわち2番目の発明においては、第一溝に隣接して商品表示領域が金属缶の外周面に配置されている場合であっても、商品表示領域自体が変形するのを防止できる。
【0013】
3番目の発明によれば、1番目または2番目の発明において、前記第二溝は前記缶胴部の少なくとも四分の一にわたって延びている。
すなわち3番目の発明においては、第二溝の周方向長さに関係なく、座屈の影響が第一溝まで伝播するのを防止できる。
【0014】
4番目の発明によれば、1番目から3番目のいずれかの発明において、複数の前記第二溝が形成されており、これら第二溝は互いに規則的に配置されている。
すなわち4番目の発明においては、第二溝が金属缶本体の装飾効果を高めることができる。なお、第二溝は直線形、円弧形、または波形などであってもよく、第二溝は水平方向または斜方向に延びていても良い。
【0015】
5番目の発明によれば、4番目の発明において、前記缶胴部の軸線方向に対して概ね平行に延びていて少なくとも二つの前記第二溝を互いに連結する補強溝が前記缶胴部の外周面にさらに形成される。
すなわち5番目の発明においては、金属缶本体のデザインの自由度を高めると共に、縦方向の加重に対して金属缶本体をさらに強化できる。
【0016】
6番目の発明によれば、1番目から5番目のいずれかの発明において、前記缶胴部の外周面には少なくとも二つの商品表示領域が配置されており、少なくとも二つの前記第一溝のそれぞれがこれら二つの商品表示領域を少なくとも部分的に取囲んでおり、複数の前記第二溝のそれぞれの両端部は、前記二つの商品表示領域をそれぞれ取囲む前記第一溝から離間している。
すなわち6番目の発明においては、第二溝で生じた座屈の影響がいずれかの商品表示領域を取囲む第一溝まで伝播するのを確実に防止できる。
【0017】
7番目の発明によれば、6番目の発明において、さらに、前記第一溝と協働して前記商品表示領域を取囲む補助溝が前記缶胴部の外周面に形成されている。
すなわち7番目の発明においては、商品表示領域の装飾効果を高めることができる。また、補助溝が優先的に座屈することによって、商品表示領域を保護できる。
【0018】
8番目の発明によれば、1番目から7番目のいずれかの発明の金属缶本体の開口部に、缶蓋が巻締められてなることを特徴とする金属缶が提供される。
すなわち8番目の発明においては、1番目から7番目の発明と概ね同様な効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第一の実施形態に基づく金属缶の正面図である。
【図2】(a)図1に示される金属缶の第一の部分断面図である。(b)図1に示される金属缶の第二の部分断面図である。(c)図1に示される金属缶の第二の部分断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態に基づく金属缶の正面図である。
【図4】従来技術における金属缶の正面図である。
【図5】(a)従来技術における金属缶の部分断面図である。(b)従来技術における金属缶の他の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下の図面において同様の部材には同様の参照符号が付けられている。理解を容易にするために、これら図面は縮尺を適宜変更している。
図1は本発明の第一の実施形態に基づく金属缶の正面図である。図1に示される金属缶10は、有底円筒状の金属缶本体12と、金属缶本体12の開口部に巻締めされる缶蓋11とで構成されている。金属缶本体12および缶蓋11は、金属、例えばアルミニウムまたはアルミニウム合金から形成されている。また、金属缶10には、ビール、発泡酒、ソフトドリンク等の内容物が充填されるものとする。
【0021】
金属缶本体12は、底部13と、底部13から金属缶本体12の軸線方向に延びる缶胴部15とを主に含んでいる。図1においては、缶胴部15の内径は金属缶本体12の軸線方向においてほぼ等しいが、缶胴部15の内径が部分的に異なっていてもよい。
【0022】
図1に示されるように、本発明の缶胴部15の外周面には、金属缶10の内容物に関する情報を表示する商品表示領域16が配置されている。そして、この商品表示領域16は周囲溝20によって全体的に取囲まれている。
【0023】
図1から分かるように、周囲溝20は缶胴部15の軸線方向に対して概ね平行に延びる第一溝21a、21bを含んでおり、商品表示領域16はこれら第一溝21a、21bの間に位置している。さらに、缶胴部15の略周方向に延びる二つの補助溝23a、23bが第一溝21a、21bの上下端部をそれぞれ連結している。さらに、金属缶10の背面側にも商品表示領域16および周囲溝20が同様に形成されている。そして、金属缶10の背面図は図1とほぼ同様であるものとする。
【0024】
つまり、図面には示さないものの、缶胴部15の外周面においては、二つの商品表示領域16が互いに対向して配置されている。このような場合には、二つの商品表示領域16に商品名などが表示されるものとする。
【0025】
さらに、缶胴部15の外周面には、缶胴部15の略周方向に延びる複数の第二溝22a〜22c、22a’〜22c’が形成されている。図1から分かるように、第二溝22a〜22cは周囲溝20の第一溝21a近傍から反時計回りに他の周囲溝の第一溝21b近傍まで延びている。同様に、第二溝22a’〜22c’は周囲溝20の第一溝21b近傍から時計回りに他の周囲溝の第一溝21a近傍まで延びている。
【0026】
さらに、図1から分かるように、第二溝22b、22b’は缶胴部15の周方向に延びており、残りの第二溝22a、22a’、22c、22c’は缶胴部15の周方向に対して鋭角をなして上方および下方にそれぞれ延びている。ただし、これら第二溝22a〜22c、22a’〜22c’は缶胴部15の略周方向に延びていればよく、また第二溝の数は図示されるものに限定されない。
【0027】
また、これら第二溝22a等は必ずしも連続的である必要はなく、断続的であってもよい。さらに、小型の凹部の集合体が全体として第二溝22a等を形成している場合であっても本発明の範囲に含まれる。なお、金属缶10の正面図と背面図とはほぼ同様であることから、第二溝22a〜22c、22a’〜22c’は缶胴部15の外周面の少なくとも四分の一にわたって延びているのが分かるであろう。
【0028】
ところで、図2(a)から図2(c)は図1に示される金属缶の部分断面図である。図2(a)から図2(c)においては、第二溝22bを第二溝の代表例として示している。図2(a)に示されるように、第二溝22bの断面は三角形状を形成している。しかしながら、図2(b)および図2(c)にそれぞれ示されるように第二溝22bの断面が半楕円および台形を形成していてもよい。さらに、第一溝21a、21bも図2(a)から図2(c)に示される形状であってもよい。いずれの場合であっても、本発明の範囲に含まれるものとする。
【0029】
このように本発明の金属缶10には缶胴部15の軸線方向に対して概ね平行に延びる第一溝21a、21bが形成されているので、金属缶本体12および金属缶10は縦方向(軸線方向)の加重に対して強化される。また、缶胴部15の軸線方向に対して概ね平行に延びる第一溝21a、21bと、缶胴部15の略周方向に延びる第二溝22a〜22c、22a’〜22c’とが形成されているので、金属缶本体12および金属缶10のデザインの自由度を高め、装飾効果をより高めることが可能となる。
【0030】
ところで、再び図1を参照すると、第二溝22a〜22cの端部は第一溝21aに連結しておらず、第一溝21aから距離kだけ離間している。同様に、第二溝22a’〜22c’の端部も第一溝21bから距離kだけ離間している。金属缶10の背面側においても同様である。
【0031】
前述したように金属缶10は特に缶蓋11の巻締時、あるいは飲料等の充填時に縦方向に加重が掛かりやすく、その結果、第二溝22a〜22c、22a’〜22c’が座屈する可能性がある。前述したように、第二溝22a等が缶胴部15の外周面の四分の一以上にわたって延びる場合には、座屈の可能性はさらに高まる。しかしながら、本発明においては、第一溝21a、21bと第二溝22a〜22c、22a’〜22c’とが距離kだけ離間しているので、第二溝22a等で生じた座屈は第二溝22a等の両端部にて停止し、第一溝21a、21bまで伝播することはない。言い換えれば、距離kは、第二溝22a等における座屈が第一溝21aまで伝播するのを防止するのに十分に長い。
【0032】
さらに、図1から分かるように、全ての第二溝22a〜22c、22a’〜22c’の両端部が正面側または背面側の周囲溝20の第一溝21a、21bから距離kだけ離間している。従って、第二溝22a等で生じた座屈の影響が正面側または背面側の第一溝21a、21bまで伝播するのを確実に防止できるのが分かるであろう。
【0033】
また、図1に示されるように、商品表示領域16と第二溝22a〜22c、22a’〜22c’との間に位置する第一溝21a、21bは商品表示領域16に隣接しており、さらに、第二溝22a等は第一溝21a等から距離kだけ離間している。従って、第二溝22a等における座屈は第二溝22a等の両端部にて停止し、第一溝21a等だけでなく、商品表示領域16にも伝播しない。従って、商品表示領域16が変形または破損するのを防止できる。
【0034】
さらに、図1から分かるように、第二溝22a〜22cおよび第二溝22a’〜22c’は互いに規則的に配置されており、それにより、金属缶本体12の装飾効果を高められるのが分かるであろう。また、補助溝23a、23bが存在しない場合であっても本発明の範囲に含まれる。しかしながら、補助溝23a、23bが存在する場合には、商品表示領域16の装飾効果を高めることが可能となる。さらに、金属缶100に過大な縦方向の加重が加えられる場合であっても、補助溝23a、23bが優先的に座屈するので、座屈の影響が商品表示領域16まで伝播せず、商品表示領域16を保護することができる。
【0035】
なお、缶胴部15の軸線方向に延びる補強溝25によって第二溝22a〜22cを互いに連結してもよい。同様に、第二溝22a’〜22c’も同様な補強溝によって互いに連結されてもよい。このような補強溝25が第二溝22a等に連結する場合には、補強溝25が存在しない場合よりも金属缶本体12および金属缶10を縦方向(軸線方向)の加重に対して強化できる。さらに、このような補強溝25によって、金属缶本体12および金属缶10のデザインの自由度を高めることも可能である。ただし、補強溝25が第二溝22a等に連結する場合には、第二溝22a等が存在していなくて補強溝25のみが形成されている場合よりも、金属缶本体12および金属缶10の縦方向における強度は低くなる。
【0036】
図3は本発明の第二の実施形態に基づく金属缶の正面図である。図3に示されるように第二溝22a、22cが円弧形であってもよい。あるいは、第二溝22a等が波形または連続L字形などであってもよい。さらに、第二溝22a等は、上記以外のどのような形状でもよく、第二溝22a等が例えば菱形、円形、楕円形、あるいはそれらの一部または組合わせであってもよい。
【0037】
なお、本発明をアルミニウムまたはアルミニウム合金製の金属缶に適用したが、他の金属、例えばスチール製の金属缶に適用してもよい。当然のことながら、前述した実施形態のいくつかを適宜組み合わせることは本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0038】
10 金属缶
11 缶蓋
12 金属缶本体
13 底部
15 缶胴部
16 商品表示領域
20 周囲溝
21a、21b 第一溝
22a〜22c、22a’〜22c’ 第二溝
23a、23b 補助溝
25 補強溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と缶胴部とを有する有底円筒状の金属缶本体において、
前記缶胴部の外周面には、前記缶胴部の軸線方向に対して概ね平行に少なくとも部分的に延びる少なくとも一つの第一溝と、前記缶胴部の略周方向に少なくとも部分的に延びる少なくとも一つの第二溝とが形成されており、
前記第二溝は前記第一溝から離間している、金属缶本体。
【請求項2】
前記第一溝は、前記缶胴部の外周面に配置された商品表示領域と前記第二溝との間に位置している請求項1に記載の金属缶本体。
【請求項3】
前記第二溝は前記缶胴部の少なくとも四分の一にわたって延びている請求項1または2に記載の金属缶本体。
【請求項4】
複数の前記第二溝が形成されており、これら第二溝は互いに規則的に配置されている請求項1から3のいずれか一項に記載の金属缶本体。
【請求項5】
前記缶胴部の軸線方向に対して概ね平行に延びていて少なくとも二つの前記第二溝を互いに連結する補強溝が前記缶胴部の外周面にさらに形成される請求項4に記載の金属缶本体。
【請求項6】
前記缶胴部の外周面には少なくとも二つの商品表示領域が配置されており、
少なくとも二つの前記第一溝のそれぞれがこれら二つの商品表示領域を少なくとも部分的に取囲んでおり、
複数の前記第二溝のそれぞれの両端部は、前記二つの商品表示領域をそれぞれ取囲む前記第一溝から離間している、請求項1に記載の金属缶本体。
【請求項7】
さらに、前記第一溝と協働して前記商品表示領域を取囲む補助溝が前記缶胴部の外周面に形成されている請求項6に記載の金属缶本体。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の金属缶本体の開口部に、缶蓋が巻締められてなることを特徴とする金属缶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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