説明

金属表面用コート材および発光装置、並びに金属表面保護方法

【課題】 透明性および硫黄バリア性に優れる保護膜を形成することのできる金属表面用コート材および金属表面保護方法、高輝度化および長寿命化が図られた発光装置の提供。
【解決手段】 金属表面用コート材は、式:R1nSi(OR2 4-n で表されるオルガノシラン、これの加水分解物およびこれの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基が結合したケイ素原子を含有するシリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(A)を含有することを特徴とする。〔ただし、式中、nは0〜2の整数、R1 は炭素数1〜8の1価の有機基を示し、n=2である場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R2 はそれぞれ独立に炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。〕

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属表面用コート材およびこれを適用した発光装置、並びに金属表面保護方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属は、導電性を有することや、光沢を有することなどにより、日用品から電子部品に至るまで様々な部材として用いられている。例えばLEDにおいては電極として銀メッキしたものが使用されており、その反射率の高さから反射板としての機能も果たしているため、LEDの高輝度化や長寿命化に対する銀メッキ部の役割は大きい。
【0003】
ところが、金属は空気中に微量含まれる硫黄や塩素によって変色・黒色化し光沢が失われて反射率が低下するという欠点があり、LEDにおいても銀メッキ部の変色・黒色化を抑制することが課題として挙げられており、例えば特許文献1には、金属電極の表面に保護膜を設けたものが開示されている。一方、LEDの封止材としてエポキシ樹脂系の封止材が知られているが、この封止材は硫黄バリア性に優れるものの硫黄存在下で高温に曝された場合にエポキシ樹脂自体が変色してしまう、という問題がある。また、シリコーン系の封止材は耐久性に優れ変色がほとんど生じないが、ガス透過性が高いことが指摘されている(例えば、特許文献2)。ガス透過性が高いと、硫黄雰囲気下に曝された場合に銀メッキ部が黒色化してしまう、という問題がある。
【0004】
【特許文献1】特開2007−109915号公報
【特許文献2】特開2004−2783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情を考慮してなされたものであって、その目的は、透明性および硫黄バリア性に優れる保護膜を形成することのできる金属表面用コート材および当該金属表面用コート材を用いた金属表面保護方法を提供することにある。
本発明の別の目的は、高輝度化および長寿命化が図られた発光装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記問題点を解決すべく鋭意研究した結果、特定のシラン化合物と特定のシリル基を含有した重合体とから得られる重合体が硫黄バリア性に優れて当該重合体によって保護した金属表面が硫黄雰囲気下に曝されても変色・黒色化しないことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
本発明の金属表面用コート材は、一般式(1):R1nSi(OR2 4-n
〔一般式(1)中、nは0〜2の整数であり、R1 は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、n=2である場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R2 は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。〕
で表されるオルガノシラン、当該オルガノシランの加水分解物および当該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基が結合したケイ素原子を含有するシリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(A)を含有することを特徴とする。
【0008】
本発明の金属表面用コート材においては、重合体(A)が、前記シラン化合物(a1)と前記シリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)とを、シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の含有量(Wa1)とシリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)の固形分換算の含有量(Wa2)との質量比(Wa1/Wa2)が90/10〜15/85の範囲において加水分解・縮合反応させて得られたものであることが好ましい。
【0009】
また、本発明の金属表面用コート材においては、前記シリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)における加水分解性基および/または水酸基が結合したケイ素原子を含有するシリル基の含有量が、当該シリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)におけるケイ素原子の含有量が0.1〜5質量%となる量であることが好ましい。
【0010】
以上の金属表面用コート材は、銀メッキ部材の表面または銀電極の表面に適用することができる。
【0011】
本発明の発光装置は、上記の金属表面用コート材により表面をコートされた銀メッキ部材および/または銀電極を有することを特徴とする。
【0012】
本発明の金属表面保護方法は、金属表面に上記の金属表面用コート材を塗布して保護膜を形成することにより、前記金属表面を保護することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の金属表面用コート材によれば、これに含有される重合体(A)が硫黄バリア性に優れるものであるため、優れた透明性および硫黄バリア性を有する保護膜を形成することができる。
【0014】
また、本発明の発光装置によれば、その内部の銀メッキ部材および/または銀電極の表面が上記の金属表面用コート材によってコーティングされて保護膜が形成されているために、硫黄雰囲気下に曝された場合にも当該銀メッキ部材および/または銀電極の変色・黒色化が抑制され、その結果、高輝度化および長寿命化が図られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0016】
本発明の金属表面用コート材は、後記に詳述する特定シラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基が結合したケイ素原子を含有するシリル基(以下、「特定のシリル基」ともいう。)を有し、メチルアクリレートまたはメチルメタクリレート(メチル(メタ)アクリレート)由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(以下、「特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体」ともいう。)(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(以下、「有機無機ハイブリッドポリマー」という。)(A)を含有するものである。
【0017】
〔有機無機ハイブリッドポリマー(A)〕
本発明の金属表面用コート材を構成する有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、具体的には、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)とを含有する混合物に、加水分解・縮合反応を促進する触媒と水とを添加して調製されることが好ましい。
【0018】
〔特定シラン化合物(a1)〕
本発明に用いられる特定シラン化合物(a1)は、下記一般式(1)で表されるオルガノシラン(以下、「オルガノシラン(1)」ともいう。)、オルガノシラン(1)の加水分解物およびオルガノシラン(1)の縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物であって、これら3種のシラン化合物のうち、1種のシラン化合物だけを用いてもよく、任意の2種のシラン化合物を混合して用いてもよく、または3種すべてのシラン化合物を混合して用いてもよい。また、特定シラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)を使用する場合、オルガノシラン(1)は1種単独で使用しても、2種以上を併用してもよい。また、上記オルガノシラン(1)の加水分解物および縮合物は、1種のオルガノシラン(1)から形成されたものであってもよく、2種以上のオルガノシラン(1)から形成されたものであってもよい。
【0019】
一般式(1):R1nSi(OR2 4-n
〔一般式(1)中、nは0〜2の整数であり、R1 は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、n=2である場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R2 は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。〕
【0020】
オルガノシラン(1)の加水分解物は、オルガノシラン(1)に2〜4個含まれるOR2 基のうちの少なくとも1個が加水分解されたものであればよく、例えば、1個のOR2 基が加水分解されたもの、2個以上のOR2 基が加水分解されたもの、あるいはこれらの混合物であってもよい。
【0021】
また、オルガノシラン(1)の縮合物は、オルガノシラン(1)が加水分解して生成する加水分解物中のシラノール基が縮合してSi−O−Si結合が形成されたものである。本発明においては、シラノール基がすべて縮合している必要はなく、前記縮合物は、僅かな一部のシラノール基が縮合したもの、大部分(全部を含む)のシラノール基が縮合したもの、さらにはこれらの混合物などをも包含する。
【0022】
上記一般式(1)において、R1 は炭素数1〜8個の1価の有機基であり、具体的には、R1 基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基などのアルキル基;
アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、ベンゾイル基、トリオイル基、カプロイル基などのアシル基;
ビニル基、アリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、エポキシ基、グリシジル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アミド基、フルオロアセトアミド基、イソシアネート基などが挙げられる。
【0023】
さらに、R1 基としては、上記の有機基の置換誘導体なども挙げられる。R1 基の置換誘導体の置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換もしくは非置換のアミノ基、水酸基、メルカプト基、イソシアネート基、グリシドキシ基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、(メタ)アクリルオキシ基、ウレイド基、アンモニウム塩基などが挙げられる。ただし、これらの置換誘導体からなるR1 基の炭素数は、置換基中の炭素原子を含めて8個以下であることが好ましい。一般式(1)中にR1 が2個存在する場合には、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
上記一般式(1)において、R2 は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基であり、炭素数が1〜5個のアルキル基である基R2 としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基などを挙げることができ、炭素数1〜6のアシル基である基R2 としては、例えば、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、バレリル基、カプロイル基などが挙げられる。一般式(1)中にR2 が複数個存在する場合には、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0025】
上記一般式(1)で表されるオルガノシラン(1)としては、具体的には、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−i−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシランなどのテトラアルコキシシラン類(一般式(1)においてn=0);
メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、i−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、n−ブチルトリエトキシシラン、n−ペンチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−ヘプチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシエチルトリエトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアナートプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン類(一般式(1)においてn=1);
ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−n−プロピルジエトキシシラン、ジ−i−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ブチルジメトキシシラン、ジ−n−ブチルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−ペンチルジエトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−ヘキシルジエトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジメトキシシラン、ジ−n−ヘプチルジエトキシシラン、ジ−n−オクチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジエトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのジアルコキシシラン類(一般式(1)においてn=2);
メチルトリアセチルオキシシラン(一般式(1)においてn=1)、ジメチルジアセチルオキシシラン(一般式(1)においてn=2)などが挙げられる。
【0026】
これらのオルガノシラン(1)のうち、特定シラン化合物(a1)として、一般式(1)においてn=1である3官能性のシラン化合物を用いる場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)の安定性の観点から、一般式(1)においてn=2である2官能性のシラン化合物と併用することが好ましい。3官能性のシラン化合物としては、特にトリアルコキシシラン類を用いることが好ましく、2官能性のシラン化合物としてはジアルコキシシラン類を用いることが好ましい。
【0027】
特定シラン化合物(a1)として3官能性のシラン化合物と2官能性のシラン化合物とを併用する場合、それぞれの完全加水分解縮合物換算の質量比で、3官能性のシラン化合物/2官能性のシラン化合物が95/5〜10/90であることが好ましく、より好ましくは90/10〜30/70、特に好ましくは85/15〜40/60である。
3官能性のシラン化合物の含有量が過多である場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)が貯蔵安定性に劣ったものとなるおそれがあり、一方、3官能性のシラン化合物の含有量が過少である場合は、得られる金属表面用コート材による保護膜が硬化性および硫黄バリア性に劣ったものとなるおそれがある。
なお、本明細書において、「完全加水分解縮合物」とは、オルガノシラン(1)のOR2 基が100%加水分解してSiOH基となり、さらに完全に縮合してシロキサン構造になったものをいう。
【0028】
特定シラン化合物(a1)として2種以上のオルガノシラン(1)を併用する場合は、使用する当該2種以上のオルガノシラン(1)を平均化して上記一般式(1)で表したときの平均化したn(以下、「nの平均値」ともいう。)が0.5〜1.9であることが好ましく、より好ましくは0.6〜1.7、特に好ましくは0.7〜1.5である。
nの平均値が0.5未満である場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)が貯蔵安定性に劣ったものとなるおそれがあり、nの平均値が1.9を超える場合は、得られる金属表面用コート材による保護膜が硬化性および硫黄バリア性に劣ったものとなるおそれがある。
【0029】
nの平均値は、2〜4官能性のシラン化合物を併用し、その配合割合を適宜調整することにより、制御することができる。
なお、これは、特定シラン化合物(a1)として加水分解物または縮合物を使用した場合も同様である。
【0030】
特定シラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)の加水分解物および/または縮合物を使用する場合は、オルガノシラン(1)を予め加水分解・縮合反応させて製造したものを用いてもよいが、後述するように、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する際に、水を添加して、オルガノシラン(1)と水とを加水分解・縮合反応させ、オルガノシラン(1)の加水分解物および/または縮合物を得ることが好ましい。
【0031】
特定シラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)の縮合物を使用する場合は、当該オルガノシラン(1)の縮合物は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC法)により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が300〜100,000であることが好ましく、より好ましくは500〜50,000である。
【0032】
また、特定シラン化合物(a1)としてオルガノシラン(1)の縮合物を使用する場合は、上記オルガノシラン(1)から調製してもよく、市販されているオルガノシランの縮合物を用いてもよい。市販されているオルガノシランの縮合物としては、三菱化学(株)製のMKCシリケート、コルコート社製のエチルシリケート、東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製のシリコーンレジン、GE東芝シリコーン(株)製のシリコーンレジン、信越化学工業(株)製のシリコーンレジンやシリコーンオリゴマー、ダウコーニング・アジア(株)製のヒドロキシル基含有ポリジメチルシロキサン、日本ユニカー(株)製のシリコーンオリゴマーなどが挙げられる。これらの市販されているオルガノシランの縮合物は、そのまま用いてもよく、さらに縮合させて使用してもよい。
【0033】
〔特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)〕
本発明に係る有機無機ハイブリッドポリマー(A)を構成する特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)は、特定のシリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有するものである。特定のシリル基は分子鎖の末端および/または側鎖に存在することが好ましい。
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)におけるメチル(メタ)アクリレート由来の構成単位が50質量%未満である場合は、得られる金属表面用コート材による保護膜が硫黄バリア性の低いものとなって変色・黒色化を抑制する能力が著しく低いものとなる。
【0034】
この特定のシリル基中の加水分解性基および/または水酸基が特定シラン化合物(a1)と共縮合されることにより、有機無機ハイブリッドポリマー(A)が形成される。この有機無機ハイブリッドポリマー(A)を金属表面にコーティングすることによって、有機無機ハイブリッドポリマー(A)がシロキサン結合を介して強固に結合し、さらには有機無機ハイブリッドポリマー(A)に残存する特定のシリル基中の加水分解性基および/または水酸基が金属表面に吸着されることによって、硫黄バリア性が発揮され、当該金属表面が保護されるものと推測される。
【0035】
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)における特定のシリル基の含有量は、この特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)におけるケイ素原子の含有量が通常0.1〜5質量%となる量であることが好ましく、より好ましくは0.3〜3質量%となる量である。
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)における特定のシリル基の含有量が0.1質量%未満である場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)が特定シラン化合物(a1)との共有結合部位の少ないものとなり、また、得られる金属表面用コート材が、残存する特定のシリル基が少ないものとなるため、これによる保護膜が金属表面の十分な保護効果を発揮することができないおそれがある。一方、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)における特定のシリル基の含有量が5質量%を超える場合は、得られる金属表面用コート材が保管時にゲル化してしまうおそれがある。
【0036】
特定のシリル基は、下記一般式(2)で表される基であることが好ましい。
【化1】


〔一般式(2)中、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、アセトキシ基、フェノキシ基、チオアルコキシル基、アミノ基などの加水分解性基または水酸基を示し、R3 は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基または炭素数1〜10のアラルキル基を示し、iは1〜3の整数である。〕
【0037】
このような特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)は、例えば、下記(I)または(II)の方法により得ることができる。
【0038】
(I)上記一般式(2)で表される特定のシリル基を有するヒドロシラン化合物(以下、「ヒドロシラン化合物(I)」ともいう。)を、主鎖骨格がメチル(メタ)アクリレートに由来する部分を含み、かつ、炭素−炭素二重結合を有する不飽和メチル(メタ)アクリレート由来重合体中の当該炭素−炭素二重結合に付加反応させる方法。
【0039】
(II)下記一般式(3)で表されるシラン化合物(以下、「不飽和シラン化合物(II)」という。)と、メチル(メタ)アクリレートとを共重合する方法。この共重合においては、メチル(メタ)アクリレートと共に当該メチル(メタ)アクリレートおよび前記不飽和シラン化合物(II)と共重合可能な他の重合性単量体を共重合してもよい。
【化2】


〔一般式(3)中、X、R3 、iはそれぞれ上記一般式(2)におけるX,R3 ,iと同義であり、R4 は重合性二重結合を有する有機基を示す。〕
【0040】
上記(I)の方法に使用されるヒドロシラン化合物(I)としては、例えば、メチルジクロルシラン、トリクロルシラン、フェニルジクロルシランなどのハロゲン化シラン類;メチルジメトキシシラン、メチルジエトキシシラン、フェニルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシランなどのアルコキシシラン類;メチルジアセトキシシラン、フェニルジアセトキシシラン、トリアセトキシシランなどのアシロキシシラン類;メチルジアミノキシシラン、トリアミノキシシラン、ジメチル・アミノキシシランなどのアミノキシシラン類などを挙げることができる。これらのヒドロシラン化合物(I)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0041】
また、上記(I)の方法に使用される不飽和メチル(メタ)アクリレート由来重合体は、メチル(メタ)アクリレートに由来する部分を含み、かつ、水酸基を有さない重合体であれば特に限定されず、例えば、下記(I−1)または(I−2)の方法あるいはこれらの組み合わせなどによって製造することができる。
【0042】
(I−1)官能基(以下、「官能基(α)」という)を有するビニル系単量体と、メチル(メタ)アクリレートとを共重合した後、得られた重合体中の官能基(α)に、当該官能基(α)と反応しうる官能基(以下、「官能基(β)」という)と炭素−炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応させることにより、分子鎖の側鎖に炭素−炭素二重結合を有する不飽和メチル(メタ)アクリレート由来重合体を製造する。
【0043】
(I−2)官能基(α)を有するラジカル重合開始剤(例えば、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸など)を使用し、あるいは、ラジカル重合開始剤と連鎖移動剤の双方に官能基(α)を有する化合物(例えば、4,4’−アゾビス−4−シアノ吉草酸とジチオグリコール酸など)を使用して、メチル(メタ)アクリレートを単独であるいは当該メチル(メタ)アクリレートと共重合可能な他の重合性単量体と共に用いて(共)重合し、分子鎖の片末端または両末端にラジカル重合開始剤や連鎖移動剤に由来する官能基(α)を有する(共)重合体を合成した後、得られた(共)重合体中の官能基(α)に、官能基(β)と炭素−炭素二重結合とを有する不飽和化合物を反応させることにより、(共)重合体の分子鎖の片末端または両末端に炭素−炭素二重結合を有する不飽和メチル(メタ)アクリレート由来重合体を製造する。
【0044】
上記(I−1)および(I−2)の方法における官能基(α)と官能基(β)との反応としては、例えば、カルボキシル基と水酸基とのエステル化反応、カルボン酸無水物基と水酸基との開環エステル化反応、カルボキシル基とエポキシ基との開環エステル化反応、カルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応、カルボン酸無水物基とアミノ基との開環アミド化反応、エポキシ基とアミノ基との開環付加反応、水酸基とイソシアネート基とのウレタン化反応や、これらの反応の組み合わせなどを挙げることができる。
【0045】
官能基(α)を有するビニル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニル系単量体;2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系単量体;1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−2’−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミドなどのアミンイミド基含有ビニル系単量体;グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル系単量体などを挙げることができる。これらの官能基(α)を有するビニル系単量体は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0046】
官能基(α)を有するビニル系単量体と共重合可能な他の重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドなどの酸アミド化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物;
1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、イソプレン、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基などの置換基で置換された置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖状および側鎖状の共役ヘキサジエンなどの脂肪族共役ジエン;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;
トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタデカフルオロオクチル(メタ)アクリレートなどのフッ素原子含有単量体;
4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系モノマー;
2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−t−ブチル−5’−メタクリロキシエチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(アクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノンなどの紫外線吸収モノマー;
ジカプロラクトンなどが挙げられる。これらは、1種単独あるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0047】
官能基(β)と炭素−炭素二重結合とを有する不飽和化合物としては、例えば、官能基(α)を有するビニル系単量体と同様の単量体や、上記の水酸基含有ビニル系単量体とジイソシアネート化合物とを等モルで反応させることにより得られるイソシアネート基含有不飽和化合物などを挙げることができる。
【0048】
また、上記(II)の方法に使用される不飽和シラン化合物(II)としては、
CH2 =CHSi(CH3 )(OCH3 2 、CH2 =CHSi(OCH3 3
CH2 =CHSi(CH3 )Cl2 、CH2 =CHSiCl3
CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(OCH3 3
CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(CH3 )(OCH3 2
CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(OCH3 3
CH2 =CHCOO(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
CH2 =CHCOO(CH2 2 SiCl3
CH2 =CHCOO(CH2 3 Si(CH3 )Cl2
CH2 =CHCOO(CH2 3 SiCl3
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(OCH3 3
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(CH3 )(OCH3 2
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(OCH3 3
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 2 SiCl3
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 Si(CH3 )Cl2
CH2 =C(CH3 )COO(CH2 3 SiCl3
【0049】
CH2 =CHCH2 −O−CO−C6 6 −CO−O−(CH2 2 Si(CH3 )(OCH3 2
CH2 =CHCH2 −O−CO−C6 6 −CO−O−(CH2 3 Si(OCH3 3
CH2 =CHCH2 −O−CO−C6 6 −CO−O−(CH2 2 Si(CH3 )Cl2
CH2 =CHCH2 −O−CO−C6 6 −CO−O−(CH2 3 SiCl3 を挙げることができる。これらは、1種単独であるいは2種以上を併用して用いることができる。
【0050】
また、不飽和シラン化合物(II)およびメチル(メタ)アクリレートと共重合させる他の重合性単量体としては、例えば、上記(I−1)の方法において例示した官能基(α)を有するビニル系単量体や他のビニル系単量体などを挙げることができる。
【0051】
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の製造方法としては、例えば、一括して各単量体を添加して重合する方法、単量体の一部を重合したのち、その残りを連続的にまたは断続的に添加して重合する方法、または、単量体を重合開始時から連続的に添加する方法、あるいはあるいはこれらの重合方法を組み合わせた方法などが挙げられる。
【0052】
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の製造方法における好ましい重合方法としては、ラジカル重合、特に溶液重合が挙げられる。溶液重合に使用される溶媒は、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)を製造できるものであれば特に制限されないが、例えば、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。上記アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどを挙げることができる。また、芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられ、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0053】
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の製造するための重合反応において、重合開始剤、分子量調整剤、キレート化剤、無機電解質などは、公知の種々のものを使用することができる。
本発明においては、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)として、上記のようにして重合されたものに加えて、特定のシリル基を含有するエポキシ樹脂、特定のシリル基を含有するポリエステル樹脂などの他の特定のシリル基を含有する重合体を使用することもできる。特定のシリル基を含有するエポキシ樹脂は、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、脂肪族ポリグリシジルエーテル、脂肪族ポリグリシジルエステルなどのエポキシ樹脂中のエポキシ基に、特定のシリル基を有するアミノシラン類、ビニルシラン類、カルボキシシラン類、グリシジルシラン類などを反応させることにより製造することができる。また、特定のシリル基を含有するポリエステル樹脂は、例えば、ポリエステル樹脂中に含有されるカルボキシル基や水酸基に、特定のシリル基を有するアミノシラン類、カルボキシシラン類、グリシジルシラン類などを反応させることにより製造することができる。
【0054】
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2,000〜100,000であることが好ましく、より好ましくは3,000〜50,000である。
【0055】
本発明において、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
【0056】
〔有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製方法〕
本発明の金属表面用コート材を構成する有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させることにより調製される。特に、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)との混合物に、加水分解・縮合反応を促進する触媒(以下、「加水分解・縮合反応用触媒」という。)と水とを添加して共縮合させることにより、調製することが好ましい。
【0057】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)を得るための混合物における特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)と特定シラン化合物(a1)との原料比は、特定シラン化合物(a1)の含有量(Wa1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の含有量(Wa2)との質量比で90/10〜15/85であることが好ましく、より好ましくは30/70〜70/30である。
原料比が上記の範囲内にあることにより、透明性や耐候性に優れた保護膜を形成できる金属表面用コート材が得られる。一方、特定シラン化合物(a1)の含有量が過少である場合は、得られる金属表面用コート材による保護膜が金属表面の十分な保護効果を発揮できずに金属表面が変色・黒色化し、LEDがその使用条件下における十分な耐久性が得られないものとなるおそれがある。特定シラン化合物(a1)の含有量が過多である場合は、得られる金属表面用コート材による保護膜がガス透過性の高いものとなるおそれやクラックが発生するおそれがある。
【0058】
ここに、「特定シラン化合物(a1)の含有量」とは、特定シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算質量であり、「特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の含有量」とは、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の固形分換算質量である。
【0059】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、具体的には下記(1)または(2)の方法により調製することが好ましい。
(1)特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)と加水分解・縮合反応用触媒との混合液に下記に詳述する範囲の量の水を加え、温度40〜80℃、反応時間0.5〜12時間で特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)とを共縮合させ、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する。その後、必要に応じて、安定性向上剤などの他の添加剤を加えてもよい。
【0060】
(2)特定シラン化合物(a1)に下記に詳述する範囲の量の水を加え、温度40〜80℃、時間0.5〜12時間で特定シラン化合物(a1)の加水分解・縮合反応を行い、次いで、特定シリル基含有重合体(b2)および加水分解・縮合反応用触媒を加えて混合し、さらに温度40〜80℃、反応時間0.5〜12時間で縮合反応を行い、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する。その後、必要に応じて、安定性向上剤などの他の添加剤を加えてもよい。
【0061】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)は、GPC法により測定したポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が3,000〜200,000であることが好ましく、より好ましくは4,000〜150,000、特に好ましくは5,000〜100,000である。
【0062】
〔加水分解・縮合反応用触媒〕
本発明においては、特定シラン化合物(a1)および特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の加水分解・縮合反応の促進のために、当該特定シラン化合物(a1)および特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の混合物に加水分解・縮合反応用触媒を添加することが好ましい。加水分解・縮合反応用触媒を使用することにより、架橋度の高い有機無機ハイブリッドポリマー(A)が得られると共に、オルガノシラン(1)の重縮合反応により生成するポリシロキサンが分子量の大きなものとなり、結果として、強度、長期耐久性などに優れた保護膜を形成することができ、かつ金属表面にコーティングした際の硫黄バリア性も高くなる。さらに、加水分解・縮合反応用触媒を使用することにより、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)との反応が促進されて有機無機ハイブリッドポリマー(A)に十分な反応サイト(アルコキシ基)が形成され、この有機無機ハイブリッドポリマー(A)を例えば銀メッキ部の表面にコーティングし硬化させて保護膜を形成すると、シロキサン結合が形成されて架橋度が高い保護膜が形成されて優れた硫黄バリア性が発現されると共に、銀メッキ部の表面に吸着することによって当該銀メッキ部の表面の変色を抑制できると推定される。
【0063】
このような加水分解・縮合反応用触媒としては、例えば、塩基性化合物、酸性化合物、塩化合物および金属キレート化合物が挙げられる。
【0064】
〔塩基性化合物〕
塩基性化合物としては、アンモニア(アンモニア水溶液を含む。)、有機アミン化合物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなどのアルカリ金属のアルコキシドが挙げられる。これらのうち、アンモニアおよび有機アミン化合物が好ましい。
【0065】
有機アミン化合物としては、アルキルアミン、アルコキシアミン、アルカノールアミン、アリールアミンなどが挙げられる。
アルキルアミンとしては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、N,N−ジメチルアミン、N,N−ジエチルアミン、N,N−ジプロピルアミン、N,N−ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルキルアミンなどが挙げられる。
【0066】
アルコキシアミンとしては、メトキシメチルアミン、メトキシエチルアミン、メトキシプロピルアミン、メトキシブチルアミン、エトキシメチルアミン、エトキシエチルアミン、エトキシプロピルアミン、エトキシブチルアミン、プロポキシメチルアミン、プロポキシエチルアミン、プロポキシプロピルアミン、プロポキシブチルアミン、ブトキシメチルアミン、ブトキシエチルアミン、ブトキシプロピルアミン、ブトキシブチルアミンなどの炭素数1〜4のアルコキシ基を有するアルコキシアミンなどが挙げられる。
【0067】
アルカノールアミンとしては、メタノールアミン、エタノールアミン、プロパノールアミン、ブタノールアミン、N−メチルメタノールアミン、N−エチルメタノールアミン、N−プロピルメタノールアミン、N−ブチルメタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−メチルプロパノールアミン、N−エチルプロパノールアミン、N−プロピルプロパノールアミン、N−ブチルプロパノールアミン、N−メチルブタノールアミン、N−エチルブタノールアミン、N−プロピルブタノールアミン、N−ブチルブタノールアミン、N,N−ジメチルメタノールアミン、N,N−ジエチルメタノールアミン、N,N−ジプロピルメタノールアミン、N,N−ジブチルメタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジプロピルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジプロピルプロパノールアミン、N,N−ジブチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルブタノールアミン、N,N−ジエチルブタノールアミン、N,N−ジプロピルブタノールアミン、N,N−ジブチルブタノールアミン、N−メチルジメタノールアミン、N−エチルジメタノールアミン、N−プロピルジメタノールアミン、N−ブチルジメタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N−プロピルジエタノールアミン、N−ブチルジエタノールアミン、N−メチルジプロパノールアミン、N−エチルジプロパノールアミン、N−プロピルジプロパノールアミン、N−ブチルジプロパノールアミン、N−メチルジブタノールアミン、N−エチルジブタノールアミン、N−プロピルジブタノールアミン、N−ブチルジブタノールアミン、N−(アミノメチル)メタノールアミン、N−(アミノメチル)エタノールアミン、N−(アミノメチル)プロパノールアミン、N−(アミノメチル)ブタノールアミン、N−(アミノエチル)メタノールアミン、N−(アミノエチル)エタノールアミン、N−(アミノエチル)プロパノールアミン、N−(アミノエチル)ブタノールアミン、N−(アミノプロピル)メタノールアミン、N−(アミノプロピル)エタノールアミン、N−(アミノプロピル)プロパノールアミン、N−(アミノプロピル)ブタノールアミン、N−(アミノブチル)メタノールアミン、N−(アミノブチル)エタノールアミン、N−(アミノブチル)プロパノールアミン、N−(アミノブチル)ブタノールアミンなどの炭素数1〜4のアルキル基を有するアルカノールアミンが挙げられる。
【0068】
アリールアミンとしてはアニリン、N−メチルアニリンなどが挙げられる。
【0069】
さらに、上記以外の有機アミン化合物として、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラエチルアンモニウムハイドロキサイド、テトラプロピルアンモニウムハイドロキサイド、テトラブチルアンモニウムハイドロキサイドなどのテトラアルキルアンモニウムハイドロキサイド;テトラメチルエチレンジアミン、テトラエチルエチレンジアミン、テトラプロピルエチレンジアミン、テトラブチルエチレンジアミンなどのテトラアルキルエチレンジアミン;メチルアミノメチルアミン、メチルアミノエチルアミン、メチルアミノプロピルアミン、メチルアミノブチルアミン、エチルアミノメチルアミン、エチルアミノエチルアミン、エチルアミノプロピルアミン、エチルアミノブチルアミン、プロピルアミノメチルアミン、プロピルアミノエチルアミン、プロピルアミノプロピルアミン、プロピルアミノブチルアミン、ブチルアミノメチルアミン、ブチルアミノエチルアミン、ブチルアミノプロピルアミン、ブチルアミノブチルアミンなどのアルキルアミノアルキルアミン;エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミンなどのポリアミン;ピリジン、ピロール、ピペラジン、ピロリジン、ピペリジン、ピコリン、モルホリン、メチルモルホリン、ジアザビシクロオクラン、ジアザビシクロノナン、ジアザビシクロウンデセンなども挙げられる。
【0070】
このような塩基性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、トリエチルアミン、テトラメチルアンモニウムハイドロキサイド、ピリジンが特に好ましい。
【0071】
〔酸性化合物〕
酸性化合物としては、有機酸および無機酸が挙げられる。
有機酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、無水マレイン酸、メチルマロン酸、アジピン酸、セバシン酸、没食子酸、酪酸、メリット酸、アラキドン酸、ミキミ酸、2−エチルヘキサン酸、オレイン酸、ステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、サリチル酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸などが挙げられる。
無機酸としては、例えば、塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸などが挙げられる。
【0072】
このような酸性化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、マレイン酸、無水マレイン酸、メタンスルホン酸、酢酸が特に好ましい。
【0073】
〔塩化合物〕
塩化合物としては、ナフテン酸、オクチル酸、亜硝酸、亜硫酸、アルミン酸、炭酸などのアルカリ金属塩などが挙げられる。
【0074】
〔金属キレート化合物〕
金属キレート化合物としては、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物(以下、有機金属化合物および/またはその部分加水分解物をまとめて、「有機金属化合物類」という。)が挙げられる。
【0075】
有機金属化合物類としては、例えば、下記一般式(4)で表される化合物(以下、「有機金属化合物(4)」という)、1つのスズ原子に炭素数1〜10個のアルキル基が1〜2個結合した4価のスズの有機金属化合物(以下、「有機スズ化合物」という)、あるいは、これらの部分加水分解物などが挙げられる。
【0076】
一般式(4):M(OR5 r (R6 COCHCOR7 s
〔一般式(4)中、Mは、ジルコニウム、チタンおよびアルミニウムからなる群からを選択される少なくとも1種の金属原子を表し、R5 およびR6 は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R7 は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表し、rおよびsは、それぞれ独立に、(r+s)=(Mの原子価)の関係を満たす0〜4の整数である。〕
【0077】
また、有機金属化合物類としては、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトラ−i−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタンなどのテトラアルコキシチタン類;メチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、i−プロピルトリエトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−(2−アミノエチル)−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリメトキシシランなどのトリアルコキシシラン類;ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、ジ−n−プロピルジメトキシシラン、ジ−i−プロピルジエトキシシラン、ジ−n−ペンチルジメトキシシラン、ジ−n−オクチルジエトキシシラン、ジ−n−シクロヘキシルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシランなどのジアルコキシシラン類などのチタンアルコレートおよびその縮合物を挙げることもできる。
【0078】
有機金属化合物(4)としては、例えば、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、トリ−n−ブトキシ・エチルアセトアセテートジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、n−ブトキシ・トリス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(n−プロピルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(アセチルアセトアセテート)ジルコニウム、テトラキス(エチルアセトアセテート)ジルコニウム、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;
テトラ−i−プロポキシチタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセテート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトン)チタニウムなどの有機チタン化合物;
トリ−i−プロポキシアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、ジ−i−プロポキシ・アセチルアセトナートアルミニウム、i−プロポキシ・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)アルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、トリス(アセチルアセトナート)アルミニウム、モノアセチルアセトナート・ビス(エチルアセトアセテート)アルミニウムなどの有機アルミニウム化合物が挙げられる。
【0079】
有機スズ化合物としては、例えば、
【化3】


などのカルボン酸型有機スズ化合物;
【0080】
【化4】


などのメルカプチド型有機スズ化合物;
【0081】
【化5】


などのスルフィド型有機スズ化合物;
【0082】
【化6】


などのクロライド型有機スズ化合物;
【0083】
(C4 9 2 SnO、(C8 172 SnOなどの有機スズオキサイドや、これらの有機スズオキサイドとシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、フタル酸ジオクチルなどのエステル化合物との反応生成物;
などが挙げられる。
【0084】
このような金属キレート化合物は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジ−i−プロポキシ・ビス(アセチルアセトナート)チタニウム、ジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウム、トリス(エチルアセトアセテート)アルミニウム、あるいはこれらの部分加水分解物が好ましい。
【0085】
また、加水分解・縮合反応用触媒は、亜鉛化合物やその他の反応遅延剤と混合して使用することもできる。
【0086】
加水分解・縮合反応用触媒の使用量は、加水分解・縮合反応用触媒が有機金属化合物類以外である場合は、特定シラン化合物(a1)100質量部(オルガノシラン(1)の完全加水分解縮合物換算)に対して、通常0.001〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは0.01〜80質量部、さらに好ましくは0.1〜50質量部である。
加水分解・縮合反応用触媒が有機金属化合物類である場合は、特定シラン化合物(a1)100質量部(オルガノシラン(1)の完全加水分解縮合物換算)に対して、通常100質量部以下であることが好ましく、より好ましくは0.1〜80質量部、さらに好ましくは0.5〜50質量部である。
加水分解・縮合反応用触媒の使用量が過多である場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)が保管時にゲル化が発生するなど保存安定性の低いものとなるおそれがあり、得られる保護膜の架橋度が過度に高くなってクラックが発生することがある。
【0087】
〔水〕
本発明において、有機無機ハイブリッドポリマー(A)を調製する際に特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)との混合物に水を添加する場合は、添加される水の量は、特定シラン化合物(a1)中の全てのOR2 基1モルに対して、通常0.1〜1.0モルであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.8モル、さらに好ましくは0.25〜0.6モルである。
水の添加量が上記の範囲内にある場合は、得られる金属表面用コート材がゲル化の発生しにくい良好な貯蔵安定性を示す。また、水の添加量が上記の範囲内にある場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)が十分に架橋されたものとなり、このような有機無機ハイブリッドポリマー(A)を含む金属表面用コート材を用いることによって、硫黄バリア性などの金属表面保護性に優れた保護膜を形成することができる。
【0088】
〔有機溶媒〕
本発明においては、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)とを有機溶媒中で加水分解・縮合反応させてもよい。このとき、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の調製時に使用した有機溶媒をそのまま使用することもでき、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の調製時に使用した有機溶媒を除去し、新たに有機溶媒を添加してもよい。また、有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度を調整するために、必要に応じて有機溶媒を添加することもできる。
【0089】
有機溶媒は、有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が10〜60質量%の範囲となる量が添加されることが好ましく、より好ましくは15〜50質量%、特に好ましくは20〜40質量%である。なお、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の調製時に使用した有機溶媒をそのまま使用して有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が上記範囲にある場合には、有機溶媒を添加しても、添加しなくてもよい。
【0090】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度を調整することによって、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)との反応性をコントロールすることができる。
有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が10質量%未満になる場合は、特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)との反応性が低下することがある。一方、有機無機ハイブリッドポリマー(A)調製時の固形分濃度が60質量%を超える場合は、得られる金属表面用コート材が保管時にゲル化してしまうおそれがある。なお、ここで言う固形分濃度における固形分量は、特定シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の使用量(Wa1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の固形分換算の使用量(Wa2)の総量である。
【0091】
有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製時に上記のように用いられる有機溶媒としては、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製に使用される成分を均一に混合できるものであれば特に限定されないが、例えば、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の製造に用いられる有機溶媒として例示した、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0092】
〔安定性向上剤〕
本発明の金属表面用コート材は、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の保存安定性などを向上させるために、有機無機ハイブリッドポリマー(A)に、必要に応じて下記一般式(6)で表されるβ−ジケトン類、β−ケトエステル類、カルボン酸化合物、ジヒドロキシ化合物、アミン化合物およびオキシアルデヒド化合物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物よりなる安定性向上剤を添加することが好ましい。
一般式(6):R10COCH2 COR11
〔一般式(6)中、R10は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基などの炭素数1〜6個の1価の炭化水素基を表し、R11は、前記炭素数1〜6個の1価の炭化水素基、または、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、ラウリルオキシ基、ステアリルオキシ基などの炭素数1〜16個のアルコキシル基を表す。〕
【0093】
特に、加水分解・縮合反応用触媒として有機金属化合物類を使用する場合は、上記の安定性向上剤を添加することが好ましい。安定性向上剤を添加することによって、安定性向上剤が有機金属化合物類の金属原子に配位し、この配位が特定シラン化合物(a1)と特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)との過剰な共縮合反応を抑制するため、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)が極めて高い保存安定性を有するものとなると考えられる。
【0094】
このような安定性向上剤としては、具体的には、例えばアセチルアセトン、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸−n−プロピル、アセト酢酸−i−プロピル、アセト酢酸−n−ブチル、アセト酢酸−sec−ブチル、アセト酢酸−t−ブチル、ヘキサン−2,4−ジオン、ヘプタン−2,4−ジオン、ヘプタン−3,5−ジオン、オクタン−2,4−ジオン、ノナン−2,4−ジオン、5−メチルヘキサン−2,4−ジオン、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸、アミノ酢酸、イミノ酢酸、エチレンジアミン四酢酸、グリコール、カテコール、エチレンジアミン、2,2−ビピリジン、1,10−フェナントロリン、ジエチレントリアミン、2−エタノールアミン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、メチオニン、サリチルアルデヒドなどが挙げられる。これらのうち、アセチルアセトンおよびアセト酢酸エチルが好ましい。
これらの安定性向上剤は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0095】
安定性向上剤は、加水分解・縮合反応用触媒として有機金属化合物類を使用する場合は、前記有機金属化合物類の有機金属化合物1モルに対して、通常2モル以上、好ましくは3〜20モル使用されることが好ましい。安定性向上剤の使用量が2モル未満である場合は、得られる有機無機ハイブリッドポリマー(A)に十分な保存安定性が得られないことがある。
【0096】
〔金属酸化物粒子(B)〕
本発明の金属表面用コート材は、シリカなどの金属酸化物よりなる粒子(以下、「金属酸化物粒子(B)」という。)を、有機無機ハイブリッドポリマー(A)に分散させた状態に配合させた構成を有していてもよい。
金属酸化物粒子(B)を配合することにより、得られる金属表面コート材による保護膜が、十分な耐熱性などの耐久性が得られると共にガス拡散効果によりガス透過性の極めて低いものとなる。
【0097】
金属酸化物粒子(B)を配合する場合は、粉体状、あるいはイソプロピルアルコールなどの極性溶媒やトルエンなどの非極性溶媒に分散させたゾル状またはコロイド状などの形態で使用することができる。金属酸化物粒子(B)は、分散性を向上させるために表面処理して用いてもよい。
これらの金属酸化物粒子(B)の1次粒子径は、通常0.0001〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.5μm、特に好ましくは0.002〜0.2μmである。
金属酸化物粒子(B)がゾル状またはコロイド状の形態で添加される場合は、その固形分濃度は通常50量%以下であることが好ましく、より好ましくは0.01〜40質量%である。
【0098】
表面処理未処理の粉末状シリカとしては、日本アエロジル社製の#150、#200、#300、疎水化処理の粉末状シリカとして、日本アエロジル社製のR972、R974、R976、RX200、RX300、RY200S、RY300、R106、東ソー社製のSS50A、富士シリシアのサイロホービック100などが挙げられる。
また、溶剤に分散されたコロイダルシリカとしては、日産化学工業社製のイソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤分散コロイダルシリカ、メチルイソブチルなどのケトン系溶剤分散コロイダルシリカ、トルエンなどの非極性溶剤分散コロイダルシリカなどが挙げられる。
【0099】
金属酸化物粒子(B)は、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製時に添加してもよく、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の調製後に添加してもよい。
金属酸化物粒子(B)の使用量は、有機無機ハイブリッドポリマー(A)の固形分に対して、固形分換算で通常80質量%以下であることが好ましく、好ましくは5〜50質量%である。
【0100】
〔金属表面用コート材〕
本発明においては、以上のように得られた有機無機ハイブリッドポリマー(A)または有機無機ハイブリッドポリマー(A)および金属酸化物粒子(B)との混合物そのものを金属表面用コート材として金属表面に適用してもよいが、有機溶媒で希釈して固形分の含有量を調整したものを金属表面用コート材として用いてもよい。
使用できる有機溶媒としては、アルコール類、芳香族炭化水素類、エーテル類、ケトン類、エステル類などを挙げることができる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、n−ヘキシルアルコール、n−オクチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレンモノメチルエーテルアセテート、ジアセトンアルコールなどを挙げることができる。また、芳香族炭化水素類としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられ、エーテル類としては、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどが挙げられ、ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトンなどが挙げられ、エステル類としては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、炭酸プロピレン、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ノルマルプロピル、乳酸イソプロピル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチルなどが挙げられる。これらの有機溶剤は、1種単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0101】
以上のような金属表面用コート材によれば、これに含有される有機無機ハイブリッドポリマー(A)が硫黄バリア性に優れるものであるため、優れた透明性および硫黄バリア性を有する保護膜を形成することができる。
【0102】
〔発光装置〕
本発明の発光装置は、以上の金属表面用コート材により表面をコートされた銀メッキ部材などの金属メッキ部材および/または銀電極などの金属電極を有するものであり、具体的には、例えば図1に示されるように、銀電極55およびLED素子よりなる発光素子50の表面が金属表面コート材によりコートされて保護膜53が形成された発光ダイオード(LED)が挙げられる。なお、図において、51は封止材、52は蛍光体、56は発光素子50を収納するハウジングである。
このLEDは、図2に示されるように、ハウジング56に対して金属表面用コート材による保護膜53を形成させてこれを硫黄などから保護する構成とすることもできる。
また、図3に示されるように、保護膜53中に蛍光体52を含有させ、発光素子50から発せられた光を変換させる構成とすることもできる。
LED素子としては、青色LED素子、白色LED素子、紫外LED素子などを用いることができる。
【0103】
〔金属部材の保護方法〕
本発明の金属表面用コート材を金属部材の表面に塗布して保護膜を形成することにより、変色や黒色化などから当該金属部材を保護することができる。
金属表面用コート材は、例えば、LEDパッケージ中に直接キャスト(ポッティング)し、例えば120℃で1時間乾燥させることにより保護膜を製膜することができる。また、スプレー塗装、ディップ塗装、スピンコートなどのコーティング方法によって保護膜を製膜することもできる。塗布膜厚は、乾燥膜厚で1〜200μm、好ましくは10〜100μmとなる厚みとすることが好ましい。
【0104】
以上のような発光装置によれば、その内部の銀メッキ部材および/または銀電極の表面が上記の金属表面用コート材によってコーティングされて保護膜が形成されているために、硫黄雰囲気下に曝された場合にも当該銀メッキ部材および/または銀電極の変色・黒色化が抑制され、その結果、高輝度化および長寿命化が図られる。
【0105】
以上、本発明の実施の形態について具体的に説明したが、本発明の実施の形態は上記の例に限定されるものではなく、種々の変更を加えることができる。
【実施例】
【0106】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、「質量部」および「質量%」を示す。また、重量平均分子量(Mw)は、下記の方法により測定した。
【0107】
重量平均分子量(Mw)は、GPC法により下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として示した。
装置:HLC−8120C(東ソー社製)
カラム:TSK−gel MultiporeHXL−M(東ソー社製)
溶離液:THF
流量:0.5mL/min
負荷量:5.0%、100μL
【0108】
<特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の調製例1>
還流冷却器および撹拌機を備えた反応器に、メチルメタクリレート92部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン3部、i−ブチルアルコール26部、酢酸ブチル109部よりなる組成物〔X〕を加えて混合した後、撹拌しながら80℃に加温した。この混合物にアゾビスイソバレロニトリル2部をキシレン8部に溶解した溶液を30分間かけて滴下した後、80℃で5時間反応させた。冷却後、固形分濃度が40%、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が8,000である、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体〔1〕を含有する溶液〔1〕を得た。
【0109】
<特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の調製例2>
特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体(a2)の調製例1において、組成物〔X〕としてメチルメタクリレート92部、ブチルアクリレート130部、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6、6−テトラメチルピペリジン3部、γ―メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン5部、i-ブチルアルコール26部、酢酸ブチル109部よりなるものを用いたことの他は同様の操作を行なうことにより、固形分濃度が40%、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が8,000である、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体〔2〕を含有する溶液〔2〕を得た。
【0110】
<実施例1>
撹拌機および還流冷却器を備えた反応器に、特定シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン61部およびジメチルジメトキシシラン32部、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体として上記の溶液〔1〕160部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール53部、酢酸ブチル3部、並びに加水分解・縮合反応用触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール50%希釈液3部を加えて混合し、撹拌しながら50℃に昇温した。これに水を8部(特定シラン化合物中の全てのOR2 基1モルに対して0.40モルに相当)を30分間かけて滴下した後、60℃で4時間反応させ、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が13,000である、無機含有量が50質量%の有機無機ハイブリッドポリマーを含有する本発明に係る組成物〔1〕を得、この組成物〔1〕に、安定性向上剤としてアセチルアセトン2部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを固形分濃度が20質量%になるまで添加して、金属表面用コート材〔1〕を得た。
この金属表面用コート材〔1〕100部に対し、固形分濃度15質量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液5部を加えてよく撹拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、100℃で1時間乾燥させることにより、銀黒色化抑制能評価用サンプル〔1〕を作製した。
【0111】
<実施例2>
実施例1において、特定シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン3部およびジメチルジメトキシシラン3部、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体として上記の溶液〔1〕217部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール50部、並びに加水分解・縮合反応用触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール50%希釈液3部を用いたことの他は同様の操作を行なうことにより、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が13,000である、無機含有量が5質量%の有機無機ハイブリッドポリマーを含有する本発明に係る組成物〔2〕を得、この組成物〔2〕に、安定性向上剤としてアセチルアセトン2部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを固形分濃度が20質量%になるまで添加して、金属表面用コート材〔2〕を得た。
この金属表面用コート材〔2〕100部に対し、固形分濃度15質量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液5部を加えてよく撹拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、100℃で1時間乾燥させることにより、銀黒色化抑制能評価用サンプル〔2〕を作製した。
【0112】
<実施例3>
実施例1において、特定シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン58部およびジメチルジメトキシシラン55部、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体として上記の溶液〔1〕23部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール8部、酢酸ブチル51部、並びに加水分解・縮合反応用触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール50%希釈液10部を用いたことの他は同様の操作を行なうことにより、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が13,000である、無機含有量が90質量%の有機無機ハイブリッドポリマーを含有する本発明に係る組成物〔3〕を得、この組成物〔3〕に、安定性向上剤としてアセチルアセトン2部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを固形分濃度が20質量%になるまで添加して、金属表面用コート材〔3〕を得た。
この金属表面用コート材〔3〕100部に対し、固形分濃度15質量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液5部を加えてよく撹拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、100℃で1時間乾燥させることにより、銀黒色化抑制能評価用サンプル〔3〕を作製した。
【0113】
<比較例1>
撹拌機および冷却管を備えた反応器に、特定シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン61部およびジメチルジメトキシシラン32部、特定シリル基含有メチル(メタ)アクリレート由来重合体として上記の溶液〔2〕160部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール53部、酢酸ブチル3部、並びに加水分解・縮合反応用触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール50%希釈液3部を加えて混合し、撹拌しながら50℃に昇温した。これに水を8部(特定シラン化合物中の全てのOR2 基1モルに対して0.40モルに相当)を30分間かけて滴下した後、60℃で4時間反応させ、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が13,000である、無機含有量が50質量%の有機無機ハイブリッドポリマーを含有する組成物〔4〕を得、この組成物〔4〕に、安定性向上剤としてアセチルアセトン2部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを固形分濃度が20質量%になるまで添加して、金属表面用コート材〔4〕を得た。
この金属表面用コート材〔4〕100部に対し、固形分濃度15質量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液5部を加えてよく撹拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、100℃で1時間乾燥させることにより、銀黒色化抑制能評価用サンプル〔4〕を作製した。
【0114】
<比較例2>
撹拌機および冷却管を備えた反応器に、特定シラン化合物としてメチルトリメトキシシラン63部およびジメチルジメトキシシラン30部、有機溶媒としてi−プロピルアルコール55部、並びに加水分解・縮合反応触媒としてジ−i−プロポキシ・エチルアセトアセテートアルミニウムのi−プロピルアルコール50%希釈液6部を加えて混合し、撹拌しながら50℃に昇温した。これに水を14部(特定シラン化合物中の全てのOR2 基1モルに対して0.40モルに相当)を30分間かけて滴下した後、60℃で4時間反応させ、GPC法により測定した重量平均分子量(Mw)が30,000である、無機含有量が100質量%の有機無機ハイブリッドポリマーを含有する組成物〔5〕を得、この組成物〔5〕に、安定性向上剤としてアセチルアセトン7部を加えて1時間撹拌した後、室温まで冷却し、希釈溶媒としてメチルイソブチルケトンを固形分濃度が20質量%になるまで添加して、金属表面用コート材〔5〕を得た。
この金属表面用コート材〔5〕100部に対し、固形分濃度15質量%のジ−n−ブトキシ・ビス(アセチルアセトナート)ジルコニウムのイソプロピルアルコール溶液5部を加えてよく撹拌した後に、乾燥膜厚が100μmとなるように市販の表面実装型のLEDパッケージ(銀メッキ付)に仕込み、100℃で1時間乾燥させることにより、銀黒色化抑制能評価用サンプル〔5〕を作製した。
【0115】
上記の組成物〔1〕〜〔5〕および銀黒色化抑制能評価用サンプル〔1〕〜〔5〕ついて、以下(1)〜(4)の評価方法によって評価した。結果を表1に示す。
【0116】
(1)保存安定性
組成物〔1〕〜〔5〕について、それぞれ、ポリエチレン製の容器内で常温で1ヶ月間密栓保存した後、ゲル化の有無を目視により判定し、さらにゲル化していないものについては東京計器社製のBM型粘度計により25℃で粘度測定を行い、下記の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:保存前後の粘度変化率が20%以下。
B:保存前後の粘度変化率が20%より大きい。
【0117】
(2)耐熱性
組成物〔1〕〜〔5〕を用いて、それぞれ、乾燥膜厚が100μmになるよう石英ガラス板上に塗布した後、100℃で1時間乾燥し、次いで120℃で1時間乾燥することにより、硬化膜を作成し、これらの硬化膜を120℃で500時間保管した後、硬化膜の外観を目視で観察し、色の変化およびクラックの各項目について、下記の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
(色の変化)
A:変化なし。
B:わずかに変色。
C:黄変した。
(クラック)
A:変化なし。
B:少量発生。
C:全面に発生。
【0118】
(3)耐光性
組成物〔1〕〜〔5〕を用いて、それぞれ、乾燥膜厚が100μmになるよう石英ガラス板上に塗布した後、100℃で1時間乾燥し、次いで120℃で1時間乾燥することにより、硬化膜を作成し、これらの硬化膜に波長350nm以下の光をカットしたスポットUV照射装置「SP−VII 」(ウシオ電機社製)を使用して照度5000mW/cm2 の紫外線を500時間照射した後、硬化膜の外観を目視で観察し、下記の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:変化なし。
B:黄変色した。
C:黒く焼け焦げた。
【0119】
(4)銀黒色化抑制能
銀黒色化抑制能評価用サンプル〔1〕〜〔5〕について、それぞれ、容積150cm3 の耐圧容器内において硫化鉄0.06gおよび硫酸0.20gを混合後、直ちにサンプルを仕込み密閉し(硫化水素の理論濃度10vol%)、この耐圧容器を120℃で5時間加熱した後、冷却し、サンプルを取出し、当該サンプルの銀メッキの外観を観察し、下記の評価基準に従って評価した。
−評価基準−
A:変化なし。
B:僅かに変色した。
C:黒く変色した。
【0120】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の金属表面用コート材を用いて作製された発光ダイオードの構成の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の金属表面用コート材を用いて作製された発光ダイオードの構成の別の一例を示す模式図である。
【図3】本発明の金属表面用コート材を用いて作製された発光ダイオードの構成の更に別の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
【0122】
50 発光素子
51 封止材
52 蛍光体
53 保護膜
55 銀電極
56 ハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1):R1nSi(OR2 4-n
〔一般式(1)中、nは0〜2の整数であり、R1 は、炭素数1〜8の1価の有機基を示し、n=2である場合には互いに同じであっても異なっていてもよい。R2 は、それぞれ独立に、炭素数1〜5のアルキル基または炭素数1〜6のアシル基を示す。〕
で表されるオルガノシラン、当該オルガノシランの加水分解物および当該オルガノシランの縮合物からなる群から選択される少なくとも1種のシラン化合物(a1)と、加水分解性基および/または水酸基が結合したケイ素原子を含有し、シリル基を有するメチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)とを加水分解・縮合反応させて得られる重合体(A)を含有することを特徴とする金属表面用コート材。
【請求項2】
重合体(A)が、前記シラン化合物(a1)と前記シリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)とを、シラン化合物(a1)の完全加水分解縮合物換算の含有量(Wa1)とシリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)の固形分換算の含有量(Wa2)との質量比(Wa1/Wa2)が90/10〜15/85の範囲において加水分解・縮合反応させて得られたものであることを特徴とする請求項1に記載の金属表面用コート材。
【請求項3】
前記シリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)における加水分解性基および/または水酸基が結合したケイ素原子を含有するシリル基の含有量が、当該シリル基を有し、メチル(メタ)アクリレート由来の構成単位を50質量%以上含有する重合体(a2)におけるケイ素原子の含有量が0.1〜5質量%となる量であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属表面用コート材。
【請求項4】
銀メッキ部材の表面に適用されることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属表面用コート材。
【請求項5】
銀電極の表面に適用されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載の金属表面用コート材。
【請求項6】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属表面用コート材により表面をコートされた銀メッキ部材および/または銀電極を有することを特徴とする発光装置。
【請求項7】
金属表面に請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属表面用コート材を塗布して保護膜を形成することにより、前記金属表面を保護することを特徴とする金属表面保護方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−280692(P2009−280692A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133910(P2008−133910)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】