説明

金属製キャップの製造方法

【課題】長期保管された場合にも開栓性が低下することのない、滑剤として脂肪酸アミドが配合されたポリウレタンエラストマーから成るライナー材を有する金属製キャップの製造方法を提供する。
【解決手段】金属製キャップシェルの内面にポリウレタンエラストマー組成物を施し、これを加熱硬化させてライナー材を形成する金属製キャップの製造方法において、前記ポリウレタンエラストマー組成物が、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンを含有する、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分から成る二成分系ポリウレタンエラストマーであり、前記金属製キャップに施されるポリウレタンエラストマー組成物中に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体が分散していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製キャップの製造方法に関するものであり、より詳細には、経時後の開栓性に優れたライナー材が形成された金属製キャップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属製キャップのライナー材としては、密封材としての柔軟性や復元性に優れ、優れた密封性を発現できると共に、安全性及び衛生性にも優れていることから、ポリウレタンエラストマーが好適に使用されている(特許文献1)。
ライナー材に用いられるポリウレタンエラストマーにおいては、一般に、滑剤、増粘剤、酸化防止剤、顔料等の添加剤が配合されているが、ポリウレタンエラストマーは滑り性に劣るものであるため、特に、ツイストオフキャップやスクリューキャップのように、旋回させて開閉するタイプのキャップに用いる場合には、開栓性を確保するために、滑剤を配合することは必須である。
ポリウレタンエラストマー中に配合される滑剤としては、安全性に優れ、食品用途のキャップのライナー材にも使用可能な、アミド(アマイド)系、シリコーン系の滑剤が好適に用いられており、かかる滑剤は、一般にポリウレタンエラストマーを構成するポリオールコンパウンド中に配合して用いられている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−205963号公報
【特許文献2】特開2008−179746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
滑剤として脂肪酸アミドを用いた場合には、ポリウレタンエラストマーから成るライナー材の表面に脂肪酸アミドが滲み出て、ライナー材の滑性を向上させるものであるが、脂肪酸アミドの融点を超える熱殺菌工程において、ライナー表面の脂肪酸アミドが再度溶融し、ライナー中に引っ込んでしまう再溶解現象の発生により、表面の滑性が失われ、かかるライナー材が施された金属製キャップが適用された容器を長期間保管すると、ライナー材と容器口部の接触面が疑似接着してしまい、開栓しづらくなるという問題が生じた。
【0005】
従って本発明の目的は、滑剤として脂肪酸アミドが配合されたポリウレタンエラストマーから成るライナー材を用いた金属製キャップにおいて、長期保管された場合にも、開栓性が低下することのない、開栓性に優れたライナー材を有する金属製キャップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、金属製キャップシェルの内面にポリウレタンエラストマー組成物を施し、これを加熱硬化させてライナー材を形成する金属製キャップの製造方法において、前記ポリウレタンエラストマー組成物が、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンを含有する、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分から成る二成分系ポリウレタンエラストマーであり、前記金属製キャップに施されるポリウレタンエラストマー組成物中に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体が生成分散していることを特徴とする金属製キャップの製造方法が提供される。
【0007】
本発明の金属製キャップの製造方法においては、
1.複合体を含有するポリウレタンエラストマー組成物が、35乃至55℃の範囲に温度制御されていること、
2.複合体が、少なくとも、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンを含有するポリオール成分を、35乃至48℃の温度で攪拌混合することにより、ポリオール成分中に予め生成分散されていること、
3.複合体の平均粒径が、20乃至150μmの範囲にあること、
が好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の金属製キャップの製造方法においては、金属製キャップに施されるライナー材を構成するポリウレタンエラストマー組成物中に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体を効率よく生成分散させることができ、これにより、粘土鉱物フィラーと共に滑剤成分である脂肪酸アミドとシリコーンがライナー材表面全体を均一に被覆することが可能となり、前述したアミドの再溶解現象が発生しにくく、滑り成分である脂肪酸アミドがライナー材表面全体を均一に被覆することが可能となり、密封状態で長期間保管した場合にも優れた開栓性を有する金属製キャップを提供することが可能になる。
本発明の金属製キャップの製造方法においては、従来のライニング装置を用いて、開栓性に優れた金属製キャップを製造することができ、生産性及び経済性にも優れている。
また本発明に用いるポリウレタンエラストマー組成物は、ライニング性にも優れており、効率よく金属製キャップにライナー材を形成することができる。
更に、本発明の金属製キャップに形成されるライナー材は、密封性、安全性、衛生性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の金属製キャップの製造方法に用いる製造ラインの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、金属製キャップシェルの内面にポリウレタンエラストマー組成物を施し、これを加熱硬化させてライナー材を形成する金属製キャップの製造方法に関するものであり、前記ポリウレタンエラストマー組成物が、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンを含有する、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分から成る二成分系ポリウレタンエラストマーであり、前記金属製キャップに塗布されるポリウレタンエラストマー組成物中に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体が生成分散していることが重要な特徴である。
前述した通り、従来、上記成分で構成されるポリウレタンエラストマー組成物から成るライナー材を有する金属製キャップにおいては、経時により開栓性に劣るようになるという問題を生じていた。
本発明者等は、かかる問題の原因を究明した結果、このような問題を生じる金属製キャップに形成されたライナー材においては、滑剤がライナー材表面に均一に存在せず、部分的にしか存在していないことがわかった。つまり、滑剤を溶解した状態でポリウレタンエラストマー組成物中に存在させた場合には、滑剤がライナー材表面だけでなく、ライナー材の厚み方向下方にも存在し、その結果ライナー材表面の全体を滑剤が被覆していないのである。
【0011】
本発明者等は、滑剤をライナー材表面に均一に存在させるためには、キャップに施されるポリウレタンエラストマー組成物中に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る滑剤を主体とする複合体を生成分散させておくことにより、ポリウレタンエラストマー組成物がキャップに施されると、該複合体が表面近傍に上昇し、これを焼き付けすることにより脂肪酸アミドが溶融して、形成されるライナー材表面の全体を粘土鉱物フィラーと共に滑剤で均一に被覆できることを見出し、経時による開栓性の低下を有効に解決することが可能になったのである。
本発明のかかる作用効果は、後述する実施例の結果からも明らかである。
すなわち、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体が分散されていたポリウレタンエラストマー組成物から成るライナー材は、経時保管した後であっても、開栓トルクが低く、優れた開栓性を有しているのに対して(実施例1〜4)、かかる複合体が最終的にポリウレタンエラストマー組成物中に生成されておらず、脂肪酸アミドが単独(状態)で存在していたポリウレタンエラストマー組成物から成るライナー材は、経時保管後、開栓トルクが上昇し、開栓性に劣っていることが明らかである(比較例1〜6)
【0012】
(ポリウレタンエラストマー組成物の調製及びライナー材の形成)
本発明において、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体が分散されているポリウレタンエラストマー組成物を調製するには、少なくとも、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンを含有するポリオール成分を、35乃至48℃、特に40乃至48℃の温度で攪拌混合することが重要である。
尚、上記攪拌混合に際して攪拌スピードは、最大周速が100m/min以下、特に30乃至60m/minの周速で、30乃至90分間攪拌混合することにより行うことが好ましい。
すなわち、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンから成る複合体を形成するためには、反応性の高いイソシアネート成分に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンを配合することは望ましくなく、またイソシアネート成分及びポリオール成分を混合した後に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンを配合したのでは、複合体を形成可能な攪拌混合を十分に行うことができないことから、ポリオール成分に脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンを配合し、予めこれらの複合体を生成しておくことが望ましい。
尚、後述する図1に示す装置では、ポリオール成分とイソシアネート成分の混練は、混練部で短時間で行われるため、混練部に供給されるポリオール成分は既に複合体を含有していることが必要であるが、ポリオール成分とイソシアネート成分の混練を30分以上行うことにより、混練部で複合体を形成することもできる。
【0013】
また本発明においては、上記温度範囲で攪拌することも重要である。すなわち上記温度範囲で攪拌することにより、ポリオール成分中の脂肪酸アミドが析出し、この析出した脂肪酸アミドが粘土鉱物フィラー及びシリコーンと結着して、複合体を形成することが可能になる。
またシリコーンがポリオール成分との相溶性に劣っていることから、この複合体は、平均粒径が20乃至150μm、特に70乃至130μmの複合体としてポリオール成分中に分散された分散構造となり、このような分散構造を有するポリウレタンエラストマー組成物においては、35乃至55℃、特に40乃至48℃の範囲に温度制御されていることによって、上記複合体がポリウレタンエラストマー組成物中に分散された状態を維持したまま、金属製キャップシェルに供給することができる。この温度範囲を超えた場合、特に高温側では脂肪酸アミドが単独に溶融状態で存在するため、複合体が形成されないこととなる。また、この温度範囲より低い温度の場合、複合体は形成されるが、ポリオール成分、またはポリウレタンエラストマー組成物の粘度が高くなるため、一定量の安定吐出作業が困難となる、ライナー形状不良が発生し易い、等の成形作業性に関する問題がおきる可能性がある。
【0014】
図1は、本発明の金製キャップの製造方法の製造ラインの一例の概略図である。
本発明の金属製キャップの製造方法においては、攪拌翼を有するポリオール成分用タンク1で、ポリオールに、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーン、及び後述する他の配合剤が配合されたポリオール成分を攪拌混合し、ポリオール中に脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンから成る複合体を形成した後、ポリオール成分定量供給部2に移送される。この際上述したように、35乃至55℃の温度範囲で攪拌混合、移送することが重要であり、また上記攪拌スピードで攪拌混合することが好ましい。
一方、イソシアネート用タンク3中のイソシアネートは、イソシアネート成分定量供給部4に移送される。
【0015】
次いで、ポリオール成分定量供給部2のポリオール成分及びイソシアネート成分定量供給部4のイソシアネート成分は、それぞれ定量されて混練部5に供給される。混練部5では、上述したように、35乃至55℃の温度に温度制御されており、これにより、乾燥オーブン内でポリオールとイソシアネートの反応により調製されたポリウレタンエラストマー組成物中には、複合体が分散された状態で維持されている。混練部5ではスクリュウでポリオール成分とイソシアネート成分の混練を行うと同時に、複合体分散ポリウレタンエラストマー組成物を定量供給バルブ6へ移送する。定量供給バルブ6によって、ライニング用ノズル7から、回転載置部8上に固定された金属製キャップシェル9に複合体分散ポリウレタンエラストマー組成物を一定量供給する。尚、ポリオール成分定量供給部2及びイソシアネート成分定量供給部4の供給のタイミングは、定量供給バルブ6のタイミングと同期しており、定量供給バルブ6がポリウレタンエラストマー組成物を吐出すると、ポリオール成分定量供給部2及びイソシアネート成分定量供給部4がポリオール成分及びイソシアネート成分をそれぞれ混練部5に供給する。
次いで、図示していないが、ポリウレタンエラストマー組成物が施された金属製キャップは乾燥オーブンに移送されて、150乃至300℃、20乃至200秒の加熱条件で加熱されることにより硬化して、ライナー材が形成され、金属製キャップが製造される。
【0016】
(ポリウレタンエラストマー組成物)
本発明でライナー材を構成するポリウレタンエラストマーは、イソシアネート成分とポリオール成分から成るプレポリマーを加熱硬化させて得られる二液型のポリウレタンエラストマーである。
イソシアネート成分としては、脂肪族及び/又は脂環式系イソシアネートを好適に使用することができ、例えば水素添加した芳香族系イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、リジンジイソシアネート等を挙げることができる。また芳香族系ポリイソシアネートしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルエタンジイソシアネート等を挙げることができる。これらの中でも、HDI及び/又はIPDIを好適に使用することができる。
また上記イソシアネート成分を変性したものであってもよく、脂肪族及び/又は脂環式系イソシアネートの、二量化反応、三量化反応、高重合反応、前記(各)イソシアネートと多官能活性水素基含有化合物とによるウレタン化反応、ウレア化反応、アミド化反応、更に、アロファネート化反応、ビウレット化反応による変性により得ることが好ましい。
【0017】
イソシアネート成分のイソシアネート基含有量は5〜38質量%、特に8〜25質量%であることが好ましい。イソシアネート基含有量が5質量%未満のものは、粘度が大きすぎて取り扱い難く、38質量%を超えるものでは、遊離の原料イソシアネートの濃度を1質量%以下に抑えることが実質上困難である。ここでいうイソシアネート基含有量は、ポリオール成分と反応するときのイソシアネート基の含有量であり、常温ではイソシアネート基として活性を示さないが、高温でイソシアネート基を再生する、例えば、イソシアネート基2個が環状に重合したウレトジオン基、及びカルボジイミド基に1個のイソシアネート基が付加したウレトンイミン結合などからのイソシアネート基も含む概念である。脂肪族系イソシアネートの平均官能基数は、ポリウレタンエラストマーの溶出物量と圧縮永久歪みの点から2〜3である。
【0018】
ポリオールとしては、数平均分子量が200乃至2000の高分子ポリオールを用いることが好適である。これらの具体例としては、例えば、ポリプロピレングリコール系ポリエーテルポリオール(PPG)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMG)とアジペート系ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール、ポリカーボネート系ポリオールなどを挙げることができる。好適には、ポリウレタンエラストマーの溶出物の点から、PTMGとアジペート系ポリエステルポリオールである。耐加水分解性からは、PTMGとPPGが更に好ましい。
本発明において密封材用途に最も好適に用いられるポリオールは、水酸基価が20〜350(mgKOH/g)であり、好ましくは100〜350(mgK0H/g)である。水酸基価が20(mgKOH/g)未満のものは、得られるポリウレタンエラストマーが柔らかすぎて圧縮永久歪が大きくなりすぎ、350(mgKOH/g)を超えるものでは硬すぎて、密封材としては不適当である。ポリオールの平均官能基数は、ポリウレタンエラストマーには適当量の架橋構造が導入されることが好ましいので、イソシアネート成分の平均官能基数に対応して2〜3である。
【0019】
また、イソシアネート成分とポリオール成分とを反応させてポリウレタンエラストマーを合成するに際し、イソシアネート成分は、ポリオ一ル成分及びその他の成分が有している活性水素原子の全量に対し、該活性水素原子1モル当たりのイソシアネート基のモル数が0.9〜1.5モルとなる割合で使用するのが好ましく、1.00〜1.10モル程度となる割合で使用することが更に好ましい。
本発明におけるポリウレタンエラストマーの合成方法としては、公知のウレタン化反応技術のいずれも使用でき、プレポリマ一法、ワンショット法のいずれであってもよい。
また、本発明の密封材に用いるポリウレタンエラストマーは、該ポリウレタンエラストマー1g当たり10mlの水で125℃で30分間レトルト処理を行ったときの抽出液の過マンガン酸カリウム消費量が15ppm以下、特に10ppm以下のものであることが好ましい。
【0020】
本発明においてライナー材を構成するポリウレタンエラストマー組成物は、上述したポリオール成分及びポリイソシアネート成分から成る二成分系ポリウレタンエラストマーに、少なくとも脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンが配合されている。
本発明において、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンは、前述したようにポリオール成分中に予め配合しておくことが望ましく、脂肪酸アミドは、ポリオール100重量部に対して10乃至20重量部、特に10乃至17重量部の量で含有されていることが好ましい。上記範囲よりも脂肪酸アミドの含有量が少ない場合には、開栓性の点で劣るようになり、一方上記範囲よりも脂肪酸アミドの含有量が多くても、開栓性の更なる改善は見込めず、むしろ脂肪酸アミドが内容物に溶出するおそれがあるので好ましくない。
また粘土鉱物フィラーは、ポリオール100重量部に対して15乃至50重量部、特に18乃至42重量部の量で含有されていることが好ましい。上記範囲よりも粘土鉱物フィラーの含有量が少ない場合には、脂肪酸アミド及びシリコーンを十分担持することができず、開栓性を向上し得るに十分な複合体を形成することが困難になるおそれがあるとともに、前述した加熱条件でポリウレタンエラストマー組成物を焼付け硬化する際、形状維持が出来ず成形性が劣るようになる。一方上記範囲よりも粘土鉱物フィラーの含有量が多い場合には、作業性及び成形性が劣るようになる。
更にシリコーンは、ポリオール100重量部に対して2乃至7重量部、特に3乃至5重量部の量で含有されていることが好ましい。上記範囲よりもシリコーンの含有量が少ない場合には、上述した粒径の複合体が分散された分散構造を形成することができず、十分開栓性を改善することができないおそれがあり、一方上記範囲よりもシリコーンの含有量が多くても、開栓性の更なる改善は見込めず、経済性に劣るようになる。
【0021】
脂肪酸アミドとしては、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等を挙げることができ、特にエルカ酸アミドを好適に用いることができる。
粘土鉱物フィラーとしては、タルク、焼成クレー、マイカ、ベントナイト、カオリン、モンモリロナイト等を挙げることができ、特にタルクを好適に用いることができる。
また本発明に用いるポリウレタンエラストマー組成物には、従来公知の反応触媒、酸化防止剤等の添加剤を、従来公知の処方に従って配合することができる。
【0022】
(金属製キャップ)
本発明の用いる金属製キャップとしては、種々の形態をとることができるが、本発明においては開栓トルクが改善されていることから、旋回により開栓するタイプのキャップ、特に容器口部に螺子固定されるキャップであることが好ましい。
金属製キャップシェルを構成する金属素材としては、従来金属製キャップに使用されている各種アルミ材や各種鋼板等を使用することができる。アルミ材としては、例えば純アルミやアルミと他の合金用金属、特にマグネシウム、マンガン等の少量を含むアルミ合金を挙げることができ、また各種鋼板類としては、クロメート表面処理鋼板、特に電解クロム酸処理鋼板を挙げることができる。
また金属素材には、ポリエステル系塗料から成る保護塗膜或いはポリエステル樹脂等から成る保護被覆が形成されていることが望ましい。
【実施例】
【0023】
(実施例1〜4及び比較例1〜6)
ポリオール成分として、保土ヶ谷化学工業製ポリテトラメチレンエーテルグリコールPTG−1000SN、クラレ製アジぺート系ポリエステルグリコールP−1010、及びクラレ製アジペート系ポリエステルトリオールを予備混合した数平均分子量890の液体状態のものを用い、イソシアネート成分として、HDI(ヘキサメチレンジイソシアネート)と1,3−BG(ブチレングリコール)とを反応させて得た数平均分子量430、平均官能基数=2の粘稠液状プレポリマーを用いた。
上記ポリオール成分に、表1に示す組成で、脂肪酸アミド(日本油脂製エルカ酸アミドALFLOW−P10とオレイン酸アミドALFLOW−E10の1:1ブレンド)、粘土鉱物フィラー(実施例2のみマイカを用い、他はタルクを用いた)、シリコーン(信越化学製KF−96−1000、KF−96−300の1:1ブレンド)を配合すると共に、反応触媒ジオクチル錫マレエートポリマー及び酸化防止剤チバスペシャリティケミカルズ製IRGANOX1010を配合し、表1に示す温度で攪拌スピード30m/minの周速で60分間攪拌した。この際の脂肪酸アミドの状態は視認し易くするため、下記の方法で調べた。次いでこのポリオール成分を上記イソシアネート成分と、表1に示す温度で混合してポリウレタンエラストマー組成物を調製し、ポリウレタンエラストマー組成物中の複合体の有無を下記の方法で調べた。このポリウレタンエラストマー組成物を63φのアルミニウム製ツイストオフキャップの内面に施し、215℃の温度で50秒加熱してライナー材を形成した。ライナー材最表面の複合体の分布を下記の方法で調べた。また得られた金属製キャップの開栓トルクを測定した。結果を表1にあわせて示す。
【0024】
(測定方法)
・脂肪酸アミドの状態
予め脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンをポリオール成分中に配合し、攪拌混合したポリオール成分を、表1に示す温度で加温して30分後に、目視観察する。脂肪酸アミドが溶解している場合、透明であることから状態を判定する。
・複合体の有無及び粒径の確認
スライドガラスに0.001gのポリウレタンエラストマー組成物を乗せ、その上からカバーガラスを乗せる。ここに170gの重りを5秒間掛け、薄く伸ばしたのち、光学顕微鏡を用いて、倍率100倍以下で組成物中の複合物の有無の確認及び、粒径測定を行う。
・ライナー表面の複合体の分布
キャップのライナー部を切り取り、溶剤(テトラヒドロフラン)で表面を洗浄後、電子顕微鏡を用い、倍率10倍でライナー表面の観察を行う。複合体中の粘土鉱物フィラーを観察することにより、複合体自体の分布確認の代用とした。
・成形性、作業性
ポリウレタンエラストマー組成物の焼付け後のライナーの形状、表面平滑度のライナー成形性と吐出時の作業性を確認した。
・開栓トルク
作製して得られた各金属キャップを各5本ずつガラス壜に巻締めた。(充填条件:90℃の熱水360gを充填、熱殺菌処理条件:95℃の熱水シャワーをキャップに10分間かけた)その後、開栓トルク上昇現象の促進処理として、50℃環境下9時間+23℃環境下15時間を2回繰り返した後、各サンプルの開栓トルクを測定した。
【0025】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の金属製キャップの製造方法においては、従来のポリウレタンエラストマー組成物と同様の組成からなるライナー材において、脂肪酸アミドをライナー材表面の全体に均一に被覆することが可能となり、優れた開栓性を有する金属製キャップを得ることができるため、特に開栓性が問題となる旋回により開栓するタイプのキャップ、特に容器口部に螺子固定されるキャップに好適に利用することができる。
また用いる原材料がいずれも安全性、衛生性に優れていることから、飲料、食品等を内容物とするキャップの製造に利用することができる。
更に、本発明の金属製キャップの製造方法においては、従来のライニング装置を用いて、特に経時保管後の開栓性に優れた金属製キャップを製造することができるため、生産性、経済性にも優れている。
【符号の説明】
【0027】
1 ポリオール成分用タンク、2 ポリオール成分用定量供給部、3 イソシアネート成分用タンク、4 イソシアネート成分用定量供給部、5 混合部、6 定量供給ポンプ、7 ライニング用ノズル、8 回転載置台、9 金属製キャップシェル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製キャップシェルの内面にポリウレタンエラストマー組成物を施し、これを加熱硬化させてライナー材を形成する金属製キャップの製造方法において、
前記ポリウレタンエラストマー組成物が、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンを含有する、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分から成る二成分系ポリウレタンエラストマーであり、前記金属製キャップに施されるポリウレタンエラストマー組成物中に、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー及びシリコーンから成る複合体が分散していることを特徴とする金属製キャップの製造方法。
【請求項2】
前記複合体を含有するポリウレタンエラストマー組成物が、35乃至55℃の範囲に温度制御されている請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
前記複合体が、少なくとも、脂肪酸アミド、粘土鉱物フィラー、シリコーンを含有するポリオール成分を、35乃至48℃の温度で攪拌混合することにより、ポリオール成分中に予め生成分散されている請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
前記複合体の平均粒径が、20乃至150μmの範囲にある請求項1乃至3の何れかに記載の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−111179(P2011−111179A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267889(P2009−267889)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000228442)日本クラウンコルク株式会社 (382)
【出願人】(000239080)福岡パッキング株式会社 (12)
【出願人】(591116036)アヲハタ株式会社 (35)
【Fターム(参考)】