説明

金属製容器の製造方法

【課題】 小ロットの製造に好適な金属製容器の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明に係る金属製容器の製造方法は、金属板121に開口部122を設けるとともに、開口部122の周囲において内側に向かって突出する加締め片123を形成する工程と、透明材料により形成されたシート材を成型して、裏面が開放された箱状の第一シート部材140及び第二シート部材150を形成する工程と、第一シート部材140及び第二シート部材150を重ね合せた状態で開口部122に挿入し、第一シート部材140の側板142及び第二シート部材150の側板152を加締め片123により加締めることで、第一シート部材140と第二シート部材150との間にシートSを保持することが可能な状態で、第一シート部材140及び第二シート部材150を金属板121に取り付ける工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品等の包装に用いられる金属製容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、食品等を包装する容器として、ブリキ、ステンレス、アルミニウム等により形成された金属製容器が用いられている。
そして、この金属製容器の外面には、内容物の名称等の種々の情報が表示されるとともに、意匠性の向上のために模様等の装飾が表示される。
ここで、金属製容器の外面に種々の情報や装飾を表示する方法として、樹脂を含有する塗料を金属製容器の外面に焼き付ける方法が知られている(特許文献1、2参照)。
この方法では、金属製容器の外面上に塗料膜を形成することによって、金属製容器の外面に種々の情報や装飾を表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−53027号公報
【特許文献2】特開2008−50486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法では、塗料を金属製容器の外面に焼き付けるための装置が必要となり、金属製容器を製造するための設備の規模が大きくなるため、小ロットの金属製容器の製造には不向きとなっている。
本発明の課題は、小ロットの製造に好適な金属製容器の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を達成するために、第一の発明に係る金属製容器の製造方法は、金属板により形成された金属製容器の製造方法であって、前記金属板に開口部を設けるとともに、該開口部の周囲において内側に向かって突出する加締め片を形成する工程と、透明材料により形成されたシート材を成型して、裏面が開放された箱状の第一シート部材及び第二シート部材を形成する工程と、前記第一シート部材及び第二シート部材を重ね合せた状態で前記開口部に挿入し、前記第一シート部材の側板及び前記第二シート部材の側板を前記加締め片により加締めることで、前記第一シート部材と前記第二シート部材との間にシートを保持することが可能な状態で、該第一シート部材及び該第二シート部材を前記金属板に取り付ける工程と、を有することを特徴とする。
【0006】
第一の発明に係る金属製容器の製造方法では、第一シート部材及び第二シート部材が、両シート部材の間にシートを保持することが可能な状態で、金属板に取り付けられる。これにより、金属製容器において、シートの表面を視認可能な状態で該シートを保持することができる。したがって、予め、情報や装飾をシートの表面に表示しておくことによって、この情報や装飾を金属製容器において表示することができる。よって、金属製容器の製造において、金属製容器に塗料膜を形成する必要がなくなり、塗料を金属製容器に焼き付けるための装置が不要となる。
したがって、第一の発明に係る金属製容器の製造方法によれば、小ロットの製造に好適となる。
【0007】
また、第二の発明に係る金属製容器の製造方法は、第一の発明に係る金属製容器の製造方法において、前記第一シート部材及び前記第二シート部材は、開口を有するポケット状に形成されることを特徴とする。
第二の発明に係る金属製容器の製造方法では、第一シート部材及び第二シート部材が開口を有するポケット状に形成されていることによって、両シート部材の間へのシートの挿入を容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小ロットの製造に好適な金属製容器の製造方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る金属製容器の製造方法により製造される金属製容器の平面図である。
【図2】図1に示す金属製容器の側面図である。
【図3】図1に示すA−A線に沿う断面の拡大図である。
【図4】開口部が形成されていない状態の蓋部材の平面図である。
【図5】表面側シート部材の裏面図である。
【図6】裏面側シート部材の裏面図である。
【図7】保持手段にシートを挿入している途中の状態の蓋部材の裏面図である。
【図8】保持手段へのシートの挿入が完了した状態の蓋部材の裏面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、本発明に係る金属製容器の製造方法により製造される金属製容器100について説明する。
図1は、本発明に係る金属製容器の製造方法により製造される金属製容器の平面図である。図2は、図1に示す金属製容器の側面図である。図3は、図1に示すA−A線に沿う断面の拡大図である。図4は、開口部が形成されていない状態の蓋部材の平面図である。図5は、表面側シート部材の裏面図である。図6は、裏面側シート部材の裏面図である。
【0011】
金属製容器100は、ブリキ、ステンレス、アルミニウム等の金属板により形成されている。図1乃至図3に示すように、金属製容器100は、食品等を内容物として収容することが可能な収容部材110と、収容部材110の蓋となる蓋部材120と、を備えている。
収容部材110は、上面が開放された箱状に形成されている。蓋部材120は、下面が開放された箱状に形成されている。蓋部材120は、収容部材110の上面を塞ぐように、収容部材110に対して開閉自在となるように形成されている。なお、蓋部材120は、蝶番を介して、収容部材110に対して開閉自在となるように取り付けても構わない。
【0012】
図1及び図3に示すように、蓋部材120の天板(金属板)121には、略方形の開口部122が設けられている。また、天板121における開口部122の周囲には、内側(下方)に向かって突出する加締め片123が設けられている。本実施形態では、加締め片123は、開口部122の4辺のそれぞれに沿って設けられている。そして、各加締め片123の下端部には、後述する保持手段130を取り付けるための取付け部123aが形成されている。
図3に示すように、取付け部123aは、加締め片123の下端部を内側(開口部122の中心側)に向かって折り曲げることによって形成されている。各取付け部123aは、後述する表面側シート部材140の各側板142及び裏面側シート部材150の各側板152を内側に巻き込む(加締める)ことによって、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150を天板121に固定する。
【0013】
図1及び図3に示すように、天板121の開口部122には、後述するシートSを保持することが可能な保持手段130が配設されている。本実施形態では、保持手段130は、2枚の透明なシート部材から構成されている。
具体的には、図3に示すように、保持手段130は、表面側シート部材140(第一シート部材)と、裏面側シート部材150(第二シート部材)と、を有している。表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、それぞれ、樹脂等の透明材料により形成されている。本実施形態では、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、それぞれ、ポリプロピレン(PP)又はポリエチレンテレフタレート(PET)により形成されたシート材を箱状に成型することによって形成されている。なお、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、他の材料により形成しても構わない。
【0014】
図3及び図5に示すように、表面側シート部材140は、天板141及び4つの側板142を有し、下面が開放された箱状に形成されている。天板141の幅方向(図1及び図5に示す左右方向)の寸法は、開口部122の幅方向の寸法と略一致している。また、天板141の長手方向(図1及び図5に示す上下方向)の寸法は、開口部122の長手方向の寸法と略一致している。各側板142の下端部には、内側に向かって突出する取付け片143が設けられている。
図3及び図6に示すように、裏面側シート部材150は、天板151及び3つの側板152を有し、下面及び長手方向(図1及び図6に示す上下方向)の一方側(図1に示す上側)の側面が開放された箱状に形成されている。天板151の幅方向(図1及び図6に示す左右方向)の寸法は、天板141の幅方向の寸法と略一致している。また、天板151の長手方向の寸法は、天板141の長手方向の寸法より短くなっている。各側板152の下端部には、内側に向かって突出する取付け片153が設けられている。また、天板151には、長手方向に沿って延びる切欠き部154が設けられている。
【0015】
表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、重ね合された状態で開口部122に配設される。具体的には、図3に示すように、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、裏面側シート部材150が表面側シート部材140の内側に配置されるように、重ね合される。これによって、裏面側シート部材150の天板151は、表面側シート部材140の天板141の裏面側に重なる。また、裏面側シート部材150の幅方向の各側板152は、表面側シート部材140の幅方向の各側板142の内側に重なる。さらに、裏面側シート部材150の長手方向の他方側(図1に示す下側)の側板152は、表面側シート部材140の長手方向の他方側の側板142の内側に重なる。
そして、重ね合された表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、開口部122の内側に挿入され、重なった状態の表面側シート部材140の各側板142(各取付け片143)及び裏面側シート部材150の各側板152(各取付け片153)が各加締め片123の取付け部123aの内側に巻き込まれることによって、天板121に取り付けられる。
【0016】
なお、本実施形態では、表面側シート部材140に取付け片143を設けるとともに、裏面側シート部材150に取付け片153を設けている。しかしながら、取付け片143及び取付け片153を設けない構成としても構わない。この場合にも、表面側シート部材140の各側板142及び裏面側シート部材150の各側板152を各加締め片123によって加締めることで、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150を天板121に取り付けることができる。
保持手段130が取り付けられた天板121では、表面側シート部材140が開口部122の全域を塞ぎ、天板141の表面と天板121の表面とが一の面を形成する。また、表面側シート部材140は、その全周が天板121に固定されている。一方、裏面側シート部材150は、その幅方向の両辺及び長手方向の他方側の辺が天板121に固定されている。これにより、保持手段130は、裏面側シート部材150の長手方向の一方側の辺と表面側シート部材140の裏面との間を開口131として、ポケット状に形成されている。そして、保持手段130では、開口131を介して、表面側シート部材140と裏面側シート部材150との間に、シートSを挿入することが可能となっている。
【0017】
次に、金属製容器100の製造方法について説明する。
金属製容器100を製造するには、まず、金属板を成型して、収容部材110及び蓋部材120を形成する。
次に、蓋部材120に開口部122を設けるとともに、開口部122の周囲において加締め片123を形成する。
具体的には、まず、図4に示すように、天板121において略方形の貫通孔122aを形成する。貫通孔122aは、天板121における開口部122となる領域(図4に示す破線で囲まれた領域)の内側に形成される。
また、天板121において、貫通孔122aの各角部から開口部122の各角部となる位置まで切れ目122bを形成する。これによって、天板121において、4つの折り曲げ片122cが形成される。そして、各折り曲げ片122cを、開口部122の各辺となる位置(図4に示す破線)に沿って、下方に向かって折り曲げる。これによって、開口部122が形成されるとともに、各折り曲げ片122cが各加締め片123となる。
【0018】
また、透明材料により形成されたシート材を成型して、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150を形成する。
具体的には、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、それぞれ、シート材を箱状にプレス成型することによって形成される。ここで、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、2枚のシート材を重ね合せた状態で成型することによって、同時に形成しても構わない。
また、裏面側シート部材150に、切欠き部154を形成する。裏面側シート部材150における切欠き部154の形成は、裏面側シート部材150の成型前であっても、成型後であっても、どちらでも構わない。
【0019】
次に、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150を、蓋部材120の天板121に取り付ける。
具体的には、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150を、重ね合せた状態で天板121の開口部122内に挿入する。この際、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、裏面側シート部材150が表面側シート部材140の内側に配置されるように重ね合される。
【0020】
そして、表面側シート部材140の各側板142(各取付け片143)及び裏面側シート部材150の各側板152(各取付け片153)を、各加締め片123によって加締める。これによって、表面側シート部材140の各側板142及び裏面側シート部材150の各側板152が各取付け部123aの内側に巻き込まれた状態で、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150が天板121に取り付けられる。
この際、裏面側シート部材150の長手方向の一方側の辺は、天板121に固定されていない状態となる。これにより、保持手段130は、裏面側シート部材150の長手方向の一方側の辺と表面側シート部材140の裏面との間を開口131として、ポケット状に形成されている。したがって、保持手段130では、開口131から、シートSを、表面側シート部材140と裏面側シート部材150との間に挿入することが可能となる。
【0021】
次に、金属製容器100の作用について説明する。
図7は、保持手段にシートを挿入している途中の状態の蓋部材の裏面図である。図8は、保持手段へのシートの挿入が完了した状態の蓋部材の裏面図である。
金属製容器100では、保持手段130によって、シートSの表面を視認可能な状態で、シートSを保持することが可能となっている。
ここで、シートSは、樹脂、紙等によって形成される。そして、シートSの表面及び裏面のうち少なくとも一方には、予め、情報や装飾が印刷されている。例えば、シートSには、金属製容器100の内容物に関する情報、メッセージ、写真、キャラクタ、模様等が印刷される。
【0022】
シートSは、蓋部材120の裏面側から保持手段130に挿入される。具体的には、図7に示すように、シートSは、開口131から、表面側シート部材140と裏面側シート部材150との間に挿入される。本実施形態では、シートSの挿入方向は、長手方向となっている。
図8に示すように、保持手段130へのシートSの挿入が完了すると、シートSは、表面側シート部材140の裏面と裏面側シート部材150の表面との間に保持された状態となる。ここで、表面側シート部材140及び裏面側シート部材150は、それぞれ、透明材料により形成されている。これによって、金属製容器100では、シートSの表面に印刷されている情報や装飾を、蓋部材120の表面側から視認することができる。また、シートSの表面に印刷されている情報や装飾を、蓋部材120の裏面側から視認することができる。
一方、保持手段130に挿入されているシートSを取り出す際には、裏面側シート部材150に設けられた切欠き部154を介して、指でシートSをスライドさせる。これにより、開口131からシートSを取り出すことができる。
【0023】
以上のように、金属製容器100では、保持手段130によって、シートSの表面を視認可能な状態で、シートSを保持することができる。これにより、予め、情報や装飾をシートSの表面に表示しておくことによって、この情報や装飾を金属製容器100において表示することができる。
したがって、本発明に係る金属製容器の製造方法によれば、金属製容器100の製造において、金属製容器100に塗料膜を形成する必要がなくなり、塗料を金属製容器100に焼き付けるための装置が不要となる。
よって、本発明に係る金属製容器の製造方法によれば、より小さい規模の設備で金属製容器を製造することができ、小ロットの製造に好適となる。
【0024】
特に、金属製容器100では、シートSが2枚のシート部材140,150の間に保持され、表面側シート部材140を介して、シートSの表面を視認可能となるとともに、裏面側シート部材150を介して、シートSの裏面を視認可能となる。
したがって、本発明に係る金属製容器の製造方法によれば、金属製容器100において、意匠性を損なうことなく、シートSを保持することが可能となる。
さらに、本発明に係る金属製容器の製造方法によれば、金属製容器100において、裏面側シート部材150に切欠き部154が設けられていることによって、2枚のシート部材140,150の間に保持されているシートSを容易に取り出すことが可能となる。
【0025】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態では、種々の変更を行うことが可能である。
例えば、上記実施形態においては、シートSが、蓋部材120の裏面側から保持手段130に挿入される構成となっている。しかしながら、シートSが、蓋部材120の表面側から保持手段130に挿入される構成としても構わない。この場合には、表面側シート部材140を、下面及び長手方向の一方側の側面が開放された箱状に形成する。また、表面側シート部材140の天板141の長手方向の寸法を、裏面側シート部材151の天板151の長手方向の寸法より短く形成する。そして、保持手段130が取り付けられた天板121では、裏面側シート部材150が開口部122の全域を塞ぎ、天板151の表面と天板121の表面とが一の面を形成する。また、裏面側シート部材150は、その全周が天板121に固定される。一方、表面側シート部材140は、その幅方向の両辺及び長手方向の他方側の辺が天板121に固定される。これにより、保持手段130は、表面側シート部材140の長手方向の一方側の辺と裏面側シート部材150の裏面との間を開口131として、ポケット状に形成される。よって、シートSを、蓋部材120の表面側から保持手段130に挿入することが可能となる。
【符号の説明】
【0026】
100 金属製容器
110 収容部材
120 蓋部材
121 天板
122 開口部
122a 貫通孔
122b 切れ目
122c 曲げ片
123 加締め片
123a 取付け部
130 保持手段
140 表面側シート部材
141 天板
142 側板
143 取付け片
150 裏面側シート部材
151 天板
152 側板
153 取付け片
154 切欠き部
S シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属板により形成された金属製容器の製造方法であって、
前記金属板に開口部を設けるとともに、該開口部の周囲において内側に向かって突出する加締め片を形成する工程と、
透明材料により形成されたシート材を成型して、裏面が開放された箱状の第一シート部材及び第二シート部材を形成する工程と、
前記第一シート部材及び第二シート部材を重ね合せた状態で前記開口部に挿入し、前記第一シート部材の側板及び前記第二シート部材の側板を前記加締め片により加締めることで、前記第一シート部材と前記第二シート部材との間にシートを保持することが可能な状態で、該第一シート部材及び該第二シート部材を前記金属板に取り付ける工程と、を有することを特徴とする金属製容器の製造方法。
【請求項2】
前記第一シート部材及び前記第二シート部材は、開口を有するポケット状に形成されることを特徴とする請求項1に記載の金属製容器の製造方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−250738(P2012−250738A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124545(P2011−124545)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(503078793)株式会社エス・アンド・エス (2)
【Fターム(参考)】