説明

金属製閉断面部材の製造方法

【課題】比較的簡単な方法によって精度良く金属製閉断面部材を製造することができる金属製閉断面部材の製造方法を提供する。
【解決手段】金属製の板状ワークから閉断面状に形成された閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造方法は、第1の成形型を用い、板状ワークW11を凸状にプレス成形する第1のプレス成形工程と、第1のプレス成形工程の後に、第2の成形型150を用い、プレス成形された板状ワークW11を第2の成形型のダイ155と第2の成形型の中子型151との間に配置した状態で、中子型をダイに対して相対的に移動してプレス成形することにより、第1のプレス成形工程において成形された板状ワークの凸状に成形される凸状頂面部W12の両側の凸状側面部W13、W14をそれぞれ板状ワークの内方側へ変位させて閉断面化する第2のプレス成形工程と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属製の板状素材(板状ワーク)から閉断面状に形成された閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、自動車等の車両において車体の基本構造の一部を構成するピラー部材、フロント及びリアのサイドフレーム、ダッシュパネルの前面下部に位置するダッシュクロスメンバ等の車体部材には、車体の強度及び剛性を確保し安全性を高める観点から高強度化及び高剛性化が求められ、しかも、燃費性能向上のために軽量化が求められている。
【0003】
これらの要請に応えるため、前記のような車体部材は、多くの場合、金属製の閉断面部材として構成されている。このような金属製の閉断面部材の製造方法としては、例えば鋼板などの金属製の板状ワークをプレス加工によりコ字形断面の両端部に外側へ張り出すフランジ部分が一体成形された断面ハット状に形成し、この断面ハット状に形成された2枚の板状ワークのフランジ部分を互いに重ね合わせて閉断面状にし、その後に、フランジ部分を溶接して閉断面部材を製造する方法が一般に知られている。
【0004】
また、例えば特許文献1には、閉断面部材としての三角形チューブを製造するものであるが、予め所定形状に切断した鋼板の両端部近傍を所定の曲率で曲げる第1曲げ工程と、第1曲げ工程で曲げた鋼板の中央部を所定の曲率で押し曲げる第2曲げ工程と、第2曲げ工程で成形した鋼板の前記中央部を長手方向に対して左右から加圧しつつ、前記両端部を上方から押さえ込んで拘束して突き合わせ、成形する拘束成形工程と、拘束成形工程の後に、除荷せずに前記両端部の突き合わせ部を溶接する溶接工程とを有する三角形チューブの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−51932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、自動車等の車両においては、燃費性能向上のためにより一層の軽量化が求められており、比較的大きな重量を占める車体部材についてもより一層の軽量化が求められている。このため、金属製の閉断面部材として構成される車体部材については、フランジ部分を設けることなく製造することが望まれている。
【0007】
前記特許文献1には、フランジ部分を設けることなく閉断面状に形成された三角形チューブの製造方法が記載されているものの、自動車等の車両に用いられる車体部材は複雑な形状を有し、その長手方向に断面形状が複雑に変化し得るので、前記特許文献1に記載される製造方法を適用する場合には、閉断面部材の成形断面と同一形状の切り欠き部を有する複数のプレートを作る必要があり、また、閉断面部材の成形断面と同一形状の切り欠き部を有する複数のプレートに、曲げられた鋼板の中央部を長手方向に対して左右から加圧しつつ両端部を上方から押さえ込んで拘束して成形する際に、ひずみや変形などの成形不良を引き起こす畏れがあるので、精度の高い閉断面部材を製造することはなかなか困難なものとなり得る。
【0008】
そこで、この発明は、前記技術的課題に鑑みてなされたものであり、金属製の閉断面部材を製造するに際し、比較的簡単な方法によって精度良く金属製閉断面部材を製造することができる金属製閉断面部材の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このため、本願の請求項1に係る金属製閉断面部材の製造方法は、金属製の板状ワークから閉断面状に形成された閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造方法であって、第1の成形型を用い、金属製の板状ワークを第1の成形型のブランクホルダとダイとにより挟持した状態で、第1の成形型のパンチを前記ダイの成形空間内に相対的に移動させることにより、前記板状ワークを前記ダイに対する前記パンチの移動方向に突出させて凸状にプレス成形する第1のプレス成形工程と、前記第1のプレス成形工程の後に、第2の成形型を用い、プレス成形された前記板状ワークを第2の成形型のダイと中子型との間に、前記中子型が前記板状ワークの凸状に突出する方向と反対側に位置するように配置した状態で、前記中子型を前記ダイに対して相対的に移動させ、前記板状ワークの凸状に成形された凸状頂面部を相対的に前記板状ワークの凸状に突出する方向にプレス成形することにより、前記第1のプレス成形工程において成形された前記板状ワークの凸状頂面部の両側の凸状側面部をそれぞれ前記板状ワークの内方側へ変位させて閉断面化する第2のプレス成形工程と、を備え、前記第1のプレス成形工程は、前記板状ワークを予め曲げ成形する予備曲げ成形工程であり、前記第2のプレス成形工程は、前記予備曲げ成形工程において曲げ成形された前記板状ワークを第2の成形型の中子型により第2の成形型のダイに設けられた凹部内に押し込み、前記板状ワークの少なくとも一方側の端部が前記中子型の押し込み方向と逆方向に延びるととともに前記凹部の内方側に向かって延びるように前記板状ワークを成形する押し込み成形工程と、前記押し込み成形工程において成形された前記板状ワーク内に前記中子型を保持した状態で、前記板状ワークの前記端部を第2の成形型のパンチにより押圧して曲げ成形し、前記パンチと前記中子型により前記板状ワークの端部どうしを接触させて閉断面状に成形する本曲げ成形工程と、を備え、前記予備曲げ成形工程では、前記板状ワークが第2の成形型のダイに設けられた凹部内に押し込まれた際に前記板状ワークの少なくとも一方の端部が前記中子型の押し込み方向と逆方向に延びるとともに前記凹部の内方側に向かって延びるように曲げ成形される、ことを特徴としたものである。
【0010】
また、本願の請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記押し込み成形工程では、前記本曲げ成形工程において第2の成形型のパンチを移動させる駆動手段によって第2の成形型の中子型が第2の成形型のダイに設けられた凹部内に移動されることを特徴としたものである。
【0011】
更に、本願の請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明において、前記押し込み成形工程では、第2の成形型のパンチと第2の成形型の中子型との間にライナー部材を介設した状態で前記中子型が前記凹部内に移動され、前記本曲げ成形工程では、第2の成形型のパンチと第2の成形型の中子型との間から前記ライナー部材が取り外され、前記押し込み成形工程において成形された前記板状ワーク内に前記中子型を保持した状態で、前記板状ワークの前記端部が第2の成形型のパンチにより曲げ成形されることを特徴としたものである。
【0012】
また更に、本願の請求項4に係る発明は、請求項1〜3の何れか一に係る発明において、前記本曲げ成形工程の後に、前記板状ワークの接触させられた端部どうしを溶接する溶接工程をさらに備えていることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本願の請求項1に係る金属製閉断面部材の製造方法によれば、金属製の板状ワークを第1の成形型のブランクホルダとダイとにより挟持した状態で、第1の成形型のパンチを前記ダイの成形空間内に相対的に移動させることにより、板状ワークを凸状にプレス成形する第1のプレス成形工程と、プレス成形された板状ワークを第2の成形型のダイと中子型との間に配置した状態で、前記中子型を前記ダイに対して相対的に移動させ、前記板状ワークの凸状頂面部をプレス成形することにより、板状ワークの凸状頂面部の両側の凸状側面部をそれぞれ前記板状ワークの内方側へ変位させて閉断面化する第2のプレス成形工程と、を備え、第1のプレス成形工程は、板状ワークを予め曲げ成形する予備曲げ成形工程であり、第2のプレス成形工程は、曲げ成形された板状ワークを第2の成形型の中子型により第2の成形型のダイに設けられた凹部内に押し込み、板状ワークの少なくとも一方側の端部が中子型の押し込み方向と逆方向に延びるととともに凹部の内方側に向かって延びるように板状ワークを成形する押し込み成形工程と、板状ワーク内に中子型を保持した状態で、板状ワークの端部を第2の成形型のパンチにより押圧して曲げ成形し、パンチと中子型により板状ワークの端部どうしを接触させて閉断面状に成形する本曲げ成形工程と、を備えていることにより、板状ワークにしわが発生することを防止し、成形型などの成形装置を複雑化させることなく、比較的簡単な方法によって精度良く金属製閉断面部材を製造することができる。
【0014】
また、本願の請求項2に係る発明によれば、押し込み成形工程では、本曲げ成形工程において第2の成形型のパンチを移動させる駆動手段によって第2の成形型の中子型が第2の成形型のダイに設けられた凹部内に移動されることにより、押し込み成形及び本曲げ成形において板状ワークを移動させる必要がなく、比較的簡単な方法によって押し込み成形を行うことができる。
【0015】
更に、本願の請求項3に係る発明によれば、押し込み成形工程では、パンチと中子型との間にライナー部材を介設した状態で中子型が凹部内に移動され、本曲げ成形工程では、パンチと中子型との間からライナー部材が取り外され、板状ワーク内に中子型を保持した状態で、板状ワークの端部がパンチにより曲げ成形されることにより、押し込み成形時にライナー部材によって板状ワークとパンチとの干渉を防止しつつ、前記効果を得ることが可能である。
【0016】
また更に、本願の請求項4に係る発明によれば、本曲げ成形工程の後に、板状ワークの接触させられた端部どうしを溶接する溶接工程をさらに備えていることにより、閉断面部材の接合強度を高めることができ、より強固な閉断面部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態に係る金属製閉断面部材を備えた自動車の車体構造を模式的に示す側面図である。
【図2】本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレームを示す斜視図である。
【図3】図2におけるY3a−Y3a線及びY3b−Y3b線に沿ったフロントサイドフレームの断面図である。
【図4】板状ワークをドロー成形するためのドロー成形装置のドロー成形型を示す斜視図である。
【図5】図4におけるY5−Y5線に沿ったドロー成形型の断面図である。
【図6】ドロー成形工程を説明するための説明図である。
【図7】ドロー成形された板状ワークを示す斜視図である。
【図8】ドロー成形された板状ワークを図7におけるY8−Y8線に沿って示す断面図である。
【図9】板状ワークを押し込み成形するための押し込み成形装置の押し込み成形型を示す断面図である。
【図10】前記押し込み成形型を示す斜視図である。
【図11】押し込み成形工程を説明するための説明図である。
【図12】本曲げ成形工程を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、「右」、「左」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いるが、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が限定されるものではない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る金属製閉断面部材を備えた自動車の車体構造を模式的に示す側面図である。本実施形態に係る金属製閉断面部材の製造方法は、図1に示すように、自動車のサイドボディ10に結合されるフロントサイドフレーム120を、金属製の板状ワークを閉断面状に形成して製造する場合に適用するものであるが、これに限定されるものでなく、サイドボティ10に結合されるリアサイドフレーム30などのその他の車体部材の製造に適用してもよい。さらには、車体部材に限らず、閉断面状に形成されるその他の金属製の閉断面部材の製造に適用することも可能である。
【0020】
図2は、本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレームを示す斜視図である。また、図3は、図2におけるY3a−Y3a線及びY3b−Y3b線に沿ったフロントサイドフレームの断面図であり、図3の(a)は、図2におけるY3a−Y3a線に沿ったフロントサイドフレームの断面図、図3の(b)は、図2におけるY3b−Y3b線に沿ったフロントサイドフレームの断面図を示している。
【0021】
図2に示すように、本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレーム120は、長手方向に延びるとともに閉断面状に形成される閉断面部材として構成されており、上面部121と、下面部122と、右側面部123と、左側面部124と、上面部121から右側面部123に向かって右斜め下方に傾斜する第1の傾斜側面部125と、上面部121から左側面部124に向かって左斜め下方に傾斜する第2の傾斜側面部126と、下面部122から右側面部123に向かって右斜め上方に傾斜する第3の傾斜側面部127と、下面部122から左側面部124に向かって左斜め上方に傾斜する第4の傾斜側面部128によって中空部129を有する断面八角形状に形成されている。
【0022】
また、フロントサイドフレーム120は、上面部121と下面部122とが長手方向に沿って平行に成形されるとともに断面長さが略同一に成形されているが、図2及び図3に示すように、断面形状は長手方向において変化して成形されている。フロントサイドフレーム120は、図3(a)に示す断面においては、第1の傾斜側面部125及び第3の傾斜側面部127が、図3(b)に示す断面における第1の傾斜側面部125及び第3の傾斜側面部127のそれぞれの断面長さよりも短い断面長さを有するように形成され、右側面部123が、図3(b)に示す断面における右側面部123の断面長さよりも長い断面長さを有するように形成され、第2の傾斜側面部126及び第4の傾斜側面部128が、図3(b)に示す断面における第2の傾斜側面部126及び第4の傾斜側面部128のそれぞれの断面長さよりも長い断面長さを有するように形成され、左側面部124が、図3(b)に示す断面における左側面部124の断面長さよりも短い断面長さを有するように形成されている。
【0023】
次に、このようにして構成される本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレーム120の製造方法について説明する。
本実施形態では、フロントサイドフレーム120を製造するに際し、先ず、例えば鋼板などの略平板状に形成された金属製の板状ワークを用意し、板状ワークを凸状にプレス成形し、具体的にはドロー(絞り)成形し、板状ワークを予め曲げ成形する予備曲げ成形工程によって、フロントサイドフレーム120の形状に応じた所定形状に成形する。
【0024】
図4は、板状ワークをドロー成形するためのドロー成形装置のドロー成形型を示す斜視図であり、図5は、図4におけるY5−Y5線に沿ったドロー成形型の断面図である。なお、図4では、ドロー成形型のダイについてはその下面のみを示し、ドロー成形型のブランクホルダについてはその上面のみを示し、図5では、板状ワークも示している。
【0025】
図4及び図5に示すように、板状ワークW11をドロー成形するためのドロー成形装置に用いるドロー成形型(第1の成形型)140は、板状ワークW11を保持するためのブランクホルダ141と、ブランクホルダ141の内周面部141aに外周面部142aが嵌め合わせられ、ブランクホルダ141に対して上下方向に移動可能に構成されるパンチ142と、ブランクホルダ141とパンチ142とに対向して配置され、上下方向に移動可能に構成されるダイ145とを備えている。
【0026】
ドロー成形型140のダイ145には、その下面145aに凹状に窪む凹部145bが設けられ、凹部145b内に板状ワークW11をドロー成形するための成形空間145cが形成されている。ドロー成形型140のダイ145に設けられる凹部145bは、フロントサイドフレーム120の形状に応じて所定形状に形成され、図5に示すように、平面状に形成される底面部145dと、底面部145dから右斜め下方に傾斜する第1の傾斜壁部145eと、第1の傾斜壁部145eから垂直方向下方に延びる第1の右縦壁部145fと、第1の右縦壁部145fから水平方向右側に延びる右水平部145gと、右水平部145gから略垂直方向下方に延びる第2の右縦壁部145hと、底面部145dから左斜め下方に傾斜する第2の傾斜壁部145iと、第2の傾斜壁部145iから垂直方向下方に延びる第1の左縦壁部145jと、第1の左縦壁部145jから水平方向左側に延びる左水平部145kと、左水平部145kから略垂直方向下方に延びる第2の左縦壁部145lとを備えている。
【0027】
一方、ドロー成形型140のパンチ142は、ドロー成形型140のダイ145との間で板状ワークW11を成形するために、フロントサイドフレーム120の形状に応じて所定形状に形成され、図5に示すように、パンチ142の頭部は、平面状に形成される上面部142dと、上面部142dから右斜め下方に傾斜する第1の傾斜壁部142eと、第1の傾斜壁部142eから垂直方向下方に延びる右縦壁部142fと、右縦壁部142fから水平方向右側に延びる右水平部142gと、上面部142dから左斜め下方に傾斜する第2の傾斜壁部142iと、第2の傾斜壁部142iから垂直方向下方に延びる左縦壁部142jと、左縦壁部142jから水平方向左側に延びる左水平部142kとを備えている。
【0028】
このようにして構成されるドロー成形型140を備えたドロー成形装置では、ブランクホルダ141とダイ145とにより板状ワークW11を挟持した状態で、パンチ142をダイ145の成形空間145c内に移動させて板状ワークW11をドロー成形することにより、フロントサイドフレーム120の形状に応じて所定形状に板状ワークW11が成形されるようになっている。
【0029】
ドロー成形型140を用いて板状ワークW11をドロー成形する際には、図5に示すように、ブランクホルダ141とダイ145とが離間して配置され、パンチ142の上面部142dがブランクホルダ141の上面141bよりも下方に配置された状態で、板状ワークW11がブランクホルダ141の上面141bに保持される。そして、ドロー成形型140のダイ145が下方へ移動され、ブランクホルダ141とダイ145とにより板状ワークW11の短手方向における両端部が挟持された後に、パンチ142が上方へ移動され、パンチ142がダイ145の成形空間145c内に移動して板状ワークW11がドロー成形される。
【0030】
図6は、ドロー成形工程を説明するための説明図であり、図6の(a)は、ブランクホルダとダイとにより板状ワークが挟持された後に、パンチが上方へ移動されて板状ワークがドロー成形されている状態を示し、図6の(b)は、パンチがさらに上方へ移動されて板状ワークがさらにドロー成形された状態を示している。
【0031】
図6(a)に示すように、板状ワークW11がブランクホルダ141とダイ145により挟持された状態で、パンチ142がダイ145の成形空間145c内に移動されることにより、パンチ142の上面部142dによって板状ワークW11が断面台形状にドロー成形される。さらにパンチ142が上方へ移動されると、図6(b)に示すように、板状ワークW11がさらにドロー成形され、パンチ142とダイ145とにより板状ワークW11が所定形状に成形される。
【0032】
図7は、ドロー成形された板状ワークを示す斜視図であり、図8は、ドロー成形された板状ワークを図7におけるY8−Y8線に沿って示す断面図である。図7及び図8に示すように、ドロー成形された板状ワークW11は、ブランクホルダ141とダイ145とにより挟持された板状ワークW11の短手方向の両端部を除く短手方向の中央部分がダイ145に対するパンチ142の移動方向に変形させられて凸状にプレス成形され、ダイ145に設けられる凹部145bの底面部145dとパンチ142の上面部142dとにより成形される凸状頂面部W12と、凸状頂面部W12の両側に成形される凸状側面部W13、W14とを有している。
【0033】
凸状側面部W13は、図8に示すように、ダイ145に設けられる凹部145bの第1の傾斜壁部145e、第1の右縦壁部145f、右水平部145g及び第2の右縦壁部145hとパンチ142の第1の傾斜壁部142e、右縦壁部142f、右水平部142g及び外周面部142aとにより凸状頂面部W12の右側に成形され、凹部145bの第1の傾斜壁部145eとパンチ142の第1の傾斜壁部142eとにより成形され凸状頂面部W12から右斜め下方に傾斜する第1の右凸状側面部W13aと、凹部145bの第1の右縦壁部145fとパンチ142の右縦壁部142fとにより成形され第1の右凸状側面部W13aから垂直方向下方に延びる第2の右凸状側面部W13bと、凹部145bの右水平部145gとパンチ142の右水平部142gとにより成形され第2の右凸状側面部W13bから水平方向右側に延びる第3の右凸状側面部W13cと、凹部145bの第2の右縦壁部145hとパンチ142の外周面部142aとにより成形され第3の右凸状側面部W13cから垂直方向下方に延びる第4の右凸状側面部W13dとを有している。
【0034】
一方、凸状側面部W14は、図8に示すように、ダイ145に設けられる凹部145bの第2の傾斜壁部145i、第1の左縦壁部145j、左水平部145k及び第2の左縦壁部145lとパンチ142の第2の傾斜壁部142i、左縦壁部142j、左水平部142k及び外周面部142aとにより凸状頂面部W12の左側に成形され、凹部145bの第2の傾斜壁部145iとパンチ142の第2の傾斜壁部142iとにより成形され凸状頂面部W12から左斜め下方に傾斜する第1の左凸状側面部W14aと、凹部145bの第1の左縦壁部145jとパンチ142の左縦壁部142jとにより成形され第1の左凸状側面部W14aから垂直方向下方に延びる第2の左凸状側面部W14bと、凹部145bの左水平部145kとパンチ142の左水平部142kとにより成形され第2の左凸状側面部W14bから水平方向左側に延びる第3の左凸状側面部W14cと、凹部145bの第2の左縦壁部145lとパンチ142の外周面部142aとにより成形され第3の左凸状側面部W14cから垂直方向下方に延びる第4の左凸状側面部W14dとを有している。
【0035】
なお、凸状頂面部W12は、フロントサイドフレーム120の下面部122、第3の傾斜側面部127及び第4の傾斜側面部128の形状に応じて成形され、凸状側面部W13の第1の右凸状側面部W13aがフロントサイドフレーム120の右側面部124の形状に応じて成形され、凸状側面部W13の第2の右凸状側面部W13bがフロントサイドフレーム120の第2の傾斜側面部126及び上面部121の形状に応じて成形され、凸状側面部W14の第1の左凸状側面部W14aがフロントサイドフレーム120の左側面部123の形状に応じて成形され、凸状側面部W14の第2の左凸状側面部W14bがフロントサイドフレーム120の第1の傾斜側面部125及び上面部121の形状に応じて成形されている。
【0036】
このように、ドロー成形工程において板状ワークW11をドロー成形する際には、板状ワークW11の短手方向における両端部をドロー成形型140のブランクホルダ141とダイ145とにより挟持した状態で、ドロー成形型140のパンチ142をドロー成形型140のダイ145の成形空間145c内に移動させ、板状ワークW11をドロー成形することにより、板状ワークW11にしわが発生することを防止することができる。
【0037】
ドロー成形型140を備えたドロー成形装置によって板状ワークW11がドロー成形された後、ドロー成形された板状ワークW11は、図示しないブランキング手段によって、図8に示すブランキングラインL100の下側に位置する部分がブランキングされ、ブランクホルダ141とダイ145とにより挟持される板状ワーク材W11の短手方向における両端部W15、第3の右凸状側面部W13c、第4の右凸状側面部W13d、第3の左凸状側面部W14c及び第4の左凸状側面部W14dが切り取られる。
【0038】
次に、ドロー成形された板状ワークW11は、板状ワークW11を押し込み成形する押し込み成形工程によって、板状ワークW11の凸状に成形された凸状頂面部W12が板状ワークW1の凸状に突出する方向にプレス成形され、フロントサイドフレーム120の形状に応じた所定形状に成形される。図9は、板状ワークを押し込み成形するための押し込み成形装置の押し込み成形型を示す断面図であり、図10は、前記押し込み成形型を示す斜視図である。なお、図9及び図10では、板状ワークも示している。
【0039】
図9及び図10に示すように、板状ワークW11を押し込み成形するための押し込み成形装置に用いる押し込み成形型(第2の成形型)150は、中子型151と、中子型151を着脱可能に支持するライナー部材152と、ライナー部材152を着脱可能に支持するとともに、上下方向に移動可能に構成されるパンチ153と、中子型151に対向して配置され、板状ワークW11が中子型151により押し込まれるダイ155とを備えている。
【0040】
押し込み成形型150の中子型151は、図9に示すように、フロントサイドフレーム120の形状に応じて形成され、フロントサイドフレーム120の下面部122、上面部121、右側面部123、左側面部124、第1の傾斜側面部125、第2の傾斜側面部126、第3の傾斜側面部127及び第4の傾斜側面部128の形状に応じてそれぞれ上面部151a、下面部151b、左側面部151c、右側面部151d、第1の傾斜側面部151e、第2の傾斜側面部151f、第3の傾斜側面部151g、第4の傾斜側面部151hが形成され、中子型151の上面部151aに板状ワークW11の凸状頂面部W12が保持される。
【0041】
押し込み成形型150の中子型151を支持するライナー部材152は、中子型151の下方に配置され、中子型151の下面部151bの断面長さと略同一の断面長さを有し、断面矩形状に形成されている。また、ライナー部材152は、中子型151と連結するための図示しない中子型用連結ピンを備え、該中子型用連結ピンが中子型151に設けられた連結穴(不図示)に挿入されることにより中子型151と連結され、中子型151を着脱可能に支持することができるようになっている。更に、ライナー部材152は、パンチ153と連結するための図示しないパンチ用連結ピンを備えている。
【0042】
ライナー部材152を支持するパンチ153は、その頭部に突出部153aが設けられている。突出部153aは、フロントサイトフレーム120の形状に応じて成形される上面部153bと外周部153cとを有し、上面部153bは、フロントサイドフレーム120の上面部121の形状に応じて形成され水平方向に延びる水平部153dと、フロントサイドフレーム120の第2の傾斜側面部126の形状に応じて形成され水平部153dから右斜め上方に傾斜する第1の傾斜壁部153eと、フロントサイドフレーム120の第1の傾斜側面部125の形成に応じて形成され水平部153dから左斜め上方に傾斜する第2の傾斜壁部153fとを有している。
【0043】
また、パンチ153は、前記パンチ用連結ピンが水平部153dに設けられた連結穴(不図示)に挿入されることにより、ライナー部材152と連結され、ライナー部材152を着脱可能に支持することができるようになっている。これにより、押し込み成形型150では、中子型151がライナー部材152に支持され、ライナー部材152がパンチ153に支持されており、パンチ153を上下方向に移動させる駆動手段(不図示)によって上下方向に移動されるパンチ153の移動に伴って、中子型151及びライナー部材152が上下方向に移動されるようになっている。
【0044】
一方、押し込み成形型150のダイ155は、その下面155aに板状ワークW11が押し込まれる凹部155bが形成されており、凹部155b内に板状ワークW11を成形するための成形空間155cが形成されている。押し込み成形型150のダイ155に設けられる凹部155bは、図9に示すように、フロントサイドフレーム120の形状に応じて形成され、フロントサイドフレーム120の下面部122の形状に応じて形成される底面部155dと、フロントサイドフレーム120の第4の傾斜側面部128の形状に応じて形成され底面部155dから右斜め下方に傾斜する第1の傾斜壁部155eと、フロントサイドフレーム120の左側面部124の形状に応じて形成され第1の傾斜壁部155eから垂直方向下方に延びる右縦壁部155fと、フロントサイドフレーム120の第3の傾斜側面部127の形状に応じて形成され底面部155dから左斜め下方に傾斜する第2の傾斜壁部155gと、フロントサイドフレーム120の右側面部123の形状に応じて形成され第2の傾斜壁部155gから垂直方向下方に延びる左縦壁部155hとを備えている。
【0045】
このようにして構成される押し込み成形型150を備えた押し込み成形装置では、板状ワークW11の凸状頂面部W12を中子型151に保持した状態で、中子型151が上方へ移動され、板状ワークW11を中子型151によりダイ155に設けられた凹部155b内に押し込み、板状ワークW11の凸状側面部W13、W14の端部W13e、W14eを中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるととともに凹部155bの内方側に向かって延びるように板状ワークW11を成形することができるようになっている。
【0046】
押し込み成形型150を用いて、板状ワーク材W11を押し込み成形する際には、図9に示すように、板状ワークW11は、凸状頂面部W12を上側にした状態で、中子型151の上面部151aに凸状頂面部W12が保持される。そして、押し込み成形型150のパンチ153が上方へ移動され、これに伴って中子型151が上方へ移動され、中子型151とダイ155とにより板状ワークW11の押し込み成形が行われる。
【0047】
図11は、押し込み成形工程を説明するための説明図であり、図11の(a)は、板状ワークW11が押し込み成形型のダイに設けられた凹部内に押し込まれる状態を示し、図11の(b)は、板状ワークが押し込み成形型のダイに設けられた凹部内に押し込まれた状態を示している。
【0048】
板状ワークW11が中子型151に保持された状態で、中子型151が上方へ移動されると、図11(a)に示すように、板状ワークW11の凸状頂面部W12の右側部分が、ダイ155、具体的にはダイ155の右縦壁部155fと下面155aとの交点であるダイ155の肩部155iと中子型151とによって曲げ成形され、凸状側面部W13が板状ワークW11を閉じる方向に内方側に変位する。板状ワークW11の凸状頂面部W12の左側部分についても、ダイ155、具体的にはダイ155の左縦壁部155hと下面155aとの交点であるダイ155の肩部155jと中子型151とによって曲げ成形され、凸状側面部W14が板状ワークW11を閉じる方向に内方側に変位する。
【0049】
さらに、中子型151が上方へ移動され、板状ワーク材W11が中子型151によりダイ155の凹部155b内に押し込み成形されると、図11(b)に示すように、板状ワークW11が中子型151とダイ155とによって曲げ成形され、凸状頂面部W12の両側の凸状側面部W13、W14が板状ワークW11を閉じる方向に内方側へさらに変位し、これに伴って、板状ワークW11の凸状側面部W13、W14の端部W13e、W14eが中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるととともに凹部155bの内方側に向かって延びるように成形される。板状ワークW11が中子型151によりダイ155の凹部155b内に押し込み成形される際には、ライナー部材152は、板状ワークW11の端部W13e、W14eと干渉しないように形成されている。
【0050】
板状ワーク材W11が中子型151によりダイ155の凹部155b内に押し込み成形されることにより、ダイ155の凹部155bの底面部155dと中子型151の上面部151aとによりフロントサイドフレーム120の下面部122が成形され、ダイ155の凹部155bの第1の傾斜壁部155eと中子型151の第4の傾斜側面部151hとによりフロントサイドフレーム120の第4の傾斜側面部128が成形され、ダイ155の凹部155bの右縦壁部155fと中子型151の右側面部151dとによりフロントサイドフレーム120の左側面部124が成形され、ダイ155の凹部155bの第2の傾斜壁部155gと中子型151の第3の傾斜側面部151gとによりフロントサイドフレーム120の第3の傾斜側面部127が成形され、ダイ155の凹部155bの左縦壁部155hと中子型151の左側面部151cとによりフロントサイドフレーム120の右側面部123が成形される。
【0051】
なお、板状ワークW11は、ドロー成形工程において、板状ワークW11が押し込み成形型150の中子型151により押し込み成形型150のダイ155に設けられた凹部155b内に押し込まれた際に、板状ワークW11の端部W13e、W14eが押し込み成形型150の中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるとともに凹部155bの内方側に向かって延びるように曲げ成形されている。
【0052】
このようにして、ドロー成形された板状ワークW11を押し込み成形型150の中子型151により押し込み成形型150のダイ155に設けられた凹部155b内に押し込み成形した後には、板状ワークW11内に中子型151を保持した状態で、パンチ153と中子型151により板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしを接触させて閉断面状に成形する本曲げ成形工程が行われる。
【0053】
図12は、本曲げ成形工程を説明するための説明図であり、図12の(a)は、押し込み成形後にライナー部材が取り外された状態を示し、図12の(b)は、パンチが上方へ移動され、パンチにより板状ワークが押圧され曲げ成形されている状態を示し、図12の(c)は、パンチにより板状ワークが押圧され曲げ成形された状態を示している。
【0054】
板状ワークW11が押し込み成形型150の中子型151により押し込み成形型150のダイ155に設けられる凹部155b内に押し込まれると、押し込み成形された板状ワークW11内に中子型151を保持した状態で、パンチ153が下方へ移動され、図12(a)に示すように、中子型151とパンチ153との間に介設されたライナー部材152が取り外される。
【0055】
ライナー部材152が取り外されると、パンチ153が再び上方へ移動され、図12(b)に示すように、パンチ155の上面部153bによって、板状ワークW11の中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるととともに凹部155bの内方側に向かって延びる端部W13e、W14eが押圧され、板状ワークW11の端部W13e、W14eがさらに板状ワークW11を閉じる方向に内方側に曲げ成形される。
【0056】
さらに、パンチ153が上方へ移動されると、図12(c)に示すように、板状ワークW11の端部W13e、W14eがパンチ153の上面部153bによってさらに板状ワークW11を閉じる方向に内方側に曲げ成形され、パンチ153と中子型151とにより板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしが突き合わせられて接触させられ閉断面状に成形される。なお、中子型151は、板状ワークW11が閉断面化された後に、閉断面状に形成された閉断面部材の長手方向から抜けるように構成されている。
【0057】
板状ワークW11の端部W13e、W14eがパンチ153の上面部153bによって押圧され曲げ成形されることにより、パンチ153の水平部153dと中子型151の下面部151bとによりフロントサイドフレーム120の上面部122が成形され、パンチ153の第1の傾斜壁部153eと中子型151の第2の傾斜側面部151fとによりフロントサイドフレーム120の第2の傾斜側面部126が成形され、パンチ153の第2の傾斜壁部153fと中子型151の第1の傾斜側面部151eとによりフロントサイドフレーム120の第2の傾斜側面部125が成形される。
【0058】
板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしが突きあわせられ接触させられて閉断面状に成形された後には、突き合わせられ接触させられた板状ワークWの端部W13e、W14eどうしが、例えばレーザー溶接などの溶接によって接合され、フランジ部分を設けることなく閉断面状に形成された閉断面部材としてのフロントサイドフレーム120が製造される。このように、板状ワークW11の突きあわせられ接触させられた端部W13e、W14eどうしを溶接する溶接工程をさらに備えていることにより、閉断面部材の接合強度を高めることができ、より強固な閉断面部材を製造することができる。
【0059】
本実施形態では、本曲げ成形工程において、押し込み成形工程において成形された板状ワークW11内に中子型151を保持した状態で、板状ワークW11の端部W13e、W14eを押し込み成形型150のパンチ153により押圧して曲げ成形し、押し込み成形型150のパンチ153と押し込み成形型150の中子型151により板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしを突きあわせて接触させることにより閉断面状に成形しているが、板状ワークWの端部W13e、W14eを押し込み成形型150のパンチ153により押圧して曲げ成形し、板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしを重ね合わせて接触させ、閉断面状に成形するようにしてもよい。かかる場合には、溶接工程において、好ましくは、重ね合わせられ接触させられた板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしが重ね溶接や隅肉溶接によって溶接される。
【0060】
また、本実施形態では、板状ワークW11が押し込み成形型150のダイ155に設けられた凹部155内に押し込まれる際に板状ワークW11の短手方向における両端部W13e、W14eが中子型155の押し込み方向と逆方向に延びるとともに凹部155bの内方側に向かって延びるように成形されているが、押し込み成形時に、板状ワークW11の短手方向における一方の端部のみを押し込み成形型の中子型の押し込み方向と逆方向に延びるとともに凹部の内方側に向かって延びるように成形するようにしてもよい。かかる場合には、本曲げ成形工程において、板状ワークの一方の端部のみが押圧され、板状ワークの端部どうしが接触させられて閉断面状に成形される。
【0061】
さらに、本実施形態では、予備曲げ成形工程として、ドロー成形工程によって、板状ワークW11が押し込み成形型150のダイ155に設けられた凹部155b内に押し込まれた際に板状ワークW11の端部W13e、W14eが押し込み成形型150の中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるとともに凹部155bの内方側に向かって延びるように曲げ成形されているが、例えば張出し成形などのその他のプレス成形を用い、板状ワークをプレス成形型のブランクホルダとダイとにより挟持した状態で、プレス成形型のパンチをプレス成形型のダイの成形空間内に移動させることにより、板状ワークW11をプレス成形するようにしてもよい。かかる場合においても、板状ワークが押し込み成形型の中子型により押し込み成形型のダイに設けられた凹部内に押し込まれた際に板状ワークの少なくとも一方の端部が押し込み成形型の中子型の押し込み方向と逆方向に延びるとともに前記凹部の内方側に向かって延びるように曲げ成形される。
【0062】
このように、本実施形態に係る金属製閉断面部材としてのフロントサイドフレーム120の製造方法は、板状ワークW11を第1の成形型140のブランクホルダ141とダイ145とにより挟持した状態で、第1の成形型140のパンチ142をダイ145の成形空間145c内に移動させることにより、板状ワークW11をダイ145に対するパンチ142の移動方向に突出させて凸状にプレス成形する第1のプレス成形工程と、第1のプレス成形工程の後に、プレス成形された板状ワークW11を第2の成形型150のダイ155と中子型151との間に、中子型151が板状ワークW11の凸状に突出する方向と反対側に位置するように配置した状態で、中子型151をダイ155に対して移動させ、板状ワークW11の凸状に成形された凸状頂面部W12を板状ワークW11の凸状に突出する方向にプレス成形することにより、第1のプレス成形工程において成形された板状ワークW11の凸状頂面部W12の両側の凸状側面部W13、W14をそれぞれ板状ワークW11の内方側へ変位させて閉断面化する第2のプレス成形工程と、を備えている。これにより、板状ワークにしわが発生することを防止し、比較的簡単な方法によって精度良く金属製閉断面部材を製造することができる。
【0063】
また、第1のプレス成形工程は、板状ワークW11を予め曲げ成形する予備曲げ成形工程であり、第2のプレス成形工程は、曲げ成形された板状ワークW11を第2の成形型150の中子型151により第2の成形型150のダイ155に設けられた凹部155b内に押し込み、板状ワークW11の少なくとも一方側の端部W13e、W14eが中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるととともに凹部155bの内方側に向かって延びるように板状ワークW11を成形する押し込み成形工程と、板状ワークW11内に中子型151を保持した状態で、板状ワークW11の端部W13e、W14eを第2の成形型150のパンチ153により押圧して曲げ成形し、パンチ153と中子型151により板状ワークW11の端部W13e、W14eどうしを接触させて閉断面状に成形する本曲げ成形工程と、を備え、予備曲げ成形工程では、板状ワークW11が押し込み成形型150のダイ155に設けられた凹部155b内に押し込まれた際に板状ワークW11の少なくとも一方の端部W13e、W14eが中子型151の押し込み方向と逆方向に延びるとともに凹部155bの内方側に向かって延びるように曲げ成形される。これにより、長手方向に断面形状が変化する閉断面部材の製造においても、押し込み成形型150の中子型151とダイ155とにより板状ワークW11を押し込み成形し、押し込み成形型150のパンチ153と中子型151とにより板状ワークW11の端部W13e、W14eを曲げ成形することにより、板状ワークW11から精度良く金属製閉断面部材を製造することができる。
【0064】
更に、押し込み成形工程では、本曲げ成形工程において押し込み成形型150のパンチ153を移動させる駆動手段によって押し込み成形型150の中子型151が押し込み成形型150のダイ155に設けられた凹部155b内に移動されることにより、押し込み成形及び本曲げ成形において板状ワークを移動させる必要がなく、比較的簡単な方法によって押し込み成形を行うことができる。
【0065】
また、押し込み成形工程では、パンチ153と中子型151との間にライナー部材152を介設した状態で中子型151が凹部155b内に移動され、本曲げ成形工程では、パンチ153と中子型151との間からライナー部材152が取り外され、板状ワークW11内に中子型151を保持した状態で、板状ワークW11の端部W13e、W14eが押し込み成形型150のパンチ153により曲げ成形されることにより、押し込み成形時にライナー部材によって板状ワークとパンチとの干渉を防止しつつ、前記効果を得ることが可能である。
【0066】
本実施形態では、プレス成形された板状ワークW11を第2の成形型150のダイ155と中子型151との間に、中子型151が板状ワークW11の凸状に突出する方向と反対側に位置するように配置した状態で、中子型151をダイ155に対して移動させ、板状ワークW11の凸状に成形された凸状頂面部W12を板状ワークW11の凸状に突出する方向にプレス成形することにより、第1のプレス成形工程において成形された板状ワークW11の凸状頂面部W12の両側の凸状側面部W13、W14をそれぞれ板状ワークW11の内方側へ変位させて閉断面化しているが、ダイ155を中子型151に対して相対的に移動させ、第1のプレス成形工程において成形された板状ワークW11の凸状頂面部W12の両側の凸状側面部W13、W14をそれぞれ板状ワークW11の内方側へ変位させて閉断面化するようにしてもよい。
【0067】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、金属製の板状ワークを第1の成形型のブランクホルダとダイとにより挟持した状態で、第1の成形型のパンチを前記ダイの成形空間内に移動させることにより、板状ワークを凸状にプレス成形し、プレス成形された板状ワークを第2の成形型のダイと中子型との間に配置した状態で、前記中子型を前記ダイに対して相対的に移動させ、前記板状ワークの凸状頂面部をプレス成形することにより、板状ワークの凸状頂面部の両側の凸状側面部をそれぞれ前記板状ワークの内方側へ変位させて閉断面化することで、板状ワークにしわが発生することを防止し、比較的簡単な方法によって精度良く金属製閉断面部材を製造することができる。
【0068】
なお、本実施形態では、金属製の板状ワークを第1の成形型のブランクホルダとダイとにより挟持した状態で、第1の成形型のパンチをダイの成形空間内に移動させて板状ワーク材をプレス成形しているが、パンチを固定した状態で、板状ワークを挟持したブランクホルダとダイとをパンチに対して相対的に移動させてプレス成形するようにしてもよい。
【0069】
以上のように、本発明は、例示された実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、金属製の板状ワークから閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造方法に関し、例えばフロントサイドフレームやリアサイドフレームなどの閉断面状に形成される車体部材の製造において有効に適用可能である。
【符号の説明】
【0071】
120 フロントサイドフレーム
140 ドロー成形型
141 ドロー成形型のブランクホルダ
142 ドロー成形型のパンチ
145 ドロー成形型のダイ
145c ドロー成形型のダイの成形空間
150 押し込み成形型
151 押し込み成形型の中子型
152 ライナー部材
153 押し込み成形型のパンチ
155 押し込み成形型のダイ
155b 押し込み成形型のダイに設けられた凹部
W11 板状ワーク
W12 凸状頂面部
W13、W14 凸状側面部
W13e、W14e 凸状側面部の凸状頂面部側と反対側の端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製の板状ワークから閉断面状に形成された閉断面部材を製造する金属製閉断面部材の製造方法であって、
第1の成形型を用い、金属製の板状ワークを第1の成形型のブランクホルダとダイとにより挟持した状態で、第1の成形型のパンチを前記ダイの成形空間内に相対的に移動させることにより、前記板状ワークを前記ダイに対する前記パンチの移動方向に突出させて凸状にプレス成形する第1のプレス成形工程と、
前記第1のプレス成形工程の後に、第2の成形型を用い、プレス成形された前記板状ワークを第2の成形型のダイと中子型との間に、前記中子型が前記板状ワークの凸状に突出する方向と反対側に位置するように配置した状態で、前記中子型を前記ダイに対して相対的に移動させ、前記板状ワークの凸状に成形された凸状頂面部を相対的に前記板状ワークの凸状に突出する方向にプレス成形することにより、前記第1のプレス成形工程において成形された前記板状ワークの凸状頂面部の両側の凸状側面部をそれぞれ前記板状ワークの内方側へ変位させて閉断面化する第2のプレス成形工程と、
を備え、
前記第1のプレス成形工程は、前記板状ワークを予め曲げ成形する予備曲げ成形工程であり、
前記第2のプレス成形工程は、前記予備曲げ成形工程において曲げ成形された前記板状ワークを第2の成形型の中子型により第2の成形型のダイに設けられた凹部内に押し込み、前記板状ワークの少なくとも一方側の端部が前記中子型の押し込み方向と逆方向に延びるととともに前記凹部の内方側に向かって延びるように前記板状ワークを成形する押し込み成形工程と、前記押し込み成形工程において成形された前記板状ワーク内に前記中子型を保持した状態で、前記板状ワークの前記端部を第2の成形型のパンチにより押圧して曲げ成形し、前記パンチと前記中子型により前記板状ワークの端部どうしを接触させて閉断面状に成形する本曲げ成形工程と、を備え、
前記予備曲げ成形工程では、前記板状ワークが第2の成形型のダイに設けられた凹部内に押し込まれた際に前記板状ワークの少なくとも一方の端部が前記中子型の押し込み方向と逆方向に延びるとともに前記凹部の内方側に向かって延びるように曲げ成形される、
ことを特徴とする金属製閉断面部材の製造方法。
【請求項2】
前記押し込み成形工程では、前記本曲げ成形工程において第2の成形型のパンチを移動させる駆動手段によって第2の成形型の中子型が第2の成形型のダイに設けられた凹部内に移動されることを特徴とする請求項1に記載の金属製閉断面部材の製造方法。
【請求項3】
前記押し込み成形工程では、第2の成形型のパンチと第2の成形型の中子型との間にライナー部材を介設した状態で前記中子型が前記凹部内に移動され、
前記本曲げ成形工程では、第2の成形型のパンチと第2の成形型の中子型との間から前記ライナー部材が取り外され、前記押し込み成形工程において成形された前記板状ワーク内に前記中子型を保持した状態で、前記板状ワークの前記端部が第2の成形型のパンチにより曲げ成形されることを特徴とする請求項2に記載の金属製閉断面部材の製造方法。
【請求項4】
前記本曲げ成形工程の後に、前記板状ワークの接触させられた端部どうしを溶接する溶接工程をさらに備えていることを特徴とする請求項1〜3の何れか一に記載の金属製閉断面部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−5552(P2011−5552A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201602(P2010−201602)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【分割の表示】特願2008−253630(P2008−253630)の分割
【原出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)