説明

金属触媒担体の製造方法

【課題】 ハニカム体を均等に縮径させて外筒へ良好に圧入した状態で収容できる金属触媒担体の製造方法の提供。
【解決手段】 波状の金属箔4と平板状の金属箔5とを重ねた状態で多重に巻回してロール状のハニカム体2を形成した後、該ハニカム体2を外筒3に圧入する金属触媒担体1の製造方法において、内面に突部2aを有する複数割りの割型31〜34によりハニカム体2の外周を径方向に加圧してセレーション形状にした後、該ハニカム体2を外筒3に圧入することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属触媒担体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカム体の外周に半径方向内向きの座屈部を形成して外筒への圧入抵抗を軽減した金属触媒担体の技術が公知になっている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−197518号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の発明にあっては、ハニカム体の外筒への圧入時の応力が座屈部に集中するため、座屈部と外筒との間に大きな隙間が生じ、この隙間を介して排気が通過することによって排気の浄化性能が低下する虞があった。
加えて、座屈部付近の狭くなったセルは圧迫を受けて異常な形状となり、ハニカム体の耐久性の低下に繋がる虞があった。
【0004】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、ハニカム体を外筒へ良好に圧入した状態で収容できる金属触媒担体の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明では、波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔とを重ねた状態で多重に巻回してロール状のハニカム体を形成した後、該ハニカム体を外筒に圧入する金属触媒担体の製造方法において、内面に突部を有する複数割りの割型によりハニカム体の外周を径方向に加圧してセレーション形状にした後、該ハニカム体を外筒に圧入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明では、内面に突部を有する複数割りの割型によりハニカム体の外周を径方向に加圧してセレーション形状にした後、該ハニカム体を外筒に圧入している。
これにより、ハニカム体を均等に縮径させて外筒へ良好に圧入した状態で収容できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、この発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0008】
以下、実施例1を説明する。
図1は実施例1の金属触媒担体を示す側断面図、図2は図1の矢視A1による図、図3は実施例1のハニカム体の形成を説明する図、図4は実施例1のハニカム体の形成直後の斜視図である。
図5は実施例1の圧入装置の全体図、図6は実施例1の割型を説明する図、図7〜9は実施例1の金属触媒担体の製造方法を説明する要部拡大図である。
【0009】
先ず、全体構成を説明する。
図1、2に示すように、実施例1の金属触媒担体1は、円柱状のハニカム体2と、このハニカム体2が収容された円筒状の外筒3等から構成されている。
【0010】
次に、金属触媒担体1の製造方法を説明する。
金属触媒担体1の製造方法は、ハニカム体形成工程、セレーション加工工程及び圧入工程、ろう付け工程の順番に行われる。
<ハニカム体形成工程>
ハニカム体形成工程では、公知の特開2006−239580号公報と同様の加工装置を用いてハニカム体2を形成する。
即ち、図3に示すように、ロールギヤ等で形成された長尺で波状の金属箔4と、長尺で平板状(または小波状)の金属箔5の始端部を該金属箔5が外側となるように巻軸6に止着した後、これら両金属箔4,5を重ねた状態で多重に巻回することによりロール状に形成する。
その後、両金属箔4,5の終端部をハニカム体2の外周に巻回されたろう箔材7と共にスポット溶接等により固定して、所望のハニカム体2を形成する(図4参照)。
なお、実施例1では、ろう箔材7をハニカム体2の長手方向中央位置に設けているが、この限りではない。
【0011】
<セレーション加工工程及び圧入工程>
セレーション加工工程及び圧入工程では、公知の特開平11−197518号公報の同様のものにセレーション加工部30が追加された圧入装置10を用いてハニカム体2の外周をセレーション形状に形成した後、外筒3に圧入する。
【0012】
先ず、圧入装置10について詳述する。
図5において、水平な基台11上に立設されたタワーブロック12には、鉛直方向にレール13が延設されると共に、このレール13には昇降板14が摺動可能に係合されている。
【0013】
昇降板14には、タワーブロック12に取付けられたエアシリンダ15のピストンロッド15aが連結しており、このエアシリンダ15の作動により昇降板14を上下動させるようになっている。
また、昇降板14は、上部に支持ブラケット16、下部に支持ブラケット17が備えられる他、支持ブラケット16にはエアシリンダ18が鉛直方向に向けて取付けられる一方、支持ブラケット17には円筒状の圧入治具19がエアシリンダ18と同軸上に装着されている。
【0014】
エアシリンダ18の下方に突出するピストンロッド18aには、円柱状の圧入部材20が備えられている。
基台11上には、圧入治具19の下方で同軸上に配置されるワーク支持ブロック21が固設されている。
【0015】
図7に示すように、圧入治具19の内周には、その下端に行くにつれて徐々に拡径しながら開口するテーパ面を有する第1案内孔22と、この第1案内孔22の上端に連なる真円の矯正孔23と、この矯正孔23の上端から起立する環状段部24と、この環状段部24の内周縁から該治具19の他端に行くに連れて徐々に拡径しながら開口するテーパ面を有する第2案内孔25とが形成されている。
【0016】
第1案内孔22の下端の入口径は、外筒3の外径より大きく、矯正孔23の内径は、外筒3の外径と等しく設定されている。
第2案内孔25の上端の入口径は、ハニカム体2の外径より大きく、また第2案内孔25の下端の出口径は、外筒3の内径よりも小さく設定されている。
【0017】
その他、ワーク支持ブロック21の上端には、外筒3の下端内周に嵌合する環状突起状の突起21aが形成されている。
【0018】
次に、セレーション加工部30について詳述する。
図5、図6(a)に示すように、セレーション加工部30は、圧入治具19の上方に近接して設けられた複数(実施例1では4つ)割りの割型31〜34と、円盤状の支持体35とから構成されている。
【0019】
割型31〜34は、内面にそれぞれ平面視1/4円形状のセレーション溝36が鉛直方向に延設されている。
また、図6(a)、(b)に示すように、割型31〜34はそれぞれ角部に連結された図示を省略するエアシリンダのピストンロッド37の伸縮により、支持体35を中心として径方向へ移動可能に設けられている。
また、割型31〜34及びエアシリンダ等は支持ブラケット38(図5参照)を介して昇降板14の中途部に固定支持されている。
【0020】
図5に示すように、支持体35の下部には、突起21aの内周を貫通して基台11内に収容されたエアシリンダ39のピストンロッド39aが連結されており、このエアシリンダ39の作動により支持体35を上下動させるようになっている。
【0021】
このように構成された圧入装置10では、先ず、図7(a)に示すように、エアシリンダ15のピストンロッド15aの収縮作動により昇降板14を上昇位置に停止させ、且つ、エアシリンダ39のピストンロッド39aの収縮作動により支持体35を突起21aと同一高さで停止させた状態として、ワーク支持ブロック21上に外筒3を載置する。
この際、外筒3の下端内周に突起21aを嵌合することにより、外筒3を圧入治具19と同軸上に配置する。
【0022】
次に、図7(b)に示すように、エアシリンダ15のピストンロッド15aの伸長作動により昇降板14を徐々に下降させる。
この際、ワーク支持ブロック21上の外筒3の上端部が圧入治具19の第1案内孔22を経て矯正孔23に嵌合し、これにより外筒3の歪みが矯正される。
そして、外筒3の上端部が環状段部24に当接した位置で昇降板14を停止させる。
【0023】
次に、図8に示すように、エアシリンダ39のピストンロッド39aの伸長作動により支持体35を圧入治具19の上端よりも僅かに上方位置となるように配置した後、割型31〜34の中央位置で支持体35上にハニカム体2を載置する。
次に、図6に示すように、ピストンロッド37の伸長作動により割型31〜34をハニカム体2を中心として径方向内側に所定位置まで移動させる。
これにより、ハニカム体2の外周(ろう箔材7共)をセレーション溝36で径方向内側に加圧することにより、ハニカム体2の外周の全周に突部2aを有するセレーション形状に加工する。
【0024】
次に、ピストンロッド37の収縮作動により割型31〜34を元位置に復帰させた後、図9(a)、(b)に示すように、エアシリンダ18の伸長作動により圧入部材20を所定位置まで下降させ、圧入部材20の下面がハニカム体2の上面に当接したところで、エアシリンダ39のピストンロッド39aの収縮作動により支持体35を圧入部材20と同期して元位置まで下降させる。
これにより、ハニカム体2を、第2案内孔25を経由させて矯正孔23内で待機する外筒3内に圧入する。
なお、支持体35は圧入の初期段階でハニカム体2から離脱して下方へ移動する。
【0025】
この際、ハニカム体2は、第2案内孔25のテーパ面により徐々に縮径されつつ、真円に矯正されるが、その際の縮径はセレーション形状の突部2aにより均等に進行する。
【0026】
従って、ハニカム体2を均等に縮径でき、ハニカム体2の外周の一部に応力が集中して大きな座屈が生じる虞がなく、ハニカム体2と外筒3との間に大きな隙間が生じるのを防止できる。
また、比較的小さい圧入荷重でもって、ハニカム体2を第2案内孔25から外筒3内へ圧入できる。
加えて、第2案内孔25のテーパ面によりハニカム体2の損傷を回避できると同時に、圧入治具19の耐用寿命を延ばすこともできる。
【0027】
さらに、第2案内孔25の下端の出口径<外筒3の内径の関係により、ハニカム体2は外筒3の内径よりも小さく絞られた状態で圧入されるため、圧入初期段階における圧入抵抗を小さくできる。
また、ハニカム体2の圧入後におけるセレーション形状の突部2aの復元力により、ハニカム体2の外周面全体を外筒3の内周面に確実に密着させることができる。
【0028】
なお、ハニカム体2が収容された外筒3は、エアシリンダ15,18のピストンロッド15a,18aの収縮作動により、昇降板14及び圧入部材20を元位置に復帰させた後、ワーク支持ブロック21から取り外すことができる。
また、セレーション形状(突部2a)の波の高さ、形成数、波のピッチは適宜設定できるが、これらはハニカム体2の圧入前の外周長と圧入後の外周長(外筒3の内周長)との周長差を吸収できるように設定する。
具体的な例として、例えば、セレーション形状(突部2a)波の高さを0.1〜10mm、波のピッチを4〜10mmの範囲の小さな値に設定する。
また、圧入後の突部2aの波の高さは金属箔4の波の高さの1〜2倍が好ましい。
【0029】
<ろう付け工程>
このように形成された金属触媒担体1は、図示しない加熱炉に搬送されて熱処理されることにより、金属箔4の波の頂部と金属箔5の接している部分が拡散接合されると共に、ハニカム体2の外周一部と外筒3がろう箔材7の溶融によりろう付け接合される。
その後、ハニカム体2の両金属箔4,5の隙間で形成される軸方向に貫通したセルの表面には貴金属、アルミナ等からなる排気ガス浄化用の触媒担持体層が形成される。
【0030】
次に、作用を説明する。
<排気浄化作用について>
このように構成された金属触媒担体1は、外筒3の両端部が自動車の内燃機関排気系に連通接続された状態で介装され、外筒3のエンジン側の排気上流側となる一端部から外筒3に流入した排気は、ハニカム体2のセルを通過することにより、触媒の作用により排気中の有害成分(HC、CO、NOx等)が無害成分(CO2、O等)に浄化されて排気下流側となる他端部から排出される。
【0031】
次に、効果を説明する。
以上、説明したように、実施例1の発明では、波状の金属箔4と平板状の金属箔5とを重ねた状態で多重に巻回してロール状のハニカム体2を形成した後、該ハニカム体2を外筒3に圧入する金属触媒担体1の製造方法において、内面に突部2aを有する複数割りの割型31〜34によりハニカム体2の外周を径方向に加圧してセレーション形状にした後、該ハニカム体2を外筒3に圧入するため、ハニカム体2を均等に縮径させて外筒3へ良好に圧入した状態で収容できる。
【0032】
また、内面にテーパ面を有する圧入治具19によりハニカム体2を軸方向へ押圧して外筒3の内径よりも小さく絞った状態として外筒3に圧入するため、ハニカム体2の圧入初期段階における圧入抵抗を低くでき、良好な圧入とハニカム体2の負担を軽減できる。
また、ハニカム体2の圧入後におけるセレーション形状の突部2aによる復元力で外筒3との密着性を良好にできる。
【0033】
また、ハニカム体2の外周に外筒3とろう付け接合するためのろう箔材7を設けたため、ハニカム体2の外周部と共にろう箔材7を共にセレーション形状に加工して、ハニカム体2と外筒3との密着性を向上でき、外筒への圧入時にろう箔材7が剥がれる虞も無くなる。
【0034】
以上、実施例を説明してきたが、本発明は上述の実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても、本発明に含まれる。
例えば、割型の分割数は適宜設定できる。
また、ろう箔材7を省略してハニカム体2と外筒3とを拡散接合により固定することもできる。
また、両金属箔4,5に複数の穴を形成しても良い。
【0035】
さらに、ハニカム体2の断面形状は円形状に限らず、図10(a)に示すような楕円形状、図10(b)に示すようなレーストラック型等の非円形状にしても良く、これらの場合には円形状に比べて特にハニカム体2の座屈が大きくなりやすいため、この発明の作用・効果を特に発揮でき、好適となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1の金属触媒担体を示す側断面図である。
【図2】図1の矢視A1による図である。
【図3】実施例1のハニカム体の形成を説明する図である。
【図4】実施例1のハニカム体の形成直後の斜視図である。
【図5】実施例1の圧入装置の全体図である。
【図6】実施例1の割型を説明する図である。
【図7】実施例1の金属触媒担体の製造方法を説明する要部拡大図である。
【図8】実施例1の金属触媒担体の製造方法を説明する要部拡大図である。
【図9】実施例1の金属触媒担体の製造方法を説明する要部拡大図である。
【図10】その他の実施例の金属触媒担体を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0037】
1 金属触媒担体
2 ハニカム体
2a 突部
3 外筒
4、5 金属箔
6 巻軸
7 ろう箔材
10 圧入装置
11 基台
12 タワーブロック
13 レール
14 昇降板
15 エアシリンダ
15a ピストンロッド
16 支持ブラケット
17 支持ブラケット
18 エアシリンダ
18a ピストンロッド
19 圧入治具
20 圧入部材
21 ワーク支持ブロック
22 第1案内孔
23 矯正孔
24 環状段部
25 第2案内孔
30 セレーション加工部
31、32、33、34 割型
35 支持体
36 セレーション溝
37 ピストンロッド
38 支持ブラケット
39 エアシリンダ
39a ピストンロッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
波状の金属箔と小波状または平板状の金属箔とを重ねた状態で多重に巻回してロール状のハニカム体を形成した後、該ハニカム体を外筒に圧入する金属触媒担体の製造方法において、
内面に突部を有する複数割りの割型によりハニカム体の外周を径方向に加圧してセレーション形状にした後、該ハニカム体を外筒に圧入することを特徴とする金属触媒担体の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の金属触媒担体の製造方法において、
内面にテーパ面を有する圧入治具によりハニカム体を軸方向へ押圧して外筒の内径よりも小さく絞った状態として外筒に圧入することを特徴とする金属触媒担体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の金属触媒担体の製造方法において、
前記ハニカム体の外周に外筒とろう付け接合するためのろう箔材を設けたことを特徴とする金属触媒担体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のうちのいずれかに記載の金属触媒担体の製造方法において、
前記金属触媒担体の断面形状を楕円形状または非円形状としたことを特徴とする金属触媒担体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−17605(P2010−17605A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177453(P2008−177453)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】