説明

金属遮水層付きケーブル

【課題】 遮蔽層を持つ金属遮水層付きケーブルにおける金属遮水層の接地処理を容易にする。
【解決手段】 銅テープ3aをラップ巻きした遮蔽層3と、金属ラミネートテープ5aを縦添いした金属遮水層5との間に、紙等のベーステープ12aの表面に金属箔12bを貼り合わせた第1の金属化テープ12とベーステープ13aの裏面に金属箔13bを貼り合わせた第2の金属化テープ13とを、互いの金属箔面同士を向き合わせかつ一部重ね(■の部分)の並列状態でラップ巻きして、金属化テープ層11を形成する。金属遮水層5と遮蔽層3とは、ケーブル長手方向の全長にわたって、1組の金属化テープ12、13の金属箔面を介して電気的に接続される(■、■、■の経路)。遮蔽層3は必ず接地処理されるので、金属遮水層5が接地され、金属遮水層5を単独で接地処理する必要はなくなる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明に属する技術分野】この発明は、遮蔽層を備えた金属遮水層付きケーブルに関し、特に金属遮水層の接地の手段に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば石油化学プラント等に布設される高圧電力ケーブルや制御ケーブルとして、金属ラミネートテープを縦添いした金属遮水層を備えた金属遮水層付きケーブルが広く用いられている。この金属遮水層付きケーブルにおいて金属遮水層を接地処理する必要がある場合、金属遮水層の内側でドレンワイヤをケーブル全長にわたって縦添いし、そのドレンワイヤの端部を接地極に接続する方法がある。このドレンワイヤを用いる方法は制御ケーブルの場合に一般的な方法である。
【0003】高圧電力ケーブルのように、ケーブルコア上に金属テープ例えば銅テープをラップ巻きした遮蔽層が全長にわたって形成されている構造のケーブルでは、上記ドレンワイヤを縦添いする方法以外に、遮蔽層と金属遮水層との間に、半導電性テープのラップ巻きによる半導電性テープ層を設けて、金属遮水層を半導電性テープ層を介して遮蔽層に電気的に接続することも行なわれている。図5に遮蔽層を持つ金属遮水層付きケーブル1の従来例を示す。この金属遮水層付きケーブル1は、ケーブルコア2上に内側から順に、例えば銅テープ3aのラップ巻きによる遮蔽層3、半導電性テープ4aのラップ巻きによる半導電性テープ層4、金属ラミネートテープ5aの縦添いによる金属遮水層5を形成し、その外周にゴム又はプラスチックのシース6を被覆した構造である。なおラップ巻きとは、テープを円筒体に螺旋状に巻き付ける際に、一部重なるように巻き付けることを指す。図示のケーブル1は高圧電力ケーブルであり、ケーブルコア2は例えば、導体2aの上に内部半導電層2b、絶縁体2c、外部半導電層2dを順に設けた構成である。前記半導電性テープ4aは遮蔽層3を押さえる押さえ巻きテープの機能も合わせ持つ。この金属遮水層付きケーブル1において、遮蔽層3は当然接地されるので、遮蔽層3と半導電性テープ4を介して電気的に接続されている金属遮水層5も接地される。なお、制御ケーブルの場合も、銅テープ等による遮蔽層がある場合は、同様に半導電性テープ層を設ける方法を採用できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、金属ラミネートテープ5aを縦添いして金属遮水層5を形成すると、図3は本発明の図であるが同図に示すように、金属ラミネートテープ5aの両縁に重なり部5bが生じる。このため、上記の遮蔽層3を持つ金属遮水層付きケーブル1では、径方向の熱膨張、収縮により縦添いした金属遮水層5の重なり部5bの下側のエッジ5cに、その下の遮蔽層3の銅テープ3aが繰り返し押し付けられ、その結果、シワが発生して破断に到ることがある。導体サイズが大きいケーブルで、かつ、日射の影響が強い場所に布設されてヒートサイクルを受けるケーブルの場合、絶縁体の膨張、収縮が大きいため、特にこのような現象が顕著である。そして、銅テープ3aが破断すると、遮蔽層3の遮蔽機能が損なわれる。また、ラップ巻きされた銅テープ3aのラップ部の電気抵抗は一定の大きさがあり、遮蔽層3に流れる電流は、必ずしもケーブル長手方向に直線的には流れず、巻かれている銅テープ3aに沿う螺旋状の流れとなるので、銅テープ3aが破断すると、当該ケーブル1を片端接地で使用している場合には、放電が発生し、地絡事故さらには火災に至る恐れがある。
【0005】遮蔽層3と金属遮水層5との間に半導電性テープ層4を配した上記従来の金属遮水層付きケーブル1では、半導電性テープ4の強度は弱いため、重なり部5bの押さえ付け力が分散されずに銅テープ3aの一部分(重なり部5bのエッジ5cの下)に局所的に集中するので、上記のように銅テープ3aが破断し易くなる。
【0006】なお、ドレンワイヤを縦添いした、遮蔽層を持つ金属遮水層付きケーブルでは、ドレンワイヤが局所的な突起部となるので、ドレンワイヤ部分で銅テープに金属遮水層側からの押し付け力が集中し、銅テープが破断する恐れがある。また、ドレンワイヤを縦添いするのは、ケーブル製造工程として煩雑であり、コストも高くなるという欠点もある。
【0007】本発明は上記従来の欠点を解消するためになされたもので、遮蔽層を持つ金属遮水層付きケーブルにおいて、遮蔽層の金属テープが破断する恐れを少しでも軽減させることができ、また、金属テープが破断してもケーブルの遮蔽機能を損なうことがなく、また、金属遮水層の接地処理を容易に行なうことができる金属遮水層付きケーブルを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する請求項1の発明は、ケーブルコアの外周に内側から順に少なくとも遮蔽層と、金属ラミネートテープを縦添いした金属遮水層と、シースとを備えた金属遮水層付きケーブルにおいて、前記遮蔽層の上に、紙又はプラスチックからなるベーステープの表面に金属箔を貼り合わせた第1の金属化テープと紙又はプラスチックからなるベーステープの裏面に金属箔を貼り合わせた第2の金属化テープとを、互いの金属箔面同士を向き合わせかつ一部重ねの並列状態でラップ巻きし、この金属化テープ層の上に前記金属遮水層を形成したことを特徴とする。
【0009】請求項2はの発明は、ケーブルコアの外周に内側から順に少なくとも遮蔽層と、金属ラミネートテープを縦添いした金属遮水層と、シースとを備えた金属遮水層付きケーブルにおいて、前記遮蔽層の上に、紙又はプラスチックからなるベーステープの両面に金属箔を貼り合わせた金属化テープをラップ巻きし、この金属化テープ層の上に前記金属遮水層を形成したことを特徴とする。
【0010】
【発明の実施の形態】図図1は本発明の一実施形態の金属遮水層付きケーブル1Aを断面図で示したもので、高圧電力ケーブルに適用したものである。この金属遮水層付きケーブル1Aは、ケーブルコア2の外周に、内側から順に、例えば銅テープ3aをラップ巻きした遮蔽層3、詳細は後述する金属化テープ層11、金属ラミネートテープ5aを縦添いした金属遮水層5を形成し、その上にゴム又はプラスチックのシース6を被覆した構造である。ケーブルコア2は、導体2aの上に内部半導電層2b、絶縁体2c、外部半導電層2dを順に設けた構成である。
【0011】本発明では、上記の通り、遮蔽層3と金属遮水層5との間に金属化テープ層11を形成する。この金属化テープ層11は、図2に詳細を示すように、遮蔽層3の上に、紙又はプラスチックからなるベーステープ12aの表面に金属箔12bを貼り合わせた第1の金属化テープ12と、紙又はプラスチックからなるベーステープ13aの裏面に金属箔13bを貼り合わせた第2の金属化テープ13とを、互いの金属箔12b、13b面同士を向き合わせかつ一部重ね(一部重ね部を■で示す)の並列状態でラップ巻きしたものである。すなわち、遮蔽層3の上に、金属箔面を向き合わせて一部重ねした2枚の金属化テープ12、13を連続的に巻きつけて金属化テープ層11を形成し、その上に金属遮水層5を形成する。なお、金属化テープ12、13は遮蔽層3を押さえる機能を果たすので、別途押さえ巻きテープで押さえることを必要としない。
【0012】前記金属化テープ12、13のベーステープ12a、13aとしては紙(加工紙を含む)が適切であるが、プラスチックを用いてもよい。プラスチックの場合、ポリエステル、ポリエチレン、ナイロンその他のプラスチックテープを用いることができる。金属箔12b、13bとしては、アルミ箔が適切であるが、銅箔その他の金属箔を用いてもよい。ベーステープの厚みは、金属箔の厚みは例えば0.1〜0.3mm程度好ましくは0.15mm前後(±0.03mm)が適切である。金属化テープの寸法は特に限定されないが、例えば厚みが0.15mm前後(±0.05mm等)、幅が25mm前後(±10mm等)が適切である。また、金属箔の厚みは0.012mm程度(±0.002mm等)が適切である。
【0013】上記の金属遮水層付きケーブル1Aにおいて、外側面(表面側)に金属箔12bのある第1の金属化テープ12が金属遮水層5の金属ラミネートテープ5aと接触(図2の■の部分)し、内側面(裏面側)に金属箔13bのある第2の金属化テープ13が遮蔽層3の銅テープ3aと接触(■の部分)し、両金属化テープ12、13は一部重ね部で互いの金属箔12b、13bが接触(■の部分)するので、結局、外側の金属遮水層5と内側の遮蔽層3とは、1組の金属化テープ12、13の金属箔12b、13b面を介して電気的に接続されることになる。すなわち、ケーブル長手方向の全長にわたって、金属遮水層5と遮蔽層3とが電気的に接続された状態となる。このため、遮蔽層3を通常通りに適宜の方法により接地すれば、同時に金属遮水層5の接地処理が行なわれることになり、単独で金属遮水層5の接地処理を行なう必要はなくなる。したがって、別にドレンワイヤを縦添いして接地処理を行なう従来方法のような煩雑さはなくなり、ケーブル製造工程が簡易化される。
【0014】また、この金属遮水層付きケーブル1Aにおいて、径方向の熱膨張、収縮により、遮蔽層3の銅テープ3aが、縦添いした金属遮水層5の重なり部5bの特にエッジ5cから押し付け力を受けた場合、金属化テープ12、13の剛性が半導電性テープより大なので、この押し付け力は半導電性テープの場合と比べて分散され、銅テープ3aの一部分(重なり部5bのエッジ5cの下)への局所的な集中を軽減することができ、銅テープ3aが破断する恐れは若干軽減される。また、銅テープ3aが破断したとしても、金属遮水層5は機械的に強固なので破断することはなく、そして金属遮水層5は金属化テープ層11により全長にわたり接地されているので、ケーブルの遮蔽機能が損なわれることはない。また、例えば紙テープにアルミ箔を貼り合わせた金属化テープは、半導電性テープと比べて安価なので、ケーブル製造コストを若干安くでき、好適である。
【0015】図4は、請求項2の金属遮水層付きケーブルにおける金属化テープ層21の一実施形態を示すもので、この金属化テープ層21は、図1と同様に遮蔽層3と金属遮水層5との間に配されたもので、紙又はプラスチックからなるベーステープ22aの両面に金属箔22b、22bを貼り合わせた金属化テープ22をラップ巻きして形成したものである。この両面に金属箔22bを貼り合わせた金属化テープ22は、単に1本だけをラップ巻きしても、隣接する金属化テープ22の向き合う面の金属箔22bを通じて、外側の金属遮水層5と内側の遮蔽層3とを電気的に接続する。この場合、両面に金属箔を貼り合わせことで、前述の片面だけの金属化テープ12、13と比べてコストは高くなるが、1種類だけでよいので、ラップ巻き作業の作業性はよい。
【0016】上述の実施形態では遮蔽層3として銅テープを用いたが、アルミテープ、あるいは銅線の編組であってもよい。また実施形態では高圧電力ケーブルに適用した場合について説明したが、遮蔽層を持つ金属遮水層付き制御ケーブルにも当然適用できる。要するに、ケーブルコアの外周に内側から順に少なくとも遮蔽層と、金属ラミネートテープを縦添いした金属遮水層と、シースとを備えた金属遮水層付きケーブルであれば、本発明を適用できる。
【0017】
【発明の効果】請求項1の金属遮水層付きケーブルによれば、遮蔽層と金属遮水層との間に、紙又はプラスチックからなるベーステープの片面に金属箔を貼り合わせた2枚の金属化テープを、互いの金属箔面同士を向き合わせかつ一部重ねの並列状態でラップ巻きした金属化テープ層を設けたので、この金属化テープ層により、ケーブル長手方向の全長にわたって金属遮水層と遮蔽層とが電気的に接続された状態となり、単独で金属遮水層の接地処理を行なう必要はなくなる。したがって、別にドレンワイヤを縦添いして接地処理を行なう従来方法のような煩雑さはなくなり、ケーブル製造工程が簡易化される。
【0018】また、ケーブルの径方向の熱膨張、収縮により、遮蔽層の銅テープが、縦添いした金属遮水層の重なり部から押し付け力を受けた場合、金属化テープの剛性は半導電性テープより大なので、その押し付け力は半導電性テープの場合と比べて分散され、銅テープの一部分への局所的な集中は軽減され、銅テープが破断する恐れは若干軽減される。また、銅テープが破断したとしても、金属遮水層は機械的に強固なので破断することはなく、そして金属遮水層は金属化テープ層により全長にわたり接地されているので、ケーブルの遮蔽機能が損なわれることはない。また、金属化テープは一般に、半導電性テープと比べて安価なので、ケーブル製造コストを若干安くできる。
【0019】請求項2の金属遮水層付きケーブルによれば、両面に金属箔を貼り合わせた金属化テープのラップ巻きによる金属化テープ層が、同じく金属遮水層と遮蔽層とを電気的に接続し、上記と同様な効果を奏する。この場合、両面に金属箔を貼り合わせた金属化テープを用いることで、金属化テープ自体のコストは若干高くなるが、ラップ巻きの作業性はよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の金属遮水層付きケーブルの断面図である。
【図2】上記金属遮水層付きケーブルの要部の拡大縦断面図である。
【図3】図1の金属遮水層付きケーブルの要部の拡大図(但し、ハッチングは省略)である。
【図4】本発明の他の実施形態の金属遮水層付きケーブルの要部の拡大縦断面図である。
【図5】従来の金属遮水層付きケーブルの断面図である。
【符号の説明】
1A 金属遮水層付きケーブル
2 ケーブルコア
3 遮蔽層
3a 銅テープ(金属テープ)
5 金属遮水層
5a 金属ラミネートテープ
6 シース
11 金属化テープ層
12、13 金属化テープ
12a、13a ベースプレート
12b、13b 金属箔
21 金属化テープ層
22 金属化テープ
22a ベースプレート
22b 金属箔

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ケーブルコアの外周に内側から順に少なくとも遮蔽層と、金属ラミネートテープを縦添いした金属遮水層と、シースとを備えた金属遮水層付きケーブルにおいて、前記遮蔽層の上に、紙又はプラスチックからなるベーステープの表面に金属箔を貼り合わせた第1の金属化テープと紙又はプラスチックからなるベーステープの裏面に金属箔を貼り合わせた第2の金属化テープとを、互いの金属箔面同士を向き合わせかつ一部重ねの並列状態でラップ巻きし、この金属化テープ層の上に前記金属遮水層を形成したことを特徴とする金属遮水層付きケーブル。
【請求項2】 ケーブルコアの外周に内側から順に少なくとも遮蔽層と、金属ラミネートテープを縦添いした金属遮水層と、シースとを備えた金属遮水層付きケーブルにおいて、前記遮蔽層の上に、紙又はプラスチックからなるベーステープの両面に金属箔を貼り合わせた金属化テープをラップ巻きし、この金属化テープ層の上に前記金属遮水層を形成したことを特徴とする金属遮水層付きケーブル。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3465237号(P3465237)
【登録日】平成15年8月29日(2003.8.29)
【発行日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−61257(P2003−61257)
【出願日】平成15年3月7日(2003.3.7)
【審査請求日】平成15年7月2日(2003.7.2)
【早期審査対象出願】早期審査対象出願
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【参考文献】
【文献】特開2001−6449(JP,A)
【文献】特開2001−291436(JP,A)
【文献】特開2002−75072(JP,A)
【文献】特開 平8−45360(JP,A)
【文献】特開 平8−329741(JP,A)
【文献】特開 平10−269860(JP,A)
【文献】特開 平11−339577(JP,A)
【文献】実開 昭62−175521(JP,U)
【文献】実開 平3−40720(JP,U)
【文献】実開 平5−11220(JP,U)
【文献】実開 昭58−154514(JP,U)
【文献】実開 昭59−2023(JP,U)