説明

金属錯体色素、光電変換素子及び光電気化学電池

【課題】変換効率が高く、さらに耐久性に優れた金属錯体色素、光電変換素子及び光電気化学電池を提供する。
【解決手段】一般式(I)で表される構造の配位子LLが少なくとも1つ以上金属原子に配位してなることを特徴とする金属錯体色素。


[ただし、R、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。Ar及びArは独立にアリール基、ヘテロアリール基を表す。Zaは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。S0は0または1を表す。RはZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変換効率が高く、耐久性に優れた、金属錯体色素、光電変換素子及び光電気化学電池に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。この光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたものなどの様々な方式が実用化されている。中でも、非枯渇性の太陽エネルギーを利用した太陽電池は、燃料が不要であり、無尽蔵なクリーンエネルギーを利用したものとして、その本格的な実用化が大いに期待されている。この中でも、シリコン系太陽電池は古くから研究開発が進められてきた。各国の政策的な配慮もあって普及が進んでいる。しかし、シリコンは無機材料であり、スループット及び分子修飾には自ずと限界がある。
【0003】
そこで色素増感型太陽電池の研究が精力的に行われている。とくに、スイスのローザンヌ工科大学のGraetzel等がポーラス酸化チタン薄膜の表面にルテニウム錯体からなる色素を固定した色素増感型太陽電池を開発し、アモルファスシリコン並の変換効率を実現した。これにより、色素増感型太陽電池が一躍世界の研究者から注目を集めるようになった。
【0004】
特許文献1には、この技術を応用し、ルテニウム錯体色素によって増感された半導体微粒子を用いた色素増感光電変換素子が記載されている。
また、資源的制約が小さく廉価な有機色素を増感剤として用い、十分な変換効率を有する光電変換素子の開発が望まれており、有機色素を増感剤として用いたものが報告されている(特許文献2参照)。
光電変換素子において、広波長域の光を有効に利用することができれば、変換効率を向上させることが可能である。しかし上記の特許文献1および2記載の色素では、長波長域の光の吸収性能は十分とはいえない。また、従来の色素を用いた光電変換素子及び光電気化学電池は、長時間の使用によりその性能が低下しやすく、耐久性が十分とはいえないという点で十分でなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5463057号明細書
【特許文献2】特開2000−353553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、変換効率が高く、さらに耐久性に優れた金属錯体色素、光電変換素子及び光電気化学電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、イミノ基に置換基を導入した特定のイミノピリジン化合物を配位子とする金属錯体色素が、長波長域の光の吸収性能に優れることを見出した。この金属錯体色素は、光電変換素子及び光電気化学電池に使用したときに、光吸収波長域拡大(長波長化)効果を奏し、光電変換素子及び光電気化学電池の変換効率を向上させるともに耐久性の優れるものとし得ることを見出した。本発明はこの知見に基づきなされたものである。
【0008】
本発明の課題は、以下の手段によって達成された。
(1)下記一般式(I)で表される構造の配位子LLが少なくとも1つ以上金属原子に配位してなることを特徴とする金属錯体色素、
【0009】
【化1】

[ただし、
、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
Ar及びArは独立にアリール基、ヘテロアリール基を表す。
Zaは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。
S0は0または1を表す。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
、R、Ar、Ar及びZaのうち少なくとも一つは酸性基を有する。]
(2)一般式(I)で表される構造の配位子LLが下記一般式(II)、(III)又は(IV)で表される構造であることを特徴とする(1)に記載の金属錯体色素、
【0010】
【化2】


[ただし、
、Rは独立してアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
Ar及びArは独立にアリール基、ヘテロアリール基を表す。
Zaは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。
S1は0または1を表す。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
,R、Ar,Ar及びZaのうち少なくとも一つは酸性基を有する。]
【0011】
【化3】

(ただし、
は酸性基を表す。
Zbは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。
Ar及びArは独立にアリール基、へテロアリール基を表す。
S2は0または1を表す。)
【0012】
【化4】

(ただし、Zcは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。Ar及びArは独立にへテロアリール基または下記一般式(V)で示される基を表す。Ar、Arのうち少なくとも一つは酸性基を有する。S3は0または1を表す。]
【0013】
【化5】

[一般式(V)中、R、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、酸性基を表す。RとR、RとRは互いに環を形成してもよい。Aは酸性基を表す。一般式(V)は左側の結合手が単結合を介して一般式(IV)のNと結合する。]
(3)前記金属錯体色素が、下記一般式(VI)で表されることを特徴とする(1)または(2)に記載の金属錯体色素、
【0014】
【化6】

[ただし、Mは金属原子を表す。LLは一般式(I)と同義であり、pは1〜3の整数を表す。LLは下記一般式(VII)で表され、qは0〜2の整数を表す。Zは1座または2座の配位子を表し、rは0〜4の整数を表す。rが2のときZは同じでも異なっていてもよく、Z同士が連結していてもよい。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【0015】
【化7】

[R及びR10は独立に置換基を有してよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、酸性基を表す。L及びLは独立に単結合、エテニレン基、エチニレン基、アリーレン基及び/またはヘテロアリーレン基からなる2価の連結基を表す。n1は0または1を表す。A及びAは独立に酸性基を表し、a1及びa2は各々0〜3の整数を表す。R11及びR12は独立に置換基を表し、b1及びb2は各々0〜3の整数を表す。b1が1以上のときR11はLと連結して環を形成していてもよく、b2が1以上のときR12はLと連結して環を形成していてもよい。b1が2以上のとき、R11同士は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b2が2以上のときR12同士は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b1及びb2がともに1以上のときR11とR12が連結して環を形成していてもよい。]
(4)前記Mが、Ru、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、W又はCoであることを特徴とする(3)記載の金属錯体色素、
(5)前記MがRu又はOsであることを特徴とする(4)記載の金属錯体色素、
(6)前記一般式(VI)において、p=2かつq=0、又はp=1かつq=1であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1項記載の金属錯体色素、
(7)前記Za、Zb及びZcが、6員環であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれか1項記載の金属錯体色素、
(8)前記一般式(VI)において、LLが前記一般式(II)又は(III)で表されることを特徴とする(1)〜(7)のいずれか1項記載の金属錯体色素、
(9)前記一般式(VI)において、LLが前記一般式(II)で表されることを特徴とする(8)記載の金属錯体色素、
(10)(1)〜(9)のいずれか1項に記載の構造で表される光電変換素子用色素。
(11)(1)〜(10)のいずれか1項記載の金属錯体色素と半導体微粒子とを有する感光体層を具備することを特徴とする光電変換素子、
(12)(1)〜(10)のいずれか1項記載の金属錯体色素及び下記一般式(VIII)で表される金属錯体色素からそれぞれ選ばれた少なくとも1種類ずつの色素と、半導体微粒子とを含有する感光体を具備してなることを特徴とする光電変換素子、
(LLm1(LLm2(Xm3・CI (一般式VIII)
[ただし、Mは一般式(VI)のMと同義である。LLは前記一般式(VI)中のLLと同義である。LLは下記一般式(IX)で表される2座又は3座の配位子である。Xは一般式(VI)のZと同義である。m1は0〜3の整数を表す。m1が2以上のときLL同士は同じでも異なっていてもよい。m2は0〜2の整数を表す。m2が2以上のときLL同士は同じでも異なっていてもよい。m3は0〜3の整数を表す。m3が2以上のときX同士同じでも異なっていてもよい。X同士が連結していてもよい。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【0016】
【化8】

[ただし、Zd、ZeおよびZfはそれぞれ独立に5または6員環を形成しうる非金属原子群を表し、cは0または1を表す。]
(12)(10)又は(11)記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、長波長域での光の吸収性能に優れた金属錯体色素を提供することができる。またこの金属錯体色素を用いることにより変換効率が高く、耐久性に優れた光電変換素子及び光電気化学電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明によって製造される光電変換素子の一実施態様について模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明者等は、鋭意検討を重ねた結果、イミノ基に置換基を導入した特定のイミノピリジン化合物を配位子として有する金属錯体色素が、長波長域の光を吸収することができ、光吸収波長域を拡大できることを見出した。この金属錯体色素を光電変換素子及び光電気化学電池に用いることで、光吸収波長域拡大(長波長化)効果により、光電変換素子及び光電気化学電池の変換効率を向上できることを見出した。さらに、この光電変換素子及び光電気化学電池が、耐久性にも優れることを見出した。本発明はこれらの知見に基づきなされたものである。
【0020】
本発明の光電変換素子の好ましい実施態様を、図面を参照して説明する。図1に示すように、光電変換素子10は、導電性支持体1、導電性支持体1上にその順序で配された、感光体層2、電荷移動体層3、及び対極4からなる。前記導電性支持体1と感光体2とにより受光電極5を構成している。その感光体2は導電性微粒子22と増感色素21とを有しており、色素21はその少なくとも一部において導電性微粒子22に吸着している(色素は吸着平衡状態になっており、一部電荷移動体層に存在していてもよい。)。感光体2が形成された導電性支持体1は光電変換素子10において作用電極として機能する。この光電変換素子10を外部回路6で仕事をさせるようにして、光電気化学電池100として作動させることができる。
【0021】
受光電極5は、導電性支持体1および導電性支持体上に塗設される色素21の吸着した半導体微粒子22の感光層(半導体膜)2よりなる電極である。感光体(半導体膜)2に入射した光は色素を励起する。励起色素はエネルギーの高い電子を有している。そこでこの電子が色素21から半導体微粒子22の伝導帯に渡され、さらに拡散によって導電性支持体1に到達する。このとき色素21の分子は酸化体となっている。電極上の電子が外部回路で仕事をしながら色素酸化体に戻ることにより、光電気化学電池として作用する。この際、受光電極5はこの電池の負極として働く。
【0022】
本実施形態の光電変換素子は、導電性支持体上に後述の複合増感色素が吸着された多孔質半導体微粒子の層を有する感光体を有する。このとき色素において一部電解質中に解離したもの等があってもよいことは上述のとおりである。感光体は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。本実施形態の光電変換素子の感光体には、特定の金属錯体色素が吸着した半導体微粒子を含み、感度が高く、光電気化学電池として使用する場合に、高い変換効率を得ることができ、さらに高い耐久性を有する。
【0023】
本発明における金属錯体色素(A1)は、下記一般式(I)、好ましくは一般式(II)〜(IV)で表される構造の配位子LLを有する。金属錯体色素(A1)は、配位子LLとして、例えば、下記一般式(I)のうち、同じ配位子を複数有していてもよいし、下記一般式(I)のうち、異なる配位子を1つ有していてもよい。
【0024】
【化9】

【0025】
【化10】

【0026】
一般式(I)において、R、Rは独立して水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、2−チエニル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルキルチオ基、例えばメタンチオ、エチレンジチオ等)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20のアリールチオ基、例えば、ベンゼンチオ、1,2−フェニレンジチオ等)を表す。R、Rとして好ましくはアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、さらに好ましくはアルキル基、アリール基、特に好ましくはアルキル基である。
一般式(II)において、RおよびRは一般式(I)のRおよびRと同義である。ただし、RおよびRは水素原子を含まない。
一般式(I)および(II)においてAr及びArは独立にアリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロアリール基、例えば2−ピリジル、2−チエニル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル等)を表す。この中で好ましくは2−チエニル、2−イミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、さらに好ましくは2−チエニル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、特に好ましくは2−チエニルである。
Zaは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。その中でも特に好ましいのは6員環である。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環、チアゾール環又はピリジン環がより好ましく、さらに好ましくはピリジン環である。。
S0及びS1は0または1を表す。特に好ましいのは0である。
はZaまたはArと環を形成しても良い。ただし、形成する環として芳香環は除く。形成する環として好ましくは5〜7員環、さらに好ましくは5,6員環、特に好ましくは6員環である。RはZaまたはArと環を形成しても良い。ただし、形成する環として芳香環は除く。形成する環として好ましくは5〜7員環、さらに好ましくは5、6員環、特に好ましくは6員環である。
,R、Ar、Ar、Zaのうち少なくとも一つは酸性基を有する。酸性基とは、解離してプロトンを与えることができる基をいう。酸性基は、解離し得るプロトンを有しているか、それに代えてその塩の形をとっていてもよい。例えば、基を構成する水素原子の中で最も酸性の強い水素原子のpKaが9以下の基である。酸性基の例としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、、リン酸基、スクアリン酸基、が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。
本発明において、イミノ基に置換基RまたはRを導入することで通常電解液内に存在する求核種(水、溶剤、添加剤)によって求核攻撃を受けやすいイミノ基を求核種からブロックする効果があり、耐久性が向上する。
【0027】
【化11】

【0028】
一般式(III)において、Aは酸性基を表す。本発明において酸性基とは、解離してプロトンを与えることができる基をいう。酸性基は、解離し得るプロトンを有しているか、それに代えてその塩の形をとっていてもよい。例えば、基を構成する水素原子の中で最も酸性の強い水素原子のpKaが9以下の基である。酸性基の例としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、、リン酸基、スクアリン酸基、が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。
本発明において、イミノ基に置換基RまたはRを導入することで通常電解液内に存在する求核種(水、溶剤、添加剤)によって求核攻撃を受けやすいイミノ基を求核種からブロックする効果があり、耐久性が向上する。
Zbは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。その中でも特に好ましいのは6員環である。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環、チアゾール環又はピリジン環がより好ましく、さらに好ましくはピリジン環である。
Ar及びArは独立にアリール基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリール基、例えば、フェニル、1−ナフチル、4−メトキシフェニル、2−クロロフェニル、3−メチルフェニル等)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロアリール基、例えば2−ピリジル、2−チエニル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル等)を表す。この中で好ましくは2−チエニル、2−イミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、さらに好ましくは2−チエニル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、特に好ましくは2−チエニルである。S2は0または1を表す。特に好ましいのは0である。
本発明において、一般式(III)のように、Zb環に酸性基を導入することで、酸化物半導体に対する電子注入効率向上の効果により変換効率が向上する。
【0029】
【化12】

【0030】
一般式(IV)において、Zcは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。その中でも特に好ましいのは6員環である。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環、チアゾール環又はピリジン環がより好ましく、さらに好ましくはピリジン環である。
Ar及びArは独立にへテロアリール基または一般式(V)を表す。特に、長波化の点から、ヘテロアリール基が好ましい。
Ar、Arのうち少なくとも一つは酸性基を有する。この酸性基は上述したAと同義であり、好ましい範囲も同じである。
S3は0または1を表す。特に好ましいのは0である。
【0031】
【化13】

【0032】
一般式(V)中、R、Rは独立して、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル等、さらに好ましくは2−チエニル、2−イミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、さらに好ましくは2−チエニル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、特に好ましくは2−チエニルである。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)を表す。この中で好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコシキ基、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、特に好ましくは水素原子である。
、Rは独立して水素原子、アルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、2−チエニル、4−ピリジル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−ベンゾチアゾリル、2−オキサゾリル等)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜20のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロピルオキシ、ベンジルオキシ等)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜26のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、1−ナフチルオキシ、3−メチルフェノキシ、4−メトキシフェノキシ等)、酸性基(好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、リン酸基、スクアリン酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、ホスホン基、特に好ましくはカルボン酸基である)を表す。この中で好ましくは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ヘテロ環基、酸性基、さらに好ましくは水素原子、アルキル基、酸性基、特に好ましくは水素原子である。
とR、RとRは互いに環を形成してもよい。形成する環として好ましくは、5〜10員環、さらに好ましくは5〜8員環、特に好ましくは5員環または6員環である。
5員環の例として例えば、シクロペンタン、テトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,3−オキサチオラン、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール等が挙げられ、好ましくはシクロペンタン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、チオフェン、さらに好ましくは、シクロペンタン、1,3−ジオキソラン、特に好ましくはシクロペンタンである。
6員環の例として例えば、シクロヘキサン、ベンゼン、ピラン、ジヒドロピラン、ジオキサン、ピリジン、ピラジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン等が挙げられ、好ましくはシクロヘキサン、ベンゼン、ジオキサン、ピペラジン、さらに好ましくはシクロヘキサン、ベンゼン、特に好ましくはシクロヘキサンである。
は酸性基を表す。この酸性基は上述したAと同義であり、好ましい範囲も同じである。
一般式(V)は左側の結合手が単結合を介して一般式(IV)のNと結合する。
一般式(IV)において、ArおよびArが一般式(V)で表されるとき、酸性度向上の点から、酸性基はメタ位が好ましい。メタ位の場合、パラ位に比べてイミノ基の窒素原子による誘引効果が強く働く。このため酸性度が高くなり、導電体支持体上に形成された多孔質半導体微粒子への吸着力が向上する。また、酸性基がオルト位の場合、酸性基がイミノ基に求核攻撃し、分子内環化するため好ましくない。
【0033】
本発明において、一般式(I)〜(IV)で表される配位子を有する金属錯体は、下記一般式(VI)で表されることが好ましい。
【0034】
【化14】

【0035】
一般式(VI)において、Mは金属原子を表す。Mとして、好ましくはRu、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、WまたはCoである。酸化物半導体である酸化チタンとのエネルギーレベルのマッチングの観点から、RuまたはOsが好ましい。
配位子LLは、2座または3座の配位子により表される2座または3座の配位子であり、好ましくは2座配位子である。配位子LLの数を表すpは1以上の整数であり、1又は2であるのが好ましく、1がより好ましい。pが2以上のとき、LLは同じでも異なっていてもよい。また、配位子LLの数を表すqは0以上の整数である。pが1のときqは好ましくは0または1である。pが2のときqは0が好ましい。
本発明において、耐久性向上の点から、LLは前記一般式(II)で表されることが好ましい。変換効率向上の点からは(II)、(III)、(IV)で表されることが好ましく、前記一般式(III)で表されることが特に好ましい。
【0036】
【化15】

【0037】
LLは一般式(VII)で表される。一般式(VII)中、R及びR10は独立に置換基を有してよいアルキル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12、特に好ましくは1〜8のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜30、より好ましくは6〜20、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数2〜20のヘテロ環基、例えば、2−ピリジル、4−ピリジル、2−チエニル、2−イミダゾリル、2−ベンゾイミダゾリル、2−チアゾリル、2−オキサゾリル等)、酸性基(上述のAと同義であり、好ましい範囲も同じである。)を表す。好ましくはアルキル基、ヘテロ環基、酸性基、さらに好ましくはヘテロ環基、酸性基である。この中でも好ましくは2−チエニル、カルボン酸基である。RとR10は、直接ベンゼン環に結合していてもよい。RとR10は、L及び/又はLを介してピリジン環に結合していてもよい。
ここでL及びLはそれぞれ独立に、単結合、エテニレン基、エチニレン基、アリーレン基及び/またはヘテロアリーレン基からなる2価の連結基を表す。この中で好ましくは単結合、エテニレン基、アリーレン基、ヘテロアリーレン基であり、さらに好ましくは単結合、エテニレン基、ヘテロアリーレン基、特に好ましくは単結合、ヘテロアリーレン基、最も好ましくは単結合である。単結合は求核種からの攻撃を最も受けにくく、耐久性向上の観点から最適である。
【0038】
式中、R11、R12はそれぞれ独立に置換基を表す。
上記置換基(以下、置換基Wとする。)としては例えば下記に示すものが挙げられる。
アルキル基〔直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルキル基を表す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。上記で説明した置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を表す。〕、アルケニル基[直鎖、分岐、環状の置換もしくは無置換のアルケニル基を表す。それらは、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。]、アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、4−メトキシフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)、ヒドロキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ、2−エチルヘキシルオキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、4−ヘキシルフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、
アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、アリール及びヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、
ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルホ基、アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N‘−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、スルフィノ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換または無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換もしくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合しているヘテロ環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2―フリルカルボニル)、カルボキシル基、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、ホスフォ基、ホスフォニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフォニル基、例えば、ホスフォニル、オクチルオキシホスフィニル、メトキシホスフォニル、エトキシホスフィニル)、ホスフォニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフォニルオキシ基、例えば、フェノキシホスフォニルオキシ、オクチルオキシホスフォニルオキシ、エトキシホスフォニルオキシ)、ホスフォニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換もしくは無置換のホスフォニルアミノ基、例えば、メトキシホスフォニルアミノ、ジメチルアミノホスフォニルアミノ)、シアノ基、ニトロ基、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)などが挙げられる。
また、置換基は更に置換されていてもよい。その際、置換基の例としては上述の置換基Wを挙げることができる。
11、R12として好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、、アルコキシカルボニル基、アミノ基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、シアノ基、又はハロゲン原子であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、、アミノ基、、シアノ基又はハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、、アミノ基であり、最も好ましくはアルキル基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基である。
【0039】
配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、これらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また配位子LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよく置換基としては上述した置換基Wが挙げられる。
【0040】
n1は0または1であり、a1及びa2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表す。a1が2以上のときAは同じでも異なっていてもよく、a2が2以上のときAは同じでも異なっていてもよい。a1は0又は1であるのが好ましく、a2は0〜2の整数であるのが好ましい。特に、n1が0のときa2は1又は2であるのが好ましく、n1が1のときa2は0又は1であるのが好ましい。a1とa2の和は0〜2の整数であるのが好ましい。
【0041】
b1及びb2はそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、0〜2の整数であるのが好ましい。b1が2以上のとき、R11は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b2が2以上のとき、R12は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。またb1及びb2がともに1以上のとき、R11とR12が連結して環を形成していてもよい。形成する環の好ましい例としては、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環、ピロール環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環等が挙げられる。
【0042】
a1とa2の和が1以上であって、配位子LLが酸性基を少なくとも1個有するときは、一般式(VI)中のpは2または3であるのが好ましく、2であるのがより好ましい。
【0043】
一般式(VII)中のA及びAはそれぞれ独立に酸性基を表し、本発明において酸性基とは、解離してプロトンを与えることができる基をいう。酸性基は、解離し得るプロトンを有しているか、それに代えてその塩の形をとっていてもよい。例えば、基を構成する水素原子の中で最も酸性の強い水素原子のpKaが13以下の基である。酸性基の例としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、アルキルスルフォニルアミノ基、リン酸基、スクアリン酸基、ケイ酸基、ホウ酸基が挙げられ、好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、フェノール性水酸基、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、特に好ましくはカルボン酸基である。
本発明において、酸化物半導体である酸化チタンとのエネルギーレベルのマッチングの観点からの点から、p=2かつq=0又はp=1かつq=1であることが好ましい。
【0044】
一般式(VI)中、Zは1座又は2座の配位子を表す。配位子Zの数を表すrは0〜4の整数を表し、rは好ましくは0から3である。Xが単座配位子のとき、rは2または3であるのが好ましく、Zが2座配位子のとき、rは1であるのが好ましい。rが2のとき、Zは同じでも異なっていてもよく、Z同士が連結していてもよい。
【0045】
配位子Zは、好ましくはアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、セレノシアネート基、イソセレノシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、イソシアノ基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子である。
配位子Zは、より好ましくは、アシルオキシ基、アシルアミノオキシ基、ジチオカルバメート基、セレノシアネート基、イソセレノシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、イソシアノ基、シアノ基またはアリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、ハロゲン原子あるいは、1,3−ジケトンまたはチオ尿素からなる配位子である。
配位子Zは、さらに好ましくは、ジチオカルバメート基、セレノシアネート基、イソセレノシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、イソシアノ基、シアノ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子または1,3−ジケトンからなる配位子である。
配位子Zは、特に好ましくは、セレノシアネート基、イソセレノシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基およびイソシアネート基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、ハロゲン原子、1,3−ジケトンからなる配位子である。
配位子Zは、最も好ましくは、イソチオシアネート基、ハロゲン原子(好ましくはヨウ素原子)である。
なお配位子Zがアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルキレン基等を含む場合、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい(置換基として上述した置換基Wが挙げられる。)。またアリール基、ヘテロ環基、シクロアルキル基等を含む場合、それらは置換されていても無置換でもよく(置換基として上述した置換基Wが挙げられる。)、単環でも縮環していてもよい。
【0046】
配位子Zが2座配位子のとき、Xはアシルオキシ基、アシルチオ基、チオアシルオキシ基、チオアシルチオ基、アシルアミノオキシ基、チオカルバメート基、ジチオカルバメート基、チオカルボネート基、ジチオカルボネート基、トリチオカルボネート基、アシル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルコキシ基およびアリールオキシ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいは1,3−ジケトン、カルボンアミド、チオカルボンアミド、またはチオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
が1座配位子のとき、Zはセレノシアネート基、イソセレノシアネート基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、シアネート基、イソシアネート基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基からなる群から選ばれた基で配位する配位子、あるいはハロゲン原子、カルボニル、ジアルキルケトン、チオ尿素からなる配位子であるのが好ましい。
【0047】
以下に配位子Zの具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に示す構造式は幾つも取りうる共鳴構造のうちの1つの極限構造にすぎず、共有結合(―で示す)と配位結合(…で示す)の区別も形式的なもので、絶対的な区別を表すものではない。
【0048】
【化16】

【0049】
【化17】

【0050】
CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。一般式(VI)中のCIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。一般に、色素が陽イオン又は陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を有するかどうかは、色素中の金属、配位子および置換基に依存する。置換基が酸性基等の解離性基を有する場合、解離して負電荷を持ってもよく、この場合にも分子全体の電荷はCIにより中和される。
【0051】
対イオンCIが正の対イオンの場合、好ましくはプロトン、無機または有機のアンモニウムイオン、アルカリ金属イオンである。アルカリ金属として好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオン、さらに好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、特に好ましくナトリウムイオンである。無機または有機のアンモニウムイオンとしては、アンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられ、好ましくはアンモニウムイオン、3級及び4級アルキルアンモニウムイオン、さらに好ましくは3及び4級アンモニウムイオン、特に好ましくは4級アンモニウムイオンである。4級アンモニウムイオンとして好ましくはテトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、さらに好ましくはテトラブチルアンモニウムイオン、テトラヘキシルアンモニウムイオン、特に好ましくはテトラブチルアンモニウムイオンである。
【0052】
対イオンCIが負の対イオンの場合、例えば、対イオンCIは、無機陰イオンでも有機陰イオンでもよい。例えば、ハロゲン陰イオン(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン等)、置換アリールスルホン酸イオン(例えばp−トルエンスルホン酸イオン、p−クロロベンゼンスルホン酸イオン等)、アリールジスルホン酸イオン(例えば1,3−ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5−ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6−ナフタレンジスルホン酸イオン等)、アルキル硫酸イオン(例えばメチル硫酸イオン等)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等が挙げられる。さらに電荷均衡対イオンとして、イオン性ポリマーあるいは色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよく、金属錯イオン(例えばビスベンゼン−1,2−ジチオラトニッケル(III)等)も使用可能である。
【0053】
本発明の(A1)金属錯体色素の一般的な製法は後述する例示化合物D−1−2aの合成法である。
【0054】
(A2)前記以外の色素の使用
光電変換素子及び光電気化学電池に使用される色素としては、上記の(A1)金属錯体色素に加えてほかの色素を使用することができる。好ましくは、これらの色素(A1及びA2)を少なくとも1種類ずつ含む色素溶液を調製して使用することが好ましい。
ほかの色素としては、下記一般式(VIII)で表される構造を有するものを挙げることができる。
【0055】
(LLm1(LLm2(Xm3・CI (一般式VIII)
【0056】
一般式(VIII)の構造を有する色素は、金属原子に、配位子LL及び/又は配位子LLと、場合により特定の官能基Xが配位しており、必要な場合はCIにより電気的に中性に保たれている。
【0057】
(A2−1)金属原子M
は一般式(VI)のMと同義である。
【0058】
(A2−2)配位子LL
LLは前記一般式(VI)中のLLと同義である。
【0059】
(A2−3)配位子LL
一般式(VIII)中、LLは2座又は3座の配位子を表す。配位子LLの数を表すm2は0〜2の整数であり、0又は1であるのが好ましく、1であるのが特に好ましい。m2が2のときLLは同じでも異なっていてもよい。ただし、m2と、前述の配位子LLの数を表すm1のうち少なくとも一方は1以上の整数である。
LLは下記一般式(IX)で表される置換基を有していても良い2座または3座の配位子である。
【0060】
【化18】

【0061】
一般式(IX)中、Zd、Ze及びZfはそれぞれ独立に、独立に、それぞれN=C、C=N−C、C=Nとともに、5員環又は6員環を形成しうる非金属原子群を表す。形成される5員環又は6員環は置換されていても無置換でもよく、単環でも縮環していてもよい。Zd、Ze及びZfは炭素原子、水素原子、窒素原子、酸素原子、硫黄原子、リン原子及び/又はハロゲン原子で構成されることが好ましく、芳香族環を形成するのが好ましい。5員環の場合はイミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環又はトリアゾール環を形成するのが好ましく、6員環の場合はピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環又はピラジン環を形成するのが好ましい。なかでもイミダゾール環又はピリジン環がより好ましい。本明細書において、これらの環は、置換もしくは無置換のものをいう。ある環がさらに置換されている場合、前述の置換基Wで置換されていてもよい。
この一般式(IX)で表される配位子は、その上に酸性基を直接もしくは2価の基を介して有していてもよく、酸性基を有しているのが好ましい。
【0062】
一般式(IX)中、cは0または1を表す。cは0であるのが好ましく、LLは2座配位子であるのが好ましい。
【0063】
配位子LLは、下記一般式(17−1)〜(17−8)のいずれかにより表されるのが好ましく、一般式(17−1)、(17−2)、(17−4)又は(17−6)により表されるのがより好ましく、一般式(17−1)又は(17−2)により表されるのが特に好ましく、一般式(17−1)により表されるのが最も好ましい。
【0064】
【化19】

【0065】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R151〜R158はそれぞれ独立に酸性基を有する基を表す。R151〜R158は、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、ヒドロキシル基、ヒドロキサム酸基(好ましくは炭素原子数1〜20のヒドロキサム酸基、例えば―CONHOH、―CONCHOH等)、ホスホリル基(例えば―OP(O)(OH)等)若しくはホスホニル基(例えば―P(O)(OH)等)そのものであるか、あるいはこれらの酸性基を置換基として有する基を表す。
151〜R158は、それ自体が酸性基を表す場合、好ましくはカルボキシル基、ホスホリル基、ホスホニル基等、さらに好ましくはカルボキシル基、ホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基である。
一方、R151〜R158が酸性基を有する基を表す場合、酸性基としては、好ましくはカルボキシル基、ホスホリル基もしくはホスホニル基等、さらに好ましくはカルボキシル基若しくはホスホニル基であり、より好ましくはカルボキシル基であって、これらの酸性基をその上に有する基としては、アルケニレン基(例えば、エチニレン基、シアノエチニレン基など)、ヘテロアリーレン基(例えば、チエニレン基、フリレン基、ピロリレン基など)が挙げられる。
本明細書において、これらの基は、可能であれば置換もしくは無置換のものをいう。ある基がさらに置換されている場合、前述の置換基Wで置換されていてもよい。
【0066】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R159〜R166はそれぞれ独立に置換基を表し、好ましくはアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシル基、スルホンアミド基、アシルオキシ基、カルバモイル基、アシルアミノ基、シアノ基またはハロゲン原子(以上好ましい例は、一般式(3)におけるR103及びR104の場合と同様)であり、より好ましくはアルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基、アシルアミノ基またはハロゲン原子であり、特に好ましくはアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アミノ基またはアシルアミノ基である。本明細書において、これらの基は、置換もしくは無置換のものをいう。ある基がさらに置換されている場合、前述の置換基Wで置換されていてもよい。
【0067】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R167〜R171はそれぞれ独立に水素原子、脂肪族基、芳香族基、炭素原子で結合するヘテロ環基を表す。好ましくは、脂肪族基、芳香族基である。より好ましくはカルボキシル基を有する脂肪族基である。配位子LLがアルキル基、アルケニル基等を含むとき、それらは直鎖状でも分岐状でもよく、置換されていても無置換でもよい。また、LLがアリール基、ヘテロ環基等を含むとき、それらは単環でも縮環でもよく、置換されていても無置換でもよい。
【0068】
一般式(17−1)〜(17−8)中、R151〜R166は図示の都合上1つの環状に置換したように描写しているが、その環上にあっても、あるいは図示されたものとは異なる環状に置換していてももよい。またe1〜e6はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは0〜2の整数を表す。e7及びe8はそれぞれ独立に0〜4の整数を表し、好ましくは0〜3の整数を表す。e9〜e12及びe15はそれぞれ独立に0〜6の整数を表し、e13、e14及びe16はそれぞれ独立に0〜4の整数を表す。e9〜e16はそれぞれ独立に0〜3の整数であるのが好ましい。ここで、「一般式(17−1)〜(17−8)中、R151〜R166は環上のどの位置に結合していてもよい」とは、前述のe1〜e16の数からも分かるように、R151〜R166は図示した1つの環上にその結合位置が限定されないという意味であって、図示した化学式では置換基を描いていなくてもその環上のどの位置であってもR151〜R166が結合していてもよいことを意味する。
【0069】
e1〜e8が2以上のとき、R151〜R158はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、e9〜e16が2以上のとき、R159〜R166はそれぞれ同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0070】
(A2−4)配位子X
は一般式(VI)のZと同義である。
m1は0〜3の整数を表し、m1が2以上のときLL3同士は同じでも異なっていてもよく、
m2は0〜2の整数を表し、m2が2以上のときLL4同士は同じでも異なっていてもよく、
m3は0〜3の整数を表し、m3が2以上のときX同士同じでも異なっていてもよく、X同士が連結していてもよい。
【0071】
(A2−5)対イオンCI
CIは一般式(VI)中のCIと同義である。
【0072】
置換基が解離性基を有することなどにより、一般式(VIII)の色素は解離して負電荷を持ってもよい。この場合、一般式(VIII)の色素全体の電荷はCIにより電気的に中性とされる。
【0073】
一般式(I)〜(IV)の配位子を有する金属錯体色素は、溶液中における長波側極大吸収波長が、400〜1100nmの範囲であり、より好ましくは450〜1050nmの範囲であり、さらに好ましくは500〜1000nmの範囲である。
【0074】
以下に、一般式(I)の配位子を有する金属錯体色素の好ましい具体例を示すが、本発明が以下の具体例に限定されるものではない。さらに、これらの化合物はE体、Z体及びその混合物、光学活性体等の異性体になりえるが、特に限定されない。
【0075】
【化20】

【0076】
【化21】

【0077】
【化22】

【0078】
【化23】

【0079】
【化24】

【0080】
【化25】

【0081】
【化26】

【0082】
【化27】

【0083】
【化28】

【0084】
【化29】

【0085】
一般式(VII)における配位子L及びLの具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。二重結合部位は通常立体障害の少ない構造が安定であるが、E体、Z体のどちらでもよく混合物でもよい。
【0086】
【化30】

【0087】
n20〜n30はそれぞれ1〜4の整数を表す。
【0088】
一般式(VI)における配位子LLの具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。また、これらの酸性基はプロトン非解離体のみ示しているが、これらのプロトン解離体でもよい。
【0089】
【化31】

【0090】
【化32】

【0091】
【化33】

【0092】
【化34】

【0093】
【化35】

【0094】
一般式(VI)における配位子LLの具体例を以下に示すが本発明はこれに限定されるものではない。また、これらの酸性基はプロトン非解離体のみ示しているが、これらのプロトン解離体でもよい。なお、これらの化合物が二重結合を有する場合はシス体、トランス体及びその混合物になり得るが特に限定されない。
【0095】
【化36】

【0096】
【化37】

【0097】
以下に、一般式(I)〜(IV)の配位子を有する金属錯体と同時に使用される、一般式(VIII)の具体例を示すが本発明はこれに限定されるものではない。なお、これらの化合物が二重結合を有する場合はE体、Z体及びその混合物になり得るが特に限定されない。
【0098】
【化38】

【0099】
【化39】

【0100】
本発明の一般式(IV)で表される金属錯体色素は、例えば後述されるD−1−2aおよびD−7−25aのスキームに示すように、イミノ基含有化合物と金属誘導体とを反応させて合成することができる。しかし、本発明は、これらに制限されるものではない。
また、本発明の一般式(VIII)により表される色素は、特開2001−291534号公報や当該公報に引用された方法を参考にして合成することができる。
一般式(VIII)の構造を有する色素は、溶液における極大吸収波長が、好ましくは300〜1000nmの範囲であり、より好ましくは350〜950nmの範囲であり、特に好ましくは370〜900nmの範囲である。
本発明の光電変換素子及び光電気化学電池においては、(A1)一般式(IV)の構造を有する金属錯体色素を必須成分とする色素を用いる。さらに好ましくは、一般式(VIVIII)の構造を有する色素を用いることにより、広範囲の波長の光を効率良く利用することにより、高い変換効率を確保することができる。さらにこれらの色素を併用することにより、変換効率の低下率を低減することできる。
【0101】
一般式(VIII)で示される構造を有する金属錯体色素と、一般式(IV)で表わされる構造を有する色素の配合割合は、前者をR、後者をSとすると、モル%の比で、R/S=90/10〜10/90、好ましくはR/S=80/20〜20/80、さらに好ましくはR/S=70/30〜30/70、より一層好ましくはR/S=60/40〜40/60、最も好ましくはR/S=55/45〜45/55であり、通常は両者を等モル使用する。
【0102】
(B)電荷移動体層
本発明の光電変換素子に用いられる電荷移動体層には、電解質組成物からなる層が適用できる。その酸化還元対として、例えばヨウ素とヨウ化物(例えばヨウ化リチウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、ヨウ化テトラプロピルアンモニウム等)との組み合わせ、アルキルビオローゲン(例えばメチルビオローゲンクロリド、ヘキシルビオローゲンブロミド、ベンジルビオローゲンテトラフルオロボレート)とその還元体との組み合わせ、ポリヒドロキシベンゼン類(例えばハイドロキノン、ナフトハイドロキノン等)とその酸化体との組み合わせ、2価と3価の鉄錯体(例えば赤血塩と黄血塩)の組み合わせ等が挙げられる。これらのうちヨウ素とヨウ化物との組み合わせが好ましい。
ヨウ素塩のカチオンは5員環又は6員環の含窒素芳香族カチオンであるのが好ましい。特に、一般式(2)により表される化合物がヨウ素塩でない場合は、WO95/18456号、特開平8−259543号、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等のヨウ素塩を併用するのが好ましい。
本発明の光電変換素子に使用される電解質組成物中には、ヘテロ環4級塩化合物と共にヨウ素を含有するのが好ましい。ヨウ素の含有量は電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0103】
本発明の光電変換素子に用いられる電解質組成物は溶媒を含んでいてもよい。電解質組成物中の溶媒含有量は組成物全体の50質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましく、10質量%以下であるのが特に好ましい。
溶媒としては低粘度でイオン移動度が高いか、高誘電率で有効キャリアー濃度を高めることができるか、あるいはその両方であるために優れたイオン伝導性を発現できるものが好ましい。このような溶媒としてカーボネート化合物(エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等)、複素環化合物(3−メチル−2−オキサゾリジノン等)、エーテル化合物(ジオキサン、ジエチルエーテル等)、鎖状エーテル類(エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等)、アルコール類(メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等)、多価アルコール類(エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等)、ニトリル化合物(アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル、ビスシアノエチルエーテル等)、エステル類(カルボン酸エステル、リン酸エステル、ホスホン酸エステル等)、非プロトン性極性溶媒(ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルフォラン等)、水、特開2002−110262記載の含水電解液、特開2000−36332号公報、特開2000−243134号公報、及び再公表WO/00−54361号公報記載の電解質溶媒などが挙げられる。これらの溶媒は二種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
また、電解質溶媒として、室温において液体状態であり、及び/又は室温よりも低い融点を有する電気化学的に不活性な塩を用いても良い。例えば、1−エチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート、1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムトリフルオロメタンスルホネート等にイミダゾリウム塩、ピリジニウム塩などの含窒素ヘテロ環四級塩化合物、又はテトラアルキルアンモニウム塩などが挙げられる。
【0105】
本発明の光電変換素子に用いられる電解質組成物には、ポリマーやオイルゲル化剤を添加したり、多官能モノマー類の重合やポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)してもよい。
【0106】
ポリマーを添加することにより電解質組成物をゲル化させる場合、Polymer Electrolyte Reviews−1及び2(J. R. MacCallumとC. A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物等を添加することができる。この場合、ポリアクリロニトリル又はポリフッ化ビニリデンを用いるのが好ましい。
【0107】
オイルゲル化剤を添加することにより電解質組成物をゲル化させる場合は、オイルゲル化剤としてJ. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Soc., 46779 (1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 390 (1993)、Angew. Chem. Int.Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 885, (1996)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 545, (1997)等に記載された化合物を使用することができ、アミド構造を有する化合物を用いるのが好ましい。
【0108】
多官能モノマー類の重合によって電解質組成物をゲル化する場合は、多官能モノマー類、重合開始剤、電解質及び溶媒から溶液を調製し、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法等の方法により色素を担持した電極上にゾル状の電解質層を形成し、その後多官能モノマーのラジカル重合によってゲル化させる方法が好ましい。多官能モノマー類はエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート等が好ましい。
【0109】
本発明の電解質組成物には、金属ヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等)、金属臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr 2等)、4級アンモニウム臭素塩(テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等)、金属錯体(フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩、フェロセン−フェリシニウムイオン等)、イオウ化合物(ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等)、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等を添加してよい。これらは混合して用いてもよい。
【0110】
また、本発明ではJ. Am. Ceram. Soc., 80, (12), 3157−3171 (1997)に記載のt−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を添加してもよい。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。
また、本発明の電解質としては、正孔導体物質を含む電荷輸送層を用いても良い。正孔導体物質として、9,9’−スピロビフルオレン誘導体などを用いることができる。
【0111】
電気化学素子の構成として、導電性支持体(電極層)、光電変換層(感光体層及び電荷移動体層)、ホール輸送層、伝導層、対極層を順次に積層することができる。p型半導体として機能するホール輸送材料をホール輸送層としてもちいることができる。好ましいホール輸送層としては、例えば無機系又は有機系のホール輸送材料を用いることができる。無機系ホール輸送材料としては、CuI、CuO,NiO等が挙げられる。また、有機系ホール輸送材料としては、高分子系と低分子系のものが挙げられ、高分子系のものとしては、例えばポリビニルカルバゾール、ポリアミン、有機ポリシラン等が挙げられる。また、低分子系のものとしては、例えばトリフェニルアミン誘導体、スチルベン誘導体、ヒドラゾン誘導体、フェナミン誘導体等が挙げられる。この中でも有機ポリシランは、従来の炭素系高分子と異なり、主鎖Si連鎖を有する高分子である。そして主鎖Siに沿って非局化されたσ電子が光伝導に寄与するため、高いホール移動度を有する[Phys.Rev.B,35,2818(1987)]ので好ましい。
本発明における伝導層は、導電性のよいものであれば特に限定されないが、例えば無機導電性材料、有機導電性材料、導電性ポリマー、分子間電荷移動錯体等が挙げられる。中でも分子間電荷移動錯体が好ましい。ここで、分子間電荷移動錯体は、ドナー材料とアクセプター材料とから形成されるものである。また、有機ドナーと有機アクセプターを好ましく用いることができる。
【0112】
ドナー材料は、分子構造内で電子がリッチなものが好ましい。例えば、有機ドナー材料としては、分子のπ電子系に、置換若しくは無置換アミン基、水酸基、エーテル基、セレン又は硫黄原子を有するものが挙げられ、具体的には、フェニルアミン系、トリフェニルメタン系、カルバゾール系、フェノール系、テトラチアフルバレン系材料が挙げられる。アクセプター材料としては、分子構造内で電子不足なものが好ましい。例えば、有機アクセプター材料としては、フラーレン、分子のπ電子系にニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はハロゲン基等の置換基を有するものが挙げられ、具体的にはPCBM、ベンゾキノン系、ナフトキノン系等のキノン系、フロオレノン系、クロラニル系、ブロマニル系、テトラシアノキノジメタン系、テトラシアノンエチレン系等が挙げられる。
なお、伝導層の厚みは、特に限定されないが、多孔質を完全に埋めることができる程度が好ましい。
【0113】
(C)導電性支持体
図1に示すように、本発明の光電変換素子には、導電性支持体1上には多孔質の半導体微粒子22に色素21が吸着された感光体2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子の分散液を導電性支持体に塗布・乾燥後、本発明の色素溶液に浸漬することにより、感光層を製造することができる。
導電性支持体としては、金属のように支持体そのものに導電性があるものか、または表面に導電膜層を有するガラスや高分子材料を使用することができる。導電性支持体は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上が特に好ましい。導電性支持体としては、ガラスや高分子材料に導電性の金属酸化物を塗設したものを使用することができる。このときの導電性の金属酸化物の塗布量は、ガラスや高分子材料の支持体1m2当たり、0.1〜100gが好ましい。透明導電性支持体を用いる場合、光は支持体側から入射させることが好ましい。好ましく使用される高分子材料の一例として、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAR)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。導電性支持体上には、表面に光マネージメント機能を施してもよく、例えば、特開2003−123859記載の高屈折膜及び低屈性率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜、特開2002−260746記載のライトガイド機能が上げられる。
この他にも、金属支持体も好ましく使用することができる。その一例としては、チタン、アルミニウム、銅、ニッケル、鉄、ステンレス、銅を挙げることができる。これらの金属は合金であってもよい。さらに好ましくは、チタン、アルミニウム、銅が好ましく、特に好ましくは、チタンやアルミニウムである。
【0114】
導電性支持体上には、紫外光を遮断する機能を持たせることが好ましい。例えば、紫外光を可視光に変えることが出来る蛍光材料を透明支持体中または、透明支持体表面に存在させる方法や紫外線吸収剤を用いる方法も挙げられる。
導電性支持体上には、さらに特開平11−250944号公報等に記載の機能を付与してもよい。
【0115】
好ましい導電膜としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素、もしくは導電性の金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。
導電膜層の厚さは0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることが更に好ましく、特に好ましくは0.05〜20μmである。
導電性支持体は表面抵抗が低い程よい。好ましい表面抵抗の範囲としては50Ω/cm2以下であり、さらに好ましくは10Ω/cm2以下である。この下限に特に制限はないが、通常0.1Ω/cm2程度である。
【0116】
導電膜の抵抗値はセル面積が大きくなると大きくなる為、集電電極を配置してもよい。支持体と透明導電膜の間にガスバリア膜及び/又はイオン拡散防止膜を配置しても良い。ガスバリア層としては、樹脂膜や無機膜を使用することができる。
また、透明電極と多孔質半導体電極光触媒含有層を設けてもよい。透明導電層は積層構造でも良く、好ましい方法としてたとえば、ITO上にFTOを積層することができる。
【0117】
(D)半導体微粒子
図1に示すように、本発明の光電変換素子には、導電性支持体1上には多孔質の半導体微粒子22に色素21が吸着された感光層2が形成されている。後述する通り、例えば、半導体微粒子の分散液を前記の導電性支持体に塗布・乾燥後、本発明の色素溶液に浸漬することにより、感光体を製造することができる。
半導体微粒子としては、好ましくは金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)またはペロブスカイトの微粒子が用いられる。金属のカルコゲニドとしては、好ましくはチタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。ペロブスカイトとしては、好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が挙げられる。これらのうち酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化タングステンが特に好ましい。
【0118】
半導体には伝導に関わるキャリアーが電子であるn型とキャリアーが正孔であるp型が存在するが、本発明の素子ではn型を用いることが変換効率の点で好ましい。n型半導体には、不純物準位をもたず伝導帯電子と価電子帯正孔によるキャリアーの濃度が等しい固有半導体(あるいは真性半導体)の他に、不純物に由来する構造欠陥により電子キャリアー濃度の高いn型半導体が存在する。本発明で好ましく用いられるn型の無機半導体は、TiO、TiSrO、ZnO、Nb、SnO、WO、Si、CdS、CdSe、V、ZnS、ZnSe、SnSe、KTaO、FeS、PbS、InP、GaAs、CuInS、CuInSeなどである。これらのうち最も好ましいn型半導体はTiO、ZnO、SnO、WO、ならびにNbである。また、これらの半導体の複数を複合させた半導体材料も好ましく用いられる。
【0119】
半導体微粒子の粒径は、半導体微粒子分散液の粘度を高く保つ目的で、一次粒子の平均粒径が2nm以上50nm以下であることが好ましく、また一次粒子の平均粒径が2nm以上30nm以下の超微粒子であることがより好ましい。粒径分布の異なる2種類以上の微粒子を混合してもよく、この場合小さい粒子の平均サイズは5nm以下であるのが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、上記の超微粒子に対して平均粒径が50nmを越える大きな粒子を、低含率で添加、又は別層塗布することもできる。この場合、大粒子の含率は、平均粒径が50nm以下の粒子の質量の50%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。上記の目的で添加混合する大粒子の平均粒径は、100nm以上が好ましく、250nm以上がより好ましい。
【0120】
光散乱用の大粒子を用いることで、ヘイズ率60%以上となることが好ましい。ヘイズ率とは(拡散透過率)÷(全光透過率)で表される。
半導体微粒子の作製法としては、作花済夫の「ゾル・ゲル法の科学」アグネ承風社(1998年)等に記載のゲル・ゾル法が好ましい。またDegussa社が開発した塩化物を酸水素塩中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。半導体微粒子が酸化チタンの場合、上記ゾル・ゲル法、ゲル・ゾル法、塩化物の酸水素塩中での高温加水分解法はいずれも好ましいが、さらに清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997年)に記載の硫酸法および塩素法を用いることもできる。さらにゾル・ゲル法として、バルべ等のジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)に記載の方法や、バーンサイドらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁に記載の方法も好ましい。
【0121】
この他に、半導体微粒子の製造方法として、例えば、チタニアナノ粒子の製造方法として好ましくは、四塩化チタンの火炎加水分解による方法、四塩化チタンの燃焼法、安定なカルコゲナイド錯体の加水分解、オルトチタン酸の加水分解、可溶部と不溶部から半導体微粒子を形成後可溶部を溶解除去する方法、過酸化物水溶液の水熱合成、またはゾル・ゲル法によるコア/シェル構造の酸化チタン微粒子の製造方法が挙げられる。
【0122】
チタニアの結晶構造としては、アナターゼ型、ブルッカイト型、または、ルチル型があげられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
チタニアナノチューブ・ナノワイヤー・ナノロッドをチタニア微粒子に混合してもよい。
【0123】
チタニアは、非金属元素などによりドーピングされていても良い。チタニアへの添加剤としてド―パント以外に、ネッキングを改善する為のバインダーや逆電子移動防止の為に表面へ添加剤を用いても良い。好ましい添加剤の例としては、ITO、SnO粒子、ウイスカー、繊維状グラファイト・カーボンナノチューブ、酸化亜鉛ネッキング結合子、セルロース等の繊維状物質、金属、有機シリコン、ドデシルベンゼンスルホン酸、シラン化合物等の電荷移動結合分子、及び電位傾斜型デンドリマーなどが挙げられる。
【0124】
チタニア上の表面欠陥を除去するなどの目的で、色素吸着前にチタニアを酸塩基又は酸化還元処理しても良い。エッチング、酸化処理、過酸化水素処理、脱水素処理、UV−オゾン、酸素プラズマなどで処理してもよい。
【0125】
(E)半導体微粒子分散液
本発明においては、半導体微粒子以外の固形分の含量が、半導体微粒子分散液全体の10質量%以下よりなる半導体微粒子分散液を前記の導電性支持体に塗布し、適度に加熱することにより、多孔質半導体微粒子塗布層を得ることができる。
半導体微粒子分散液を作製する方法としては、前述のゾル・ゲル法の他に、半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法、微粒子に超音波などを照射して超微粒子に粉砕する方法、あるいはミルや乳鉢などを使って機械的に粉砕しすり潰す方法、等が挙げられる。分散溶媒としては、水および/または各種の有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、メタノール,エタノール,イソプロピルアルコール,シトロネロール,ターピネオールなどのアルコール類、アセトンなどのケトン類、酢酸エチルなどのエステル類、ジクロロメタン、アセトニトリル等が挙げられる。
分散の際、必要に応じて例えばポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのようなポリマー、界面活性剤、酸、またはキレート剤等を分散助剤として少量用いてもよい。しかし、これらの分散助剤は、導電性支持体上へ製膜する工程の前に、ろ過法や分離膜を用いる方法、あるいは遠心分離法などによって大部分を除去しておくことが好ましい。半導体微粒子分散液は、半導体微粒子以外の固形分の含量が分散液全体の10質量%以下とすることができる。この濃度は好ましくは5%以下であり、さらに好ましくは3%以下であり、特に好ましくは1%以下である。さらに好ましくは0.5%以下であり、特に好ましくは0.2%である。すなわち、半導体微粒子分散液中に、溶媒と半導体微粒子以外の固形分を半導体微分散液全体の10質量%以下とすることができる。実質的に半導体微粒子と分散溶媒のみからなることが好ましい。
半導体微粒子分散液の粘度が高すぎると分散液が凝集してしまい製膜することができず、逆に半導体微粒子分散液の粘度が低すぎると液が流れてしまい製膜することができないことがある。したがって分散液の粘度は、25℃で10〜300N・s/mが好ましい。さらに好ましくは、25℃で50〜200N・s/mである。
【0126】
半導体微粒子分散液の塗布方法としては、アプリケーション系の方法としてローラ法、ディップ法等を使用することができる。またメータリング系の方法としてエアーナイフ法、ブレード法等を使用することができる。またアプリケーション系の方法とメータリング系の方法を同一部分にできるものとして、特公昭58−4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号明細書等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機を使用してスピン法やスプレー法で塗布するのも好ましい。湿式印刷方法としては、凸版、オフセットおよびグラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から、液粘度やウェット厚さに応じて、好ましい製膜方法を選択する。また本発明の半導体微粒子分散液は粘度が高く、粘稠性を有するため、凝集力が強いことがあり、塗布時に支持体とうまく馴染まない場合がある。このような場合に、UVオゾン処理で表面のクリーニングと親水化を行うことにより、塗布した半導体微粒子分散液と導電性支持体表面の結着力が増し、半導体微粒子分散液の塗布が行い易くなる。
半導体微粒子層全体の好ましい厚さは0.1〜100μmである。半導体微粒子層の厚さはさらに1〜30μmが好ましく、2〜25μmがより好ましい。半導体微粒子の支持体1m当りの担持量は0.5g〜400gが好ましく、5〜100gがより好ましい。
【0127】
塗布した半導体微粒子の層に対し、半導体微粒子同士の電子的接触の強化と、支持体との密着性の向上のため、また塗布した半導体微粒子分散液を乾燥させるために、加熱処理が施される。この加熱処理により多孔質半導体微粒子層を形成することができる。その他、部材の特性や用途に応じて適宜公知の方法により半導体微粒子層を形成してもよい。例えば、特開2001−291534号公報に開示された記載の材料や調製方法、作製方法を参照することができ、本明細書に引用する。
なお、半導体微粒子の支持体1m当たりの塗布量は0.5〜500g、さらには5〜100gが好ましい。
【0128】
半導体微粒子に色素を吸着させるには、溶液と本発明の色素よりなる色素吸着用色素溶液の中に、よく乾燥した半導体微粒子を長時間浸漬するのが好ましい。色素吸着用色素溶液に使用される溶液は、本発明の色素が溶解できる溶液なら特に制限なく使用することができる。例えば、エタノール、メタノール、イソプロパノール、トルエン、t-ブタノール、アセトニトリル、アセトン、n-ブタノールなどを使用することができる。その中でも、エタノール、トルエンを好ましく使用することができる。
溶液と本発明の色素よりなる色素吸着用色素溶液は必要に応じて50℃ないし100℃に加熱してもよい。色素の吸着は半導体微粒子の塗布前に行っても塗布後に行ってもよい。また、半導体微粒子と色素を同時に塗布して吸着させてもよい。未吸着の色素は洗浄によって除去する。塗布膜の焼成を行う場合は色素の吸着は焼成後に行うことが好ましい。焼成後、塗布膜表面に水が吸着する前にすばやく色素を吸着させるのが特に好ましい。吸着する色素は1種類でもよいし、数種混合して用いてもよい。混合する場合、本発明の色素を2種以上混合してもよいし、本発明の趣旨を損なわない範囲内で錯体色素と本発明の色素を混合してもよい。光電変換の波長域をできるだけ広くするように、混合する色素が選ばれる。色素を混合する場合は、すべての色素が溶解するようにして、色素吸着用色素溶液とすることが必要である。
【0129】
色素の使用量は、全体で、支持体1m当たり0.01〜100ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜50ミリモル、特に好ましくは0.1〜10ミリモルである。この場合、本発明の色素の使用量は5モル%以上とすることが好ましい。
また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1gに対して0.001〜1ミリモルが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5ミリモルである。
このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としては酸性基(好ましくはカルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基)を有するステロイド化合物(例えばコール酸、ケノデオキシコール酸)、ピバロイル酸、1−デシルホスフォン酸等が挙げられる。色素を吸着した後に、アミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としては4−tert−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらは液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
【0130】
対向電極は、光電気化学電池の正極として働くものである。対向電極は、通常前述の導電性支持体と同義であるが、強度が十分に保たれるような構成では支持体は必ずしも必要でない。ただし、支持体を有する方が密閉性の点で有利である。対向電極の材料としては、白金、カーボン、導電性ポリマー、などがあげられる。好ましい例としては、白金、カーボン、導電性ポリマーが挙げられる。
【0131】
対極の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。好ましい例としては、特開平10−505192号公報などが挙げられる。
受光電極は酸化チタンと酸化スズ(TiO/SnO)などの複合電極を用いても良く、チタニアの混合電極として例えば、特開2000−113913号公報等が挙げられる。チタニア以外の混合電極として例えば、特開2001−185243号公報、特開2003−282164号公報等が挙げられる。
【0132】
また、素子の構成としては、第1電極層、第1光電変換層、導電層、第2光電変換層、第2電極層を順次積層した構造を有していても良い。この場合、第1光電変換層と第2光電変換層に用いる色素は同一または異なっていてもよく、異なっている場合には、吸収スペクトルが異なっていることが好ましい。その他、適宜この種の電気化学素子に適用される構造や部材を適用することができる。
セル、モジュールの封止法としては、ポリイソブチレン系熱硬化樹脂、ノボラック樹脂、光硬化性(メタ)アクリレート樹脂、エポキシ樹脂、アイオノマー樹脂、ガラスフリット、アルミナにアルミニウムアルコキシドを用いる方法、低融点ガラスペーストをレーザー溶融する方法などが好ましい。ガラスフリットを用いる場合、粉末ガラスをバインダーとなるアクリル樹脂に混合したものでもよい。
【実施例】
【0133】
以下、本発明を実施例に基づきさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0134】
<例示色素の調製>
(例示化合物D−1−2aの調製)
下記のスキームの方法に従って例示色素D−1−2aを調製した。
【0135】
(i)化合物A−1−2の調製
a−1 10.0g、a−2 11.3g、PPTS(ピリジニウムパラトルエンスルホン酸)6.2gを、トルエン4000mlに加え、窒素雰囲気下で5時間加熱還流を行った。濃縮後、3℃で水及び塩化メチレンで分液を行い、有機層を濃縮した。得られた結晶は酢酸エチル及び塩化メチレンで再結晶後、A−1−2 17.9gを得た。
(ii)例示色素D−1−2aの調製
a−3 3.0g、A−1−2 2.35g、をDMF250mlに加え150℃で4時間攪拌した。その後チオシアン酸アンモニウム 370mgを加え130℃で5時間攪拌した。濃縮後、3℃まで冷却し水10ml加えろかし、ジエチルエーテルで洗った。粗精製物をTBAOH(水酸化テトラブチルアンモニウム)と共にメタノール溶液に溶解し、SephadexLH−20カラムで精製した。主層の分画を回収し濃縮後硝酸0.2Mを添加して、沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−1−2bを得た。精製物をメタノール溶液に溶解し、硝酸1Mを添加して沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−1―2a 2.1gを得た。
得られた化合物D−1―2aはMS測定により確認した。
【0136】
【化40】

【0137】
(例示色素D−1−19aの調製)
(i)化合物A−5−8の調製
a−1をa−4に変更した以外は、化合物A−1−2と同様にして下記のスキームの方法に従いA−5−8を調製した。
(ii)例示色素D−1−19aの調製
例示色素D−1−2aと同様にして例示色素D−1−19aを調製した。
得られた化合物D−1−19aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 708.93 (M−H)+
【0138】
【化41】

【0139】
(例示色素D−4−2aの調製)
(i)化合物A−2−2の調製
a−1をa−5に変更したこと及び、a−2の使用量をa−5の2当量用いること以外は、化合物A−1−2と同様にして下記のスキームの方法に従いA−2−2を調製した。
(ii)例示色素D−4−2aの調製
例示色素D−1−2aと同様にして例示色素D−4−2aを調製した。
得られた化合物D−4−2aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 675.95 (M−H)+
【0140】
【化42】

【0141】
(例示色素D−1−15aの調製)
(i)化合物A−3−11の調製
a−1をa−6に変更したこと、a−2をa−7に変更したこと以外は、化合物A−1−2と同様にして下記のスキームの方法に従いA−3−11を調製した。
(ii)例示色素D−1−15aの調製
例示色素D−1−2aと同様にして例示色素D−1−15aを調製した。
得られた化合物D−1―15aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 768.89 (M−H)+
【0142】
【化43】

【0143】
(例示色素D−1−6aの調製)
(i)化合物A−1−11の調製
a−6をa−8に変更したこと以外は、化合物A−1−2と同様にして下記のスキームの方法に従いA−1−11を調製した。
(ii)例示色素D−1−6aの調製
例示色素D−1−2aと同様にして例示色素D−1−6aを調製した。
得られた化合物D−1―6aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 680.90 (M−H)+
【0144】
【化44】

【0145】
(例示色素D−7−25aの調製)
(i)化合物A−3−5の調製
a−1をa−6に変更したこと、a−2をa−9に変更したこと以外は、化合物A−1−2と同様にして下記のスキームの方法に従いA−3−5を調製した。
(ii)例示色素D−7−25aの調製
a−3 3.0g、A−3−5 1・55g、をDMF250mlに加え70℃で4時間攪拌した。その後B−1−1 1.2gを加え、160℃で4時間攪拌した。その後チオシアン酸アンモニウム 370mgを加え130℃で5時間攪拌した。濃縮後、3℃まで冷却し水10ml加えろ過し、ジエチルエーテルで洗った。粗精製物をTBAOH(水酸化テトラブチルアンモニウム)と共にメタノール溶液に溶解し、SephadexLH−20カラムで精製した。主層の分画を回収し濃縮後硝酸0.2Mを添加して、沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−7−25bを得た。精製物をメタノール溶液に溶解し、硝酸1Mを添加して沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−7−25a 2.4gを得た。
得られた化合物D−7―25aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 7789.03 (M−H)+
【0146】
【化45】

【0147】
【化46】

【0148】
(例示色素D−7−19aの調製)
(i)化合物A−1−15の調製
a−1をa−10に変更したこと以外は、化合物A−1−2と同様にして下記のスキームの方法に従いA−1−15を調製した。
(ii)例示色素D−7―19aの調製
A−3−5をA−1−15に変更したこと、B−1−1をB−1−5に変更したこと以外は例示色素D−7−25aと同様にして例示色素D−7−19aを調製した。
得られた化合物D−7―19aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 927.30 (M−H)+
【0149】
(例示色素D−7−20aの調製)
B−1−5をB−1−7に変更したこと以外は例示色素D−7−19aと同様にして例示色素D−7−20aを調製した。
得られた化合物D−7―20aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 1007.17 (M−H)+
【0150】
【化47】

【0151】
(例示色素D−8−5aの調製)
A−3−5をA−1−2に変更したこと、B−1−1をB−1−8に変更したこと及びチオシアン酸アンモニウムを、ヨウ化アンモニウムに変更したこと以外は例示色素D−7−19aと同様にして例示色素D−8−5aを調製した。
得られた化合物D−8−5aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 1303.06 (M−H)+
【0152】
(例示色素D−10−3aの調製)
(i)化合物a−12の調製
a−11 5.0g、A−1−2 5.47gを、エチレングリコール250mlに加え、窒素雰囲気下で遮光条件下で1時間加熱還流を行った。その後、飽和次亜硫酸ナトリウム水溶液250mlで有機層を洗浄後、ろ過し、水100ml、ジエチルエーテル100mlで洗った。乾燥後、a−12 7.6gを得た。
(ii)例示色素D−10−3aの調製
a−12 4.0g、チオシアン酸アンモニウム 34.7gをDMF270ml、水135mlに加え140℃で3時間攪拌した。濃縮後、3℃まで冷却し水10ml加えろかし、ジエチルエーテルで洗った。粗精製物をTBAOH(水酸化テトラブチルアンモニウム)と共にメタノール溶液に溶解し、SephadexLH−20カラムで精製した。主層の分画を回収し濃縮後硝酸0.2Mを添加して、沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−10−3bを得た。精製物をメタノール溶液に溶解し、硝酸1Mを添加して沈殿物をろ過後、水及びジエチルエーテルで洗い、D−10−3a 3.1gを得た。
得られた化合物D−10−3aはMS測定により確認した。MS−ESI m/z : 787.08 (M−H)+
【0153】
【化48】

【0154】
(光電変換素子の作製)
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。このうち一方の導電膜上にアナターゼ型酸化チタン粒子(平均粒径:50nm)を焼結して受光電極を作製した。その後、受光電極上にシリカ粒子とルチルとを40:60(質量比)で含有する分散液を塗布及び焼結して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成させた。
次に、下記表1に記載された増感色素のエタノール溶液(3×10−4モル/1)に48時間浸漬した。増感色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/m2とした。増感色素の塗布量は、増感色素の種類に応じ、適宜0.1〜10ミリモル/m2の範囲から選択した。
電解液としては、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/L)、ヨウ素(0.1モル/L)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
【0155】
<実験1>
(色素の極大吸収波長の測定)
用いた色素の最も長波側でモル吸光係数が4000以上の最大吸収波長を測定した。測定は分光光度計(U−4100,日立ハイテク製)によって行い、溶液はメタノール溶液にテトラブチルアンモニウムヒドロキシド10%メタノール溶液を1%混合した溶液を用い、色素の濃度が17μMになるように調製した。
【0156】
【表1】

【0157】
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cm2であった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた色素増感太陽電池の変換効率を測定した結果を下記表2に示す。結果の評価基準は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.2%以上7.5%未満のものを●、7.0%以上7.2%未満のものを○、6.7%以上7.0%未満のものを▲、6.5%以上6.7%未満のものを△、6.2%以上6.5%未満のものを×、6.2%未満のものを××とした。変換効率が6.5%以上のものを合格とした。
【0158】
【表2】

【0159】
比較金属錯体色素として、以下の増感色素A及びBを用いた。
【0160】
【化49】

【0161】
【化50】

【0162】
表2からわかるように、本発明の色素を用いた色素増感太陽電池は、変換効率は合格レベルであるのに対して、比較色素を用いた場合には、変換効率が低いことがわかった。
また本発明の色素はIPCEの5%を長波端とした場合、いずれも910nm以上であり、長波長まで光電変換している。
【0163】
<実験2>
ガラス基板上にITO膜を作製し、その上にFTO膜を積層することにより、透明導電膜を作製した。その後透明導電膜上に酸化物半導体多孔質膜を形成することにより、透明電極板を得た。そしてその透明電極板を使用して光電気化学電池を作製し、変換効率を測定した。その方法は以下の(1)〜(5)の通りである。
(1)ITO(インジウム・スズ・オキサイド)膜用原料化合物溶液の調製
塩化インジウム(III)四水和物5.58gと塩化スズ(II)二水和物0.23gとをエタノール100mlに溶解して、ITO膜用原料化合物溶液とした。
(2)FTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜用原料化合物溶液の調製
塩化スズ(IV)五水和物0.701gをエタノール10mLに溶解し、これにフッ化アンモニウム0.592gの飽和水溶液を加え、この混合物を超音波洗浄機に約20分間かけ、完全に溶解して、FTO膜用原料化合物溶液とした。
(3)ITO/FTO透明導電膜の作製
厚さ2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した。ヒータの加熱温度が450℃になったところで、(1)で得られたITO膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧した。
【0164】
このITO膜用原料化合物溶液の噴霧後、2分間(この間ガラス基板表面にエタノールを噴霧し続け、基板表面温度の上昇を抑えるようにした。)経過し、ヒータの加熱温度が530℃になった時に、(2)で得られたFTO膜用原料化合物溶液を同様の条件で2分30秒間噴霧した。これにより、耐熱ガラス板上に厚さ530nmのITO膜、厚さ170nmのFTO膜が順次形成された透明電極板が得られた。
【0165】
比較のために、厚さ2mmの耐熱ガラス板上に同様に、厚さ530nmのITO膜のみを成膜した透明電極板と、同じく厚さ180nmのFTO膜のみを成膜した透明電極板とをそれぞれ作製した。
【0166】
これら3種の透明電極板を加熱炉にて、450℃で2時間加熱した。
【0167】
(4)光電気化学電池の作製
次に、上記3種の透明電極板を用いて、特許第4260494号公報の図2に示した構造の光電気化学電池を作製した。酸化物半導体多孔質膜の形成は、平均粒径約230nmの酸化チタン微粒子をアセトニトリルに分散してペーストとし、これを透明電極11上にバーコート法により厚さ15μmに塗布し、乾燥後450℃で1時間焼成して行った。その後、この酸化物半導体多孔質膜に表2記載の色素を担持した。
【0168】
さらに、対極には、ガラス板上にITO膜とFTO膜とを積層した導電性基板を使用し、電解質層には、ヨウ素/ヨウ化物の非水溶液からなる電解液を用いた。光電気化学電池の平面寸法は25mm×25mmとした。
【0169】
(5)光電気化学電池の評価
(4)で得られた光電気化学電池について、擬似太陽光(AM1.5)を照射し、実験1と同様の方法で光電変換特性を測定し、変換効率を求めた。その結果を表3に示す。結果は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.2%以上7.5%未満のものを●、7.0%以上7.2%未満のものを○、6.7%以上7.0%未満のものを▲、6.5%以上6.7%未満のものを△、6.2%以上6.5%未満のものを×、6.2%未満のものを××として評価した。変換効率が6.7%以上のものを合格とした。
【0170】
【表3】

【0171】
表3からわかるように、導電層がITO膜のみの場合やFTO膜のみの場合は、本発明の色素増感太陽電池でも、変換効率が低くなり、導電層がITO膜上にFTO膜が形成された場合は、変換効率が高くなる傾向を示した。その傾向は比較例の色素増感太陽電池の場合も同様であった。特に、導電層がITO膜上にFTO膜が形成された色素増感太陽電池は、変換効率が7.0%以上と高い変換効率を示した。これに対して、比較例の色素増感太陽電池の変換効率は本発明の場合と比較して低い値となった。
【0172】
<実験3>
次に、FTO膜上に集電電極を配し、光電気化学電池を作製し、変換効率を評価した。評価は以下の通り、試験セル(i)と試験セル(iv)の2種類とした。
(試験セル(i))
100mm×100mm×2mmの耐熱ガラス板の表面を化学洗浄し、乾燥した後、このガラス板を反応器内に置き、ヒータで加熱した後、上記の実験2で使用したFTO(フッ素ドープ酸化スズ)膜用原料化合物溶液を、口径0.3mmのノズルから圧力0.06MPaで、ガラス板までの距離を400mmとして、25分間噴霧し、FTO膜付きガラス基板を用意した。
その表面に、エッチング法により深さ5μmの溝を格子回路パターン状に形成した。フォトリソグラフでパターン形成した後に、フッ酸を用いてエッチングを行った。これに、めっき形成を可能とするためにスパッタ法により金属導電層(シード層)を形成し、更にアディティブめっきにより金属配線層を形成した。金属配線層は、透明基板表面から凸レンズ状に3μm高さまで形成した。回路幅は60μmとした。この上から、遮蔽層5としてFTO膜を400nmの厚さでSPD法により形成して、電極基板(i)とした。なお、電極基板(i)の断面形状は、特開2004−146425中の図2に示すものとなっていた。
電極基板(i)上に平均粒径25nmの酸化チタン分散液を塗布・乾燥し、450℃で1時間加熱・焼結した。これを表3に示す色素のエタノール溶液中に40分間浸漬して色素担持した。50μm厚の熱可塑性ポリオレフィン樹脂シートを介して、白金スパッタFTO基板と上記基板を対向して配置し、樹脂シート部を熱溶融させて両極板を固定した。
なおあらかじめ白金スパッタ極側に開けておいた電解液の注液口から、0.5Mのヨウ化塩と0.05Mのヨウ素とを主成分に含むメトキシアセトニトリル溶液を注液し、電極間に満たした。さらに周辺部及び電解液注液口をエポキシ系封止樹脂で封止し、集電端子部に銀ペーストを塗布して、試験セル(i)とした。
【0173】
(試験セル(iv))
試験セル(i)と同様の方法で、100×100mmのFTO膜付きガラス基板を用意した。そのFTOガラス基板上に、アディティブめっき法により金属配線層(金回路)を形成した。この金属配線層(金回路)は基板表面に格子状に形成し、回路幅50μm、回路厚5μmとした。この表面に、厚さ300nmのFTO膜を遮蔽層として、SPD法により形成して電極基板(iv)とした。電極基板(iv)の断面をSEM−EDXを用いて確認したところ、配線底部でめっきレジストの裾引きに起因すると思われる潜り込みがあり、影部分にはFTOが被覆されていなかった。
電極基板(iv)を用い、試験セル(i)と同様に、試験セル(iv)を作製した。実験1と同様の方法でAM1.5の疑似太陽光を照射し、変換効率を測定した。その結果を表4に示す。結果は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.2%以上7.5%未満のものを●、7.0%以上7.2%未満のものを○、6.7%以上7.0%未満のものを▲、6.5%以上6.7%未満のものを△、6.2%以上6.5%未満のものを×、6.2%未満のものを××として評価した。変換効率が6.7%以上のものを合格とした。
【0174】
【表4】

【0175】
表4より、本発明の色素を用いた試験セルの変換効率は7.0%以上という高い変換効率を示す場合があることがわかった。これに対して比較色素を用いた場合は、変換効率は高くても6.5%以上7.0%未満であった。
【0176】
<実験4>
色素増感太陽電池の試料セル(A)〜(D)を作製し、各セルの光電変換特性を評価し、変換効率を求めた。
(試料セル(A)の作製)
1.半導体膜の作製
5gの水素化チタンを1リットルの純水に懸濁し、濃度5質量%の過酸化水素液400gを30分かけて添加し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液の全量から90容積%を分取し、濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(A)を調製した。得られたチタニアコロイド粒子は、X線回折により結晶性の高いアナターゼ型酸化チタンであった。
【0177】
次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子(A)を濃度10%まで濃縮し、前記ペルオキソチタン酸溶液を混合し、この混合液中のチタンをTiO換算し、TiO質量の30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。
【0178】
次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、塗膜を硬化させた。塗膜を300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行って金属酸化物半導体膜(A)を形成した。
【0179】
2.金属錯体色素の吸着
次に、表5記載の金属錯体色素について、色素の濃度3×10−4モル/リットルのエタノール溶液を調製した。この金属錯体色素溶液を、rpm100スピナーで、上記の金属酸化物半導体膜(A)上へ塗布して乾燥した。この塗布および乾燥工程を5回行った。
【0180】
3.試料セル(A)の作製
アセトニトリルと炭酸エチレンとを体積比(アセトニトリル:炭酸エチレン)が1:5となるように混合した溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドを0.46モル/リットル、ヨウ素を0.07モル/リットルの濃度となるように溶解して電解質溶液を調製した。
【0181】
前記で調製した電極を一方の電極とし、他方の電極としてフッ素ドープした酸化スズを電極として形成し、その上に白金を担持した透明ガラス基板を対向して配置し、側面を樹脂にてシールし、電極間に上記の電解質溶液を封入し、さらに電極間をリード線で接続して試料セル(A)を作製した。
【0182】
(試料セル(B)の作製)
紫外線を照射してペルオキソ酸を分解させ、膜を硬化させた後、Arガスのイオン照射(日新電気製:イオン注入装置、200eVで10時間照射)を行った以外は金属酸化物半導体膜(A)と同様にして金属酸化物半導体膜(B)を形成し、表5記載の金属錯体色素を吸着させて、色素が吸着された金属酸化物半導体膜を作製した。この半導体膜を用いて、試料セル(A)と同様に、試料セル(B)を作製した。
【0183】
(試験セル(C)の作製)
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈して、TiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。この水溶液を撹拌しながら、濃度15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄し、TiO換算で、10.2質量%の水和酸化チタンゲルのケーキを得た。このケーキと濃度5%過酸化水素液400gを混合し、ついで80℃に加熱して溶解してペルオキソチタン酸の溶液を調製した。この溶液全量から90体積%を分取し、これに濃アンモニア水を添加してpH9に調整し、オートクレーブに入れ、250℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(C)を調製した。
【0184】
次に、上記で得られたペルオキソチタン酸溶液とチタニアコロイド粒子(C)を使用して金属酸化物半導体膜(A)と同様にして金属酸化物半導体膜(C)を形成し、表4記載の金属錯体色素を吸着させて、色素が吸着された金属酸化物半導体膜を作製した。この半導体膜を用いて、試料セル(A)と同様に、試料セル(C)を作製した。
【0185】
(試験セル(D)の作製)
18.3gの4塩化チタンを純水で希釈してTiO換算で1.0質量%含有する水溶液を得た。これを撹拌しながら、濃度15質量%のアンモニア水を添加し、pH9.5の白色スラリーを得た。このスラリーを濾過洗浄した後、純水に懸濁してTiOとして濃度0.6質量%の水和酸化チタンゲルのスラリーとし、これに塩酸を加えてpH2とした後、オートクレーブに入れ、180℃で5時間、飽和蒸気圧下で水熱処理を行ってチタニアコロイド粒子(D)を調製した。
【0186】
次に、上記で得られたチタニアコロイド粒子(D)を濃度10%まで濃縮し、これに、TiOに換算した質量の30質量%となるように膜形成助剤としてヒドロキシプロピルセルロースを添加して半導体膜形成用塗布液を調製した。次いで、フッ素ドープした酸化スズが電極層として形成された透明ガラス基板上に、前記塗布液を塗布し、自然乾燥し、引き続き低圧水銀ランプを用いて6000mJ/cmの紫外線を照射し、膜を硬化させた。さらに、300℃で30分間加熱してヒドロキシプロピルセルロースの分解およびアニーリングを行い、金属酸化物半導体膜(D)を形成し、表4記載の金属錯体色素を吸着させて、色素が吸着された金属酸化物半導体膜を作製した。この半導体膜を用いて、試料セル(A)と同様に、試料セル(D)を作製した。
【0187】
(光電変換特性の測定)
試料セル(A)〜(D)について、ソーラーシュミレーターで、100W/mの強度の光を照射して、Voc(開回路状態の電圧)、Joc(回路を短絡したときに流れる電流の密度)、FF(曲線因子)およびη(変換効率)を測定した。変換効率の結果を表5に示す。
結果は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.2%以上7.5%未満のものを●、7.0%以上7.2%未満のものを○、6.7%以上7.0%未満のものを▲、6.5%以上6.7%未満のものを△、6.2%以上6.5%未満のものを×、6.2%未満のものを××として評価した。変換効率が6.7%以上のものを合格とした。
【0188】
【表5】

【0189】
表5からわかるように、本発明の色素を用いた色素増感太陽電池は、変換効率が合格レベルであるのに対して、比較色素を用いた場合には、変換効率が低いことがわかった。
【0190】
<実験5>
酸化チタンの調製方法を変えることにより得られた半導体微粒子を用いて、光電変換素子を作製し、光電変換特性を評価し、変換効率を求めた。
(1)熱処理法による酸化チタンの調製
酸化チタン1A(ブルーカイト型)、酸化チタン1B(アナターゼ型)、酸化チタン2B(ルチル型)
市販のアナターゼ型の酸化チタン1B(石原産業(株)製、商品名ST−01)を用い、これを約900℃に加熱してブルーカイト型の酸化チタン1Aに変換し、さらに約1,200℃に加熱してルチル型の酸化チタン2Bとした。
【0191】
(2)湿式合成法による酸化チタンの合成
酸化チタン2A(ブルーカイト型)
蒸留水954mlを還流冷却器付きの反応槽に装入し、95℃に加温する。撹拌速度を約200rpmに保ちながら、この蒸留水に四塩化チタン(Ti含有量:16.3質量%、比重1.59、純度99.9%)水溶液46mlを約5.0ml/minの速度で反応槽に滴下した。このとき、反応液の温度が下がらないように注意した。その結果、四塩化チタン濃度が0.25mol/リットル(酸化チタン換算2質量%)であった。反応槽中では反応液が滴下直後から、白濁し始めたがそのままの温度で保持を続け、滴下終了後さらに昇温し沸点付近(104℃)まで加熱し、この状態で60分間保持して完全に反応を終了した。
【0192】
反応により、得られたゾルを濾過し、次いで60℃の真空乾燥器を用いて粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.38、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.05であった。これらから求めると酸化チタンは、ブルーカイト型が約70.0質量%、ルチル型が約1.2質量%、アナターゼ型が約28.8質量%の結晶性であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.015μmであった。
【0193】
酸化チタン3A(ブルーカイト型)
三塩化チタン水溶液(Ti含有量:28質量%、比重1.5、純度99.9%)を蒸留水で希釈し、チタン濃度換算で0.25モル/Lの溶液とした。このとき、液温が上昇しないよう氷冷して、50℃以下に保った。次に、この溶液を還流冷却器付きの反応槽に500ml投入し、85℃に加温しながらオゾンガス発生装置から純度80%のオゾンガスを1L/minでバブリングし、酸化反応を行なった。この状態で2時間保持し、完全に反応を終了した。得られたゾルをろ過、真空乾燥し、粉末とした。この粉末をX線回折法により定量分析した結果、(ブルーカイト型121面のピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0.85、(ルチル型のメインピーク強度)/(三本が重なる位置でのピーク強度)比は0であった。これらから求めると二酸化チタンは、ブルーカイト型が約98質量%、ルチル型が0質量%、アナターゼ型が0質量%であり、約2質量%は無定形であった。また、透過型電子顕微鏡でこの微粒子を観察したところ、1次粒子の平均粒径は0.05μmであった。
【0194】
酸化チタン3B(アナターゼ型)
硫酸チタン溶液(Ti:30質量%、比重1.65)145mlを蒸留水855mlに加えた。この時の硫酸チタン濃度は1.5モル/Lであった。これを100℃に加熱して加水分解させ白色沈殿を得た。この沈殿をろ過洗浄し、次いで60℃の真空乾燥器を用いて乾燥し粉末とした。X線回折により解析した結果、アナターゼ型であった。また、透過電子顕微鏡での1次粒子の平均粒子径は0.025μmであった。
【0195】
(電変換素子の作製および評価)
上記の酸化チタンを半導体微粒子として特開2000−340269号公報の図1に示す構成を有する光電変換素子を次のように作製した。ガラス基板上にフッ素ドープの酸化錫をコートし、導電性透明電極とした。電極面上にそれぞれの酸化チタン粒子を原料としたペーストを作成し、バーコート法で厚さ50μmに塗布した後、500℃で焼成して膜厚約20μmの薄層を形成した。次に、表5記載の金属錯体色素の3×10−4モル濃度のエタノール溶液を調製し、これに上記の酸化チタンの薄層を形成したガラス基板を浸漬し、12時間室温で保持した。その結果、酸化チタンの薄層上に上記錯体が付着された。
【0196】
電解液としてテトラプロピルアンモニウムのヨウ素塩とヨウ化リチウムのアセトニトリル溶液を用い、白金を対極として特開2000−340269号公報の図1に示す構成を有する光電変換素子を作製した。光電変換は160wの高圧水銀ランプの光(フィルターで赤外線部をカット)を上記の素子に照射し、その際の変換効率を測定した。結果を表5に示す。結果は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.2%以上7.5%未満のものを●、7.0%以上7.2%未満のものを○、6.7%以上7.0%未満のものを▲、6.5%以上6.7%未満のものを△、6.2%以上6.5%未満のものを×、6.2%未満のものを××として評価した。変換効率が6.7%以上のものを合格とした。
【0197】
【表6】

【0198】
表6からわかるように、本発明の色素を用いた場合、酸化チタンを変更しても変換効率は合格レベルの値を示した。しかし、比較色素を用いた場合は、いずれも変換効率は低くなった。
【0199】
<実験6>
光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層形成するための種々のペーストを調製し、このペーストを用いて、色素増感太陽電池を作製した。
[ペーストの調製]
先ず、光電極を構成する半導体電極の半導体層又は光散乱層形成するためのペーストを以下の手順で調製した。
【0200】
(ペースト1の調製)
球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;25nm、以下、球形TiO粒子1という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペーストを調製した。
【0201】
(ペースト2の調製)
球形TiO粒子1と、球形のTiO粒子(アナターゼ、平均粒径;200nm、以下、球形TiO粒子2という)とを硝酸溶液に入れて撹拌することによりチタニアスラリーを調製した。次に、チタニアスラリーに増粘剤としてセルロース系バインダーを加え、混練してペースト(TiO粒子1の質量:TiO粒子2の質量=30:70)を調製した。
【0202】
(ペースト3の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;100nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子1という)を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=10:90のペーストを調製した。
【0203】
(ペースト4の調製)
ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0204】
(ペースト5の調製)
ペースト1に、棒状TiO粒子1を混合し、棒状TiO粒子1の質量:ペースト1の質量=50:50のペーストを調製した。
【0205】
(ペースト6の調製)
ペースト1に、板状のマイカ粒子(直径;100nm、アスペクト比;6、以下、板状マイカ粒子1という)を混合し、板状マイカ粒子1の質量:ペースト1の質量=20:80のペーストを調製した。
【0206】
(ペースト7の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;30nm、アスペクト比;6.3、以下、棒状TiO粒子2という)を混合し、棒状TiO粒子2の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0207】
(ペースト8の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;50nm、アスペクト比;6.1、以下、棒状TiO粒子3という)を混合し、棒状TiO粒子3の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0208】
(ペースト9の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;75nm、アスペクト比;5.8、以下、棒状TiO粒子4という)を混合し、棒状TiO粒子4の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0209】
(ペースト10の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;130nm、アスペクト比;5.2、以下、棒状TiO粒子5という)を混合し、棒状TiO粒子5の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0210】
(ペースト11の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;180nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子6という)を混合し、棒状TiO粒子6の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0211】
(ペースト12の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;240nm、アスペクト比;5、以下、棒状TiO粒子7という)を混合し、棒状TiO粒子7の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0212】
(ペースト13の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;110nm、アスペクト比;4.1、以下、棒状TiO粒子8という)を混合し、棒状TiO粒子8の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0213】
(ペースト14の調製)
ペースト1に、棒状のTiO粒子(アナターゼ、直径;105nm、アスペクト比;3.4、以下、棒状TiO粒子9という)を混合し、棒状TiO粒子9の質量:ペースト1の質量=30:70のペーストを調製した。
【0214】
(色素増感太陽電池1)
以下に示す手順により、特開2002−289274号公報記載の図5に示した光電極12と同様の構成を有する光電極を作製し、更に、光電極を用いて、当該光電極以外は色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する10×10mmのスケールの色素増感型太陽電池1を作製した。
ガラス基板上にフッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚;500nm)を形成した透明電極を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成した。更に、ペースト4を用いてこのスクリーン印刷と焼成とを繰り返すことにより、SnO導電膜上に図5に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6μm、光散乱層の層厚;4μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。
【0215】
次に、半導体電極に色素を以下のようにして吸着させた。先ず、マグネシウムエトキシドで脱水した無水エタノールを溶媒として、これに表6記載の金属錯体色素を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、色素溶液を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極に色素が約1.5×10−7mol/cm吸着し、光電極10を完成させた。
【0216】
次に、対極として上記の光電極と同様の形状と大きさを有する白金電極(Pt薄膜の厚さ;100nm)、電解質Eとして、ヨウ素及びヨウ化リチウムを含むヨウ素系レドックス溶液を調製した。更に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有するデュポン社製のスペーサーS(商品名:「サーリン」)を準備し、特開2002−289274記載の図3に示すように、光電極10と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池を完成させた。
【0217】
(色素増感太陽電池2)
半導体電極の製造を以下のようにして行ったこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により特開2002−289274号公報記載の図1に示した光電極10及び特開2002−289274記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池2を作製した。
なお、半導体電極への色素に吸着は色素増感太陽電池1の場合と同様にして行った。すなわち、まず、マグネシウムエトキシドで脱水した無水エタノールを溶媒として、これに表6記載の金属錯体色素を、その濃度が3×10−4mol/Lとなるように溶解し、色素溶液を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、これにより、半導体電極に色素が約1.5×10−7mol/cm吸着し、光電極10を完成させた。以下の色素増感太陽電池における半導体電極への色素の吸着は同様に行った。
【0218】
ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用した。そして、SnO導電膜上に、ペースト2をスクリーン印刷し、次いで乾燥させた。その後、空気中、450℃の条件のもとで焼成し、半導体層を形成した。
【0219】
ペースト3を光散乱層の最内部の層形成用ペーストとして使用した。また、ペースト5を光散乱層の最外部の層形成用ペーストとして使用した。そして、色素増感太陽電池1と同様にして半導体層上に光散乱層を形成した。
【0220】
そして、SnO導電膜上に図1に示す半導体電極2と同様の構成の半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;3μm、最内部の層の層厚;4μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;10質量%、最外部の層の層厚;3μm、最内部の層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;50質量%)を形成し、増感色素を含有していない光電極を作製した。色素増感太陽電池1と同様に、光電極と対極CEとスペーサーSを介して対向させ、内部に上記の電解質を充填して色素増感型太陽電池2を完成させた。
【0221】
(色素増感太陽電池3)
半導体電極の製造に際して、ペースト1を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト4を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274号公報記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池3を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;5μm、光散乱層の層厚;5μm、光散乱層に含有される棒状TiO粒子1の含有率;30質量%であった。
【0222】
(色素増感太陽電池4)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト6を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により図5に示した光電極10及び特開2002−289274号公報記載の図3に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する光電極及び色素増感型太陽電池4を作製した。なお、半導体電極は、受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、半導体層の層厚;6.5μm、光散乱層の層厚;3.5μm、光散乱層に含有される板状マイカ粒子1の含有率;20質量%であった。
【0223】
(色素増感太陽電池5)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト8を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池5を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子3の含有率;30質量%であった。
【0224】
(色素増感太陽電池6)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト9を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池6を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子4の含有率;30質量%であった。
【0225】
(色素増感太陽電池7)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト10を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池7を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子5の含有率;30質量%であった。
【0226】
(色素増感太陽電池8)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト11を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池8を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子6の含有率;30質量%であった。
【0227】
(色素増感太陽電池9)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト13を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池9を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子8の含有率;30質量%であった。
【0228】
(色素増感太陽電池10)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト14を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感型太陽電池10を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子9の含有率;30質量%であった。
【0229】
(色素増感太陽電池11)
半導体電極の製造に際して、ペースト2のみを用いて半導体層のみからなる半導体電極(受光面の面積;10mm×10mm、層厚;10μm、)を作製したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感太陽電池11を作製した。
【0230】
(色素増感太陽電池12)
半導体電極の製造に際して、ペースト2を半導体層形成用ペーストとして使用し、ペースト7を光散乱層形成用ペーストとして使用したこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順により光電極及び色素増感太陽電池12を作製した。なお、半導体電極の光散乱層に含有される棒状TiO粒子2の含有率;30質量%であった。
【0231】
[電池特性試験]
電池特性試験を行ない、色素増感太陽電池について、変換効率ηを測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレータ(WACOM製、WXS−85H)を用い、AM1.5フィルターを通したキセノンランプから1000W/mの疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、変換効率(η/%)を求めた。その結果を表7に示す。結果は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.2%以上7.5%未満のものを●、7.0%以上7.2%未満のものを○、6.7%以上7.0%未満のものを▲、6.5%以上6.7%未満のものを△、6.2%以上6.5%未満のものを×、6.2%未満のものを××として評価した。変換効率が6.7%以上のものを合格とした。
【0232】
【表7】

【0233】
表7からわかるように、本発明の色素を用いた光電気化学電池は、変換効率が合格レベルであったのに対し、比較色素を用いた場合には、変換効率が低いことがわかった。
【0234】
<実験7>
金属酸化物微粒子に金属アルコキシドを加えスラリー状としたものを導電性基板に塗布し、その後、UVオゾン照射、UV照射又は乾燥を行い、電極を作製した。その後、光電気化学電池を作製し、変換効率を測定した。
【0235】
(金属酸化物微粒子)
金属酸化物微粒子としては、酸化チタンを用いた。酸化チタンは、質量比で、30%ルチル型及び70%アナターゼ型、平均粒径25nmのP25粉末(Degussa社製、商品名)を用いた。
【0236】
(金属酸化物微粒子粉末の前処理)
金属酸化物微粒子をあらかじめ熱処理することで表面の有機物と水分を除去した。酸化チタン微粒子の場合は450℃のオーブンで大気下、30分間加熱した。
【0237】
(金属酸化物微粒子に含まれる水分量の測定)
温度26℃、湿度72%の環境に保存しておいた酸化チタン、P25粉末(Degussa社製、商品名)に含まれる水分量を、熱重量測定における重量減少、及び300℃に加熱したときに脱着した水分量のカールフィッシャー滴定により定量した。
【0238】
酸化チタン、P25粉末(Degussa社製、商品名)を300℃で加熱したときに脱着する水分量をカールフィッシャー滴定によって定量したところ、0.1033gの酸化チタン微粉末中に0.253mgの水が含まれていた。すなわち、酸化チタン微粉末は約2.5質量%の水分を含んでいた。30分間熱処理し、冷却後デシケーター中に保存して用いた。
【0239】
(金属アルコキシドペーストの調製)
金属酸化物微粒子を結合する役割をする金属アルコキシドとしては、チタン原料としてはチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)、ジルコニウム原料としてはジルコニウム(IV)テトラn−プロポキシド、ニオブ原料としてはニオブ(V)ペンタエトキシド(全てAldrich社製)をそれぞれ用いた。
【0240】
金属酸化物微粒子と金属アルコキシドのモル濃度比は、金属アルコキシドの加水分解によって生じるアモルファス層が過度に厚くならず、かつ粒子同士の結合が十分行えるように、金属酸化物微粒子径に応じて適宜調節した。なお、金属アルコキシドはすべて、0.1Mのエタノール溶液とした。酸化チタン微粒子とチタン(IV)テトライソプロポキシド(TTIP)とを混合する場合には、酸化チタン微粒子1gに対し、3.55gの0.1M TTIP溶液を混合した。このとき、得られたペースト中の酸化チタン濃度は約22質量%となり、塗布に適当な粘度となった。また、このときの酸化チタンとTTIPとエタノールは、質量比で1:0.127:3.42、モル比で1:0.036:5.92であった。
【0241】
同様に、酸化チタン微粒子とTTIP以外のアルコキシドの混合ペーストについても微粒子濃度が22質量%となるように調製した。酸化亜鉛及び酸化スズ微粒子を用いたペーストでは16質量%とした。酸化亜鉛及び酸化スズの場合は、金属酸化物微粒子1gに対して、金属アルコキシド溶液5.25gの比で混合した。
【0242】
金属酸化物微粒子と金属アルコキシド溶液は、密閉容器中においてマグネチックスターラーによって2時間攪拌して均一なペーストを得た。導電性基板へのペーストの塗布方法は、ドクターブレード法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法などを用いることが可能であり、適当なペースト粘度は塗布方法によって適宜選択した。ここでは簡便にガラス棒で塗布する方法(ドクターブレード法に類似)を用いた。この場合、適当なペースト粘度を与える金属酸化物微粒子の濃度は概ね5〜30質量%の範囲となった。
【0243】
金属アルコキシドの分解によって生成するアモルファス金属酸化物の厚さは本実験では0.1〜0.6nm程度の範囲にあり、適切な範囲の厚さとすることができた。
【0244】
(導電性基板上へのペーストの塗布と風乾処理)
スズドープ酸化インジウム(ITO)導電膜付きポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基板(20Ω/cm)又はフッ素ドープ酸化スズ(FTO)導電膜付きガラス基板(10Ω/cm)に、スペーサとして粘着テープ2枚を一定間隔で平行に貼り付け、上記の方法に従って調製した各ペーストを、ガラス棒を用いて均一に塗布した。
ペーストを塗布後、色素吸着前に、UVオゾン処理、UV照射処理、又は乾燥処理の有無について条件を変えて多孔質膜を作製した。
【0245】
(乾燥処理)
導電性基板へ塗布した後の膜を大気中室温において2分程度で風乾した。この過程でペースト中の金属アルコキシドが大気中の水分によって加水分解を受け、Tiアルコキシド、Zrアルコキシド、Nbアルコキシドからそれぞれアモルファスの酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化ニオブが形成された。
生成したアモルファス金属酸化物が、金属酸化物微粒子同士及び膜と導電性基板を接着する役割を果たすため、風乾するのみで機械的強度と付着性に優れた多孔質膜が得られた。
【0246】
(UVオゾン処理)
UVオゾン処理には日本レーザー電子社製のNL−UV253 UVオゾンクリーナーを用いた。UV光源には185nmと254nmに輝線を持つ4.5W水銀ランプ3個を備えており、試料を光源から約6.5センチの距離に水平に配置した。チャンバー中に酸素気流を導入することでオゾンが発生する。本実施例においてはこのUVオゾン処理を2時間行なった。なお、このUVオゾン処理によるITO膜及びFTO膜の導電性の低下は全く見られなかった。
【0247】
(UV処理)
チャンバー中を窒素置換して処理を行う以外は同様に、前記UVオゾン処理と同様に、2時間処理を行った。このUV処理によるITO膜及びFTO膜の導電性の低下はまったく見られなかった。
【0248】
(色素吸着)
色素には表8記載の色素を用いて、各色素の0.5mMのエタノール溶液を調製した。本実験では上記のプロセスで作製した多孔質膜を100℃のオーブンで1時間乾燥した後に増感色素の溶液に浸漬し、そのまま室温で50分間放置して酸化チタン表面に色素を吸着させた。色素吸着後の試料はエタノールで洗浄し、風乾した。
【0249】
(光電気化学電池の作製と電池特性評価)
色素吸着後の多孔質膜が形成された導電性基板を光電極とし、これと白金微粒子をスパッタリングにより修飾したITO/PETフィルム又はFTO/ガラス対極を対向させて、光電気化学電池を試作した。上記光電極の実効面積は約0.2cmとした。電解質溶液には0.5MのLiI,0.05MのI,0.5Mのt−ブチルピリジンを含む3−メトキシプロピオニトリルを用い、毛管現象によって両電極間のギャップに導入した。
【0250】
電池性能の評価は、一定フォトン数(1016cm−2)照射下での光電流作用スペクトル測定及びAM1.5擬似太陽光(100mW/cm)照射下でのI−V測定により行なった。これらの測定には分光計器社製のCEP−2000型分光感度測定装置を用いて変換効率を評価した。変換効率が5.0%以上のものを◎、4.5%以上5.0%未満のものを○、4.0%以上4.5%未満のものを△、4.0%未満のものを×として評価した。変換効率が4.5%以上のものを合格とした。
【0251】
【表8】

注1:GL=ガラス
【0252】
表8において、「UVオゾン」、「UV」、「乾燥」の欄はそれぞれ、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無を表す。処理したものが「○」であり、処理なしのものが「×」である。
【0253】
表8の「TiOの前処理の欄は、酸化チタン微粒子の前処理(450℃のオーブンで30分間熱処理)の有無を示す。試料6、14、22は、高TTIP濃度(酸化チタン:TTIPのモル比が1:0.356)のペーストを用いた試料を表す。他の試料(試料1〜5,7〜13,23,24)は全て酸化チタン:TTIP=1:0.0356のペーストを用いた。
【0254】
表8からわかるように、本発明の色素を用いた光電気化学電池は、多孔質膜の形成後、増感色素吸着前における、UVオゾン処理、UV照射処理、乾燥処理の有無にかかわらず、当該色素を単独使用した場合よりも、常に光電気化学電池の変換効率が高く、合格レベルの変換効率が得られることがわかった。
これに対して、比較色素を用いた場合には、変換効率が低いことがわかった。
【0255】
<実験8>
溶媒がアセトニトリルでヨウ化リチウム0.1mol/l、ヨウ素0.05mol/l、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム0.62mol/lを溶解した電解質溶液を調製した。ここに下記に示すNo.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物をそれぞれ濃度0.5mol/lになるように別々に添加し、溶解した。
【0256】
【化51】

【0257】
No.1〜No.8のベンズイミダゾール系化合物電解液を、本発明の金属錯体色素を担持した導電性ガラス付き多孔質酸化チタン半導体薄膜(厚さ15μm)に滴下した。ここにポリエチレンフィルム製のフレーム型スペーサー(厚さ25μm)をのせ、白金対電極でこれを覆い、光電変換素子を構成した。
得られた光電変換素子に、Xeランプを光源として強度100mW/cmの光を照射した。表9に得られた開放電圧と光電変換効率を示した。開放電圧は、0.75V以上のものを◎、0.70V以上0.75V未満のものを○、0.65V以上0.70V未満のものを△、0.65V未満のものを×として表示した。変換効率が7.5%以上のものを◎、7.0%以上7.5%未満のものを○、6.5%以上7.0%未満のものを△、6.5%未満のものを×として評価した。開放電圧が0.70V以上、変換効率が7.0%以上のものを合格とした。
なお、表9には、ベンズイミダゾール系化合物を加えていない電解液を用いた光電変換素子の結果も示した。
【0258】
【表9】

【0259】
表9からわかるように、本発明の色素を用いた光電変換素子は、開放電圧及び変換効率はいずれも合格レベルであった。
これに対して、比較色素を用いた場合には、開放電圧と変換効率が低いことがわかった。
【0260】
<実験9>
色素増感太陽電池1〜4を以下の方法で作製した。これらの色素増感太陽電池において、表10に示す金属錯体色素を吸着させて、試料番号9−1〜9−20を得た。
(色素増感太陽電池1)
以下に示す手順により、特開2004−152613号公報の図1に示した光電極10と同様の構成を有する光電極(ただし、半導体電極2を2層構造とした。)を作製し、更に、この光電極を用いた以外は特開2004−152613号公報の図1に示した色素増感型太陽電池20と同様の構成を有する色素増感太陽電池(半導体電極2の受光面F2の面積:1cm)を作製した。なお、当該2層構造を有する半導体電極2の各層について、透明電極1に近い側に配置される層を「第1の層」、多孔体層PSに近い側に配置される層を「第2の層」という。
【0261】
まず、平均粒子径25nmのP25粉末(Degussa社製、商品名)と、これと粒子径の異なる酸化チタン粒子、P200粉末(平均粒子径:200nm、Degussa社製、商品名)とを用い、P25とP200の合計の含有量が15質量%で、P25とP200との質量比が、P25:P200=30:70となるように、これらにアセチルアセトン、イオン交換水、界面活性剤(東京化成社製、商品名;「Triton−X」)を加え、混練して第2の層形成用のスラリー、以下、「スラリー1」とする)を調製した。
次に、P200を使用せず、P25のみを使用したこと以外は、前述のスラリー1と同様の調製手順により第1の層形成用のスラリー(P1の含有量;15質量%、以下、「スラリー2」とする)を調製した。
【0262】
一方、ガラス基板(透明導電性ガラス)上に、フッ素ドープされたSnO導電膜(膜厚:700nm)を形成した透明電極(厚さ:1.1mm)を準備した。そして、このSnO導電膜上に、上述のスラリー2をバーコーダで塗布し、次いで乾燥させた。その後、大気中、450℃で30分間焼成した。このようにして、透明電極上に、半導体電極2の第1の層を形成した。
【0263】
更に、スラリー1を用いて、上述と同様の塗布と焼成とを繰り返すことにより、第1の層上に、第2の層を形成した。このようにして、SnO導電膜上に半導体電極2(受光面の面積;1.0cm、第1層と第2層の合計厚さ:10μm(第1の層の厚さ:3μm、第2の層の厚さ:7μm))を形成し、増感色素を含有していない状態の光電極10を作製した。
【0264】
次に、色素として表10記載の色素のエタノール溶液(各増感色素の濃度;3×10−4mol/L)を調製した。この溶液に前記光電極10を浸漬し、80℃の温度条件のもとで20時間放置した。これにより、半導体電極の内部に色素を合計で約1.0×10−7mol/cm吸着させた。
【0265】
次に、上記の光電極と同様の形状と大きさを有する対極CEを作製した。先ず、透明導電性ガラス上に、塩化白金酸六水和物のイソプロパノール溶液を滴下し、大気中で乾燥した後に450℃で30分焼成処理することにより、白金焼結対極CEを得た。なお、この対極CEには予め電解質Eの注入用の孔(直径1mm)を設けておいた。
【0266】
次に、溶媒となるメトキシアセトニトリルに、ヨウ化亜鉛と、ヨウ化−1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムと、ヨウ素と、4−tert−ブチルピリジンとを溶解させて液状電解質(ヨウ化亜鉛の濃度:10mmol/L、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウムの濃度:0.6mol/L、ヨウ素の濃度:0.05mol/L、4−tert−ブチルピリジン濃度:1mol/L)を調製した。
【0267】
次に、半導体電極の大きさに合わせた形状を有する三井デュポンポリケミカル社製のスペーサS(商品名:「ハイミラン」,エチレン/メタクリル酸ランダム共重合体アイオノマーフィルム)を準備し、特開2004−152613号公報の図1に示すように、光電極と対極とをスペーサを介して対向させ、それぞれを熱溶着により張り合わせて電池の筐体(電解質未充填)を得た。
次に、液状電解質を対極の孔から筐体内に注入した後、孔をスペーサと同素材の部材で塞ぎ、更に対極の孔にこの部材を熱溶着させて孔を封止し、色素増感太陽電池1を完成させた。
【0268】
(色素増感太陽電池2)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の濃度を50mmol/Lとしたこと以外は、光電気化学電池1と同様の手順及び条件で色素増感太陽電池2を作製した。
【0269】
(色素増感太陽電池3)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を20mmol/Lとしたこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順及び条件で色素増感太陽電池3を作製した。
【0270】
(色素増感太陽電池4)
液状電解質におけるヨウ化亜鉛の代わりにヨウ化リチウムを添加し、液状電解質におけるヨウ化リチウムの濃度を100mmol/Lとしたこと以外は、色素増感太陽電池1と同様の手順及び条件で色素増感太陽電池4を作製した。
【0271】
[電池特性評価試験]
以下の手順により電池特性評価試験を行ない、表10記載の試料番号9−1〜9−20の色素増感太陽電池の光電変換効率(η(%))を測定した。
【0272】
電池特性評価試験は、ソーラーシミュレータ(ワコム製、商品名;「WXS−85−H型」)を用い、AMフィルター(AM1.5)を通したキセノンランプ光源からの疑似太陽光の照射条件を、100mW/cmとする(いわゆる「1Sun」の照射条件)測定条件の下で行った。
【0273】
試料番号9−1〜9−20の色素増感太陽電池について、I−Vテスターを用いて室温にて電流−電圧特性を測定し、これらから光電変換効率η[%]を求めた。得られた結果を表10(1Sunの照射条件)に示す。光電変換効率η[%]の80℃、300時間暗所経時後の光電変換効率の低下率の値も表10に示す。
【0274】
【表10】

【0275】
表10に示した結果から明らかなように、本発明の色素は電解質にヨウ化亜鉛を添加した場合でも高い変換効率を示すことがわかった。これに対し、比較色素を用いた色素増感太陽電池は、300時間経過後に変換効率が低下することがわかった。
【0276】
<実験10>
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をフッ素樹脂コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製,Degussa P−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triron X−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズを濾別した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザー(商品名)により測定した。
【0277】
2.色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)の作製
フッ素をドープした酸化スズを被覆した20mm×20mmの導電性ガラス板(旭ガラス(株)製,TCOガラス−U,表面抵抗:約30Ω/m)を準備し、その導電層側の両端(端から3mmの幅の部分)にスペーサー用粘着テープを張った後で、導電層上にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。分散液の塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこの半導体塗布ガラス板を電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃で30分間焼成した。半導体塗布ガラス板を取り出し冷却した後、表10に示す色素のエタノール溶液(濃度:3×10−4mol/L)に3時間浸漬した。色素が吸着した半導体塗布ガラス板を4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し、自然乾燥させて、色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)を得た。電極Aの色素増感酸化チタン微粒子層の厚さは10μmであり、酸化チタン微粒子の塗布量は20g/mであった。また色素の吸着量は、その種類に応じて0.1〜10mmol/mの範囲内であった。
【0278】
3.色素増感太陽電池の作製
色素増感太陽電池a〜cの3タイプの色素増感太陽電池を以下の方法で作製した。これらの色素増感太陽電池において、表11に示す金属錯体色素、窒素含有高分子及び求電子剤を用いて、試料番号10−1〜10−12を得た。
(a)色素増感太陽電池aの作製
溶媒としては、アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を用いた。この溶媒に、ヨウ素と電解質塩として、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムのヨウ素塩を加えて、0.5mol/Lの電解質塩および0.05mol/Lのヨウ素を含んだ溶液を調製した。この溶液に、(溶媒+窒素含有高分子化合物+塩)100質量部に対し、窒素含有高分子化合物(α)を10質量部加えた。さらに窒素含有高分子化合物の反応性窒素原子に対する求電子剤(β)を0.1モル混合し、均一な反応溶液とした。
【0279】
一方、前記電極Aの色素増感酸化チタン微粒子層の上にスペーサーを介して白金を蒸着したガラス板からなる対極の白金薄膜側を載置し、導電性ガラス板と白金蒸着ガラス板とを固定した。得られた組立体の開放端を上記電解質溶液に浸漬し、毛細管現象により色素増感酸化チタン微粒子層中に反応溶液を浸透させた。
次いで80℃で30分間加熱して、架橋反応を行った。このようにして、特開2000−323190号公報の図2に示す通り、導電性ガラス板10の導電層12上に、色素増感酸化チタン微粒子層20、電解質層30、および白金薄膜42およびガラス板41からなる対極40が順に積層された本発明の色素増感太陽電池a−1(試料番号10−1)を得た。
また色素を表11に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、色素増感太陽電池a−2〜a−4を得た。
【0280】
(b)色素増感太陽電池b
前述のようにして本発明の色素により色素増感された酸化チタン微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)を同じ大きさの白金蒸着ガラス板にスペーサーを介して重ねあわせた。次に両ガラス板の隙間に毛細管現象を利用して電解液(アセトニトリルと3−メチル−2−オキサゾリジノンとの体積比90/10の混合物を溶媒としたヨウ素0.05mol/L、ヨウ化リチウム0.5mol/Lの溶液)を浸透させて、色素増感太陽電池b−1(試料番号10−2)を作製した。また色素を表11に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、色素増感太陽電池b−1〜b−4を得た。
【0281】
(c)色素増感太陽電池c(特開平9−27352号公報に記載の電解質)
前述のようにして本発明の色素により色素増感された酸化チタン微粒子層からなる電極A(20mm×20mm)上に、電解液を塗布し、含浸させた。なお電解液は、ヘキサエチレングリコールメタクリル酸エステル(日本油脂化学(株)製,ブレンマーPE−350)1gと、エチレングリコール1gと、重合開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロバン−1−オン(日本チバガイギー(株)製,ダロキュア1173)20mgを含有した混合液に、ヨウ化リチウム500mgを溶解し10分間真空脱気することにより得た。次に前記混合溶液を含浸させた多孔性酸化チタン層を減圧下に置くことにより、多孔性酸化チタン層中の気泡を除き、モノマーの浸透を促した後、紫外光照射により重合して高分子化合物の均一なゲルを多孔性酸化チタン層の微細空孔内に充填した。このようにして得られたものをヨウ素雰囲気に30分間曝して、高分子化合物中にヨウ素を拡散させた後、白金蒸着ガラス板を重ね合わせ、色素増感太陽電池c−1(試料番号10−3)を得た。また色素を表11に示すように変更した以外上記工程を繰り返すことにより、光電気化学電池c−1〜c−4を得た。
【0282】
5.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電機(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(Kenko L−42)を通すことにより、紫外線を含まない模擬太陽光とした。光強度は89mW/cmとした。
【0283】
前述の光電気化学電池の導電性ガラス板10と白金蒸着ガラス板40にそれぞれワニ口クリップを接続し、各ワニ口クリップを電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型(商品名))に接続した。これに導電性ガラス板10側から模擬太陽光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置により測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率の初期値と、80℃で300時間暗所保存後の変換効率の低下率を表11に示す。変換効率の初期値が7.0%以上を合格、300時間経過後の変換効率の低下率が8.0%以下の場合を合格とした。
【0284】
【表11】

(備考)
(1)色素の記号は本文中に記載の通りである。
(2)窒素含有高分子α、求電子剤βは以下の化合物を示す。
【0285】
【化52】

【0286】
【化53】

【0287】
表11からわかるように、本発明の色素を用いた光電気化学電池は、変換効率の初期値が合格レベルであり、さらに300時間経過後の変換効率の低下率が8%以下と、優れた耐久性を示した。
【0288】
<実験11>
1.二酸化チタン分散液の調製
内側をフッ素樹脂コーティングした内容積200mlのステンレス製容器に二酸化チタン微粒子(日本アエロジル(株)製,Degussa P−25)15g、水45g、分散剤(アルドリッチ社製、Triron X−100)1g、直径0.5mmのジルコニアビーズ(ニッカトー社製)30gを入れ、サンドグラインダーミル(アイメックス社製)を用いて1500rpmで2時間分散処理した。得られた分散液からジルコニアビーズを濾別した。得られた分散液中の二酸化チタン微粒子の平均粒径は2.5μmであった。なお粒径はMALVERN社製のマスターサイザー(商品名)により測定した。
【0289】
2.色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)の作製
フッ素をドープした酸化スズを被覆した20mm×20mmの導電性ガラス板(旭ガラス(株)製,TCOガラス−U,表面抵抗:約30Ω/m)を準備し、その導電層側の両端(端から3mmの幅の部分)にスペーサー用粘着テープを張った後で、導電層上にガラス棒を用いて上記分散液を塗布した。分散液の塗布後、粘着テープを剥離し、室温で1日間風乾した。次にこの半導体塗布ガラス板を電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)に入れ、450℃で30分間焼成した。半導体塗布ガラス板を取り出し冷却した後、表10に示す色素のエタノール溶液(濃度:3×10−4mol/L)に3時間浸漬した。色素が吸着した半導体塗布ガラス板を4−tert−ブチルピリジンに15分間浸漬した後、エタノールで洗浄し、自然乾燥させて、色素を吸着した酸化チタン微粒子層(電極A)を得た。電極Aの色素増感酸化チタン微粒子層の厚さは10μmであり、酸化チタン微粒子の塗布量は20g/mであった。また色素の吸着量は、その種類に応じて0.1〜10mmol/mの範囲内であった。
【0290】
3.色素増感太陽電池の作製
上述のように作製した色素増感電極A(20mm×20mm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解質組成物を染み込ませ、電解質を酸化チタン電極中に導入した。これにより、図1に示すように、導電性ガラスからなる導電性支持体1(ガラスの透明基板上に導電層が設層されたもの)、感光体2、電荷移動体3、白金からなる対極4及びガラスの透明基板(図示せず)を順に積層しエポキシ系封止剤で封止した色素増感太陽電池を作製した。ただし、電解質組成物の粘度が高く毛細管現象を利用して電解質組成物を染み込ませることが困難な場合は、電解質組成物を50℃に加温し、これを酸化チタン電極に塗布した後、この電極を減圧下に置き電解質組成物が十分浸透し電極中の空気が抜けた後、白金蒸着ガラス(対極)を重ね合わせて同様に色素増感太陽電池を作製した。
【0291】
色素を変更して上述の工程を行い、試料番号11−1〜11−9の色素増感太陽電池を作製した。各色素増感太陽電池に用いた電解質組成物としては、下記のヘテロ環4級塩化合物を98質量%及びヨウ素を2質量%含有するものを用いた。
【0292】
【化54】

【0293】
4.光電変換効率の測定
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気(株)製)の光をAM1.5フィルター(Oriel社製)及びシャープカットフィルター(Kenko L−37)ことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は70mW/cmであった。この模擬太陽光を、50℃で色素増感太陽電池に照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)で測定した。また、85℃で1000時間暗所保存後の変換効率の低下率及び500時間連続光照射後の変換効率の低下率も測定した。これらの結果を表12に示す。
【0294】
【表12】

【0295】
表12より、本発明の色素増感太陽電池は、変換効率の初期値はいずれも7.0%以上と高い値を示した。また、暗所保存後及び連続光照射後において、いずれも低下率は9%以下と、比較例に比べて耐久性が向上していることがわかった。
【0296】
<実験12>
下記の方法に従って、色素増感太陽電池を作製し、評価した。その結果を表13に示す。
(1)透明導電性支持体の作製
感光性電極用支持体として、表面がフッ素コートされた厚さ0.4mmのシートの片面に、導電性の酸化スズの薄膜を厚さ200nmで均一にコーティングして可撓性のある透明導電性支持体を使用した。
【0297】
(2)対極用の導電性シートの作製
厚さ0.4mmのポリイミド製カプトン(登録商標)フィルムの片面に、真空スパッタリング法によって厚さ300nmの白金膜で均一に被覆した。面抵抗は5Ω/cmであった。
【0298】
(3)半導体微粒子分散液の調製
C.J.BarbeらのJ.Am.Ceramic Soc.80巻、p.3157の論文に記載の製造方法に従い、チタン原料にチタニウムテトライソプロポキシドを用い、オートクレーブ中での重合反応の温度を230℃に設定して、二酸化チタン濃度11質量%のアナターゼ型二酸化チタンの分散液を合成した。得られた二酸化チタン粒子の一次粒子のサイズは10〜30nmであった。得られた分散液を、超遠心分離機にかけて、粒子を分離し、凝集物を乾燥した後、メノウ乳鉢上で粉砕して白色粉末の半導体微粒子aを得た。水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100ccに、半導体微粒子aを溶媒100ccあたり32gの濃度で添加し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使って均一に分散、混合した。この結果、得られた白色の半導体微粒子分散液は、50〜150N・s/mの高粘度のペースト状となり、このまま塗布に用いるのに適した液物性をもっていることがわかった。試料番号12−6では、平均分子量が50万のポリエチレングリコール(PEG)の粉末を、溶媒100cc当たり7.7g配合した。その他の半導体微粒子分散液には、半導体微粒子以外の固形分は加えなかった。
【0299】
(4)半導体微粒子分散液中の固形分の測定
厚さ1.9mmの無アルカリガラスの基板に分散液をアプリケーターで塗布し、40〜70μmの厚さで塗布し、室温で1時間乾燥させた。その後、空気中、350℃で0.5時間加熱し、加熱前後の重量変化を測定したところ、前記試料番号12−6の半導体微粒子以外の固形分含量は1%であった。それ以外試料の半導体微粒子以外の固形分含量は、0.3%であった。
【0300】
(5)半導体微粒子層の作製
(1)で用意した透明導電性支持体に、(3)で調製した分散液をアプリケータで塗布し、室温下で1時間乾燥させることにより、40〜70μmの均一な厚さの塗布層を形成した。さらに、この塗布層を表12記載の条件で処理して、色素増感のための多孔質半導体微粒子層を作製した。多孔質半導体微粒子層の最終的な平均膜厚は、いずれも6〜7μmであった。
【0301】
(6)色素吸着溶液の調製
表12に示した色素を乾燥したアセトニトリル:t-ブタノール:エタノールを体積比で2:1:1の混合溶媒に、色素濃度が3×10−4モル/リットルとなるように溶解した。この色素溶液に添加剤として、p−C19−C−O−(CHCH−O)−(CH−SONaの構造の有機スルホン酸誘導体を0.025モル/リットルの濃度となるように溶解して、色素吸着用溶液を調製した。
【0302】
(7)色素の吸着
上記の多孔質半導体微粒子層を塗設した基板を、上記の吸着用色素溶液に浸漬して、攪拌下40℃で3時間放置した。
このようにして半導体微粒子層に色素を吸着させ、感光層に用いる色素増感電極(感光性電極)を作製した。
【0303】
(8)色素増感太陽電池の作製
色素吸着した多孔質半導体微粒子層をかき落として、受光面積1.0cm(直径約1.1cm)の円型の感光性電極を形成した。この電極に対して、対極の白金蒸着ガラス基板を、熱圧着性のポリエチレンフイルム製のフレーム型スペーサー(厚さ20μm)を挿入して重ね合わせ、スペーサー部分を120℃に加熱し両基板を圧着した。さらにセルのエッジ部をエポキシ樹脂接着剤でシールした。対極の基板のコーナー部にあらかじめ設けた電解液注液用の小孔を通して、電解液として、後述するいずれかのイミダゾリウムイオンE1〜E4/ヨウ素=50:1(質量比)の組成から成る室温溶融塩を基板の小孔から毛細管現象を利用して電極間の空間にしみこませた。
E1:1,2−ジメチル−3−プロピルイミダゾリウムヨージド
E2:1−ブチルー3−メチルイミダゾリウムヨージド
E3:1−メチルー3−プロピルイミダゾリウムヨージド
E4:1,3−ジ(2−(2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)イミダゾリウムヨージド
以上のセル組立工程と、電解液注入の工程をすべて上記の露点−60℃の乾燥空気中で実施した。溶融塩の注入後、真空下でセルを数時間吸引し感光性電極および溶融塩を含めたセル内部の脱気を行い、最終的に小孔を低融点ガラスで封じた。これにより、導電性支持体、色素が吸着された多孔質半導体微粒子電極(感光性電極)、電解液、対極および支持体が順に積層された色素増感太陽電池を作製した。
【0304】
(9)色素増感太陽電池の評価
500Wのキセノンランプ(ウシオ電気社製)に太陽光シミュレーション用補正フィルター(Oriel社製AM1.5direct(商品名))を装着し、上記色素増感太陽電池に対し、入射光強度が100mW/cmの模擬太陽光を、多孔質半導体微粒子電極(感光性電極)の側から照射した。素子は恒温装置のステージ上に密着して固定し、照射中の素子の温度を50℃に制御した。電流電圧測定装置(ケースレー社製ソースメジャーユニット238型(商品名))を用いて、素子に印加するDC電圧を10mV/秒の定速でスキャンし、素子の出力する光電流を計測することにより、光電流−電圧特性を測定した。これにより求められた上記の各種素子のエネルギー変換効率(η)を、セルの構成要素(半導体微粒子、増感色素)の内容とともに表13に記載した。24時間連続光照射後の変換効率の低下率も測定した。これらの結果を表13に示す。
【0305】
【表13】

【0306】
表13に示すように、導電性高分子製の導電性支持体に本発明の色素を吸着させた多孔質半導体微粒子層を形成した場合に、実用レベルの光電変換効率を有する色素増感太陽電池が得られた(試料番号12−1〜12−15及び12−20〜12−24)。特に半導体微粒子以外の固形分含量が0.3%の分散液を支持体に塗布し、熱処理を120〜150℃で行いその後紫外線照射し、その後本発明の色素を吸着させて多孔質半導体微粒子層を作製した場合は、光電変換効率が5%以上と高くなった(試料番号12−1〜12−5、12−10〜12−12、12−20〜12−23)。
また、固形分の含量が1.0質量%の分散液を導電性高分子製の支持体に塗布し加熱することにより多孔質半導体微粒子層を作製し、本発明の色素を吸着させた場合は、比較色素を吸着させた場合と比較して、高い変換効率の色素増感太陽電池が得られることがわかった(試料番号12−6と試料番号12−16〜12−19との比較)。さらに比較色素を用いた色素増感太陽電池の場合は、連続光照射後の変換効率の低下率が40%以上と高くなったのに対し、本発明の色素を用いた色素増感太陽電池の場合は、連続光照射後の変換効率の低下率が10%以下で、耐久性に優れることがわかった。
【0307】
<実験13>
<実験11>のエポキシ系封止剤として、エピコート828((商品名)、ジャパンエポキシレジン社製)、硬化剤及びプラスチックペーストからなる樹脂組成物中に直径25μmのガラス球体がほぼ均一に分散された封止剤ペーストを用いたこと以外は同様にして、色素増感太陽電池を作製し、光電変換効率の測定を行った。
これにより求めた各色素増感太陽学電池の変換効率(η)、85℃で1000時間暗所保存後の変換効率の低下率、及び500時間連続光照射後の変換効率の低下率を表14に示す。
【0308】
【表14】

【0309】
表14より、本発明の色素増感太陽電池は、変換効率の初期値はいずれも7.0%以上と高い値を示した。また、暗所保存後及び連続光照射後において、いずれも低下率は8.0%以下と、比較例に比べて耐久性が優れていることがわかった。
【0310】
<実験14>
ゾル−ゲル法によって調整した懸濁液を用いてスクリーン印刷によりTiOの多孔質層をFTOガラス上に塗布し450℃で焼成した。これを本発明の金属錯体色素D−1−2b及び下記色素S−1の10−4mol/Lエタノール溶液中に浸漬することで、これらの色素を多孔質層に吸着させた。
【化55】

【0311】
次に、100mgの2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレンを5mlのクロロホルムに溶解した。上記の、金属錯体色素D−1−2bと色素S−1が吸着された多孔質層に、このクロロホルム溶液を軽く塗布して、多孔質層の細孔内にしみこませた。次に溶液の一滴を直接表面に置いて室温で乾燥した。ついで被覆支持体を蒸着装置に装着して、約10−5ミリバールの真空下の熱蒸着によってさらに厚さ100nmの2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレンの層を形成した。さらに蒸着装置内でこの被覆支持体に対極として厚さ200nmの金の層を被覆した。
【0312】
このように調製した試料を高圧ランプ、光学フィルター、レンズおよびマウンティングを含む光学装置に取り付けた。フィルターを使用するとともに、レンズを適切な場所に設置することにより、照射光の強度を変えることができた。金の層とSnO層とに接点を付け、試料を照射している間、電流測定装置に示した装置に取り付けた。測定のために、適当な光学フィルターを用い波長が430nm未満の光を遮断した。さらに放射線の強度を約1000W/m)にほぼ一致するように装置を調整した。
【0313】
金の層およびSnO層に接点を付け、また試料を照射している間は両接点をポテンシオスタットに接続した。外部電圧をかけずに増感色素S−1を用いた試料では約90nAの電流を生じたが、本発明の色素化合物D−1−2bを用いた試料では約190nAの電流を生じた。どちらの試料の場合も照射しないと電流は消失した。
【0314】
<実験15>
特開2000−90989の実施例1と同様に作製したタンデムセルにおいて、本発明の金属錯体色素D−1−2bを用いた光電気化学電池と、前記比較色素S−1を用いた光電気化学電池を作製した。これらの光電気化学電池の変換効率を測定したところ、本発明の光電気化学電池の変換効率は、比較光電気化学電池に対し、50%大きな値を示し、優れた特性を示すことがわかった。
【0315】
<実験16>
以下に示す手順により、特開2003−217688号公報の図1に示した色素増感型太陽電池を作製した。
チタンイソプロポキシド125mlを0.1M 硝酸水溶液(キシダ化学株式会社製)750mlに滴下し、80℃で8時間加熱して、加水分解反応をさせることにより、ゾル液を調製した。得られたゾル液をチタン製オートクレーブにて250℃で15時間保持し、粒子成長させ、その後、超音波分散を30分間行うことにより、平均一次粒径20nmの酸化チタン粒子を含むコロイド溶液を得た。
得られた酸化チタン粒子を含むコロイド溶液を、エバポレーターにて、酸化チタンが10wt%の濃度になるまでゆっくりと濃縮した後、ポリエチレングレコール(キシダ化学株式会社製、重量平均分子量:200000)を酸化チタンに対する重量比で40%添加し、攪拌することにより、酸化チタン粒子が分散した懸濁液を得た。
透明導電膜2としてSnO膜を形成したガラス基板1の透明導電膜2側に、調製した酸化チタン懸濁液をドクターブレード法で塗布し、面積10mm×10mm程度の塗膜を得た。この塗膜を120℃で30分間予備乾燥し、さらに酸素雰囲気下、500℃で30分間焼成し、第1層多孔質光電変換層4の第1層多孔質半導体層となる、膜厚が10μm程度の酸化チタン膜を形成した。
次に、市販の酸化チタン微粒子(テイカ社製、製品名:TITANIX JA-1、粒径約180nm)4.0gと酸化マグネシウム粉末(キシダ化学株式会社製)0.4gを蒸留水20mlに入れ、塩酸でpH=1に調整した。さらに、ジルコニアビーズを加え、この混合溶液をペイントシェイカーで25℃で8時間分散処理した。その後、ポリエチレングレコール(キシダ化学株式会社製、重量平均分子量:200000)を酸化チタンに対する重量比で40%添加し、攪拌することにより、酸化チタン粒子が分散した懸濁液を得た。
第1層多孔質半導体層の酸化チタン膜を形成したガラス基板1の第1層多孔質半導体層上に、調製した酸化チタン懸濁液をドクターブレード法で塗布し、塗膜を得た。この塗膜を80℃で20分間予備乾燥し、さらに酸素雰囲気下、約500℃で60分間焼成し、第2層多孔質光電変換層5の第2層多孔質半導体層となる、膜厚が22μm程度の酸化チタン膜1を形成した。多孔質半導体層のへイズ率を測定したところ、84%であった。
吸収スペクトルにおける最大感度吸収波長領域を短波長側に有する色素(第1色素)として、下記式で表されるメロシアニン系色素S−2をエタノールに溶解して、濃度3×10−4モル/リットルの第1色素の吸着用色素溶液を調製した。
【0316】
【化56】

【0317】
透明導電膜2と多孔質半導体層3を具備したガラス基板1を、約50℃に加温した第1色素の吸着用色素溶液に10分間浸漬させて、多孔質半導体層3に第1色素を吸着させた。その後、ガラス基板1を無水エタノールで数回洗浄し、約60℃で約20分間乾燥させた。次いで、ガラス基板1を0.5N-塩酸に約10分間浸漬させ、その後エタノールで洗浄して、第2層多孔質半導体層に吸着された第1色素を脱着した。さらに、ガラス基板1を約60℃で約20分間乾燥させた。
次に、吸収スペクトルにおける最大感度吸収波長領域を長波長側に有する色素(第2色素)として、比較色素S−1、及び本発明の色素D−1−2bをエタノールに溶解して、濃度3×10−4モル/リットルの第2色素の吸着用色素溶液を調製した。
透明導電膜2と多孔質半導体層3を具備したガラス基板1を、室温、常圧で第2色素の吸着用色素溶液に15分間浸漬させて、多孔質半導体層3に第2色素を吸着させた。その後、ガラス基板1を無水エタノールで数回洗浄し、約60℃で約20分間乾燥させた。ここで多孔質半導体層のへイズ率を測定したところ、84%(S−1を使用した場合)、85%(本発明の色素を使用した場合)であった。
次に、3-メトキシプロピオニトリル溶媒に、ジメチルプロピルイミダゾリウムヨージドが濃度0.5モル/リットル、ヨウ化リチウムが濃度0.1モル/リットル、ヨウ素が濃度0.05モル/リットルになるように溶解させて、酸化還元性電解液を調製した。第1色素と第2色素を吸着させた多孔質半導体層3を具備したガラス基板1の多孔質半導体層3側と、対向電極層8として白金を具備したITOガラスからなる対極側支持体20の白金側とが対向するように設置し、その間に調製した酸化還元性電解液を注入し、周囲をエポキシ系樹脂の封止材により封止して、色素増感型太陽電池を完成した。
また、第2層多孔質半導体層を第1多孔質半導体層と同じ層とする、すなわち第1多孔質半導体層を形成する酸化チタン懸濁液を用いて第2層多孔質半導体層を形成すること以外は、酸化チタン膜1と同様に酸化チタン膜2を作成し、これを用いて同様に太陽電池を作製し、評価した。多孔質光電変換層のヘイズ率は15%(S−1を使用した場合)、16%(本発明の色素D−1−2bを使用した場合)であった。
【0318】
得られた太陽電池を測定条件:AM−1.5(100mW/cm2)で評価した結果を表15に示した。変換効率は、3.5%以上のものを◎、2.5%以上3.5%未満のものを○、2.0%以上2.5%未満のものを△、2.0%未満のものを×として表示した。
【表15】

【0319】
本発明の色素は光電変換効率に優れ、この系でも有効であることがわかる。
【0320】
<実験17>
市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、平均粒径20nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlとを、硬質ガラスビーズを使用してペイントシェイカーにより6時間分散させて酸化チタン懸濁液を作成した。次いで、この酸化チタン懸濁液を、ドクターブレードを用いて、予め酸化スズ導電層を付着させたガラス板(電極層)に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、電気炉で500℃で40分間焼成し、ガラス板上に酸化チタン膜(半導体材料)を形成した。これとは別に、本発明の増感色素及び比較色素をエタノールに溶解して光増感色素溶液を得た。
この光増感色素溶液の濃度は5×10−4モル/リットルであった。次に、この溶液中に、膜状の酸化チタンが形成された前記のガラス板を入れ、60℃で60分間色素吸着を行った後、乾燥することにより、ガラス板上に半導体材料及び光増感色素からなる光電変換層を形成した(試料A)。前記試料Aの光電変換層上に、ホール輸送材料としてのポリビニルカルバゾール(重量平均分子量3,000)のトルエン溶液(1%)を塗布して、減圧乾燥してホール輸送層を形成した(試料B)。分子間電荷移動錯体としてのエチルカルバゾール1.95g及び5-ニトロナフトキノン2.03gを100mlアセトンに溶解して、得られた溶液を試料Bのホール輸送層上に繰り返し塗布して伝導層を形成した。次いで、伝導層上に金電極(対電極)を蒸着して光電変換素子を得た(試料C)。得られた光電変換素子(試料C)にソーラーシミュレーターで100W/mの強度の光を照射した。結果を表16に示した。変換効率は、1.5%以上のものを◎、1.0%以上1.5%未満のものを○、0.5%以上1.0%未満のものを△、0.5%未満のものを×として表示した。
【0321】
【表16】

【0322】
本発明の色素は光電変換効率に優れ、この系でも有効であることがわかる。
【0323】
<実験18>
(1)第1光電変換層の形成
市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社製、平均粒径30nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlを硬質ガラスビーズを使用しペイントシェイカーにより6時間分散させ酸化チタン懸濁液を作成した。次いで、この酸化チタン懸濁液をドクターブレードを用いて、予め酸化スズ導電層が付着されたガラス板に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、電気炉で500℃で40分間焼成し、酸化チタン膜を得た。
これとは別に、下記S−3で表された色素〔cis−dithiocyanine−N−bis(2,2‘−bipyridyl−4,4’−dicarboxylic acid) ruthenium〕をエタノールに溶解した。
【0324】
【化57】

【0325】
この色素の濃度は3×10−4モルであった。次に、この溶液中に膜状の酸化チタンを形成した前記のガラス板を入れ、60℃で720分間色素吸着を行ってから乾燥し、本発明の第1光電変換層(試料A)を得た。
【0326】
(2)第2光電変換層の形成
市販の酸化ニッケル粒子(キシダ化学、平均粒径100nm)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlをガラスビーズを使用しペイントシェイカーで8時間分散させ酸化ニッケル懸濁液とした。次いで、この酸化チタン懸濁液をドクターブレードを用いて、酸化スズ導電層が付着されたガラス板に塗布し、100℃で30分予備乾燥した後、300℃で30分間焼成し、酸化ニッケル膜を得た。
これとは別に、本発明の色素及び比較色素S−1をジメチルスルホキシドに溶解した。
【0327】
この色素の濃度は1×10−4モルであった。次に、この溶液中に膜状の酸化チタンを形成した前記のガラス板を入れ、70℃で60分間色素吸着を行ってから乾燥し、本発明の第2光電変換層(試料B)を得た。
【0328】
(3)前記の試料A上に試料Bを重ね、これら2つの電極の間に液体電解質を入れ、この側面を樹脂で封止した後、リード線を取付けて、本発明の光電変換素子(素子構成C)を作成した。なお、液体電解質は、アセトニトリル/炭酸エチレンの混合溶媒(体積比が1:4)に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドとヨウ素とを、それぞれの濃度が0.46モル/L、0.06モル/Lとなるように溶解したものを用いた。
【0329】
また、前記の試料Aを一方の電極として備え、対電極として白金を担持した透明導電性ガラス板を用いた。2つの電極の間に液体電解質を入れ、この側面を樹脂で封止した後、リード線を取付けて、比較用の光電変換素子(素子構成D)を作成した。
得られた光電変換素子(試料C、及びD)にソーラーシミュレーターで1000W/mの強度の光を照射した。変換効率は、6.5%以上のものを◎、6.0%以上6.5%未満のものを○、5.0%以上6.0%未満のものを△、5.0%未満のものを×として表示した。
【0330】
【表17】

【0331】
本発明の色素は光電変換効率に優れ、この系でも有効であることがわかる。
【0332】
<実験19>
高分子電解質を用いた色素増感型太陽電池を作製した例について説明する。
【0333】
酸化チタン膜を作製する塗液は、市販の酸化チタン粒子(テイカ株式会社社製、商品名AMT−600、アナターゼ型結晶、平均粒径30nm、比表面積50m/g)4.0gとジエチレングリコールモノメチルエーテル20mlとをガラスビーズを使用し、ペイントシェイカーで7時間分散させ、ビーズを除いて、酸化チタン懸濁液を調製した。この酸化チタン懸濁液をドクターブレードを用いて、11μm程度の膜厚、10mm×10mm程度の面積で、SnOを透明導電膜としてガラス基板1上に作製された基板上に、透明導電膜側に塗布し、100℃で30分間予備乾燥した後、460℃で40分間酸素下で焼成し、その結果、膜厚が8μm程度の酸化チタン膜Aを作製した。

【0334】
次に本発明の金属錯体色素又は比較用色素を無水エタノールに濃度3×10−4モル/リットルで溶解させ吸着用色素溶液を作製した。この吸着用色素溶液と、上述で得られた酸化チタン膜と透明導電膜を具備した透明基板とを、それぞれ容器に入れ、40℃約4時間浸透させることにより色素を吸着させた。その後、無水エタノールで数回洗浄し約60℃で約20分間乾燥させた。
次に、高分子化合物が一般式(105)で表されるメタクリレート系モノマー単位のうち、Rをメチル基、Aを8個のポリエチレンオキサイド基と2個のポリプロピレンオキサイド基と中心核としてブタンテトライル基により構成されるモノマー単位を使用した。
一般式(105)
【0335】
【化58】

[式中、Rはメチル基であり、Aはエステル基と炭素原子で結合している残基であり、nは2〜4である。]
このモノマー単位をプロピレンカーボネート(以下、PCと記載する)に20質量%の濃度で溶解させ、また、熱重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマー単位に対して1質量%の濃度で溶解させモノマー溶液を作製する。このモノマー溶液を上述の酸化チタン膜に含浸させる手順について以下に示す。
真空容器内にビーカー等の容器を設置し、その中に前記の透明導電膜を具備して色素を吸着させた透明基板上の酸化チタン膜Aを入れ、ロータリーポンプで約10分間真空引きする。真空容器内を真空状態に保ちながらモノマー溶液をビーカー内に注入し、約15分間含浸させ酸化チタン中にモノマー溶液を十分に染み込ます。ポリエチレン製セパレーター、PETフィルムと押さえ板を設置し冶具にて固定する。その後、約85℃で30分間加熱することにより、熱重合させ高分子化合物を作製する。
【0336】
次に、高分子化合物に含浸させる酸化還元性電解液を作製する。酸化還元性電解液は、ポリカーボネート(PC)を溶媒として濃度0.5モル/リットルのヨウ化リチウムと濃度0.05モル/リットルのヨウ素を溶解させて作製した。この溶液中に上述の酸化チタン膜Aに作製した高分子化合物を約2時間浸すことにより、高分子化合物中に酸化還元性電解液を染み込ませて高分子電解質を作製した。
【0337】
その後、白金膜を具備した導電性基板を設置し、エポキシ系の封止剤にて周囲を封止し素子Aを作成した。
また、酸化チタン膜Aを色素吸着後、前述のモノマー含浸処理を行わずに、PCを溶媒として濃度0.5モル/リットルのヨウ化リチウムと濃度0.05モル/リットルのヨウ素を溶解させて作製した酸化還元電解液をそのまま対極との間に注入して封止して素子Bを作成した。素子A、Bを用いて、ソーラーシミュレーターで1000W/mの強度の光を照射した。結果を表18に示した。変換効率は、3.5%以上のものを◎、2.5%以上3.5%未満のものを○、2.0%以上2.5%未満のものを△、2.0%未満のものを×として表示した。
【0338】
【表18】

【0339】
本発明の色素を用いることによって、光電変換効率に優れ、この系でも有効であることがわかる。
【0340】
<実験20>
(光電変換素子の作製)
図1に示す光電変換素子を以下のようにして作製した。
ガラス基板上に、透明導電膜としてフッ素をドープした酸化スズをスパッタリングにより形成し、これをレーザーでスクライブして、透明導電膜を2つの部分に分割した。
次に、水とアセトニトリルの容量比4:1からなる混合溶媒100mlにアナターゼ型酸化チタン(日本アエロジル社製のP−25(商品名))を32g配合し、自転/公転併用式のミキシングコンディショナーを使用して均一に分散、混合し、半導体微粒子分散液を得た。この分散液を透明導電膜に塗布し、500℃で加熱して受光電極を作製した。
その後、同様にシリカ粒子とルチル型酸化チタンとを40:60(質量比)で含有する分散液を作製し、この分散液を前記の受光電極に塗布し、500℃で加熱して絶縁性多孔体を形成した。次いで対極として炭素電極を形成した。
次に、下記表17に記載された増感色素(複数混合または単独)のエタノール溶液に、上記の絶縁性多孔体が形成されたガラス基板を5時間浸漬した。増感色素の染着したガラスを4−tert−ブチルピリジンの10%エタノール溶液に30分間浸漬した後、エタノールで洗浄し自然乾燥させた。このようにして得られる感光層の厚さは10μmであり、半導体微粒子の塗布量は20g/mであった。電解液は、ヨウ化ジメチルプロピルイミダゾリウム(0.5モル/L)、ヨウ素(0.1モル/L)のメトキシプロピオニトリル溶液を用いた。
【0341】
(光電変換効率の測定)
500Wのキセノンランプ(ウシオ製)の光をAM1.5Gフィルター(Oriel社製)およびシャープカットフィルター(KenkoL−42、商品名)を通すことにより紫外線を含まない模擬太陽光を発生させた。この光の強度は89mW/cmであった。作製した光電変換素子にこの光を照射し、発生した電気を電流電圧測定装置(ケースレー238型、商品名)にて測定した。これにより求められた光電気化学電池の変換効率を測定した結果を下記表19に示した。結果は、変換効率が7.5%以上のものを◎、7.3%以上7.5%未満のものを○、7.1%以上7.3%未満のものを△、7.1%未満のものを×として評価した。
【0342】
【表19】

【0343】
増感色素D、増感色素Eの構造は以下に示した。
【0344】
【化59】

【0345】
【化60】

【0346】
本発明の色素を用いて作製された電気化学電池は、表1に示されているように、本出願の色素の組み合わせを使用した場合は、変換効率は7.5%以上と高い値を示した。その他のそれに対して、比較例は、変換効率は7.1%未満と不十分であった。
【符号の説明】
【0347】
1 導電性支持体
2 感光体層
21 色素
22 半導体微粒子
3 電荷移動体層
4 対極
5 受光電極
6 回路
10 光電変換素子
100 光電気化学電池

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される構造の配位子LLが少なくとも1つ以上金属原子に配位してなることを特徴とする金属錯体色素。
【化61】

[ただし、
、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
Ar及びArは独立にアリール基、ヘテロアリール基を表す。
Zaは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。
S0は0または1を表す。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
,R、Ar,Ar及びZaのうち少なくとも一つは酸性基を有する。]

【請求項2】
一般式(I)で表される構造の配位子LLが下記一般式(II)、(III)又は(IV)で表されることを特徴とする請求項1に記載の金属錯体色素。
【化62】

[ただし、
、Rは独立して、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基を表す。
Ar及びArは独立にアリール基、ヘテロアリール基を表す。
Zaは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。
S1は0または1を表す。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
はZaまたはArと結合して環を形成しても良い(ただし、形成する環として芳香環は除く)。
,R、Ar,Ar及びZaのうち少なくとも一つは酸性基を有する。]
【化63】

(ただし、
は酸性基を表す。
Zbは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。
Ar及びArは独立にアリール基、へテロアリール基を表す。
S2は0または1を表す。)
【化64】

[ただし、Zcは5または6員環を形成しうる非金属原子群を表す。Ar及びArは独立にへテロアリール基または一般式(V)を表す。Ar、Arのうち少なくとも一つは酸性基を有する。S3は0または1を表す。]
【化65】

[一般式(V)中、R、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基を表す。R、Rは独立して水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、酸性基を表す。RとR、RとRは互いに環を形成してもよい。Aは酸性基を表す。一般式(V)は左側の結合手が単結合を介して一般式(IV)のNと結合する]
【請求項3】
前記金属錯体色素が、下記一般式(VI)で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の金属錯体色素。
【化66】

[ただし、Mは金属原子を表す。LLは一般式(I)と同義であり、pは1〜3の整数を表す。LLは下記一般式(VII)で表され、qは0〜2の整数を表す。Zは1座または2座の配位子を表し、rは0〜4の整数を表す。rが2のときZは同じでも異なっていてもよく、Z同士が連結していてもよい。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化67】

[R及びR10は独立に置換基を有してよいアルキル基、アリール基、ヘテロ環基を表す。L及びLは独立に単結合、エテニレン基、エチニレン基、アリーレン基及び/またはヘテロアリーレン基からなる2価の連結基を表す。n1は0または1を表す。A及びAは独立に酸性基を表し、a1及びa2は各々0〜3の整数を表す。R11及びR12は独立に置換基を表し、b1及びb2は各々0〜3の整数を表す。b1が1以上のときR11はLと連結して環を形成していてもよく、b2が1以上のときR12はLと連結して環を形成していてもよい。b1が2以上のとき、R11同士は同じでも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b2が2以上のときR12同士は同一でも異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。b1及びb2がともに1以上のときR11とR12が連結して環を形成していてもよい。]
【請求項4】
前記Mが、Ru、Re、Rh、Pt、Fe、Os、Cu、Ir、Pd、W又はCoであることを特徴とする請求項3に記載の金属錯体色素。
【請求項5】
前記MがRu又はOsであることを特徴とする請求項4記載の金属錯体色素。
【請求項6】
前記一般式(VI)において、p=2かつq=0、又はp=1かつq=1であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の金属錯体色素。
【請求項7】
前記Za、Zb及びZcが、6員環であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載の金属錯体色素。
【請求項8】
前記一般式(VI)において、LLが前記一般式(II)又は(III)で表されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項記載の金属錯体色素。
【請求項9】
前記一般式(VI)において、LLが前記一般式(II)で表されることを特徴とする請求項8記載の金属錯体色素。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の構造で表される光電変換素子用色素。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属錯体色素と半導体微粒子とを有する感光体層を具備することを特徴とする光電変換素子。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれか1項に記載の金属錯体色素及び下記一般式(VIII)で表される金属錯体色素からそれぞれ選ばれた少なくとも1種類ずつの色素と、半導体微粒子とを含有する感光体を具備してなることを特徴とする光電変換素子。
(LLm1(LLm2(Xm3・CI (一般式VIII)
[ただし、Mは一般式(VI)のMと同義である。LLは前記一般式(VI)中のLLと同義である。LLは下記一般式(IX)で表される2座又は3座の配位子である。Xは一般式(VI)のX1と同義である。m1は0〜3の整数を表す。m1が2以上のときLL同士は同じでも異なっていてもよい。m2は0〜2の整数を表す。m2が2以上のときLL同士は同じでも異なっていてもよい。m3は0〜3の整数を表す。m3が2以上のときX同士同じでも異なっていてもよい。X同士が連結していてもよい。CIは電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。]
【化68】

[ただし、Zd、ZeおよびZfはそれぞれ独立に5または6員環を形成しうる非金属原子群を表し、cは0または1を表す。]
【請求項13】
請求項10又は11に記載の光電変換素子を備えることを特徴とする光電気化学電池。

【図1】
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【公開番号】特開2012−36238(P2012−36238A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174830(P2010−174830)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】