説明

金属錯体

本発明は新規金属錯体に関する。このタイプの化合物を、電子産業における幅広い範囲の様々な用途における機能性材料として用いることができる。本発明の化合物は式(1)および(1a)の通りに定義される。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は新規材料および材料の混合物、エレクトロルミネセンス素子におけるその使用、並びにそれらに基づくディスプレイを記載する。
【0002】
有機金属化合物、特にd金属の化合物は、近い将来において、最も広い意味で電子産業の一部であるとみなされ得る幅広い種々の用途における、例えば有機エレクトロルミネセンスデバイスにおける機能性材料として用いられるであろう。このようなデバイスの一般構造は、例えば US 4,539,507 および US 5,151,629 に記載されている。有機エレクトロルミネセンスデバイスは通常、真空法または印刷法を用いて互いに重ねて設けられる複数の層から成る。有機エレクトロルミネセンスデバイス(OLED)は、パイオニア社製のカーラジオ、および「有機ディスプレイ」を有するパイオニア社およびSNMD社製の携帯電話が実証するように市場における導入が既に始まっている。さらなるこのような製品が近いうちに導入されるであろう。
【0003】
近年行われている1つの開発は、蛍光の代わりにリン光を示す有機金属錯体の使用である(M. A. Baldo et al., Appl. Phys. Lett. 1999, 75, 4-6)。量子力学上の理由のために、エネルギ効率およびパワー効率における1〜4倍の増加が、リン光発光体として有機金属化合物を用いた際に可能である。この開発が確立するか否かは、OLEDにおいてこれらの利点(一重項発光=蛍光と比較した三重項発光=リン光)を利用することができる適切なデバイス組成物が見出されるか否かによって決まる。ここでの重要な条件は、特に長い駆動寿命と高い熱的安定性である。
【0004】
しかしながら、三重項発光を示すOLEDは、至急の改善を要するかなりの問題を今なお有している。このことは、三重項発光体それ自体に特に当てはまる。式Aおよび式Bの構造であるイリジウムに配位した1−フェニルイソキノリン配位子を含む金属錯体に基づく赤色発光体が文献(例えば、US 2003/0068526、WO 2003/000661)により知られている。ここに示す構造は、フェニル環とイソキノリン環との間に架橋が存在しない(式A)か、架橋が存在する(式B)という点で異なる。この架橋は2〜20個のアルキル炭素原子を含み、これはヘテロ原子により置き換えられていてもよい。
【化7】

【0005】
このタイプの化合物は赤色発光体として適しているが、実際には、これらの化合物の工業的な使用を否定するであろういくつかの決定的な弱点を有する。
【0006】
1.致命的な欠陥は、上記した化合物の低い熱的安定性である。つまり例えば、ホモレプティックな錯体であるfac−トリス(1−フェニルイソキノリン−C,N)イリジウム(III)(一般的にIr(piq)と称される)は昇華させると必ず分解を伴う。典型的な高真空条件(p<10−7mbar)下においても、この化合物のかなりの分解が観察され、用いたIr(piq)の量の約30重量%の割合を占めるイリジウム含有灰だけでなく、1−フェニルイソキノリンおよび他の低分子量化合物の遊離も観察される。この熱分解は、乏しい再現性を有するデバイス特性を導き、寿命にも特に悪影響を与える。また、昇華による金属錯体の精製において、より熱的に安定な錯体を入手することが望まれる。というのは、分解は錯体の大きな損失をもたらすためである。
【0007】
2.駆動寿命は一般的になおあまりに低く、これは高品質で長寿命のデバイスにおけるリン光を発光するOLEDの導入を阻止している。
【0008】
3.錯体はしばしば、有機溶媒中で低い溶解性しか有さず、これは再結晶またはクロマトグラフィーによる効率的な精製をさらにいっそう困難または不可能なものにしている。このことは、ディスプレイの製造において要求されるような比較的大量の精製に当てはまる。
【0009】
4.錯体は、特に溶液状態で非常に酸化に敏感である。これらの化合物の精製、貯蔵、輸送および処理は不活性ガス下で行われる必要があり、これは工業的に非常に費用がかかり、従って大きな欠点を示す。
【0010】
特に、錯体の寿命と熱的安定性とを同時に改善することが有利であろう。従って、上記の弱点を被らず、しかし効率および発光色という点では既知の金属錯体と少なくとも同等である化合物についての要求が存在する。
【0011】
改善された熱的安定性を有する錯体が WO 04/081017 に記載されている。しかしながら、これらの錯体の配位子の合成は非常に複雑であり、従ってより容易に入手できる配位子、並びに良好な電子的性質および高い熱的安定性を有する錯体が有利であろう。
【0012】
驚くべきことに、一般的に用いられ、上に示した化合物において用いられる5員環のキレート環に変えて、6員環のキレート環を用いる特定の新規化合物がOLEDにおける三重項発光体として優れた性質を有することがここに見出された。例として、イリジウム5員環キレートおよびイリジウム6員環キレートを以下に示す。Dは配位原子、例えば窒素であり、Cは通常通り炭素である。
【化8】

【0013】
OLEDにおける使用のための、6員環のキレート環および7員環のキレート環を有するいくつかの金属錯体が文献中に記載されている。
【0014】
中でも、EP 1211257 は金属錯体を記載しており、これはフェニル環およびピリジン環との間に非共役単位X、例えばO、S、CR等を有し、6員環および非連続的な共役配位子系を有するキレート錯体の形成をもたらす。これらの錯体は上記の特許出願の例により示されるように青色〜オレンジ−赤色の発光を示すが、濃い赤色発光の生成には明らかに適しておらず、これは配位子の共役の欠如に起因していると思われる。しかしながら、目下、濃い赤色発光と良好な電子的性質と高い熱的安定性とを有する化合物が切実に欠けている。さらに、挙げた特許出願において記載されている化合物を含む発光ダイオードについては、非常に高い駆動電圧が必要とされる。つまり、例えば、8〜12Vの電圧が青色発光について報告されている。これは用途には不適切であり、これもまた配位子の共役の欠如に起因するのかもしれない。従って、どのようにこのような6員環のキレート構造を有益に用いることができるかということを理解することができない。
【0015】
JP 2003/342284 は、6員環のキレート環を有する同様の錯体を記載しており、ここで単位Xは、さらに大きな環系の一部である。特に、Xはカルバゾール系の窒素であるか、フルオレンの9位における炭素である。この場合もその配位子が非共役である系の形成をもたらす。この理由のために、上記した同じ欠点をここでも予想することができる。
【0016】
JP 2004/111193 は、7員環のキレート環を有する共役錯体および非共役錯体を記載している。
【0017】
本発明は式(1)
M(L)n(L’)m(L’’)o 式(1)
の化合物であって、式(2)
【化9】

【0018】
(式中、用いられる記号および添え字は以下の意味を有する。すなわち、
Mは各々の出現について遷移金属であり、
Dは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、Mに配位する非結合性の電子対を有するsp混成のヘテロ原子であり、
Cは各々の出現についてMに結合するsp混成炭素原子であり、
Eは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれsp混成炭素原子または窒素原子であり、
Zは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれC(R)またはNRであり、
Cy1は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、sp混成炭素原子を介してMに結合し、且つR基への結合を有していてもよい同素環または複素環であり、
Cy2は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、原子Dを介してMに配位し、且つR基への結合を有していてもよい複素環であり、
Rは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、H、F、CN、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基若しくはアルコキシ基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(ここで、いずれの場合においても1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−(C=NR)−、−P=O(R)−、SO、SOまたは−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上のH原子はFにより置き換えられていてもよい)、または5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環系若しくは複素芳香族環系若しくはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1個以上の非芳香族R基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、RはCy1および/またはCy2の一方または双方と共にさらなる脂肪族環系、芳香族環系、または複素芳香族環系を形成することも可能であり、
は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、H、または1〜30個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基であり、
nは1、2または3である)
の基本構造M(L)nを含有する化合物
(ここで、式(1)における配位子L’およびL’’は、単座キレート配位子または二座キレート配位子であり、mおよびoは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ0、1または2であり、かつn+m+o=2または3である)
を提供する。
【0019】
本発明の目的上、混成は原子軌道の線形結合である。つまり、1つの2s軌道と2つの2p軌道の線形結合が3つの等価なsp混成軌道を形成し、これは互いに120°の角度を形成する。残りのp軌道は、例えば芳香族系においてπ結合を形成することができる。
【0020】
本発明の目的上、C−C40−アルキル基(ここで個々のH原子またはCH基は、上記した基により置き換えられていてもよい)は、特に好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、2−メチルブチル基、n−ペンチル基、s−ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、n−オクチル基、シクロオクチル基、2−エチルヘキシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、エテニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、シクロペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、ヘプテニル基、シクロヘプテニル基、オクテニル基、シクロオクテニル基、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基またはオクチニル基のうちの1つである。C−C40−アルコキシ基は、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、i−プロポキシ、n−ブトキシ、i−ブトキシ、s−ブトキシ、t−ブトキシ、または2−メチルブトキシである。芳香族環系または複素芳香族環系(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ上記したR基により置換されていてもよく、さらに芳香族化合物または複素芳香族化合物にどの位置を介して結合していてもよい)は、特に、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ペリレン、フルオランテン、ナフタセン、ペンタセン、ベンゾピレン、ビフェニル、ビフェニレン、テルフェニル、テルフェニレン、フルオレン、スピロビフルオレン、ジヒドロフェナントレン、ジヒドロピレン、テトラヒドロピレン、シス−若しくはトランス−インデノフルオレン、トルキセン(truxene)、イソトルキセン、スピロトルキセン、スピロイソトルキセン、フラン、ベンゾフラン、イソベンゾフラン、ジベンゾフラン、チオフェン、ベンゾチオフェン、イソベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン、ピロール、インドール、イソインドール、カルバゾール、ピリジン、キノリン、イソキノリン、アクリジン、フェナントリジン、ベンゾ−5,6−キノリン、ベンゾ−6,7−キノリン、ベンゾ−7,8−キノリン、フェノチアジン、フェノキサジン、ピラゾール、インダゾール、イミダゾール、ベンゾイミダゾール、ナフトイミダゾール、フェナントロイミダゾール、ピリジイミダゾール、ピラジンイミダゾール、キノキサリンイミダゾール、オキサゾール、ベンゾオキサゾール、ナフトオキサゾール、アントロオキサゾール、フェナントロオキサゾール、イソオキサゾール、1,2−チアゾール、1,3−チアゾール、ベンゾチアゾール、ピリダジン、ベンゾピリダジン、ピリミジン、ベンゾピリミジン、キノキサリン、1,5−ジアザアントラセン、2,7−ジアザピレン、2,3−ジアザピレン、1,6−ジアザピレン、1,8−ジアザピレン、4,5−ジアザピレン、4,5,9,10−テトラアザペリレン、ピラジン、フェナジン、フェノキサジン、フェノチアジン、フルオルビン、ナフトリジン、アザカルバゾール、ベンゾカルボリン、フェナントロリン、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、1,2,3−オキサジアゾール、1,2,4−オキサジアゾール、1,2,5−オキサジアゾール、1,3,4−オキサジアゾール、1,2,3−チアジアゾール、1,2,4−チアジアゾール、1,2,5−チアジアゾール、1,3,4−チアジアゾール、1,3,5−トリアジン、1,2,4−トリアジン、1,2,3−トリアジン、テトラゾール、1,2,4,5−テトラジン、1,2,3,4−テトラジン、1,2,3,5−テトラジン、プリン、プテリジン、インドリジン、およびベンゾチアジアゾールから誘導される基である。
【0021】
Cy1およびCy2は、好ましくは、芳香族系または複素芳香族系である。さらに、さらなる環状の脂肪族系または芳香族系がCy1およびCy2に縮合していてもよく、並びに/またはCy1および/若しくはCy2は、当然のことながら、置換されていてもよい。ここでは、好ましい置換基は以下に記載するR基である。
【0022】
式(2a)の基本構造M(L)nを含有する式(1)の化合物が好ましい
【化10】

【0023】
(式中、Z、R、L’、L’’、n、mおよびoは上記で定義した通りであり、さらなる記号は以下の意味を有する。すなわち、
Mは各々の出現について、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、PtまたはAuであり、
Dは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ窒素またはリンであり、
Xは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれCR、NまたはPであるか、または
(X−X)または(X=X)(すなわち、2つの隣接するX基)は、NR、S、またはOを表し、但し、Cy1およびCy2はそれぞれ、5員環または6員環を形成する、または
(X−X)または(X=X)(すなわち、2つの隣接するX基)は、対応する環における記号EがNを表す場合には、CR、NまたはPを表し、
Eは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれCまたはNであり、但し記号EがNを表す場合には、対応する環における正確に1つの単位X−X(すなわち、2つの隣接するX基)は、CR、NまたはPであり、従って、その際環は5員環であり、
Rは既に定義した通りであり、かつXまたはRと共に環系を形成していてもよく、
は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれH、F、Cl、Br、I、OH、NO、CN,N(R、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(ここで、1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−(C=NR)−、−P=O(R)−、SO、SO、−COOR−、または−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上のH原子はF、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられていてもよい)、または芳香族環系若しくは複素芳香族環系若しくはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上の非芳香族R基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、同じ環状または異なる環状の複数の置換基R、またはRおよびRおよび/またはRは、互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系または芳香族環系を形成していてもよい)。
【0024】
本発明の特に好ましい態様は、式(1a)
M(L)n(L’)m(L’’)o 式(1a)
であって、各々の出現について同一であるか異なる式(2b)の少なくとも1つの基本構造M(L)n
【化11】

【0025】
を含有し、かつ各々の出現について同一であるか異なる式(3)の基本構造M(L’)m
【化12】

【0026】
を場合により含有する式(1a)の化合物を提供する
(式中、M、D、R、R、R、L’’、n、mおよびoは上記に定義した通りであり、さらなる記号は以下の意味を有する。すなわち、
Xは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれCR、NまたはPであり、または
(X−X)または(X=X)(すなわち、2つの隣接するX基)は、NR、SまたはOを示し、但しCy1およびCy2はそれぞれ、5員環または6員環であり、
Aは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ−CR=CR−、−N=CR−、−P=CR−、−N=N−、−P=N−、NR、PR、O、SまたはSeである)。
【0027】
式(1)または式(1a)の化合物であって、式(2c)、式(2d)または式(2e)の基本構造M(L)nを含有する化合物が非常に特に好ましい
【化13】

【0028】
(式中、M、X、D、R、R、Rおよびnは上記で定義した通りであり、記号Yは以下の意味を有する。すなわち、
Yは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、−C(R−、−C(=O)−、−C[=C(R]−、−C(R−C(R−、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(R−C(R−C(R−、−C(R−O−C(R−、−C(R−N(R)−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−O−、−S−、−N(R)−、−P(R)−、−P(=O)(R)−、および−B(R)−の中から選択される)。
【0029】
本発明の目的に適するモノアニオン性の二座配位子L’’は、アセチルアセトン、ベンゾイルアセトン、1,5−ジフェニルアセチルアセトン、ビス(1,1,1−トリフルオロアセチル)メタンのような1,3−ジケトンから誘導される1,3−ジケトナート、アセト酢酸エチルのような3−ケトエステルから誘導される3−ケトナート、ピリジン−2−カルボン酸、キノリン−2−カルボン酸、グリシン、N,N−ジメチルグリシン、アラニン、N,N−ジメチルアラニンのようなアミノカルボン酸から誘導されるカルボキシラート、メチルサリチルイミン、エチルサリチルイミン、フェニルサリチルイミンのようなサリチルイミンから誘導されるサリチルイミナート(iminate)、並びに窒素含有複素環のホウ酸エステル、例えばテトラキス(1−イミダゾリル)ボラートおよびテトラキス(1−ピラゾリル)ボラートである。
【0030】
配位子Lは、共役系であるか、または交差共役系のいずれかである。共役系は、置換基Rの少なくとも1つと環Cy1および/またはCy2が芳香族環系を形成する際に生じる。一方で、交差共役系は、置換基RとCy1またはCy2が芳香族環系を形成しない、すなわち、Rが脂肪族環系を形成するか、Cy1またはCy2と共には環を形成しない場合に生じる。
【0031】
本発明の特に好ましい態様において配位子系は堅固な系であり、すなわち、2つの置換基Rは互いに環Cy1および環Cy2と共に、式(2e)におけるように5員環または6員環を形成する。
【0032】
本発明のさらに特に好ましい態様において、配位子は5員環キレート環が、金属への配位により形成され得るような構造および置換パターンを有する。
【0033】
記号M=Rh、Ir、PdまたはPtである式(1)または式(1a)の化合物も好ましく、M=IrまたはPtであることが特に好ましく、M=Irであることが非常に特に好ましい。
【0034】
記号n=2または3である式(1)または式(1a)の化合物も好ましい。記号o=0である化合物が特に好ましい。記号m=o=0である化合物が非常に特に好ましい。特に、パラジウム錯体および白金錯体および平面四角形配位を有する他の金属の場合にはn=2かつm=o=0であり、並びにロジウム錯体およびイリジウム錯体および八面体配位を有する他の金属の場合にはn=3かつm=o=0である。
【0035】
記号Z=C(R)である式(1)または式(1a)の化合物も好ましい。
【0036】
記号D=Nである式(1)または式(1a)の化合物も好ましい。
【0037】
記号X=CRまたはNであり、特にX=CRである式(1)または式(1a)の化合物も好ましい。
【0038】
式(2c)、(2d)および(2e)における記号Yが、−C(R−、−C(=O)−、−C(R−C(R−、−C(R−N(R)−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−O−、−S−、および−N(R)−である式(1)または式(1a)の本発明の化合物が好ましい。記号Yは、特に好ましくは、−C(R−、−C(R−C(R−、−C(R)=C(R)−、−S−、または−N(R)−である。
【0039】
本発明のさらに好ましい態様において、2つまたは3つの配位子Lおよび/またはL’および/またはL’’は、R基を介して結合して多座系またはクリプタンドを形成する。この場合における結合は、Cy1またはCy2のいずれかに対するものであり得る。
【0040】
式(2)または式(2a)〜(2e)の基本構造を形成する対応する配位子、並びに配位子L’およびL’’を、有機合成分野の当業者に既知である有機化学の通常の方法により調製することができる。完全に架橋された系、すなわち式(2e)の2つのY基が存在する系は、文献(例えば、A.-S. Rebstock et al., Tetrahedron 2003, 59, 4973-4977;R. G. Harvey et al., J. Org. Chem. 2000, 65, 3952-3960)に記載されているものと類似した反応による配位子合成に適している。
【0041】
本発明の金属錯体を原則として種々の方法により調製することができるが、以下に記載する方法が特に有用であると見出された。
【0042】
従って本発明はまた、対応する遊離配位子を式(4)の金属アルコキシドと反応させること、遊離配位子を式(5)の金属ケトケトナートと反応させること、または遊離配位子を式(6)、(7)若しくは(8)の単核または多核の金属ハライドと反応させることにより金属錯体を調製するための方法を提供する
【化14】

【0043】
(式中、記号MおよびRは上記した通りであり、p=1または2であり、およびHal=F、Cl、BrまたはIである)。
【0044】
さらに金属化合物、好ましくはロジウム化合物およびイリジウム化合物であって、アルコキシド基および/またはハライド基および/またはヒドロキシ基、並びにケトケトナート基の双方を有するものの使用が特に好ましい。これらの化合物は荷電していてもよい。このタイプのイリジウム化合物であって出発材料として特に適しているものが、WO 04/085449 に開示されており、例えばNa[Ir(acac)Cl]である。
【0045】
錯体の合成を、好ましくは、WO 02/060910 および WO 04/085449 に記載されている通りに行う。ヘテロレプティックな錯体を、例えば、WO 05/042548 に記載されている通りに合成することができる。
【0046】
これらの方法は、式(1)の本発明の化合物を高い純度で、好ましくは99%を超えて(H−NMRおよび/またはHPLCを用いて決定)得ることを可能にする。
【0047】
本明細書中に記載される合成方法を特に、式(1)の化合物のための以下に示す構造(1)〜(141)を調製するために用いることができ、これらは、置換基Rによりさらに置換されていてもよい。明瞭にするために、置換基は場合によっては示さない。
【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【化24】

【化25】

【0048】
上記した本発明の化合物、例えば構造(11)、(14)および(25)を有する化合物を、対応する共役、部分共役若しくは非共役オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーを製造するためのコモノマーとして用いることもできる。重合は好ましくは、臭素官能性を通じて達成される。つまり、これらを、特に、ポリフルオレン(例えば EP 842208 または WO 00/22026 に記載されている)、ポリスピロビフルオレン(例えば EP 707020 または EP 894107 に記載されている)、ポリ−パラ−フェニレン(例えば WO 92/18552 に記載されている)、ポリジヒドロフェナントレン(例えば WO 05/014689 に記載されている)、ポリフェナントレン(例えば未公開特許出願 DE 102004020298.2 に記載されている)、ポリインデノフルオレン(例えば WO 04/041901 および WO 04/113412 に記載されている)、ポリカルバゾール(例えば WO 04/070772 または WO 04/113468 に記載されている)、ポリケトン(例えば WO 05/040302 に記載されている)、ポリシラン(例えば DE 102004023278.4 に記載されている)、若しくはポリチオフェン(例えば EP 1028136 に記載されている)に、またはこれらのタイプの種々の単位を含むコポリマーに共重合することができる。これらの単位を、ポリマーの側鎖中または主鎖中に形成することができ、またはポリマー鎖の分枝点に相当してもよく(例えば、DE 102004032527.8 に記載されている)、またはポリマー鎖の末端基に相当してもよい。
【0049】
従って本発明は、式(1)または式(1a)の化合物であって、置換基Rのうちの少なくとも1つが、共役、部分共役若しくは非共役のポリマー、オリゴマーまたはデンドリマーの合成のためのパラジウムまたはニッケルにより触媒されるC−Cカップリング反応を可能にする基である。C−Cカップリング反応を可能にする置換基は、好ましくは、Cl、Br、I、O−トシレート、O−トリフレート、O−SO、B(OR、およびSn(Rから成る群から選択され、特に好ましくはBr、O−トリフレート、およびB(ORの中から選択される(式中、Rは上記した通りであり、2つ以上のR基は互いに環系を形成していてもよい)。この基は環Cy1に結合していることが好ましく、特に好ましくは金属Mへの結合に対してパラ位で結合している。重合のためのモノマーとして用いることができるこれらの金属錯体は、同様に、本発明の好ましい実施形態である。
【0050】
C−Cカップリング反応を可能にするこの基が錯体中に1つ、2つ若しくは3つ、またはさらに多く存在するかどうかに関らず、錯体はポリマーにおける末端基に相当か、これはポリマー鎖中に直線的に取り込まれるか、またはポリマー鎖の分枝点に相当する。さらに、適切に置換されている場合には、錯体は、側鎖、または直鎖のポリマー鎖、または分枝したポリマー鎖であってもよい。
【0051】
従って、本発明は式(1)または式(1a)の化合物の1種以上を含み、上記したR基およびR基の少なくとも1つ、好ましくはR基が、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーへの結合を表す共役、部分共役若しくは非共役のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーも提供する。上記したものと同じ好ましさが、ポリマーおよびデンドリマー中の式(1)または式(1a)の単位に当てはまる。
【0052】
上記したオリゴマー、ポリマー、コポリマーおよびデンドリマーは、有機溶媒中で良好な溶解性を示し、および有機エレクトロルミネセンスデバイスにおいて高い効率と安定性を示す。さらにこれらのオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマーは非常に熱的に安定である。
【0053】
さらに、式(1)の本発明の化合物、特にハロゲンにより官能化されているものは、通常のタイプの反応によりさらに官能化させることができ、従って、拡張された式(1)の化合物に変換することができる。挙げることのできる例は、スズキ法を用いてアリールボロン酸による官能化か、またはハートウィッグ−ブッフバルト(Hartwig-Buchwald)法を用いてアミンによる官能化である。
【0054】
本発明の化合物、オリゴマー、ポリマー、デンドリマー、または式(1)の拡張された化合物は、電子部品、例えば有機発光ダイオード(OLED)、有機集積回路(O−IC)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(organic field-quench device)(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、または有機レーザダイオード(O−laser)における活性成分として用いられる。
【0055】
従って本発明は、電子部品の活性成分としての、特に発光化合物としての式(1)の本発明の化合物、本発明のオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマー、並びに対応する式(1)の拡張された化合物の使用も提供する。
【0056】
本発明はさらに、式(1)の本発明の化合物、本発明のオリゴマー、ポリマーおよびデンドリマー、並びに対応する式(1)の拡張された化合物の1種以上を、特に発光化合物として含む電子部品、特に有機およびポリマー発光ダイオード(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、および有機レーザダイオード(O−laser)を提供する。
【0057】
本発明の化合物は、好ましくは、有機またはポリマー発光ダイオードにおける発光層中の発光化合物として用いられる。特に本発明による化合物が低分子量化合物である場合には、これらは通常、マトリックス材料と共に用いられる。マトリックス材料は低分子量を有するか、またはオリゴマー若しくはポリマーであってもよい。
【0058】
好ましいマトリックス材料は、カルバゾール、例えばCBP(ビス(カルバゾリル)ビフェニル)に基づくものか、またはカルバゾール若しくはカルバゾール誘導体を含む他の材料であり、例えば、WO 00/057676, EP 01/202358 および WO 02/074015 中に記載されている。ケトンおよびイミン、例えば WO 04/093207 に記載されているもの、特にスピロビフルオレンに基づくもの、並びにホスフィンオキシド、ホスフィンセレニド、ホスファゼン、スルホキシド、およびスルホン、例えば WO 05/003253 に記載されているもの、特にスピロビフルオレンに基づくものが好ましい。シラン、多座金属錯体、例えば WO 04/081017 に記載されているもの、およびスピロビフルオレンに基づくオリゴフェニレン、例えば EP 676461 および WO 99/40051 に記載されているものも好ましい。特に好ましいマトリックス材料は、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド、およびスルホンである。ケトンおよびホスフィンオキシドが非常に特に好ましい。
【0059】
本発明の化合物は、従来技術による化合物に対して以下の利点を有する。
【0060】
1.本発明の化合物は高い熱的安定性を有する。従って、低分子量化合物を高真空下で分解を伴わずに蒸着することができ、またオリゴマー化合物、樹枝状化合物およびポリマー化合物も非常に熱的に安定であるため、損傷を伴うことなくデバイスを熱的に処理することができる。この性質はOLEDの再現性のある製造についての基本的な必要条件であり、特に駆動寿命について好ましい効果を有する。さらに、錯体を、精製およびデバイス製造において実質的に損失なく昇華させることができるために、これら貴金属の化合物の資源保護的な利用が従って可能である。
【0061】
2.本発明の化合物は有機溶媒中で良好な溶解性を示し、これは再結晶やクロマトグラフィーのような一般的な方法によるその精製をかなり容易にする。従って化合物は、コーティング、または印刷法を用いて溶液から処理することができる。この性質は気化による一般的な処理における利点でもある。というのは、用いた装置またはシャドーマスクの洗浄が結果としてかなり容易になるためである。
【0062】
3.本発明の化合物は改善された酸化安定性を示し、これは精製と一般的にこれらの化合物の取り扱いに対して好ましい効果を有する。
【0063】
4.本発明の化合物は高純度で再現性よく調製することができ、バッチ間のばらつきを示さない。従って、本発明のエレクトロルミネセンスデバイスを製造するための工業的な方法は、著しくより効率的である。
【0064】
5.配位子の合成はより単純であり、WO 04/081017 中の配位地の合成と比べて工程が少ない。このことはかなりの工業的な利点である。
【0065】
本発明を以下の例により示すが、これらに限定されるものではない。当業者は、さらなる発明を必要とすることなく示した情報に基づいて、本発明によるさらなる化合物を調製すること、またはこれらを有機電子デバイスにおいて使用することが可能である。
【0066】

以下の合成を他に示さない限り保護ガス雰囲気下で行う。出発材料はアルドリッチ社またはABCR社から購入することができる。2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレンの合成は、EP 1298117 に記載される通りに行うことができ、8−キノリニルトリフルオロメタンスルホナートの合成は、Organometallics 2005, 24(6), 1329 に記載される通りに行うことができ、Na[Ir(acac)Cl]の合成は、WO 04/085449 に記載される通りに行うことができる。
【0067】
例1:(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)フェニル−κC]イリジウム(III)(Ir1)
a)8−フェニルキノリンの合成
【化26】

【0068】
200mlのトルエン、50mlのジオキサンおよび50mlの水の混合物中の13.9g(50mmol)の8−キノリニルトリフルオロメタンスルホナート、12.2g(100mmol)のベンゼンボロン酸、8.5g(200mmol)の塩化リチウム、8.0g(75mmol)の炭酸ナトリウムのよく撹拌された懸濁液に、1.7g(1.5mmol)のテトラキストリフェニルホスフィノパラジウム(0)を混合し、この混合物を16時間還流する。冷却後、水相を分離し、有機相を200mlの水を用いて3回洗浄し、硫酸マグネシウムにて乾燥し、蒸発乾固する。残ったオイルをエタノールから2回再結晶する(5ml/g)。H−NMRによる99.0%の純度における収量は8.6g(42mmol)であり、理論の83.8%に相当する。
【0069】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.94(d,1H),8.20(d,1H),7.81(d,1H),7.75−7.70(m,2H),7.60(dd,1H),7.52(dd,1H),7.45−7.40(m,4H)。
【0070】
b)(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)フェニル−κC]イリジウム(III)(Ir1)の合成
【化27】

【0071】
1.76g(5.0mmol)の塩化イリジウム(III)水和物、2.26g(11.0mmol)の8−フェニルキノリン、75mlの2−エトキシエタノールおよび25mlの水を48時間還流する。反応混合物を減圧下で蒸発させ、褐色の残渣を、200mlの水と100mlのエタノールの混合物中に溶解させ、60℃で1時間撹拌する。固体を吸引しながらろ過し、毎回100mlのエタノールを用いて3回洗浄する。続いて褐色の固体を50mlのエトキシエタノール中に懸濁させ、0.72ml(7.0mmol)のアセチルアセトンと1.11g(8.0mmol)の炭酸カリウムを混合し、16時間還流する。冷却後、暗赤色の沈殿を吸引しながらろ過し、毎回エタノール/水(1:1,v:v)の混合物を100ml用いて3回洗浄した後、100mlのエタノールを用いて3回洗浄する。乾燥後、沈殿を200mlのジクロロメタン中に溶解する。溶液をシリカゲルを通してろ過し、50mlの体積にまで蒸発させた後、100mlのn−ヘプタンを混合する。ジクロロメタン/n−ヘプタンから新たに再結晶すると1.87g(2.6mmol)を与え、理論の53.2%に相当し、H−NMRによれば99.5%の純度である。
【0072】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.57(d,2H),8.35(d,2H),8.10(d,2H),7.71(d,2H),7.65−7.63(m,4H),7.06(dd,2H),6.96(d,2H),6.72−6.66(m,4H),4.25(s,1H),1.09(s,6H)。
【0073】
例2:(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)(5−フルオロフェニル)−κC]イリジウム(III)(Ir2)
a)8−(4−フルオロフェニル)キノリンの合成
【化28】

【0074】
ベンゼンボロン酸の代わりに14.0g(100mmol)の4−フルオロベンゼンボロン酸を用いて例1の方法を繰り返す。H−NMRによる99.5%の純度における収量は8.4g(37.5mmol)であり、理論の75.0%に相当する。
【0075】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.93(dd,1H),8.19(dd,1H),7.83(dd,1H),7.70(d,1H),7.68−7.64(m,4H),7.60(dd,1H),7.40(dd,1H)。
【0076】
b)(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)(5−フルオロフェニル)−κC]イリジウム(III)(Ir2)の合成
【化29】

【0077】
8−フェニルキノリンの代わりに2.46g(11.0mmol)の8−(4−フルオロフェニル)キノリンを用いて例1の方法を繰り返す。H−NMRによる99.5%の純度で収量は1.80g(2.5mmol)であり、理論の48.9%に相当する。
【0078】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.51(d,2H),8.24(dd,2H),8.09(dd,2H),7.66−7.61(m,6H),6.99(dd,2H),6.74(ddd,2H),6.30(dd,2H),4.25(s,1H),1.06(s,6H)。
【0079】
例3:(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)(3,5−ジフルオロフェニル)−κC]イリジウム(III)(Ir3)
a)8−(2,4−ジフルオロフェニル)キノリンの合成
【化30】

【0080】
ベンゼンボロン酸の代わりに15.8g(100mmol)の2,4−ジフルオロベンゼンボロン酸を用いて例1の方法を繰り返す。H−NMRによる99.0%の純度における収量は9.3g(38.5mmol)であり、理論の77.1%に相当する。
【0081】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.91(dd,1H),8.16(dd,1H),7.85(dd,1H),7.68(d,1H),7.60(dd,1H),7.50−7.44(m,1H),7.40(dd,1H),7.01−6.95(m,2H)。
【0082】
b)(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)(3,5−ジフルオロフェニル)−κC]イリジウム(III)(Ir3)の合成
【化31】

【0083】
8−フェニルキノリンの代わりに2.65g(11.0mmol)の8−(2,4−ジフルオロフェニル)キノリンを用いて例1の方法を繰り返す。H−NMRによる99.5%の純度における収量は1.78g(2.3mmol)であり、理論の46.1%に相当する。
【0084】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.45(dd,2H),8.37(dd,2H),8.14(dd,2H),7.70−7.63(m,4H),7.04(dd,2H),6.50(m,2H),6.11(dd,2H),4.18(s,1H),1.03(s,6H)。
【0085】
例4:(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)(4,6−ジフルオロフェニル)−κC]イリジウム(III)(Ir4)
a)8−(3,5−ジフルオロフェニル)キノリンの合成
【化32】

【0086】
ベンゼンボロン酸の代わりに15.8g(100mmol)の3,5−ジフルオロベンゼンボロン酸を用いて例1の方法を繰り返す。H−NMRによる99.5%の純度における収量は10.3g(43mmol)であり、理論の85.4%に相当する。
【0087】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.94(dd,1H),8.18(d,1H),7.84(d,1H),7.69(dd,1H),7.60(dd,1H),7.42(dd,1H),7.26−7.21(m,2H),6.87(m,1H)。
【0088】
b)(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)ビス[2−(8−キノリニル−κN)(4,6−ジフルオロフェニル)−κC]イリジウム(III)(Ir4)の合成
【化33】

【0089】
8−フェニルキノリンの代わりに2.65g(11.0mmol)の8−(3,5−ジフルオロフェニル)キノリンを用いて例1の方法を繰り返す。H−NMRによる99.5%の純度における収量は2.24g(2.9mmol)であり、理論の58.0%に相当する。
【0090】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.55(dd,2H),8.30(dd,2H),8.09(dd,2H),7.70−7.62(m,4H),7.38(dd,2H),6.99(dd,2H),6.33(m,2H),4.25(s,1H),1.08(s,6H)。
【0091】
例5:トリス[5,7,7’,9−テトラメチル−7H−インデノ[2,1−h]キノリン−11−イル−κN,−κC]イリジウム(III)(Ir5)
a)2,7,9,9−テトラメチルフルオレンの合成
【化34】

【0092】
100g(284mmol)の2,7−ジブロモ−9,9−ジメチルフルオレンを1000mlのTHF中に溶解させ、−75℃において、227ml(566mmol)のn−ブチルリチウム(ヘキサン中2M)を滴下して加える。添加後、53ml(850mmol)のヨウ化メチルを−78℃で滴下して加える。反応混合物を室温にまで昇温させ、続いてさらに3時間室温で撹拌する。その後、氷中で冷やしながら、反応溶液に120mlの半濃塩酸(half concentrated hydrochloric acid)を加えた後、400mlの50%濃度のアンモニア溶液を加える。生じる混合物を300mlのジクロロメタンを用いて抽出し、抽出物をMgSOにて乾燥し、減圧下で蒸発させる。得られる固体を吸引しながらろ過し、少量のメタノールを用いて洗浄する。57.8g(260mmol)の白色固体が得られ、理論の91.5%に相当し、98.5%の純度を有する。
【0093】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=7.56(d,HH=7.7,2H),7.21(s,2H),7.12(d,HH=7.7Hz,2H),2.41(s,6H),1.45(s,6H)。
【0094】
b)2,7,9,9−テトラメチル−4−ニトロフルオレンの合成
【化35】

【0095】
800mlのジクロロメタンを−75℃に冷却し、26ml(620mmol)の硝酸と926mlの無水酢酸を加える。250mlのジクロロメタン中に溶解させた114.3g(513mmol)の2,7,9,9−テトラメチルフルオレンをこの溶液に手早く加える。混合物を−75℃で5時間撹拌した後、室温にまでゆっくりと昇温する。その後混合物を減圧下で蒸発させ、ヘプタン:トルエン(20:1)を用いてカラムクロマトグラフィーにより精製する。70.4g(263mmol)の白色固体を与え、理論の51.3%に相当し、95.5%の純度を有する。
【0096】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=7.91(d,HH=8.3,1H),7.63(s,1H),7.44(s,1H),7.24(s,1H),7.14(d,HH=8.3Hz,1H),2.47(s,3H),2.43(s,3H),1.47(s,6H)。
【0097】
c)2,7,9,9−テトラメチル−4−アミノフルオレンの合成
【化36】

【0098】
294mlの濃塩酸、1400mlのエタノールおよび67.5g(253mmol)の2,7,9,9−テトラメチル−4−ニトロフルオレンを反応容器に入れ、70.0g(589mmol)スズ粉を少しずつ室温で加える。添加後、混合物を室温で3時間撹拌する。その後、氷中で冷却しながら反応混合物にNaOH(固体)を加えることによりpHを12にする。残渣をろ過し、ジクロロメタンで洗浄し、ヘプタンから再結晶する。37.8g(159mmol)の白色固体を与え、理論の62.9%に相当し、95.0%の純度を有する。
【0099】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=7.65(d,HH=7.7,1H),7.41(s,1H),7.29(d,HH=7.7Hz,1H),6.89(s,1H),6.58(s,1H),4.15(s,2H),2.59(s,3H),2.49(s,3H),1.62(s,6H)。
【0100】
d)5,7,7,9−テトラメチル−7H−インデノ[2,1−h]キノリンの合成
【化37】

【0101】
4.9g(20.6mmol)の2,7,9,9−テトラメチル−4−アミノフルオレン、3.6g(15.7mmol)の酸化ヒ素(V)、および7.16g(77.3mmol)のグリセロールの混合物に、激しく撹拌しながら6.5g(64mmol)の濃硫酸を15分間に渡って加える。混合物を165℃に6時間加熱する。室温にまで冷却した後、これを70mlの氷水中に注ぎ入れ、冷却しながら、混合物がアルカリ性反応を有するに至るまで濃アンモニアを加え、混合物をジクロロメタンを用いて抽出する。溶媒を除去した後、残渣をエタノールから再結晶する、1.4g(5.1mmol)の黄色固体を与え、理論の24.7%に相当し、99.7%の純度を有する。
【0102】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=9.03(dd,HH=1.6Hz,HH=4.0Hz,1H),8.83(d,HH=7.7Hz,1H),8.36(dd,HH=1.6Hz,HH=8.3Hz,1H),7.49(s,1H),7.43(dd,HH=4.0Hz,HH=8.3Hz,1H),7.29(s,1H),7.24(d,HH=7.7Hz,1H),2.79(s,3H),2.48(s,3H),1.55(s,6H)。
【0103】
e)トリス[5,7,7’,9−テトラメチル−7H−インデノ[2,1−h]キノリン−11−イル]イリジウム(Ir5)の合成
【化38】

【0104】
484mg(1.0mmol)のNa[Ir(acac)Cl]、1.64g(6.0mmol)の5,7,7,9−テトラメチル−7H−インデノ[2,1−h]キノリン、および10mlのエチレングリコールの混合物を180℃で140時間加熱する。冷却後、混合物を50mlのエタノールと25mlの1N塩酸との混合物中に注ぎ入れ、室温で1時間撹拌する。沈殿した固体を吸引しながらろ過し、30mlの水を用いて3回洗浄した後、30mlのエタノールを用いて3回洗浄し、減圧下で乾燥する。続いて暗赤色の固体をシリカゲル上でクロマトグラフにかける(CHCl/n−ヘキサン,1:6)。H−NMRによる99.5%の純度における収量は332mg(0.3mmol)で、理論の32.9%に相当する。
【0105】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.76(d,3H),8.26(d,3H),7.47(s,3H),7.40(dd,3H),7.01(s,3H),6.83(s,3H),3.02(s,9H),2.67(s,9H),1.63(s,18H)。
【0106】
例6:(1,3−ペンタンジオナート−κO,κO’)[2−(8−キノリニル−κN)フェニル−κC]白金(II),(Pt1)
【化39】

【0107】
2.07g(5.0mmol)のテトラクロロ白金酸カリウム、2.23g(6.0mmol)の8−フェニルキノリン、75mlの2−エトキシエタノールおよび25mlの水の混合物を48時間還流する。反応混合物を減圧下で蒸発させ、褐色の残渣を200mlの水と100mlのエタノールとの混合物中に溶解させ、60℃で1時間撹拌する。固体を吸引しながらろ過し、100mlのエタノールを用いて3回洗浄する。褐色の固体を50mlのエトキシエタノール中に懸濁させ、0.72ml(7.0mmol)のアセチルアセトンと1.11g(8.0mmol)の炭酸カリウムとを混合し、16時間還流する。冷却後、暗赤色の沈殿を吸引しながらろ過し、エタノール/水(1:1,v:v)の混合物を毎回100ml用いて3回洗浄した後、100mlのエタノールを用いて3回洗浄する。乾燥後、沈殿を200mlのジクロロメタン中に溶解させる。溶液をシリカゲルを通してろ過し、続いてシリカゲル上でのクロマトグラフにかける(CHCl/n−ヘキサン,1:5)。H−NMRによる99.5%の純度における収量は0.81g(1.6mmol)であり、理論の32.4%に相当する。
【0108】
H−NMR(CDCl):δ[ppm]=8.63(m,1H),8.31(m,1H),8.08(d,1H),7.67(d,1H),7.68−7.64(m,2H),7.01(dd,1H),6.95(d,1H),6.42−6.40(m,2H),4.26(s,1H),1.11(br.s,6H)。
【0109】
例7〜13:本発明による化合物Ir1〜Ir5およびPt1を含む有機エレクトロルミネセンスデバイスの製造および特性決定
本発明によるエレクトロルミネセンスデバイスを、例えば WO 05/003253 に記載される通りに製造することができる。
【0110】
2つの異なるOLEDについての結果をここで比較する。基本構造、用いた材料、ドーピングの程度および層の厚さはより良い比較のために同一である。発光層におけるドーパントのみが異なる。最初の例は従来技術に従う比較基準を記載し、ここで、発光層はホスト材料であるCBPおよびゲスト材料であるIr(piq)を含む。加えて、ホスト材料であるCBP並びにゲスト材料であるIr1〜Ir5およびPt1(例1〜6に記載した通りに調製)を含む発光層を有するOLEDも記載する。以下の構造を有するOLEDは上記の一般法と同様の方法により製造する。
【0111】
PEDOT 60nm(スピンコーティングにより水から付着;H.C.シュターク(Starck)社(ゴスラル)から購入したPEDOT;ポリ[3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン]),(HIL)
NaphDATA 20nm(蒸着により付着;SynTec社から購入したNaphDATA;4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン,(HTL)
S−TAD 20nm(蒸着により付着;WO 99/12888 に記載される通りに合成したS−TAD;2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)スピロビフルオレン),(HTL)
発光層:(EML)
CPB 20nm(蒸着により付着;アルドリッチ社から入手し、さらに精製し、最後にさらに2回昇華させたCPB;4,4’−ビス(N−カルバゾリル)ビフェニル)
Ir1〜Ir5またはPt1 (10%ドーピング、蒸着により付着;例1〜6に記載される通りに合成)、または
Ir(piq) (10%ドーピング、蒸着により付着、WO 03/0068526 に記載される通りに合成),比較例
BCP 10nm(蒸着により付着;ABCR社から入手し、入手した物を用いた;2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン),(HBL)
AlQ 10nm(蒸着により付着:SynTec社から入手したAlQ;トリス(キノリナト)アルミニウム(III)),(ETL)
LiF 1nm
Al 100nm。
【0112】
これらの未だ最適化されていないOLEDを標準的な方法で特性決定する。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流−電圧−光度曲線(IUL曲線)から計算される光度の関数としての効率(cd/Aで測定)、および寿命を測定する。
【0113】
光度の関数としての効率、色、駆動電圧、寿命:
ドーパントIr(piq)を用いて製造されるOLEDは、x=0.68、y=0.32のCIE色座標において上記した条件下で約6.5cd/Aの最大効率を典型的に与える。100cd/mの基準輝度については6.2Vの電圧が必要である。500cd/mの初期輝度における寿命は約250時間である(表1を参照のこと)。
【0114】
その一方、本発明のドーパントIr1〜Ir5を用いて製造したOLEDは、x=0.68〜0.70、y=0.32〜0.30のCIE色座標において4.8〜6.8cd/Aの最大輝度を示し、100cd/mの基準輝度について必要とされる電圧は5.2〜5.8Vの範囲である(表1を参照のこと)。500cd/mの初期輝度における寿命は280時間〜470時間であり、従って参考材料Ir(piq)のものよりも優れている(表1を参照のこと)。
【0115】
本発明のドーパントPt1を用いて製造したOLEDは、x=0.72、y=0.28のCIE色座標において4.3cd/Aの最大効率を示し、100cd/mの基準輝度について必要とされる電圧は6.0eVである(表1を参照のこと)。500cd/mの初期輝度における寿命は310時間であり、従って参考材料Ir(piq)のものよりも優れている(表1を参照のこと)。
【0116】
表1:本発明によるドーパントをCBPにおいてマトリックスとして用いるデバイス結果
【表1】

【0117】
例14〜19:本発明によるドーパントを用いるさらなるデバイス例
本発明のドーパントIr1〜Ir5およびPt1、並びに従来技術による比較例Ir(piq)を、WO 04/093207 に記載されているマトリックス材料M1を含むOLEDにおいて試験する。以下の構造を有するOLEDを例7〜13のものと同様の方法により製造した。
【0118】
PEDOT 80nm(水からスピンコーティングにより塗布;H.C.シュターク、ゴスラルから入手;ポリ[3,4−エチレンジオキシ−2,5−チオフェン]),(HIL)
NaphDATA 20nm(蒸着により付着;SynTec社から入手したNaphDATA;4,4’,4’’−トリス(N−1−ナフチル)−N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン),(HTL)
S−TAD 20nm(蒸着により付着;WO 99/12888 に記載される通りに合成したS−TAD;2,2’,7,7’−テトラキス(ジフェニルアミノ)スピロビフルオレン),(HTL)
発光層:(EML)
M1 ビス(9,9’−スピロビフルオレン−2−イル)ケトン(蒸着により付着、WO 2004/093207 に記載される通りに合成)
Ir1〜Ir5若しくはPt1 (10%ドーピング、蒸着により付着;例1〜6の通りに合成)、または
Ir(piq) (10%ドーピング、蒸着により付着;WO 03/0068526 に記載される通りに合成)
HBM1 2,7−ビス(4−ビフェニル−1−イル)−2’,7’−ジ−tert−ブチルスピロ−9,9’−ビフルオレン(蒸着により付着;WO 05/011334 に記載される通りに合成)
AlQ(蒸着により付着;SynTec社から入手したAlQ;トリス(キノリナト)アルミニウム(III)),(ETL);
Ba−Al 3nmのBa、この上に150nmのAl。
【0119】
これらの未だ最適化されていないOLEDを標準的な方法で特性決定する。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流−電圧−光度曲線(IUL曲線)として計算される光度の関数としての効率(cd/Aで測定)、および寿命を測定する。これらのOLEDを用いて得られる結果を表2にまとめる。
【0120】
マトリックス材料M1、正孔障壁材料HBM1および比較ドーパントIr(piq)を明瞭にする目的で以下に示す。
【化40】

【0121】
表2:本発明によるドーパントをM1中でマトリックスとして用いるデバイス結果
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
M(L)n(L’)m(L’’)o 式(1)
の化合物であって、式(2)
【化1】

(式中、用いられる記号および添え字は以下の意味を有する。すなわち、
Mは各々の出現について遷移金属であり、
Dは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれMに配位する非結合性の電子対を有するsp混成のヘテロ原子であり、
Cは各々の出現についてMに結合するsp混成炭素原子であり、
Eは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれsp混成炭素原子または窒素原子であり、
Zは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれC(R)またはNRであり、
Cy1は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、sp混成炭素原子を介してMに結合し、且つR基への結合を有していてもよい同素環または複素環であり、
Cy2は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、原子Dを介してMに配位し、且つR基への結合を有していてもよい複素環であり、
Rは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれH、F、CN、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基若しくはアルコキシ基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基若しくはアルコキシ基(ここで、いずれの場合においても1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−(C=NR)−、−P=O(R)−、SO、SOまたは−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上のH原子はFにより置き換えられていてもよい)、または5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族環系若しくは複素芳香族環系若しくはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは、1個以上の非芳香族R基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、RはCy1および/またはCy2の一方または双方と共にさらなる脂肪族環系、芳香族環系、または複素芳香族環系を形成することも可能であり、
は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、H、または1〜20個の炭素原子を有する脂肪族炭化水素基若しくは芳香族炭化水素基であり、
nは1、2または3である)
の基本構造M(L)nを含有する化合物。
(ここで、式(1)における配位子L’およびL’’は、単座キレート配位子または二座キレート配位子であり、mおよびoは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ0、1または2であり、かつn+m+o=2または3である)。
【請求項2】
Cy1およびCy2は芳香族系または複素芳香族系であることを特徴とする請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式(2a)
【化2】

(式中、Z、R、L’、L’’、n、mおよびoは請求項1に定義した通りであり、さらなる記号は以下の意味を有する。すなわち、
Mは各々の出現について、Mo、W、Re、Ru、Os、Rh、Ir、Pd、PtまたはAuであり、
Dは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ窒素またはリンであり、
Xは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれCR、NまたはPであるか、または
(X−X)または(X=X)(すなわち、2つの隣接するX基)は、NR、S、またはOを表し、但し、Cy1およびCy2はそれぞれ、5員環または6員環を形成する、または
(X−X)または(X=X)(すなわち、2つの隣接するX基)は、対応する環における記号EがNを表す場合には、CR、NまたはPを表し、
Eは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれCまたはNであり、但し記号EがNを表す場合には、対応する環における正確に1つの単位X−X(すなわち、2つの隣接するX基)は、CR、NまたはPであり、
Rは請求項1に定義した通りであり、かつXまたはRと共に環系を形成していてもよく、
は各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、H、F、Cl、Br、I、OH、NO、CN,N(R、1〜40個の炭素原子を有する直鎖のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基、または3〜40個の炭素原子を有する分枝の若しくは環状のアルキル基、アルコキシ基若しくはチオアルコキシ基(ここで、1個以上の非隣接のCH基は、−RC=CR−、−C≡C−、Si(R、Ge(R、Sn(R、−O−、−S−、−NR−、−(C=O)−、−(C=NR)−、−P=O(R)−、SO、SO、−COOR−、または−CONR−により置き換えられていてもよく、かつ1個以上のH原子はF、Cl、Br、IまたはCNにより置き換えられていてもよい)、または芳香族環系若しくは複素芳香族環系若しくはアリールオキシ基若しくはヘテロアリールオキシ基(これらは5〜40個の芳香族環原子を有し、かつ1個以上の非芳香族R基により置換されていてもよい)、またはこれらの系の2つ、3つまたは4つの組み合わせであり、同じ環状または異なる環状の複数の置換基R、またはRおよびRおよび/またはRは、互いに、さらなる単環または多環の脂肪族環系または芳香族環系を形成していてもよい)
の基本構造M(L)nを含有する式(1)の請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
請求項3に記載の式(1a)の化合物
M(L)n(L’)m(L’’)o 式(1a)
であって、各々の出現について同一であるか異なる式(2b)の少なくとも1つの基本構造M(L)n
【化3】

を含有し、かつ各々の出現について同一であるか異なる式(3)の基本構造M(L’)m
【化4】

を場合により含有す化合物。
(式中、M、D、R、R、R、L’’、n、mおよびoは請求項1および3に定義した通りであり、さらなる記号は以下の意味を有する。すなわち、
Xは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれCR、NまたはPであり、または
(X−X)または(X=X)(すなわち、2つの隣接するX基)は、NR、SまたはOを示し、
Aは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、−CR=CR−、−N=CR−、−P=CR−、−N=N−、−P=N−、NR、PR、O、SまたはSeである)。
【請求項5】
請求項1〜4の一項以上に記載の化合物であって、式(2c)、式(2d)または式(2e)の基本構造M(L)nを含有する化合物。
【化5】

(式中、M、X、D、R、R、Rおよびnは請求項1、3および4で定義した通りであり、記号Yは以下の意味を有する。すなわち、
Yは各々の出現について同一であるか異なり、それぞれ、−C(R−、−C(=O)−、−C[=C(R]−、−C(R−C(R−、−C(=O)−O−、−C(=O)−N(R)−、−C(R−C(R−C(R−、−C(R−O−C(R−、−C(R−N(R)−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−O−、−S−、−N(R)−、−P(R)−、−P(=O)(R)−、および−B(R)−の中から選択される)。
【請求項6】
モノアニオン性の二座配位子L’’が、1,3−ジケトンから誘導される1,3−ジケトナート、3−ケトエステルから誘導される3−ケトナート、アミノカルボン酸から誘導されるカルボキシラート、サリチルイミンから誘導されるサリチルイミナート(iminate)、および窒素含有複素環のホウ酸エステルから成る群から選択されることを特徴とする請求項1〜5の一項以上に記載の化合物。
【請求項7】
M=Rh、Ir、PdまたはPtであることを特徴とする請求項1〜6の一項以上に記載の化合物。
【請求項8】
n=2または3であることを特徴とする請求項1〜7の一項以上に記載の化合物。
【請求項9】
o=0であることを特徴とする請求項1〜8の一項以上に記載の化合物。
【請求項10】
Z=C(R)であることを特徴とする請求項1〜9の一項以上に記載の化合物。
【請求項11】
D=Nであることを特徴とする請求項1〜10の一項以上に記載の化合物。
【請求項12】
X=CRまたはNであることを特徴とする請求項3〜11の一項以上に記載の化合物。
【請求項13】
前記式(2c)、(2d)および(2e)における記号Yが、二価の基−(CR−、−C(=O)−、−C(R−C(R−、−C(R−N(R)−、−C(R)=C(R)−、−C(R)=N−、−O−、−S−または−N(R)−を示すことを特徴とする請求項5〜12の一項以上に記載の化合物。
【請求項14】
構造(1)〜(141)(これらはRにより置換されているか、または置換されていない)の中から選択される請求項1〜13の一項以上に記載の化合物。
【請求項15】
対応する遊離配位子と、式(4)の金属アルコキシド、式(5)の金属ケトケトナート、または式(6)、(7)若しくは(8)の単核若しくは多核の金属ハライドとを反応させることにより請求項1〜14の一項以上に記載の化合物を調製するための方法。
【化6】

(式中、記号MおよびRは請求項1において定義した通りであり、p=1または2であり、Hal=F、Cl、BrまたはIである)。
【請求項16】
対応する遊離配位子と、アルコキシドおよび/またはハライドおよび/またはヒドロキシ、並びにケトケトナート基を有する金属化合物とを反応させることにより請求項1〜14の一項以上に記載の化合物を調製するための方法。
【請求項17】
上記のRまたはR基の少なくとも1つがポリマーまたはデンドリマーへの結合を示す請求項1〜14の一項以上に記載の化合物の1種以上を含む共役、部分共役若しくは非共役のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマー。
【請求項18】
ポリフルオレン、ポリスピロビフルオレン、ポリ−パラ−フェニレン、ポリジヒドロフェナントレン、ポリフェナントレン、ポリインデノフルオレン、ポリカルバゾール、ポリケトン、ポリシラン若しくはポリチオフェン、またはこれらのタイプの種々の単位を含むコポリマーのクラスから選択されることを特徴とする請求項17に記載のオリゴマー、ポリマーまたはデンドリマー。
【請求項19】
請求項1〜15の一項以上に記載の化合物が前記ポリマーの側鎖または主鎖中に取り込まれているか、または前記ポリマー鎖の分枝点若しくは前記ポリマー鎖の末端基に相当することを特徴とする請求項17および/または18に記載のオリゴマー、ポリマー、またはデンドリマー。
【請求項20】
電子部品における活性要素としての、特に発光化合物としての請求項1〜14、および/または17〜19の一項以上に記載の化合物、オリゴマー、ポリマーまたはデンドリマーの使用。
【請求項21】
請求項1〜14の一項以上に記載の1種以上の化合物、または請求項17〜19の一項以上に記載のオリゴマー、ポリマー若しくはデンドリマーを含む電子部品。
【請求項22】
有機およびポリマー発光ダイオード(OLED、PLED)、有機電界効果トランジスタ(O−FET)、有機薄膜トランジスタ(O−TFT)、有機集積回路(O−IC)、有機太陽電池(O−SC)、有機発光トランジスタ(O−LET)、有機電界クエンチデバイス(organic field quench device)(O−FQD)、発光電気化学セル(LEC)、および有機レーザダイオード(O−laser)から成る群から選択される請求項21に記載の電子部品。

【公表番号】特表2008−523004(P2008−523004A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544802(P2007−544802)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013044
【国際公開番号】WO2006/061182
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(597035528)メルク パテント ゲーエムベーハー (209)
【Fターム(参考)】