説明

金属閉鎖形スイッチギア

【課題】金属閉鎖形スイッチギアの外形寸法とその設置面積とを変えず、内部アーク事故に対応可能な、金属閉鎖形スイッチギアを提供する。
【解決手段】積載された遮断器室101と、その背部に配置された母線室103と、母線室103の背部に配置されたケーブル・変流器室102とを有する第1の金属閉鎖形スイッチギア100と、第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下側の遮断器室101の側部に配置され、その遮断器室101の仕切り板141より下方に位置する仕切り板241を有する遮断器室201と、この遮断器室201の背部に配置された母線室203と、この母線室203の背部に配置されたケーブル・変流器室202とを有する第2の金属閉鎖形スイッチギア200と、第2の金属閉鎖形スイッチギア200の遮断器室201上及びケーブル・変流器室202上に配置した共通放圧室205、206とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は金属閉鎖形スイッチギアに係り、特に遮断器等の電気機器を多段積載した金属閉鎖形スイッチギアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属閉鎖形スイッチギアとは、遮断器、断路器、計器用変成器、母線、接続導体などのほか、監視制御に必要な器具からなる集合装置で、接地された金属箱内に収納されたものであり、更に単位回路ごとに接地金属壁により隔離されている構造のものをいう。接地金属壁による隔離構造を採用する目的は、例えば、盤内の一の遮断器室で短絡事故等の内部アーク事故が発生した場合であっても、事故の影響を最小限に止めることにある。
【0003】
しかし、遮断器等の電気機器を多段積みして収納する金属閉鎖形スイッチギアにおいては、例えば下段の遮断器室等で内部アーク事故が発生すると事故発生時の過大な内部圧力上昇に対する有効な放出経路を有していない場合がある。このため、内部アーク事故により発生した膨張空気が、盤外へ放出されず、他の区画の電気機器等に損傷を与えてしまう虞があった。この点を改善するものとして、各室毎の膨張空気を放出する放圧箱を金属閉鎖形スイッチギア本体の側面に設置し、多段回路のいかなる室で発生した内部アーク事故であっても、その膨張空気を有効に盤外に放出させるものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
【特許文献1】特公平6−67060号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した金属閉鎖形スイッチギアは、いかなる室で内部アーク事故が発生しても、その膨張空気を外部に放出できるため、事故波及を防止できる。
【0006】
しかしながら、この金属閉鎖形スイッチギアは、その側面に放圧箱を設置することが必要であるため、従来の金属閉鎖形スイッチギアの設置面積に比較すると大幅な拡大が必要となる。したがって、例えば、火力、原子力発電所、変電所、開閉所の建設等で多数のフィーダを必要とする金属閉鎖形スイッチギアを設置する場合には、このことは、設置建屋の建設等に関連して看過することのできない問題になる。このため、その設置面積を拡大せずに内部アーク事故に対応可能な、遮断器等を多段積載した金属閉鎖形スイッチギアが要求されている。
【0007】
本発明は上述の事項に基づいてなされたもので、金属閉鎖形スイッチギアの外形寸法とその設置面積とを変えず、内部アーク事故に対応可能な、多段積載形式の金属閉鎖形スイッチギアを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するために、本発明は盤面の上下方向に積載され、その盤内に遮断器をそれぞれ収納した遮断器室と、前記遮断器室の背部に配置され、その盤内に母線を収納した母線室と、前記母線室の背部に配置され、その盤内にケーブル・変流器をそれぞれ収納したケーブル・変流器室とを有する第1の金属閉鎖形スイッチギアと、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアの前記下側の遮断器室の側部側に配置され、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側の遮断器室の前記盤内の仕切り板より下方に位置する仕切り板を有する盤内に遮断器を収納した遮断器室と、この遮断器室の背部に配置され、その盤内に母線を収納した母線室と、この母線室の背部に配置され、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側のケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板より下方に位置する仕切り板を有する盤内にケーブル・変流器を収納したケーブル・変流器室とを有する第2の金属閉鎖形スイッチギアと、前記第2の金属閉鎖形スイッチギアの前記遮断器室上及びケーブル・変流器室上にそれぞれ配置され、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側の遮断器室、ケーブル・変流器室、及び前記第2の金属閉鎖形スイッチギアの前記遮断器室及びケーブル・変流器室で内部アーク事故により生起した内部圧をそれぞれ放出する第1及び第2の共通放圧室と、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側の遮断器室の前記盤内の仕切り板と前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記遮断器室の前記盤内の仕切り板との間の側板、及び前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側のケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板と前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記ケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板との間の側板、並びに、前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記遮断器室の前記盤内の仕切り板、及び前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記ケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板に、前記共通放圧室に通じるように設けた放出開口とを有する。
【0009】
(2)上記(1)において、好ましくは、前記放出開口に、一定限度以上の圧力に応じて開く常時閉の放圧フラッパをそれぞれ設ける。
【0010】
(3)上記(1)において、好ましくは、前記共通放圧室を各放圧開口部毎に区画する仕切りを設ける。
【0011】
(4)上記(1)乃至(3)において、好ましくは、前記第1及び第2の共通放圧室の天井部には、一定限度以上の圧力に応じて開く常時閉の放圧フラッパをそれぞれ設ける。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、第2の金属閉鎖形スイッチギアの内部に第1及び第2の共通放圧室を設けたことにより、金属閉鎖形スイッチギア内のいずれの室で内部アーク事故が発生しても、事故で発生した膨張空気を外部に放出することができる。また、共通放圧室は金属閉鎖形スイッチギアの内部に区画して設けられている。このため、共通放圧室は、他の各室と同様の強度等を有し、十分な安全性と信頼性が確保される。さらに、この金属閉鎖形スイッチギアの外形寸法は従来の金属閉鎖形スイッチギアの外形寸法と同一である。したがって、多数のフィーダを必要とする場合であっても、従来例と略同じ設置面積で、遮断器等を多段積載した金属閉鎖形スイッチギアを設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの実施の形態を図面を用いて説明する。
図1乃至図4は、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を示すもので、図1は、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態の構成を示す斜視図、図2は、図1に示す本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を構成する第1の金属閉鎖形スイッチギアの側面図、図3は、図1に示す本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を構成する第2の金属閉鎖形スイッチギアの側面図、図4は、図1に示す本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態をIV―IV矢視から見た断面図である。
【0014】
まず、図1において、本発明の金属閉鎖形スイッチギア300は、大略的に、盤面の上下方向に遮断器111が積載されている第1の金属閉鎖形スイッチギア100と、盤面の下側にのみ遮断器211が積載され、共通放圧室205、206を備えている第2の金属閉鎖形スイッチギア200とで構成されている。第2の金属閉鎖形スイッチギア200の両側には、第1の金属閉鎖形スイッチギア100が列盤構成されている。
【0015】
つぎに、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を構成する第1の金属閉鎖形スイッチギア100について図1及び図2を用いて説明する。
第1の金属閉鎖形スイッチギア100は、前面側に正面扉148、背面側に背面扉149を備え、筺体状の盤本体104の内部を、各仕切り板140a、140b、141、142、143、144により分割区画されている。この分割区画により、盤正面側の上段と下段には、盤本体の仕切り板140a、140b、141、144、天板145、底板146、側板147によって盤が形成されている。この盤には遮断器111がそれぞれ収納される遮断器室101が形成されている。また、遮断器室101の背部には、盤本体の仕切り板143、144、側板147によって盤が形成されている。この盤には、母線131が収納される母線室103が形成されている。 さらに、盤背面側の上段と下段には、盤本体の仕切り板142、143、144、天板145、底板146、側板147、背面扉149からなる盤が形成されている。この盤には、ケーブル121と変流器123とがそれぞれ収納されるケーブル・変流器室102が形成されている。また、遮断器室101の仕切り板141は、盤本体104の上下方向の中間部に設けられ、同様に、ケーブル・変流器室102の仕切り板142も盤本体104の上下方向の中間部に設けられている。
【0016】
母線室103内には、碍子を介して、母線131が配設されている。また、ケーブル・変流器室102において、変流器123が遮断器室101の後方に取り付けられている。
【0017】
さらに、盤本体104の天板145には、上段の遮断器室101、上段のケーブル・変流器室102に接続する盤内放出開口110が、それぞれ設けられている。各盤内放出開口110には、例えば、常時閉止しているが一定限度以上の圧力に応じて開く弁機構である放圧フラッパ109が、取り付けられている。一方、下段の遮断器室101、及び下段のケーブル・変流器室102の放圧手段として、盤である各室を構成する盤本体104の片側の側板147に放出開口108が設けられている。この放出開口108は、隣接する第2の金属閉鎖形スイッチギア200の隣接面側の側板147であって、遮断器室101の仕切り板141の近傍の位置と、ケーブル・変流器室102の仕切り板142の近傍の位置の2か所に設けられている。図1において、正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100にあっては、正面視左側の側板147、正面視左側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100にあっては、正面視右側の側板147がそれぞれ該当する。この放出開口108から、後述する第2の金属閉鎖形スイッチギア200の共通放圧室205、206を介して、盤外へ放出される。
【0018】
つぎに、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を構成する第2の金属閉鎖形スイッチギア200について図1乃至図4を用いて説明する。
第2の金属閉鎖形スイッチギア200は、前面側に正面扉248、背面側に背面扉249を備え、筺体状の盤本体204の内部を、各仕切り板240a、240b、241、242、243、244、により分割区画されている。この分割区画により、盤正面側の下段には、盤本体の仕切り板240b、241、244、底板246、側板247によって盤が形成されている。この盤には遮断器211が収納される遮断器室201が形成されている。また、遮断器室201の上段には、盤本体の仕切り板240a、241、244、天板245、側板247によって盤が形成されている。この盤には、内部に仕切り板251、252が設けられ、第1共通放圧室205が形成されている。また、遮断器室201と第1共通放圧室205の背部には、盤本体の仕切り板243、244、天板245、側板247によって盤が形成されている。この盤には、母線231が収納される母線室203が形成されている。さらに、盤背面側の下段には、盤本体の仕切り板242、243、244、底板246、側板247、背面扉249によって盤が形成されている。この盤には、ケーブル221と変流器223とがそれぞれ収納されるケーブル・変流器室202が形成されている。また、ケーブル・変流器室202の上段には、盤本体の仕切り板242、243、天板245、側板247、背面扉249によって盤が形成されている。この盤には、仕切り板261,262が設けられ、第2共通放圧室206が形成されている。
【0019】
ここで、盤本体の204の仕切り板241は、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100における仕切り板141より下方に設けられ、同様に、ケーブル・変流器室202の仕切り板242も隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100における仕切り板142より下方に設けられている。つまり、遮断器室201及びケーブル・変流器室202は、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100における下段の遮断器室101及びケーブル・変流器室102より、いずれも低く形成されている。
【0020】
遮断器室201上の第1共通放圧室205において、仕切り板240aは、盤本体204の前面と所定の間隔で並行対面するように配置されており、その下端を遮断器室201の仕切り板241の上部に、その上端を盤本体204の天板245に接合されている。第1共通放圧室205の内部は、図4に示すように仕切り板251、252が設けられて、3室に区画されている。具体的には、仕切り板251、252は、放圧室内方に向かって傾斜する傾斜部と、この傾斜部に繋がる垂直部とを有している。正面視左側の盤本体204の側板247であって遮断器室201の仕切り板241の上部近傍に、左側の仕切り板251における傾斜部の下端が接合される。また、仕切り板251における垂直部の上端が、天板245に接合されている。さらに、同様に右側の仕切り板252における傾斜部の下端は、正面視右側の盤本体204の側板247であって遮断器室201の仕切り板241の上部近傍に接合される。また、仕切り板252における垂直部の上端は、天板245に接合されている。
【0021】
ケーブル・変流器室202上の第2放圧室206の内部にあっても、上述した第1放圧室205と同様に仕切り板261、262により、3室に区画されている。
【0022】
また、母線室203において、仕切り板243の下端は、仕切り板244の遮断器室201の背面部に接合され、仕切り板243の上端は、盤本体204の天板245に接合されている。このため、形成される母線室203は、盤本体204の天板245を含む盤である点で、第1の金属閉鎖形スイッチギア100の母線室103と異なる。 母線室203内には、碍子を介して、母線231が配設されている。また、ケーブル・変流器室202において、変流器223が遮断器室201の後方に取り付けられている。
【0023】
ところで、盤本体204の天板245には、第1共通放圧室205、第2共通放圧室206、及び母線室203に接続する盤内放出開口210が、それぞれ設けられている。各盤内放出開口210には、例えば、常時閉止しているが一定限度以上の圧力に応じて開く弁機構である放圧フラッパ209が、取り付けられている。一方、遮断器室201、及びケーブル・変流器室202の放圧手段として、遮断器室201の仕切り板241、ケーブル・変流器室202の仕切り板242に放出開口208がそれぞれ設けられている。この放出開口208により、遮断器室201は第1共通放圧室205に接続し、ケーブル・変流器室202は第2共通放圧室206に接続する。
【0024】
また、第1共通放圧室205を構成する盤本体204の側板247であって、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100の隣接面に設けられた放出開口108と対向する位置に、放出開口208が設けられている。同様に、第2共通放圧室206を構成する盤本体204の側板247であって、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100の隣接面に設けられた放出開口108と対向する位置に、放出開口208が設けられている。この放出開口208により、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段の遮断器室101は、第1共通放圧室205に接続し、同じく下段のケーブル・変流器室102は第2共通放圧室206に接続している。したがって、上述した仕切り板251、252、261、262によって区画された共通放圧室205、206の各室は、図4に示すように、対応する各放出開口208と共に独立した一つの放圧経路を構成している。
【0025】
つぎに、上述した本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態の動作について図1乃至図4を用いて説明する。
例えば、図1及び図4の正面視左側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段の遮断器室101で内部アーク事故が発生した場合は、急激な内部圧力の上昇により膨張した空気が、遮断器室101の右側板147に設けられた放出開口108と隣接する第2の金属閉鎖形スイッチギア200の第1共通放圧室205の左側板247に設けられた放出開口208を通って、第1共通放圧室205に放出される。第1共通放圧室205は、仕切り板251、252により他の放出開口208と独立しているため、放出された膨張空気は、例えば他の遮断器室201に流入することはない。放出された膨張空気は、第1共通放圧室205の上部の盤本体204の天板245に設けられた盤内放出開口210を通り、盤内放出開口210に取り付けられた放圧フラッパ209を作動させて、盤外に放出される。正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段の遮断器室101での内部アーク事故、及び第2の金属閉鎖形スイッチギア200の遮断器室201での内部アーク事故も同様に対応される。
【0026】
また、正面視左側の第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段のケーブル・変流器室102で内部アーク事故が発生した場合は、急激な内部圧力の上昇により膨張した空気が、ケーブル・変流器室102の右側板147に設けられた放出開口108と隣接する第2の金属閉鎖形スイッチギア200の第2共通放圧室206の左側板247に設けられた放出開口208を通って、第2共通放圧室206に放出される。第2共通放圧室206は、仕切り板261、262により他の放出開口208と独立しているため、放出された膨張空気は、例えば他のケーブル・変流器室202に流入することはない。放出された膨張空気は、第2共通放圧室206の上部の盤本体204の天板245に設けられた盤内放出開口210を通り、盤内放出開口210に取り付けられた放圧フラッパ209を作動させて、盤外に放出される。正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段のケーブル・変流器室102での内部アーク事故、及び第2の金属閉鎖形スイッチギア200のケーブル・変流器室202での内部アーク事故も同様に対応される。
【0027】
さらに、正面視左側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の母線室103で内部アーク事故が発生した場合は、急激な内部圧力の上昇により膨張した空気が、接続している第2の金属閉鎖形スイッチギア200の母線室203に放出される。放出された膨張空気は、母線室203の上部の盤本体204の天板245に設けられた盤内放出開口210を通り、盤内放出開口210に取り付けられた放圧フラッパ209を作動させて、盤外に放出される。正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の母線室103での内部アーク事故も同様に対応される。
【0028】
つぎに、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの他の実施の形態について図5及び図6を用いて説明する。図5は、本発明の金属閉鎖形スイッチギアの他の実施の形態を構成する第2の金属閉鎖形スイッチギアの側面図、図6は図5のB−B断面図である。これらの図において、図1乃至図4と同符号のものは同一部分である。本実施の形態における第2の金属閉鎖形スイッチギア200は、上記一の実施の形態における第2の金属閉鎖形スイッチギア200と以下の点でその形態が異なり、その他の点は、共通する。
【0029】
第1及び第2共通放圧室205、206において、仕切り板251、252、261、262を設けていない。したがって、各共通放圧室内部は、一つの直方体形状であり、内部を3区画に区分けしている上述の実施の形態における各共通放圧室205、206と異なる。
【0030】
また、例えば第1共通放圧室205において、遮断器室201と接続するために遮断器室201の仕切り板241に設けられた放出開口208と、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段の遮断器室101と接続するために両側板247に設けられた放出開口208に、常時閉止しているが一定限度以上の圧力に応じて開く弁機構である放圧フラッパ207が、取り付けられている。同様に、第2共通放圧室206において、ケーブル・変流器室202と接続するためにケーブル・変流器室202の仕切り板242に設けられた放出開口208と、隣接する第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段のケーブル・変流器室102と接続するために両側板247に設けられた放出開口208に、常時閉止しているが一定限度以上の圧力に応じて開く弁機構である放圧フラッパ207が、取り付けられている。したがって、各共通放圧室内部に、3個の放圧フラッパを備える点で、放圧フラッパを備えていない上述の実施の形態における各共通放圧室205、206と異なる。
【0031】
なお、上述の実施の形態において、仕切り板251、252、261、262における傾斜部を円弧状に形成することも可能である。
【0032】
つぎに、上述した本発明の金属閉鎖形スイッチギアの他の実施の形態の動作について図1、図5及び図6を用いて説明する。
例えば、図1及び図6の正面視左側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段の遮断器室101で内部アーク事故が発生した場合は、急激な内部圧力の上昇により膨張した空気が、遮断器室101の右側板147に設けられた放出開口108と隣接する第2の金属閉鎖形スイッチギア200の第1共通放圧室205の左側板247に設けられた放出開口208から放圧フラッパ207を作動させて、第1共通放圧室205に放出される。第1共通放圧室205の内部は、放出開口208毎に放圧フラッパ207が設けられているため、他の放出開口208の放圧フラッパ207が閉止され、放出された膨張空気は、例えば他の遮断器室201に流入することはない。放出された膨張空気は、第1共通放圧室205の上部の盤本体204の天板245に設けられた盤内放出開口210を通り、盤内放出開口210に取り付けられた放圧フラッパ209を作動させて、盤外に放出される。正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段の遮断器室101での内部アーク事故、及び第2の金属閉鎖形スイッチギア200の遮断器室201での内部アーク事故も同様に対応される。
【0033】
また、正面視左側の第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段のケーブル・変流器室102で内部アーク事故が発生した場合は、急激な内部圧力の上昇により膨張した空気が、ケーブル・変流器室102の右側板147に設けられた放出開口108と隣接する第2の金属閉鎖形スイッチギア200の第2共通放圧室206の左側板247に設けられた放出開口208から放圧フラッパ207を作動させて、第2共通放圧室206に放出される。第2共通放圧室206の内部は、放出開口208毎に放圧フラッパ207が設けられているため、他の放出開口208の放圧フラッパ207が閉止され、放出された膨張空気は、例えば他のケーブル・変流器室202に流入することはない。放出された膨張空気は、第2共通放圧室206の上部の盤本体204の天板245に設けられた盤内放出開口210を通り、盤内放出開口210に取り付けられた放圧フラッパ209を作動させて、盤外に放出される。正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の下段のケーブル・変流器室102での内部アーク事故、及び第2の金属閉鎖形スイッチギア200のケーブル・変流器室202での内部アーク事故も同様に対応される。
【0034】
さらに、正面視左側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の母線室103で内部アーク事故が発生した場合は、急激な内部圧力の上昇により膨張した空気が、接続している第2の金属閉鎖形スイッチギア200の母線室203に放出される。放出された膨張空気は、母線室203の上部の盤本体204の天板245に設けられた盤内放出開口210を通り、盤内放出開口210に取り付けられた放圧フラッパ209を作動させて、盤外に放出される。正面視右側に配置された第1の金属閉鎖形スイッチギア100の母線室103での内部アーク事故も同様に対応される。
【0035】
したがって、このように構成された金属閉鎖形スイッチギア300においては、いかなる区画で内部アーク事故が発生しても、事故で発生した膨張空気を外部に放出することができる。
【0036】
上述した本発明の金属閉鎖形スイッチギアによれば、金属閉鎖形スイッチギア内のいずれの室で内部アーク事故が発生しても、事故で発生した膨張空気を外部に放出することができる。また、共通放圧室は金属閉鎖形スイッチギアの内部に区画して設けられている。このため、共通放圧室は、他の各室と同様の強度等を有し、十分な安全性と信頼性が確保される。さらに、この金属閉鎖形スイッチギアの外形寸法は従来の金属閉鎖形スイッチギアの外形寸法と同一である。したがって、多数のフィーダを必要とする場合であっても、従来例と略同じ設置面積で、遮断器等を多段積載した金属閉鎖形スイッチギアを設置することができる。さらに、共通放圧室を備える形式であっても、系統の増設が可能であり、しかも簡便であることから、汎用性に優れている。また、第2の金属閉鎖形スイッチギア200の上方に放圧室を一体的に形成してユニット化することも可能である。
【0037】
なお、上述した本発明の金属閉鎖形スイッチギアの実施の形態では、第1の金属閉鎖形スイッチギア100を2面と第2の金属閉鎖形スイッチギア200の1面で金属閉鎖形スイッチギアを構成しているが、第1の金属閉鎖形スイッチギア100と第2の金属閉鎖形スイッチギア200を列盤とすれば、1面ずつの構成であっても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を構成する第1の金属閉鎖形スイッチギアの側面図である。
【図3】本発明の金属閉鎖形スイッチギアの一実施の形態を構成する第2の金属閉鎖形スイッチギアの側面図である。
【図4】図1に示す本発明の金属閉鎖形スイッチギアをIV―IV矢視から見た断面図である。
【図5】本発明の金属閉鎖形スイッチギアの他の実施の形態を構成する第2の金属閉鎖形スイッチギアの側面図である。
【図6】図5に示す本発明の金属閉鎖形スイッチギアをVI―VI矢視から見た断面図である。
【符号の説明】
【0039】
100 第1の金属閉鎖形スイッチギア
101 遮断器室
102 ケーブル・変流器室
103 母線室
104 盤本体
108 放出開口
109 放圧フラッパ
110 盤内放出開口
141 仕切り板
200 第2の金属閉鎖形スイッチギア
201 遮断器室
202 ケーブル・変流器室
203 母線室
204 盤本体
205 第1共通放圧室
206 第2共通放圧室
207 放圧フラッパ
208 放出開口
209 放圧フラッパ
210 盤内放出開口
241 仕切り板
300 金属閉鎖形スイッチギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
盤面の上下方向に積載され、その盤内に遮断器をそれぞれ収納した遮断器室と、
前記遮断器室の背部に配置され、その盤内に母線を収納した母線室と、
前記母線室の背部に配置され、その盤内にケーブル・変流器をそれぞれ収納したケーブル・変流器室とを有する第1の金属閉鎖形スイッチギアと、
前記第1の金属閉鎖形スイッチギアの前記下側の遮断器室の側部側に配置され、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側の遮断器室の前記盤内の仕切り板より下方に位置する仕切り板を有する盤内に遮断器を収納した遮断器室と、
この遮断器室の背部に配置され、その盤内に母線を収納した母線室と、
この母線室の背部に配置され、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側のケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板より下方に位置する仕切り板を有する盤内にケーブル・変流器を収納したケーブル・変流器室とを有する第2の金属閉鎖形スイッチギアと、
前記第2の金属閉鎖形スイッチギアの前記遮断器室上及びケーブル・変流器室上にそれぞれ配置され、前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側の遮断器室、ケーブル・変流器室、及び前記第2の金属閉鎖形スイッチギアの前記遮断器室及びケーブル・変流器室で内部アーク事故により生起した内部圧をそれぞれ放出する第1及び第2の共通放圧室と、
前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側の遮断器室の前記盤内の仕切り板と前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記遮断器室の前記盤内の仕切り板との間の側板、及び前記第1の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記下側のケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板と前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記ケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板との間の側板、並びに、前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記遮断器室の前記盤内の仕切り板、及び前記第2の金属閉鎖形スイッチギアにおける前記ケーブル・変流器室の前記盤内の仕切り板に、
前記共通放圧室に通じるように設けた放出開口とを
備えたことを特徴とする金属閉鎖形スイッチギア。
【請求項2】
請求項1に記載の金属閉鎖形スイッチギアにおいて、
前記放出開口に、一定限度以上の圧力に応じて開く常時閉の放圧フラッパをそれぞれ設けたことを特徴とする金属閉鎖形スイッチギア。
【請求項3】
請求項1記載の金属閉鎖形スイッチギアにおいて、
前記共通放圧室を各放圧開口部毎に区画する仕切りを設けたことを特徴とする金属閉鎖形スイッチギア。
【請求項4】
請求項1乃至3記載の金属閉鎖形スイッチギアにおいて、
前記第1及び第2の共通放圧室の天井部には、一定限度以上の圧力に応じて開く常時閉の放圧フラッパをそれぞれ設けたことを特徴とする金属閉鎖形スイッチギア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−201274(P2009−201274A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−41170(P2008−41170)
【出願日】平成20年2月22日(2008.2.22)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000150497)株式会社日立アイイ−システム (12)
【Fターム(参考)】