説明

金属顔料フレーク作製方法およびめっき治具

【課題】高い収率で金属顔料フレークを作製することが可能な金属顔料フレーク作製方法およびめっき治具を提供する。
【解決手段】離型剤に浸すことによりディスク(1)に離型剤を塗布し、回転手段(3)を使用して余分な離型剤を除去する工程と、めっき槽(図示せず)に装入し、全体を揺動させることによりめっき皮膜を成膜する工程と、めっき槽から取り出した後、回転手段(3)を使用してめっき液を除去する工程と、得られためっき皮膜を剥離する工程とにより、金属顔料フレークを作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無電解めっき法で金属顔料フレークを作製する方法およびめっき治具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗料などに使用される金属顔料フレークは、スパッタリング法や無電解めっき法を用いて得られた皮膜(金属箔)を粉砕して得ている。例えば、特開2003−292823号公報には、耐食光輝性顔料をスパッタリング法で作製している。しかし、スパッタリング法よりも、無電解めっき法で作製する方が、低コストである。
【0003】
特開2005−314757号公報、特開2004−59952号公報および特開平8−35097号公報には、プリント配線板の製造方法が記載されているが、リールトゥリール方式で、無電解めっき法または電解めっき法により、フィルムの上にめっき皮膜を析出させる方法が記載されていて、このような方法を用いて、前述のようなめっき皮膜を作製することが一般的である。
【0004】
従来の無電解めっき法による金属顔料フレークの製造方法では、フィルム表面に離型剤を塗布し、その上に無電解めっき法でめっき皮膜を析出させて、有機溶剤によって離型剤を溶解することにより、金属顔料フレーク用の金属箔を得ている。
【0005】
収率を上げるためには、フィルムの幅を広くし、所要のめっき時間を確保した上で、搬送速度を上げたり、めっき槽内の搬送長を長くすることが必要である。そのため、前述の特開2005−314757号公報や、特開平8−35097号公報には、水平に搬送していたフィルムを、めっき槽内でジグザグに搬送させて、搬送長を長くすることが記載されている。あるいは、前述の特開2004−59952号公報には、フィルムを垂直に広げた状態で搬送することにより、めっき槽の設置面積を縮小させることが記載されている。
【0006】
しかし、このように幅の広いフィルムを、めっき槽内で、蛇行やたるみが生じないように搬送するためには、非常に複雑な構造の装置が必要になり、装置を大型化した割には、高い収率が得られず、製造費用を低減させることが困難であるという問題があった。
【特許文献1】特開2003−292823号公報
【特許文献2】特開2005−314757号公報
【特許文献3】特開2004−59952号公報
【特許文献4】特開平8−35097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、高い収率で金属顔料フレークを作製することが可能な金属顔料フレーク作製方法およびめっき治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のめっき治具は、回転可能で、かつ、等間隔で平行に並べられる複数の基板を有し、該基板に析出させるめっき皮膜を得るように使用される。
【0009】
さらに、フレームと、該フレームに回転可能に支持される1つ以上の回転軸と、該回転軸を回転させる回転手段とを有し、前記基板は、該回転軸に等間隔で平行に並べられて固定されることが望ましい。
【0010】
さらに、前記基板同士の間隔が、5mm以上であることが望ましい。
【0011】
本発明の金属顔料フレーク作製方法は、前記めっき治具を使用し、離型剤に浸すことにより前記基板に該離型剤を塗布し、前記回転手段を使用して余分な離型剤を除去する工程と、めっき槽に装入し、全体を揺動させることによりめっき皮膜を成膜する工程と、めっき槽から取り出した後、前記回転手段を使用してめっき液を除去する工程と、得られためっき皮膜を剥離する工程とを有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、めっき槽内を効率よく使用することができて、離型剤塗布および離型剤剥離という工程を、簡便に行うことが可能となる。このことにより、高い収率で金属顔料フレークを作製することができる。
【0013】
さらに、繰り返して使用することが容易であることから、製造費用のコストダウンが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照して、本発明のめっき治具について、説明する。図1は、本発明のめっき治具の一実施例を示す斜視図である。
【0015】
本発明のめっき治具は、フレーム(2)と、フレーム(2)に回転可能に支持される1つ以上の回転軸(4)と、回転軸(4)を回転させる回転手段(3)と、回転軸(4)に等間隔で平行に並べられて固定される複数のディスク(1)とからなる。
【0016】
ディスク(1)の材質は、金属または樹脂等でよく、一様な厚さで、平滑な表面を持つように形成される。ディスク(1)の材質が樹脂製である場合は、後述する離型剤中の溶剤や、めっき液に対して、溶解や剥離しないものであれば限定されず、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、またはポリスチレン樹脂等を用いることができる。
【0017】
ディスク(1)の形状は、平らな表面を有する基板であれば、円形に限らず、四角形等の任意の形状の平板を採用することができるが、回転運動のばらつきや液きりの観点から円盤状のディスクが好ましい。また、ディスクは、一様な厚みであり、回転運動や液流れ等に対して、変形することなく、耐えられる厚みであればよい。
【0018】
回転軸(4)には、ディスク(1)が等間隔に配置固定され、回動可能なシャフトからなる。回転軸(4)は、図示した例では、2本であるが、何本でもよい。また、回転軸(4)を回転させる回転手段(3)は、図示したようなクランクハンドルや、駆動系に接続可能な構造、例えば歯車機構やチェーンを介して接続される構造であってもよい。材質は、いずれもディスク(1)と同様でよい。
【0019】
なお、ディスク(1)を回転可能に、かつ、等間隔で並行に配置するための手段の構造は、回転軸(4)およびこれに接続されたクランクハンドルに限られない。例えば、軸(4)を固定し、ディスク(1)を軸(4)に対して回動可能に配置し、外部の駆動手段により、ディスク(1)を回転させるような構造でもよい。
【0020】
フレーム(2)は、無電解めっき槽への装入および取り出しを容易とする形状の構造とすることが好ましい。フレーム(2)の材質も、ディスク(1)と同様でよい。フレーム(2)は相互に連結可能として、上下左右に当該治具を複数配列できるようにすることが好ましい。
【0021】
無電解めっきを行う場合は、めっき時に発生する水素を、効率よく除去する必要がある。また、無電解めっきを均一に行うためには、ディスク(1)の間のめっき液を滞留させないように、めっき液を攪拌する必要がある。さらに、全体を垂直方向および水平方向に揺動させることにより、ディスク(1)の間のめっき液を簡単に攪拌することができ、また、発生した水素を、効率よく除去することが可能である。
【0022】
ディスク(1)の間隔が狭いほど、狭いめっき槽でも、効率よくめっき面積を得られるが、ディスク(1)の間隔を5mm未満とすると、ディスク(1)の間のめっき液が、十分に移動できなくなり、均一なめっき皮膜を析出させることができなくなる。
【0023】
本発明の金属顔料フレークの作製方法について、以下に説明をする。
【0024】
先ず、後述する溶剤によって容易に溶解可能な離型剤の中に、前述のめっき治具を浸して、取り出すことにより、ディスク(1)の表面に離型剤を塗布する。その後、回転手段(3)を使用して、ディスク(1)を回転させる。これにより、余分な離型剤を除去することができるとともに、離型剤を均一に塗布することができる。
【0025】
その後、ディスク(1)が垂直に配向する状態で、めっき槽に装入して、無電解めっき法によってめっき皮膜を成膜する。無電解めっきの間は、全体を垂直方向および水平方向に揺動させることにより、ディスク(1)の間のめっき液が移動し、均一にめっき皮膜を析出させることができる。また、ディスク(1)が垂直方向に配向しているため、前述のように全体を揺動させることにより、発生する水素を容易に上方へ排出することができる。
【0026】
めっき槽から取り出した後、回転手段(3)を使用して、ディスク(1)を回転させる。これにより、余分なめっき液を除去して回収することができるため、持ち出しによる薬液のロスがなくなる。
【0027】
その後、溶剤の満たされた槽に、めっき治具を浸して、離型剤を溶解することにより、金属顔料フレークを得る。最後に、簡単な洗浄を行うことにより、めっき治具を繰り返して使用する。
【実施例】
【0028】
析出させるめっき皮膜は、無電解めっきで析出される金属および合金であれば、いずれの金属および合金でもよいが、Niからなる金属顔料フレークの製造方法について示す。
【0029】
本実施例のめっき冶具について、斜視図を図1に示す。
【0030】
本実施例のめっき治具は、フレーム(2)と、フレーム(2)に回転可能に支持される2本の回転軸(4)と、回転軸(4)を回転させる回転手段(3)と、回転軸(4)に等間隔で平行に並べられて固定されるディスク(1)とからなる。ディスク(1)は、直径15cmのポリエステル樹脂製とし、1本の回転軸(4)には、ディスク(1)を、5mm間隔で、20枚ずつ、取り付けた。
【0031】
先ず、酢酸ブチル40%、キシレン40%、およびシクロヘキサノン20%の溶媒に、ウレタン樹脂を溶解して離型剤を得て、該離型剤が満たされた槽に、めっき冶具を浸し、取り出した後、回転手段(3)を使用してディスク(1)を回転させながら乾燥することで、余分な離型剤を除去するとともに、均一な塗布を行った。
【0032】
さらに、通常の無電解めっきに用いるコンディショナー(例えば、メルテックス社製、メルプレートコンディショナー1101)を通した後、キャタリスト(例えば、メルテックス社製、メルプレートアクチベーター444)と、アクセレレーター(例えば、メルテックス社製、メルプレートPA−360)を用いて、めっき核を付与した。
【0033】
その後、ディスク(1)が垂直に配向する状態で、無電解Niめっき液(メルテックス株式会社製、NI−871)が満たされためっき槽に装入して、厚さ0.05μmのNi−P合金からなるめっき皮膜を成膜した。無電解めっきの間は、15秒に1回程度の円運動を加えて、全体を垂直方向および水平方向に揺動させた。
【0034】
めっき槽から取り出した後、回転手段(3)を使用して、ディスク(1)を回転させることにより、余分なめっき液を除去した。その結果、全てのディスク(1)に、中心まで均一なめっき皮膜を作製することができた。
【0035】
その後、メチルエチルケトンの溶液の満たされた槽にめっき治具を浸して、超音波洗浄装置(HONDA社製、ULTRASONIC CLEANER W−212)により100Wの超音波を与えて、離型剤を溶解するとともに、皮膜を粉砕することにより、金属顔料フレークを得た。
【0036】
最後に、メチルエチルケトンの溶液により、洗浄を繰り返し行い、使用した。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のめっき治具の一実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 ディスク
2 フレーム
3 回転手段
4 回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能で、かつ、等間隔で平行に並べられる複数の基板を有し、該基板に析出させるめっき皮膜を得るように使用されるめっき治具。
【請求項2】
フレームと、該フレームに回転可能に支持される1つ以上の回転軸と、該回転軸を回転させる回転手段とを有し、前記基板は、該回転軸に等間隔で平行に並べられて固定されることを特徴とする請求項1に記載のめっき治具。
【請求項3】
前記基板同士の間隔が、5mm以上であることを特徴とする請求項2に記載のめっき治具。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のめっき治具を使用し、離型剤に浸すことにより前記基板に該離型剤を塗布し、前記回転手段を使用して余分な離型剤を除去する工程と、めっき槽に装入し、全体を揺動させることによりめっき皮膜を成膜する工程と、めっき槽から取り出した後、前記回転手段を使用してめっき液を除去する工程と、得られためっき皮膜を剥離する工程とを有することを特徴とする金属顔料フレーク作製方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−50648(P2008−50648A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227335(P2006−227335)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】