説明

金属顔料組成物

【課題】水性塗料に使用可能で塗料の貯蔵安定性に優れており、なおかつ塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの低下が少ない金属顔料組成物を提供することを目的とするものである。
【解決手段】少なくとも一種以上のモリブデン酸アミン塩と、無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類と、金属顔料とを含有する金属顔料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物、特に水性塗料に適する金属顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、塗料分野においては、省資源、無公害化対策として、有機溶剤を極めて少量しか含まないか、あるいは全く含まない水性塗料を使用することが益々多くなってきている。また、水性塗料の目覚ましい技術的進歩により、従来、溶剤型塗料でしか達し得なかった高級な仕上がり外観が、水性塗料でも実現可能な状況になってきた。しかし、アルミニウムや亜鉛等の金属顔料を含むメタリック塗料においては、未だ、実用可能な水性塗料の例は少ない。この理由として、金属顔料は水性塗料中で腐食しやすいという点がある。水性塗料中に金属粉末が存在する場合には、各種金属の性質に基づいて、酸性、中性、塩基性のいずれか、あるいは複数の領域において水による腐食が起こり、水素ガスが発生する。これは塗料メーカーにおける塗料化工程や、自動車、家電メーカーにおける塗装工程において、安全上極めて重大な問題である。なお、以下では水や水性塗料中における金属顔料の耐腐食性を、「貯蔵安定性」と記載する。
【0003】
特許文献1では、モリブデン酸被膜を有し、かつ該被膜の上にリン酸系被膜を有することを特徴とするアルミニウム顔料が開示されている。また、特許文献2では、過酸化ポリモリブデン酸から誘導される被膜が形成され、かつアミンを含有し、無機皮膜の上にさらに酸性有機(亜)リン化合物の吸着層を有するアルミニウム顔料が開示されている。しかしこれらの先行文献に記載の方法においても、金属顔料の色調低下は避けられない。また、特許文献3では、有機モリブデン化合物と金属顔料とを含有する金属顔料組成物が開示されているが、貯蔵安定性が不十分であった。
【特許文献1】特開平7−70468号公報
【特許文献2】国際出願WO2002/031061パンフレット
【特許文献3】特開2007−169613号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記従来技術の欠点を克服した金属顔料組成物を提供すること、すなわち水性塗料に使用可能で塗料の貯蔵安定性に優れており、なおかつ塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの低下が少ない金属顔料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、モリブデン酸アミン塩と、無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類を含有する金属顔料組成物を用いることにより、優れた貯蔵安定性と、優れた色調を両立し得る金属顔料組成物を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)少なくとも一種以上のモリブデン酸アミン塩と、無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類と、金属顔料とを含有する金属顔料組成物。
(2)金属顔料がアルミニウムフレークである(1)に記載の金属顔料組成物。
(3)モリブデン酸アミン塩のアミンが、下記一般式(12)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種である(1)または(2)に記載の金属顔料組成物。
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
(4)無機リン酸が、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、亜リン酸の中から選ばれた1種または2種以上である、(1)または(2)に記載の金属顔料組成物。
(5)無機リン酸塩が、無機リン酸と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、下記一般式(13)で表されるアミンとの塩である(1)または(2)に記載の金属顔料組成物。
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
(6)酸性有機(亜)リン酸エステルが、下記一般式(14)で示される化合物の中から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の金属顔料組成物。
【化3】

(式中、R4、R5およびR6は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数4から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基を含んでも良い炭化水素基であり、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつR4、R5、R6の炭素原子数の合計は4以上である。mは0または1の数を表す。)
(7)酸性有機(亜)リン酸エステル塩が、下記一般式(15)で表されるリン酸エステルと、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、下記一般式(16)で表されるアミンから選ばれる少なくとも1種との塩である(1)または(2)に記載の金属顔料組成物。
【化4】

(式中、R4、R5およびR6は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数4から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基を含んでも良い炭化水素基であり、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつR4、R5、R6の炭素原子数の合計は4以上である。mは0または1の数を表す。)
【化5】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
(8)無機リン酸が、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸である、(4)に記載の金属顔料組成物。
(9)無機リン酸塩の無機リン酸部分がオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸から選ばれる少なくとも1種であり、塩を形成する塩基性部分がアンモニア、モルホリン、下記一般式(17)、(18)で表されるエタノールアミン類、もしくは下記一般式(19)で表されるアルキルアミン類から選ばれる少なくとも1種である(5)に記載の金属顔料組成物。
【化6】

(式中、R7、R8、R9の少なくとも1つは、下記一般式(18)であり、他は水素原子または炭素数1から8の炭化水素基を表す。)
【化7】

【化8】

(式中、R10、R11、R12のうち少なくとも1つは炭素数6から20の炭化水素基であり、他は水素原子または炭素数1から5の炭化水素基を表す。)
(10)酸性有機(亜)リン酸エステルが下記一般式(20)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種である(6)に記載の金属顔料組成物。
【化9】

(式中、R13、R14、R15のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつ少なくとも1つは炭素数6から20の炭化水素基もしくは下記一般式(21)、(22)で示される基であり、他は水素原子または炭素数1から5の炭化水素基を表す。mは0または1の数を表す。)
【化10】

(式中、R16、R17は水素原子もしくは下記一般式(22)であり、hは0から30である。)
【化11】

(11)酸性有機(亜)リン酸エステル塩が、モノもしくはジトリデシルアシッドホスフェートのモルフォリン塩、もしくはN,N−ジメチルエタノールアミン塩である(7)に記載の金属顔料組成物。
(12)モリブデン酸アミン塩が、金属顔料100重量部に対し、0.01から10重量部存在する(1)から(7)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(13)無機リン酸もしくはその塩類が、金属顔料100重量部に対し、0.01から10重量部存在する(1)から(9)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(14)酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類が、金属顔料100重量部に対し、0.01から20重量部存在する(1)から(11)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(15)更に界面活性剤を金属顔料100重量部に対し、0.01から30重量部含有する(1)から(14)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(16)(1)から(15)のいずれかに記載の金属顔料組成物を含む塗料組成物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属顔料組成物を水性塗料に用いた場合、塗料の良好な貯蔵安定性と、光輝性、隠蔽性、およびフリップフロップの優れた塗膜を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
本発明に用いる金属顔料としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、ニッケルのような卑金属のフレーク、及びそれらの合金のフレークを好ましく用いることができる。特に好適なのはメタリック用顔料として多用されているアルミニウムフレークである。本発明に用いるアルミニウムフレークとしては、表面光沢性、白度、光輝性等メタリック用顔料に要求される表面性状、粒径、形状を有するものが適している。
【0009】
形状としては、鱗片状のものが好ましい。アルミニウムフレークについて例示すると、平均粒径(d50)が2から40μmであり、平均厚み(t)が0.01から2μmの範囲であることが好ましく、平均アスペクト比が10から2500の範囲であることが好ましい。ここで、平均アスペクト比は、アルミニウムフレークの平均粒径(d50)を平均厚み(t)で割った値である。アルミニウムフレークは、通常ペースト状態で市販されており、これを用いるのが好ましい。また、平均粒径(d50)が3から30μm、平均厚み(t)が5から50nmのいわゆるアルミニウム蒸着箔も使用可能である。
【0010】
本発明に用いるモリブデン酸アミン塩のアミンとしては、下記一般式(23)で表され、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、トリデシルアミン、ステアリルアミンのような直鎖一級アミン、イソプロピルアミン、イソブチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、分岐トリデシルアミンのような分岐一級アミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジラウリルアミン、ジトリデシルアミン、ジステアリルアミンのような直鎖二級アミン、ジイソプロピルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、分岐ジトリデシルアミンのような分岐二級アミン、メチル・ブチルアミン、エチル・ブチルアミン、エチル・ヘキシルアミン、エチル・ラウリルアミン、エチル・ステアリルアミン、イソプロピル・オクチルアミン、イソブチル・2−エチルヘキシルアミンのような非対称二級アミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、トリラウリルアミン、トリトリデシルアミン、トリステアリルアミンような直鎖三級アミン、トリイソプロピルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−2−エチルヘキシルアミン、分岐トリトリデシルアミンのような分岐三級アミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジエチルラウリルアミンのような混合炭化水素基を有する三級アミンなどの他に、アリルアミン、ジアリルアミン、トリアリルアミン、N,N−ジメチルアリルアミンなどアルケニル基をもつアミン、シクロヘキシルアミン、2−メチルシクロヘキシルアミンのような脂環一級アミン、ベンジルアミン、4−メチルベンジルアミンのような芳香環置換基を持つ一級アミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ−2−メチルシクロヘキシルアミンのような脂環二級アミン、ジベンジルアミン、ジ−4−メチルベンジルアミンのような芳香環置換基を持つ二級アミン、シクロヘキシル・2−エチルヘキシルアミン、シクロヘキシル・ベンジルアミン、ステアリル・ベンジルアミン、2−エチルヘキシル・ベンジルアミンのような非対称二級アミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミンのような脂環三級アミン、トリベンジルアミン、トリ−4−メチルベンジルアミンのような芳香環置換基を持つ三級アミン、モルホリン、3−メトキシプロピルアミン、3−エトキシプロピルアミン、3−ブトキシプロピルアミン、3−デシルオキシプロピルアミン、3−ラウリルオキシプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、モノプロパノールアミン、ブタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルエタノールアミン、N−プロピルエタノールアミン、N−イソプロピルエタノールアミン、N−ブチルエタノールアミン、N−シクロヘキシル−N−メチルアミノエタノール、N−ベンジル−N−プロピルアミノエタノール、またはN−ヒドロキシエチルピロリジン、N−ヒドロキシエチルピペラジン、N−ヒドロキシエチルモルホリン、エチレンジアミン、1,2−プロパンジアミン、1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、N−シクロヘキシル−1,3−プロパンジアミン、N−デシル−1,3−プロパンジアミン、N−イソトリデシル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチルピペラジン、N−メトキシフェニルピペラジン、N−メチルピペリジン、N−エチルピペリジン、キヌクリジン、ジアザビシクロ[2,2,2]オクタン、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]−7−ウンデセン等もしくはこれらの混合物が例示される。
【0011】
これらの中で特に好ましい例としては、ステアリルアミン、ジ−2−エチルヘキシルアミン、ジオクチルアミン、直鎖または分岐ジトリデシルアミン、ジステアリルアミン、直鎖または分岐トリトリデシルアミン、トリステアリルアミン、モルホリン、3−エトキシプロピルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0012】
【化12】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
【0013】
本発明に用いる無機リン酸の例としては、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、三リン酸、四リン酸、亜リン酸、ポリリン酸、ラウリルリン酸、ポリオキシプロピレンオレイルエーテルリン酸、ジポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルリン酸等があげられる。この中でも特に、オルトリン酸、ピロリン酸、メタリン酸、三リン酸、四リン酸、亜リン酸が好ましい。
【0014】
本発明に用いる無機リン酸塩の塩を構成する物質としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、マンガンなどの金属、アンモニア、下記一般式(24)で表されるアミンなどが挙げられる。これらのアミンの中で特に好ましい例としては、アンモニア、モルホリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0015】
【化13】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
【0016】
本発明に用いる酸性有機リン酸エステル又は酸性有機亜リン酸エステル(以下、「酸性有機(亜)リン酸エステル」と呼ぶ。)としては、下記一般式(25)で表され、ブチルアシッドホスフェート、オクチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、ノニルフェニルアシッドホスフェート、フェニルアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルアシッドホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルアシッドホスフェート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオレイルホスファイト、ジフェニルモノ(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ジフェニルモノデシルホスファイト、ジフェニルモノ(トリデシル)ホスファイト、ジエチルハイドロゲンホスファイト、ジラウリルハイドロゲンホスファイト、ジオレイルハイドロゲンホスファイト、ジフェニルハイドロゲンホスファイト等のそれぞれのモノエステル、ジエステルまたはそれらの混合物が例示される。これら酸性有機(亜)リン酸エステルの中に、非置換無機リン酸及びまたは酸性を示さないトリエステルが一部含まれていても良い。これらの中で特に好ましい例としては、オクチルアシッドホスフェート、ラウリルアシッドホスフェート、トリデシルアシッドホスフェート、ステアリルアシッドホスフェート、アシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート、ジラウリルハイドロゲンホスファイトのモノエステル、ジエステルまたはそれらの混合物が例示される。
【0017】
【化14】

(式中、R4、R5およびR6は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数4から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基を含んでも良い炭化水素基であり、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつR4、R5、R6の炭素原子数の合計は4以上である。mは0または1の数を表す。)
【0018】
本発明に用いる酸性有機(亜)リン酸エステル塩の塩を構成する物質としては、カリウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ土類金属、アルミニウム、亜鉛、マンガンなどの金属、アンモニウム、下記一般式(26)で表されるアミンなどが挙げられる。これらのアミンの中で特に好ましい例としては、モルホリン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0019】
【化15】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
【0020】
本発明に使用される界面活性剤は、例えばポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテルなどのポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエートなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなどのポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレートなどのポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ラウリン酸モノグリセライド、ステアリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライドなどのグリセリン脂肪酸エステルに代表される非イオン性界面活性剤。ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸アンモニウムなどの硫酸エステル塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウムなどのスルホン酸塩、アルキルリン酸カリウムなどのリン酸エステル塩に代表される陰イオン性界面活性剤。ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライドなどの四級アンモニウム塩に代表される陽イオン性界面活性剤などが挙げられ、これらから選ばれた1種もしくは2種以上が使用できる。これらの中で特に好ましい例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルまたはそれらの混合物が例示される。
【0021】
本発明に使用されるモリブデン酸アミン塩は、原料金属粉をボールミルで粉砕する時に添加しても良いし、金属顔料に溶剤を加えたスラリー状態で混合しても良いし、溶剤の量を少なくしたペースト状態で混練しても良い。また、モリブデン酸アミン塩は、金属顔料にそのまま加えても良いし、溶剤で希釈して加えても良い。均一な混合状態を得るためには、溶剤や鉱油等であらかじめ希釈して加える方が好ましい。希釈に用いる溶剤等は、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン等の炭化水素溶剤、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の工業用ガソリン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、鉱物油等が挙げられる。
【0022】
本発明に使用される無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類は、原料金属粉をボールミルで粉砕する時に添加しても良いし、金属顔料に溶剤を加えたスラリー状態で混合しても良いし、溶剤の量を少なくしたペースト状態で混練しても良い。これらはモリブデン酸アミン塩を金属顔料に添加する前に添加しても良いし、予めモリブデン酸アミン塩と混合させておいてから添加しても良いが、モリブデン酸アミン塩を添加後に添加する方が好ましい。また、均一な混合状態を得るためには、溶剤や鉱油等であらかじめ希釈して加える方が好ましい。希釈に用いる溶剤等は、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン等の炭化水素溶剤、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の工業用ガソリン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、鉱物油等が挙げられる。
【0023】
本発明に使用される界面活性剤は、原料金属粉をボールミルで粉砕する時に添加しても良いし、金属顔料に溶剤を加えたスラリー状態で混合しても良いし、溶剤の量を少なくしたペースト状態で混練しても良い。これらはモリブデン酸アミン塩と無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類を金属顔料に添加する前に添加しても良いし、予めモリブデン酸アミン塩と無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類と混合させておいてから添加しても良いが、モリブデン酸アミン塩と無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類を添加後に添加する方が好ましい。また、金属顔料組成物を、水を主とする媒体中に塗膜形成成分である樹脂類が溶解または分散している水性塗料に配合する際に添加しても良い。また、均一な混合状態を得るためには、溶剤や鉱油等であらかじめ希釈して加える方が好ましい。希釈に用いる溶剤等は、例えば、メタノール、イソプロパノール等のアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、デカリン等の炭化水素溶剤、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ等の工業用ガソリン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサン等のケトン類、鉱物油等が挙げられる。
【0024】
本発明の金属顔料組成物調製の際に用いられる溶剤は、特に制限は無く親水性溶剤でも疎水性溶剤でもよい。親水性溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、オクタノール等のアルコール類、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のセロソルブ類、及びそのエステル類、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、エチレンプロピレングリコールのグリコール類などが挙げられる。また、疎水性溶剤としては、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS、HAWS、トルエン、キシレン等が挙げられる。更には酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類も使用可能である。これらを単独または混合して使用することができる。
【0025】
スラリー状態で調整する場合は、金属顔料のスラリー中濃度は1から50重量%、好ましくは10から30重量%の状態で行い、ペースト状態で混練する場合は、金属顔料の濃度は50から95重量%、好ましくは60から85重量%の状態で行う。
【0026】
モリブデン酸アミン塩は、金属顔料100重量部に対し、0.01から10重量部、好ましくは0.01から5重量部添加する。これらは予め溶剤や鉱油に溶解または分散させておいてから添加するのが好ましい。
【0027】
無機リン酸もしくはその塩類は、金属顔料100重量部に対し、0.01から10重量部、好ましくは0.01から5重量部添加する。これらは予め溶剤や鉱油に溶解または分散させておいてから添加するのが好ましい。
【0028】
酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類は、金属顔料100重量部に対し、0.01から20重量部、好ましくは0.01から10重量部添加する。これらは予め溶剤や鉱油に溶解または分散させておいてから添加するのが好ましい。
【0029】
界面活性剤は、金属顔料100重量部に対し、0.01から30重量部、好ましくは0.01から20重量部添加する。これらは予め溶剤や鉱油に溶解または分散させておいてから添加するのが好ましい。
【0030】
これらを添加する順序に特に制限は無いが、モリブデン酸アミン塩を添加した後、無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類を添加し、最後に界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤は、金属顔料組成物を、水を主とする媒体中に塗膜形成成分である樹脂類が溶解または分散している水性塗料に配合する際に添加しても良い。
【0031】
この混合物は10から160℃、好ましくは20から120℃の温度で10分から72時間、好ましくは20分から48時間の範囲で攪拌混合する。溶剤が多い場合は除去し、最終の金属顔料含量を所望の40から90%とする。得られた金属顔料組成物は40℃から120℃、好ましくは50℃から110℃で6時間から3ヶ月間、好ましくは1日から30日間の間エージングさせてもよい。
【0032】
本発明によって得られる金属顔料組成物は、水を主とする媒体中に塗膜形成成分である樹脂類が溶解または分散している水性塗料に加えることによりメタリック水性塗料とすることができる。金属顔料組成物は、そのまま水性塗料に加えてもよいが、予め溶剤に分散させてから加える方が好ましい。使用する溶剤としては、テキサノール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらの樹脂類としては例えば、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリエーテル樹脂類、エポキシ樹脂類、フッ素樹脂類などが挙げられる。必要に応じて、メラミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ウレタンディスパージョンなどの樹脂を併用することができる。更には一般的に塗料に加えられる無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、分散剤、沈降防止剤、レべリング剤、増粘剤、消泡剤、紫外線吸収剤や光安定剤、酸化防止剤や還元防止剤の添加剤と組み合わせても良い。塗料への分散性を良くするために、更に界面活性剤を添加しても良い。
【実施例】
【0033】
以下に、本発明の実施例を示す。
[製造例1]
市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−3100(平均粒径10.5μm、不揮発分74%)」)135gに、モリブデン酸モノオクチルアミン塩を、該アルミペースト中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、0.3重量部となるように添加し、70℃で6時間攪拌した。
[製造例2]
市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−3100(平均粒径10.5μm、不揮発分74%)」)135gに、モリブデン酸分岐ジトリデシルアミン塩を、該アルミペースト中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、0.5重量部となるように添加し、70℃で6時間攪拌した。
[製造例3]
市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−3100(平均粒径10.5μm、不揮発分74%)」)135gに、モリブデン酸ジステアリルアミン塩を、該アルミペースト中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、0.6重量部となるように添加し、70℃で6時間攪拌した。
製造例1から3で得られたアルミニウム顔料組成物に対し、以下の処理を行った。
【0034】
[実施例1]
製造例1で得られたアルミニウム顔料組成物135gにエチレングリコールモノブチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、7.0重量部のリン酸を添加し、70℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分70%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例2]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gにエチレングリコールモノブチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、1.0重量部のリン酸を添加し、70℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分73%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例3]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gにエチレングリコールモノブチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、0.5重量部のリン酸を添加し、70℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分73.5%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例4]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、3.0重量部のリン酸トリエタノールアミン塩を添加し、70℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分72%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例5]
製造例3で得られたアルミニウム顔料組成物135gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、5.0重量部のジラウリルハイドロゲンホスファイト(城北化学工業株式会社製、商品名「JP−212」)を添加し、40℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分60%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例6]
製造例1で得られたアルミニウム顔料組成物135gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、5.0重量部のアシッドホスホオキシポリオキシプロピレングリコールモノメタクリレート(ユニケミカル株式会社製、商品名「ホスマーPP」)を添加し、40℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分77.5%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例7]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gにプロピレングリコールモノメチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、5.0重量部のトリデシルアシッドホスフェート(東邦化学工業株式会社製、商品名「GF−185」)を添加し、40℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分77%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例8]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gにエチレングリコールモノブチルエーテルを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、1.0重量部のトリデシルアシッドホスフェート(東邦化学工業株式会社製、商品名「GF−185」)を添加し、40℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分77.5%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例9]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gにミネラルスピリットを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、0.5重量部のトリデシルアシッドホスフェート(東邦化学工業株式会社製、商品名「GF−185」)を添加し、40℃で6時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分77.5%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例10]
製造例3で得られたアルミニウム顔料組成物135gにミネラルスピリットを465g加えスラリー状態とし、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、0.5重量部のトリデシルアシッドホスフェート(東邦化学工業株式会社製、商品名「GF−185」)を添加し、40℃で3時間攪拌した。更に0.5重量部のジ−2−エチルヘキシルアミンを添加し、40℃で3時間攪拌した。その後濾過し、不揮発分73%のアルミニウム顔料組成物を得た。
[実施例11]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gに、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、10.0重量部のトリデシルアシッドホスフェートのモルフォリン塩を添加し、70℃で6時間攪拌した。
[実施例12]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gに、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、1.0重量部のトリデシルアシッドホスフェートのモルフォリン塩を添加し、70℃で6時間攪拌した。
[実施例13]
製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物135gに、該アルミニウム顔料組成物中のアルミニウム金属成分100重量部に対し、1.0重量部のトリデシルアシッドホスフェートのN,N−ジメチルエタノールアミン塩を添加し、70℃で6時間攪拌した。
[実施例14から26]
実施例1から13で得られたアルミニウム顔料組成物に対し、下記の組成で水性メタリック塗料を作製した。
【0035】
[比較例1]
無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類を含有しない製造例2で得られたアルミニウム顔料組成物に対し、下記の組成で水性メタリック塗料を作製した。
【0036】
[水性メタリック塗料の調整]
アルミニウム顔料組成物:アルミニウム分として10.5g
ジエチレングリコールモノブチルエーテル:6.8g
ポリオキシエチレンラウリルエーテル(非イオン性界面活性剤)
(松本油脂製薬株式会社製、商品名「アクチノールL5」):2.1g
精製水:42g
水溶性アクリル樹脂
(オリジン電気株式会社製、商品名「水性プラミーズ#300」):175g
増粘剤(共栄社化学株式会社製、商品名「チクゾールK−130B」):5.0g
作製した水性メタリック塗料を用いて、以下の評価を行った。
【0037】
[評価1(貯蔵安定性評価)]
水性メタリック塗料200gをフラスコに採取し、40℃の恒温水槽で168時間まで水素ガス累積発生量を観察した。ガスの発生量に応じて下記のように評価し、塗料中の貯蔵安定性の指標とした。
○:1.0ml未満
△:1.0以上5.0ml未満
×:5.0ml以上
【0038】
[評価2(塗膜の色調評価)]
上記の塗料を用いて塗膜を作製し、輝度、フリップフロップ感、隠蔽性、粒子感の評価を行った。
輝度は、関西ペイント株式会社製のレーザー式メタリック感測定装置アルコープLMR−200を用いて評価した。光学的条件は、入射角45度のレーザー光源と受光角0度と−35度に受光器をもつ。測定値としては、レーザーの反射光のうち、塗膜表面で反射する鏡面反射領域の光を除いて最大光強度が得られる受光角−35度でIV値を求めた。IV値は塗膜からの正反射光強度に比例するパラメーターであり、光輝度の大小を表す。判定方法は以下の通りである。
◎:比較例1より10以上高いもの
○:比較例1との差異が10未満のもの
×:比較例1より10以上低いもの
フリップフロップ感は、スガ試験機株式会社製の変角測色計を用いて評価した。入射角45度の光源に対して観察角度(受光角)30度と80度における反射光強度(L値)の対数の傾きからF/F値を求めた。F/F値は、金属顔料の配向度合いに比例するパラメーターであり、顔料のフリップフロップ感の大小を表す。判定方法は以下の通りである。
◎:比較例1より0.05以上高いもの
○:比較例1との差異が0.05未満のもの
×:比較例1より0.05以上低いもの
隠蔽性は、目視で観察した。判定方法は以下の通りである。
◎:比較例1より良好なもの
○:比較例1との差異が僅かなもの
×:比較例1より劣るもの
評価1、2の結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、水性塗料や水性インキに使用可能で塗料の貯蔵安定性に優れており、なおかつ塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの低下が少ない金属顔料組成物を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一種以上のモリブデン酸アミン塩と、無機リン酸もしくはその塩類、または酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類と、金属顔料とを含有する金属顔料組成物。
【請求項2】
金属顔料がアルミニウムフレークである請求項1に記載の金属顔料組成物。
【請求項3】
モリブデン酸アミン塩のアミンが、下記一般式(1)で表されるアミン化合物から選ばれる少なくとも一種である請求項1または2に記載の金属顔料組成物。
【化1】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
【請求項4】
無機リン酸が、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、三リン酸、四リン酸、亜リン酸の中から選ばれた1種または2種以上である、請求項1または2に記載の金属顔料組成物。
【請求項5】
無機リン酸塩が、無機リン酸と、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、下記一般式(2)で表されるアミンとの塩である請求項1または2に記載の金属顔料組成物。
【化2】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
【請求項6】
酸性有機(亜)リン酸エステルが、下記一般式(3)で示される化合物の中から選ばれた1種または2種以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の金属顔料組成物。
【化3】

(式中、R4、R5およびR6は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数4から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基を含んでも良い炭化水素基であり、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつR4、R5、R6の炭素原子数の合計は4以上である。mは0または1の数を表す。)
【請求項7】
酸性有機(亜)リン酸エステル塩が、下記一般式(4)で表されるリン酸エステルと、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニア、下記一般式(5)で表されるアミンから選ばれる少なくとも1種との塩である請求項1または2に記載の金属顔料組成物。
【化4】

(式中、R4、R5およびR6は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数4から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基を含んでも良い炭化水素基であり、R4、R5、R6のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつR4、R5、R6の炭素原子数の合計は4以上である。mは0または1の数を表す。)
【化5】

(式中、R1、R2およびR3は同じでも異なってもよく、水素原子または炭素原子数1から30の、任意にエーテル結合、エステル結合、水酸基、カルボニル基、チオール基を含んでも良い1価もしくは2価の炭化水素基であり、任意にR1とR2は一緒になって5員または6員のシクロアルキル基を形成するか、または窒素原子と一緒になって、架橋員として付加的に窒素または酸素原子を含むことができる5員または6員環を形成するか、またはR1、R2およびR3は一緒になって、1個以上の付加的な窒素原子および/または酸素原子を架橋員として含むことができる、多員の多重環組成物を形成することができる。nは1から2の数を表す。)
【請求項8】
無機リン酸が、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸である、請求項4に記載の金属顔料組成物。
【請求項9】
無機リン酸塩の無機リン酸部分がオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸から選ばれる少なくとも1種であり、塩を形成する塩基性部分がアンモニア、モルホリン、下記一般式(6)、(7)で表されるエタノールアミン類、もしくは下記一般式(8)で表されるアルキルアミン類から選ばれる少なくとも1種である請求項5に記載の金属顔料組成物。
【化6】

(式中、R7、R8、R9の少なくとも1つは、下記一般式(7)であり、他は水素原子または炭素数1から8の炭化水素基を表す。)
【化7】

【化8】

(式中、R10、R11、R12のうち少なくとも1つは炭素数6から20の炭化水素基であり、他は水素原子または炭素数1から5の炭化水素基を表す。)
【請求項10】
酸性有機(亜)リン酸エステルが下記一般式(9)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種である請求項6記載の金属顔料組成物。
【化9】

(式中、R13、R14、R15のうち少なくとも1つは水素原子であり、かつ少なくとも1つは炭素数6から20の炭化水素基もしくは下記一般式(10)、(11)で示される基であり、他は水素原子または炭素数1から5の炭化水素基を表す。mは0または1の数を表す。)
【化10】

(式中、R16、R17は水素原子もしくは下記一般式(11)であり、hは0から30である。)
【化11】

【請求項11】
酸性有機(亜)リン酸エステル塩が、モノもしくはジトリデシルアシッドホスフェートのモルフォリン塩、もしくはN,N−ジメチルエタノールアミン塩である請求項7に記載の金属顔料組成物。
【請求項12】
モリブデン酸アミン塩が、金属顔料100重量部に対し、0.01から10重量部存在する請求項1から7のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項13】
無機リン酸もしくはその塩類が、金属顔料100重量部に対し、0.01から10重量部存在する請求項1から9のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項14】
酸性有機(亜)リン酸エステルもしくはその塩類が、金属顔料100重量部に対し、0.01から20重量部存在する請求項1から11のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項15】
更に界面活性剤を金属顔料100重量部に対し、0.01から30重量部含有する請求項1から14のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項16】
請求項1から15のいずれかに記載の金属顔料組成物を含む塗料組成物。

【公開番号】特開2009−275095(P2009−275095A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126810(P2008−126810)
【出願日】平成20年5月14日(2008.5.14)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】