説明

金属顔料組成物

【課題】本発明の目的は、塗料組成物もしくはインキ組成物等に使用可能で、塗膜、塗装物品、印刷物等にしたときに密着性、耐薬品性に優れ、なおかつ塗膜、塗装物品、印刷物等にしたときに光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの低下が少ない金属顔料組成物を提供すること、更には水性塗料もしくは水性インキ等に使用可能で塗料の貯蔵安定性に優れた金属顔料組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物を開始剤とするリビングラジカル重合体組成物を含有する金属顔料組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物もしくはインキ組成物等に適する金属顔料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、メタリック塗料用、印刷インキ用、プラスチック練り込み用等の用途に、メタリック感を重視する美粧効果を得る目的で金属顔料が使用されている。これらの用途において、金属顔料を用いて得られた塗膜の密着性、耐酸もしくは耐アルカリ性等の耐薬品性を求められる場合がある。
特に、プラスチック塗装に代表されるクリアコートを施さない1コート塗装においてはこの傾向が強い。しかし、金属顔料は各種金属の性質に基づいて酸やアルカリ等により腐食作用を受けやすく、変色を起こすことがある。この問題解決の一つとして、金属顔料の一つ一つを樹脂被膜で被覆することで顔料自身の密着性や耐薬品性を向上させる方法が挙げられる。
【0003】
特許文献1では、色調低下を防止し、かつ密着性、耐薬品性を発現させるために、アルミニウム顔料を均一で高度に三次元架橋した被覆膜を形成させる方法が開示されているが、塗膜にしたときの光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの低下が認められた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第1996/38506号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記従来技術の欠点を克服した金属顔料組成物を提供すること、すなわち塗料組成物もしくはインキ組成物等において、塗膜、塗層物品、印刷物等にしたときの密着性と、耐薬品性に優れ、なおかつ塗膜、塗層物品、印刷物等にしたときの光輝性や隠蔽性、そしてフリップフロップ感などに優れた金属顔料組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物を開始剤とするリビングラジカル重合体組成物を含有する金属顔料組成物を用いることにより、優れた密着性、耐薬品性と、優れた色調とを兼ね備えた金属顔料組成物を得ることが可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は下記の通りである。
(1)金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物を開始剤とするリビングラジカル重合体組成物を含有する金属顔料組成物。
(2)金属粒子が光輝性金属顔料である(1)に記載の金属顔料組成物。
(3)金属粒子がアルミニウムである(1)又は(2)に記載の金属顔料組成物。
(4)金属粒子が、平均粒径(d50)が3から40μmの範囲、平均厚み(t)が0.005から2μmの範囲、平均アスペクト比が20から2500の範囲から選ばれる燐片状粒子である(1)から(3)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(5)リビングラジカル重合体組成物が金属粒子を被覆している(1)から(4)に記載の金属顔料組成物。
(6)金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物が、1分子中に金属表面への結合もしくは吸着機能を有する官能基とリビングラジカル重合開始機能を有する官能基を共に有する、(1)から(5)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(7)リビングラジカル重合体組成物が、アクリル系もしくはビニル系樹脂から選ばれる少なくとも一種である、(1)から(6)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(8)リビングラジカル重合体組成物が、金属粒子100重量部に対し1から50重量部存在する、(1)から(7)のいずれかに記載の金属顔料組成物。
(9)金属粒子を、先ず1分子中に金属表面への結合もしくは吸着機能を有する官能基とリビングラジカル重合開始機能を有する官能基を共に有する化合物で処理し、更に溶媒中で重合性モノマーを重合する、(1)から(8)のいずれかに記載の金属顔料組成物の製造方法。
(10)(1)から(8)のいずれかに記載の金属顔料組成物を含む、塗料組成物。
(11)(1)から(8)のいずれかに記載の金属顔料組成物を含む、インキ組成物。
(12)(10)に記載の塗料組成物により形成された塗膜。
(13)(10)に記載の塗料組成物により塗装された物品。
(14)(11)に記載されたインキ組成物により形成された印刷物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の金属顔料組成物を塗料組成物もしくはインキ組成物等、特に1コートメタリック塗装塗膜や樹脂成形品等に用いた場合、金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物を開始剤としてリビングラジカル重合を行うことで少量の樹脂量で緻密に被覆出来ることから従来の金属顔料を凌ぎうる優れた光沢、意匠性を発揮し、かつ、密着性、耐薬品性等においても優れた塗膜、塗装物品、印刷物等を得ることが出来る。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について、特にその好ましい態様を中心に、詳細に説明する。
本発明に用いる金属粒子としては、アルミニウム、亜鉛、鉄、マグネシウム、銅、ニッケルのような卑金属の粒子、及びそれらの合金の粒子を好ましく用いることができる。
形状としては、球状、涙滴状、燐片状のいずれも用いることが出来る。
球状もしくは涙滴状粒子の場合、平均粒径(d50)が2から80μm程度であり、平均アスペクト比が1から5程度のものが好ましい。
燐片状粒子の好ましい形状は、平均粒径(d50)が2から80μm、更に好ましくは3から40μmの範囲から選ばれ、平均厚み(t)が0.005から10μm、更に好ましくは0.005から2μmの範囲から選ばれ、平均アスペクト比が5から2500、更に好ましくは20から2500の範囲から選ばれる。ここで、平均アスペクト比は、金属粒子の平均粒径(d50)を平均厚み(t)で割った値である。
上記金属粒子を光輝性顔料として用いる場合は、鱗片状のものが好ましい。
特に好適なのはメタリック用顔料として多用されているアルミニウムフレークである。本発明に用いるアルミニウムフレークとしては、表面光沢性、白度、光輝性等メタリック用顔料に要求される表面性状、粒径、形状を有するものが適している。
アルミニウムフレークは、通常ペースト状態で市販されており、これをそのまま用いてもよいし、予め有機溶剤等で表面の脂肪酸等を除去して用いてもよい。また、平均粒径(d50)が3から30μm、平均厚み(t)が5から50nmのいわゆるアルミニウム蒸着箔も使用可能である。
【0009】
本発明の必須成分である金属粒子表面に化学結合もしくは吸着し得るリビングラジカル開始剤化合物は、1分子中に金属表面への結合もしくは吸着機能を有する官能基とリビングラジカル重合開始機能を有する官能基を共に有する化合物である一般式は以下の式で示すことが出来る。
【化1】


(式中、Aは金属表面に結合もしくは吸着するアンカー部位、Iはリビングラジカル重合の開始部位、LはAとIの連結部位を表す)
金属表面への結合もしくは吸着機能を有する官能基(アンカー部位A)としては、例えばカルボキシル基、酸クロライド基や酸ブロマイド基等の酸ハライド基、酸無水物基、リン酸エステル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基、ブロモシリル基、ハイドロジェンシリル基、イソシアネート基等が挙げられる。
中でも、カルボキシル基、酸ハライド基、リン酸エステル基、アルコキシシリル基、クロロシリル基が好ましく用いられる。
リビングラジカル重合開始機能を有する官能基(リビングラジカル重合の開始部位I)としては、ニトロキシド基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化スルホニル基、ジチオエステル基、有機テルル基、有機アンチモン基、有機ビスマス基、コバルト錯体基等が使用できる。入手のし易さ、反応制御のし易さから、ハロゲン化アルキル基が好ましく用いられ、フェニル基、ニトロ基、ニトリル基、エステル基、カルボニル基等で置換されたハロゲン化アルキル基、特に臭素化アルキル基が更に好適に用いることができる。
アンカー部位とリビングラジカル重合の開始部位との連結部位Lはそれぞれ置換基を有していてもよい、C1〜C20(好ましくはC1〜C8)のアルキレン基、C6〜C20のアリレーン基(好ましくはフェニレン基)、C6〜C20のアラルキル基等が挙げられる。
具体的に例示すると、
【化2】


(式中、R1はそれぞれ置換基を有していてもよい、C1〜C20の2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C8のアルキレン基)、アリレーン基(好ましくはフェニレン基)を示し、R2、R3はC1〜C4のアルキル基を示す。)
【化3】


(式中、R4はそれぞれ置換基を有していてもよい、C1〜C20の2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C8のアルキレン基)、アリレーン基(好ましくはフェニレン基)を示し、R5、R6はC1〜C4のアルキル基を示す。)
【化4】


(式中、R7、R8、R10、R11はC1〜C4のアルキル基。R9はそれぞれ置換基を有していてもよい、C1〜C20の2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C8のアルキレン基)、アリレーン基(好ましくはフェニレン基)を示す。)
【化5】


(式中、R12、R13、R14は同一でも異なっていてもよく、それぞれC1〜C8のアルキル基もしくはアルコキシ基を示し、R12、R13、R14の少なくとも1つはアルコキシ基である。R15はそれぞれ置換基を有していてもよい、C1〜C20の2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C8のアルキレン基)、アリレーン基(好ましくはフェニレン基)。R16、R17はC1〜C4のアルキル基を示す。)
【化6】


(式中、R18、R19はC1〜C8のアルキル基を示す。)
【化7】


(式中、R20、R21は同一でも異なっていてもよく、それぞれHもしくはC1〜C8のアルキル基を示し、R20、R21の少なくとも1つはHである。R22はそれぞれ置換基を有していてもよい、C1〜C20の2価の炭化水素基(好ましくはC1〜C8のアルキレン基)、アリレーン基(好ましくはフェニレン基)。R23、R24はC1〜C4のアルキル基を示す。)
【0010】
特に、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシフェニルプロピルクロロジメチルシラン、(2−ブロモ-2−メチル)プロピオニルオキシプロピルクロロジメチルシラン、(2−ブロモ-2−メチル)プロピオニルオキシヘキシルカルボン酸、(2−ブロモ-2−メチル)プロピオニルオキシプロピルトリエトキシシラン、(2−ブロモ-2−メチル)プロピオニルオキシヘキシルトリエトキシシラン、(2−ブロモ-2−メチル)プロピオニルオキシヘキシル酸クロリド、2−ブロモプロピオン酸、(2−ブロモ-2−メチル)プロピオニルオキシエトキシホスホン酸等が好適である。
リビングラジカル重合には触媒を用いることが好ましい。触媒として銅、ルテニウム、鉄、ニッケルなどの遷移金属錯体が使用でき、具体的な例としては塩化銅(I)や臭化銅(I)などのハロゲン化遷移金属が挙げられる。
遷移金属を用いる金属触媒は有機配位子との共存で金属錯体を形成する。有機配位子としては、σ−結合を介して上記の遷移金属に配位することができる、1つ又はそれ以上の窒素原子、酸素原子、リン原子、硫黄原子を有する配位子、及び、π−結合を介して遷移金属に配位することができる、2つ又はそれ以上の炭素原子を有する配位子。好ましくは窒素原子又はリン原子を有する配位子である。具体的な例として、4,4’−ジノニル−2,2’−ジピリジン(以下、dNbpy)、N,N,N’,N’,N”-ペンタメチルジエチレントリアミン(以下、PMDTA)、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。
使用されるモノマー類としては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸−n−ブチル、(メタ)アクリル酸−ヘキシル、(メタ)アクリル酸−シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸フルフリル、などの(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸2,2,3,3−テトラフルオロプロピル、(メタ)アクリル酸パーフルオロオクチル等の含フッ素側鎖を有する(メタ)アクリル酸エステル類;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ラウリルビニルエーテル等のビニルエーテル類;テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロペンテン−1等のフッ素化オレフィン類;及びスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、(メタ)アクリロニトリル、フマル酸ジブチル、等が挙げられる。
更には、ラジカル重合性不飽和カルボン酸;ラジカル重合性二重結合を有するリン酸又はホスホン酸エステル;ラジカル重合性二重結合とイソシアネート基を有する化合物;ラジカル重合性二重結合とエポキシ基を有する化合物;ラジカル重合性二重結合とアミノ基を有する化合物;ラジカル重合性二重結合と加水分解性シリル基を有する化合物;ラジカル重合性二重結合とスルホン基を有する化合物;ラジカル重合性二重結合と水酸基を有する化合物もモノマーとして用いることができる。
ラジカル重合性不飽和カルボン酸としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノオクチル、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−メタクロイルオキシエチルコハク酸、2−メタクロイルオキシエチルマレイン酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルフタル酸、ミリストレイン酸、オレイン酸、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、等が挙げられる。この中でもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等が好ましく用いられる。
ラジカル重合性二重結合を有するリン酸又はホスホン酸エステルとしてリン酸又はホスホン酸のモノ又はジエステルが用いられるが、その具体的な例としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートおよびこれらの任意の混合物;2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェートおよびこれらの任意の混合物;フェニル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ブチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、オクチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ビス(2−クロロエチル)ビニルホスホネート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピル(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシ−ポリオキシエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、アシッドホスホオキシ−ポリオキシプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、等が挙げられる。これらは任意に無機塩基又は有機アミンとの塩の形で用いることも出来る。
この中でも2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスフェートおよびこれらの任意の混合物;2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、ジ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルアシッドホスフェート、トリ−2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェートおよびこれらの任意の混合物、およびこれらの有機アミン塩等、特にエタノールアミン類塩、モルホリン類塩等が好ましく用いられる。
【0011】
ラジカル重合性二重結合とイソシアネート基を有する化合物としては、例えば2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエトキシエチル(メタ)アクリレート、1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、メタクリロイルオキシフェニルイソシアネート等が挙げられる。
ラジカル重合性二重結合とエポキシ基を有する化合物としては、例えばグリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、エポキシ化ポリブタジエン、等が挙げられる。
ラジカル重合性二重結合とアミノ基を有する化合物としては、例えばアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、モルホリノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、2−アミノエチルビニルエーテル、2−ジメチルアミノエチルビニルエーテル、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、アミノスチレン、N,N−ジメチルアミノスチレン、ビニルベンジルアミン、アリルアミン等が挙げられる。
ラジカル重合性二重結合と加水分解性シリル基を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシエトキシプロピルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロイルオキシメチルジメチルシラノール、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、等が挙げられる。
ラジカル重合性二重結合とスルホン基を有する化合物としては、例えばp−スチレンスルホン酸、アリルスルホコハク酸、3−スルホプロピル(メタ)アクリレート、等が挙げられる。
ラジカル重合性二重結合と水酸基を有する化合物としては、例えば(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−4−ヒドロキシブチル、2−ヒドロキシ−3−クロロプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、(4−ヒドロキシメチルシクロヘキシル)(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシエチルフタレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノ(メタ)アクリレート、等の活性水素を持つ(メタ)アクリル酸エステル類;2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、ヒドロキシシクロヘキシルビニルエーテル等のヒドロキシアルキルビニルエーテル類;ブテン−1−オール−3、2−メチルブテン−3−オール−2、3−メチルブテン−3−オール−1、3−メチルブテン−2−オール−1等の不飽和アルコール類;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、等が挙げられる。
この中でも(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等が好ましく用いられる。
【0012】
また、一分子中にラジカル重合性二重結合を二つ以上有するモノマー等を用いることもできる。
一分子中にラジカル重合性二重結合を二つ有するモノマーとしては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールプロピレンオキサイド付加物のジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、グリセリンメタクリレートアクリレート、ジビニルベンゼン、アジピン酸ビニル、(メタ)アクリル酸ビニル、クロトン酸ビニル、桂皮酸ビニル、アリルビニルエーテル、イソプロペニルビニルエーテル、等が挙げられる。
一分子中にラジカル重合性二重結合を三つ以上有するモノマーとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリンエチレンオキサイド付加物トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキサイド付加物トリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物ヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートトリプロピオネート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートモノプロピオネート、等が挙げられる。
更には少なくとも一つ以上の重合性二重結合を有する縮合多環炭化水素骨格含有アクリル系もしくはビニル系モノマー、および少なくとも一つ以上の重合性二重結合を有する縮合複素環骨格含有アクリル系もしくはビニル系モノマー類も用いることが出来る。
縮合多環炭化水素骨格としては例えばペンタレン、インデン、ナフタレン、アズレン、ヘプタレン、ビフェニレン、インダセン、フルオレン、9,9−ビスフェニルフルオレン、フェナントレン、アントラセン、トリフェニレン、ピレン、ペリレン等の骨格が挙げられ、縮合複素環骨格としては例えば、インドール、キノリン、インドリジン、カルバゾール、アクリジン、フェノキサジン等の骨格が挙げられる。
これらの骨格が重合性二重結合を有するモノマーしては、例えば1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン、アセチルビニルナフタレン、t−ブトキシビニルナフタレン、2−ヒドロキシ−6−ビニルナフタレン、2−アセトキシ−6−ビニルナフタレン、2−tert−ブトキシカルボニルオキシ−6−ビニルナフタレン、2−(1−エトキシエトキシ)−6−ビニルナフタレン、2−(1−n−ブトキシエトキシ)−6−ビニルナフタレン、1,5−ジビニルナフタレン、2,6−ジビニルナフタレン、2,7−ジビニルナフタレン、3,4−ジビニルナフタレン、2−ビニルアントラセン、9−ビニルアントラセン、9,10−ジビニルアントラセン、9−ビニル−9−H−フルオレン、2−ビニルフルオレン、2,7−ジビニル−9−フルオレン、N−ビニルカルバゾール、N−アリルカルバゾール、N−メタクロイルカルバゾール、N−アクリロイルカルバゾール、N−ビニルインドール、5−ビニル−8−ヒドロキシインドール、2−ビニルキノリン、N−ビニルフタルイミド、等が挙げられる。
また、例えば9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9−ビス[4−((メタ)アクリロイルオキシ−2(又は1)メチルエトキシ)フェニル]フルオレン、等のフルオレン系モノマーも好適に用いることが出来る。これらフルオレン系化合物としては、新中村化学工業株式会社製、商品名「A−BPEF」、大阪ガスケミカル株式会社製、商品名「オグソール」等を用いることができる。
これらのモノマー類は、その一種又は二種以上を混合して使用してよいし、順番に加えていき、いわゆるブロック重合体を形成することもできる。
【0013】
本発明の金属顔料組成物は、金属粒子表面に化学結合もしくは吸着により重合開始部位を導入する過程、次いでその重合開始基からリビングラジカル重合を行う過程の2段階を経る。
1段階目のリビングラジカル開始剤化合物の化学結合もしくは吸着反応は、金属粒子を溶媒中でスラリー状態に分散させ、重合開始剤を一括、又は分割もしくは連続的に添加することよって行われる。
リビングラジカル重合は、重合開始基を導入した金属粒子を溶媒に分散させたスラリー状態で、金属触媒と有機配位子を同時もしくは別々にもしくは予め混合して重合系中に添加し、更に重合性モノマーを一括、又は分割、もしくは連続的に添加することによって行われる。
重合中に金属触媒、もしくは有機配位子、もしくはその両方を追加添加することも可能である。
重合反応時の溶媒は、疎水性溶剤でも親水性溶剤でもよい。疎水性溶剤としては、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS(Low Aromatic White Spirit)、HAWS(High Aromatic White Spirit)、トルエン、キシレン等の炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;等が挙げられる。親水性溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロパノール、オクタノール等のアルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類及びそのエステル類;が挙げられる。プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、エチレンプロピレングリコールのグリコール類も使用可能である。これらを単独又は混合して使用することができる。
比較的極性の低い溶剤、例えばミネラルスピリット、ソルベントナフサ、LAWS、HAWS、トルエン、キシレン、酢酸ブチル、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、オクタノール;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテルアルコール類及びそのエステル類;等がより好ましく例示される。
【0014】
スラリー状態での重合反応においては、金属粒子のスラリー中濃度は1から40重量%の状態で行うのが好ましい。また、重合温度や時間は、反応の進行に応じて適宜決められるが、温度は通常0℃から150℃程度、重合時間は0.5から48時間程度である。
【0015】
ポリマー鎖にはエポキシ基やイソシアネート基等の反応性の置換基を持たせてもよく、ポリマーをグラフト化した後にポリマー鎖に導入された反応性の置換基を利用して様々な反応を行うことが出来る。
【0016】
また、原子移動ラジカル重合の特性を活かし、ポリマー鎖の末端に維持され残っている活性末端を発端に、再度新しくリビングラジカル重合法で第1の樹脂層の上に第2の樹脂層を形成させることが出来る。この第2の樹脂層は第1の樹脂層と異なるモノマー種や様々なモノマー種の混合から形成されてよい。また、第1の樹脂層とは化学結合により結ばれ、金属顔料に新規特性の付与が期待できる。
本発明によって得られる金属顔料組成物は、有機溶剤系又は水等の媒体中に塗膜形成成分である樹脂類が溶解又は分散している塗料もしくはインキ等に加えることにより、メタリック塗料もしくはメタリックインキとするが出来る。
また、樹脂等と混練してバインダー、フィラーとして用いることもできる。酸化防止剤、光安定剤、重合禁止剤、界面活性剤、又は他の顔料組成物を、塗料もしくはインキ、又は樹脂等に配合する際に添加してもよい。
【0017】
塗膜形成成分としての樹脂類としては例えば、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類、ポリエーテル樹脂類、エポキシ樹脂類、フッ素樹脂類、ロジン樹脂類などが挙げられる。
好ましい樹脂類は、アクリル樹脂類、ポリエステル樹脂類である。
必要に応じて、メラミン系硬化剤、イソシアネート系硬化剤、ウレタンディスパージョンなどの樹脂を併用することができる。更には一般的に塗料に加えられる無機顔料、有機顔料、体質顔料、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、分散剤、沈降防止剤、レべリング剤、増粘剤、消泡剤と組み合わせてもよい。塗料への分散性を良くするために、更に界面活性剤を添加してもよいし、塗料の保存安定性を良くするために、更に酸化防止剤、光安定剤、及び重合禁止剤を添加してもよい。
【実施例】
【0018】
以下に、本発明の実施例を示す。
[製造例1]
(原子移動ラジカル重合開始基の導入)
市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−40A(平均粒径22.5μm、不揮発分74%、比表面積SSA2.4m/g)」)をトルエンで溶剤置換し、そのペースト50gにトルエンを164g加えて分散し、真空引きと窒素置換を繰り返し、窒素バブリングをしながら50分間攪拌し溶存酸素を取り除いた。次いで、ジメチルベンジルアミン0.46gを添加し、更に(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシプロピルクロロジメチルシラン(BPS)5.8mlを添加し、80℃に加熱をして29.5時間攪拌した。反応終了後、冷却してからスラリーを濾過し、トルエンおよびメタノールで洗浄し、不揮発分80.3%のアルミペースト47.1gを得た。このものの元素分析の結果、300ppmのBr元素が検出され、得られたアルミペーストの表面にBPSが化学結合もしくは吸着していると考えられる。
[製造例2]
(原子移動ラジカル重合開始基の導入)
製造例1のジメチルベンジルアミン0.46gを28%アンモニア水溶液5.3gに代え、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシプロピルクロロジメチルシラン5.8mlを(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシヘキシルトリエトキシシラン9.7gに代えた以外は製造例1と同様に行い、不揮発分82.1%のアルミペースト45.7gを得た。
元素分析結果、Br検出量は230ppmであった。
[製造例3]
(原子移動ラジカル重合開始基の導入)
製造例1のジメチルベンジルアミン0.46gを用いず、また、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシプロピルクロロジメチルシラン5.8mlを、2−ブロモプロピオン酸4.0gに代えた以外は製造例1と同様に行い、不揮発分80.6%のアルミペースト46.4gを得た。
元素分析結果、Br検出量は210ppmであった。
[製造例4]
(原子移動ラジカル重合開始基の導入)
製造例1のジメチルベンジルアミン0.46gを用いず、また、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシプロピルクロロジメチルシラン5.8mlを、(2−ブロモ−2−メチル)プロピオニルオキシエトキシホスホン酸7.6gに代えた以外は製造例1と同様に行い、不揮発分81.6%のアルミペースト46.1gを得た。
元素分析結果、Br検出量は250ppmであった。
【0019】
[実施例1]
(金属表面からの樹脂被覆)
製造例1で作製したペースト25.7gにトルエン95g、臭化銅(I)0.031g、臭化銅(II)0.0054g加えて分散し、真空−窒素置換処理を繰り返し行う。窒素バブリングを120分行った後、4,4’−ジノニル−2,2’−ジピリジン(dNbpy)0.194g、シクロヘキシルメタクリレート7.0ml加え、室温で30分攪拌したのちに60℃で3.5時間、100℃で10時間攪拌した。反応終了後、スラリーを濾過し、不揮発分84.1%のアルミニウム顔料組成物24.8gを得た。
[実施例2]
実施例1のシクロヘキシルメタクリレート7.0mlを、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート9.8gに代えた以外は実施例1と同様に行い、不揮発分84.7%のアルミニウム顔料組成物24.6gを得た。
[実施例3]
実施例1のシクロヘキシルメタクリレート7.0mlを、メチルメタクリレート4.2gに代えた以外は実施例1と同様に行い、不揮発分98.3%のアルミニウム顔料組成物21.1gを得た。
[実施例4]
実施例1のシクロヘキシルメタクリレート7.0mlを、ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレ−ト10.8gに代えた以外は実施例1と同様に行い、不揮発分80.5%のアルミニウム顔料組成物26.1gを得た。
[実施例5]
製造例1で作製したペースト25.7gに代えて、製造例2で作製したペースト25.1gを使用した以外は実施例1と同様に行い、不揮発分82.7%のアルミニウム顔料組成物25.2gを得た。
[実施例6]
実施例5のシクロヘキシルメタクリレート7.0mlを、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート9.8gに代えた以外は実施例5と同様に行い、不揮発分84.1%のアルミニウム顔料組成物24.6gを得た。
[実施例7]
製造例1で作製したペースト25.7gに代えて、製造例3で作製したペースト25.6gを用いた以外は実施例1と同様に行い、不揮発分80.9%のアルミニウム顔料組成物25.6gを得た。
[実施例8]
実施例7のシクロヘキシルメタクリレート7.0mlを、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート9.8gに代えた以外は実施例7と同様に行い、不揮発分79.9%のアルミニウム顔料組成物26.0gを得た。
[実施例9]
製造例1で作製したペースト25.7gに代えて、製造例4で作製したペースト25.3gを用いた以外は実施例1と同様に行い、不揮発分81.7%のアルミニウム顔料組成物25.5gを得た。
[実施例10]
実施例9のシクロヘキシルメタクリレート7.0mlを、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート9.8gに代えた以外は実施例9と同様に行い、不揮発分80.4%のアルミニウム顔料組成物25.7gを得た。
【0020】
[比較例1]
市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−40A(平均粒径22.5μm、不揮発分74%)」)40gにトルエンを259g加えて分散し、スラリー温度を70℃に保ちながら30分間攪拌した。次いで、アクリル酸0.15gを添加し、30分間攪拌した。その後、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(ADVN)0.9g、シクロヘキシルメタクリレート1.5gをトルエン9.0gに溶解し、その液を3時間かけて添加した。その後、更に1.5時間攪拌を続けた。反応終了後、冷却してからスラリーを濾過し、不揮発分86.2%のアルミニウムペースト31.6gを得た。これをアルミニウム顔料組成物とした。
[比較例2]
市販のアルミペースト(旭化成ケミカルズ株式会社製、商品名「GX−40A(平均粒径22.5μm、不揮発分74%)」)68gにミネラルスピリットを133g加えて分散し、スラリー温度を70℃に保ちながら30分間攪拌した。次いで、アクリル酸0.25gを添加し、30分間攪拌した。その後、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル(ADVN)0.7g、トリメチロールプロパントリメタクリレート3.5g、ジ−トリメチロールプロパンテトラアクリレート1.5gをトルエン44gに溶解し、その液を3時間かけて添加した。その後、更に1.5時間攪拌を続けた。反応終了後、冷却してからスラリーを濾過し、不揮発分64.6%のアルミニウムペースト85gを得た。これをアルミニウム顔料組成物とした。
[比較例3]
原料アルミペーストGX−40Aをアルミニウム顔料組成物としてそのまま用いた。
【0021】
[実施例11から20] [比較例4から6]
[メタリック塗料(I)の調整]
実施例1〜10及び比較例1〜3で作成されたアルミニウム顔料組成物を使用して、メタリック塗料(I)を以下の配合量(アルミニウム顔料組成物:5g、シンナー(関西ペイント株式会社製、商品名「アクリックNo.2000GLシンナー」):8g、アクリル樹脂(関西ペイント株式会社製、商品名「アクリックNo.2026GLクリアー」):97g)で作成した。そして、作製したメタリック塗料(I)を用いて、以下の評価を行った。実施例1〜10で作成したアルミニウム顔料組成物を用いた場合の評価結果をそれぞれ実施例11〜20とし、比較例1〜3で作成したアルミニウム顔料組成物を用いた場合の評価結果をそれぞれ比較例4〜6とした。
[評価1(塗膜の色調評価)]
メタリック塗料(I)を用いて塗膜を作製し、輝度、フリップフロップ感、隠蔽性の評価を行った。
輝度は、関西ペイント株式会社製のレーザー式メタリック感測定装置アルコープLMR−200を用いて評価した。光学的条件は、入射角45度のレーザー光源と受光角0度と−35度に受光器をもつ。測定値としては、レーザーの反射光のうち、塗膜表面で反射する鏡面反射領域の光を除いて最大光強度が得られる受光角−35度でIV値を求めた。IV値は塗膜からの正反射光強度に比例するパラメーターであり、光輝度の大小を表す。判定方法は以下の通りである。
◎:比較例6より10以上高いもの
○:比較例6との差異が10未満のもの
×:比較例6より10以上低いもの
フリップフロップ感は、スガ試験機株式会社製の変角測色計を用いて評価した。入射角45度の光源に対して観察角度(受光角)30度と80度における反射光強度(L値)の対数の傾きからF/F値を求めた。F/F値は、金属顔料の配向度合いに比例するパラメーターであり、顔料のフリップフロップ感の大小を表す。判定方法は以下の通りである。
◎:比較例6より0.05以上高いもの
○:比較例6との差異が0.05未満のもの
×:比較例6より0.05以上低いもの
隠蔽性は、目視で観察した。判定方法は以下の通りである。
○:比較例6と同等もしくはそれ以上のもの
×:比較例6より劣るもの
[メタリック塗料(II)の調整]
アルミニウム顔料組成物:不揮発分として5g
シンナー(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエースシンナーNo.2726」):50g
アクリル樹脂(武蔵塗料株式会社製、商品名「プラエースNo.7160」):33g
作製したメタリック塗料を用いて、以下の評価を行った。
作製したメタリック塗料(II)を、エアスプレー装置を用いてABS樹脂板に乾燥膜厚が10μmになるように塗装し、60℃のオーブンで30分乾燥し、評価用塗板を得た。
上記の評価用塗板を用いて、以下の評価を行った。
[評価2(密着性)]
セロテープ(登録商標:ニチバン株式会社製、CT−24)を、上記の評価用塗板の塗膜に密着させ、45度の角度で引っ張り、アルミニウム顔料粒子の剥離度合いを目視で観察した。判定方法は以下の通りである。
○:剥離なし
△:やや剥離あり
×:剥離あり
[評価3(耐薬品性)]
上記の評価用塗板の下半分を、0.1N−NaOH水溶液を入れたビーカーに浸漬し、55℃で4時間放置した。試験後の塗板を水洗、乾燥した後、浸漬部と未浸漬部を、JIS−Z−8722(1982)の条件d(8−d法)により測色し、JIS−Z−8730(1980)の6.3.2により色差ΔEを求める。色差ΔEの値に応じて、以下のように判定した。(値が小さいほど良好である。)
○:1.0未満
△:1.0以上2.0未満
×:2.0以上
評価1〜3の結果を表1に示す。
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明は、塗料組成物もしくはインキ組成物等に使用可能で塗膜、塗層物品、印刷物等にしたときに、密着性と耐薬品性に優れ、なおかつ光輝性や隠蔽性、フリップフロップ感などの低下が少ない金属顔料組成物を提供することが可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物を開始剤とするリビングラジカル重合体組成物を含有する金属顔料組成物。
【請求項2】
金属粒子が光輝性金属顔料である請求項1に記載の金属顔料組成物。
【請求項3】
金属粒子がアルミニウムである請求項1又は2に記載の金属顔料組成物。
【請求項4】
金属粒子が、平均粒径(d50)が3から40μmの範囲、平均厚み(t)が0.005から2μmの範囲、平均アスペクト比が20から2500の範囲から選ばれる燐片状粒子である請求項1から3のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項5】
リビングラジカル重合体組成物が金属粒子を被覆している請求項1から4のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項6】
金属粒子表面に化学結合もしくは吸着した化合物が、1分子中に金属表面への結合もしくは吸着機能を有する官能基とリビングラジカル重合機能を有する官能基を共に有する、請求項1から5のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項7】
リビングラジカル重合体組成物が、アクリル系もしくはビニル系樹脂から選ばれる少なくとも一種である、請求項1から6のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項8】
リビングラジカル重合体組成物が、金属粒子100重量部に対し、0.05から10重量部存在する、請求項1から7のいずれかに記載の金属顔料組成物。
【請求項9】
金属粒子を、先ず1分子中に金属表面への結合もしくは吸着機能を有する官能基とリビングラジカル重合開始機能を有する官能基を共に有する化合物で処理し、更に溶媒中で重合性モノマーを重合する、請求項1から8のいずれかに記載の金属顔料組成物の製造方法。
【請求項10】
請求項1から8のいずれかに記載の金属顔料組成物を含む、塗料組成物。
【請求項11】
請求項1から8のいずれかに記載の金属顔料組成物を含む、インキ組成物。
【請求項12】
請求項10に記載の塗料組成物により形成された塗膜。
【請求項13】
請求項10に記載の塗料組成物により塗装された物品。
【請求項14】
請求項11に記載のインキ組成物により形成された印刷物。

【公開番号】特開2012−180492(P2012−180492A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46122(P2011−46122)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】