説明

釣り用履き物

【課題】締め付けが均等化されやすい釣り用履き物の提供。
【解決手段】本発明に係る釣り用履き物14は、履き物を幅方向において締め付けうる一対のベルト28、30と、履き物を幅方向において締め付けうる他の一対のベルト32、34とを備える。一対のベルト28、30のうちの一方のベルト30の締め付けは、アウトサイド方向への引っ張りにより可能とされている。一対のベルト28、30のうちの他方のベルト28の締め付けは、インサイド方向への引っ張りにより可能とされている。一対のベルト32、34のうちの一方のベルト34の締め付けは、アウトサイド方向への引っ張りにより可能とされている。一対のベルト32、34のうちの他方のベルト32の締め付けは、インサイド方向への引っ張りにより可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣りの際に着用される履き物に関する。
【背景技術】
【0002】
釣りは、滑りやすい場所で行われることが多い。例えば海釣りは、海藻が付着した岩場や、海水でぬれた防波堤等で行われる。渓流の釣りでは、下半身が水につかった状態で釣りが行われる。渓流の川底は、非常に滑りやすい。
【0003】
釣り用履き物においては、滑りにくさが考慮される。釣り用履き物として、釣り用靴、ウェーダー、ブーツ、たび等が公知である。
【0004】
足が靴の中で動くと、足もとが不安定となり、滑りやすさが助長される。履き物と足との一体性を高める観点から、甲部を締め付けうる釣り用履き物が提案されている。特開2005−325480公報は、甲部を締め付ける為のベルト部を備えたウェーダーを開示する。
【特許文献1】特開2005−325480
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
履き物と足との一体性をより一層高めるために、複数のベルトを設けることが考えられる。図6は、甲部を締め付けるための2つの甲部ベルト2、4と、足首部を締め付けるための2つの足首ベルト6、8とを有する釣り用靴10の斜視図である。図6は、ベルトが開放された状態を示している。図6は、締め付けがなされていない状態を示している。各ベルト2、4、6、8は、リング12に挿通されている。各ベルト2、4、6、8には、面ファスナーが設けられている。各ベルト2、4、6、8のそれぞれは、フック面fとループ面rとを有する。フック面fとループ面rとにより、面ファスナーが構成されている。リング12で折り返されたベルトのフック面fとループ面rとを密着させることにより、締め付けが可能となる。複数のベルトにより、締め付けられる範囲が広くされうる。
【0006】
しかしながら、釣り用靴10では、締め付けの均一性が得られにくい。一対のベルトを同時に締め付けることは困難である。ベルトは、1本ずつしか締め付けられない。例えば、甲部ベルトを締め付ける場合、先ず、甲部ベルト2、4のうちの一方のベルトを締め付け、次いで、甲部ベルト2、4のうちの他方のベルトを締め付ける。このとき、他方のベルトの締め付けにより、既に締め付けられていた一方のベルトが緩むことがある。甲部ベルト2と甲部ベルト4とを均等に締め付けることは、困難である。同様に、足首ベルト6と足首ベルト8とを均等に締め付けることは、困難である。
【0007】
また、釣り用靴10では、幅方向における締め付けの均一性が得られにくい。釣り用靴10におけるベルトの引っ張り方向は、アウトサイド方向のみである。したがって、ベルトによる締め付けが、幅方向一方側に偏りやすい。
【0008】
本発明の目的は、ベルトによる締め付けの均等性を向上させた釣り用履き物の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る釣り用履き物は、履き物を幅方向において締め付けうる一対のベルトを備える。この一対のベルトのうちの一方のベルトの締め付けは、アウトサイド方向への引っ張りにより可能とされている。この一対のベルトのうちの他方のベルトの締め付けは、インサイド方向への引っ張りにより可能とされている。
【0010】
好ましくは、上記釣り用履き物において、上記一対のベルトは、甲部に設けられている。
【0011】
好ましくは、上記釣り用履き物において、上記一対のベルトは、足首部に設けられている。
【発明の効果】
【0012】
締め付け時における引っ張り方向が互いに逆方向とされうる一対のベルトにより、2本同時での締め付けが可能となるとともに、締め付けの均等性が向上しうる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて本発明が詳細に説明される。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態に係る釣り用靴14の斜視図であり、図2はその側面図である。図1は、左右一対の釣り用靴14のうち、左足用の釣り用靴14を示す。図2は、左足用の釣り用靴14をアウトサイドから見た側面図である。図1は、ベルトが開放された状態の図であり、図2は、ベルトによる締め付けがなされた状態の図である。釣り用靴14は、底部16とアッパー18とを備える。底部16は、防滑ソール20を備える。更に底部16は、ミッドソール22を備えている。
【0015】
防滑ソール20は、フェルトからなる。フェルトは、川底や濡れた岩場等における釣り用靴14のスリップを抑制する。防滑ソール20は、面ファスナー(図示省略)によってミッドソール22に接合されている。防滑ソール20は、ミッドソール22に対して着脱自在である。フェルトが摩耗した場合は、防滑ソール20が交換されうる。底部16のの構成は、特に限定されない。
【0016】
ミッドソール22は、ゴム組成物が架橋されてなる。ミッドソール22には、強度に優れたゴムが用いられる。好ましいゴムとしては、天然ゴム、ポリブタジエン及びスチレン−ブタジエン共重合体が例示される。ミッドソール22は、加硫接着によってアッパー18と水密に接合されている。ミッドソール22が、接着剤によってアッパー18に接合されてもよい。
【0017】
アッパー18は、合成皮革、合成繊維、防水透湿生地等よりなる。防水透湿生地は、外部からの水の浸入を阻止し、汗の水蒸気を外部に放出しうる。この防水透湿生地により、蒸れが抑制される。防水透湿生地の具体例としては、シマノ社の「ドライシールド」及びゴアテックス社の「GORE−TEX(登録商標)」が挙げられる。
【0018】
アッパー18は、甲部24と足首部26とを有する。甲部24は、人体の甲を覆いうる部分である。足首部26は、人体の足首を覆いうる部分である。また、アッパー18は、本体19と、ベロ21とを有する。本体19は、その幅方向中央部に離間部23を有している。離間部23は、足首部26の上端から、甲部24の中間位置にまで連続的に設けられている。ベロ21は、靴の内側から離間部23を覆っている。ベロ21の幅方向における両縁は、本体19に縫い付けられている。
【0019】
アッパー18は、4つのベルト28、30、32、34を有する。ベルト28及びベルト30は、アッパー18の甲部24に設けられている。ベルト28とベルト30とは、一対の甲部ベルトを構成する。ベルト32及びベルト34は、アッパー18の足首部26に設けられている。ベルト32とベルト34とは、一対の足首ベルトを構成する。
【0020】
アッパー18は、4つのリング36を有する。リング36は、金属、樹脂等からなる。リング36は、略長方形である。リング36は、一本のベルト毎に1個ずつ設けられている。4つのベルト28、30、32、34は、それぞれ1個のリング36に挿通されている。
【0021】
図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。図3は、ベルト30及びその周辺の断面を示す。図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。図4は、ベルト28及びその周辺の断面を示す。図3及び図4は、幅方向に沿った断面図である。なお、図3及び図4では、見やすい図面とする目的で、ベルト断面のハッチングが省略されている。また図3及び図4では、見やすい図面とする目的で、ベルトのループ面rとフック面fとが離れた状態としている。
【0022】
図3が示すように、ベルト30の後端部bは、本体19に固定されている。この固定は、縫い付けによりなされている。ベルト30の後端部bは、釣り用靴14のアウトサイドに位置している。ベルト30は、リング36に挿通されつつ、折り返される。リング36は、リング保持部40に保持されている。リング保持部40は、本体19のインサイドに固定されている。リング保持部40は、折り返された帯状体を本体19に縫い付けることにより構成されている。リング36は、リング保持部40のループ41に挿通されている。リング保持部40は、リング36の移動を規制する。リング保持部40により、リング36は、本体19のインサイドに保持される。
【0023】
図4が示すように、ベルト28の後端部bは、本体19に固定されている。この固定は、縫い付けによりなされている。ベルト28の後端部bは、釣り用靴14のインサイドに位置している。ベルト28は、リング36に挿通されつつ、折り返される。リング36は、リング保持部44に保持されている。リング保持部44は、本体19のアウトサイドに固定されている。リング保持部44は、折り返された帯状体を本体19に縫い付けることにより構成されている。リング36は、リング保持部44のループ45に挿通されている。リング保持部44は、リング36の移動を規制する。リング保持部44により、リング36は、本体19のアウトサイドに保持される。
【0024】
図5(a)は、ベルト28の裏側を示す平面図である。図5(b)は、ベルト28の表側を示す平面図である。ベルト28の裏側には、ループ面rとフック面fとが設けられている。ベルト長手方向において、先端部t寄りの部分が、フック面fとされている。ベルト長手方向において、後端部b寄りの部分が、ループ面rとされている。ベルト28の長手方向中間位置には、ループ面rとフック面fとの境界kがある。図5では、ループ面r及びフック面fをそれぞれ異なるハッチングで示している。ループ面rとフック面fとにより、面ファスナーが構成される。図5(b)が示すように、ベルト28の表側には、ループ面r及びフック面fは設けられていない。フック面fとループ面rとの位置関係が逆であってもよい。ベルト30、ベルト32及びベルト34の構造は、ベルト28と同じである。
【0025】
図3が示すように、ベルト30による締め付けは、アウトサイド方向への引っ張りによりなされうる(図3の白抜き矢印参照)。ベルト30の先端部tをアウトサイド方向に引っ張ると、ベルト30の折り返し位置Vが変わりうる。折り返し位置Vの変動により、ベルト30の後端部bとリング36との幅方向における離間距離D(図示省略)が調整される。この調整により、締め付けがなされうる。離間距離Dが短いほど、締め付けがきつくなる。折り返されたベルト30のループ面rとフック面fとは、対向する。対向したループ面rとフック面fとを密着させることにより、面ファスナーが機能し、折り返し位置Vは固定される。面ファスナーの機能により、締め付け状態が維持される。このように、ベルト30は、アウトサイド方向への引っ張りにより幅方向への締め付けを可能とする締め付け機構を構成する。この締め付けにより、人体の足と釣り用靴14との一体性が高められうる。
【0026】
一方、図4が示すように、ベルト28による締め付けは、インサイド方向への引っ張りによりなされうる(図4の白抜き矢印参照)。ベルト28の先端部tをインサイド方向に引っ張ると、ベルト28の折り返し位置Vが変わりうる。折り返し位置Vの変動により、ベルト28の後端部bとリング36との幅方向における離間距離D(図示省略)が調整される。この調整により、締め付けがなされうる。離間距離Dが短いほど、締め付けがきつくなる。折り返されたベルト28のループ面rとフック面fとは、対向する。対向したループ面rとフック面fとを密着させることにより、面ファスナーが機能し、折り返し位置Vは固定される。面ファスナーの機能により、締め付け状態が維持される。このように、ベルト28は、インサイド方向への引っ張りにより幅方向への締め付けを可能とする締め付け機構を構成する。この締め付けにより、人体の足と釣り用靴14との一体性が高められうる。
【0027】
なお、離間部23の幅Wは、上記離間距離Dの調整により変動しうる。離間部23により、離間距離Dの調整が円滑とされている。離間距離Dが狭くなると、離間部23の幅Wが狭くなる。離間部23の幅Wが狭くなると、ベロ21は弛む。ベロ21は、弛みやすい柔軟な素材よりなる。ベロ21は、離間距離Dの調整を阻害しない。
【0028】
図3と図4とは左右反転の関係にある。ベルト28における締め付け時の引っ張り方向と、ベルト30における締め付け時の引っ張り方向とは、互いに逆方向とされうる。互いに逆とされた締め付け方向により、ベルト28とベルト30とは同時に締め付けられうる。即ち、ベルト28を一方の手(例えば右手)で引っ張りつつ、ベルト30を他方の手(例えば左手)で引っ張ることができる。よって、ベルト28とベルト30との間の締め付けが均等化されやすくなる。また、2本のベルトが同時に締め付けられることにより、締め付け作業が迅速になされうる。
【0029】
以上に説明したベルト28及びベルト30は、甲部24に設けられたベルトである。足首部26に設けられたベルト32、34は、ベルト28及びベルト30と同じ作用を奏する。ベルト32による締め付け機構は、ベルト28による締め付け機構と同じである。ベルト32による締め付け機構は、インサイド方向への引っ張りによる締め付けを可能とする。ベルト34による締め付け機構は、ベルト30による締め付け機構と同じである。ベルト34による締め付け機構は、アウトサイド方向への引っ張りによる締め付けを可能とする。ベルト32における締め付け時の引っ張り方向と、ベルト34における締め付け時の引っ張り方向とは、互いに逆方向とされうる。互いに逆とされた締め付け方向により、ベルト32とベルト34とを同時に締め付けることが可能となる。即ち、ベルト32を一方の手(例えば右手)で引っ張りつつ、ベルト34を他方の手(例えば左手)で引っ張ることができる。よって、ベルト32とベルト34との間の締め付けが均等化されやすくなる。また、2本のベルトが同時に締め付けられることにより、締め付け作業が迅速になされうる。
【0030】
釣り用靴14におけるベルトの引っ張り方向は、アウトサイド方向及びインサイド方向である。したがって、ベルトによる締め付けが、インサイドとアウトサイドとに分散されやすい。釣り用靴14では、締め付けが幅方向一方側に偏りにくい。釣り用靴14では、幅方向における締め付けの均一性が向上しうる。
【0031】
釣り用靴14では、甲部24に設けられた一対のベルト28、30と、足首部26に設けられた一対のベルト32、34とを有する。釣り用靴14では、人体の甲及び足首が確実に締め付けられうる。釣り用靴14は、足との一体性に極めて優れる。
【0032】
上記実施形態の釣り用靴14では、ベルトを締め付けた状態(図2の状態)において、ベルト28の先端部t及びベルト32の先端部tがインサイドに位置する。インサイドに位置する先端部tは、歩行の際に邪魔となる可能性がある。例えば、左足に装着された靴のインサイドに位置する先端部tは、歩行の際、右足の靴と干渉しうる。図5が示すように、ベルトのフック面f又はループ面rは、ベルトの先端部tにまで至っている。これにより、先端部tの突出が抑制され、インサイドに位置する先端部tが歩行の際に邪魔となりにくい。
【0033】
上記実施形態の釣り用靴14においては、折り返されるベルトが用いられた。折り返すことなく締め付け可能なベルトが用いられてもよい。例えば、履き物の幅方向一方側に固定されたループ面rと、履き物の幅方向他方側で固定されるとともに幅方向一方側にまで延在するベルトとを有し、このベルトがフック面fを備えている構成でもよい。また、面ファスナーを用いないベルトも採用されうる。例えば、長手方向複数位置に設けられた穴とバックルとを有するベルトが採用されてもよい。また、一対のベルトが配置される位置は、限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、あらゆる釣り用履き物に適用されうる。釣り用履き物には、釣り用靴、ウェーダー、ブーツ、足袋等が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】図1は、本発明の第一実施形態に係る釣り用靴の斜視図である。
【図2】図2は、図1の釣り用靴の側面図である。
【図3】図3は、図2のIII-III線に沿った断面図である。
【図4】図4は、図2のIV-IV線に沿った断面図である。
【図5】図5は、ベルトの平面図である。
【図6】図6は、比較例に係る釣り用靴の斜視図である。
【符号の説明】
【0036】
14・・・釣り用靴
16・・・底部
18・・・アッパー
19・・・本体19
20・・・防滑ソール
22・・・ミッドソール
24・・・甲部
26・・・足首部
28、30、32、34・・・ベルト
36・・・リング
40、44・・・リング保持部
t・・・ベルトの先端部
b・・・ベルトの後端部
V・・・折り返し位置
r・・・ループ面
f・・・フック面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
履き物を幅方向において締め付けうる一対のベルトを備え、
この一対のベルトのうちの一方のベルトの締め付けは、アウトサイド方向への引っ張りにより可能とされ、
この一対のベルトのうちの他方のベルトの締め付けは、インサイド方向への引っ張りにより可能とされた釣り用履き物。
【請求項2】
上記一対のベルトが、甲部に設けられている請求項1に記載の釣り用履き物。
【請求項3】
上記一対のベルトが、足首部に設けられている請求項1に記載の釣り用履き物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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