説明

釣銭機、精算装置、釣銭出金システム、釣銭出金方法、釣銭出金プログラム

【課題】不整合の発生を早期に使用者に通知することができると同時に、預かり金の入金タイミングに柔軟性を持たせた釣銭機等を提供すること
【解決手段】釣銭機10は、釣銭金額情報と預かり金の金額を示す預かり金額情報と商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を取得する精算情報取得手段11と、収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント手段14と、1件の取引毎に、預かり金額情報と入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック手段12と、この整合チェック手段が不整合があると判定した場合にその旨を使用者に報知すると共に出金を停止し、使用者が報知を認識した旨を示す応答を取得したときに出金の停止を解除する不整合報知手段13を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣銭金の金額を示す情報基づいて釣銭機から釣銭を自動的に出金する技術に関し、特に預かり金額と釣銭機に入金された金額に不整合が生じたときに直ちに使用者に報知すると共に、入金のタイミングに柔軟性を持たせた釣銭機等に関する。
【背景技術】
【0002】
POS釣銭機へ入出金される貨幣金額の照合を行う理由は、店舗からの要求によりその日、釣銭機に入出金された金額の在高値と現金に差がある場合のメーカへの調査依頼であった。前記調査依頼での内容は、POSで取り引きした内容に対して、POS釣銭機から「釣銭金が多く出てきた」、「釣銭金が少ない」もしくは「釣銭金が出てこない」、そして「精算時に不整合が発生した」等が挙げられる。要するにレジ係がPOSにキー入力した金額に対し、POS釣銭機が期待する金額を処理しなかったと疑われる場合が主な要因となっている。
【0003】
不整合が発生する原因としては、POS釣銭機へ実際に投入された貨幣金額が、レジ係の手でPOSにキー入力された金額と必ずしも一致せず差異が生じていることが一つあり、また他にはPOS釣銭機へ貨幣が確実に入金されていないという場合も少なからずあった。これまで不整合が発生した際、レジ係がその場で原因が判る仕組みが無かったことよりメーカへの調査依頼に繋がっていた。
このことより、レジ係は後日不整合の原因が得られるまで間、多大なストレスに耐えなければならなかった。また、これまでの調査結果ではこれらの大半が貨幣の取り扱いミスや、キー入力不正などのレジ係のオペレーションミスであることが判明しているので、一刻も早くその場でレジ係に気付かせてあげることが必要であった。
【0004】
前述した調査依頼に対し、従来はPOS釣銭機への入出金額と、レジ係がPOSにキー入力した貨幣金額とは各々別のログ情報としてこれまでも存在していた。しかし、これらはリンクされた情報として残っていなかった。その為、双方の金額の照合結果を得るためには各々の処理時間、処理金額を一つ一つ手作業で適合させ、その原因を解明するまでの過程に多大な時間と労力を要して不整合箇所を抽出していた。
【0005】
そのため、特許文献1には、一取引毎に釣銭機の実際在高と理論在高を比較し、これらが一致しない場合には、その旨を報知するようにした商品販売データ処理装置が提案されている。報知はエラー報知画面をキャッシャ用表示機に表示することにより行い、同時に売り上げ登録処理の実行を禁止する。そして、エラー解除パスワードの入力を待って登録処理を再開する。
【0006】
【特許文献1】特開2005−149064号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
釣銭機の実際の運用では、必ずしも一取引毎に預かり金を釣銭機に投入するものではない。たとえば、預かり金の貨幣に損傷(キズ、折れ、曲がり、粘着物の付着、汚れ、破損等)がある場合には釣銭機ではなくドロアに収納したり、レジの前に長い行列ができた場合には複数件分の預かり金をまとめて釣銭機に投入したりすることがある。
しかし、従来技術では、一取引毎に預かり金が釣銭機に投入されることを前提としているため、上記のような運用を行った場合にも不整合の発生が報知され、使用者は不整合を回復するために複雑な操作を行わなければならなかった。
【0008】
そこで、本発明は、釣銭機内に実際に存在する金額とあるべき金額との間に相違が生じた場合には、早期に使用者に通知することができると同時に、預かり金の入金タイミングに柔軟性を持たせた釣銭機等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の釣銭機は、釣銭金額情報と預かり金の金額を示す預かり金額情報と商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を取得する精算情報取得手段と、収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント手段と、1件の取引毎に、預かり金額情報と入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック手段と、この整合チェック手段が不整合があると判定した場合にその旨を使用者に報知すると共に出金を停止し、使用者が報知を認識した旨を示す応答を取得したときに出金の停止を解除する不整合報知手段を備えている(請求項1および請求項2)。
【0010】
上記釣銭機によれば、1件の取引毎に預かり金額情報と入金金額情報との間に不整合があるか否かを判定し、不整合がある場合にはその旨が使用者に通報されるから、使用者は、直ちに不整合の発生に気づくことができる。
また、使用者は、不整合発生の報知を認識したことを入力するだけで精算処理を進めることができるから入金のタイミングに柔軟性を持たせることができる。
【0011】
上記釣銭機において、不整合報知手段は、音声により使用者への報知を行うようにしてもよい(請求項2)。
このようにすれば、使用者に不整合の発生を確実に気づかせることができる。
【0012】
本発明の精算装置は、釣銭金額情報と預かり金の金額を示す預かり金額情報と商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を生成し釣銭機に送信する精算情報生成手段と、釣銭金額情報と預かり金額情報と釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成する取引一覧生成手段を備えている(請求項3)。
上記精算装置によれば、使用者や店舗の経営者は、取引一覧を参照し、不整合の原因を正確に知ることができる。
【0013】
本発明の釣銭出金システムは、精算装置と釣銭機により構成され、釣銭機は、釣銭金額情報と預かり金の金額を示す預かり金額情報と商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を精算装置から取得する精算情報取得手段と、収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント手段と、1件の取引毎に、預かり金額情報と入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック手段と、この整合チェック手段が不整合があると判定した場合にその旨を釣銭機の使用者と精算装置に報知すると共に出金を停止し、使用者が報知を認識した旨を示す応答を精算装置から取得したときに出金の停止を解除する不整合報知手段を備え、精算装置は、精算情報を生成する精算情報生成手段と、使用者が報知を認識した旨の応答を入力する応答入力手段とを備えを備えている(請求項4ないし請求項7)。
【0014】
上記釣銭出金システムによれば、1件の取引毎に預かり金額情報と入金金額情報との間に不整合があるか否かを判定し、不整合がある場合にはその旨が使用者に通報されるから、使用者は、直ちに不整合の発生に気づくことができる。
また、使用者は、不整合発生の報知を認識したことを入力するだけで精算処理を進めることができるから入金のタイミングに柔軟性を持たせることができる。
【0015】
上記釣銭出金システムにおいて、入金カウント手段は、入金金額情報をその発生時刻と共に精算装置に送信し、精算装置は、釣銭金額情報と預かり金額情報と釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成する取引一覧生成手段を備えるようにしてもよい(請求項5)。
このようにすれば、使用者や店舗の経営者は、不整合の原因を正確に知ることができる。
【0016】
上記釣銭出金システムにおいて、精算装置は、報知を受けたときに取引一覧を表示する取引一覧表示手段を備えるようにしてもよい(請求項6)。
このようにすれば、使用者は不整合の原因を直ちに知ることができる。
【0017】
上記釣銭出金システムにおいて、不整合報知手段は、音声により使用者への報知を行うようにしてもよい(請求項7)。
このようにすれば、使用者に不整合の発生を確実に気づかせることができる。
【0018】
本発明の釣銭出金方法は、精算装置が、釣銭金額情報と預かり金の金額を示す預かり金額情報と商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を生成する精算情報生成工程と、釣銭機が、精算情報を精算装置から取得する精算情報取得工程と、釣銭機が、収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント工程と、釣銭機が、1件の取引毎に、預かり金額情報と入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック工程と、この整合チェック工程で不整合があると判定した場合にその旨を釣銭機の使用者と精算装置に報知すると共に出金を停止する不整合報知工程と、精算装置が、使用者から報知を認識した旨の応答の入力を受け付け、応答のあったことを示す情報を釣銭機に通知する応答入力工程と、この通知を受けた釣銭機が、出金の停止を解除する解除工程により釣銭の出金を行う(請求項8ないし請求項11)。
【0019】
上記釣銭出金方法によれば、1件の取引毎に預かり金額情報と入金金額情報との間に不整合があるか否かを判定し、不整合がある場合にはその旨が使用者に通報されるから、使用者は、直ちに不整合の発生に気づくことができる。
また、使用者は、不整合発生の報知を認識したことを入力するだけで精算処理を進めることができるから入金のタイミングに柔軟性を持たせることができる。
【0020】
上記釣銭出金方法において、入金カウント工程では、入金金額情報をその発生時刻と共に精算装置に送信し、精算装置は、釣銭金額情報と預かり金額情報と釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成するようにしてもよい(請求項9)。
このようにすれば、使用者や店舗の経営者は、不整合の原因を正確に知ることができる。
【0021】
上記釣銭出金方法において、精算装置は、報知を受けたときに取引一覧を表示するようにしてもよい(請求項10)。
このようにすれば、使用者は不整合の原因を直ちに知ることができる。
【0022】
上記釣銭出金方法において、不整合報知工程では、音声により使用者への報知を行うようにしてもよい(請求項11)。
このようにすれば、使用者に不整合の発生を確実に気づかせることができる。
【0023】
本発明の釣銭出金プログラムは、精算装置が釣銭金額情報と預かり金の金額を示す預かり金額情報と商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を生成する精算情報生成処理と、釣銭機が、精算情報を精算装置から取得する精算情報取得処理と、釣銭機が、収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント処理と、釣銭機が、1件の取引毎に、預かり金額情報と入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック処理と、この整合チェック処理で不整合があると判定した場合にその旨を釣銭機の使用者と精算装置に報知すると共に出金を停止する不整合報知処理と、精算装置が、使用者から報知を認識した旨の応答の入力を受け付け、応答のあったことを示す情報を釣銭機に通知する応答入力処理と、この通知を受けた釣銭機が、出金の停止を解除する解除処理をコンピュータに実行させる(請求項12ないし請求項15)。
【0024】
上記釣銭出金プログラムによれば、1件の取引毎に預かり金額情報と入金金額情報との間に不整合があるか否かを判定し、不整合がある場合にはその旨が使用者に通報されるから、使用者は、直ちに不整合の発生に気づくことができる。
また、使用者は、不整合発生の報知を認識したことを入力するだけで精算処理を進めることができるから入金のタイミングに柔軟性を持たせることができる。
【0025】
上記釣銭出金プログラムにおいて、入金カウント処理では、入金金額情報をその発生時刻と共に精算装置に送信し、精算装置は、釣銭金額情報と預かり金額情報と釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成するようにしてもよい(請求項13)。
このようにすれば、使用者や店舗の経営者は、不整合の原因を正確に知ることができる。
【0026】
上記釣銭出金プログラムにおいて、精算装置が、報知を受けたときに取引一覧を表示する処理をコンピュータに実行させるようにしてもよい(請求項14)。
このようにすれば、使用者は不整合の原因を直ちに知ることができる。
【0027】
上記釣銭出金プログラムにおいて、不整合報知処理では、音声により使用者への報知を行うようにしてもよい(請求項15)。
このようにすれば、使用者に不整合の発生を確実に気づかせることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、1件の取引毎に預かり金額情報と入金金額情報との間に不整合があるか否かを判定し、不整合がある場合にはその旨が使用者に通報されるから、使用者は、直ちに不整合の発生に気づくことができる。
また、使用者は、不整合発生の報知を認識したことを入力するだけで精算処理を進めることができるから入金のタイミングに柔軟性を持たせることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
図を参照しながら本発明の一実施形態であるPOSシステム1(釣銭出金システムの一例)の構成と動作について説明する。
図1は、POSシステム1の全体図である。
図1を参照すると、POSシステム1は、POS釣銭機10(釣銭機の一例)と、POS装置20(精算装置の一例)とから構成されている。POS釣銭機10と、POS装置20はプログラム制御により動作し、通信ケーブル30により接続されている。
【0030】
POS釣銭機10は、紙幣および硬貨を扱う現金処理機であり、紙幣および硬貨の入金または出金を行う機能を備えている。扱える貨幣は、現在流通している日本銀行券および硬貨であり、金種として万円券、五千円券、二千円券、千円券、五百円硬貨、百円硬貨、五十円硬貨、十円硬貨、五円硬貨、一円硬貨を扱い、入金された貨幣は金種毎に用意した収納庫に収納する。収納された貨幣は、POS装置20から命令で金種毎の出金枚数情報を受け取り釣銭金として出金し、別の客へ釣銭金として出金する貨幣リサイクル運用を行う。
【0031】
POS装置20は、情報処理装置であり、買い物をした客の商品金額を総計し、入力された預かり金額から商品金額を差し引くことで釣銭金額を算出する。算出した釣銭金額を金種毎の枚数に置き換えて出金枚数情報(釣銭金額情報の一例)を生成しこれをPOS釣銭機10へ通信ケーブル30を介して送信することによりPOS釣銭機10から釣銭金を出金する。
【0032】
POS装置20は出金枚数情報と買上金額と預かり金額からなる精算情報をPOS釣銭機10へ送信する。POS釣銭機10は前記買上金額および前記預かり金額そのものを出金処理のために使用することはないが、釣銭金額を出金する際の関連情報として受信する。
POS釣銭機10は受信した情報を元に釣銭金を出金した後、レジ係(使用者の一例)によって入金される預かり金額を監視する。
POS釣銭機10に入金された貨幣の金額を、先に出金枚数情報と伴に受け取った預かり金額と整合し、相違がある場合、もしくは預かり金額が入金されることなく次の釣銭金出金命令を受け取った場合には、預かり金額に異常があることをレジ係にアラーム音を上げることで通知する。POS釣銭機10の運用内容は、整合箇所と不整合箇所を含めて全てを取引一覧としてPOS装置20の画面上に出力することで検証可能となっている。
【0033】
図2は、図1のPOS釣銭機10とPOS装置20の機能ブロック図である。
POS釣銭機10は、通信手段11と整合チェック手段12と不整合報知手段13と入金カウント手段14とを備えている。
【0034】
通信手段11は、通信ケーブル30を介してPOS装置20から送信された釣銭金情報を受信し整合チェック手段12に渡す。また、整合チェック手段12が不整合を発見したときに、その旨を示す情報をPOS装置20に送信する。
【0035】
入金カウント手段14は、入金された預かり金の金種ごとの枚数をカウントし入金金額情報を生成し、その情報を整合チェック手段12に通知する。また、入金金額情報は、POS装置20にも通信手段11を介して送信する。
【0036】
整合チェック手段12は、預かり金額入力手段23入力された金額とPOS釣銭機10に入金された金額に不整合があるか否かをチェックし、不整合がある場合には不整合通知手段13に通知する。
【0037】
不整合報知手段13は、不整合が発生したときに、例えば図示しないスピーカにアラーム音を出力することにより不整合の発生をレジ係に報知するとともに、不整合が発生した旨を示す情報を通信手段11を介してPOS装置20に送信する。また、不整合発生の通知を受けたときには、POS装置20からの応答を受信するまでの間、釣銭金の出金等の処理を行わないようにPOS釣銭機10を制御する。
【0038】
上記の各手段は、POS釣銭機10のCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行してのPOS釣銭機10ハードウェアを制御することにより実現される。
【0039】
POS装置20は、読取手段21と買上金額算出手段22と預かり金額入力手段23と釣銭金額算出手段24と通信手段25と応答入力手段26と取引一覧生成手段27と取引一覧記憶部28と取引一覧表示手段29を備えている。
【0040】
読取手段21は、例えばバーコード読取装置で、商品に付されたバーコードを光学的に読み取って買上金額算出手段22に通知する。
【0041】
買上金額算出手段22は、読取手段21が読み取ったバーコードに基づいて個々の商品の価格をデータベースから取得し、一取引毎に顧客が買い上げた商品の合計金額を算出し釣銭金額算出手段24に通知する。
【0042】
預かり金額入力手段23は、例えばキーボード装置で、レジ係により入力された預かり金額を釣銭金額算出手段24に通知する。
【0043】
釣銭金額算出手段24は、預かり金額から買上げ金額を減じて釣銭金額を算出する。そして、前述の精算情報を生成して通信手段25を介してPOS釣銭機10に送信する。
【0044】
通信手段25は、精算情報をPOS釣銭機10に送信する。また、不整合が発生したことを示す情報と取引一覧をPOS釣銭機10から受信する。
【0045】
応答入力手段26は、レジ係が不整合の報知を認識したときに、その旨を入力するための手段で、例えばPOS装置20が備えるディスプレイ装置上に表示されたボタンである。レジ係は、このボタンに指先やスタイラスで触れることにより入力を行う。
【0046】
取引一覧生成手段27は、釣銭金額情報と預かり金額情報と釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成し、取引一覧記憶部28に格納する。
【0047】
取引一覧記憶部28は、例えば不揮発性のRAM(Random Access Memory)により構成され、取引一覧生成手段27により生成された取引一覧を記憶する。
【0048】
取引一覧表示手段29は、POS釣銭機10から不整合が発生した旨の情報を受信したときに、取引一覧を取引一覧記憶部28から読み出し、これを表示装置に表示する。また、レジ係等の使用者から指示があったときも同様に取引一覧を表示する。
【0049】
上記の各手段は、POS装置20のCPU(Central Processing Unit)がコンピュータプログラムを実行してのPOS装置20のハードウェアを制御することにより実現される。
【0050】
次に、図1ないし図5を参照してPOSシステム1の動作について詳細に説明する。
まずPOS釣銭機10の使用方法として、図2と図3のフローチャートを用いて釣銭出金優先と称する運用について説明する。
最初にレジ係は、POS装置20の読取手段21を用いて客が買い求める商品に付されているバーコードを読み取る(S201)。読み取り手段21は、読み取ったバーコードを買上げ金額算出手段22に通知する。
買上げ金額算出手段22は、読み取られたバーコードからPOS装置20に登録されている個々の商品金額を取得して加算することにより全買上商品の買上金額を算出する(S202)。
【0051】
その買上金額を客に伝えることで客が用意した貨幣を預かり金額としてレジ係は受け取る。レジ係は受け取った預かり金額を目視確認し吟味台に載せる。預かった金額を客に伝え確認を取り、了承を頂いた上で預かり金額入力手段23に手入力により預かり金額として打ち込む。預かり金額入力手段23は、打ち込まれた金額を釣銭金額算出手段24に通知する(S203)。
釣銭金額算出手段24は、預かり金額から買上金額を差し引いた金額を釣銭金額として算出し、これに基づいて出金枚数情報を生成する。そして、出金枚数情報と預かり金額情報と買上げ金情報を含む精算情報を通信手段25を介してPOS釣銭機10に送信する(S204)。
【0052】
POS釣銭機10は、POS装置20から送信された出金枚数情報を基にプログラム制御により釣銭金を出金する(S101)。レジ係は出金された釣銭金を客に渡す。そしてレジ係は、通常の場合は、吟味台に載せた預かり金をPOS釣銭機10に入金する。また、例外的な場合として、預かり金にキズ等があるため、POS釣銭機10には入金せずドロアへ収納したり、直ちには入金しないで複数件分の預かり金をまとめて入金したりする場合もある。
入金カウント手段14は、入金された貨幣の数をカウントして入金金額情報を生成してメモリに記憶する。そして、例えば釣銭金を出金してから所定の時間が経過したときに、入金金額情報(入金がされなかった場合は「0円」とする)をその発生時刻と共にPOS装置20に送信する。
【0053】
POS装置20は、通信手段25により入金金額情報を受信し、取引一覧生成手段27が取引一覧を生成し取引一覧記憶部29に格納する(S205)。
【0054】
ここまでの運用で人為的ミスが発生する可能性として考えられるものとして、客からの預かり金の目視確認を誤り預かり金額の計数を間違え、そのままPOS装置20にキー入力してしまう、または預かり金額の目視計数は合っていたが、POS装置20へのキーボード手入力を間違えた場合、または預かり金の全額もしくはその一部をPOSの吟味台に残したままPOS釣銭機10に入金し忘れる、そのためPOS釣銭機10に入金し損なった預かり金を次の客に誤って釣銭金として渡してしまう、ことなどが考えられる。
その結果、その日のPOSレジの精算時に「あるべき金額」と「存在する金額」に差が生じ、不整合が発覚することがある。ここで「あるべき金額」とはPOSのキーボードで手入力した値の計数を表し、一方「存在する金額」とはPOS釣銭機10内に実際に存在する金額を表す。
ただし、上記の例外的な運用をする場合には、客に釣銭金を渡した直後の時点では、人為的ミスがなくても不整合が発生する。
【0055】
そこでPOS釣銭機10の整合チェック手段12は、取引毎にレジ係が客から預かった預かり金額(S204で受信した預かり金額情報)と、POS釣銭機10への入金額(S101で生成した入金金額情報)の不整合を抽出し、不整合がある場合は処理を停止すると共に、ブザー音で知らせることでレジ係にオペレーションミスの認識と注意を喚起する(S104)。また、不整合が発生したことを示す情報をPOS装置20に通知する。
【0056】
POS装置20の取引一覧表示手段29は、取引一覧の全体または、不整合の生じた取引に対応する部分をレジ係が視認できるように表示する(S206)。この表示により、レジ係は、実際にPOS釣銭機に入金された金額と、POS装置20への手入力した預かり金額とを視覚的に比較参照することが可能となり、ヒューマンエラーによる不整合箇所をレジ係が素早く確定することが可能となった。通常の場合、入金された貨幣が預かり金額と同一ではあるが、もし入金された金額が過多もしくは過少である不整合が発生した場合はアラーム音を発し、POS装置20の画面上に表示することでレジ係にその都度、注意を喚起することが可能となった。
【0057】
アラーム音を認識したレジ係は、取引一覧を参照して不整合の原因を確認し、上記の例外的な運用を行ったために不整合が生じた場合や、上記の人為ミスのため不整合が生じた場合でも後で修正を行う場合には応答入力手段26により、不整合の発生を承知した旨の応答を入力する。また、すぐに修正を行う場合には、例えばキーボートから正しい預かり金の金額を入力する等の修正操作を行う。応答または修正の入力があると通信手段25は、それらの情報をPOS釣銭機10に送信する(S207)。
応答または修正を受信したPOS釣銭機10の整合チェック手段12は処理の停止を解除し、次の取引の処理を行えるようにする(S105)。
【0058】
図4に本発明の取引一覧を示す。
一つの取引内容は、釣銭金額、預かり金額、入金額の3項目から成る。前記の中で釣銭金額および預かり金額は、POS釣銭機10がPOS装置20から受け取った精算情報に含まれていたもので、取引一覧には前記情報内の値が記憶される。預かり金額は、S203でレジ係が客から預かった金額をPOS装置20に手入力した結果であり、その値が記憶される。また、釣銭金額は、手入力した預かり金額から客が買上した金額を差し引いた値が記憶される。入金額は、レジ係が客から預かった貨幣を入金した際にPOS釣銭機10の入金カウント手段14が計数した貨幣の金額が記憶される。このように、従来の一覧表では確認出来なかった手入力した預かり金額を、本取引一覧表では確認することが可能となる。
例えば、16:18:43に預かり金額が3356円にも関わらず、実際に入金された金額が356円であるため入金過少のアラームが発生している。また、16:19:08に預かり金額が5000円にも関わらず、8000円の入金額であったため入金過多のアラームが発生している。この時は最初に3000円の入金モレがあり、次の客の預かり金と一緒にその3000円を入金していることが分かる。
【0059】
図5は、従来の取引一覧を示す。
一つの取引は、釣銭金、入金の2項目から成る。前記の中で釣銭金だけがPOS装置からPOS釣銭機が受け取った情報内で伝えられ、取引一覧には前記情報内の値が記憶されている。前記釣銭金は、預かり金額から買上金額を差し引いた金額が表示される。前記入金は、レジ係が客から預かった貨幣を入金することでPOS釣銭機内で計数された貨幣の金額が表示される。
しかし、従来は、この入金された金額だけでは、客から実際にいくら預かったのか判断は出来なかったため、その取引内で入金された金額を預かった金額と捉えるしかなかった。よって、この預かり金額の手入力が誤っているか否かは、判断出来なかったため、ヒューマンエラーを指摘することは困難であった。
【0060】
以上のように、本実施例によれば、運用時にレジ係は預かり金額と入金額に相違が発生した時点でPOS釣銭機10がアラーム音を挙げるので、その場で運用の確認が可能となり、その日の長時間運用が経過してから取引確認をする必要がなくなった。
また、いつでも空いた時間にPOS装置20の画面を用いて、経過した取引内容とPOS釣銭機10への貨幣の入出金について検証することが可能となり、疑問に思った取引内容はその場で自ら確認できるという効果がある。
その結果、装置の製造求めの問合せコール件数の減少にも効果がある。また、問合せがあった場合でも、同情報ログを検証することにより、同じ内容を参照することで相互の理解を早められる効果がある。
また、ブザー音による不整合の通報があったときでも、レジ係は応答を入力するだけで次の取引の処理に進むことができるので、複数件分の預かり金をまとめて入金する等入金のタイミングに柔軟性を持たせた運用をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態であるPOSシステムの全体図である。
【図2】図1のPOS釣銭機とPOS装置の機能ブロック図である。
【図3】POSシステムの動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の取引一覧の例を示す図である。
【図5】従来の取引一覧の例を示す図である。
【符号の説明】
【0062】
1 POSシステム
10 POS釣銭機
11 通信手段
12 整合チェック手段
13 不整合報知手段
14 入金カウント手段
20 POS装置
21 読取手段
22 買上金額算出手段
23 預かり金額入力手段
24 釣銭金額算出手段
25 通信手段
26 応答入力手段
27 取引一覧生成手段
28 取引一覧記憶部
29 取引一覧表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を収納する収納庫を備え、顧客から受け取った預かり金の金額と前記顧客が買い上げた商品の金額との差額である釣銭金額を示す釣銭金額情報を取得し、前記釣銭金額に相当する貨幣を前記収納庫から出金する釣銭機において、
前記釣銭金額情報と前記預かり金の金額を示す預かり金額情報と前記商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を取得する精算情報取得手段と、
前記収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント手段と、
1件の取引毎に、前記預かり金額情報と前記入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック手段と、
この整合チェック手段が不整合があると判定した場合にその旨を使用者に報知すると共に前記出金を停止し、前記使用者が前記報知を認識した旨を示す応答を取得したときに前記出金の停止を解除する不整合報知手段を備えたことを特徴とした釣銭機。
【請求項2】
前記不整合報知手段は、音声により前記使用者への報知を行うことを特徴とした請求項1に記載の釣銭機。
【請求項3】
顧客から受け取った預かり金の金額と前記顧客が買い上げた商品の金額との差額である釣銭金額を示す釣銭金額情報を生成して釣銭機に送信し、前記釣銭機に前記釣銭金額に相当する貨幣を収納庫から出金させる精算装置において、
前記釣銭金額情報と前記預かり金の金額を示す預かり金額情報と前記商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を生成し前記釣銭機に送信する精算情報生成手段と、
前記釣銭金額情報と前記預かり金額情報と前記釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成する取引一覧生成手段を備えたことを特徴とした精算装置。
【請求項4】
顧客から受け取った預かり金の金額と前記顧客が買い上げた商品の金額との差額である釣銭金額を示す釣銭金額情報を生成する精算装置と、前記釣銭金額情報を取得し、前記釣銭金額に相当する貨幣を収納庫から出金する釣銭機とを備えた釣銭出金システムにおいて、
前記釣銭機は、
前記釣銭金額情報と前記預かり金の金額を示す預かり金額情報と前記商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を前記精算装置から取得する精算情報取得手段と、
前記収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント手段と、
1件の取引毎に、前記預かり金額情報と前記入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック手段と、
この整合チェック手段が不整合があると判定した場合にその旨を前記釣銭機の使用者と前記精算装置に報知すると共に前記出金を停止し、前記使用者が前記報知を認識した旨を示す応答を前記精算装置から取得したときに前記出金の停止を解除する不整合報知手段を備え、
前記精算装置は、
前記精算情報を生成する精算情報生成手段と、
前記使用者が前記報知を認識した旨の応答を入力する応答入力手段とを備えたことを特徴とした釣銭出金システム。
【請求項5】
前記入金カウント手段は、前記入金金額情報をその発生時刻と共に前記精算装置に送信し、
前記精算装置は、前記釣銭金額情報と前記預かり金額情報と前記釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成する取引一覧生成手段を備えた、
ことを特徴とした請求項4に記載の釣銭出金システム。
【請求項6】
前記精算装置は、前記報知を受けたときに前記取引一覧を表示する取引一覧表示手段を備えたことを特徴とした請求項5に記載の釣銭出金システム。
【請求項7】
前記不整合報知手段は、音声により前記使用者への前記報知を行うことを特徴とした請求項4ないし請求項6のいずれか一つに記載の釣銭出金システム。
【請求項8】
顧客から受け取った預かり金の金額と前記顧客が買い上げた商品の金額との差額である釣銭金額を示す釣銭金額情報を生成し、前記釣銭金額に相当する貨幣を釣銭機の収納庫から出金する釣銭出金方法において、
精算装置が、前記釣銭金額情報と前記預かり金の金額を示す預かり金額情報と前記商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を生成する精算情報生成工程と、
前記釣銭機が、前記精算情報を前記精算装置から取得する精算情報取得工程と、
前記釣銭機が、前記収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント工程と、
前記釣銭機が、1件の取引毎に、前記預かり金額情報と前記入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック工程と、
この整合チェック工程で不整合があると判定した場合にその旨を前記釣銭機の使用者と前記精算装置に報知すると共に前記出金を停止する不整合報知工程と、
前記精算装置が、前記使用者から前記報知を認識した旨の応答の入力を受け付け、応答のあったことを示す情報を前記釣銭機に通知する応答入力工程と、
この通知を受けた前記釣銭機が、前記出金の停止を解除する解除工程を備えたことを特徴とした釣銭出金方法。
【請求項9】
前記入金カウント工程では、前記入金金額情報をその発生時刻と共に前記精算装置に送信し、
前記精算装置は、前記釣銭金額情報と前記預かり金額情報と前記釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成することを特徴とした請求項8に記載の釣銭出金方法。
【請求項10】
前記精算装置は、前記報知を受けたときに前記取引一覧を表示することを特徴とした請求項9に記載の釣銭出金方法。
【請求項11】
前記不整合報知工程では、音声により前記使用者への前記報知を行うことを特徴とした請求項8ないし請求項10のいずれか一つに記載の釣銭出金方法。
【請求項12】
顧客から受け取った預かり金の金額と前記顧客が買い上げた商品の金額との差額である釣銭金額を示す釣銭金額情報を生成し、前記釣銭金額に相当する貨幣を釣銭機の収納庫から出金する処理をコンピュータに実行させる釣銭出金プログラムにおいて、
前記コンピュータに、
精算装置が前記釣銭金額情報と前記預かり金の金額を示す預かり金額情報と前記商品の金額を示す買上げ金額情報とを含む精算情報を生成する精算情報生成処理と、
前記釣銭機が、前記精算情報を前記精算装置から取得する精算情報取得処理と、
前記釣銭機が、前記収納庫に入金された貨幣を計数し入金金額情報を生成する入金カウント処理と、
前記釣銭機が、1件の取引毎に、前記預かり金額情報と前記入金金額情報を比較し両者が一致しない場合に不整合があると判定する整合チェック処理と、
この整合チェック処理で不整合があると判定した場合にその旨を前記釣銭機の使用者と前記精算装置に報知すると共に前記出金を停止する不整合報知処理と、
前記精算装置が、前記使用者から前記報知を認識した旨の応答の入力を受け付け、応答のあったことを示す情報を前記釣銭機に通知する応答入力処理と、
この通知を受けた前記釣銭機が、前記出金の停止を解除する解除処理を実行させることを特徴とした釣銭出金プログラム。
【請求項13】
前記入金カウント処理では、前記入金金額情報をその発生時刻と共に前記精算装置に送信し、
前記精算装置は、前記釣銭金額情報と前記預かり金額情報と前記釣銭機から受信した入金金額情報を各々の発生時刻と共に対応付けて記憶する取引一覧を生成することを特徴とした請求項12に記載の釣銭出金プログラム。
【請求項14】
前記精算装置が、前記報知を受けたときに前記取引一覧を表示する処理を前記コンピュータに実行させることを特徴とした請求項13に記載の釣銭出金プログラム。
【請求項15】
前記不整合報知処理では、音声により前記使用者への前記報知を行うことを特徴とした請求項12ないし請求項14のいずれか一つに記載の釣銭出金プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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