釣餌用環形動物梱包材及びそれを用いた釣餌用環形動物の飼育方法、輸送方法並びに取扱方法
【課題】釣餌用環形動物を個別に梱包し、販売時まで活性な環形動物の歩留りを向上させることができる釣餌用環形動物梱包材と、それを用いた釣餌用環形動物の飼育方法及び輸送方法並びに取扱方法とを提供する。
【解決手段】釣餌用環形動物梱包材1は、一の釣餌用環形動物9を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材2からなり、その一方の開口端部3において、管壁の内面の一部を管状部材2の略中心軸上で当接させた当接部5を設け、当接部5により分けられた貫通孔6を形成したことを特徴とする。管状部材の両端に同様の当接部及び貫通孔を形成してもよい。また、釣餌用環形動物梱包材を、管状部材本体と、同様の当接部及び貫通孔を形成したキャップ部材とから構成することもできる。
【解決手段】釣餌用環形動物梱包材1は、一の釣餌用環形動物9を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材2からなり、その一方の開口端部3において、管壁の内面の一部を管状部材2の略中心軸上で当接させた当接部5を設け、当接部5により分けられた貫通孔6を形成したことを特徴とする。管状部材の両端に同様の当接部及び貫通孔を形成してもよい。また、釣餌用環形動物梱包材を、管状部材本体と、同様の当接部及び貫通孔を形成したキャップ部材とから構成することもできる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣餌用環形動物梱包材及びそれを用いた釣餌用環形動物の輸送方法等に関する。詳しくは、釣餌に用いられる長尺の環形動物を収容する釣餌用環形動物梱包材と、その釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容して行う飼育方法、輸送方法並びに取扱方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣の一つとして、環形動物を餌に用いる餌釣りがある。この餌釣に用いられる環形動物はゴカイ、イソメ等であるが、体長が数十cmあるオニイソメ等、さらに大型で長尺の環形動物が利用されることもある。これら環形動物は、近年の収穫量の減少や消費量の増加に伴い、国内で収穫するもののほか国外から輸入される場合が多い。このため、釣餌用環形動物を収穫してから輸送し、販売するまでに要する期間が長期化しており、釣餌用環形動物が弱ってしまいがちになるという問題があった。
従来、釣餌用環形動物の輸送方法として、ゼオライトやバーミキュライト等の破砕物を充填した容器内に、多数の釣餌用環形動物を収納して輸送する方法が一般に行われていたが、環形動物の種類によっては、一つの容器に二匹以上収納すると、近くにいる環形動物と互いに噛み合ったり、絡まったりして傷つき、弱り、死んでしまう場合がある。
そこで、環形動物の長期間にわたる輸送が可能で、環形動物が生きていて活気のある状態で釣餌として提供することができるように、筒状部材に環形動物を折り畳むことなく直線状に収納し、貫通孔を設けた栓部材によってその筒状部材の両端を塞ぐ釣餌用環形動物梱包材が発明されている(特許文献1を参照)。
なお、釣餌を内部が複数の溝に区画された直方体のケースに誘導し、一定数の釣餌を長く保存でき且つ携帯可能にした釣餌ケースも開示されている(特許文献2を参照)。しかしながら、このような釣餌ケースの場合には、構造が単純ではなく形状・寸法の制約が大きいため、多数の釣餌を収納して輸送する場合には効率が悪い。また、輸送した釣餌を店頭等に陳列し、そのまま任意の数量で販売する用途では使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−137147号公報
【特許文献2】特開2008−183001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、釣餌用環形動物の保管期間や輸送期間が長期化しており、比較的温度の高い亜熱帯地域等を経由して輸送される場合も多いので、釣餌に必要な活気の維持がより困難になってきている。また、輸送時には、少ない容積でより多くの釣餌用環形動物を、死滅させることなく鮮度よく輸送することが必要とされる。更に、これら釣餌用環形動物の保管、陳列及び販売を行う場合においても、環形動物が互いに干渉できる状態でおこなうのは好ましくなく、少ない手間で任意の数量の販売を行うことが困難であった。
この対策として、従来、釣餌用環形動物を個別に梱包して輸送等を行うための釣餌用環形動物梱包材が用いられている。例えば、図10に示すように、筒状部材81に環形動物9を折り畳むことなく直線状に収納し、貫通孔を設けた栓部材82を用いて筒状部材81の両端の開口を塞ぐ釣餌用環形動物梱包材があった。そして、その釣餌用環形動物梱包材を用いた輸送方法及び取扱方法によって、環形動物に負担が少ない状態で個別に梱包することができ、多数をまとめて湿潤を与えつつ輸送し、手間なく任意の数量で販売することが可能になった。しかしながら、例えば図11及び図12に表されるように、栓部材82には通水のために1又は2以上の貫通孔83が設けられており、通水性をよくするために貫通孔を大きくしようとすると栓部材82の強度を確保することが困難になるという問題があった。また、釣餌用環形動物梱包材の構造を簡略にして、使用する部材の成形加工等を減らして低コストにするとともに取扱いの手間を省く必要があった。
また、釣餌用環形動物の長期間にわたる輸送や保管をしても、その販売時まで鮮度を保つことが必要であり、梱包材に始めに収容した環形動物の全数に対して、販売時に活性な環形動物数の割合(歩留り)をさらに高めることが重要な課題であった。
【0005】
本発明は、上記観点に鑑みてなされたものであり、釣餌用環形動物を個別に梱包して輸送や陳列等をすることができ、販売時まで活性な環形動物の歩留りを大幅に向上させることができる釣餌用環形動物梱包材と、それを用いた釣餌用環形動物の飼育方法及び輸送方法並びに取扱方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、前記管状部材の一方の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記管状部材の略中心軸上で当接させた当接部を設け、その当接部により分けられた2つの貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
2.前記当接部は、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成される前記1.記載の釣餌用環形動物梱包材。
3.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、前記管状部材の一方の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
4.さらに前記管状部材の他方の開口端部において、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより、前記管状部材の管壁の対向する内面の一部を当接させた当接部を設ける前記1.乃至3.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材。
5.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記キャップ部材の略中心軸上で当接させた当接部が設けられ、且つその当接部により分けられた2つの貫通孔が形成されており、前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
6.前記キャップ部材の前記当接部は、前記キャップ部材の管壁を前記キャップ部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成された前記5.記載の釣餌用環形動物梱包材。
7.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔が形成されており、前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
8.前記1.乃至3.又は前記5.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を塩水中に浸し、釣餌用環形動物をその釣餌用環形動物梱包材内に導入してそのまま塩水中で飼育することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の飼育方法。
9.釣餌用環形動物を収容した前記1.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ輸送することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の輸送方法。
10.釣餌用環形動物を収容した前記1.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのまま15〜30℃の塩水中に浸して保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
11.釣餌用環形動物を収容した前記1.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材からなり、その一方の開口端部に当接部及び貫通孔を設けた釣餌用環形動物梱包材によれば、管状部材の一方の開口の一部が閉鎖されているため釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ通水性を良くすることができるため釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保ち、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することができる。また、従来に較べて部材数が少なく構造が単純であるため成型が容易であり、安価に製造することができ、取扱いを容易にすることができる。
また、前記当接部をステープラーによる針止め又は熱溶着によって形成する場合には、金型等を用いて管状部材を成型しなくても簡単に釣餌用環形動物梱包材を製造することができる。
【0008】
釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材からなり、その一方の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔を形成した釣餌用環形動物梱包材によれば、管状部材の一方の開口が狭いため釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ水流を良くすることができるため釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保ち、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することができる。また、管状部材の成型後の手間を不要とすることができる。
【0009】
さらに、以上のいずれかの管状部材の他方の開口端部をステープラーにより針止め又は熱溶着する場合には、一方の開口端部を閉じた管状部材に釣餌用環形動物を収容した後に他方の開口端部を閉じることができるため、釣餌用環形動物の逃亡を完全に防止することができる。また、両端の貫通孔を介して適度な水流を与えることができるため、釣餌用環形動物にストレスが少ない湿潤状態を保つことができる。これらによって、釣餌用環形動物の歩留りを更に高めることが可能になる。
【0010】
釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材本体と、その開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とからなり、管状部材本体の少なくとも一方の開口端部にキャップ部材を嵌装した釣餌用環形動物梱包材によれば、キャップ部材の着脱が容易であるため、取扱いの自由度を増すことができる。また、キャップ部材の開口端部に設けられた当接部及び貫通孔により、釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保つことができるため、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。さらに、管状部材本体の両方の開口端部にキャップ部材を嵌装すれば、釣餌用環形動物の逃亡を完全に防止することができ、歩留りを更に高めることができる。
前記キャップ部材の当接部をステープラーによる針止め又は熱溶着によって形成する場合には、金型等を用いてキャップ部材を成型しなくても極めて簡単に釣餌用環形動物梱包材を製造することができる。
【0011】
釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材本体と、その少なくとも一方の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とからなり、そのキャップ部材は管状部材本体に嵌装しない側の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔が形成されている釣餌用環形動物梱包材によれば、キャップ部材の成型後の手間を不要とすることができ、キャップ部材の着脱が容易であるため取扱いの自由度を増すことができる。また、キャップ部材の開口が狭いため釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ水流を良くすることができるため釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保ち、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することができる。さらに、管状部材本体の両方の開口端部にキャップ部材を嵌装すれば、釣餌用環形動物の逃亡を完全に防止することができ、歩留りを更に高めることができる。
【0012】
開口端部の一方の開口に前記貫通孔を備えた以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を導入し、そのまま塩水中で飼育する釣餌用環形動物の飼育方法によれば、海水中等に釣餌用環形動物梱包材を置くだけで釣餌用環形動物の習性を利用して釣餌用環形動物梱包材の中に釣餌用環形動物を収容し、また飼育することができる。さらに、そのまま又は他方の開口を閉じて、輸送等に移すことができる。
【0013】
以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容し、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ輸送する釣餌用環形動物の輸送方法によれば、釣餌用環形動物を弱らせることなく鮮度を維持して長期間にわたる輸送をすることができ、活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。
【0014】
以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容し、そのまま15〜30℃の塩水中に浸して保管、陳列又は販売を行う釣餌用環形動物の取扱方法によれば、釣餌用環形動物を養生しつつ長期間にわたり店頭に陳列等することができ、販売時まで活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。また、そのまま任意の数で釣餌用環形動物を販売することができる。
また、以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容し、内部を湿潤状態に保ち、且つ10〜35℃の温度を保ちつつ保管、陳列又は販売を行う釣餌用環形動物の取扱方法によれば、適宜に塩水を補給するのみで釣餌用環形動物の鮮度を維持して店頭に陳列等することができ、販売時まで活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。また、そのまま任意の数で釣餌用環形動物を販売することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面に付した同様の参照符号はいくつかの図を通して同様の部品、同様の機能等を示す。
【図1】一方の開口端部に当接部及び貫通孔を設けた釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための斜視図である。
【図2】両方の開口端部に当接部及び貫通孔を設けた釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための斜視図である。
【図3】本釣餌用環形動物梱包材の開口端部に設けた当接部及び貫通孔の例を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した釣餌用環形動物梱包材のAA’断面図(開口端部のみ)である。
【図5】図3に示した釣餌用環形動物梱包材のB側面図である。
【図6】管状部材の開口端部をステープラーにより針止めした例を説明するための断面図である。
【図7】管状部材の開口端部を細くし、且つ開口が略楕円形状である貫通孔を形成した釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための開口端部の外形図である。
【図8】管状部材本体と、その開口端部に嵌装されるキャップ部材からなる釣餌用環形動物梱包材を説明するための断面図である。
【図9】本発明の釣餌用環形動物梱包材と従来の釣餌用環形動物梱包材による長期間の保管試験の結果である。
【図10】従来の釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための斜視図である。
【図11】図10に示した従来の釣餌用環形動物梱包材の栓部材の例を示す斜視図である。
【図12】図10に示した従来の釣餌用環形動物梱包材の栓部材の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.釣餌用環形動物梱包材
本発明の釣餌用環形動物梱包材は、釣餌用環形動物を収容するための管状の部材の開口端部に、釣餌用環形動物の逃げ出しを防止するための阻止手段と、その管状の部材内の通水性を確保するための貫通孔とを備えるものである。この阻止手段及び貫通孔は、釣餌用環形動物梱包材を構成する管状の部材の一方の開口端部のみに設けられてもよいし、両端の開口端部に設けられてもよい。
図1は、管状部材2の一方の開口端部3を変形させることによって、前記阻止手段と貫通孔6を設けた釣餌用環形動物梱包材1を表す図である。後述の試験結果に示されるとおり、このように管状部材2の一方の開口端部3に阻止手段及び貫通孔を備え、他方の端部の開口を開放状態としたまま釣餌用環形動物9を輸送等しても、従来に較べて大幅に歩留りが向上するという効果を得ることができる。
また、図2は、管状部材2aの両方の開口端部3に、前記同様の阻止手段と貫通孔6を設けた釣餌用環形動物梱包材1aを表す図である。この場合、一方の開口端部3に阻止手段及び貫通孔6を備えた管状部材2a内に釣餌用環形動物9を収容した後、他方の開口端部3にも同様の加工を施す。両端に形成された貫通孔6によって管状部材2a内に十分な水流を供給することが可能であるため釣餌用環形動物9に好適な環境を与えることができ、釣餌用環形動物9の逃げ出しを完全に防止することができる。その効果として、釣餌用環形動物の歩留りをさらに高めることができる。
【0017】
前記釣餌用環形動物は特に限定されず、ゴカイ、イソメ、オニイソメ等が挙げられる。その大きさは、例えばオニイソメの場合、体長200〜400mm(平均約300mm)、体径4〜8mm(平均約6mm)程度である。釣餌用環形動物の大きさは、その釣餌用環形動物の状態によって変動があるが、以下では、釣餌用環形動物が管状の部材内で直線状となって安静にしている状態の大きさをいう。釣餌用環形動物が自ら折り畳んだ状態となって、前記部材内に大きな空隙部分が生ずる場合があるが、これは問わない。
【0018】
前記管状部材2,2aに用いる材質は、釣餌用環形動物を収納して輸送できる強度を備え、前記阻止手段及び貫通孔を形成するために可撓性を有するものであれば、任意の材質を選択することができる。安価・軽量な点でポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂が好ましい。また、前記各部材は不透明であってもよいが、内部の釣餌用環形動物の向きや状態を確認しやすくするため透明(半透明を含む。)とすることが好ましい。前記各部材の素材は、押出成形法、射出成形法等の任意の方法を用いて製造することができる。
【0019】
管状部材2、2aの大きさは、釣餌用環形動物梱包材内に収容する釣餌用環形動物によって決めることができる。管状部材2、2aの内径は、収容する釣作用環形動物の安静時の体径と同程度か僅かに大きい程度とするのが好ましく、前記体径の1〜1.6倍(好ましくは1.1〜1.5倍)とすることができる。例えば、安静時の体径が6mm程度の釣餌用環形動物の場合には、前記内径を6〜10mmとすることができる。このような内径とすることで、釣餌用環形動物が身体を折り曲げた場合においても無理が掛からず、弱ってしまうのを防ぐことができる。
管状部材2,2aの横断面形状は特に問わず、円形、多角形、楕円形等、様々な形状にすることができる。釣餌用環形動物は横断面形状が円形に近い略楕円形であるため、環形動物の体形にあった管状部材等とする場合、円形又は楕円形とすることができる。また、管状部材の横断面形状を四角形等の多角形とした場合には、縦横に積層して省スペースで保管する際に便利である。
【0020】
また、管状部材2,2aの長さは、その全体のうち釣餌用環形動物を収容することができる収容部分の長さLを釣餌用環形動物の安静時の体長より長くすることが好ましい。収容部分の長さLは、例えば、その体長の1.1〜1.6倍程度の長さとすることができる。すなわち、管状部材2,2aの全体の長さは、前記収容部分の長さLに、両端の開口端部の長さ(例えば各20〜50mm)を加えた長さとすることができる。例えば、安静時の体長が300mm程度の環形動物を収容し、管状部材の両端の開口端部としてそれぞれ長さ25mmを確保することとすれば、管状部材の全長は350〜530mmとなる。これにより、オニイソメ等の釣餌用環形動物を折り畳むことなく直線状に収容することができる。
【0021】
前記管状部材2,2aには、その開口端部を変形させて開口を狭める前記阻止手段を設け且つ貫通孔を形成することができる。阻止手段は、例えば、図3に表されるように、横断面が略円形(イ)である管状部材2、2aの開口端部3において、管壁31の対向する内面の一部を管状部材のほぼ中心軸(ロ)上で当接させた当接部5を設けることにより構成することができる。この場合、当接部5により分けられた貫通孔6が「8」の字状に2つできることとなる。図4は、図3に示された管状部材2、2aの開口端部3のAA’断面図であり、図5はその開口端部をB方向からみた外形図である。
当接部5の上記中心軸(ロ)方向の長さ、及び直径方向の幅、開口端32からの距離等は、収容した釣餌用環形動物の逃亡を防ぎ、且つ管内の通水性を確保するための貫通孔6が確保される限り特に限定されない。例えば、長い貫通孔を形成するために当接部5の中心軸方向の長さを1〜20mm程度とすることができる。また、形成される貫通孔の横断面の大きさを制限するために、管状部材の内径が6mmの場合、当接部5の直径方向の幅を1〜3mm程度とすることができる。
【0022】
形成される貫通孔6の開口及び横断面の形状は特に問わず、円形、楕円形、三角形等、任意の形状でよい。貫通孔の横断面のサイズは、あまり大きくすると釣餌用環形動物が頭部や尻部を貫通孔内に誤って侵入させて傷を負う場合があり、貫通孔が小さすぎると通水性が悪くなって老廃物等を外部へ排出することができなくなる。このため、収納する釣餌用環形動物によって異なるが、貫通孔6の横断面形状を略円形とする場合、その内径を該釣餌用環形動物の安静時の体径の20%〜40%程度とすることが好ましい。例えば、安静時の体径が約6mmの釣餌用環形動物の場合、貫通孔の内径は1.2〜2.5mm程度とすることができる。また、試験を行ったところでは、貫通孔6の横断面形状が円形であるよりも略楕円形であった方が釣餌用環形動物の逃げ出しが少なくなる傾向がある。したがって、貫通孔6の横断面形状を、内周の長さが上記円形の内周と同程度の略楕円形とすることが好ましい。
【0023】
前記当接部5及び貫通孔6を形成する方法は特に限定されない。例えば、金型等を用いて前記樹脂素材を成型することができる。構造が簡単であるため、従来(図11参照)に較べて成型が容易である。また、専用の型を用いて成型しない場合には、図6に示すように、管状部材2、2aの開口端部3の管壁31を管状部材の外側からステープラーを用いて針止めする方法が挙げられる。管状部材の略中心軸に沿ってステープラーの針51により管壁31の対向する内面を圧接し、当接部5を形成することができる。また、当接部5は、管状部材2、2aの管壁31の対向する内面の一部を熱溶着することにより形成されてもよい。その他、当接部5は適宜の止め金具や接着剤等によって形成されてもよい。すなわち、釣餌用環形動物梱包材1、1aは、管状部材2、2aを、金型を用いて成型する方法により製造することができるし、ステープラーを用いて針止めする方法、熱溶着する方法等によっても製造することができる。その他、適宜の止め金具や接着剤を用いて製造されてもよい。
【0024】
前記管状部材2,2aの一方の開口端部を変形させて開口を狭める阻止手段として、図7に示すように、管状部材の開口端部3の横断面の面積が開口に向かって小さくなるように(例えば、開口から長さ5〜50mm程度の部分を、テーパ状又は細管に)形成し、且つその開口が略円形又は略楕円形状である貫通孔7を備えるようにすることができる。この形成方法は特に限定されず、例えば、金型等を用いて前記樹脂素材を成型してもよいし、管状部材の開口端部を熱等により収縮させて形成してもよい。すなわち、開口端部の横断面の面積が開口に向かって小さくなるようにした釣餌用環形動物梱包材2、2aは、管状部材2、2aを、金型を用いて成型する方法により製造することができるし、熱等により収縮させる方法等によって製造することができる。
貫通孔7の横断面形状及び開口を略円形とする場合、前記のとおり、その内径は収容する釣餌用環形動物の安静時の体径の20%〜40%程度とすることが好ましい。また、貫通孔7の横断面形状及び開口を、その内周の長さが上記円形の内周の長さと同程度の略楕円形としてもよい。
【0025】
以上に述べたような阻止手段及び貫通孔を管状部材2aの一方の開口端部に形成した場合、その管状部材2a内に釣餌用環形動物を収容した後、さらにその管状部材2aの他方の開口端部において阻止手段及び貫通孔を加工することができる。すなわち、その他方の開口端部3において、前記と同様に、管壁31を外側から管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めするか熱溶着する等により、管状部材の管壁の対向する内面の一部を当接させた当接部5を設けることができる。これによって、管状部材2aの両端からの釣餌用環形動物の逃げ出しを防止することができる。
【0026】
また、釣餌用環形動物梱包材を管状部材本体と管状のキャップ部材とから構成し、キャップ部材に以上と同様の阻止手段及び貫通孔を設けることができる。例えば、図8に示すように、釣餌用環形動物梱包材1bは、管状部材本体21とキャップ部材22とから構成され、キャップ部材22を管状部材本体21に嵌装するようにすることができる。管状部材本体21は、両端間の径が同一の管とすることができる。キャップ部材22には、管状部材本体21に嵌装しない側の開口端部3において、阻止手段としてその管壁の対向する内面の一部をキャップ部材22の略中心軸上で当接させた当接部5が設けられ、且つその当接部5により分けられた2つの貫通孔6が形成されている。
キャップ部材22に前記当接部5及び貫通孔6を形成する方法は特に限定されず、前記同様、型を用いて成型することができる。また、キャップ部材22の管壁をキャップ部材22の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めすることにより形成してもよいし、キャップ部材22の管壁の対向する内面の一部を熱溶着する等により形成してもよい。
さらに、キャップ部材22に設けられる阻止手段及び貫通孔は、図7に示したように、開口端部を開口に向かって細くする(例えば、開口から長さ5〜50mm程度の部分を、テーパ状又は細管にする)ことによって形成されてもよい。すなわち、キャップ部材22の管状部材本体21に嵌装しない側の開口端部3を、その横断面の面積が開口に向かって小さくなるように形成し、且つその開口が略円形又は略楕円形状である貫通孔7を備えるようにすることができる。形成方法は特に限定されず、例えば、金型等を用いて樹脂素材を成型してもよいし、キャップ部材の開口端部を熱等により収縮させて形成してもよい。
すなわち、釣餌用環形動物梱包材1bを構成するキャップ部材は、金型を用いて成型する方法により製造することができるし、ステープラーを用いて針止めする方法、熱溶着する方法、熱収縮させる方法等によっても製造することができる。その他、適宜の止め金具や接着剤を用いて製造されてもよい。
【0027】
管状部材本体21及びキャップ部材22の材質は、前記管状部材2等と同様、任意に選ぶことができる。また、管状部材本体21の内径や断面形状も同様である。管状部材本体21の長さは、釣餌用環形動物の安静時の体長の1.1〜1.6倍程度の長さとすることができる。キャップ部材22の大きさ及び断面形状は、管状部材本体21に嵌装固定できるものであれば特に問わない。キャップ部材22は管状部材本体21の外側に被せられてもよいし、管状部材本体21に内嵌されてもよい。キャップ部材22と管状部材本体21の嵌め合いの長さは、キャップ部材22が脱落を生じないように適宜に決めることができる。更に、キャップ部材22と管状部材本体21との嵌め合い部分には、キャップ部材22が容易に外れてしまわないように環状又は螺旋状の凹凸部等が形成されてもよい。
キャップ部材22は、管状部材本体21に対して容易に着脱が可能であるため、釣餌用環形動物梱包材の取扱いの自由度を増すことができる。前記釣餌用環形動物梱包材1と同様に、管状部材本体21の一方の端部にのみキャップ部材22を嵌装して輸送等した場合にも、釣餌用環形動物の歩留りを従来に較べて大幅に高めることができる。また、管状部材本体21の両方の端部にキャップ部材22を嵌装した場合には、両端からの釣餌用環形動物の逃げ出しを防止することが可能になる。キャップ部材22は、前記管状部材2の他方の開口端部に嵌装されて用いられてもよい。
【0028】
2.釣餌用環形動物梱包材を用いた飼育方法、輸送方法及び取扱方法
本釣餌用環形動物梱包材を用いて、釣餌用環形動物の飼育をすることができる。このためには、本釣餌用環形動物梱包材を構成する前記管状部材(2、2a)又は前記管状部材本体(21)を、少なくとも一方の開口端部を開放した状態(前記阻止部を未形成の状態)で使用することができる。この前記管状部材(2、2a)又は前記管状部材本体(21)を釣餌用環形動物の存在する塩水中又は海中に浸しておくことにより、釣餌用環形動物の習性を利用して、その管状部材又は管状部材本体内に釣餌用環形動物を導入することができる。そして、釣餌用環形動物を収容した釣餌用環形動物梱包材を、そのまま塩水中又は海中に浸しておくことによって、釣餌用環形動物を飼育することが可能である。塩水又は海水の温度は、10〜35℃程度であることが好ましい(より好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃)。10℃以下の場合は冷えて死んでしまう場合があるし、35℃以上の場合は暑さで弱ったりするために、死滅することが多くなるからである。
【0029】
また、釣餌用環形動物を収容した前記のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、釣餌用環形動物の輸送方法に適用することができる。先ず、本釣餌用環形動物梱包材を構成する前記管状部材(2、2a)又は前記管状部材本体(21)を、少なくとも一方の開口端部を開放した状態(前記阻止部を未形成の状態)で、釣餌用環形動物を管内に収容する。次に、釣餌用環形動物を収容したその管状部材等を使用し、少なくとも一方の開口端部に前記阻止部及び貫通孔を形成し又はキャップ部材を嵌装した釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)として輸送することができる。
その輸送中は、前記釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)の内部を湿潤状態に保ち、且つ10〜35℃(好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃)の温度を保つようにする。釣餌用環形動物梱包材の内部を湿潤状態に保つためには、前記開口端部に形成された貫通孔を介して塩水が供給されるように、適宜に(例えば、10〜30時間ごとに)釣餌用環形動物梱包材内に給水する給水工程を備えることが好ましい。例えば、釣餌用環形動物梱包材は、発泡スチロール製の箱内に横向きにまとめて収納して輸送することができる。その場合、発泡スチロール製の箱の底面部にスポンジ等の多孔体に含水させたシートを敷き詰めることによって、湿潤状態を保つようにすることができる。また、給水工程は、適宜、発泡スチロール製箱内の釣餌用環形動物梱包材が塩水に浸されるように塩水を供給するか、釣餌用環形動物梱包材内を湿潤させるように塩水を噴霧すればよい。
輸送中の環境温度を前記それぞれの範囲に保つ必要性については前記のとおりである。この温度範囲に保つことにより、長期の輸送にも耐えるようにすることができる。
【0030】
また、釣餌用環形動物を収容した前記のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を使用して、釣餌用環形動物の保管、陳列、販売等の取扱いをすることができる。このためには、釣餌用環形動物を収容し、少なくとも一方の開口端部に前記阻止部及び貫通孔を形成し又はキャップ部材を嵌装した釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)を使用することができる。前記輸送方法を使用して輸送された釣餌用環形動物梱包材は、そのまま保管、陳列、販売等に使用することができる。
この釣餌用環形動物の取扱方法は、釣餌用環形動物を収容した釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)を、そのまま15〜30℃(好ましくは20〜30℃)の塩水中に浸した状態で、保管、店頭等における陳列、販売等を行う。塩水中に浸しておくことにより、前記開口端部に形成された貫通孔を介して塩水が供給されるとともに老廃物が管外に排出されるため、釣餌用環形動物を養生しつつ取扱いをすることができる。
また、前記釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)は、そのままその内部を湿潤状態に保ち、且つ10〜35℃(好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃)の温度を保ちつつ、保管、店頭等における陳列、販売等がされてもよい。釣餌用環形動物梱包材の内部を湿潤状態に保つためには、前記開口端部に形成された貫通孔を介して塩水が供給されるように、適宜に(例えば、10〜30時間ごとに)釣餌用環形動物梱包材に通水し又は散水する給水工程を備えることが好ましい。
取扱中の環境温度を前記それぞれの範囲に保つ必要性については前記のとおりである。この釣餌用環形動物の取扱方法により、釣餌用環形動物を1匹単位で任意の数量により販売することが可能であるため至便である。また、この取扱方法により、釣餌用環形動物梱包材を保管後にそのまま更に梱包して配送することもできるため、釣餌用環形動物の通信販売等を容易にすることができる。
【0031】
前記釣餌用環形動物の輸送方法及び取扱方法においては、釣餌用環形動物梱包材に収容した釣餌用環形動物を養生する養生工程を備えることができる。輸送前や輸送後には、釣餌用環形動物が弱っていたり排泄物を多く蓄えていたりすることが多いので、養生を行うことが好ましい。養生工程は、例えば、前記釣餌用環形動物梱包材をそのまま釣餌用環形動物の頭部が上方となるように傾斜させて、15〜30℃(好ましくは18〜30℃、特に好ましくは20〜28℃)の塩水中に浸し、その後、その塩水の水位を上下させることによって行う。好ましくは、塩水の水面高さを一日に2〜4回程度で上下に変化させながら、1〜10日間静置する。水面を上下させることによって、釣餌用環形動物梱包材内の塩水を入れ代えることができ、梱包材内の汚物を除去することができる。環形動物体内の老廃物は大きさが0.1〜0.5mm程度であるので、この工程により貫通孔から梱包材外へ排出され、輸送中や取扱中に梱包材内が老廃物によって汚染されることを防ぐことができる。また、梱包材を傾斜して配置することで、老廃物が梱包材の外に排出されやすく、梱包材を垂直に配置するよりも環形動物に与える負荷を軽減することができる。
【0032】
さらに、前記釣餌用環形動物の輸送方法及び取扱方法において、釣餌用環形動物梱包材に収容した釣餌用環形動物が弱った場合にそれを賦活する賦活工程を備えることもできる。この賦活工程は、例えば、前記釣餌用環形動物梱包材をそのまま15〜30℃(好ましくは18〜30℃、特に好ましくは20〜28℃)の塩水中に1〜3分間程度浸すことによって行うことができる。塩水は、海水か海水と同程度の塩分濃度の塩水に酸素富化(後述)した塩水を用いることが好ましい。このような賦活工程を備えることによって、釣餌用環形動物梱包材内の温度及び湿度を適正に回復させることができ、塩水及びその塩水中の溶存酸素により釣餌用環形動物を賦活させ、鮮度を維持することができる。また、数日から数十日の長期間の保管を行う場合は、このような塩水中に浸したままとすることにより、鮮度が落ちることを防ぐことができる。
【0033】
前記飼育方法、輸送方法及び取扱方法において用いる塩水は、流水であるかどうかは特に問わない。塩水は、釣餌用環形動物の生存に適した塩分濃度とすることが好ましく、海水をそのまま使用してもよいし、調製してもよい。また、その塩水は酸素富化させることができる。酸素富化とは、前記塩水に空気又は酸素ガスをバブルする等の方法を用いて、塩水中の溶存酸素を飽和又は増加させることをいう。
【0034】
また、前記飼育方法、輸送方法及び取扱方法においては、釣餌用環形動物梱包材を密に配列した状態で使用しても釣餌用環形動物が互いに接しあうことがないので、絡まったり、傷つけあったりすることがない。また、釣餌用環形動物のうちの一匹が感染症を起こしたり、死滅したりしても周囲に影響を与えることがない。
【0035】
釣餌用環形動物9を釣餌用環形動物梱包材に収容し、3つの試験条件により長期間にわたり保管したときの歩留りの比較試験を行った。試験に用いた釣餌用環形動物9は体長200〜400mmで平均体長が300mmのオニイソメであり、各試験条件ごとに、オニイソメを収容した釣餌用環形動物梱包材を200個づつ用意した。その釣餌用環形動物梱包材を、含水させたスポンジを敷いた発泡スチロール製の蓋付き箱(縦350mm、横300mm、深さ50mm)内に横向きに詰めて、周囲温度20〜30℃の環境で25日間保管した。また、この試験期間中、釣餌用環形動物梱包材内を湿潤させるように、1日に1回程度、塩水を噴霧した。
3つの条件で試験した結果は図9の表に示すとおりであった。この「条件1」は、貫通孔を設けた栓部材によって管状部材の両端を塞いだ従来の釣餌用環形動物梱包材(図10参照)を用いたものである。「条件2」は、管状部材本体21の一方のみの開口端部にキャップ部材22を嵌装した本発明の釣餌用環形動物梱包材1bを用いた。使用したキャップ部材22は、ステープラーの針止めによって前記当接部5及び貫通孔6を形成したものである。「条件3」は、管状部材2の両方の開口端部に当接部5及び貫通孔6を設けた本発明の釣餌用環形動物梱包材1aを用いた。当接部5は、ステープラーの針止めによって形成した。
図9で、「死滅」は収容した釣餌用環形動物が死んだ釣餌用環形動物梱包材の数であり、「空」は釣餌用環形動物が逃亡して空になった釣餌用環形動物梱包材の数であり、「内部生存」は、内部の釣餌用環形動物が生きている釣餌用環形動物梱包材の数である。例えば、条件2の場合、1日目から5日目までの5日間に、釣餌用環形動物の11匹が死に、8匹が逃亡したため、釣餌用環形動物梱包材内部で生きている釣餌用環形動物は181匹になったことを示している。
この試験の結果、従来の釣餌用環形動物梱包材を使用した条件1の場合、25日間に死滅した釣餌用環形動物の累計は53匹(当初の200匹に対して26.5%)、逃亡した釣餌用環形動物の累計は0匹(0%)であり、25日経過後に生きていた釣餌用環形動物は147匹(73.5%)であった。すなわち、歩留りは73.5%である。
片方にキャップ部材を付けた釣餌用環形動物梱包材1bを使用した条件2の場合、25日間の死滅数は25匹(12.5%)、逃亡数は15匹(7.5%)であり、25日経過後の内部生存数は160匹(歩留り80.0%)であった。この結果から、片方のみに阻止部を設けた釣餌用環形動物梱包材1bの場合にも、歩留を従来に比べて高めることができるといえる。なお、本条件で、逃亡数が多いのは、キャップ部材が外れたためであり、キャップ部材と管状部材本体との嵌め合い部分の摩擦や長さを増す等することによって逃亡数を減らすことが可能であり、歩留りを大幅に高めることができるものと推測される。
両端をステープラーにより針止めした釣餌用環形動物梱包材1aを使用した条件3の場合には、25日間の死滅数は11匹(5.5%)、逃亡数は2匹(1.0%)であり、25日経過後の内部生存数は187匹(歩留り93.5%)であった。したがって、従来に比べて歩留を著しく高めることができるといえる。
本発明による釣餌用環形動物梱包材を使用した条件2及び条件3において、従来に対して歩留を大幅に向上できるのは、前記貫通孔による通水性の向上が寄与しているものと考えられる。
【0036】
なお、本発明においては、以上に記載した実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1、1a、1b;釣餌用環形動物梱包材、2、2a;管状部材、21;管状部材本体、22;キャップ部材、3:開口端部、31;管壁、5;当接部、6、7:貫通孔、9;釣餌用環形動物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣餌用環形動物梱包材及びそれを用いた釣餌用環形動物の輸送方法等に関する。詳しくは、釣餌に用いられる長尺の環形動物を収容する釣餌用環形動物梱包材と、その釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容して行う飼育方法、輸送方法並びに取扱方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣の一つとして、環形動物を餌に用いる餌釣りがある。この餌釣に用いられる環形動物はゴカイ、イソメ等であるが、体長が数十cmあるオニイソメ等、さらに大型で長尺の環形動物が利用されることもある。これら環形動物は、近年の収穫量の減少や消費量の増加に伴い、国内で収穫するもののほか国外から輸入される場合が多い。このため、釣餌用環形動物を収穫してから輸送し、販売するまでに要する期間が長期化しており、釣餌用環形動物が弱ってしまいがちになるという問題があった。
従来、釣餌用環形動物の輸送方法として、ゼオライトやバーミキュライト等の破砕物を充填した容器内に、多数の釣餌用環形動物を収納して輸送する方法が一般に行われていたが、環形動物の種類によっては、一つの容器に二匹以上収納すると、近くにいる環形動物と互いに噛み合ったり、絡まったりして傷つき、弱り、死んでしまう場合がある。
そこで、環形動物の長期間にわたる輸送が可能で、環形動物が生きていて活気のある状態で釣餌として提供することができるように、筒状部材に環形動物を折り畳むことなく直線状に収納し、貫通孔を設けた栓部材によってその筒状部材の両端を塞ぐ釣餌用環形動物梱包材が発明されている(特許文献1を参照)。
なお、釣餌を内部が複数の溝に区画された直方体のケースに誘導し、一定数の釣餌を長く保存でき且つ携帯可能にした釣餌ケースも開示されている(特許文献2を参照)。しかしながら、このような釣餌ケースの場合には、構造が単純ではなく形状・寸法の制約が大きいため、多数の釣餌を収納して輸送する場合には効率が悪い。また、輸送した釣餌を店頭等に陳列し、そのまま任意の数量で販売する用途では使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−137147号公報
【特許文献2】特開2008−183001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のとおり、釣餌用環形動物の保管期間や輸送期間が長期化しており、比較的温度の高い亜熱帯地域等を経由して輸送される場合も多いので、釣餌に必要な活気の維持がより困難になってきている。また、輸送時には、少ない容積でより多くの釣餌用環形動物を、死滅させることなく鮮度よく輸送することが必要とされる。更に、これら釣餌用環形動物の保管、陳列及び販売を行う場合においても、環形動物が互いに干渉できる状態でおこなうのは好ましくなく、少ない手間で任意の数量の販売を行うことが困難であった。
この対策として、従来、釣餌用環形動物を個別に梱包して輸送等を行うための釣餌用環形動物梱包材が用いられている。例えば、図10に示すように、筒状部材81に環形動物9を折り畳むことなく直線状に収納し、貫通孔を設けた栓部材82を用いて筒状部材81の両端の開口を塞ぐ釣餌用環形動物梱包材があった。そして、その釣餌用環形動物梱包材を用いた輸送方法及び取扱方法によって、環形動物に負担が少ない状態で個別に梱包することができ、多数をまとめて湿潤を与えつつ輸送し、手間なく任意の数量で販売することが可能になった。しかしながら、例えば図11及び図12に表されるように、栓部材82には通水のために1又は2以上の貫通孔83が設けられており、通水性をよくするために貫通孔を大きくしようとすると栓部材82の強度を確保することが困難になるという問題があった。また、釣餌用環形動物梱包材の構造を簡略にして、使用する部材の成形加工等を減らして低コストにするとともに取扱いの手間を省く必要があった。
また、釣餌用環形動物の長期間にわたる輸送や保管をしても、その販売時まで鮮度を保つことが必要であり、梱包材に始めに収容した環形動物の全数に対して、販売時に活性な環形動物数の割合(歩留り)をさらに高めることが重要な課題であった。
【0005】
本発明は、上記観点に鑑みてなされたものであり、釣餌用環形動物を個別に梱包して輸送や陳列等をすることができ、販売時まで活性な環形動物の歩留りを大幅に向上させることができる釣餌用環形動物梱包材と、それを用いた釣餌用環形動物の飼育方法及び輸送方法並びに取扱方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、前記管状部材の一方の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記管状部材の略中心軸上で当接させた当接部を設け、その当接部により分けられた2つの貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
2.前記当接部は、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成される前記1.記載の釣餌用環形動物梱包材。
3.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、前記管状部材の一方の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
4.さらに前記管状部材の他方の開口端部において、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより、前記管状部材の管壁の対向する内面の一部を当接させた当接部を設ける前記1.乃至3.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材。
5.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記キャップ部材の略中心軸上で当接させた当接部が設けられ、且つその当接部により分けられた2つの貫通孔が形成されており、前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
6.前記キャップ部材の前記当接部は、前記キャップ部材の管壁を前記キャップ部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成された前記5.記載の釣餌用環形動物梱包材。
7.一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔が形成されており、前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
8.前記1.乃至3.又は前記5.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を塩水中に浸し、釣餌用環形動物をその釣餌用環形動物梱包材内に導入してそのまま塩水中で飼育することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の飼育方法。
9.釣餌用環形動物を収容した前記1.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ輸送することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の輸送方法。
10.釣餌用環形動物を収容した前記1.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのまま15〜30℃の塩水中に浸して保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
11.釣餌用環形動物を収容した前記1.乃至7.のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の、釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材からなり、その一方の開口端部に当接部及び貫通孔を設けた釣餌用環形動物梱包材によれば、管状部材の一方の開口の一部が閉鎖されているため釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ通水性を良くすることができるため釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保ち、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することができる。また、従来に較べて部材数が少なく構造が単純であるため成型が容易であり、安価に製造することができ、取扱いを容易にすることができる。
また、前記当接部をステープラーによる針止め又は熱溶着によって形成する場合には、金型等を用いて管状部材を成型しなくても簡単に釣餌用環形動物梱包材を製造することができる。
【0008】
釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材からなり、その一方の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔を形成した釣餌用環形動物梱包材によれば、管状部材の一方の開口が狭いため釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ水流を良くすることができるため釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保ち、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することができる。また、管状部材の成型後の手間を不要とすることができる。
【0009】
さらに、以上のいずれかの管状部材の他方の開口端部をステープラーにより針止め又は熱溶着する場合には、一方の開口端部を閉じた管状部材に釣餌用環形動物を収容した後に他方の開口端部を閉じることができるため、釣餌用環形動物の逃亡を完全に防止することができる。また、両端の貫通孔を介して適度な水流を与えることができるため、釣餌用環形動物にストレスが少ない湿潤状態を保つことができる。これらによって、釣餌用環形動物の歩留りを更に高めることが可能になる。
【0010】
釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材本体と、その開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とからなり、管状部材本体の少なくとも一方の開口端部にキャップ部材を嵌装した釣餌用環形動物梱包材によれば、キャップ部材の着脱が容易であるため、取扱いの自由度を増すことができる。また、キャップ部材の開口端部に設けられた当接部及び貫通孔により、釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保つことができるため、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。さらに、管状部材本体の両方の開口端部にキャップ部材を嵌装すれば、釣餌用環形動物の逃亡を完全に防止することができ、歩留りを更に高めることができる。
前記キャップ部材の当接部をステープラーによる針止め又は熱溶着によって形成する場合には、金型等を用いてキャップ部材を成型しなくても極めて簡単に釣餌用環形動物梱包材を製造することができる。
【0011】
釣餌用環形動物を折り畳むことなく収納できる長さの管状部材本体と、その少なくとも一方の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とからなり、そのキャップ部材は管状部材本体に嵌装しない側の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔が形成されている釣餌用環形動物梱包材によれば、キャップ部材の成型後の手間を不要とすることができ、キャップ部材の着脱が容易であるため取扱いの自由度を増すことができる。また、キャップ部材の開口が狭いため釣餌用環形動物の逃亡を防ぐことができ、且つ水流を良くすることができるため釣餌用環形動物に好適な湿潤状態を保ち、長期間においても活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することができる。さらに、管状部材本体の両方の開口端部にキャップ部材を嵌装すれば、釣餌用環形動物の逃亡を完全に防止することができ、歩留りを更に高めることができる。
【0012】
開口端部の一方の開口に前記貫通孔を備えた以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を導入し、そのまま塩水中で飼育する釣餌用環形動物の飼育方法によれば、海水中等に釣餌用環形動物梱包材を置くだけで釣餌用環形動物の習性を利用して釣餌用環形動物梱包材の中に釣餌用環形動物を収容し、また飼育することができる。さらに、そのまま又は他方の開口を閉じて、輸送等に移すことができる。
【0013】
以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容し、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ輸送する釣餌用環形動物の輸送方法によれば、釣餌用環形動物を弱らせることなく鮮度を維持して長期間にわたる輸送をすることができ、活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。
【0014】
以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容し、そのまま15〜30℃の塩水中に浸して保管、陳列又は販売を行う釣餌用環形動物の取扱方法によれば、釣餌用環形動物を養生しつつ長期間にわたり店頭に陳列等することができ、販売時まで活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。また、そのまま任意の数で釣餌用環形動物を販売することができる。
また、以上のいずれかの釣餌用環形動物梱包材に釣餌用環形動物を収容し、内部を湿潤状態に保ち、且つ10〜35℃の温度を保ちつつ保管、陳列又は販売を行う釣餌用環形動物の取扱方法によれば、適宜に塩水を補給するのみで釣餌用環形動物の鮮度を維持して店頭に陳列等することができ、販売時まで活性な釣餌用環形動物の歩留りを大幅に向上することが可能になる。また、そのまま任意の数で釣餌用環形動物を販売することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
以下の図面に付した同様の参照符号はいくつかの図を通して同様の部品、同様の機能等を示す。
【図1】一方の開口端部に当接部及び貫通孔を設けた釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための斜視図である。
【図2】両方の開口端部に当接部及び貫通孔を設けた釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための斜視図である。
【図3】本釣餌用環形動物梱包材の開口端部に設けた当接部及び貫通孔の例を説明するための斜視図である。
【図4】図3に示した釣餌用環形動物梱包材のAA’断面図(開口端部のみ)である。
【図5】図3に示した釣餌用環形動物梱包材のB側面図である。
【図6】管状部材の開口端部をステープラーにより針止めした例を説明するための断面図である。
【図7】管状部材の開口端部を細くし、且つ開口が略楕円形状である貫通孔を形成した釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための開口端部の外形図である。
【図8】管状部材本体と、その開口端部に嵌装されるキャップ部材からなる釣餌用環形動物梱包材を説明するための断面図である。
【図9】本発明の釣餌用環形動物梱包材と従来の釣餌用環形動物梱包材による長期間の保管試験の結果である。
【図10】従来の釣餌用環形動物梱包材の例を説明するための斜視図である。
【図11】図10に示した従来の釣餌用環形動物梱包材の栓部材の例を示す斜視図である。
【図12】図10に示した従来の釣餌用環形動物梱包材の栓部材の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
1.釣餌用環形動物梱包材
本発明の釣餌用環形動物梱包材は、釣餌用環形動物を収容するための管状の部材の開口端部に、釣餌用環形動物の逃げ出しを防止するための阻止手段と、その管状の部材内の通水性を確保するための貫通孔とを備えるものである。この阻止手段及び貫通孔は、釣餌用環形動物梱包材を構成する管状の部材の一方の開口端部のみに設けられてもよいし、両端の開口端部に設けられてもよい。
図1は、管状部材2の一方の開口端部3を変形させることによって、前記阻止手段と貫通孔6を設けた釣餌用環形動物梱包材1を表す図である。後述の試験結果に示されるとおり、このように管状部材2の一方の開口端部3に阻止手段及び貫通孔を備え、他方の端部の開口を開放状態としたまま釣餌用環形動物9を輸送等しても、従来に較べて大幅に歩留りが向上するという効果を得ることができる。
また、図2は、管状部材2aの両方の開口端部3に、前記同様の阻止手段と貫通孔6を設けた釣餌用環形動物梱包材1aを表す図である。この場合、一方の開口端部3に阻止手段及び貫通孔6を備えた管状部材2a内に釣餌用環形動物9を収容した後、他方の開口端部3にも同様の加工を施す。両端に形成された貫通孔6によって管状部材2a内に十分な水流を供給することが可能であるため釣餌用環形動物9に好適な環境を与えることができ、釣餌用環形動物9の逃げ出しを完全に防止することができる。その効果として、釣餌用環形動物の歩留りをさらに高めることができる。
【0017】
前記釣餌用環形動物は特に限定されず、ゴカイ、イソメ、オニイソメ等が挙げられる。その大きさは、例えばオニイソメの場合、体長200〜400mm(平均約300mm)、体径4〜8mm(平均約6mm)程度である。釣餌用環形動物の大きさは、その釣餌用環形動物の状態によって変動があるが、以下では、釣餌用環形動物が管状の部材内で直線状となって安静にしている状態の大きさをいう。釣餌用環形動物が自ら折り畳んだ状態となって、前記部材内に大きな空隙部分が生ずる場合があるが、これは問わない。
【0018】
前記管状部材2,2aに用いる材質は、釣餌用環形動物を収納して輸送できる強度を備え、前記阻止手段及び貫通孔を形成するために可撓性を有するものであれば、任意の材質を選択することができる。安価・軽量な点でポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂が好ましい。また、前記各部材は不透明であってもよいが、内部の釣餌用環形動物の向きや状態を確認しやすくするため透明(半透明を含む。)とすることが好ましい。前記各部材の素材は、押出成形法、射出成形法等の任意の方法を用いて製造することができる。
【0019】
管状部材2、2aの大きさは、釣餌用環形動物梱包材内に収容する釣餌用環形動物によって決めることができる。管状部材2、2aの内径は、収容する釣作用環形動物の安静時の体径と同程度か僅かに大きい程度とするのが好ましく、前記体径の1〜1.6倍(好ましくは1.1〜1.5倍)とすることができる。例えば、安静時の体径が6mm程度の釣餌用環形動物の場合には、前記内径を6〜10mmとすることができる。このような内径とすることで、釣餌用環形動物が身体を折り曲げた場合においても無理が掛からず、弱ってしまうのを防ぐことができる。
管状部材2,2aの横断面形状は特に問わず、円形、多角形、楕円形等、様々な形状にすることができる。釣餌用環形動物は横断面形状が円形に近い略楕円形であるため、環形動物の体形にあった管状部材等とする場合、円形又は楕円形とすることができる。また、管状部材の横断面形状を四角形等の多角形とした場合には、縦横に積層して省スペースで保管する際に便利である。
【0020】
また、管状部材2,2aの長さは、その全体のうち釣餌用環形動物を収容することができる収容部分の長さLを釣餌用環形動物の安静時の体長より長くすることが好ましい。収容部分の長さLは、例えば、その体長の1.1〜1.6倍程度の長さとすることができる。すなわち、管状部材2,2aの全体の長さは、前記収容部分の長さLに、両端の開口端部の長さ(例えば各20〜50mm)を加えた長さとすることができる。例えば、安静時の体長が300mm程度の環形動物を収容し、管状部材の両端の開口端部としてそれぞれ長さ25mmを確保することとすれば、管状部材の全長は350〜530mmとなる。これにより、オニイソメ等の釣餌用環形動物を折り畳むことなく直線状に収容することができる。
【0021】
前記管状部材2,2aには、その開口端部を変形させて開口を狭める前記阻止手段を設け且つ貫通孔を形成することができる。阻止手段は、例えば、図3に表されるように、横断面が略円形(イ)である管状部材2、2aの開口端部3において、管壁31の対向する内面の一部を管状部材のほぼ中心軸(ロ)上で当接させた当接部5を設けることにより構成することができる。この場合、当接部5により分けられた貫通孔6が「8」の字状に2つできることとなる。図4は、図3に示された管状部材2、2aの開口端部3のAA’断面図であり、図5はその開口端部をB方向からみた外形図である。
当接部5の上記中心軸(ロ)方向の長さ、及び直径方向の幅、開口端32からの距離等は、収容した釣餌用環形動物の逃亡を防ぎ、且つ管内の通水性を確保するための貫通孔6が確保される限り特に限定されない。例えば、長い貫通孔を形成するために当接部5の中心軸方向の長さを1〜20mm程度とすることができる。また、形成される貫通孔の横断面の大きさを制限するために、管状部材の内径が6mmの場合、当接部5の直径方向の幅を1〜3mm程度とすることができる。
【0022】
形成される貫通孔6の開口及び横断面の形状は特に問わず、円形、楕円形、三角形等、任意の形状でよい。貫通孔の横断面のサイズは、あまり大きくすると釣餌用環形動物が頭部や尻部を貫通孔内に誤って侵入させて傷を負う場合があり、貫通孔が小さすぎると通水性が悪くなって老廃物等を外部へ排出することができなくなる。このため、収納する釣餌用環形動物によって異なるが、貫通孔6の横断面形状を略円形とする場合、その内径を該釣餌用環形動物の安静時の体径の20%〜40%程度とすることが好ましい。例えば、安静時の体径が約6mmの釣餌用環形動物の場合、貫通孔の内径は1.2〜2.5mm程度とすることができる。また、試験を行ったところでは、貫通孔6の横断面形状が円形であるよりも略楕円形であった方が釣餌用環形動物の逃げ出しが少なくなる傾向がある。したがって、貫通孔6の横断面形状を、内周の長さが上記円形の内周と同程度の略楕円形とすることが好ましい。
【0023】
前記当接部5及び貫通孔6を形成する方法は特に限定されない。例えば、金型等を用いて前記樹脂素材を成型することができる。構造が簡単であるため、従来(図11参照)に較べて成型が容易である。また、専用の型を用いて成型しない場合には、図6に示すように、管状部材2、2aの開口端部3の管壁31を管状部材の外側からステープラーを用いて針止めする方法が挙げられる。管状部材の略中心軸に沿ってステープラーの針51により管壁31の対向する内面を圧接し、当接部5を形成することができる。また、当接部5は、管状部材2、2aの管壁31の対向する内面の一部を熱溶着することにより形成されてもよい。その他、当接部5は適宜の止め金具や接着剤等によって形成されてもよい。すなわち、釣餌用環形動物梱包材1、1aは、管状部材2、2aを、金型を用いて成型する方法により製造することができるし、ステープラーを用いて針止めする方法、熱溶着する方法等によっても製造することができる。その他、適宜の止め金具や接着剤を用いて製造されてもよい。
【0024】
前記管状部材2,2aの一方の開口端部を変形させて開口を狭める阻止手段として、図7に示すように、管状部材の開口端部3の横断面の面積が開口に向かって小さくなるように(例えば、開口から長さ5〜50mm程度の部分を、テーパ状又は細管に)形成し、且つその開口が略円形又は略楕円形状である貫通孔7を備えるようにすることができる。この形成方法は特に限定されず、例えば、金型等を用いて前記樹脂素材を成型してもよいし、管状部材の開口端部を熱等により収縮させて形成してもよい。すなわち、開口端部の横断面の面積が開口に向かって小さくなるようにした釣餌用環形動物梱包材2、2aは、管状部材2、2aを、金型を用いて成型する方法により製造することができるし、熱等により収縮させる方法等によって製造することができる。
貫通孔7の横断面形状及び開口を略円形とする場合、前記のとおり、その内径は収容する釣餌用環形動物の安静時の体径の20%〜40%程度とすることが好ましい。また、貫通孔7の横断面形状及び開口を、その内周の長さが上記円形の内周の長さと同程度の略楕円形としてもよい。
【0025】
以上に述べたような阻止手段及び貫通孔を管状部材2aの一方の開口端部に形成した場合、その管状部材2a内に釣餌用環形動物を収容した後、さらにその管状部材2aの他方の開口端部において阻止手段及び貫通孔を加工することができる。すなわち、その他方の開口端部3において、前記と同様に、管壁31を外側から管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めするか熱溶着する等により、管状部材の管壁の対向する内面の一部を当接させた当接部5を設けることができる。これによって、管状部材2aの両端からの釣餌用環形動物の逃げ出しを防止することができる。
【0026】
また、釣餌用環形動物梱包材を管状部材本体と管状のキャップ部材とから構成し、キャップ部材に以上と同様の阻止手段及び貫通孔を設けることができる。例えば、図8に示すように、釣餌用環形動物梱包材1bは、管状部材本体21とキャップ部材22とから構成され、キャップ部材22を管状部材本体21に嵌装するようにすることができる。管状部材本体21は、両端間の径が同一の管とすることができる。キャップ部材22には、管状部材本体21に嵌装しない側の開口端部3において、阻止手段としてその管壁の対向する内面の一部をキャップ部材22の略中心軸上で当接させた当接部5が設けられ、且つその当接部5により分けられた2つの貫通孔6が形成されている。
キャップ部材22に前記当接部5及び貫通孔6を形成する方法は特に限定されず、前記同様、型を用いて成型することができる。また、キャップ部材22の管壁をキャップ部材22の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めすることにより形成してもよいし、キャップ部材22の管壁の対向する内面の一部を熱溶着する等により形成してもよい。
さらに、キャップ部材22に設けられる阻止手段及び貫通孔は、図7に示したように、開口端部を開口に向かって細くする(例えば、開口から長さ5〜50mm程度の部分を、テーパ状又は細管にする)ことによって形成されてもよい。すなわち、キャップ部材22の管状部材本体21に嵌装しない側の開口端部3を、その横断面の面積が開口に向かって小さくなるように形成し、且つその開口が略円形又は略楕円形状である貫通孔7を備えるようにすることができる。形成方法は特に限定されず、例えば、金型等を用いて樹脂素材を成型してもよいし、キャップ部材の開口端部を熱等により収縮させて形成してもよい。
すなわち、釣餌用環形動物梱包材1bを構成するキャップ部材は、金型を用いて成型する方法により製造することができるし、ステープラーを用いて針止めする方法、熱溶着する方法、熱収縮させる方法等によっても製造することができる。その他、適宜の止め金具や接着剤を用いて製造されてもよい。
【0027】
管状部材本体21及びキャップ部材22の材質は、前記管状部材2等と同様、任意に選ぶことができる。また、管状部材本体21の内径や断面形状も同様である。管状部材本体21の長さは、釣餌用環形動物の安静時の体長の1.1〜1.6倍程度の長さとすることができる。キャップ部材22の大きさ及び断面形状は、管状部材本体21に嵌装固定できるものであれば特に問わない。キャップ部材22は管状部材本体21の外側に被せられてもよいし、管状部材本体21に内嵌されてもよい。キャップ部材22と管状部材本体21の嵌め合いの長さは、キャップ部材22が脱落を生じないように適宜に決めることができる。更に、キャップ部材22と管状部材本体21との嵌め合い部分には、キャップ部材22が容易に外れてしまわないように環状又は螺旋状の凹凸部等が形成されてもよい。
キャップ部材22は、管状部材本体21に対して容易に着脱が可能であるため、釣餌用環形動物梱包材の取扱いの自由度を増すことができる。前記釣餌用環形動物梱包材1と同様に、管状部材本体21の一方の端部にのみキャップ部材22を嵌装して輸送等した場合にも、釣餌用環形動物の歩留りを従来に較べて大幅に高めることができる。また、管状部材本体21の両方の端部にキャップ部材22を嵌装した場合には、両端からの釣餌用環形動物の逃げ出しを防止することが可能になる。キャップ部材22は、前記管状部材2の他方の開口端部に嵌装されて用いられてもよい。
【0028】
2.釣餌用環形動物梱包材を用いた飼育方法、輸送方法及び取扱方法
本釣餌用環形動物梱包材を用いて、釣餌用環形動物の飼育をすることができる。このためには、本釣餌用環形動物梱包材を構成する前記管状部材(2、2a)又は前記管状部材本体(21)を、少なくとも一方の開口端部を開放した状態(前記阻止部を未形成の状態)で使用することができる。この前記管状部材(2、2a)又は前記管状部材本体(21)を釣餌用環形動物の存在する塩水中又は海中に浸しておくことにより、釣餌用環形動物の習性を利用して、その管状部材又は管状部材本体内に釣餌用環形動物を導入することができる。そして、釣餌用環形動物を収容した釣餌用環形動物梱包材を、そのまま塩水中又は海中に浸しておくことによって、釣餌用環形動物を飼育することが可能である。塩水又は海水の温度は、10〜35℃程度であることが好ましい(より好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃)。10℃以下の場合は冷えて死んでしまう場合があるし、35℃以上の場合は暑さで弱ったりするために、死滅することが多くなるからである。
【0029】
また、釣餌用環形動物を収容した前記のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、釣餌用環形動物の輸送方法に適用することができる。先ず、本釣餌用環形動物梱包材を構成する前記管状部材(2、2a)又は前記管状部材本体(21)を、少なくとも一方の開口端部を開放した状態(前記阻止部を未形成の状態)で、釣餌用環形動物を管内に収容する。次に、釣餌用環形動物を収容したその管状部材等を使用し、少なくとも一方の開口端部に前記阻止部及び貫通孔を形成し又はキャップ部材を嵌装した釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)として輸送することができる。
その輸送中は、前記釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)の内部を湿潤状態に保ち、且つ10〜35℃(好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃)の温度を保つようにする。釣餌用環形動物梱包材の内部を湿潤状態に保つためには、前記開口端部に形成された貫通孔を介して塩水が供給されるように、適宜に(例えば、10〜30時間ごとに)釣餌用環形動物梱包材内に給水する給水工程を備えることが好ましい。例えば、釣餌用環形動物梱包材は、発泡スチロール製の箱内に横向きにまとめて収納して輸送することができる。その場合、発泡スチロール製の箱の底面部にスポンジ等の多孔体に含水させたシートを敷き詰めることによって、湿潤状態を保つようにすることができる。また、給水工程は、適宜、発泡スチロール製箱内の釣餌用環形動物梱包材が塩水に浸されるように塩水を供給するか、釣餌用環形動物梱包材内を湿潤させるように塩水を噴霧すればよい。
輸送中の環境温度を前記それぞれの範囲に保つ必要性については前記のとおりである。この温度範囲に保つことにより、長期の輸送にも耐えるようにすることができる。
【0030】
また、釣餌用環形動物を収容した前記のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を使用して、釣餌用環形動物の保管、陳列、販売等の取扱いをすることができる。このためには、釣餌用環形動物を収容し、少なくとも一方の開口端部に前記阻止部及び貫通孔を形成し又はキャップ部材を嵌装した釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)を使用することができる。前記輸送方法を使用して輸送された釣餌用環形動物梱包材は、そのまま保管、陳列、販売等に使用することができる。
この釣餌用環形動物の取扱方法は、釣餌用環形動物を収容した釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)を、そのまま15〜30℃(好ましくは20〜30℃)の塩水中に浸した状態で、保管、店頭等における陳列、販売等を行う。塩水中に浸しておくことにより、前記開口端部に形成された貫通孔を介して塩水が供給されるとともに老廃物が管外に排出されるため、釣餌用環形動物を養生しつつ取扱いをすることができる。
また、前記釣餌用環形動物梱包材(1、1a又は1b)は、そのままその内部を湿潤状態に保ち、且つ10〜35℃(好ましくは15〜30℃、特に好ましくは20〜30℃)の温度を保ちつつ、保管、店頭等における陳列、販売等がされてもよい。釣餌用環形動物梱包材の内部を湿潤状態に保つためには、前記開口端部に形成された貫通孔を介して塩水が供給されるように、適宜に(例えば、10〜30時間ごとに)釣餌用環形動物梱包材に通水し又は散水する給水工程を備えることが好ましい。
取扱中の環境温度を前記それぞれの範囲に保つ必要性については前記のとおりである。この釣餌用環形動物の取扱方法により、釣餌用環形動物を1匹単位で任意の数量により販売することが可能であるため至便である。また、この取扱方法により、釣餌用環形動物梱包材を保管後にそのまま更に梱包して配送することもできるため、釣餌用環形動物の通信販売等を容易にすることができる。
【0031】
前記釣餌用環形動物の輸送方法及び取扱方法においては、釣餌用環形動物梱包材に収容した釣餌用環形動物を養生する養生工程を備えることができる。輸送前や輸送後には、釣餌用環形動物が弱っていたり排泄物を多く蓄えていたりすることが多いので、養生を行うことが好ましい。養生工程は、例えば、前記釣餌用環形動物梱包材をそのまま釣餌用環形動物の頭部が上方となるように傾斜させて、15〜30℃(好ましくは18〜30℃、特に好ましくは20〜28℃)の塩水中に浸し、その後、その塩水の水位を上下させることによって行う。好ましくは、塩水の水面高さを一日に2〜4回程度で上下に変化させながら、1〜10日間静置する。水面を上下させることによって、釣餌用環形動物梱包材内の塩水を入れ代えることができ、梱包材内の汚物を除去することができる。環形動物体内の老廃物は大きさが0.1〜0.5mm程度であるので、この工程により貫通孔から梱包材外へ排出され、輸送中や取扱中に梱包材内が老廃物によって汚染されることを防ぐことができる。また、梱包材を傾斜して配置することで、老廃物が梱包材の外に排出されやすく、梱包材を垂直に配置するよりも環形動物に与える負荷を軽減することができる。
【0032】
さらに、前記釣餌用環形動物の輸送方法及び取扱方法において、釣餌用環形動物梱包材に収容した釣餌用環形動物が弱った場合にそれを賦活する賦活工程を備えることもできる。この賦活工程は、例えば、前記釣餌用環形動物梱包材をそのまま15〜30℃(好ましくは18〜30℃、特に好ましくは20〜28℃)の塩水中に1〜3分間程度浸すことによって行うことができる。塩水は、海水か海水と同程度の塩分濃度の塩水に酸素富化(後述)した塩水を用いることが好ましい。このような賦活工程を備えることによって、釣餌用環形動物梱包材内の温度及び湿度を適正に回復させることができ、塩水及びその塩水中の溶存酸素により釣餌用環形動物を賦活させ、鮮度を維持することができる。また、数日から数十日の長期間の保管を行う場合は、このような塩水中に浸したままとすることにより、鮮度が落ちることを防ぐことができる。
【0033】
前記飼育方法、輸送方法及び取扱方法において用いる塩水は、流水であるかどうかは特に問わない。塩水は、釣餌用環形動物の生存に適した塩分濃度とすることが好ましく、海水をそのまま使用してもよいし、調製してもよい。また、その塩水は酸素富化させることができる。酸素富化とは、前記塩水に空気又は酸素ガスをバブルする等の方法を用いて、塩水中の溶存酸素を飽和又は増加させることをいう。
【0034】
また、前記飼育方法、輸送方法及び取扱方法においては、釣餌用環形動物梱包材を密に配列した状態で使用しても釣餌用環形動物が互いに接しあうことがないので、絡まったり、傷つけあったりすることがない。また、釣餌用環形動物のうちの一匹が感染症を起こしたり、死滅したりしても周囲に影響を与えることがない。
【0035】
釣餌用環形動物9を釣餌用環形動物梱包材に収容し、3つの試験条件により長期間にわたり保管したときの歩留りの比較試験を行った。試験に用いた釣餌用環形動物9は体長200〜400mmで平均体長が300mmのオニイソメであり、各試験条件ごとに、オニイソメを収容した釣餌用環形動物梱包材を200個づつ用意した。その釣餌用環形動物梱包材を、含水させたスポンジを敷いた発泡スチロール製の蓋付き箱(縦350mm、横300mm、深さ50mm)内に横向きに詰めて、周囲温度20〜30℃の環境で25日間保管した。また、この試験期間中、釣餌用環形動物梱包材内を湿潤させるように、1日に1回程度、塩水を噴霧した。
3つの条件で試験した結果は図9の表に示すとおりであった。この「条件1」は、貫通孔を設けた栓部材によって管状部材の両端を塞いだ従来の釣餌用環形動物梱包材(図10参照)を用いたものである。「条件2」は、管状部材本体21の一方のみの開口端部にキャップ部材22を嵌装した本発明の釣餌用環形動物梱包材1bを用いた。使用したキャップ部材22は、ステープラーの針止めによって前記当接部5及び貫通孔6を形成したものである。「条件3」は、管状部材2の両方の開口端部に当接部5及び貫通孔6を設けた本発明の釣餌用環形動物梱包材1aを用いた。当接部5は、ステープラーの針止めによって形成した。
図9で、「死滅」は収容した釣餌用環形動物が死んだ釣餌用環形動物梱包材の数であり、「空」は釣餌用環形動物が逃亡して空になった釣餌用環形動物梱包材の数であり、「内部生存」は、内部の釣餌用環形動物が生きている釣餌用環形動物梱包材の数である。例えば、条件2の場合、1日目から5日目までの5日間に、釣餌用環形動物の11匹が死に、8匹が逃亡したため、釣餌用環形動物梱包材内部で生きている釣餌用環形動物は181匹になったことを示している。
この試験の結果、従来の釣餌用環形動物梱包材を使用した条件1の場合、25日間に死滅した釣餌用環形動物の累計は53匹(当初の200匹に対して26.5%)、逃亡した釣餌用環形動物の累計は0匹(0%)であり、25日経過後に生きていた釣餌用環形動物は147匹(73.5%)であった。すなわち、歩留りは73.5%である。
片方にキャップ部材を付けた釣餌用環形動物梱包材1bを使用した条件2の場合、25日間の死滅数は25匹(12.5%)、逃亡数は15匹(7.5%)であり、25日経過後の内部生存数は160匹(歩留り80.0%)であった。この結果から、片方のみに阻止部を設けた釣餌用環形動物梱包材1bの場合にも、歩留を従来に比べて高めることができるといえる。なお、本条件で、逃亡数が多いのは、キャップ部材が外れたためであり、キャップ部材と管状部材本体との嵌め合い部分の摩擦や長さを増す等することによって逃亡数を減らすことが可能であり、歩留りを大幅に高めることができるものと推測される。
両端をステープラーにより針止めした釣餌用環形動物梱包材1aを使用した条件3の場合には、25日間の死滅数は11匹(5.5%)、逃亡数は2匹(1.0%)であり、25日経過後の内部生存数は187匹(歩留り93.5%)であった。したがって、従来に比べて歩留を著しく高めることができるといえる。
本発明による釣餌用環形動物梱包材を使用した条件2及び条件3において、従来に対して歩留を大幅に向上できるのは、前記貫通孔による通水性の向上が寄与しているものと考えられる。
【0036】
なお、本発明においては、以上に記載した実施例に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した実施例とすることができる。
【符号の説明】
【0037】
1、1a、1b;釣餌用環形動物梱包材、2、2a;管状部材、21;管状部材本体、22;キャップ部材、3:開口端部、31;管壁、5;当接部、6、7:貫通孔、9;釣餌用環形動物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、
前記管状部材の一方の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記管状部材の略中心軸上で当接させた当接部を設け、その当接部により分けられた2つの貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項2】
前記当接部は、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成される請求項1記載の釣餌用環形動物梱包材。
【請求項3】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、
前記管状部材の一方の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項4】
さらに前記管状部材の他方の開口端部において、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより、前記管状部材の管壁の対向する内面の一部を当接させた当接部を設ける請求項1乃至3のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材。
【請求項5】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、
前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記キャップ部材の略中心軸上で当接させた当接部が設けられ、且つその当接部により分けられた2つの貫通孔が形成されており、
前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項6】
前記キャップ部材の前記当接部は、前記キャップ部材の管壁を前記キャップ部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成された請求項5記載の釣餌用環形動物梱包材。
【請求項7】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、
前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔が形成されており、
前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項8】
請求項1乃至3又は請求項5乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を塩水中に浸し、釣餌用環形動物をその釣餌用環形動物梱包材内に導入してそのまま塩水中で飼育することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の飼育方法。
【請求項9】
釣餌用環形動物を収容した請求項1乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ輸送することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の輸送方法。
【請求項10】
釣餌用環形動物を収容した請求項1乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのまま15〜30℃の塩水中に浸して保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
【請求項11】
釣餌用環形動物を収容した請求項1乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
【請求項1】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、
前記管状部材の一方の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記管状部材の略中心軸上で当接させた当接部を設け、その当接部により分けられた2つの貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項2】
前記当接部は、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成される請求項1記載の釣餌用環形動物梱包材。
【請求項3】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材からなる釣餌用環形動物梱包材であって、
前記管状部材の一方の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔を形成したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項4】
さらに前記管状部材の他方の開口端部において、前記管状部材の管壁を前記管状部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより、前記管状部材の管壁の対向する内面の一部を当接させた当接部を設ける請求項1乃至3のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材。
【請求項5】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、
前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部において、管壁の対向する内面の一部を前記キャップ部材の略中心軸上で当接させた当接部が設けられ、且つその当接部により分けられた2つの貫通孔が形成されており、
前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項6】
前記キャップ部材の前記当接部は、前記キャップ部材の管壁を前記キャップ部材の略中心軸に沿ってステープラーを用いて針止めし、又は熱溶着することにより形成された請求項5記載の釣餌用環形動物梱包材。
【請求項7】
一の釣餌用環形動物を折り畳むことなく略直線状に収納できる長さの管状部材本体と、前記管状部材本体の開口端部に嵌装される管状のキャップ部材とを備えた釣餌用環形動物梱包材であって、
前記キャップ部材は、前記管状部材本体に嵌装しない側の開口端部を開口に向かって細くし、且つその開口が略楕円形状である貫通孔が形成されており、
前記管状部材本体の少なくとも一方の開口端部に前記キャップ部材を嵌装したことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材。
【請求項8】
請求項1乃至3又は請求項5乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を塩水中に浸し、釣餌用環形動物をその釣餌用環形動物梱包材内に導入してそのまま塩水中で飼育することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の飼育方法。
【請求項9】
釣餌用環形動物を収容した請求項1乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ輸送することを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の輸送方法。
【請求項10】
釣餌用環形動物を収容した請求項1乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのまま15〜30℃の塩水中に浸して保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
【請求項11】
釣餌用環形動物を収容した請求項1乃至7のいずれかに記載の釣餌用環形動物梱包材を、そのままその内部を湿潤状態に保ち且つ10〜35℃の温度を保ちつつ保管、陳列又は販売を行うことを特徴とする釣餌用環形動物梱包材を用いた釣餌用環形動物の取扱方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2011−55809(P2011−55809A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−212429(P2009−212429)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(597168044)株式会社ヤナギ (2)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【出願人】(597168044)株式会社ヤナギ (2)
【Fターム(参考)】
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