説明

鉄を含有するリン酸塩吸着剤を調製するための製造プロセス

本発明は、鉄を含有するリン酸塩吸着剤を製造するための新規の製造プロセスに関し、具体的には、有益な薬理学的性質を示す、鉄(III)に基づくリン酸塩吸着剤を製造及び単離するためのプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄を含有するリン酸塩吸着剤を製造するための新規のプロセス、その使用、及び、鉄を含有するリン酸塩吸着剤を含有する医薬組成物に関する。
【0002】
本発明は、鉄(III)に基づくリン酸塩吸着剤を製造するための製造プロセスを提供する。具体的には、鉄(III)に基づくリン酸塩吸着剤を、容易に包装される形態で、例えば、直接的な小袋(sachet)充填のために好適な乾燥粉末として製造及び単離するためのプロセスが提供される。
【背景技術】
【0003】
リンは、骨の無機化、細胞の構造、遺伝子コード化及びエネルギー代謝のために非常に重要である。多くの有機形態及び無機形態が存在する。リンはほぼすべての食物に存在しており、食事形態のGI吸収が非常に効率的である。リンの恒常性が通常、いくつかの機構(腎臓排出、細胞放出、ホルモン制御など)を介して維持される。(GI吸収、外因的投与又は細胞放出からの)リン負荷が腎臓排出及び組織取り込みを越えるとき、高リン酸塩血症が生じる。
【0004】
食事において含有されるリン酸塩のレベルが高いこと、及び、先行技術において入手可能なリン酸塩吸着剤、又は、先行技術において記載されるリン酸塩吸着剤の吸着能が比較的低いことの理由から、リン酸塩の血中レベルを効率的に制御するためにはそのような吸着剤を高用量で投与することが必要である。従って、医薬品として使用可能であるための高いリン酸塩結合能を有するリン酸塩吸着剤を提供することが求められている。
【0005】
さらには、生理学的条件下での鉄の低下した放出及び吸収によって特徴づけられるリン酸塩吸着剤を提供することが求められている。さらには、均一かつ安定であり、また、容易に配合及び/又は包装することができる吸着剤をもたらす製造プロセスで、吸着剤の性質に影響を及ぼすことなく、すなわち、そのリン酸塩結合能に影響を及ぼすことなく、大規模化で実施することができる製造プロセスを提供することが求められている。
【0006】
驚くべきことに、専用の反応条件を多核鉄の製造プロセスの期間中に使用することによって、リン酸塩結合能が先行技術のリン酸塩吸着剤よりも高い、具体的には、先行技術において記載される鉄系リン酸塩吸着剤よりも高い、多核鉄(III)に基づくリン酸塩吸着剤を調製することが可能であることが見出されている。
【0007】
医薬品として使用することができる鉄系化合物を得るためには、再現性のある高いリン酸塩結合能を有する製造物をもたらす製造プロセスを有することが必要である。この必要性は、大きく規模拡大する場合には特に満たされなければならない。多量の均一な鉄(III)系リン酸塩吸着剤を、例えば、数グラムからその工業的規模に至るまでの多量の均一な鉄(III)系リン酸塩吸着剤を、適切な反応条件を使用することによって、すなわち、熱ストレス期間中における安定剤(例えば、スクロースなど)を使用することによって、及び/又は、生成物を穏和な方法(例えば、噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥など)により単離することによって調製することが可能であることが見出されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明によれば、本発明の医薬組成物は、本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含有する医薬組成物を示す。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明には、下記の工程を含む、組成物を調製するためのプロセスが含まれる:
(i)鉄(III)塩の水溶液を、pHが3〜10の間(例えば、4〜9の間、例えば、6〜8の間、好ましくは約7)である懸濁物を形成するために塩基(例えば、塩基水溶液(aqueous base))と混合し(例えば、同時に混合し)、懸濁物を放置する工程;
(ii)形成される沈殿物を単離し、場合により、例えば、水により洗浄する工程、
(iii)沈殿物を、鉄分含有量が懸濁物の約3重量%〜16重量%である懸濁物を得るために、例えば、水に懸濁する工程;
(iv)単離された固形物の鉄分含有量が鉄の重量比で約10%〜約50%である懸濁物を得るために、1つ又はそれ以上の炭水化物及び/又はフミン酸を加える工程;及び
(v)得られたリン酸塩吸着剤を、ろ過、デカンテーション、噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって、好ましくは噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって、最も好ましくは流動床噴霧乾燥によって単離する工程。
【0010】
工程(i)において、鉄(III)塩の水溶液は、塩基水溶液により、最初に酸化水酸化鉄(iron oxide hydroxide)の核形成を引き起こし、次いでその沈殿形成を引き起こす。核形成を不溶性炭水化物(例えば、デンプン)の存在下で行うことができ、又は、炭水化物を、核形成の後、沈殿形成の前に加えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の1つの実施形態において、鉄(III)塩の水溶液が、不溶性炭水化物の存在下において、例えば、デンプンの存在下において塩基水溶液に混合される。場合により、その後、さらなる不溶性炭水化物が加えられる。本発明の別の実施形態において、不溶性炭水化物が、塩基水溶液を鉄塩と混合した後でのみ加えられ、例えば、鉄塩の沈殿形成が始まった後で加えられる。
【0012】
鉄塩は、塩化鉄(III)、硝酸鉄(III)又は硫酸鉄(III)であり得る。好ましくは、鉄塩は塩化鉄であり、例えば、固体の塩化鉄(III)六水和物である。
【0013】
鉄(III)塩の水溶液は、具体的には、本明細書中上記において定義されるような鉄(III)塩の水における溶液であり得る。鉄塩の溶液は鉄塩の総重量に基づいて約3wt/wt%〜約35wt/wt%の鉄塩を含むことができ、例えば、約3wt/wt%〜約25wt/wt%の鉄塩を含むことができ、好ましくは約3wt/wt%〜約16wt/wt%の鉄塩を含むことができる。好ましくは、鉄塩が鉄塩の総重量に基づいて約3wt/wt%〜約35wt/wt%(例えば、約3wt/wt%〜約25wt/wt%、好ましくは約3wt/wt%〜約16wt/wt%)である塩化鉄(III)の溶液が使用される。
【0014】
使用することができる塩基は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物又は炭酸塩であり得る。炭酸アルカリ、重炭酸アルカリ及びアルカリ金属水酸化物(例えば、ナトリウムの炭酸塩、重炭酸塩及び水酸化物)が好ましい。具体的には、塩基は、LiOH、KOH、NaOH、NaHCO、NaCO、Ca(OH)、Mg(OH)、LiCO、KCO、CaCO、MgCOから選択することができ、好ましくはNaCOであり得る。塩基溶液は溶液の総体積に基づいて約20vol%〜約30vol%の塩基を含むことができ、例えば、約22vol%〜約27vol%の塩基(例えば、約25.5vol%の塩基)を含むことができる。
【0015】
塩基水溶液は、本明細書中上記において定義されるような塩基を含有する水溶液からなり得る。
【0016】
塩基の量が、所望されるpHを達成するために選ばれ、例えば、鉄(III)塩の水溶液との混合物から生じる溶液のpHを約3〜約10の間(好ましくは約6〜約8の間、より好ましくは約7)のpHに調節するために選ばれる。
【0017】
本発明の好ましい実施形態において、工程(i)において、溶液のpHが、混合の期間中、約6〜約8の間(好ましくは約7)のpHで一定に維持される。鉄塩及び塩基を同時に加えることによって、pHを、プロセス全般にわたって、所望される値に調節することができ、かつ、所望される値で維持することができる。
【0018】
本発明によれば、反応が、特に工程(i)が好ましくは、約1℃〜約20℃の間の温度で行われ、好ましくは約2℃〜約10℃の間の温度(好ましくは約5℃)で行われる。別の実施形態において、工程(i)が周囲温度で行われる。
【0019】
本発明によれば、工程(i)で得られる沈殿物は、少なくとも1回、洗浄することができる。
【0020】
本発明によれば、工程(ii)において、得られた沈殿物が、例えば、デカンテーション、ろ過、遠心分離によって単離され、好ましくはデカンテーションによって単離され、その後、洗浄される。洗浄が水又はNaHCOの水溶液により行われ、好ましくは、水により行われる。水による洗浄と、NaHCOによる洗浄との組合せを使用することができる。沈殿物が1回又は数回洗浄され、好ましくは数回洗浄される。洗浄を、不純物のレベルが、事前に定められたレベルにまで低下するまで行うことができる。好ましくは、2回〜5回の洗浄が行われ、より好ましくは、3回〜5回の洗浄が行われる。それぞれの洗浄操作の後で、水又は洗浄液が、デカンテーション、ろ過、遠心分離によって除かれ、好ましくはデカンテーションによって除かれる。好ましくは、生成物は完全には乾燥されない。
【0021】
その後、生成物は水に再懸濁される。最少量の水が、懸濁物が処理され得るように必要とされる。例えば、水/最終的リン酸塩吸着剤の量比が約0.8〜約2(好ましくは1.1〜1.5、より好ましくは約1)であり得る。
【0022】
リン酸塩吸着剤の得られた水性懸濁物は、大まかには鉄分含有量が約2重量%〜約16重量%(好ましくは約3%〜約8%)であり、かつ、好ましくはpH値が約6〜8の範囲にある。
【0023】
工程(ii)に続いて、懸濁物は、しばらくの間、例えば、1時間を超えて、好ましくは1時間〜5時間の間中よどませることができる。その時間中、懸濁物は撹拌することができる。
【0024】
本発明によれば、工程(iv)において、炭水化物は可溶性炭水化物又は不溶性炭水化物又はそれらの混合物を含む。
【0025】
本発明によれば、可溶性炭水化物はグルコース誘導体であり得る。グルコース誘導体を、アガロース、デキストラン、デキストリン、デキストラン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、スクロース、マルトース、ラクトース、マンニトール及びそれらの混合物から選択することができる。好ましいグルコース誘導体が、スクロース、マルトデキストリン及びそれらの混合物である。最も好ましいグルコース誘導体がスクロースである。
【0026】
本発明によれば、工程iv)において加えられる可溶性炭水化物(例えば、グルコース誘導体)の量は、リン酸塩吸着剤の重量に基づいて約5重量%〜約15重量%(好ましくは約5重量%〜約10重量%)であり得る。好ましくは、約5重量%〜約15重量%のスクロース、又は、約5重量%〜約10重量%のスクロースが使用される。
【0027】
本発明によれば、不溶性炭水化物はデンプンであり得る。デンプンは、トウモロコシ(corn)、コムギ、コメ、トウモロコシ(maize)、エンドウマメ又はジャガイモのデンプン、及び、それらの混合物から選択することができる。デンプンはまた、可溶性デンプンの一部分(例えば、マルトデキストリン)を含有する。例えば、デンプンは、80重量%以上のジャガイモデンプン及び20重量%以下の可溶性デンプンの混合物、例えば、80重量%以上のジャガイモデンプン及び20重量%以下のマルトデキストリンの混合物であり得る。本発明の別の実施形態において、デンプンは食物繊維によって置き換えられ、例えば、(Novartis AGによって製造される)Benefiber(登録商標)によって置き換えられる。好ましくは、デンプンはジャガイモデンプンである。
【0028】
好ましくは、例えば1gの不溶性炭水化物(例えば、デンプン)が約0.5g〜約30gの鉄塩あたり加えられ、例えば、約1.0g〜約20gの鉄塩あたり加えられ、例えば、約1.5g〜約10gの鉄塩あたり加えられ、例えば、約2.0g〜約15gの鉄塩あたり加えられる。
【0029】
工程(iv)において、保存剤を加えることができ、例えば、可溶性の保存剤(例えば、クロルヘキシジン又はp−ヒドロキシ安息香酸エステルなど)、又は、アルコール(例えば、エタノール、メタノール、2−プロパノールなど)、又は、それらの組合せを加えることができる。好ましくは、保存剤はアルコールである。好ましいアルコールはエタノールである。
【0030】
工程(v)は、リン酸塩吸着剤を単離することからなる。そのような単離を、ろ過、デカンテーション、噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって行うことができる。好ましくは、噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥(例えば、流動床噴霧乾燥)が行われる。予想外ではあったが、そのような技術は、賦形剤を使用することなく、直接的な小袋充填のために好適であり、かつ、その貯蔵安定性が著しく優れている十分に粒状化された易流動性かつ粉塵非含有の粉末を製造することをもたらすことが見出された。そのような粉末は、例えば、加工時又は包装時において容易に操作することができる。
【0031】
本発明によれば、本明細書中上記において記載されるように、高いリン酸塩結合能を有する鉄(III)系吸着剤を乾燥粉末の形態で製造するためのプロセスであって、生成物を噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって単離する工程をさらに含むプロセスが提供される。流動床噴霧乾燥が好ましい(例えば、適切なプロセスパラメーターを使用するNIRO PSD−4)。
【0032】
驚くべきことに、流動床噴霧乾燥が、直接的な小袋充填のために好適であるか、又は、粒状物を生じさせるために容易に粒状化することができる十分に粒状化された易流動性かつ粉塵非含有の粉末を直接的かつ連続的に製造するために特に好適であることが見出されている。
【0033】
本発明は、下記の工程を含む、組成物を調製するためのプロセスを開示する:
(i)鉄(III)塩の水溶液を、pHが3〜10の間である懸濁物を形成するために少なくとも炭酸ナトリウムと混合する工程、
(ii)形成される沈殿物を単離する工程、
(iii)沈殿物を水溶液に懸濁する工程、
(iv)デンプン及びスクロースを加える工程、及び
(v)工程(iv)の調製物を噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって単離する工程。
【0034】
さらに、配合工程を工程(v)の後で行うことができる。例えば、リン酸塩吸着剤の混合、粒状化、カプセル化及び/又は錠剤化を、必要ならば、適切な賦形剤とともに行うことができる。
【0035】
本発明によれば、炭水化物及び/又はフミン酸を含む鉄系リン酸塩吸着剤が提供され、例えば、可溶性炭水化物又は不溶性炭水化物又はそれらの混合物を含む鉄系リン酸塩吸着剤が提供される。可溶性炭水化物の例には、スクロース、マルトデキストリン、アガロース、デキストラン、デキストリン、セルロース、マルトース、ラクトース、マンニトール又はそれらの混合物が含まれる。好ましい可溶性炭水化物がスクロースである。不溶性炭水化物の例には、デンプン、アガロース、デキストラン、デキストリン、セルロースが含まれる。好ましい不溶性炭水化物がデンプンである。
【0036】
1つ又はそれ以上のカルシウム塩(例えば、酢酸カルシウムなど)を加えることができる。好適なカルシウム塩の例には、無機酸又は有機酸の塩が含まれ、具体的には酢酸カルシウムが含まれる。
【0037】
本発明の1つの実施形態において、鉄系リン酸塩吸着剤は、多核酸化水酸化鉄(III)、デンプン及びグルコース誘導体(例えば、スクロース又はマルトデキストリン、好ましくはスクロース)により形成される複合体として定義することができる。好ましい実施形態において、多核酸化水酸化鉄が吸着剤母材(例えば、デンプン)に結合させられる。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、本発明の化合物は、酸化水酸化鉄(III)によって覆われ、かつ、場合により水溶性炭水化物によって安定化されるデンプン粒子を含む。
【0039】
本発明のさらにさらなる態様において、製造物の総重量に基づいて少なくとも約20重量%の鉄分(例えば、少なくとも約25重量%の鉄分、例えば、約30重量%の鉄分)を含有する、酸化水酸化鉄(III)を含有する新規のリン酸塩吸着剤が提供される。本発明の別の態様において、本発明の化合物の鉄分含有量は製造物の総重量に基づいて約20重量%〜約50重量%であり、例えば、約40重量%〜約50重量%である。
【0040】
好ましくは、本発明のリン酸塩吸着剤は、鉄(III)を、場合によりフェリヒドリト(ferrihydrite)に混合されて含む。好ましい実施形態において、リン酸塩吸着剤の多核酸化水酸化鉄はガンマ−酸化水酸化鉄又はベータ−酸化水酸化鉄からなり、好ましくは、ベータ−酸化水酸化鉄、又は、フェリヒドリトとのその混合物からなる。
【0041】
本発明の別の実施形態において、リン酸塩吸着剤の多核酸化水酸化鉄はX線的非晶質である。
【0042】
従って、本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤は、高リン酸塩血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症軽減(hyperparathyroidism reduction)、心臓血管系の罹患及び死亡(in cardiovascular morbidity and mortality)、腎性骨ジストロフィー、カルシフィラキシー及び軟組織石灰化の治療又は予防において有用である。具体的には、本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤は、ヒト及び温血動物において、特に伴侶動物(例えば、イヌ及び特にネコなど)において高リン酸塩血症の治療及び/又は予防のために好適である。
【0043】
本発明のリン酸塩吸着剤、及び、本発明のリン酸塩吸着剤を含む医薬組成物は、高リン酸塩血症の患者においてより特に有用であり、例えば、透析依存患者(例えば、血液透析)のために、又は、進行した慢性腎疾患(CKD)、慢性腎不全、慢性腎機能不全、末期腎疾患に苦しむ患者のためにより特に有用である。
【0044】
本発明のリン酸塩吸着剤、及び、本発明のリン酸塩吸着剤を含む医薬組成物は、そのような治療を必要としている対象において、例えば、長期に及ぶ血液透析を受けている患者において、前記対象に本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有効量を投与することによって、血清リン酸塩レベル及び血清リン酸カルシウム生成物レベルを、正常な血清カルシウムレベルを維持しながら制御するためにより特に有用である。
【0045】
本発明の別の実施形態において、本発明のリン酸塩吸着剤、及び、本発明のリン酸塩吸着剤を含む医薬組成物はまた、例えば、透析を受けている患者において、例えば、長期に及ぶ血液透析を受けている患者において、前記対象に本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有効量を投与することによって、無機リン酸塩を、透析液、全血又は血漿から選択的に除くために、或いは、無機リン酸塩を、透析液、全血又は血漿から排出するために有用である。
【0046】
本発明による医薬組成物はどのような従来の形態でも配合することができ、好ましくは経口投薬形態で配合することができ、例えば、粉末剤、粒剤、顆粒剤、カプセル剤、サシェ剤(sachet)、スティックパック(stick pack)、ビン入り剤(場合により、適切な服用システム(例えば、較正済スプーン)と共に)、錠剤、分散性錠剤、フィルム被覆錠剤、又は、独特に被覆された錠剤で配合することができる。
【0047】
本発明による医薬組成物はまた、半固体の配合物として配合することができ、例えば、本明細書中下記において定義されるような水性又は非水性のゲル、飲み込み可能なゲル、噛むのに適した棒状物、速く分散する投薬物、クリームボールの咀嚼可能な投薬形態物、咀嚼可能な投薬形態物、又は、食用に適した小袋物として配合することができる。
【0048】
好ましい配合物は、粉末剤、顆粒剤、錠剤(例えば、分散性錠剤)である。
【0049】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は、様々な粉末容器(例えば、ビン、カプセル、小袋又はスティックパックなど)に場合により充填される粉末又は粒状化された製造物の形態(すなわち、粒状化された粉末剤又は顆粒剤)で調製される。必要に応じて、そのような小袋又はスティックパックには、子供には扱えない、容易に開けるための特徴が施される。本明細書中下記において定義されるような滑剤を、例えば、本発明のリン酸塩吸着剤(例えば、本明細書中上記において定義されるような製造プロセスに従って調製されるような本発明のリン酸塩吸着剤)がカプセルに充填される場合には加えることができる。
【0050】
粒状化された製造物を、乾式粒状化(例えば、ローラー圧縮)によって、或いは、例えば、流動床ミキサー又は高剪断ミキサーにおける湿式粒状化によって調製することができる。粒状化を、粒状物の機械的安定性を改善するために、結合剤(例えば、MCC)の存在下で行うことができる。その後、粒状物を、例えば、ビン、カプセル、小袋又はスティックパックに充填することができる。本発明の1つの実施形態において、そのような充填を自動運転システムによって行うことができる。小袋又はスティックパックは約0.5g〜10gの間の粒状化された製造物を含有することができ、例えば、約0.5g〜5gの間の粒状化された製造物を含有することができる。
【0051】
本発明の医薬組成物は結合剤を含有することができ、例えば、乾燥結合剤、例えば、スクロース又は微結晶セルロース(MCC)などを含有することができる。
【0052】
本発明の別の実施形態において、本発明の医薬組成物は滑剤を含有することができ、例えば、ステアリン酸Mg又は親水性の滑剤(例えば、PEG6000又はPEG4000など)を含有することができる。本発明は、鉄(III)系リン酸塩吸着剤を、例えば、粉末又は粒状物として含有し、かつ、好ましくはさらに滑剤を含むカプセルを提供する。
【0053】
本発明の1つの実施形態によれば、医薬組成物は錠剤の形態である。より良好な適用性又は区別化の容易さのために、錠剤のその後のフィルム被覆を行うことができる。
【0054】
錠剤は、純粋な粉末としてのリン酸塩吸着剤を、すなわち、賦形剤を何ら含有することを伴わないリン酸塩吸着剤を錠剤化することによって、例えば、そのようなリン酸塩吸着剤を直接に圧縮することによって製造することができる。
【0055】
本発明の別の実施形態において、錠剤が、純粋な粉末を、すなわち、賦形剤を伴わないリン酸吸着剤の粉末を、好適な賦形剤と共に、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、滑剤及びそれらの混合物から選択される賦形剤などと共に圧縮することによって調製される。
【0056】
本発明のさらに別の実施形態において、錠剤が、粒状化された粉末(すなわち、「内側相」)をさらなる賦形剤(「外側相」)と共に圧縮することによって得られる。本発明による医薬組成物の内側相は、リン酸塩吸着剤と、充填剤、結合剤、崩壊剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの賦形剤とを含むことができる。本発明による医薬組成物の外側相は、流動剤、滑剤、充填剤、崩壊剤及びそれらの混合物から選択される少なくとも1つの賦形剤を含むことができる。好ましくは、外側相は、流動剤、滑剤、並びに、場合により充填剤及び/又は崩壊剤を含む。
【0057】
本発明による医薬組成物は、加工性を提供するために充填剤を含むことができる。
【0058】
様々な好適な充填剤物質が当分野にとって周知であり(例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Ed. (1990), Mack Publishing Co., Easton, PA, pp. 1635-1636を参照のこと)、これらには、微結晶セルロース、ラクトース及び他の炭水化物、デンプン、アルファ化デンプン(例えば、デンプン1500R(Colorcon Corp.))、トウモロコシデンプン、リン酸二カルシウム、重炭酸カリウム、重炭酸ナトリウム、セルロース、リン酸カルシウム二塩基性無水物、糖、塩化ナトリウム、並びに、それらの混合物が含まれ、それらの中で、ラクトース、微結晶セルロース、アルファ化デンプン及びそれらの混合物が好ましい。その優れた崩壊特性及び圧縮特性のために、微結晶セルロース(Avicel規格品、FMC Corp.)、及び、微結晶セルロースと、1つ又はそれ以上のさらなる充填剤(例えば、トウモロコシデンプン又はアルファ化デンプン)とを含む混合物が特に有用である。好ましくは、充填剤は微結晶セルロースである。
【0059】
充填剤を医薬組成物の総重量に基づいて約10重量%〜40重量%の量で存在させることができ、好ましくは20重量%〜40重量%の量で存在させることができ、より好ましくは約30重量%の量で存在させることができる。
【0060】
本発明の医薬組成物は下記のクラスの賦形剤もまた含有することができる:
a)周知の錠剤化用結合剤(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、デンプン、アルファ化デンプン(デンプン1500)、ゼラチン、糖、天然ゴム及び合成ゴム、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、低置換ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアセタート、ポリアクリラート、ゼラチン、天然ゴム及び合成ゴムなど)、微結晶セルロース、及び、前記物質の混合物。好ましい実施形態において、結合剤は、低置換ヒドロキシプロピルセルロースHPC(例えば、HPセルロース−LH22)又はヒドロキシプロピルメチルセルロースHPMC(例えば、3cps又は6cps)からなる。
錠剤化用結合剤を医薬組成物の総重量に基づいて約1重量%〜約10重量%の間で含むことができ、好ましくは約1重量%〜約5重量%の間で含むことができる。好ましい実施形態において、結合剤が医薬組成物の総重量に基づいて約3重量%で使用される。
b)崩壊剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、架橋されたナトリウムカルボキシメチルセルロース(クロスカルメロースナトリウム)、クロスポビドン、ナトリウムデンプングリコラート。好ましい崩壊剤がクロスポビドン及びクロスカルメロースナトリウムである。
崩壊剤を医薬組成物の総重量に基づいて約3重量%〜約15重量%の間で含むことができ、好ましくは約5重量%〜約10重量%の間で含むことができる。例えば、崩壊剤は、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム又はそれらの混合物であり、医薬組成物の総重量に基づいて約10重量%で含有される。
c)滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、グリセリルベヘナート、水素化植物油、カルナウバワックスなど、ポリエチレンオキシド(例えば、PEG6000又はPEG4000など)。好ましい実施形態において、滑剤はステアリン酸マグネシウムである。滑剤、例えば、ステアリン酸マグネシウムを医薬組成物の総重量に基づいて約0.5wt%から約5wt%まで存在させることができ、例えば、約3重量%から約5重量%まで存在させることができ、好ましくは約2重量%から約3重量%まで存在させることができる。
d)流動剤、例えば、二酸化ケイ素又はタルク、好ましくは、コロイド状の二酸化ケイ素(例えば、Aerosil)。流動剤、例えば、コロイド状の二酸化ケイ素を医薬組成物の総重量に基づいて約0.1重量%〜2重量%で存在させることができ、例えば、0.5重量%で存在させることができる。
e)接着防止剤又は流動促進剤、例えば、タルク;
f)甘味剤;
g)不透明化媒体又は着色媒体、例えば、二酸化チタン、酸化鉄又はアルミニウムレーキ;
h)香味用媒体;
i)酸化防止剤。
【0061】
本発明によれば、本明細書中上記において記載されるように、鉄(III)系リン酸塩吸着剤と、滑剤と、場合により、充填剤、結合剤、崩壊剤及び流動剤から選択される少なくとも1つのさらなる賦形剤とを含有する錠剤が提供される。錠剤はさらに、本明細書中上記において記載されるように、接着防止剤、流動促進剤、甘味剤、不透明化媒体又は着色媒体、及び、香味用媒体から選択される少なくとも1つの賦形剤を含むことができる。
【0062】
錠剤は被覆される場合があり、例えば、フィルム被覆を含む場合がある。本発明の医薬組成物に適用することができる、フィルム被覆組成物における好適なフィルム形成剤の様々な例は、例えば、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、又は、親水性ポリマー(例えば、ジメチルアミノエチルメタクリラートを官能基として含有するカチオン性ポリマー(例えば、Eudragit E及びEPO)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースなど)などを含み、これらの中で、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ましい。
【0063】
フィルム被覆組成物の成分には、可塑剤、例えば、従来の量でのポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール6000)、トリエチルシトラート、ジエチルフタラート、プロピレングリコール、グリセリン、並びに、上記の不透明剤(例えば、二酸化チタンなど)及び着色剤(例えば、酸化鉄、アルミニウムレーキなど)が含まれる。好ましくは、Sepifilm混合物又はOpadry混合物としての乾燥混合物(後者はColorcon Corp.によって調製される)が使用される。これらの製造物は、水性のフィルム被覆懸濁物にさらに加工される、フィルム形成ポリマー、不透明剤、着色剤及び可塑剤の個々に調製された乾燥予備混合物であり得る。
【0064】
フィルム被覆は一般には、医薬組成物の総重量に基づいて約1重量%〜10重量%(好ましくは約2重量%〜6重量%)の錠剤の重量増大を達成するために適用することができる。
【0065】
フィルム被覆は、水及び/又は従来の有機溶媒(例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール)、ケトン(アセトン)などを使用して好適な被覆用槽又は流動床装置において従来の技術によって適用することができる。
【0066】
本発明の別の実施形態において、鉄(III)系リン酸塩吸着剤が、独特に被覆された錠剤として配合される。
【0067】
本発明による錠剤は、鉄(III)系リン酸塩(薬物物質)の直接圧縮、及び、高濃度のステアリン酸Mg(例えば、約3%〜約5%)の添加によって作製することができる。
【0068】
錠剤はさらに、例えば、HPMC 3cPs、HP−Cellulose LH−22としての結合剤を含むことができる。
【0069】
静電乾燥粉末堆積プロセスは、多量の材料を加えることなく錠剤の構造的一体性を増大させることができ、また、投薬形態物の独特の外観のための機会を与える。
【0070】
錠剤は、例えば、下記のように、静電乾燥粉末堆積プロセスによって被覆することができる。被覆用混合物が、ポリマー(好ましくは、Eudragit、例えば、Eタイプ、RSタイプ、Lタイプ、RLタイプ、及び、加えて、PVP/VA、HPMPC、HPMCAS)、着色剤(例えば、二酸化チタン)及び他の添加物(例えば、PEG3000)の混合物の溶融押出しによって調製される。作製された溶融押出し物を微粉化するさらなる工程が場合により行われる(例えば、約7ミクロン〜10ミクロン)。
【0071】
被覆プロセスは、i)コアを、電荷を有し、被覆用チャンバーを通って運ばれ、かつ、逆の電荷を有する被覆用粉末をコア表面に付着するホイールに(例えば、真空によって)固定すること、ii)ホイール上の粉末層状コアを、コート層が融解するIRランプのところに運ぶこと、iii)コアを、隣接する第2のホイールに移し、このプロセスを錠剤コアの底部部分のために繰り返すことからなり得る。典型的なコート層重量がコア重量の3%〜4%であり、厚さが約20μm〜50μmである。
【0072】
熱固定工程:融解サイクルは製造物毎に変化するが、典型的には面あたり80秒前後である。これには、錠剤を室温から加熱し、その結果、錠剤の表面における温度がおよそ100℃に達し、かつ、錠剤コアでは、約20秒間にわたっておよそ70℃に達するようにすることが含まれる。
【0073】
本発明によれば、本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤はまた、半固体の配合物として配合することができる。そのような組成物は、特に高齢者及び小児にとっては快適に飲み込むことができ、また、医薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして見なされる場合がある。さらに、そのような半固体の投薬形態物は、そのような半固体の投薬形態物が多回服用容器又は単回服用容器に充填され得るという利点を有する。
【0074】
本発明の1つの実施形態において、本発明の組成物は水性のゲル配合物の形態である。そのような水性ゲルは、好ましくは湿潤性を有する粘度増加剤、又は、増粘剤を含有することができる。粘度は、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール及びグリセロールから選択することができる。増粘剤は、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、エンドウマメデンプン)(但し、デンプンは好ましくは加熱される)、セルロース誘導体(例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、アルギン酸塩(例えば、アルギン酸ナトリウム)、カルボマー、コロイド状二酸化ケイ素及び他のペースト形成剤(例えば、PVP、ポリアクリル酸、アラビアゴム、キサンタンガム及びそれらの混合物など)から選択することができる。
【0075】
加えて、保存剤を加えることができ、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸メチルエステル及びその塩、p−ヒドロキシ安息香酸プロピルエステル及びその塩、ソルビン酸及びその塩、安息香酸及びその塩、又は、クロルヘキシジンなどを加えることができる。香料及び甘味剤もまた加えることができる。水性ゲルは、保存剤系の抗菌効力を保証するために緩衝系(例えば、クエン酸塩緩衝剤又は酢酸塩緩衝剤)を含有することができる。
【0076】
水性ゲルはさらに、甘味剤(例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、スクラロースなど)及び香料(例えば、ストロベリー又はパッション(passion)など)から選択される少なくとも1つの薬剤を含有することができる。
【0077】
水性ゲルは、増粘剤を除くすべての賦形剤を精製水に可溶化し、激しく混合されるまでリン酸塩吸着剤を分散し、その後、増粘剤を加えることによって調製することができる。
【0078】
考えられる半固体の配合物には、飲み込み可能なゲル、例えば、水性ゲル又は非水性ゲル(この場合、リン酸塩吸着剤は必要に応じてカプセル化又は粒状化される);噛むのに適した棒状物、例えば、シリアルバー;速く分散する投薬物、例えば、口内分散ウエハースなど);クリームボールの咀嚼可能な投薬形態物;咀嚼可能な投薬形態物、例えば、キャンディー、ソフトカプセル又はナゲットなど;又は、食用に適した小袋物が含まれるが、これらに限定されない。そのような半固体の配合物において、鉄(III)系リン酸塩吸着剤は、不溶性炭水化物としての食物繊維を含有することができる。例えば、デンプンを食物繊維によって置き換えることができる。
【0079】
半固体の配合物は、半固体の配合物が、医薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして理解され得るという利点を有する。このことは、かなり大きい投薬形態物が患者のために許容可能であり得ることを意味する。好ましくは、これらの配合物は高齢者患者及び小児患者に与えられる。
【0080】
飲み込み可能なゲルは、快適に飲み込むことができ、かつ、医薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして理解される可能性があるという利点を有する。加えて、香料選択肢の幅広い選択が行われる。非水性ゲルが好ましい。水酸化鉄のカプセル化及び/又は粒状化工程が好ましくは、口での感触に関する様々な問題(例えば、砂が入ったような感じ)を克服するために含まれる。
【0081】
本発明によれば、噛むのに適した棒状物は、麦芽抽出物、スキムミルク粉末、低脂肪カカオ、グルコースシロップ、卵、硬化パーム油(例えば、棒状物の総重量に基づいて約30重量%)、酵母、塩化ナトリウム(例えば、棒状物の総重量に基づいて約0.1重量%)、ビタミン(例えば、ビタミンE)、香料(例えば、バニラ香料)、1つ又はそれ以上の安定剤(例えば、E339、E435、E472b、E475、ダイズレシチン)、増粘剤(例えば、イナゴマメ粉、E460)からなる群より選択される成分を含有することができる。棒状物は、ミルクチョコレート層によって、例えば、糖、カカオ、カカオ脂、全乳、スキムミルク粉、ヘーゼルナッツ、バター脂肪、ダイズレシチンを含有するミルクチョコレート層によって覆うことができる。そのような被覆物の重量は棒状物の総重量の33%であり得る。製造プロセスは、成分のすべてを高い温度でミキサーにおいてブレンド混合すること、及び、ブレンド混合物を鋳型に充填することを含むことができる。棒状物は、室温に冷却し、鋳型から取り出した後で包装することができる。
【0082】
噛むのに適した棒状物(例えば、シリアルバー)を噛むことは、便利かつ患者に優しい投与であり、また、日課の一部として、すなわち、医薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして理解することができる。そのような投薬形態物は、ほんの小さい制限をサイズに関して有するだけである。加えて、香料選択肢の幅広い選択が行われる。
【0083】
口内分散ウエハースは、万能的な速く分散する投薬形態物である。本発明のリン酸塩吸着剤(例えば、鉄(III)系リン酸塩)を含有する口内分散ウエハースは、快適に飲み込むことができ、かつ、薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして理解することができるので、小児集団及び老齢者集団のために特に適する。
【0084】
本発明によれば、迅速に分散する投薬形態物は、その有効成分、すなわち、鉄(III)系リン酸塩吸着剤を約90秒未満の時間内に放出することができる。これらの投薬形態物は、十分な貯蔵のために保持することができ、しかし、過度な水分の存在下で容易に分散させることができる三次元形状を示すことができる。
【0085】
本発明によれば、迅速に分散する投薬物、例えば、口内分散ウエハースは、目的物が、パターン化された薄い層の逐次的添加による積層化様式(例えば、三次元プリンティング(3DP))で組み立てられる固体の自由形態物の製造技術によって製造することができる。
【0086】
本発明によれば、半固体の投薬物は、クリームボールの咀嚼可能な投薬形態物であり得る。本発明の1つの実施形態において、リン酸塩吸着剤がクリーム又はゲルに懸濁され、その後、コア表面に層状にされる。様々な香料を使用することができる。そのような形態物は、他の咀嚼可能な投薬形態物よりも良好な咀嚼性及び口での感触を提供することができる。この配合物は、快適に飲み込むことができ、また、薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして理解することができる。
【0087】
本発明によれば、咀嚼可能な投薬形態物には、例えば、キャンディー、ソフトカプセル及びナゲットが含まれる。香料の幅広い選択を使用することができる。意匠を凝らした形状及び色が設計され得る。咀嚼可能な投薬形態物は錠剤ディスペンサーに詰めることができ、又は、個々に包むことができる。
【0088】
本発明によれば、咀嚼可能な投薬形態物は、コーンシロップ、糖、部分的に水素化されたダイズ油及び綿実油、脱脂粉乳、ダイズレシチン、天然香料又は人工香料、クエン酸、グリセリルモノステアラート、カラギーナン、Red40、ビタミン(例えば、ビタミンD3又はビタミンK1)、リン酸三カルシウム、アルファ−トコフェリル、塩、ナイアシンアミド、パントテン酸カルシウム、ピリドキシン塩酸塩、リボフラビン及びチアミン一硝酸塩からなる群より選択される成分を含有することができる。
【0089】
成分は、シロップを形成するために水又はミルクに溶解することができ、そして、シロップを、シロップが所望の濃度に達するまで、又は、糖がカラメル化し始めるまで煮沸することができる。その後、液体を鋳型に充填し、投薬形態物を硬くするために冷却することができる。
【0090】
本発明によれば、リン酸塩吸着剤は、食用に適した小袋物として配合することができる。小袋物を食べることは、便利かつ患者に優しい投与であり、また、日課の一部として、すなわち、医薬品としてよりもむしろ、毎日のサプリメントとして理解することができる。
【0091】
食用に適した小袋物に充填することは、噛むのに適した棒状物について本明細書中上記で記載されるような材料から作製され得る粒状物から作製することができ、例えば、そのような粒状物からなり得る。例えば、食用に適した小袋物に充填することを、鋳型から取り出した後の棒状物を粉砕することによって行うことができる。小袋材料は、水溶性多糖から作製することができ、例えば、場合により脂質とともに、デンプン、すりつぶされた野菜又は果実から作製することができる。小袋は、果実又は野菜のピューレを、ピューレが、次工程において乾燥される薄い薄膜を形成する、高速回転しているテフロン被覆の円板に噴霧することによって製造することができる。
【0092】
本発明の別の実施形態において、鉄(III)系リン酸塩吸着剤に含有される非溶解性炭水化物が食物繊維である(例えば、Benefiber(登録商標))。例えば、本明細書中上記で記載されるような製造プロセスの工程i)及び/又は工程ii)において、デンプンが食物繊維(例えば、Benefiber(登録商標))によって置き換えられる。そのような配合物は、リン酸塩結合の利益と、食物繊維の利益とを1つの製造物において組み合わせる。
【0093】
本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤は、例えば、インビトロ試験及びインビボ試験において示されるような様々な有益な薬理学的性質、例えば、無機リン酸塩又は食品に結合したリン酸塩を体液又は食品から吸着することを示し、従って、治療のために指示される。
【0094】
従って、本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤は、高リン酸塩血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症軽減、心臓血管系の罹患及び死亡、腎性骨ジストロフィー、カルシフィラキシー及び軟組織石灰化の治療及び/又は予防において有用である。特に、本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤は、ヒト及び温血動物において、特に伴侶動物(例えば、イヌ及び特にネコなど)において高リン酸塩血症の治療及び/又は予防のために好適である。
【0095】
本発明のリン酸塩吸着剤、及び、本発明のリン酸塩吸着剤を含有する医薬組成物は、高リン酸塩血症の患者において特に有用であり、例えば、透析依存患者(例えば、血液透析)のために、又は、進行した慢性腎疾患(CKD)、慢性腎不全、慢性腎機能不全、末期腎疾患に苦しむ患者のために特に有用である。
【0096】
本発明によるリン酸塩吸着剤はいずれかの好都合な経路によって投与することができ、特に経腸的に、例えば、経口的に、例えば、錠剤又はカプセルの形態で投与することができる。いくつかの場合において、リン酸塩吸着剤は、経鼻胃管を介して、例えば、小児用経鼻胃管を介して投与することができる。
【0097】
本発明の化合物を少なくとも1つの医薬上許容され得る担体又は希釈剤と共に含む医薬組成物は、医薬上許容され得る担体又は希釈剤と混合することによって従来の様式で製造することができる。
【0098】
経口投与のための単位投薬形態物は、例えば、約0.5g〜約7gのリン酸塩吸着剤を含有し、例えば、約0.5g〜約5gのリン酸塩吸着剤を含有し、例えば、1.0g〜約3gのリン酸塩吸着剤を含有し、好ましくは約1g〜約1.5gのリン酸塩吸着剤を含有し、より好ましくは約1g〜約1.5gのリン酸塩吸着剤を含有し、一層より好ましくは約1g〜約1.25gのリン酸塩吸着剤を含有する。
【0099】
本発明によるリン酸塩吸着剤はまた、食品に結合したリン酸塩の吸収のために使用することができる。本発明によるリン酸塩吸着剤は食品と混合することができる。
【0100】
高リン酸塩血症の治療における本発明の鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有用性は、動物試験法において、同様にまた、臨床において、例えば、本明細書中下記に記載される方法に従って明らかにされ得る。
【0101】
A−リン酸塩結合能は、例えば、国際公開第2007/088343号(その内容は参照により組み込まれる)に記載されるような発表された方法に従って、又は、本発明の実施例2に従って行われるアッセイにおいて求めることができる。
【0102】
B−臨床試験:血液透析を受けているCKD(慢性腎疾患)の患者における非盲検タイムラグ多回服用切り換え研究。
患者はその現在のセベラマー治療を2週間のならし(run-in)期間中に受けたままであり、その後、4週間にわたる実施例1で記載されるような鉄(III)系リン酸塩吸着剤(3.75g/日、7.5g/日、11.25g/日、15g/日、22.5g/日)に切り換えられる前に1週間〜2週間のウォッシュアウト期間に入る。それぞれのコホートで、10名の患者が登録される。患者は研究前のセベラマー用量によって階層化される:階層1は、鉄(III)系リン酸塩吸着剤の3.75g/日及び7.5g/日のコホートにおいて7.2g/日未満のセベラマーである。階層2は、鉄(III)系リン酸塩吸着剤治療の他のコホートにおいて7.2g/日以上のセベラマーである。
【0103】
前記に従って、本発明は下記の鉄(III)系リン酸塩吸着剤を提供する:
【0104】
1.1 改善されたリン酸塩結合能によって特徴づけられる鉄(III)系リン酸塩吸着剤。結合能が、1gのリン酸塩吸着剤によって少なくとも約50mgのリン酸塩を吸着するものであり、好ましくは、1gのリン酸塩吸着剤によって約120mgのリン酸塩を吸着するものであり、最も好ましくは、1gのリン酸塩吸着剤によって約140mgのリン酸塩を吸着するものであり、一層最も好ましくは、1gのリン酸塩吸着剤によって約200mgのリン酸塩を吸着するものである。
【0105】
1.2 i)多核酸化水酸化鉄(III)、ii)吸着剤母材(好ましくは非溶解性炭水化物)、及び、iii)可溶性炭水化物(例えば、グルコース誘導体)、及び、iv)場合により炭酸塩を含む鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含む鉄(III)系リン酸塩吸着剤。但し、前記可溶性炭水化物はその一部が多核酸化水酸化鉄(III)に取り込まれる。
【0106】
1.3 i)多核酸化水酸化鉄(III)、及び、ii)スクロース、マルトデキストリン及びそれらの混合物から選択されるグルコース誘導体(好ましくは、スクロース)(但し、グルコース誘導体は一部が多核酸化水酸化鉄(III)に取り込まれる)、及び、iii)デンプンを含む多核鉄(III)系リン酸塩吸着剤。場合により、多核酸化水酸化鉄(III)は前記グルコース誘導体によって安定化される。
【0107】
1.4 i)多核酸化水酸化鉄(III)、及び、ii)スクロース、マルトデキストリン及びそれらの混合物から選択されるグルコース誘導体(好ましくは、スクロース)(但し、多核酸化水酸化鉄は多核ガンマ−酸化水酸化鉄を含有する)、及び、iii)非溶解性炭水化物(好ましくは、デンプン)及び場合によりフェリヒドリトを含む多核鉄(III)系リン酸塩吸着剤。場合により、グルコース誘導体は一部が多核酸化水酸化鉄(III)に取り込まれる。
【0108】
1.5 i)多核酸化水酸化鉄(III)、ii)吸着剤母材(好ましくは非溶解性炭水化物(例えば、デンプン))、及び、iii)スクロース、マルトデキストリン又はそれらの混合物から選択されるグルコース誘導体(好ましくは、スクロース)を含む鉄(III)系リン酸塩吸着剤。但し、前記多核酸化水酸化鉄は前記グルコース誘導体によって安定化される。
【0109】
前記に従って、本発明はさらに、下記のプロセスを提供する:
【0110】
2.1 下記の工程を含む、酸化水酸化鉄(III)を含有する鉄(III)系リン酸塩吸着剤を調製するためのプロセス:
(i)鉄(III)塩の水溶液を、pHが3〜10の間である懸濁物を形成するために少なくとも1つの塩基と混合する工程、
(ii)形成される沈殿物を単離する工程、
(iii)沈殿物を水溶液に懸濁する工程、
(iv)1つ又はそれ以上の炭水化物及び/又はフミン酸を加える工程、及び
(v)工程(iv)の調製物を噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって単離する工程。
【0111】
2.2 下記の工程を含む、酸化水酸化鉄(III)、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)及びグルコース誘導体を含有する鉄(III)系リン酸塩吸着剤を調製するためのプロセス:
(i)鉄(III)塩の水溶液を、pHが3〜10の間(例えば、4〜9の間、例えば、6〜8の間、好ましくは約7)である懸濁物を形成するために塩基(例えば、塩基水溶液)と混合し(例えば、同時に混合し)、懸濁物を放置する工程、
(ii)形成される沈殿物を単離し、場合により、例えば、水により洗浄する工程、
(iii)沈殿物を、鉄分含有量が懸濁物の約3重量%〜16重量%である懸濁物を得るために、例えば、水に懸濁する工程、
(iv)鉄分含有量が懸濁固形物の総重量比で約10%〜約50%に至るまでである懸濁物を得るために、1つ又はそれ以上の炭水化物及び/又はフミン酸を加える工程、及び
(v)リン酸塩吸着剤を、ろ過、デカンテーション、噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって単離する工程。好ましくは、噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥。
【0112】
2.3 下記の工程を含む、酸化水酸化鉄(III)、不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)及びグルコース誘導体を含有する鉄(III)系リン酸塩吸着剤を調製するためのプロセス:
i)鉄(III)塩の水溶液を、pHが3〜10の間である懸濁物を形成するために塩基(例えば、塩基水溶液)と混合する(例えば、同時に混合する)工程;
ii)前記不溶性炭水化物(好ましくはデンプン)を、鉄(III)の沈殿形成が完了する前に、例えば、鉄(III)の沈殿形成が始まる前に加える工程;
但し、工程iii)〜工程v)は、2.1のもとで定義されるように行われる。
【0113】
2.4 下記の工程をさらに含む、2.1〜2.3のもとで定義されるようなプロセス:鉄(III)系リン酸塩吸着剤を粒状物として得るために、粉末を、場合により結合剤及び滑剤から選択される少なくとも1つの賦形剤の存在下において粒状化する工程。
【0114】
2.5 下記の工程viii)をさらに含む、2.1〜2.4のもとで定義されるようなプロセス:工程vi)で得られる粉末又は工程vii)で得られる粒状物のいずれかを錠剤化する工程viii)。但し、錠剤化工程は、場合により、本明細書中上記において記載されるような充填剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、滑剤及びそれらの混合物から選択される賦形剤の存在下において行われる。
【0115】
前記に従って、本発明はさらに、下記の方法を提供する:
【0116】
3.1 障害又は疾患(例えば、上記で示される障害又は疾患など)を、そのような治療を必要としている対象(すなわち、ヒト又は温血動物、特に伴侶動物、例えば、イヌ及びネコなど)において予防又は治療するための方法であって、前記対象に本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有効量を投与することを含む方法。
【0117】
3.2 血清中のリン酸塩レベル及び血清中のリン酸カルシウム生成物レベルを、そのような治療を必要としている対象において、例えば、長期に及ぶ血液透析を受けている患者において、正常な血清中のカルシウムレベルを維持しながら制御するための方法であって、前記対象に本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有効量を投与することを含む方法。
【0118】
3.3 そのような治療を必要としている対象において、例えば、透析を受けている患者において、例えば、長期に及ぶ血液透析を受けている患者において、無機リン酸塩を、例えば、透析液、全血、血漿から選択的に除くための、或いは、無機リン酸塩を、透析液、全血、血漿から排出するための方法であって、前記対象に本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有効量を投与することを含む方法。
【0119】
3.4 食品に結合した無機リン酸塩を選択的に除くための方法。
【0120】
3.1 医薬品としての使用のための、例えば、上記の4.1〜4.3のもとで示されるような方法のいずれかにおいて使用されるための本発明によるリン酸塩吸着剤。
【0121】
4.無機リン酸塩を液体から選択的に排出するための医薬調製物として使用されるための組成物であって、水に不溶性であり、かつ、前記請求項のいずれかにおいて定義されるような鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含有する組成物。
【0122】
5.1 本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤を、医薬上許容され得る希釈剤又は担体と共に含み、例えば、保存剤及び結合剤から選択される少なくとも1つの賦形剤を含み、例えば、上記の3.1〜3.3におけるような方法のいずれかにおいて使用される医薬組成物。
【0123】
5.2 本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着材を含有する、例えば、無機リン酸塩を液体(例えば、透析液、全血又は血漿)から選択的に排出するための医薬調製物として使用される医薬組成物。
【0124】
5.3 本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含有する、経口投与のために好適な医薬組成物(例えば、固体又は半固体の投薬形態物)。
【0125】
5.4 本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含有する固体又は半固体の投薬形態物。
【0126】
5.5 本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含み、かつ、保存剤(例えば、アルコール、好ましくはエタノール)及び場合により結合剤(例えば、スクロース、微結晶性セルロース又はそれらの混合物)をさらに含む医薬組成物(好ましくは粉末剤又は顆粒剤)。
【0127】
5.6 錠剤の形態であり、かつ、滑剤と、場合により、充填剤、結合剤、崩壊剤及び流動剤から選択される少なくとも1つのさらなる賦形剤とを含む本発明による医薬組成物。
【0128】
6.上記の4.1〜4.3におけるような方法のいずれかにおいて使用される医薬組成物の調製において使用される本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤。
【0129】
6.1 高リン酸塩血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症軽減、心臓血管系の罹患及び死亡、腎性骨ジストロフィー、カルシフィラキシー及び軟組織石灰化、並びに、それらに関連づけられる疾患及び障害の治療又は予防において使用される本発明による鉄(III)系リン酸塩吸着剤。
【0130】
本発明によれば、リン酸塩吸着剤は単一の有効成分として投与することができ、又は、別のリン酸塩低下剤と共に、例えば、セベラマー、ホスレノール、酢酸Ca又は炭酸Caなどと共に投与することができる。リン酸塩吸着剤はまた、カルシウム受容体作動薬(calcimimetic)(例えば、シナカルセトなど)、ビタミンD又はカルシトリオールとを組み合わせて投与することができる。
【0131】
前記に従って、本発明は、さらなる態様において、下記のものを提供する:
【0132】
7.治療有効量の本発明によるリン酸塩吸着剤と、第2の薬物物質との(例えば、同時又は連続での)共投与を含む上記で定義されるような方法であって、前記第2の薬物物質が、例えば、上記で示されるような別のリン酸塩低下剤、カルシウム受容体作動薬、ビタミンD又はカルシトリオールである、方法。
【0133】
8.a)本発明によるリン酸塩吸着剤と、b)別のリン酸塩低下剤、カルシウム受容体作動薬、ビタミンD及びカルシトリオールから選択される少なくとも1つの第2の薬剤とを含む治療剤の組合せ(例えば、キット)。成分a)及び成分b)は同時に使用することができ、又は、連続して使用することができる。キットはその投与のために説明書を含むことができる。
【0134】
本発明によるリン酸塩吸着剤が、例えば、本明細書中上記で具体的に示されるような高リン酸塩血症又は他の疾患若しくは障害を予防又は治療するために、別のリン酸塩低下剤(例えば、セベラマー、ホスレノール、酢酸Ca又は炭酸Caなど)、カルシウム受容体作動薬(例えば、シナカルセトなど)、又は、ビタミンD若しくはカルシトリオールとの併用で投与されることになる場合、共投与される化合物の投薬量は、当然のことながら、用いられる共薬物のタイプ及び治療されている状態などに依存して変化する。
【0135】
本発明の化合物を少なくとも1つの医薬上許容され得る担体又は希釈剤との連携で含む医薬組成物は、医薬上許容され得る担体又は希釈剤と混合することによって従来の様式で製造することができる。
【0136】
本明細書中を通して、また、下記の特許請求の範囲では、文脈が別途要求する場合を除き、語句「comprise」(含む)又は変化形(例えば、「comprises」又は「comprising」など)は、任意の他の整数又は工程或いは整数又は工程の群を除外することではなく、言及された整数又は工程或いは整数又は工程の群を包含することを含意することが理解される。
【実施例】
【0137】
下記の実施例は本発明を例示する。
【0138】
実施例1
2974gの水に溶解された648gの炭酸ナトリウムの溶液に対して、3312gの水に溶解された813gの塩化鉄(III)六水和物の溶液が、34分の時間をかけて加えられる。得られた懸濁物が2時間放置される。この時間中、懸濁物が、6回、10分間撹拌される。懸濁物が、撹拌とともに4500gの水により5回処理され、続いて、固形物を沈降させるために1時間〜200時間の間放置される。上清液がデカンテーションによって除かれた。
【0139】
続いて、225gのサッカロース及び225gのデンプンが上記の3238gの懸濁物(Halogen Moisture Analyzer HR83によって分析されるLOD=80.83%)に加えられ、これにより、7.54のpHを21.7℃において有する3688gの懸濁物を得た。水に懸濁されている沈殿した固形物の鉄分含有量が19.2%である(これはフレーム原子吸光分光法又はフレームAASによって求められる)。最終生成物の2つの量が、適切なSD条件及びFSD条件を使用することによる噴霧乾燥(SD)及び流動床噴霧乾燥(FSD)によって得られる。鉄分含有量(これはフレームAASによって求められる)がSD生成物については22.1%であり、FSD生成物については21.1%である。
【0140】
実施例2
実施例1で得られたリン酸塩吸着が、365mg〜385mgのサンプルを25mLのメスフラスコに入れることによって測定される。メスフラスコを、170.92mgのリン酸塩(PO43−)を含有する水溶液の20mLにより満たし、pHを塩酸でpH2.0(+/−0.05)に調節する。その後、メスフラスコを水により標線にまで満たす。その後、このサンプルを37℃で2時間撹拌する。この後、サンプルをろ過し、溶解されたリン酸塩をイオンクロマトグラフィーによって定量分析する。吸着したリン酸塩の量が、メスフラスコに入れられたリン酸塩の量と、リン酸塩の測定された量との差である。結果が、「吸着したリン酸塩の量」/「吸着のために使用された噴霧乾燥製造物の量」100としての%(m/m)で表される。
【0141】
結果
実施例1の化合物は、SD製造物については16.1%m/mのリン酸塩を吸着し、FSD製造物については18.7%m/mのリン酸塩を吸着する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程:
(i)鉄(III)塩の水溶液を、pHが3〜10の間である懸濁物を形成するために少なくとも1つの塩基と混合する工程、
(ii)形成される沈殿物を単離する工程、
(iii)沈殿物を水溶液に懸濁する工程、
(iv)1つ又はそれ以上の炭水化物及び/又はフミン酸を加える工程、及び
(v)工程(iv)の調製物を噴霧乾燥又は流動床噴霧乾燥によって単離する工程
を含む、組成物を調製するためのプロセス。
【請求項2】
工程(i)において、pHが4〜9の間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
工程(i)において、pHが6〜8の間である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
工程(i)において、前記溶液のpHが6〜8の間での一定の値で維持され、好ましくは約7で維持される、請求項1から3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
工程(i)において、前記塩基が、炭酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムの群から選択される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項6】
工程(i)において、前記塩基が炭酸ナトリウムである、請求項5に記載のプロセス。
【請求項7】
工程(iii)において、前記沈殿物が、懸濁物の総重量比で3%〜16%の鉄分含有量を有する懸濁物を形成するように水に懸濁される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項8】
工程(iv)において、前記組成物が懸濁固形物の総重量比で10%〜50%の間の鉄分を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項9】
工程(iv)において、前記組成物が懸濁固形物の総重量比で15%〜30%の間の鉄分を含有する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
工程(iv)において、1つ又はそれ以上の炭水化物が加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項11】
工程(iv)において、前記炭水化物が可溶性炭水化物又は不溶性炭水化物又はそれらの混合物を含む、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
工程(iv)において、少なくとも1つの可溶性炭水化物及び少なくとも1つの不溶性炭水化物が加えられる、請求項10に記載のプロセス。
【請求項13】
前記不溶性炭水化物がデンプンである、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記可溶性炭水化物が、スクロース、アガロース、デキストラン、デキストリン、デキストラン誘導体、セルロース、セルロース誘導体、マルトース、ラクトース、マンニトール及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項11又は12に記載のプロセス。
【請求項15】
少なくとも1回の洗浄が、工程(iii)と工程(iv)との間で行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項16】
工程(i)において、前記溶液のpHが6〜8の間での値で維持され、かつ、デンプンが工程(i)で加えられる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項17】
工程(v)において、工程(iv)の前記調製物を単離することが流動床噴霧乾燥によって行われる、請求項1に記載のプロセス。
【請求項18】
前記粉末を、鉄(III)系リン酸塩吸着剤を粒状物として得るために、場合により結合剤及び滑剤から選択される少なくとも1つの賦形剤の存在下において粒状化する工程(vi)をさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項19】
工程(v)で得られる前記粉末又は工程(vi)で得られる前記粒状物のいずれかを錠剤化する工程(vii)をさらに含み、但し、錠剤化工程が、場合により、充填剤、結合剤、崩壊剤、流動剤、滑剤及びそれらの混合物から選択される賦形剤の存在下において行われる、請求項18に記載のプロセス。
【請求項20】
請求項1から19のいずれか一項に記載されるプロセスによって得ることができる鉄(III)系リン酸塩吸着剤。
【請求項21】
高リン酸塩血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症軽減、心臓血管系の罹患及び死亡、腎性骨ジストロフィー、カルシフィラキシー及び軟組織石灰化、並びに、それらに関連づけられる疾患及び障害を治療又は予防するための、請求項20に記載の鉄(III)系リン酸塩吸着剤。
【請求項22】
請求項20に記載される鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含有する、例えば、固体又は半固体の投薬形態物である、経口投与のために好適な医薬組成物。
【請求項23】
粉末剤、顆粒剤、カプセル剤、錠剤又はフィルム被覆錠剤である、請求項22に記載の固体の投薬形態物。
【請求項24】
請求項20に記載される鉄(III)系リン酸塩吸着剤を含有する固体又は半固体の投薬形態物。
【請求項25】
高リン酸塩血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症軽減、心臓血管系の罹患及び死亡、腎性骨ジストロフィー、カルシフィラキシー及び軟組織石灰化、並びに、それらに関連づけられる疾患及び障害を治療又は予防するための医薬品を製造するための、請求項20に記載される鉄(III)系リン酸塩吸着剤の使用。
【請求項26】
高リン酸塩血症、高カルシウム血症、副甲状腺機能亢進症軽減、心臓血管系の罹患及び死亡、腎性骨ジストロフィー、カルシフィラキシー及び軟組織石灰化、並びに、それらに関連づけられる疾患及び障害をその必要性のある患者において治療又は予防するための方法であって、請求項20に記載される鉄(III)系リン酸塩吸着剤の有効量を前記対象者に投与することを含む方法。

【公表番号】特表2011−523897(P2011−523897A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−512996(P2011−512996)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/EP2009/057307
【国際公開番号】WO2009/150232
【国際公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】