説明

鉄塔構成部材の保護装置及びその取付方法

【課題】
容易に着脱できると共に、鉄塔構成部材内の通気性を確保できる鉄塔構成部材の保護装置を提供すること。
【解決手段】
管状の鉄塔構成部材10の開放した端部11に取り付けられ、この端部11から鳥類が鉄塔構成部材10の内部に侵入することを防止する鉄塔構成部材の保護装置1であって、この保護装置1は、コイル状に捲回された本体部2と、この本体部2の両端から径方向に沿って延在されると共に先端が折り曲げられた一対の取付部3とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔を形成するための管状の鉄塔構成部材の開放した端部を保護する鉄塔構成部材の保護装置及びその取付方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔を形成するための鋼管等の管状の鉄塔構成部材は、端部が開放しており、この開放した端部から鳥類が入り込んで営巣することがあった。
【0003】
従来から、この鳥類の営巣を防止するため、ステンレス等の鋼板を鉄塔構成部材の端部の開口形状に加工し、この鋼板によって端部を閉塞する端部密閉装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−106074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述の端部密閉装置は、ビス(ボルト)を用いて取り付けられており、取り付け及び取り外しに手間がかかるという問題があった。
【0005】
また、鉄塔構成部材の端部を密閉することで、この鉄塔構成部材の内部の通気性が低下し、結露等によって中に入った水分が排出されにくく、鉄塔構成部材の腐食を促進するおそれがあった。
【0006】
そこで、この発明は、容易に着脱できると共に、鉄塔構成部材内の通気性を確保できる鉄塔構成部材の保護装置及びその取付方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、管状の鉄塔構成部材の開放した端部に取り付けられ、該端部から鳥類が前記鉄塔構成部材の内部に侵入することを防止する鉄塔構成部材の保護装置であって、前記保護装置は、コイル状に捲回された本体部と、該本体部の両端から径方向に沿って延在されると共に先端が折り曲げられた一対の取付部とを有していることを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、前記本体部を収縮させた状態で前記鉄塔構成部材内に挿入すると共に、前記一対の取付部をそれぞれ前記端部に掛止する請求項1に記載の鉄塔構成部材の保護装置の取付方法を特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、先端が折り曲げられた取付部を鉄塔構成部材の端部に引っ掛けるだけで容易に取り付けることが可能となる。また、この端部に引っ掛けられた取付部を抜き取ることで取り外しができ、容易に外すこともできる。このように容易に着脱することが可能となる。
【0010】
また、本体部がコイル状に捲回されているので、鉄塔構成部材の端部を閉塞することがなく、この鉄塔構成部材内の通気性を確保することができる。これにより、水分を速やかに排出でき、腐食環境の悪化を防止できる。
【0011】
請求項2の発明によれば、鉄塔構成部材の保護装置を容易に着脱することができ、鉄塔建設後にこの保護装置を取り付ける場合や鉄塔構成部材の保守点検をする場合等において、高所作業時間を低減させることができる。
【0012】
また、鳥類が鉄塔構成部材の内部に侵入しようとしても、この鉄塔構成部材内に挿入された本体部に阻まれ、確実に営巣を防止することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明に関わる鉄塔構成部材の保護装置(以下、保護装置という)を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
この保護装置1は、図4に示す送電用の鉄塔Tの骨組みである鉄塔構成部材10に取り付けられるものである。
【0015】
この鉄塔Tは、多数の鉄塔構成部材10が複数の主柱材Sに連結されて組み立てられており、主な鉄塔構成部材10として鋼管が用いられている。
【0016】
この鉄塔構成部材10は、図1に示すように、両端部11(他方図示せず)が開放した管状体である。そして、この開放した端部11には、互いに対向する一対の切欠部12(他方図示せず)が周面に形成されると共に、この切欠部12にU字状に折り曲げられた継手板13が差し込まれ、溶接によって固定されている。
【0017】
この継手板13によって、鉄塔構成部材10の端部11には、ほぼ半円状の開口部14が形成されている。
【0018】
なお、この継手板13は、複数のボルト15、ナット16を介して、主柱材Sに取り付けられたガセットプレートGに連結されている(図4参照)。
【0019】
保護装置1は、適度の保形成を有する線条材、ここではステンレス製の針金によって形成されており、コイル状に捲回された本体部2と、この本体部2の両端に形成された一対の取付部3、3とを有している。
【0020】
本体部2は、伸縮可能に形成され、開口部14の最大開口幅D1(図1参照)とほぼ同じ直径D2を有すると共に、スパイラルピッチPが一定のコイル形状を呈している(図2(a)、(b)参照)。
【0021】
ここで、スパイラルピッチPは、線条材の硬度や本体部2の直径D2の大きさに左右されるが、鳥類がこのスパイラルピッチPの間から通り抜けられない大きさとなっている。
【0022】
一対の取付部3、3は、それぞれ本体部2から連続しており、線条材を本体部2の径方向に沿って延在すると共に、先端を折り返す(折り曲げる)ことで形成されている。
【0023】
なお、各取付部3、3は、互いに同方向に沿って延在されると共に、同方向に沿って折り返される。また、これらの取付部3、3の先端は、本体部2を挟んで互いに反対方向を向いている。
【0024】
そして、各取付部3、3は、延在長Aが本体部2の直径D2よりも十分に長くなるように形成されると共に、折り返し長Bが鉄塔構成部材10の端部11に取り付けられたときに容易に外れない長さに形成されている。
【0025】
また、各取付部3、3の折り返し部3a、3aの曲率半径は、鉄塔構成部材10の厚みよりも大きくなるように形成されている。
【0026】
次に、この発明の保護装置1の取付方法について説明する。
【0027】
この保護装置1を鉄塔構成部材10に取り付けるには、まず、本体部2の両側部を側方から押さえて収縮させる。そして、このように収縮させた状態で、この本体部2を鉄塔構成部材10の開口部14内に挿入する。
【0028】
このとき、開口部14の開口幅が最も大きい中央部から本体部2を挿入することが好ましい。これにより、さらに容易に挿入することが可能となる。
【0029】
そして、取付部3、3で開口部14の周面を挟み込むように各取付部3、3の向きを調節し、さらに折り返し部3a、3aが開口部14の端縁14aに当接するまで本体部2を開口部14内に挿入する。
【0030】
これにより、図3に示したように、取付部3、3が端部11に引っ掛けられ、保護装置1が鉄塔構成部材10に取り付けられる。
【0031】
このように、この保護装置1を取り付けるには、先端が屈曲された取付部3、3を鉄塔構成部材10の端部11に引っ掛けるだけなので、容易に取り付けることが可能となる。
【0032】
また、保護装置1を取り外すには、取付部3、3を鉄塔構成部材10の端部11から抜き取って、本体部2を開口部14から取り出す。そのため、保護装置1を取り外すことも容易に行なうことができる。
【0033】
さらに、上述のように、この保護装置1を容易に着脱することができるので、鉄塔Tを建設後にこの保護装置1を取り付ける場合や、鉄塔構成部材10の保守点検をする場合等において、高所作業時間を低減させることができる。
【0034】
また、一度取り外した保護装置1を、繰り返し取り付けることができ、メンテナンスコストの削減を図ることもできる。
【0035】
そして、この保護装置1は、本体部2がコイル状に捲回されているので、鉄塔構成部材10の端部11を閉塞することがなく、この鉄塔構成部材10内の通気性を確保することができる。これにより、鉄塔構成部材10内に入り込んだ水分を速やかに排出でき、腐食環境の悪化を防止できる。
【0036】
さらに、本体部2が鉄塔構成部材10内に挿入されているため、鳥類が鉄塔構成部材10の内部に侵入しようとしても、この本体部2に阻まれて奥に進めず、確実に営巣を防止することが可能となる。
【0037】
そして、この保護装置1は、ステンレスの針金を加工することで形成されているので、材料費を抑制することができると共に、加工費も低減させることが可能となる。また、上述のように施工性も良いので取り付け費も安価となる。
【0038】
また、この保護装置1を取り付けた際に、本体部2は、開口部14から挿入されたのちに伸長するので、鉄塔構成部材10の内周面に伸長力で押し付けられることとなる。一方、取付部3、3が開口部14の周面を挟むように向き調節されているので、各取付部3、3には、先端が本体部2を挟んで反対を向こうとする応力が作用する。
【0039】
これにより、取付部3、3を開口部14の端部14aに引っ掛けることで、取り付けた保護装置1の脱落が防止され、施工性をより向上させることができる。
【0040】
さらに、本体部2が鉄塔構成部材10内に挿入されるため、遠方から見た場合に保護装置1がほとんど見えず、見栄えの向上を図ることができる。また、鉄塔T上で作業を行なう際に、作業者がこの保護装置1に引っかかりにくくすることも可能となる。
【0041】
以上、この発明にかかる実施の形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は上述の実施の形態に限らない。この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等はこの発明に含まれる。
【0042】
例えば、上述の実施の形態では、保護装置1がステンレス製の針金によって形成されているが、これに限らず、十分な耐候性を有するその他の金属や樹脂によって形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明にかかる鉄塔構成部材の保護装置を鉄塔構成部材から取り外した状態を示す斜視図である。
【図2】(a)は保護装置の正面図であり、(b)は保護装置の側面図である。
【図3】保護装置を鉄塔構成部材に取り付けた状態を示す斜視図である。
【図4】鉄塔構造を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
1 鉄塔構成部材の保護装置
2 本体部
3 取付部
10 鉄塔構成部材
11 端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状の鉄塔構成部材の開放した端部に取り付けられ、該端部から鳥類が前記鉄塔構成部材の内部に侵入することを防止する鉄塔構成部材の保護装置であって、
前記保護装置は、コイル状に捲回された本体部と、該本体部の両端から径方向に沿って延在されると共に先端が折り曲げられた一対の取付部とを有していることを特徴とする鉄塔構成部材の保護装置。
【請求項2】
前記本体部を収縮させた状態で前記鉄塔構成部材内に挿入すると共に、前記一対の取付部をそれぞれ前記端部に掛止することを特徴とする請求項1に記載の鉄塔構成部材の保護装置の取付方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−348496(P2006−348496A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173199(P2005−173199)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(592190545)テクノ・サクセス株式会社 (8)
【出願人】(000180368)四国電力株式会社 (95)
【Fターム(参考)】