説明

鉄塔

【課題】施工性を向上することができる鉄塔を提供することを目的とする。
【解決手段】鉄塔は、水平平面が三角形平面である鉄塔であって、三角形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に沿って設けられる柱状の主材2を備える。複数の主材2のうちの少なくとも1つは、角部7が鋭角である一体成形の山形部材によって構成され、当該角部7が対応する頂点をなすことを特徴とする。典型的には、三角形平面は、正三角形平面であり、複数の主材2は、それぞれ設置された状態での水平断面において角部7が60°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される。したがって、鉄塔1は、施工性を向上することができる、という効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、送電用鉄塔、配電用鉄塔、通信用アンテナが設置される鉄塔等、種々の用途に用いられる鉄塔が知られている。このような鉄塔は、例えば、四角鉄塔、方形鉄塔、えぼし形鉄塔、門柱鉄塔等、様々な形式が採用されている。例えば、特許文献1には、水平平面が四角形平面であり当該四角形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に延設される柱状の縦主材が設けられた送電線用鉄塔が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−300872号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような特許文献1に記載の送電線用鉄塔は、例えば、施工性の向上等の点で、更なる改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、施工性を向上することができる鉄塔を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る鉄塔は、水平平面が三角形平面である鉄塔であって、前記三角形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に沿って設けられる柱状の主材を備え、複数の前記主材のうちの少なくとも1つは、角部が鋭角である一体成形の山形部材によって構成され、当該角部が対応する前記頂点をなすことを特徴とする。
【0007】
また、上記鉄塔では、複数の前記主材は、それぞれ角部が鋭角である一体成形の山形部材によって構成され、それぞれ当該角部が対応する前記頂点をなすものとすることができる。
【0008】
また、上記鉄塔では、前記三角形平面は、正三角形平面であり、複数の前記主材は、それぞれ設置された状態での水平断面において前記角部が60°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成されるものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る鉄塔は、施工性を向上することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す斜視図である。
【図2】図2は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す正面図である。
【図3】図3は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す平面図である。
【図4】図4は、実施形態に係る鉄塔の主材の水平断面図である。
【図5】図5は、変形例に係る鉄塔の概略構成を表す平面図である。
【図6】図6は、変形例に係る鉄塔の概略構成を表す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
[実施形態]
図1は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す斜視図、図2は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す正面図、図3は、実施形態に係る鉄塔の概略構成を表す平面図、図4は、実施形態に係る鉄塔の主材の水平断面図、図5、図6は、変形例に係る鉄塔の概略構成を表す平面図である。
【0013】
図1、図2、図3に示す本実施形態に係る鉄塔1は、地盤に埋め込まれた基礎の上部に設けられる鉄製の骨組み構造により構成される鉛直方向に沿った細長い建造物であり、例えば、不図示の通信用アンテナやそれらの付帯設備が設置されるものである。
【0014】
本実施形態の鉄塔1は、複数の主材2、複数の副材3等を含んで構成され、これらが相互にボルト等で接合されて構成される。この鉄塔1は、水平平面(水平方向に沿った平面形状)が三角形平面となっている(図3参照)。そして、鉄塔1は、この三角形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に沿って設けられる柱状の主材2を備えた自立式地上型三角断面鉄塔である。また、この鉄塔1は、複数の主材2、複数の副材3がそれぞれ山形部材としての山形鋼材(いわゆるアングル)によって構成された山形鋼トラス構造の鉄塔である。
【0015】
具体的には、主材2は、鉄塔1の三角形平面の各頂点にそれぞれ1つずつ、合計3本が設けられる。各主材2は、鉛直方向に沿った柱状の部材であり、それぞれ下端部にコンクリート等からなる基礎構造体が設けられる。各主材2は、この基礎構造体によって下端部が支持されて概ね鉛直上方に向けて立設されている。
【0016】
複数の副材3は、例えば、トラス構造を形成する部材として、複数のつなぎ材4、複数の斜材5、複数の座屈補剛材6等を含んで構成される。つなぎ材4は、一対の主材2に対して水平方向に沿って渡される横材である。斜材5は、一対の主材2に対して水平方向に傾斜して渡される部材である。座屈補剛材6は、主材2と斜材5とに渡される補強部材である。
【0017】
鉄塔1は、3本の主材2が三角形平面の各頂点にそれぞれ1つずつ位置し、複数の副材3が隣接する主材2を結ぶようにしてボルト等を介して固設されることで、これら複数の副材3が3本の主材2間にそれぞれトラス構造をなす面を構成する。つまり、鉄塔1は、三角形平面をなすことから、3面がトラス構造で構成される。この鉄塔1は、三角形平面が地表側から上方に向かって、相似形であって、かつ、徐々に小さくなるように構成される。
【0018】
そして、本実施形態の鉄塔1は、複数の主材2のうちの少なくとも1つが一体成形の鋭角の山形鋼材によって構成されることで、施工性の向上を図っている。
【0019】
具体的には、図3、図4に示すように、複数の主材2のうちの少なくとも1つは、角部7が鋭角である一体成形の山形鋼材によって構成され、この主材2の角部7が鉄塔1の三角形平面における頂点をなす。ここでは、3本の主材2は、それぞれ角部7が鋭角である一体成形の山形鋼材によって構成され、それぞれ角部7が鉄塔1の三角形平面における対応する頂点の隅角部をなす。さらに詳細には、本実施形態の複数の主材2は、それぞれ設置された状態での水平断面において角部7が60°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される。
【0020】
各主材2は、例えば、押し出し成形によって形成され、これにより、一対のフランジが一体で形成される。各主材2は、水平方向に沿った断面形状が略V字型の山形をなし、設置された状態での水平断面においてV字型の角部7が鋭角、ここでは、60°となっている。より厳密に言うと、各主材2は、基礎構造体上に設置された状態で、長手方向が鉛直方向に対して若干の傾斜角度を有して設けられている。このため、正三角平面の鉄塔1においては、各主材2の長手方向に直交する方向の断面における角部7の角度は、60°よりやや大きな角度となっている。したがって、各主材2は、設置された状態での水平断面において角部7が60°となるように、上記傾斜角度に応じて寸法、形状、角部7の角度等が予め設計、決定される。そして、各主材2は、上記傾斜角度に応じて決定された寸法、形状、角部7の角度等となるように一対のフランジが一体で押し出し成形される。各主材2は、このような設置された状態での水平断面において角部7が60°である一体成形の等辺山形鋼材を用いて、それぞれ鉄塔1の三角形平面における対応する頂点において、60°の角度が内側を向くようにして配置される。
【0021】
つまり、本実施形態の鉄塔1は、三角形平面が正三角形平面となっており、正三角形平面の各頂点に、それぞれ設置された状態での水平断面において角部7が60°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される主材2が設けられる。鉄塔1は、設置された状態での水平断面において、等辺山形鋼材によって構成される主材2の角部7の角度(60°)が三角形平面のそれぞれの頂点の内角(60°)をなすこととなる。
【0022】
そして、鉄塔1は、各主材2のフランジにボルト8、プレート等を介してつなぎ材4等の副材3が接合される。
【0023】
上記のように構成される鉄塔1は、複数の主材2のうちの少なくとも1つ、ここでは3本全てが、それぞれ角部7が鋭角である一体成形の等辺山形鋼材によって構成され、三角形平面において角部7が頂点をなすことから、例えば、鋼管柱を主材に使用しガゼットプレートを溶接して接合部位を形成したり、あるいは、平鋼を組み合わせて溶接し主材としたりすることなく、簡単に三角形平面の鉄塔を組み立てることができる。
【0024】
すなわち、鉄塔1は、三角形平面の各頂点にそれぞれ角部7が鋭角である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される主材2が設けられることから、例えば、各主材2と各副材3との接合を、品質管理を必要とする溶接接合等を用いずに、ボルト接合にて行うことができ、また、平鋼等による主材2の製作工程も不要とすることができる。
【0025】
また、例えば、一般的に用いられる90°の等辺山形鋼材を正三角形平面の頂点に位置する主材に用いる場合、副材との接合部位において、例えば、当該90°の等辺山形鋼材のフランジを一対の15°傾斜座金で挟み込んだり、ガゼットプレートを設けたりなど、取り付け面の角度調整用の部材が必要になり、これにより施工性が低下するおそれがある。しかしながら、本実施形態の鉄塔1であれば、このような角度調整用の部材を設ける必要がなく、主材2と副材3とをより簡易な構成で接合することができるので、上記のような施工性の低下を抑制することができる。
【0026】
つまり、鉄塔1は、設置された状態での水平断面において角部7が60°である一体成形された等辺山形鋼材を用いて、内角が60°となる正三角形平面の鉄塔を容易に製作することができる。この結果、この鉄塔1は、例えば、現場での組み立て工数(建方工数)を低減すると共に組み立て精度を向上し容易に良好な品質を確保することができる。したがって、鉄塔1は、施工性を向上することができ、製造(施工)コストを抑制することができる。
【0027】
さらに、鉄塔1は、各主材2の角部7を鋭角に構成することで、例えば、90°の等辺山形鋼材と比較して、各主材2の断面性能を向上することができ、座屈性能を向上することができ、これにより、鉄塔1全体での鉄骨量を低減することができるので、さらに製造コストを抑制することができる。
【0028】
そして、鉄塔1は、三角形平面をなすことから、主材2が三角形平面の各頂点にそれぞれ1つずつ、合計3本となり、また、トラス構造をなす面も3面となる。このため、鉄塔1は、例えば、四角形平面の鉄塔等と比較して、主材2、副材3、基礎構造体など、この鉄塔1を構成する構成部材点数を大幅に低減し、鉄骨量を大幅に低減することができると共に、これにより、接合部の数を低減し組み立て工数の削減も図ることができる。よってこの点でも、この鉄塔1は、製作量と建方量とを低減することができ、さらに施工性を向上することができ、製造コストを抑制することができる。
【0029】
例えば、設計基準風速34m/sの条件で通信用アンテナやそれらの付帯設備を搭載した40mの高さの鉄塔の場合、90°アングル(等辺山形鋼材材)を使用した四角形平面の比較例に係る鉄塔での使用鉄骨量が約9.33t程度であるのに対し、同一条件下で一体成形の60°アングル(等辺山形鋼材材)を使用した三角形平面の本実施形態に係る鉄塔1は、約7.20t程度となり、約23%の鉄骨量の削減となる。また、本実施形態に係る鉄塔1は、主材2、副材3等の接合箇所が4面分から3面分となることから、四角形平面の比較例に係る鉄塔と比較して、単純比較すれば接合に用いるボルトの数が1面分、すなわち、25%程度の削減になり、接合作業量も25%程度が削減される。
【0030】
また、鉄塔1は、三角形平面が正三角形平面となっているので、幾何的により安定した形状とすることができると共に、主材2や基礎構造体を3つ同一にすることができ、副材3で形成されるトラス構造の面を3面同一にすることができるので、より効率的に設計や製作を行うことができる。よってこの点でも、この鉄塔1は、さらに施工性を向上することができ、製造コストを抑制することができる。
【0031】
以上で説明した実施形態に係る鉄塔1によれば、水平平面が三角形平面である鉄塔1であって、三角形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に沿って設けられる柱状の主材2を備え、複数の主材2のうちの少なくとも1つは、角部7が鋭角である一体成形の山形部材によって構成され、この角部7が対応する頂点をなす。ここでは、鉄塔1の三角形平面は、正三角形平面であり、複数の主材2は、それぞれ設置された状態での水平断面において角部7が60°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される。したがって、この鉄塔1は、施工性を向上することができ、例えば、鉄塔建設にかかるコストを大幅に削減することが可能となる。
【0032】
なお、上述した本発明の実施形態に係る鉄塔は、上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された範囲で種々の変更が可能である。
【0033】
以上の説明では、鉄塔1は、通信用アンテナが設置される鉄塔であるものとして説明したが、これに限らず、送電用鉄塔、配電用鉄塔等であってもよい。
【0034】
以上の説明では、主材2は、例えば、押し出し成形によって形成されるものとして説明したが、これに限らず、一対のフランジが一体で形成されたものであればよい。
【0035】
以上で説明した鉄塔1は、3つの主材2のすべてが、角部7が鋭角である一体成形の山形鋼材で構成されるものとして説明したがこれに限られない。
【0036】
例えば、図5に例示するように、変形例に係る鉄塔201は、複数の主材2のうちの少なくとも1つが、角部7が鋭角である一体成形の山形鋼材で構成されればよく、他の2本が鋼管によって構成される主材202であってもよい。この場合であっても、鉄塔201は、主材2において施工性を向上することができる。
【0037】
以上で説明した鉄塔1は、水平平面が正三角形平面であるものとして説明したが、これに限らず、二等辺三角形や扁平な三角形であってもよい。
【0038】
例えば、図6に例示するように、変形例に係る鉄塔301は、水平平面が直角二等辺三角形平面であり、直角をなす頂点に設けられる1本の主材302aと、45°をなす各頂点にそれぞれ設けられる2本の主材302bとを含んで構成される。各主材302a、302bは、例えば、押し出し成形によって形成され、これにより、一対のフランジが一体で形成される。主材302aは、水平方向に沿った断面形状が略L字型の山形をなす90°の等辺山形鋼材によって構成される。各主材302bは、水平方向に沿った断面形状が略V字型の山形をなし、設置された状態での水平断面においてV字型の角部307が鋭角、ここでは、45°となっている。つまり、各主材302bは、設置された状態での水平断面において角部307が45°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される。各主材302a、302bは、それぞれ鉄塔1の三角形平面における対応する頂点において、45°の角度、あるいは、90°の角度が内側を向くように配置される。この場合であっても、鉄塔301は、施工性を向上することができる。
【符号の説明】
【0039】
1、201、301 鉄塔
2、202、302a、302b 主材
3 副材
4 つなぎ材
5 斜材
6 座屈補剛材
7、307 角部
8 ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平平面が三角形平面である鉄塔であって、
前記三角形平面の各頂点にそれぞれ鉛直方向に沿って設けられる柱状の主材を備え、
複数の前記主材のうちの少なくとも1つは、角部が鋭角である一体成形の山形部材によって構成され、当該角部が対応する前記頂点をなすことを特徴とする、
鉄塔。
【請求項2】
複数の前記主材は、それぞれ角部が鋭角である一体成形の山形部材によって構成され、それぞれ当該角部が対応する前記頂点をなす、
請求項1に記載の鉄塔。
【請求項3】
前記三角形平面は、正三角形平面であり、
複数の前記主材は、それぞれ設置された状態での水平断面において前記角部が60°である一体成形の等辺山形鋼材によって構成される、
請求項1又は請求項2に記載の鉄塔。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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