説明

鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法

【課題】簡単な作業で鉄筋を連結させると共に、位置ズレが起こりにくい状態に鉄筋を連結させる。
【解決手段】略T字形状の金属板を所定の箇所で折曲させた金具であって、当該略T字の横辺部31を、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、複数の平面状の側面を有し、筒状に開口したクランプ3Aと、当該略T字の縦辺部32を、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、複数の平面状の側面を有し、筒状に開口したクランプ3Bとを備えた連結金具3により、交差させた鉄筋1と鉄筋2とを連結させる。連結金具3は、クランプ3Aを構成する平面状の側面を、鉄筋1の外周面に線接触させると共に、クランプ3Aの端部を鉄筋1の外周面にかしめ付けて鉄筋1を挟掴し、クランプ3Bを構成する平面状の側面を、鉄筋2の外周面に当接させると共に、クランプ3Bの端部のうち、横辺部31と反対側の端部を、鉄筋2の外周面にかしめ付けて鉄筋2を挟掴する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋の組み立てにおいて、交差する鉄筋を連結する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
床スラブ、支柱、あるいは梁等の鉄筋コンクリートを建造するときには、鉄筋を所定の間隔を隔てて配筋し、この配筋の周囲を型枠で囲ってコンクリートを打設する。ここで、鉄筋を配設したり、コンクリートを打設したりする際には、配筋した鉄筋の位置がずれないように鉄筋同士を、鉄筋が交差する部分で連結しておく。従来、この鉄筋同士の連結は、交差する鉄筋に針金を巻きつける結束や、鉄筋同士の溶接によって行われてきた。
【0003】
しかしながら、結束による連結では結束が緩むおそれがあるし、溶接による場合では適用可能な鉄筋の種類に制約がある上、アンダーカットを生じて鉄筋の強度を損なうおそれがあった。また、いずれによる場合でも、手間や時間がかかっていた。
【0004】
この点、特許文献1では、一対の鉄筋等の棒状体を略十字状に交差させて配筋するにあたり、その交差状態を保持して互いに結束させるための結束具であって、前記交差する各棒状体の外周面に沿ってラウンドし、それら外周面に弾性的に挟持可能で、しかも各棒状体をその内部に嵌合させるための嵌合口が形成された少なくとも一対の円弧板状のクランプ板部と、これら一対のクランプ板部を連結する連結板部とを備えた鉄筋等の棒状体の結束具が提案されている。
特許文献2では、鉄筋と繋ぎ鉄筋とを交差状態で固定するためのジョイントクリップを準備しておき、鉄筋コンクリート躯体を施工するに際して、複数の鉄筋を一方向に向けて平行に並べ、これに交差させて繋ぎ鉄筋を、ジョイントクリップを使用して固定することにより一方向メッシュを製作した後、この一方向メッシュを利用して柱又は梁の配筋を行って鉄筋コンクリート躯体を構築する鉄筋コンクリート躯体の施工方法が提案されている。
特許文献3では、基板の一方の鉄筋を嵌める第1嵌合溝が形成され、他方の面に他方の鉄筋を嵌める第2嵌合溝が形成され、両嵌合溝の少なくとも一方の内周面に、鉄筋の凸部と係合することで鉄筋の軸線方向の位置ずれを防止する突起が設けられている鉄筋クリップが提案されている。
特許文献4では、交差する二つの鉄筋を固定するための鉄筋固定用冶具であって、弾力性のある合成樹脂材料からなり一方の鉄筋を強制的にはめ込んでクランプするためのはめ込み用のスリットが形成されたC字形状の第1クランプ部材と、弾力性のある合成樹脂材料からなり他方の鉄筋を強制的にはめ込んでクランプするためのはめ込み用のスリットが形成されたC字形状の第2句ランプ部材とを具え、前記第1及び第2句ランプ部材が前記二つの鉄筋の交差状態に応じた交差角度をもって固着されている鉄筋固定用冶具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−193200号公報
【特許文献2】特開平09−158399号公報
【特許文献3】特開平11−36518号公報
【特許文献4】特開平11−229559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献記載の技術では、断面円形の鉄筋と金具とが、周方向において隙間なく当接しているため、鉄筋が金具内部で回転し、位置ズレを生じやすい。このようなことは、金具を鉄筋に取り付ける際にも起こりやすく、取付作業がやりにくい場合がある。
また、鉄筋を金具に取り付ける際、鉄筋を金具の嵌合溝等に嵌合させる方法では、鉄筋の寸法に応じた嵌合溝を備えた金具を鉄筋ごとに用意しなければならないし、鉄筋を嵌合させる際に嵌合溝が拡がるように歪んで嵌め込みが弱くなるおそれがある。
【0007】
そこで本発明は、簡単な作業で鉄筋を連結することができると共に、位置ズレの起こりにくい鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法を提供することを目的とする。
また、一定の範囲であれば、鉄筋の寸法によらず適応可能な連結金具による鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る鉄筋の連結構造は、略T字形状の金属板を所定の箇所で折曲させた金具であって、当該略T字の横辺部を、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、複数の平面状の側面を有し、筒状に開口した第一のクランプと、当該略T字の縦辺部を、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、複数の平面状の側面を有し、筒状に開口した第二のクランプと、を備えた連結金具により、交差させた、断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結構造であって、上記連結金具が、上記第一のクランプにより、当該第一のクランプを構成する平面状の側面を、上記第一の鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第一のクランプの端部を上記第一の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第一の鉄筋を挟掴し、上記第二のクランプにより、当該第二のクランプを構成する平面状の側面を、上記第二の鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第二のクランプの端部のうち、上記横辺部と反対側の端部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第二の鉄筋を挟掴することを特徴とする。
【0009】
また、上記連結金具の第一のクランプを形成する上記略T字の横辺部の両先端部が、内側に折曲して第一の鉤爪部を形成すると共に、上記第二のクランプを形成する上記略T字の縦辺部の先端部が、内側に折曲して第二の鉤爪部を形成しており、上記連結金具がさらに、上記第一の鉤爪部を、上記第一の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第一の鉄筋を挟掴すると共に、上記第二の鉤爪部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第二の鉄筋を挟掴するものとしてもよい。
【0010】
また、上記連結金具は、上記第一のクランプが、幅方向に長さを有し、内側に向かって突出した第一の突条を備えると共に、上記第二のクランプが、幅方向に長さを有し、内側に向かって突出した突条を備え、上記連結金具がさらに、上記第一の突条を、上記第一の鉄筋の外周面に線接触させて上記第一の鉄筋を挟掴すると共に、上記第二の突条を、上記第二の鉄筋の外周面に線接触させて上記第二の鉄筋を挟掴するものとしてもよい。
【0011】
また、上記第一の鉄筋及び第二の鉄筋は、異形鉄筋であるものとしてもよい。
【0012】
また、本発明の別の観点に係る鉄筋の連結工法は、略T字形状の金属板からなる連結金具により、交差させた、断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結工法であって、上記連結金具の略T字の横辺部を、上記第一の鉄筋の外周面に沿って、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、平面状の側面を有し、筒状に開口した第一のクランプを形成した上、当該第一のクランプを構成する平面状の側面を上記第一鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第一のクランプの両端部を上記第一の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第一の鉄筋を挟掴させる工程と、上記連結金具の略T字の縦辺部を、上記第二の鉄筋の外周面に沿って、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、平面状の側面を有し、筒状に開口した第二のクランプを形成した上、当該第二のクランプを構成する平面状の側面を上記第二鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第二のクランプの端部のうち、上記横辺部と反対側の端部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第二の鉄筋を挟掴させる工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、上記第一の鉄筋を挟掴させる工程は、上記第一のクランプにおいてかしめ付けられた両端部の反対側の形状に即した開口凹部を有する第一の冶具と、上記第一のクランプにおいてかしめ付けられた両端部側の形状に即した開口凹部を有する第二の冶具からなり、当該第一及び第二の冶具の凹部の開口部同士を向かい合わせることにより、上記第一のクランプの開口断面の形状を構成する一対の冶具により、上記略T字の横辺部のうち、上記第一のクランプの両端部の反対側を形成する部分を、上記第一の冶具の凹部にあてがって固定した状態から、上記第二の冶具を、上記略T字の横辺部のうち、上記第一のクランプの両端部を構成する側に押し当てることにより、上記第一のクランプを形成しつつ、上記第一のクランプにより上記第一の鉄筋を挟掴させるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な作業で鉄筋を連結することができると共に、位置ズレが起こりにくい状態に鉄筋を連結することができる。
また、一定の範囲であれば、鉄筋の寸法によらず鉄筋同士の連結が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す側断面図であり、(a)A−A矢視図、(b)B−B矢視図である。
【図3】本実施形態に係る鉄筋の連結構造において、鉄筋を連結する連結金具を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結工法において、一の鉄筋を挟掴する工程を示す外観斜視図であって、(a)挟掴する前、(b)挟掴した後、を示す。
【図5】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、一の鉄筋を挟掴する工程を示す側断面図であって、(a)上方から冶具を押し当てる様子、(b)下方から別の冶具を押し当てる様子、(c)二つの冶具により挟み込む様子、を示す。
【図6】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、別の鉄筋を挟掴する工程を示す外観斜視図であって、(a)挟掴する前、(b)挟掴した後、を示す。
【図7】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、別の鉄筋を挟掴する工程を示す側断面図であって、(a)挟掴する前、(b)挟掴した後、を示す。
【図8】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結工法を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施形態に係る鉄筋の連結工法、及び当該工法による連結構造について、図を参照して説明する。
図1、図2は、本実施形態に係る鉄筋の連結構造を示している。
十字状に交差する鉄筋1、2は、夫々を挟掴するクランプ3A、3Bを備えた連結金具3により、一体的に連結されている。
【0017】
鉄筋1、2はいずれも断面が略円形形状の異形鉄筋であり、コンクリートやモルタルの付着性を高め、引き抜き力に抵抗する力を増すための凹凸状のリブ11、12、21、22が外周面上に形成されている。
鉄筋1、2の外周面上に形成されたリブ11、12、21、22のうち、リブ11、21は夫々鉄筋1、2の軸線方向に沿って延びており、リブ12、22は夫々鉄筋1、2の周方向に沿って延びている。
【0018】
連結金具3は、十字状に交差させた鉄筋1、2を連結させる薄板状の金具であって、鋼やステンレスといった合金などの金属からなる。
この連結金具3は、連結に用いられる前は、図3に示されるように、横辺部31と縦辺部32とによって構成される略T字状の形状で提供され、連結の際に所定の箇所で折り曲げられて用いられる。
【0019】
横辺部31は鉄筋1、2を連結する際、所定の箇所で折り曲げられてクランプ3Aを形成し、鉄筋1を挟掴する部分である。
この横辺部31は少なくとも、クランプ3Aを形成して鉄筋1を挟掴した際に、長さ方向の一端部から他端部までの長さ(開口部分の長さ)が鉄筋1の直径よりも短く、また、長さが余って両端部が重なることのないように構成されている。
【0020】
また、横辺部31は連結の際、六ヶ所の折曲部m1、m2、m3、m4、m5、m6で折り曲げられて、鉄筋1を挟掴する平面状の挟掴面31a、31b、31c、31d、31e、31f、31gを備えたクランプ3Aを形成する。
折曲部m1と折曲部m2の間と、折曲部m5と折曲部m6の間の距離、折曲部m2と折曲部m3の間と、折曲部m4と折曲部m5の間の距離、折曲部m3から鉤爪部311までの間と、折曲部m4から鉤爪部312までの間の距離は夫々、互いに等しく形成されている。これにより形成されるクランプ3Aは、挟掴面31aの中心を通る線を対称軸として線対称に構成される。
【0021】
また、横辺部31の両端部には、挟掴する鉄筋1側に向かって屈曲した鉤爪状の鉤爪部311、312が形成されている。
さらに、横辺部31の中央、即ち挟掴面31aの中央には、横辺部31の幅方向と平行に、挟掴する鉄筋1側に突出した突条313が形成されている。
【0022】
かかる構成を備えた横辺部31を折曲させて形成されるクランプ3Aは、一側面が開口すると共に、筒状に両底面が開口した略八角柱形状からなる。そして、鉤爪部311、312が形成された両端部が鉄筋1の外周面上にかしめ付けられて、その内側に囲った鉄筋1を、挟掴面31b、31c、31d、31e、31f、31g、鉤爪部311、312、突条313により挟掴する。
【0023】
ここで、挟掴面31b、31c、31d、31e、31f、31g、鉤爪部311、312、突条313による鉄筋1の挟掴においては、鉄筋1を挟掴する挟掴面31b、31c、31d、31e、31f、31g、鉤爪部311、312、突条313と、断面略円形の鉄筋1とは夫々、鉄筋1の長さ方向に線接触した状態となっている。
なお、この状態において挟掴面31b、31c、31d、31e、31f、31g、鉤爪部311、312、突条313はいずれも、線接触する鉄筋1の外周面との関係において、鉄筋1と接触する部分の周形状の接線成分を包含する面あるいは線を形成している。
【0024】
縦辺部32は鉄筋1、2を連結する際、所定の箇所で折り曲げられてクランプ3Bを形成して、鉄筋2を挟掴する部分である。
この縦辺部32は少なくとも、クランプ3Bを形成して鉄筋2を挟掴した際に、長さ方向の一端部(横辺部31との境界部分)から他端部までの長さ(開口部分の長さ)が鉄筋2の直径よりも短く、また、長さが余って他端部が一端部に重なることのないように構成されている。
【0025】
また、縦辺部32は連結の際、五ヶ所の折曲部n1、n2、n3、n4、n5で折り曲げられて、鉄筋2を挟掴する平面状の挟掴面32a、32b、32c、32d、32e、32fを備えたクランプ3Bを形成する。
ここで、折曲部n1、n2、n3、n4、n5において折り曲げられた挟掴面32a、32b、32c、32d、32eは夫々、平面を構成する。一方、挟掴面32fは、クランプ3Bを形成した際、端部が鉄筋2の外周面にかしめ付けられて、弧状に折曲した曲面を構成する。
折曲部n1と折曲部n2の間と、折曲部n3と折曲部n4の間の距離は互いに等しく形成されている。
【0026】
また、この縦辺部32の端部のうち、横辺部31と反対側の端部には、挟掴する鉄筋2側に向かって屈曲した鉤爪状の鉤爪部321が形成されている。
また、縦辺部32には挟掴面32b、32dにおいて、縦辺部32の幅方向と平行に、挟掴する鉄筋2側に突出した突条322、323が形成されている。
【0027】
かかる構成を備えた縦辺部32を折曲させて形成されるクランプ3Bは、筒状に両底面が開口し、一側面が開口すると共に、筒状に両底面が開口した略角柱形状からなる。そして、挟掴面32f、及び挟掴面32fの端部に形成されている鉤爪部321が、鉄筋2の外周面にかしめ付けられて、その内側に囲った鉄筋2を、挟掴面32a、32c、32e、突条322、323により挟掴する。
【0028】
ここで、挟掴面32a、32c、32e、突条322、323による鉄筋1の挟掴においては、鉄筋2を挟掴する挟掴面32a、32c、32e、突条322、323と、断面略円形の鉄筋2とは夫々、鉄筋2の長さ方向に線接触した状態となっている。
なお、この状態において挟掴面32a、32c、32e、突条322、323はいずれも、線接触する鉄筋2の外周面との関係において、鉄筋2と接触する部分の周形状の接線成分を包含する面あるいは線を形成している。
【0029】
続いて、本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結工法について図を参照して説明する。本実施形態に係る鉄筋の連結工法は、連結金具3を用いて鉄筋1、2を連結することにより、既述した鉄筋の連結構造を提供する。
まず、鉄筋1を連結金具3により挟掴する。
図4(a)に示されるように、横辺部31の長さ方向と鉄筋1の軸線方向とが直交し、鉤爪部311、312と突条313が鉄筋1側を向くようにして、鉄筋1上に連結金具3を載置する。
それから図4(b)に示されるように、横辺部31を、折曲部m1、m2、m3、m4、m5、m6において鉄筋1の外周形状に沿って折曲させると共に、鉤爪部311、312が形成されている端部を鉄筋1の外周面上にかしめ付けてクランプ3Aを形成させる。これにより鉄筋1は、当該クランプ3Aを構成する挟掴面31b、31c、31d、31e、31f、31g、鉤爪部311、312、及び突条313と夫々、線接触により挟掴される。
【0030】
クランプ3Aを形成させて鉄筋1を挟掴する際には、図5に示されるように、冶具4A、4Bを用いるとよい。この冶具4A、4Bに形成されている凹部41、42は、夫々を向き合わせることで、クランプ3Aの断面形状に即した略八角形形状を形成する。
【0031】
冶具4Aは、鉄筋1上に載置された連結金具3の横辺部31を、折曲部m1、m6において折り曲げる。
この冶具4Aには、クランプ3Aの形状に即して、横辺部31を折曲部m1、m6において折曲させるための凹部41が形成されている。この凹部41は、底辺側が開口した略三角形状の断面を有し、向かい合う内側面41a、41bのなす角が、クランプ3Aを形成した際の挟掴面31b、31gのなす角と等しくなるように形成されている。
【0032】
また、冶具4Bは、連結金具3の横辺部31を、折曲部m3、m4において折り曲げる。
この冶具4Bには、クランプ3Aの形状に即して、横辺部31を折曲部m3、m4において折曲させるための凹部42が形成されている。この凹部42は、底辺側が開口した略三角形状の断面を有し、向かい合う内側面42a、42bのなす角が、クランプ3Aを形成した際の挟掴面31d、31eのなす角と略等しくなるように形成されている。
【0033】
図5(a)に示されるように、まず、鉄筋1上に載置した連結金具3に対し、連結金具3側から冶具4Aの凹部41を押し当てる。なお、この際、連結金具3は、突条313が鉄筋1の外周面上に当接した状態となっている。
【0034】
冶具4Aを押し当てられた連結金具3は、図5(b)に示されるように、凹部41の形状に即して折曲部m1、m6において折曲させられ、挟掴面31b、31gが鉄筋1の外周面に当接する。
さらに、連結金具3を折曲部m2、m5において折り曲げ、挟掴面31c、31fを鉄筋1の外周面に当接させた上、連結金具3に対し、鉄筋1側から冶具4Bの凹部42を押し当てる。
なお、ここまでの工程においては、冶具4Aを用いて連結金具3を折曲部m1、m6において折り曲げたが、冶具4Aによらず、折曲部m1、m6、さらにはm2、m5において連結金具3を折り曲げ、当該折り曲げた連結金具3を冶具4Aの凹部41内に嵌め込み、続く冶具4Bによる工程を行うものとしてもよい。
【0035】
冶具4Bを押し当てられた連結金具3は、図5(c)に示されるように、凹部42の形状に即して折曲部m3、m4において折曲させられ、挟掴面31d、31eが鉄筋1の外周面に当接すると共に、鉤爪部311、312が鉄筋1の外周面にかしめ付けられる。
これにより連結金具3は、底面が略多角形形状を形成すると共に、筒状に開口した略多角柱形状のクランプ3Aを形成した状態となり、このクランプ3Aによって鉄筋1が挟掴されている。
【0036】
次に、鉄筋2を連結金具3により挟掴し、鉄筋1と鉄筋2とを連結させる。
図6(a)、図7(a)に示されるように、鉄筋1に対して十字を形成するようにして、連結金具3の挟掴面32a上に鉄筋2を載置する。
それから図6(b)、図7(b)に示されるように、縦辺部32を、折曲部n1、n2、n3、n4、n5において、鉄筋2の外周形状に沿って折曲させると共に、挟掴面32fを鉄筋2の外周面2にかしめ付けてクランプ3Bを形成させる。これにより、当該クランプ3Bを構成する挟掴面32a、32c、32d、鉤爪部321、及び突条322、323によって、鉄筋2が挟掴される。
【0037】
続いて、複数の連結金具3を鉄筋1にまとめて取り付ける工法について、図8を参照して説明する。
この工法は、図5を参照して説明した冶具4Bの代わりに冶具4Cを用い、複数の冶具4Aと、冶具4Cにより、冶具4Aを押し当てた複数の連結金具3について一挙にクランプ3Aを形成させる。
【0038】
冶具4Cは棒状体からなり、一面側に凹部43が形成されている。
凹部43は、冶具4Bの凹部42と同様の断面形状を有し、冶具4Cの長さ方向に沿って溝状に延びて形成されている。即ち、凹部43は、クランプ3Aの形状に即して、底辺側が開口した略三角形状の断面からなり、向かい合う内側面43a、43bのなす角が、クランプ3Aを形成した際の挟掴面31d、31eのなす角と略等しくなるように形成されている。
【0039】
本工法の実施においては、まず、鉄筋1の連結箇所ごとに連結金具3を取り付ける。各連結箇所における当該工程は既に図5(a)、(b)において説明したのと同様である。即ち、鉄筋1上に載置された連結金具3に対し、連結金具3側から冶具4Aの凹部41を押し当てる。これにより連結金具3は、凹部41の形状に即して折曲部m1、m6において折曲させられ、挟掴面31b、31gが鉄筋1の外周面に当接する。さらに、連結金具3を折曲部m2、m5において折り曲げ、挟掴面31c、31fを鉄筋1の外周面に当接させる。
なお、冶具4Aによらず、折曲部m1、m6、さらにはm2、m5において連結金具3を折り曲げ、当該折り曲げた連結金具3を冶具4Aの凹部41内に嵌め込み、続く冶具4Cによる工程を行うものとしてもよい。
【0040】
このようにして鉄筋1に取り付けられた複数の連結金具3に対して、冶具4Cを押し当てる。具体的には、鉄筋1の軸線方向と、冶具4Cの長さ方向とを揃えると共に、冶具4Cの凹部43を連結金具3側に向けて、冶具4Cを複数の連結金具3にいっぺんに押し当てる。
これにより複数の連結金具3はいずれも、凹部42の形状に即して折曲部m3、m4において折曲させられると共に、各連結金具3の挟掴面31d、31e、鉤爪部311、312が鉄筋1の外周面に当接し、クランプ3Aがまとめて形成される。
このように複数の連結金具3について一挙にクランプ3Aを形成する工法は、クランプ3Aを形成する挟掴面31a、31b、31c、31d、31e、31f、31gが夫々、鉄筋1に即した曲面ではなく平面を形成し、鉄筋1と線接触しているために、連結金具3が鉄筋1の外周上を回転しにくく、位置が固定されていることで可能となっている。
【0041】
なお、本実施形態においては、連結金具3の鉤爪部311、312、321は予め設けておくものとしたが、これに限らず、クランプ3A、3Bを形成する際に設けることもできる。
また、本実施形態におけるクランプ3A、3Bにおいて、横辺部31、縦辺部32を折曲させる箇所及び折曲させる数は、特に限定されず、複数の平面状の側面によって、鉄筋1、2を挟掴することができればよい。
また、折曲部n1、n2、n3、n4、n5、m1、m2、m3、m4、m5、m6には、折曲に応じた浅い条溝を形成しておき、当該箇所で折曲しやすいようにしておいてもよい。
また、突条313、322、323は、本実施形態では、挟掴面31a、32b、32dにのみ設けたが、これに限らず、他の挟掴面に設けてもよい。
【0042】
以上の本実施形態に係る鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法によれば、簡単な作業で鉄筋を連結することができる。また、鉄筋に連結金具をかしめ付けるため、一定の範囲の寸法であれば、鉄筋の寸法によらず連結を行うことができる。さらに、鉄筋の外周面上に形成されているリブによる凹凸と、挟掴面、突条、鉤爪部とが係止し合って、位置ズレが起こりにくい状態に鉄筋を連結することができる。
【符号の説明】
【0043】
1、2 鉄筋
11、12、21、22 リブ
3 連結金具
31 横辺部
311、312 鉤爪部
313 突条
31a、31b、31c、31d、31e、31f、31g 挟掴面
m1、m2、m3、m4、m5、m6 折曲部
32 縦辺部
321 鉤爪部
322、323 突条
32a、32b、32c、32d、32e、32f 挟掴面
n1、n2、n3、n4、n5 折曲部
3A、3B クランプ
4A、4B、4C 冶具
41、42、43 凹部
41a、41b、42a、42b、43a、43b 内側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略T字形状の金属板を所定の箇所で折曲させた金具であって、
当該略T字の横辺部を、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、複数の平面状の側面を有し、筒状に開口した第一のクランプと、当該略T字の縦辺部を、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、複数の平面状の側面を有し、筒状に開口した第二のクランプと、を備えた連結金具により、
交差させた、断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結構造であって、
上記連結金具が、
上記第一のクランプにより、当該第一のクランプを構成する平面状の側面を、上記第一の鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第一のクランプの端部を上記第一の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第一の鉄筋を挟掴し、
上記第二のクランプにより、当該第二のクランプを構成する平面状の側面を、上記第二の鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第二のクランプの端部のうち、上記横辺部と反対側の端部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第二の鉄筋を挟掴する、
ことを特徴とする鉄筋の連結構造。
【請求項2】
上記連結金具の第一のクランプを形成する上記略T字の横辺部の両先端部が、内側に折曲して第一の鉤爪部を形成すると共に、上記第二のクランプを形成する上記略T字の縦辺部の先端部が、内側に折曲して第二の鉤爪部を形成しており、
上記連結金具がさらに、
上記第一の鉤爪部を、上記第一の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第一の鉄筋を挟掴すると共に、上記第二の鉤爪部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第二の鉄筋を挟掴する、
請求項1記載の鉄筋の連結構造。
【請求項3】
上記連結金具は、上記第一のクランプが、幅方向に長さを有し、内側に向かって突出した第一の突条を備えると共に、上記第二のクランプが、幅方向に長さを有し、内側に向かって突出した突条を備え、
上記連結金具がさらに、
上記第一の突条を、上記第一の鉄筋の外周面に線接触させて上記第一の鉄筋を挟掴すると共に、上記第二の突条を、上記第二の鉄筋の外周面に線接触させて上記第二の鉄筋を挟掴する、
請求項1又は2記載の鉄筋の連結構造。
【請求項4】
上記第一の鉄筋及び第二の鉄筋は、異形鉄筋である、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の連結構造。
【請求項5】
略T字形状の金属板からなる連結金具により、交差させた、断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結工法であって、
上記連結金具の略T字の横辺部を、上記第一の鉄筋の外周面に沿って、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、平面状の側面を有し、筒状に開口した第一のクランプを形成した上、当該第一のクランプを構成する平面状の側面を上記第一鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第一のクランプの両端部を上記第一の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第一の鉄筋を挟掴させる工程と、
上記連結金具の略T字の縦辺部を、上記第二の鉄筋の外周面に沿って、長さ方向の所定の箇所で折曲させて、平面状の側面を有し、筒状に開口した第二のクランプを形成した上、当該第二のクランプを構成する平面状の側面を上記第二鉄筋の外周面に線接触させると共に、当該第二のクランプの端部のうち、上記横辺部と反対側の端部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて上記第二の鉄筋を挟掴させる工程と、を有する、
ことを特徴とする鉄筋の連結工法。
【請求項6】
上記第一の鉄筋を挟掴させる工程は、
上記第一のクランプにおいてかしめ付けられた両端部の反対側の形状に即した開口凹部を有する第一の冶具と、上記第一のクランプにおいてかしめ付けられた両端部側の形状に即した開口凹部を有する第二の冶具からなり、当該第一及び第二の冶具の凹部の開口部同士を向かい合わせることにより、上記第一のクランプの開口断面の形状を構成する一対の冶具により、
上記略T字の横辺部のうち、上記第一のクランプの両端部の反対側を形成する部分を、上記第一の冶具の凹部にあてがって固定した状態から、上記第二の冶具を、上記略T字の横辺部のうち、上記第一のクランプの両端部を構成する側に押し当てることにより、上記第一のクランプを形成しつつ、上記第一のクランプにより上記第一の鉄筋を挟掴させる、
請求項5記載の鉄筋の連結工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−31659(P2012−31659A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172882(P2010−172882)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(396016504)株式会社富士ボルト製作所 (21)
【Fターム(参考)】