説明

鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法

【課題】簡単な作業で鉄筋を連結させると共に、位置ズレが起こりにくい状態に鉄筋を連結させる。
【解決手段】一枚の金属板を成形してなり、略十字状に重ねて交差させた断面略円形の鉄筋1と鉄筋2とを連結する連結金具3は、鉄筋1の外周面に沿って弧状に折曲した断面逆U字状のクランプ部31の内側に形成された嵌合溝31Aと、クランプ部31Aの両端から夫々延出した延出部の両端部において、折り返して形成された一対の鉤爪部34とを有する。この連結金具3により、鉄筋1と鉄筋2は、夫々が交差する部分において、クランプ部31と鉤爪部34とにより挟み込まれており、鉄筋1が嵌合溝31Aに嵌め込まれ、連結金具3の一対の鉤爪部34が鉄筋2の外周面にかしめ付けられて、鉄筋2の外周面に食い込むことにより、鉄筋1と鉄筋2とが連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋の組み立てにおいて、交差する鉄筋を連結する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
床スラブ、支柱、あるいは梁等の鉄筋コンクリートを建造するときには、鉄筋を所定の間隔を隔てて配筋し、この配筋の周囲を型枠で囲ってコンクリートを打設する。ここで、鉄筋を配設したり、コンクリートを打設したりする際には、配筋した鉄筋の位置がずれないように鉄筋同士を、鉄筋が交差する部分で連結しておく。従来、この鉄筋同士の連結は、交差する鉄筋に針金を巻きつける結束や、鉄筋同士の溶接によって行われてきた。
【0003】
しかしながら、結束による連結では結束が緩むおそれがあるし、溶接による場合では適用可能な鉄筋の種類に制約がある上、アンダーカットを生じて鉄筋の強度を損なうおそれがあった。また、いずれによる場合でも、手間や時間がかかっていた。
【0004】
この点、特許文献1では、一対の鉄筋等の棒状体を略十字状に交差させて配筋するにあたり、その交差状態を保持して互いに結束させるための結束具であって、前記交差する各棒状体の外周面に沿ってラウンドし、それら外周面に弾性的に挟持可能で、しかも各棒状体をその内部に嵌合させるための嵌合口が形成された少なくとも一対の円弧板状のクランプ板部と、これら一対のクランプ板部を連結する連結板部とを備えた鉄筋等の棒状体の結束具が提案されている。
特許文献2では、鉄筋と繋ぎ鉄筋とを交差状態で固定するためのジョイントクリップを準備しておき、鉄筋コンクリート躯体を施工するに際して、複数の鉄筋を一方向に向けて平行に並べ、これに交差させて繋ぎ鉄筋を、ジョイントクリップを使用して固定することにより一方向メッシュを製作した後、この一方向メッシュを利用して柱又は梁の配筋を行って鉄筋コンクリート躯体を構築する鉄筋コンクリート躯体の施工方法が提案されている。
特許文献3では、基板の一方の鉄筋を嵌める第1嵌合溝が形成され、他方の面に他方の鉄筋を嵌める第2嵌合溝が形成され、両嵌合溝の少なくとも一方の内周面に、鉄筋の凸部と係合することで鉄筋の軸線方向の位置ずれを防止する突起が設けられている鉄筋クリップが提案されている。
特許文献4では、交差する二つの鉄筋を固定するための鉄筋固定用冶具であって、弾力性のある合成樹脂材料からなり一方の鉄筋を強制的にはめ込んでクランプするためのはめ込み用のスリットが形成されたC字形状の第1クランプ部材と、弾力性のある合成樹脂材料からなり他方の鉄筋を強制的にはめ込んでクランプするためのはめ込み用のスリットが形成されたC字形状の第2句ランプ部材とを具え、前記第1及び第2クランプ部材が前記二つの鉄筋の交差状態に応じた交差角度をもって固着されている鉄筋固定用冶具が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−193200号公報
【特許文献2】特開平09−158399号公報
【特許文献3】特開平11−36518号公報
【特許文献4】特開平11−229559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献記載の技術では、金具が、断面円形の一対の鉄筋のいずれに対しても周方向において隙間なく当接しているため、鉄筋が金具内部で回転するなどして、位置ズレを生じやすい。このようなことは、金具を鉄筋に取り付ける際にも起こりやすく、取付作業がやりにくい場合がある。
また、鉄筋を金具に取り付ける際、予め規格化された嵌合溝等に鉄筋を嵌合させる方法では、鉄筋の寸法に応じて異なる金具を用意しなければならないし、鉄筋を嵌合させる際に嵌合溝が拡がるように歪んで嵌め込みが弱くなるおそれがある。
さらにいずれの金具も、一対の鉄筋のいずれに対しても、真っ直ぐな鉄筋の外周形状に応じて曲折した内周面を鉄筋の外周面にあてがう構造からなる。そのため、一の鉄筋に、別の鉄筋を巻き付けるように曲折させて交差させた場合に、この部分で鉄筋を連結しようとしても、曲折させた鉄筋にはうまく対応できなかった。
【0007】
そこで本発明は、簡単な作業で鉄筋を連結することができると共に、位置ズレの起こりにくい鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法を提供することを目的とする。
また、一定の範囲であれば、鉄筋の寸法によらず適応可能な連結金具による鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一の観点に係る鉄筋の連結構造は、一枚の金属板を成形してなり、略十字状に重ねて交差させた断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結する金具であって、当該第一の鉄筋の外周面に沿って弧状に折曲した断面逆U字状のクランプ部の内側に形成された嵌合溝と、当該クランプ部の両端から夫々延出した延出部の両端部において、折り返して形成された一対の鉤爪部と、を有する連結金具により、上記第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結構造であって、上記第一の鉄筋と第二の鉄筋は、夫々が交差する部分において、上記クランプ部と上記鉤爪部とにより挟み込まれており、上記第一の鉄筋が、上記嵌合溝に嵌め込まれ、上記連結金具の一対の鉤爪部が、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けられて、当該第二の鉄筋の外周面に食い込んでいることを特徴とする。
【0009】
また、上記クランプ部の両端部から上記鉤爪部にかけて延出する延出部には夫々、上記第二の鉄筋を嵌入させるための切欠部が形成されているものとしてもよい。
【0010】
また、上記第一の鉄筋は上記第二の鉄筋に比して長径であるものとしてもよい。
【0011】
また、上記第一の鉄筋及び第二の鉄筋は、異形鉄筋であるものとしてもよい。
【0012】
また、上記第二の鉄筋は、上記第一の鉄筋と交差する箇所において、上記第一の鉄筋を内側にして屈曲しており、上記第一の鉄筋と上記第二の鉄筋が交差する部分において、上記連結金具の一対の鉤爪部が、上記第二の鉄筋が屈曲する箇所を間にして、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けられているものとしてもよい。
【0013】
また、本発明の別の観点に係る鉄筋の連結工法は、一枚の金属板を成形してなり、略十字状に重ねて交差させた断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結する金具であって、当該第一の鉄筋の外周面に沿って弧状に折曲した断面逆U字状のクランプ部の内側に形成された嵌合溝と、当該クランプ部の両端から夫々延出した延出部の両端部において、折り返して形成された一対の鉤爪部と、を有する連結金具により、上記第一の鉄筋と第二の鉄筋を、夫々が交差する部分において、上記クランプ部と上記鉤爪部とにより挟み込み、上記第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結工法であって、上記第一の鉄筋を、上記嵌合溝に嵌め込む工程と、上記連結金具の一対の鉤爪部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて、当該第二の鉄筋の外周面に食い込ませる工程と、を有することを特徴とする。
【0014】
また、上記クランプ部の外周面形状に即した凹部が形成され、当該凹部に上記クランプ部が嵌め込まれた上記連結金具を押圧する第一のダイスと、平坦な押圧面を有し、当該押圧面に上記鉤爪部が当接させられた上記連結金具を押圧する第二のダイスと、当該第一のダイスと当該第二のダイスとの間に挟み込んだ連結金具に押圧力をかける圧着機構とを有し、上記鉤爪部を上記第二の鉄筋にかしめ付けるための圧着器を用いて行われ、上記第一の鉄筋が上記嵌合溝に嵌め込まれたクランプ部を上記第一のダイスの凹部に嵌め込む工程、をさらに有し、上記連結金具の鉤爪部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付ける工程が、上記鉤爪部に上記第二のダイスの押圧面を当接させた上、上記圧着機構によって、上記第一のダイスと上記第二のダイスとで、上記第一の鉄筋と上記第二の鉄筋とが嵌め込まれた連結金具を押圧することにより行われるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、簡単な作業で鉄筋を連結することができると共に、位置ズレが起こりにくい状態に鉄筋を連結することができる。
また、一定の範囲であれば、鉄筋の寸法によらず鉄筋同士の連結が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す外観斜視図である。
【図2】本実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す(a)平面図、(b)正面図、(c)側断面図である。
【図3】本実施形態に係る鉄筋の連結構造において、鉄筋を連結する連結金具を示す外観斜視図である。
【図4】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具に鉄筋を嵌合させる工程を示す外観斜視図であって、(a)一の鉄筋を嵌合させる様子、(b)他の鉄筋を嵌合させる様子、(c)両方の鉄筋を嵌合させた様子を示す。
【図5】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具に鉄筋を嵌合させる工程を示す外観斜視図であって、(a)一の鉄筋を嵌合させる様子、(b)他の鉄筋を嵌合させる様子、(c)両方の鉄筋を嵌合させた様子を示す。
【図6】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具の鉤爪部を鉄筋にかしめ付ける工程を示す正面断面図であって、(a)かしめ付ける前、(b)かしめ付けた後を示す。
【図7】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具の鉤爪部を鉄筋にかしめ付ける際に用いる圧着器を示す外観斜視図であって、(a)全体、(b)固定ダイスを示す。
【図8】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具の鉤爪部を鉄筋にかしめ付ける際に、圧着器を連結金具にあてがう様子を示す外観斜視図である。
【図9】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、圧着器により連結金具の鉤爪部が鉄筋にかしめ付けられる様子を示す正面断面図であって、(a)かしめ付ける前、(b)かしめ付けた後を示す。
【図10】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す外観斜視図である。
【図11】本実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す正面断面図である。
【図12】本実施形態に係る鉄筋の連結構造を形成するための連結工法において、圧着器により連結金具の鉤爪部が鉄筋にかしめ付けられる様子を示す正面図であって、(a)かしめ付ける前、(b)かしめ付けた後を示す。
【図13】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す正面断面図である。
【図14】本実施形態に係る鉄筋の連結構造において、鉄筋を連結する連結金具を示す外観斜視図である。
【図15】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具の鉤爪部を鉄筋にかしめ付ける工程を示す正面断面図であって、(a)かしめ付ける前、(b)かしめ付けた後を示す。
【図16】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す外観斜視図である。
【図17】本実施形態に係る鉄筋の連結工法において、連結金具の鉤爪部を鉄筋にかしめ付ける工程を示す正面断面図であって、(a)かしめ付ける前、(b)かしめ付けた後を示す。
【図18】本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結構造を示す外観斜視図である。
【図19】本実施形態に係る鉄筋の連結構造において、鉄筋を連結する連結金具を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態に係る鉄筋の連結構造、及び当該構造を形成するための連結工法について、図を参照して説明する。
図1、図2は、本実施形態に係る鉄筋の連結構造を示している。
十字状に交差する鉄筋1、2は、鉄筋1が嵌め込まれる嵌合溝31Aと、鉄筋2にかしめ付けられる鉤爪部34とを備えた連結金具3により、一体的に連結されている。
【0018】
鉄筋1、2はいずれも断面が略円形状の異形鉄筋である。
この鉄筋1、2の外周面上には、コンクリートやモルタルの付着性を高め、引き抜き力に抵抗する力を増すための凹凸状のリブ11、12、21、22が形成されている。
ここで、リブ11、12、21、22のうち、リブ11、21は夫々鉄筋1、2の軸線方向に沿って延びており、リブ12、22は夫々鉄筋1、2の周方向に沿って延びている。
【0019】
また、本例における鉄筋1には、鉄筋2に比して断面の直径が長いもの(太いもの)が用いられている。他方、鉄筋2には、鉄筋1に比して断面の直径が短いもの(細いもの)が用いられている。
具体的に想定される場面では、鉄筋1は梁主筋や柱主筋を、鉄筋2はこの梁主筋や柱主筋に巻きつけられるスターラップ(あばら筋)やフープ(帯筋)を構成する。
【0020】
連結金具3は、十字状に交差させた鉄筋1、2を連結させる金具であって、鋼やステンレスといった合金などからなる一枚の金属板を成形加工してなる。
この連結金具3について、連結に用いられる前の状態を図3に示す。
連結に用いられる前の状態において、連結金具3は、断面逆U字形状に屈曲して形成されたクランプ部31と、このクランプ部31の両端部から下方に延び出た延出部32とからなる。
【0021】
クランプ部31は、鉄筋1の外周形状に即して断面略逆U字形状に屈曲している。クランプ部31がこのように屈曲していることで、その内側には、鉄筋1を嵌め込むための嵌合溝31Aが形成されている。
【0022】
クランプ部31の両端部から下方に延出した一対の延出部32には夫々、鉄筋2を嵌め込むために切り欠かれた切欠部33が形成されている。
この切欠部33は、奥から入口に向かって広く切り欠かれており、鉄筋2を嵌入させ易くなっている。
また、奥の部分は入口部分よりも深く、また、鉄筋2の外周形状に即して弧状に切り欠かれている。これにより、鉄筋2を切欠部33に嵌入させた状態において、鉄筋2がこの切欠部33から転がり出にくく、鉤爪部34によるかしめ付けの作業等を行いやすい。
【0023】
さらに、延出部32の端部には、外側に向かって折り返された鉤爪部34が形成されている。この鉤爪部34は、鉄筋2にかしめ付けられる前は、図3に示されるように、外側に向かって略直角に折曲した形状で提供される。一方、鉄筋1と鉄筋2とを連結する際には、図2(b)に示されるように、さらに外側へ折り返され、切欠部33に嵌め込まれた鉄筋2にかしめ付けられる。
また、鉤爪部34は、鉄筋1、2の表面に形成されたリブ11、12、21、22による凹部、あるいは鉄筋1、2自体に食い込み、位置ズレが起きにくいようになっている。
【0024】
以上の構成を有する連結金具3による鉄筋1、2の連結構造を鉄筋2の軸線方向でみると、図2(c)に示されるように、クランプ部31が鉄筋1を押さえつけている部分と、鉄筋1と鉄筋2とが交差する部分と、鉄筋2が鉤爪部34によってかしめ付けられている部分が、略一直線上に並ぶ。
これにより、鉄筋1と鉄筋2が交差する部分が上下から押さえつけられ、鉄筋1と鉄筋2が強固に連結されている。
【0025】
続いて、本実施形態に係る鉄筋の連結工法について図を参照して説明する。本実施形態に係る鉄筋の連結工法は、連結金具3を用いて鉄筋1、2を連結することにより、既述した鉄筋1、2の連結構造を提供する。
まず、鉄筋1、2を連結金具3に嵌め込む工程について説明する。
この工程の一例では、図4(a)に示されるように、予め所定の位置で鉄筋1、2を交差させておく。そして、当該鉄筋1、2が交差する箇所から僅かに離れた箇所において、連結金具3の嵌合溝31Aに鉄筋1を嵌め込む。この際、切欠部33が、鉄筋1、2が交差する部分に向くように嵌め込む。
それから図4(b)に示されるように、鉄筋1上において、連結金具3を鉄筋1の軸線方向に沿って摺動させる。
これにより、図4(c)に示されるように、切欠部33に鉄筋2が嵌まり込み、鉄筋1、2が連結金具3に嵌め込まれた状態となる。
【0026】
また、鉄筋1、2を連結金具3に嵌め込む工程は他の例によることもできる。
この例ではまず、図5(a)に示されるように、鉄筋1、2を交差させる箇所において、連結金具3の嵌合溝31Aに鉄筋1を嵌め込む。
それから、図5(b)に示されるように、連結金具3の切欠部33に鉄筋2を嵌め込む。
これにより、図5(c)に示されるように、連結金具3によって鉄筋1と鉄筋2とが十字状に交差し、鉄筋1、2が連結金具3に嵌め込まれた状態となる。
【0027】
次に、図6(a)に示されるように、連結金具3の鉤爪部34を外側に屈曲させ、鉄筋2に鉤爪部34をかしめ付ける。
これにより、図6(b)に示されるように、十字状に交差する部分においてクランプ部31と鉤爪部34により挟み込まれた鉄筋1と鉄筋2は、上方からクランプ部31によって押さえつけられると共に、下方から鉤爪部34によってかしめ付けられ、固定的に連結される。
【0028】
ここで、鉤爪部34によるかしめ付けに用いるのに好適な圧着器4を図7に示す。
図7(a)に示されるように、圧着器4は、鉄筋1、2が嵌め込まれた連結金具3を上下から挟み込んで押圧力を加え、鉤爪部34を屈曲させて鉄筋2にかしめ付ける工具である。
この圧着器4は、鉄筋1、2が嵌め込まれた連結金具3を上下から挟み込むコの字形状の圧着部41を具え、内部には、圧着部41により挟み込んだ連結金具3に押圧力を加えるための油圧式圧着器構を備えている。
【0029】
圧着部41には、鉄筋1、2が嵌合溝31A又は切欠部33に嵌め込まれた連結金具3を上方から押圧する固定ダイス41aと、下方から押圧する可動ダイス41bが設けられている。
固定ダイス41aは、図7(b)に示されるように、向かい合う一対の側面部が楕円形状に膨らんだ略直方体形状からなる。この固定ダイス41aには、クランプ部31の形状に即して、側面部が断面逆U字状に貫通して開口すると共に下面側に開口した凹部411が形成されている。
この固定ダイス41aは、圧着部41において、水平方向に自在に回転させることができ、圧着部41に挟み込まれた連結金具3のクランプ部31の向きに応じて、凹部411の向きを合わせることができる。
【0030】
可動ダイス41bは円柱形状からなる。
この可動ダイス41bは、少なくとも連結金具3の鉤爪部34に当接し、この鉤爪部34を押圧する押圧面412を構成する上面が平坦に構成されていればよい。
また、この可動ダイス41bは、油圧式圧着機構を構成するピストンの先端に嵌着されており、ピストンの動きに従って上下する。これにより、固定ダイス41aと可動ダイス41bの間隔を広げたり狭めたりすることができ、圧着部41に挟み込んだ連結金具3に上下から押圧力を加えることができる。
【0031】
油圧式圧着機構は、ピストンを収装したシリンダ、シリンダ内を摺動するピストン等を備え、シリンダ内に作動油を供給する油圧源と接続している。さらに、この油圧式圧着機構を構成するピストンの先端部には、可動ダイス41bが嵌着されており、油圧源から供給された作動油によってピストンを摺動させることで、可動ダイス41bを固定ダイス41a側に移動させることができる。
【0032】
この圧着器4を用いて、鉤爪部34によるかしめ付けを行う場合には、図8に示されるように、十字状に交差する鉄筋1と鉄筋2夫々に対して斜めとなる位置から、圧着部41に連結金具3を挟み込ませる。この際、固定ダイス41aを回転させ、クランプ部31の形状に合わせて凹部411をあてがう。
【0033】
それから、図9に示されるように、ピストンを摺動させることにより可動ダイス41bを固定ダイス41a側に移動させ、凹部411及び押圧面412を介して鉤爪部34に押圧力を加えると、鉤爪部34は外側に屈曲させられて、鉄筋2にかしめ付けられる。さらに、押圧力を加えることで、鉤爪部34を鉄筋2に食い込ませ、強固に連結することができる。
【0034】
なお、鉤爪部34を鉄筋2にかしめ付ける際、鉤爪部34が外側に屈曲し易いように、かしめ付けによって屈曲する部分(延出部32と鉤爪部34の境界部分)の外側に、鉤爪部34の長さ方向と平行な条溝を形成しておいてもよい。これにより鉤爪部34は、かしめ付けの際、外側へ屈曲するように誘導され、当該条溝に沿ってきれいに屈曲する。
【0035】
これにより、簡単な作業で鉄筋1、2を連結することができる。
また、リブ11、12、21、22によって形成される鉄筋1、2の表面の凹部に鉤爪部34が食い込むため、連結した鉄筋1、2の位置ズレが起こりにくい。
また、鉤爪部43によるかしめ付けによって鉄筋1、2を連結することから、所定の範囲内であれば、鉄筋1、2の寸法によらず鉄筋1、2同士の連結が可能である。
【0036】
以上の構成からなる連結金具3によれば、真っ直ぐな鉄筋1、2同士が十字状に交差する箇所のみならず、鉄筋2が屈曲した箇所においても、鉄筋1、2同士を連結させることができる。この場合の連結構造を図10及び図11に示す。
【0037】
鉄筋2は鉄筋1の外周形状に沿って屈曲し、鉄筋1の外周上に巻きつけられている。
そして、鉄筋1、2が交差する箇所において、鉄筋1は、鉄筋2と反対側から、嵌合溝31Aに嵌め込まれている。
また、鉤爪部34は、鉄筋1、2が交差する箇所において、鉄筋2が屈曲する箇所を間にして、鉄筋1の反対側から鉄筋2の外周面にかしめ付けられている。
【0038】
続いて、この場合の連結工法について図12を参照して説明する。
ここでも、既述した圧着器を好適に用いることができるが、可動ダイス41bに替えて、可動ダイス41cを用いる。
可動ダイス41cの全体形状は、可動ダイス41bと同様に、円柱形状からなるが、中央部に円柱形状、あるいは直方体形状ないし立方体形状にくり貫かれた凹部413が形成されている。また、凹部413を取り囲む外縁部分の表面は、鉤爪部34を押圧する押圧面414を構成する。
【0039】
可動ダイス41cが取り付けられた圧着器4を用いて、鉤爪部34によるかしめ付けを行う場合には、まず、十字状に交差する鉄筋1、2夫々に対して斜めとなる位置から、圧着部41に連結金具3を挟み込ませる。
この際、図12(a)に示されるように、固定ダイス41aを回転させ、クランプ部31の形状に合わせて凹部411をあてがう。
また、鉄筋2の屈曲した箇所に可動ダイス41cの凹部413を向かい合わせる。
【0040】
それから、ピストンを摺動させることにより可動ダイス41cを固定ダイス41a側に移動させ、凹部411及び押圧面414を介して鉤爪部34に押圧力を加えると、鉤爪部34は外側に屈曲させられて、鉄筋2にかしめ付けられる。
この際、鉄筋2の屈曲した部分は、可動ダイス41cの凹部413に収まり、鉤爪部43のかしめ付けの邪魔にならない。
【0041】
次に、本発明の別の実施形態に係る鉄筋の連結構造、及び当該構造を形成するための連結工法について、図13を参照して説明する。
十字状に交差する鉄筋1、2は、鉄筋1が嵌め込まれる嵌合溝51Aと、鉄筋2にかしめ付けられる鉤爪部54とを備えた連結金具5により、一体的に連結されている。
本実施形態においては、連結金具3による連結とは異なり、連結金具5の鉤爪部54が、内側に折り返して鉄筋2にかしめ付けられている。
【0042】
ここで、連結金具5は連結金具3と同様、十字状に交差させた鉄筋1、2を連結させる金具であって、鋼やステンレスといった合金などからなる一枚の金属板を成形加工してなる。
また、この連結金具5について、連結に用いられる前の状態を図14に示す。
連結金具5は、嵌合溝51Aが形成されたクランプ部51と、切欠部53と鉤爪部54が形成された延出部52からなる。クランプ部51、嵌合溝51A、延出部52、及び切欠部53の構成は夫々、連結金具3のクランプ部31、嵌合溝31A、延出部32、及び切欠部33の構成と同様である。
【0043】
一方、延出部52の端部に形成された鉤爪部54は、連結金具3と異なり、内側に向かって略直角に折り返した形状で提供される。
この鉤爪部54は、鉄筋1と鉄筋2とを連結する際には、図15に示されるように、さらに内側へ折り返され、切欠部52に嵌め込まれた鉄筋2にかしめ付けられる。
【0044】
この連結金具5により、鉄筋1と鉄筋2とを連結する工程については、まず、既述した連結工程と同様に、連結金具の嵌合溝51A及び切欠部53に夫々、鉄筋1及び鉄筋2を嵌め込む。それから適宜、圧着器4を用い、連結金具5を挟み込んで押圧力を加え、鉤爪部54を内側に屈曲させて、鉤爪部54を鉄筋2にかしめ付ける。これにより、連結金具5の鉤爪部54が鉄筋2にかしめ付けられ、さらに押圧力を加えることで、鉤爪部54を鉄筋2に食い込ませることができる。
【0045】
なお、鉤爪部54を鉄筋2にかしめ付ける際、鉤爪部54が内側に屈曲し易いように、かしめ付けによって屈曲する部分(延出部52と鉤爪部54の境界部分)の内側に、鉤爪部54の長さ方向と平行な条溝を形成しておいてもよい。これにより鉤爪部54は、かしめ付けの際、内側へ屈曲するように誘導され、当該条溝に沿ってきれいに屈曲する。
【0046】
さらに、以上の構成かなる連結金具5は、連結金具3と同様に、鉄筋2が屈曲した箇所においても、鉄筋1、2同士を連結させることができる。この場合の連結構造を図16に示す。
【0047】
鉄筋2は鉄筋1の外周形状に沿って屈曲し、鉄筋1の外周上に巻きつけられている。
そして、鉄筋1、2が交差する箇所において、鉄筋1は、鉄筋2と反対側から、嵌合溝51Aに嵌め込まれている。
また、鉤爪部54は、鉄筋1、2が交差する箇所において、鉄筋2が屈曲する箇所を間にして、鉄筋1の反対側から鉄筋2の外周面にかしめ付けられている。かしめ付けにおいては、連結金具3の場合と異なり、鉤爪部54は内側に屈曲している。
【0048】
鉄筋1と、屈曲した鉄筋2とを連結する工程についても、連結金具3において既述したのと同様の工程によることができる。即ち、図17に示されるように、連結金具の嵌合溝51A及び切欠部53に夫々、鉄筋1及び鉄筋2を嵌め込む。それから、可動ダイス41cが取り付けられた圧着器4を適宜用いて、連結金具5を挟み込んで押圧力を加え、鉤爪部54を内側に屈曲させて、鉤爪部54を鉄筋2にかしめ付ける。これにより、連結金具5の鉤爪部54が鉄筋2にかしめ付けられ、さらに押圧力を加えることで、鉤爪部54を鉄筋2に食い込ませることができる。
【0049】
また、さらに別の実施形態に係る鉄筋の連結構造を図18に示す。
この例では、十字状に交差する鉄筋1、2は、鉄筋1が嵌め込まれる嵌合溝61Aと、鉄筋2を挿通させる挿通孔63と、鉄筋2にかしめ付けられる鉤爪部64とを備えた連結金具6により、一体的に連結されている。
本実施形態においては、鉄筋2が切欠部33に嵌め込まれる、連結金具3による連結とは異なり、連結金具6に形成された挿通孔63に鉄筋2が挿通されている。
【0050】
ここで、連結金具6は連結金具3と同様、十字状に交差させた鉄筋1、2を連結させる金具であって、鋼やステンレスといった合金などからなる一枚の金属板を成形加工してなる。
また、この連結金具6について、連結に用いられる前の状態を図19に示す。
連結金具6は、嵌合溝61Aが形成されたクランプ部61と、挿通孔63と鉤爪部64が形成された延出部62とからなる。クランプ部61、嵌合溝61A、及び鉤爪部64の構成は夫々、連結金具3のクランプ部31、嵌合溝31A、及び鉤爪部34の構成と同様である。なお、鉤爪部64は、連結金具5の鉤爪部54のように、内側に折り返されたものであってもよい。
【0051】
一方、延出部62には、連結金具3と異なり、鉄筋2を挿通させるための一対の挿通孔63が形成されている。この挿通孔63はその断面が、鉄筋2の直径よりも僅かに大きい円状に形成されている。
【0052】
この連結金具6により、鉄筋1と鉄筋2とを連結する工程については、鉄筋1を嵌合溝61Aに嵌め込むと共に、鉄筋2を一対の挿通孔63に挿通させる。鉄筋1、2の取り付けの順番は、施工に応じて任意に選択することができる。
なお、鉤爪部64を鉄筋2にかしめ付ける工程は、連結金具3、5による連結工程において既述した工程と同様に行うことができる。
【0053】
以上の本実施形態に係る鉄筋の連結構造、及び鉄筋の連結工法によれば、簡単な作業で鉄筋1、2を連結することができる。また、かしめ付けによって鉄筋1、2を連結するため、一定の範囲の寸法であれば、鉄筋1、2の寸法によらず連結を行うことができる。また、鉄筋1、2の外周面上に形成されているリブ11、12、21、22による凹凸と、鉤爪部34、54とが係止し合って、位置ズレが起こりにくい状態に鉄筋1、2を連結することができる。さらに、鉄筋2を屈曲させて、鉄筋1に巻きつけた箇所であっても、連結金具3、5を用いて、鉄筋1、2を連結させることができる。
【符号の説明】
【0054】
1、2 鉄筋
11、12、21、22 リブ
3、5、6 連結金具
31、51、61 クランプ部
31A、51A、61A 嵌合溝
32、52、62 延出部
33、53 切欠部
34、54、64 鉤爪部
4 圧着器
41 圧着部
41a 固定ダイス
41b、41c 可動ダイス
411、413 凹部
412、414 押圧面
63 挿通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一枚の金属板を成形してなり、略十字状に重ねて交差させた断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結する金具であって、当該第一の鉄筋の外周面に沿って弧状に折曲した断面逆U字状のクランプ部の内側に形成された嵌合溝と、当該クランプ部の両端から夫々延出した延出部の両端部において、折り返して形成された一対の鉤爪部と、を有する連結金具により、
上記第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結構造であって、
上記第一の鉄筋と第二の鉄筋は、夫々が交差する部分において、上記クランプ部と上記鉤爪部とにより挟み込まれており、
上記第一の鉄筋が、上記嵌合溝に嵌め込まれ、
上記連結金具の一対の鉤爪部が、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けられて、当該第二の鉄筋の外周面に食い込んでいる、
ことを特徴とする鉄筋の連結構造。
【請求項2】
上記クランプ部の両端部から上記鉤爪部にかけて延出する延出部には夫々、上記第二の鉄筋を嵌入させるための切欠部が形成されている、
請求項1記載の鉄筋の連結構造。
【請求項3】
上記第一の鉄筋は上記第二の鉄筋に比して長径である、
請求項1又は2記載の鉄筋の連結構造。
【請求項4】
上記第一の鉄筋及び第二の鉄筋は、異形鉄筋である、
請求項1乃至3いずれかの項に記載の鉄筋の連結構造。
【請求項5】
上記第二の鉄筋は、上記第一の鉄筋と交差する箇所において、上記第一の鉄筋を内側にして屈曲しており、
上記第一の鉄筋と上記第二の鉄筋が交差する部分において、上記連結金具の一対の鉤爪部が、上記第二の鉄筋が屈曲する箇所を間にして、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けられている、
請求項1乃至4いずれかの項に記載の鉄筋の連結構造。
【請求項6】
一枚の金属板を成形してなり、略十字状に重ねて交差させた断面略円形の第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結する金具であって、当該第一の鉄筋の外周面に沿って弧状に折曲した断面逆U字状のクランプ部の内側に形成された嵌合溝と、当該クランプ部の両端から夫々延出した延出部の両端部において、折り返して形成された一対の鉤爪部と、を有する連結金具により、
上記第一の鉄筋と第二の鉄筋を、夫々が交差する部分において、上記クランプ部と上記鉤爪部とにより挟み込み、上記第一の鉄筋と第二の鉄筋とを連結させる鉄筋の連結工法であって、
上記第一の鉄筋を、上記嵌合溝に嵌め込む工程と、
上記連結金具の一対の鉤爪部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付けて、当該第二の鉄筋の外周面に食い込ませる工程と、を有する、
ことを特徴とする鉄筋の連結工法。
【請求項7】
上記クランプ部の外周面形状に即した凹部が形成され、当該凹部に上記クランプ部が嵌め込まれた上記連結金具を押圧する第一のダイスと、平坦な押圧面を有し、当該押圧面に上記鉤爪部が当接させられた上記連結金具を押圧する第二のダイスと、当該第一のダイスと当該第二のダイスとの間に挟み込んだ連結金具に押圧力をかける圧着機構とを有し、上記鉤爪部を上記第二の鉄筋にかしめ付けるための圧着器を用いて行われ、
上記第一の鉄筋が上記嵌合溝に嵌め込まれたクランプ部を上記第一のダイスの凹部に嵌め込む工程、をさらに有し、
上記連結金具の鉤爪部を、上記第二の鉄筋の外周面にかしめ付ける工程が、上記鉤爪部に上記第二のダイスの押圧面を当接させた上、上記圧着機構によって、上記第一のダイスと上記第二のダイスとで、上記第一の鉄筋と上記第二の鉄筋とが嵌め込まれた連結金具を押圧することにより行われる、
上記請求項6記載の鉄筋の連結工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−31660(P2012−31660A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172883(P2010−172883)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(396016504)株式会社富士ボルト製作所 (21)
【Fターム(参考)】