説明

鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒

【課題】型枠合板端で挟みこむ挟み片を一体に突設することで、釘止めをせずに型枠に固定できるので、コンクリートの打設時に剥がれたり、ずれたりするおそれがない。
【解決手段】型枠合板5に設置する目地棒9において、目地棒9の型枠合板5の接合面側に、型枠合板5端で挟み込む挟み片11を一体に突設した。また、目地棒9にノッチ形成用の尖頭突起12を一体に突設した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1にもあるように、目地棒は、コンクリート,モルタル構造物の目地形成に使用するもので、近年、断面台形の発泡合成樹脂製のものと、内部が中空の硬質合成樹脂製のものとが広く実用化され、1本が約2mで、木製型枠パネルに上底部から釘打ちして使用するものである。
【特許文献1】特開平11−141121号公報
【0003】
一方、鉄筋鉄骨コンクリート造、鉄筋コンクリート造などの鉄筋コンクリート造建築物の外壁などではコンクリートの乾燥収縮により亀裂が発生し、躯体強度の低下を招くおそれがある。そこで、任意の多数箇所に亀裂が発生することを防止するため、コンクリート躯体の所定箇所に予め亀裂誘発部(ノッチ)を施しておき、この箇所に応力を集中させてひび割れを積極的に起こし、他の箇所に亀裂が発生しないようにしている。
【0004】
下記特許文献2は、化粧目地部にひび割れを確実に生じさせるようにしたもので、コンクリートの打設時に目地部に亀裂誘発部(ノッチ)を形成するための目地部材である。
【特許文献2】特開2004−346559号公報
【0005】
図11に示すように、目地部材1の基端部2は、台形の下底を構成する面が露出面となる。断面欠損部3は、例えば、板状の鉄板で構成され、基端部2に設置された状態で、基端部2から突出する部分を覆う鞘部材8が設けられている。鞘部材8は、コンクリート硬化後、断面欠損部3を容易に取除くことができるように、断面欠損部3が直接コンクリートと接しないよう、断面欠損部3のコンクリートと接する表面を全て覆うように形成される。また、鞘部材8はコンクリート構造物中に残るので、止水機能を高めるため非加硫ブチルゴム等で形成する。
【0006】
基端部2の型枠4への固定は、例えば、釘止めによって行い、千鳥打ちする。また、基端部2をコンクリートから取除き易くするために、基端部2の表面に剥離材を塗布する。断面欠損部3と鞘部材8との間には、摩擦を少なくして断面欠損部3を抜き取り易くするために、油脂等を塗布する。
【0007】
型枠4を設置し、コンクリート打設後、基端部2は型枠4と共にコンクリート構造物から取除かれる。更に、断面欠損部3(板状部材)についてもコンクリート構造物から取除き、その後、鞘部材8をコンクリート構造物の内部に残した状態で、この化粧目地部に充填材を充填する。
【0008】
このように、目地部材1を基端部2と剛性を有する断面欠損部3とを有する構成にしてあれば、ひび割れをコンクリート表面側から発生させることができる。コンクリート表面の化粧目地部よりひび割れを誘導するため、ひび割れが化粧目地部から離れた部位に発生するのを防止できる。また、コンクリート表面に基端部、内方に断面欠損部を一体に構成するから、両者間の位置ずれが生じ得ず、基端部及び断面欠損部の位置決めにかかる手間も省力化できる。
【0009】
更に、断面欠損部3を剛性を有する部材で構成することにより、コンクリートの打設時に、断面欠損部3が変形したり湾曲したりするのを防止し、断面欠損部3を所期の位置姿勢に確実に固定して意図しない部位にひび割れが生じるのを有効に防止することができる。
【0010】
従って、基端部と剛性を有する断面欠損部とを有する構成にすることにより、コンクリート構造物の形成を容易にし、且つ、ひび割れを適切に誘導することが可能な目地部材を簡易な構造で実現することができる。また、これによって、止水対策等を適切に施すことが可能になるので、構造用鉄筋の腐蝕や、コンクリートの機能及び耐久性の低下をより有効に防止することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前記特許文献1や特許文献2のように、目地部材を型枠への固定は釘止めによって行うのでは、これが不十分であるとコンクリートの打設時に剥がれたり、ずれたりする不都合が生じる。
【0012】
また、特許文献2のように目地部材1を基端部2と剛性を有する断面欠損部3との2部材で構成し、断面欠損部3が基端部2から分離可能に構成されているようなものでは、基端部2を釘止めするのに断面欠損部3の存在が邪魔になり、断面欠損部3に損傷を及ぼすおそれがある。
【0013】
本発明の目的は前記従来例の不都合を解消し、型枠合板端で挟みこむ挟み片を一体に突設することで、釘止めをせずに型枠に固定できるので、コンクリートの打設時に剥がれたり、ずれたりするおそれがない鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的を達成するため本発明は、第1に、型枠合板に設置する目地棒において、型枠合板の接合面側に、型枠合板端で挟み込む挟み片を一体に突設したこと、第2に、挟み片は、型枠合板端および型枠合板端に取り付けた桟木に充分沿うだけの幅であり、桟木同士でも挟み込むこと、第3に、挟み片は、端部を直角に曲げたL型またはT型の断面を有すること、第4に、端部を直角に曲げたL型またはT型の断面を有する挟み片は、その曲げ部分を型枠合板と桟木で挟み込むこと、第5に、ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設したこと、第6に、ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分は上部として、これを挟み片を一体に突設した下部のベース部分に対して分割して設けることを要旨とするものである。
【0015】
第7に、ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分は上部として、これを釘止め可能な下部のベース部分に対して分割して設けたことを要旨とするものである。
【0016】
請求項1記載の本発明によれば挟み片を一体に突設することで、この挟み片を用いて釘止めをせずに型枠に固定できる。
【0017】
請求項2記載の本発明によれば、挟み片は、型枠合板端および型枠合板端に取り付けた桟木に充分沿う幅であり、型枠合板端のみならず、桟木同士でも挟み込むことでより確実に型枠合板に取り付けることができる。また、挟み片部分を桟木に釘止めすることもできる。
【0018】
請求項3記載の本発明によれば、挟み片は、端部を直角に曲げたL型またはT型の断面を有するものであるので、この曲げた部分を桟木の角部に回して、一層堅牢な固定とすることができる。
【0019】
請求項4記載の本発明によれば、端部を直角に曲げたL型またはT型の断面を有する挟み片は、その曲げ部分を型枠合板と桟木で挟み込むことでより確実な固定が得られ、また、挟み片も幅の少ないものとすることができる。
【0020】
請求項5記載の本発明によれば、一体に突設したノッチ形成用の尖頭突起により目地の奥にノッチを同時に形成することができ、このように目地の奥にノッチが形成されるためひび割れの誘発効果が高く、また、目地における防水処理も従来と同じように行うことができる。しかも、ノッチ形成用の尖頭突起は一体に突設するものなので、部材点数も少なくてすみ、セットも容易である。
【0021】
請求項6記載の本発明によれば、ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分と挟み片を一体に突設した部分はこれらをて分割して設けることにより、先に挟み片を一体に突設した部分を型枠に固定して、これにノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分を後から取り付けることが可能である。
【0022】
請求項7記載の本発明によれば、前記請求項6と同様に、ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分と挟み片を一体に突設した部分はこれらを分割して設けることにより、先に挟み片を一体に突設した部分を型枠に固定して、これにノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分を後から取り付けることが可能である。
【発明の効果】
【0023】
以上述べたように本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒は、型枠合板端で挟みこむ挟み片を一体に突設することで、釘止めをせずに型枠に固定できるので、コンクリートの打設時に剥がれたり、ずれたりするおそれがないものである。また、一体に突設したノッチ形成用の尖頭突起により目地の奥にノッチを同時に形成することができ、ひび割れの誘発効果が高く、目地における防水処理も従来と同じように行うことができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、図面について本発明の実施形態を詳細に説明する。図1は本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の1実施形態を示す設置状態の横断平面図、図2は本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の斜視図で、図中5は型枠合板、6はこの型枠合板5により形成する鉄筋コンクリート造建築物の壁7のコンクリートである。
【0025】
このような型枠合板5に設置する目地棒9として、下底部10を型枠合板5への接合面とした断面かまぼこ形状の目地棒において、この下底部10側から型枠合板5端で挟み込む挟み片11を一体に突設した。
【0026】
本実施形態ではこの挟み片11は、型枠合板5端および型枠合板5端に取り付けた桟木13に充分沿うだけの幅であり、桟木13同士でもこの挟み片11を挟み込むことができるようにする。
【0027】
さらに、挟み片11は、端部を直角に曲げた曲げ部11aを有するL型またはT型の断面のものである。
【0028】
また、目地棒9は下底部10側と反対の頭側を尖らせてノッチ形成用の突起12を一体に突設した。この突起12の先端は鋭角に尖らせたが、これを尖らせなくともよい。尖頭突起とは目地棒9の頭部分にある突起の意味である。
【0029】
目地棒9の材質は、発泡合成樹脂や硬質合成樹のような合成樹脂製またはゴム製等であり、挟み片11も同様であるが、目地棒9と挟み片11は一体的なものであれば、必ずしも同じ材質である必要はない。
【0030】
前記目地棒9を設置するには、図3に示すように桟木13を端部に取り付けた型枠合板5端にこれらに沿うように挟み片11を当て、挟み片11の部分を桟木13に釘14で止める。
【0031】
その際、端部を直角に曲げた曲げ部11aは桟木13の角部に回しておけば位置決めが容易である。
【0032】
このように一方の型枠合板5の端に目地棒9を設置して、もう一方の桟木13付の型枠合板5を組み立てれば、図1に示すように、目地棒9を型枠合板5の内側に、かつ、直接釘打ちすることなく、挟み片11を介して取り付けることができる。
【0033】
前記実施形態では目地棒9を断面かまぼこ形状の目地棒としたが、図4、図5に示すように台形状、正方形状としてもよく、また、図示は省略するが、三角形や円形と矩形の結合したその他の形状としてもよい。
【0034】
また、いずれの形状においても内部を中空とすることもできる。
【0035】
図6は本発明の第2実施形態を示すもので、前記挟み片11はその幅は型枠合板5の厚さと同じ程度とし、挟み片11はその曲げ部11aを型枠合板5と桟木13で挟み込むものとした。
【0036】
さらに、図7は本発明の第3実施形態を示すもので、前記挟み片11はこれを複数として間隔を存して目地棒9は下底部10側に設けた。
【0037】
なお、挟み片11の端部を直角に曲げた曲げ部11aはこれを設けないことも有り得る。
【0038】
このようにして本発明の目地棒9を型枠合板5に設置してコンクリート6を打設して鉄筋コンクリート造建築物の壁7を形成した場合、図8〜図10に示すように、脱形後に目地棒9により壁7の面に目地15が形成され、その目地15の奥にはノッチ16が形成される。また、目地15にはシール材17を充填して、防水処理を施してもよい。
【0039】
このノッチ16はひび割れを誘発するためのものであり、壁7の反対面に形成するノッチ18と組み合わせることも可能である。
【0040】
図8は断面かまぼこ形状の目地棒9を用いて目地15を形成した場合、図9、図10は断面台形状の目地棒9を用いて目地15を形成した場合である。
【0041】
図12は本発明の第4実施形態を示すもので、ノッチ形成用の突起12を一体に突設した部分は上部9aとして、これを挟み片11を一体に突設した下部のベース部分9bに対して分割して設けるものとする。この上部9aとベース部分9bとの結合は、接着や嵌合などが可能である。
【0042】
目地棒9を設置するには、桟木13を端部に取り付けた型枠合板5端にこれらに沿うように挟み片11を当て、挟み片11の部分を桟木13に釘14で止める。その後、上部9aをベース部分9bに結合させる。
【0043】
さらに、第5実施形態として、図13に示すように、下部のベース部分9bはこれを挟み片を一体に突設したものとせずに、釘14で型枠合板5で釘止め可能なものとした。
【0044】
目地棒9を設置するには、桟木13を端部に取り付けた型枠合板5にベース部分9bを釘14で止める。その後、上部9aをベース部分9bに結合させる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の1実施形態を示す設置状態の横断平面図である。
【図2】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の1実施形態を示す斜視図である。
【図3】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の1実施形態を示す設置中の状態の横断平面図である。
【図4】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の他の形状の側面図である。
【図5】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒のさらに他の形状の側面図である。
【図6】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の第2実施形態を示す設置中の状態の横断平面図である。
【図7】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の第3実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の目地棒を用いて形成した鉄筋コンクリート造建築物の壁の第1例を示す横断平面図である。
【図9】本発明の目地棒を用いて形成した鉄筋コンクリート造建築物の壁の第2例を示す横断平面図である。
【図10】本発明の目地棒を用いて形成した鉄筋コンクリート造建築物の壁の第3例を示す横断平面図である。
【図11】従来例を示す説明図である。
【図12】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の第4実施形態を示す設置中の状態の横断平面図である。
【図13】本発明の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒の第5実施形態を示す設置中の状態の横断平面図である。
【符号の説明】
【0046】
1 目地部材 2 基端部
3 断面欠損部 4 型枠
5 型枠合板 6 コンクリート
7 壁 8 鞘部材
9 目地棒 9a 上部
9b ベース部分 10 下底部
11 挟み片 11a 曲げ部
12 突起 13 桟木
14 釘 15 目地
16 ノッチ 17 シール材
18 ノッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型枠合板に設置する目地棒において、型枠合板の接合面側に、型枠合板端で挟み込む挟み片を一体に突設したことを特徴とする鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。
【請求項2】
挟み片は、型枠合板端および型枠合板端に取り付けた桟木に充分沿うだけの幅であり、桟木同士でも挟み込む請求項1記載の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。
【請求項3】
挟み片は、端部を直角に曲げたL型またはT型の断面を有する請求項2記載の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。
【請求項4】
端部を直角に曲げたL型またはT型の断面を有する挟み片は、その曲げ部分を型枠合板と桟木で挟み込む請求項3記載の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。
【請求項5】
ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。
【請求項6】
ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分は上部として、これを挟み片を一体に突設した下部のベース部分に対して分割して設ける請求項5記載の鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。
【請求項7】
ノッチ形成用の尖頭突起を一体に突設した部分は上部として、これを釘止め可能な下部のベース部分に対して分割して設けたことを特徴とする鉄筋コンクリート造建築物の壁の目地棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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