説明

鉄筋診断装置とそれを用いた鉄筋診断方法

【課題】鉄筋コンクリート内の鉄筋の状態を静電結合を用いて視認可能に観察でき、正確かつ容易に鉄筋の状態を診断することができる鉄筋診断装置とそれを用いた鉄筋診断方法を提供する。
【解決手段】高周波信号を発生して鉄筋7へ静電結合して電圧を印加するための信号発生器1と、信号発生器1に接続ケーブル6で接続されて鉄筋7との静電結合を生じさせるために壁面8に接している電圧印加器2と、壁面8に接して静電結合して鉄筋7に発生した電圧を検出するための電圧検出器4と、電圧検出器4により検出された検出値を接続ケーブル6を介して受信し測定するための電圧測定器3と、電圧測定器3による測定結果を視認可能に表示するための表示器5と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート内部の鉄筋の状態を診断するための鉄筋診断装置とそれを用いた鉄筋診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリートを利用した構造物においては、コンクリート自体の強度及びコンクリート内部に存在する鉄筋によってその強度を保っている。そのため鉄筋コンクリート構造物の維持・管理上、コンクリートと鉄筋自体の状態の把握が必要である。
【0003】
このうち、コンクリートの劣化については、表面で観測可能なひび割れや析出物等の検査のほか、コンクリート自体から試験編を取り出して確認する手法がある。また内部に存在する鉄筋の本数や劣化状況等を診断することは、構造物の安全性を担保する上で必要不可欠であるが、コンクリート内部の鉄筋を直接観測することは不可能であるため、超音波や磁界(磁場)、電磁波、X線等を利用した様々な非破壊検査装置が開発、製造、販売されている。さらに、コンクリートを剥離して直接確認する方法も考えられている(非特許文献1〜3を参照)。
【非特許文献1】コンクリート工学 1989年3月号、pp.48-47、69-74
【非特許文献2】http://www.dnc.co.jp/technology/04hihakai_01.htm
【非特許文献3】NTT技術ジャーナル、2006年3月号、pp.41-46
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の超音波や磁界、電磁波、X線を利用した非破壊検査装置においては以下の(1)〜(3)が課題であった。
【0005】
(1)取り扱いや測定手順が複雑であり、専門的な知識が必要とされる。
(2)センサや発振器部分が高価であり、装置全体としても高価である。
(3)超音波での測定結果や磁界利用での測定結果は、その判定に経験や知識が必要とされる。
【0006】
また、コンクリートを剥離して、直接に中の鉄筋の状態を確認する方法も考えられるが、構造物の強度を損なう可能性があるため、現実的な方法であるとはいえなかった。
【0007】
本発明の目的は、上記に鑑みてなされたものであり、鉄筋コンクリート内の鉄筋の状態を静電結合を用いて視認可能に観察でき、正確かつ容易に鉄筋の状態を診断することができる鉄筋診断装置とそれを用いた鉄筋診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の本発明は、鉄筋コンクリートの内部に配置された鉄筋の状態を診断するための鉄筋診断装置において、静電結合により前記鉄筋に高周波信号を印加して誘導電圧を発生させるための信号印加部と、前記鉄筋に発生した前記誘導電圧を静電結合により検出して測定するための電圧測定部と、前記電圧測定部による測定結果を表示するためのデータ表示部と、を備える。
【0009】
また、請求項2に記載の本発明は、請求項1において、前記信号印加部と前記電圧測定部は、可撓性を有して前記鉄筋コンクリートの表面形状に沿って装着可能である。
【0010】
また、請求項3に記載の本発明は、請求項1または2において、前記信号印加部と前記電圧測定部は、静電シールド部を備えて周囲からの影響を排除可能である。
【0011】
また、請求項4に記載の本発明は、請求項1〜3のいずれかにおいて、前記静電シールド部は、前記信号印加部と前記電圧測定部のそれぞれにおける前記鉄筋コンクリートとの接触面を包囲して同一面上に配置されている。
【0012】
また、請求項5に記載の本発明は、請求項1〜4のいずれかにおいて、前記電圧測定部は同時に複数位置で前記測定が可能であり、前記データ表示部は複数の前記測定結果を前記複数位置と相似にして電圧分布として表示可能である。
【0013】
また、請求項6に記載の本発明は、請求項1〜5のいずれかにおいて、前記信号印加部に備わり前記高周波信号を変調するための変調手段と、前記電圧測定部に備わり前記検出した前記誘導電圧を復調するための復調手段と、を有し、前記測定において混入するノイズ成分を除去可能である。
【0014】
また、請求項7に記載の本発明は、請求項1〜6のいずれかにおいて、前記高周波信号に替えて所定のデータパターンを前記鉄筋へ印加する前記信号印加部と、前記データパターンのみを前記検出する電圧測定部と、を有し、前記測定において混入するノイズ成分を除去可能である。
【0015】
また、請求項8に記載の本発明は、請求項1〜7のいずれかにおいて、前記電圧測定部は、前記検出した前記誘導電圧を高入力インピーダンスで受けて増幅するための増幅部と、前記増幅部により前記増幅された前記誘導電圧を外部へ出力するための出力手段と、前記増幅部と前記出力手段の動作に必要な電力を供給するための電源と、をすくなくとも備えている。
【0016】
また、請求項9に記載の本発明は、請求項8において、前記電圧測定部は、静電シールドが可能なシールドケースに収納されている。
【0017】
また、請求項10に記載の本発明は、鉄筋コンクリートの内部に配置された鉄筋の状態を診断するための鉄筋診断方法において、信号印加部において静電結合により前記鉄筋に高周波信号を印加して誘導電圧を発生させるステップと、電圧測定部において前記鉄筋に発生した前記誘導電圧を静電結合により検出して測定するステップと、データ表示部において前記電圧測定部による測定結果を表示するステップと、を有する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉄筋コンクリート内の鉄筋の状態を静電結合を用いて視認可能に観察でき、正確かつ容易に鉄筋の状態を診断することができる鉄筋診断装置とそれを用いた鉄筋診断方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
<第1の実施の形態>
図1に、本発明の第1の実施の形態を示す。本実施の形態は、鉄筋コンクリート製の構造物の壁面、床面、天井面等に存在する鉄筋7の状態を把握するための一例であり、ここでは鉄筋コンクリート製の壁面8に対しての例を示す。
【0020】
図1はその測定系の構成図であって、高周波信号を発生して鉄筋7へ静電結合して電圧を印加するための信号発生器1と、鉄筋7を内部に備えているコンクリート製の壁面8と、信号発生器1に接続ケーブル6で接続されて鉄筋7との静電結合を生じさせるために壁面8に接している電圧印加器2と、壁面8に接して静電結合して鉄筋7に発生した電圧を検出するための電圧検出器4と、電圧検出器4により検出された検出値を接続ケーブル6を介して受信し測定するための電圧測定器3と、電圧測定器3による測定結果を視認可能に表示するための表示器5と、が示されている。
【0021】
この図1に示すように、信号発生器1で発生された下限周波数1kHzから上限周波数30MHz程度の任意の周波数の高周波信号は、ケーブル6を通じて電圧印加器2の電極とシールド層及びシールド枠に印加される。この際に信号発生器1は、通常の高周波発振回路(例えば、トランジスタやオペアンプから構成される一般的な高周波発振回路、または水晶(クリスタル)を用いた発振回路)で十分であるが、ファンクションジェネレータ等のような精密かつ様々な波形を発生させることができる測定器や、さらに高精度な信号発生器1(シグナルジェネレータ)を用いてもよい。鉄筋コンクリート等からなる壁面8の中の鉄筋7は、外部から視覚的に見ることは困難であるため、間接的な確認手段として静電結合を利用する。
【0022】
その動作は以下の通りである。
【0023】
信号発生器1からの信号電圧は、鉄筋7との非接触で静電結合することが可能な電圧印加器2に供給される。電圧印加器2は図2(a)に示すように、薄い板状基板11の上に構成される。板状基板11の前面には、電圧を印加するための電圧印加用電極10が構成されている。
【0024】
また、診断対象の面が平面または若干の凹凸がある面、球面等のような場合には、面に電圧印加器2を取り付けるだけの開放型の構造となるため、図3(b)のように電極周囲に結合を安定化させるためのシールド枠12を形成することができる。
【0025】
もしくは、柱状または円柱状の構造物の診断の場合には、周りに巻き付ける構造となることができるように図3(c)に示すような上下にシールド電極枠14が構成されていてもよく、かつ左右には柱に巻き付けた際に電極13及びシールド電極枠14が電気的・機械的に結合できる電極接合用金具15を有していてもよい。なお、この場合には板状基板11はフレキシブルなものとなる。
【0026】
さらに、板状基板11の裏面には外部からの影響を排除するための静電シールド電極が構成され、診断面が平面または若干の凹凸がある面、球面等の場合には、板状基板11の裏面の全面にシールド電極が構成され、診断面が柱状もしくは円柱状の構造物用の場合には、板状基板11の全面にシールド電極が構成され、柱に巻き付けた際にシールド電極が電気的・機械的に結合できる機能を有していてもよい。
【0027】
この際、板状基板11の材質は、プラスチック板、木材等の堅い絶縁性の高い材質でも、フレキシブルな材質、例えばプラスチックフィルム、フレキシブル基板、ゴム、発泡プラスチック等の絶縁性能の高い材質でもよい。また板状基板の誘電率を下げるために、板状発泡材質でもよい。
【0028】
次に、図3(a)中の断面a−a’を示した図3(b)において、信号発生器1からの出力は接続ケーブル6の同軸ケーブルのうち絶縁体25に被覆された中心線26を介して電圧印加用電極20に接続される。信号発生器1のアース側27は、接続ケーブル6のシールド外線24と静電シールド電極23、および図示しないシールド電極枠12に接続される。また、図3(a)に示すように、電圧印加用電極20を壁面にあてることによって電圧印加用電極20が鉄筋7とキャパシタンス30でもって静電結合する。
【0029】
これにより、鉄筋7に静電誘導電圧が発生する。誘導電圧の発生によって、鉄筋7の存在する部分と鉄筋7の存在しない部分では電圧レベルがことなるため、診断面上の電位分布が変わることになる。さらに鉄筋7が内部で破断している部分や鉄筋7の接続点(溶接点、ジョイント)がある部分、また鉄筋7が内部腐食によって劣化している部分では、抵抗分やキャパシタンス分が発生するため、鉄筋7があっても電位分布に異常が発生する。
【0030】
また、図1に示す電圧印加器2の周辺(柱状の場合は、電圧印加器2の上下部)に電位分布を計測するための複数の電圧検出電極を備えた電圧検出器4を取り付けることによって、印加した電圧が発生させるコンクリート表面(壁面8)上の電位分布を測定することが可能となる。
【0031】
電圧検出器4の電圧検出電極は、たとえば図4(a)〜(c)のように構成される。
【0032】
まず、図4(a)のように、薄い板状基板50上に形成され、板状基板50の前面には複数点の分布を同時に測定するための検出電極40が複数形成されている。診断対象の面が平面または若干の凹凸がある面、球面等のような場合には、面に電圧印加器2を取り付けるだけの開放型の構造になるため、図4(b)のように検出電極40の周囲に結合を安定化させるためのシールド枠41がそれぞれ形成されている。
【0033】
もしくは柱状または円柱状の構造物の診断の場合には、診断対象物の周りに巻き付ける構造となることができるように、図4(c)に示すような上下にもシールド枠41が構成されていてもよく、かつ左右には柱に巻き付けた際にシールド枠41が電気的・機械的に結合できる電極接合金具42を配置してもよい。またこの場合には、板状基板50はフレキシブルなものとなる。
【0034】
さらにこの板状基板50の裏面には、外部からの影響を排除するための図示しないシールド電極が構成され、診断面が平面または若干の凹凸がある面、球面等の場合には、板状基板50の裏面の全面にシールド電極が構成され、診断面が柱状もしくは円柱状の構造物用の場合には、基板全面にシールド電極が構成され、柱に巻き付けた際にシールド電極が電気的・機械的に結合できる機能を有していてもよい。
【0035】
この際、板状基板50の材質は、プラスチック板、木材等の堅い絶縁性の高い材質でも、フレキシブルな材質、例えばプラスチックフィルム、フレキシブル基板、ゴム、発泡プラスチック等の絶縁性能の高い材質でもよい。また板状基板の誘電率を下げるために、板状発泡材質を用いてもよい。
【0036】
図5は、壁面8での鉄筋7状態の検出の概略図である。図5に示すように壁面8に電圧検出器4を取り付けることによって、各検出電極40の近傍の鉄筋7と検出電極40が静電結合し、表示器5に表示される診断面上の電位分布を測定することができる。
【0037】
この測定系の等価回路を簡単に表すと図6のようになる。図6中、電圧印加部52と鉄筋部53との静電容量をCi、鉄筋部53の等価インダクタンスと等価抵抗をそれぞれLs、Rs、鉄筋部53と一つの電圧検出部54との静電容量をCoとしている。信号発生部51の印加電圧をVi、電圧測定部50の出力をVoとし、測定部の入力インピーダンスを抵抗RpとコンデンサCpの並列回路とすると、Voは以下の式で与えられる。
【数1】

【0038】
但し、上式において外乱はないものとし、電圧印加部52と電圧検出部54にシールド電極のない場合である。この式(1)から、鉄筋部53の抵抗Rs及びインダクタンスLsが変化することにより、電圧測定部50の測定電圧が変化することが確認できる。
【0039】
例えば、鉄筋7の表面が腐食している場合や、さびの部分は電気的な伝導が悪くなることや、健全な鉄筋7と比べて断面積が減少するため、その部分の抵抗、インダクタンスは大きくなる。また、鉄筋7が部分的に破断している場合においても、その部分の抵抗値、インダクタンスが変化する。結果として、鉄筋7の劣化が発生している場合には、出力として得られる電位が健全な場所と比べて小さくなることがわかる。
【0040】
従って、電圧検出器4の各電極からの出力を電圧測定器3によって測定し、それを分布として表示することによって、コンクリート製の壁面8内にある鉄筋7の状況を非破壊で診断できる。
【0041】
<第2の実施の形態>
図7(a)に本発明の第2の実施の形態として、柱状の鉄筋コンクリート構造物に本発明を適用した場合の例を示す。
【0042】
図7(a)のように、電圧印加器62は、柱状構造物60の周囲を取り囲むように巻き付けることができ、かつ電圧印加器62の各電極が電気的・機械的に接続することができる。
【0043】
また、同様に電圧検出器63についても、柱状構造物60の周囲を取り囲むように巻き付けることができ、かつシールド電極部を電気的・機械的に接続することができる。電圧印加器62と電圧検出器63は図のように上下の関係で取り付けられており、図と逆の場合でも同様である。
【0044】
信号発生器1から発生する高周波信号を電圧印加器62に印加すると、鉄筋7とのあいだの静電結合によって、鉄筋に静電電圧が生じる。この電圧を電圧検出器63で静電結合により検出し、電圧測定器3で測定することにより、電圧検出器63を巻き付けた領域での電位分布を測定することができる。
【0045】
また、電圧検出器63の電圧検出用電極が上下左右に複数配置されている場合、得られる電位分布は、柱状構造物60内に鉄筋7のある位置では高くなり、鉄筋7のない部分では小さくなる。また電圧検出器63を巻き付けた領域では鉄筋7に腐食や破断が発生している場合、電圧印加器62の位置が電圧検出器63の位置よりも下の場合には、電圧検出器63の巻き付け領域の下側、その逆の場合には上側の電位分布が小さくなる。
【0046】
図7(a)の場合、電圧印加器62が電圧検出器63よりも上にあるため、柱状構造物60内にある鉄筋7の無い部分(図7(a)右側鉄筋下部)の電位は最も低くなり、電圧検出器63の領域内にある下側の鉄筋7は、周囲の鉄筋7との結合により若干の電位を持つため、鉄筋7のない部分よりは高くなる。従って、検出された電位分布を表示すると図7(b)の例のようになり、鉄筋7の状態を把握することが可能となる。
【0047】
<第3の実施の形態>
図8(a)および図8(b)に本発明の第3の実施の形態として、電圧測定器3が備える電圧検出回路65に高入力インピーダンスの電圧検出回路を用いた例を示す。
【0048】
図8(a)は電圧検出器70を壁面8に装着して測定する状態の模式図であり、断面a−a’を図8(b)に示す。この図8(b)に示すように、電圧検出器70内にある板状基板22を挟んだ電圧検出用電極21とシールド電極23との間に高入力インピーダンスの電圧検出回路65を取り付ける。
【0049】
この高入力インピーダンス電圧検出回路65は数百kΩ以上の高抵抗とキャパシタンスの並列回路から成っている。例えば、この身近な例としては、オシロスコープに接続するための電圧プローブ等が具体的な例である。電圧測定器3の入力を高入力インピーダンスにすることによって、図6に示した等価回路から、電流がほとんど流れることがないため、消費電力が抑えられ、かつ、各鉄筋7の位置に発生している電圧を効率よく検出することが可能となる。この高入力インピーダンス電圧検出回路65は、FET等の能動素子を用いた高入力インピーダンス回路により実現できる。
【0050】
<第4の実施の形態>
図9(a)、(b)に本発明の第4の実施の形態を説明するための構成図を示す。この図9(a)、(b)には、壁面8に装着された電圧検出器70と、電圧検出器70に一体に装着されたシールドケース71と、このシールドケース71の内部に配置された能動型電圧検出回路73およびそれを駆動するためのバッテリ74と、が示されている。能動型電圧検出回路73のグランドはシールドケース71に接続され、電圧検出のための入力側には接続端子72が接続されて板状基板22を貫通して電圧検出用電極21に接続されている。シールドケース71は電圧検出器70の静電シールド電極23に接続している。能動型電圧検出回路73の出力は接続ケーブル6を介して外部へ送出される。
【0051】
このような構成の図9(a)においては、電圧検出器70に能動型電圧検出回路73を内蔵したシールドケース71が取り付けられた構造の例であり、かつその内部構造を透視図的に表したものが図9(b)である。
【0052】
この図9(b)に示すように、電圧検出用電極21と内蔵された能動型電圧検出回路73の入力の一端は、静電シールド電極23及び板状基板22に空いた微小穴を通る接続端子によって結ばれている。能動型電圧検出回路73のもう一方の入力端子は、シールド電極に接続されている。これによって、電圧検出用電極21に発生する電圧を測定することが可能となる。また、シールドケース71を静電シールド電極23に取り付けることによって、外乱による電圧検出精度の低下を防止する。
【0053】
なお、能動型電圧検出回路73はシールドケース71の内部に駆動のための電力供給を行うバッテリ74を内蔵しており、能動型電圧検出回路73へ電源を供給している。この電源はバッテリ74に限定するものではなく、たとえば外部から電力線を通じて供給される電源を用いてもよい。
【0054】
以上説明した本発明の実施の形態によれば、鉄筋コンクリート内の鉄筋の状態を静電結合を用いて視認可能に観察でき、正確かつ容易に鉄筋の状態を診断することができる鉄筋診断装置とそれを用いた鉄筋診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態に係る、壁面に本発明を適用した場合の説明図を示す。
【図2】電圧印加用電極の構成例を説明するための説明図を示す。
【図3】本発明の実施の形態に係る、壁面への電圧印加を説明するための説明図を示す。
【図4】電圧検出用電極の構成例を説明するための説明図を示す。
【図5】複数の電圧検出電極を用いた電圧検出を説明するための説明図を示す。
【図6】本発明の実施の形態に係る等価回路図を示す。
【図7】本発明の実施の形態に係る、柱状構造物に本発明を適用した場合の説明図を示す。
【図8】本発明の実施の形態に係る、高入力インピーダンス電圧検出回路の構成例を示す。
【図9】能動型電圧検出回路を備えた電圧検出用電極の構成例を示す。
【符号の説明】
【0056】
1…信号発生器
2…電圧印加器
3…電圧測定器
4…電圧検出器
5…表示器
6…ケーブル
7…鉄筋
8…壁面
10…電圧印加用電極
11…板状基板
12…シールド電極枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリートの内部に配置された鉄筋の状態を診断するための鉄筋診断装置において、
静電結合により前記鉄筋に高周波信号を印加して誘導電圧を発生させるための信号印加部と、
前記鉄筋に発生した前記誘導電圧を静電結合により検出して測定するための電圧測定部と、
前記電圧測定部による測定結果を表示するためのデータ表示部と、
を備えることを特徴とする鉄筋診断装置。
【請求項2】
前記信号印加部と前記電圧測定部は、可撓性を有して前記鉄筋コンクリートの表面形状に沿って装着可能なことを特徴とする請求項1に記載の鉄筋診断装置。
【請求項3】
前記信号印加部と前記電圧測定部は、静電シールド部を備えて周囲からの影響を排除可能なことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄筋診断装置。
【請求項4】
前記静電シールド部は、前記信号印加部と前記電圧測定部のそれぞれにおける前記鉄筋コンクリートとの接触面を包囲して同一面上に配置されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄筋診断装置。
【請求項5】
前記電圧測定部は同時に複数位置で前記測定が可能であり、前記データ表示部は複数の前記測定結果を前記複数位置と相似にして電圧分布として表示可能なことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鉄筋診断装置。
【請求項6】
前記信号印加部に備わり前記高周波信号を変調するための変調手段と、
前記電圧測定部に備わり前記検出した前記誘導電圧を復調するための復調手段と、を有し、
前記測定において混入するノイズ成分を除去可能なことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の鉄筋診断装置。
【請求項7】
前記高周波信号に替えて所定のデータパターンを前記鉄筋へ印加する前記信号印加部と、
前記データパターンのみを前記検出する電圧測定部と、を有し、
前記測定において混入するノイズ成分を除去可能なことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の鉄筋診断装置。
【請求項8】
前記電圧測定部は、前記検出した前記誘導電圧を高入力インピーダンスで受けて増幅するための増幅部と、前記増幅部により前記増幅された前記誘導電圧を外部へ出力するための出力手段と、前記増幅部と前記出力手段の動作に必要な電力を供給するための電源と、をすくなくとも備えることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の鉄筋診断装置。
【請求項9】
前記電圧測定部は、静電シールドが可能なシールドケースに収納されていることを特徴とする請求項8に記載の鉄筋診断装置。
【請求項10】
鉄筋コンクリートの内部に配置された鉄筋の状態を診断するための鉄筋診断方法において、
信号印加部において静電結合により前記鉄筋に高周波信号を印加して誘導電圧を発生させるステップと、
電圧測定部において前記鉄筋に発生した前記誘導電圧を静電結合により検出して測定するステップと、
データ表示部において前記電圧測定部による測定結果を表示するステップと、
を有することを特徴とする鉄筋診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−292203(P2008−292203A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135754(P2007−135754)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】