説明

鉄道用半手動式簡易型ホームドア

【課題】 プラットホームから軌道への利用者への転落を防止するとともに、ホームドアの設置費用の低減を図ることができる鉄道用手動式簡易型ホームドアを提供する。
【解決手段】 鉄道用手動式簡易型ホームドアにおいて、ホームドア4の戸閉め部にホームドア4の閉状態を保持する機構と、前記ホームドア4にロックを掛けるロック機構13,16を備え、軌道に鉄道車両が在線していない場合、および入出線中で所定位置に停止していない場合には前記ホームドア4にロックが掛かり、軌道へ車両が入線して所定位置に停止した場合には前記ホームドア4にロックが掛かり、前記軌道へ前記鉄道車両が入線して所定位置に停止した場合には前記ホームドア4のロックが解除される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用ホームドアに係り、特に、鉄道用半手動式簡易型ホームドアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、鉄道車両の入線時に電車を待っている利用者がプラットホームから軌道へ転落する事故が発生しており、そのような転落事故に対する防止策が望まれている。
そこで、転落事故防止策の一つとしてプラットホームに設置されるホームドアが実用化されているが、従来のホームドアでは、鉄道車両、地上子、ホーム間での通信が必要であり、この通信と連動する様々な制御機構が組み込まれるため、一般に複雑な設備となっている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−300462号公報
【特許文献2】特開平7−108922号公報
【特許文献3】特開2010−52556号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記したように、従来のホームドアは複雑な設備となっているため、設置費用が莫大であり、1駅あたり数億円規模の費用が必要となる。また、設置したホームドアの開閉位置に扉位置を厳格に統一した鉄道車両を導入することも求められるので、さらなるコスト増が見込まれ、ホームドア設置の障害となっている。
本発明は、上記状況に鑑みて、プラットホームから軌道への利用者の転落を防止するとともに、ホームドアの設置費用の低減を図ることができる、鉄道用半手動式簡易型ホームドアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕鉄道用半手動式簡易型ホームドアにおいて、ホームドアの戸閉め部にホームドアの閉状態を保持する機構と、前記ホームドアにロックを掛けるロック機構を備え、軌道に鉄道車両が在線していない場合、および入出線中で所定位置に停止していない場合には前記ホームドアにロックが掛かり、前記軌道へ前記鉄道車両が入線して所定位置に停止した場合には前記ホームドアはロックが解除され、かつ前記ホームドアの閉状態は保持されることを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載の鉄道用半手動式簡易型ホームドアにおいて、前記ホームドアの閉状態を保持する機構が永久磁石であり、前記ホームドアにロックを掛けるロック機構が電磁石付きロック部材及びこのロック部材の鎖錠部からなることを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載の鉄道用半手動式簡易型ホームドアにおいて、前記ホームドアの固定壁の軌道側に前記鉄道車両に対して対向するように配置される撮像機能を有するセンサを具備し、前記鉄道車両が在線していない場合、および入出線中で所定位置に停止していない場合に前記センサからのオン信号により、前記ロック機構により電磁的にロックを掛け、前記鉄道車両が所定位置に停止していない場合に前記センサからのオフ信号により、前記ロック機構により電磁的にロックを解除することを特徴とする。
【0007】
〔4〕上記〔1〕記載の鉄道用半手動式簡易型ホームドアにおいて、前記ホームドアには車輪を配置し、前記ホームドアが閉まる方向が低くなるように傾斜したレール上を前記車輪が移動することで前記ホームドアが自動的に閉じることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラットホームから軌道への利用者の転落を防止するとともに、ホームドアの設置費用の低減を図ることができる。
また、本発明のホームドア設置軌道荷導入する鉄道車両のドア位置を厳格に統一する必要がなく、開閉が必要になるホームドアのみを開閉可能であり、特に閑散線区での適用に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示す鉄道用半手動式簡易型ホームドアの模式図である。
【図2】本発明の実施例を示す鉄道用半手動式簡易型ホームドアの動作フローチャートである。
【図3】本発明の実施例を示す鉄道用半手動式簡易型ホームドアに配置される簡易型ロック機構の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の手動式半簡易型ホームドアは、ホームドアの戸閉め部にホームドアの閉状態を保持する機構と、前記ホームドアにロックを掛けるロック機構を備え、軌道に鉄道車両が在線していない場合および入出線中で所定位置に停止していない場合には前記ホームドアにロックが掛かり、軌道へ鉄道車両が入線して所定位置に停止した場合には前記ホームドアはロックが解除され、かつ前記ホームドアの閉状態を保持するようにした。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示す鉄道用半手動式簡易型ホームドアの模式図であり、図1(a)はそのホームドアの閉状態を示す模式図、図1(b)はホームドアが開閉可能となった状態を示す模式図である。図2は本発明の実施例を示す鉄道用半手動式簡易型ホームドアの動作フローチャートである。
【0012】
図1に示すように、1はプラットホーム(以下、単にホームという)、2は軌道、3は固定された壁、4は壁3の間に配置されたホームドア、5はホームドア4の簡易型ロック機構(詳細は後述)、6は壁3の軌道2側に配置された撮像機能を有するセンサであり、鉄道車両の位置を検知し、鉄道車両が入線して所定位置に停止した場合に信号を出力することにより、簡易型ロック機構5を解除する。7はホームドア4が閉じる方向に向かって傾斜を有するホームドア移動用レール、8はホーム1で待っている利用者、9は鉄道車両である。なお、詳細は後述するが、ホームドア4の底部には、ホームドア4の開閉時にホームドア移動用レール7上でホームドア4を移動させるホームドア用車輪が設けられている。また、ホームドア4には適宜把手(図示なし)を設けることができる。
【0013】
そこで、本発明の鉄道用半手動式簡易型ホームドアの動作を図2を参照しながら説明する。
(1)まず、鉄道車両9が軌道2内に在線しているか否かをチェックする(ステップS1)。
(2)上記ステップS1において、鉄道車両9が軌道2内に在線していた場合には、鉄道車両9が所定位置に停止しているか否かをセンサ6によりチェックする(ステップS2)。
【0014】
(3)上記ステップS2において、鉄道車両9が軌道2内で所定位置に停止していることが検出された場合には、センサ6からのオフ信号によりホームドア4の簡易型ロック機構5の電磁ロックが解除され、ホームドア4は開閉可能な状態になる(ステップS3)。
(4)ホーム1上の利用者8はホームドア4を手動で開いて鉄道車両9に乗車する(ステップS4)。
【0015】
(5)続いて乗車する利用者がいない場合には、ホームドア4が閉じられる。この時、利用者が自分でホームドア4を閉じるようにしてもよいし、または、ホームドア4をそのままにしておいても、ホームドア4に設けられたホームドア用車輪により傾斜したホームドア移動用レール7上をホームドア4が閉じる方向に自動的に移動して、ホームドア4は自動的に閉じられる(ステップS5)。
【0016】
(6)次に軌道2内の鉄道車両が発車すると、鉄道車両9が所定位置を離れたか否かをセンサ6によりチェックする(ステップS6)。
(7)上記ステップS6において、鉄道車両9が所定位置を離れたことが検出された場合、センサ6からのオン信号によりホームドア4の簡易型ロック機構5の電磁ロックが掛かり、ホームドア4は開閉できない状態となる(ステップS7)。なお、上記ステップS1で鉄道車両が軌道2内に在線していなかった場合弐も、同様に簡易型ロック機構5が動作し、ホームドア4は開閉できない状態となる。
【0017】
図3は本発明の実施例を示す鉄道用半手動式簡易型ホームドアに配置される簡易型ロック機構の模式図である。
この図において、11はホームドア4の戸閉め部、12は戸閉め部11に配置される永久磁石、13は電磁石13A付きロック部材、14はセンサ6からのオン・オフ信号を受けて動作する電磁石13Aの制御用スイッチ、15は制御用スイッチ14に接続される電源、16はロック部材13の鎖錠部、17はホームドア4に設けられるホームドア用車輪である。
【0018】
ここで、永久磁石12は、ホームドア4の戸閉め部11が閉じられているが電磁ロックは解除されているという場合に、そのホームドア4が不用意に開かないように保持するためのものである。このような構成とすることで、電磁ロックを解除してもホームドア4の戸閉め部11が勝手に開いてしまうことを防ぐと共に、利用したいホームドア4のみを利用者が手動で開くことができる。一方、電磁石13A付きロック部材13が動作して鎖錠部16で鎖錠している場合には、ホームドア4の戸閉め部11には電磁ロックが掛かっており、利用者がホームドア4を開こうとしても開くことができない機構となっている。
【0019】
このように構成することにより、軌道2内に鉄道車両が在線していない場合、および入出線中で所定位置に停止していない場合には、センサ6からのオン信号により、図1(a)に示すようにホームドア4は簡易型ロック機構5により閉じられており、利用者8の軌道2側への立入りを阻止するようになっている。
一方、軌道2内に鉄道車両9が入線して、所定位置に停止すると、センサ6からはオフ信号が出力され、簡易型ロック機構5のロックが解除されて、図1(b)に示すように、利用者8は手動でホームドア4を開くことができ、利用者8は鉄道車両9へ乗り込むことができる。ホームドア4を通過した後には、利用者8が手動でホームドア4を閉じるようにしてもよいし、そうでなくともホームドア4にはホームドア用車輪17が設けられているので、このホームドア用車輪17がホームドア4を閉じる方向へ傾斜したホームドア移動用レール7上を移動して、ホームドア4が自動的に閉じるように構成されている。
【0020】
したがって、鉄道車両が軌道に在線していない場合、および入出線中にはホームから軌道側への利用者の侵入を阻止し、軌道へ鉄道車両が入線して所定位置に停止した場合には利用者が手動でホームドアを開けて鉄道車両へ乗り込めるようにしたので、ホームから軌道への利用者への転落を防止することができる。
また、ホームドアはホームドア自体で制御を完結するようにしているので、従来ホームドアが必要とする鉄道車両、地上子、ホーム間での通信を省略することができ、設置費用の低減を図ることができる。
【0021】
さらに、本発明の半手動式簡易型ホームドアであれば、導入する鉄道車両のドア位置を厳格に統一する必要がなく、運行されている車両に合わせて開閉が必要になるホームドアのみを開閉することができ、特に閑散線区での適用に好適である。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の鉄道用半手動式簡易型ホームドアは、導入する鉄道車両のドア位置を厳格に統一する必要がなく、開閉が必要になるホームドアのみを開閉可能であり、しかも、設置費用を低減することができる、特に、閑散線区に好適なホームドアとして利用可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 プラットホーム
2 軌道
3 固定された壁
4 ホームドア
5 簡易型ロック機構
6 センサ
7 ホームドア移動用レール
8 利用者
9 鉄道車両
11 ホームドアの戸閉め部
12 永久磁石
13 ロック部材
13A 電磁石
14 制御用スイッチ
15 電源
16 ロック部材の鎖錠部
17 ホームドア用車輪

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホームドアの戸閉め部にホームドアの閉状態を保持する機構と、前記ホームドアにロックを掛けるロック機構を備え、軌道に鉄道車両が在線していない場合、および入出線中で所定位置に停止していない場合には前記ホームドアにロックが掛かり、前記軌道へ前記鉄道車両が入線して所定位置に停止した場合には前記ホームドアの閉状態が保持されたまま前記ホームドアのロックが解除されることを特徴とする鉄道用手動式簡易型ホームドア。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道用手動式簡易型ホームドアにおいて、前記ホームドアの閉状態を保持する機構が永久磁石であり、前記ホームドアにロックを掛けるロック機構が電磁石付きロック部材及びこのロック部材の鎖錠部からなることを特徴とする鉄道用手動式簡易型ホームドア。
【請求項3】
請求項1記載の鉄道用半手動式簡易型ホームドアにおいて、前記ホームドアの固定壁の軌道側に前記鉄道車両に対して対向するように配置される撮像機能を有するセンサを具備し、前記鉄道車両が在線していない場合、および入出線中で所定位置に停止していない場合に前記センサからのオン信号により、前記ロック機構により電磁的にロックを掛け、前記鉄道車両が所定位置に停止している場合に前記センサからのオフ信号により、前記ロック機構により電磁的にロックを解除することを特徴とする鉄道用手動式簡易型ホームドア。
【請求項4】
請求項1記載の鉄道用手動式簡易型ホームドアにおいて、前記ホームドアには車輪を具備し、前記ホームドアが閉まる方向が低くなるように傾斜したレール上を前記車輪が移動するように構成したことを特徴とする鉄道用手動式簡易型ホームドア。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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