説明

鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両

【課題】鉄道車両の異常検知と異常要因推定を精度良く簡単に実施することが可能な鉄道車両の状態監視装置を提供する。
【解決手段】鉄道車両の車体振動加速度と軸箱振動加速度との振幅比率を計算する振幅比率計算手段13と、振幅比率と所定の閾値を基に判定する閾値判定処理手段14と、軸箱振動加速度と所定の閾値を基に判定する閾値判定処理手段18を設ける。これにより、鉄道車両の異常要因が軌道側或いは車両側或いは軌道側と車両側の両方にあるのかを判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道上を走行する鉄道車両の異常状態、特に軌道異常や車両異常を監視する鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄道車両の状態監視装置(異常検出装置)として、車両の台車及び輪軸の両方の振動を検出し、検出した台車及び輪軸の振動値に基づいて振動の原因が台車にあるのか又は軌道にあるかを特定することにより、軌道の異常を検出するだけでなく、軌道の状態に拘わらず、台車の異常も検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
すなわち、車両の台車及び輪軸の両方の振動を加速度計により検出し、検出した加速度信号を高速フ−リエ変換処理(FFT)又はフィルタ処理することでノイズ除去し、ノイズ除去した輪軸の加速度信号とその閾値との閾値判定処理から軌道の異常有無を判定している。また、ノイズ除去した輪軸の加速度信号を入力とした台車の同定用の物理モデルを用いて台車加速度を推定し、推定した台車加速度とノイズ除去した台車加速度信号との近似判定処理から台車の異常有無を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−170080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、かかる従来技術における車両の状態、つまり異常を検出する異常検出装置によれば、軌道異常によって輪軸加速度が所定の閾値を超えた時、台車異常によって台車加速度が所定の閾値を超えたとしても軌道異常と判定し、軌道異常と台車異常の両異常を同時に検知できない課題がある。また、輪軸加速度から台車加速度を推定する同定用の物理モデルを用いる場合、仮に軌道異常と台車異常の両異常を同時に検知できたとしても、軌道異常は輪軸加速度のみで判定されるため、軌道異常と台車異常の異常要因の分離(判定)ができない。ここで、所定の閾値とは、鉄道車両の状態、つまり異常を判定するための異常判定用を意味する。
【0006】
本発明の目的は、前記の問題に鑑み、軸箱加速度と車体加速度の振幅比率の閾値判定を考慮することで、軌道異常と台車異常の両異常検知、及び両異常の要因分離を精度良く簡単に実施することが可能な鉄道車両の状態監視装置及び状態監視方法、並びに鉄道車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の目的を達成するために、例えば、鉄道車両は、鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を備え、前記振動検出装置は、前記輪軸に設置された軸箱の振動加速度及び前記車体の振動加速度から前記鉄道車両の振動を検出する振動検出手段を備え、前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記軸箱振動加速度と前記車体振動加速度との第1振幅比率を計算する第1振幅比率計算手段と、前記第1振幅比率と閾値とを比較判定する第1閾値判定処理手段と、前記第1閾値判定処理手段の判定結果から異常要因を判定する異常判定処理手段を備えたものである。
【0008】
また、前記鉄道車両は前記異常検出装置が、更に前記車両加速度から一定量の信号を抽出する窓フィルタと、前記窓フィルタで抽出した時刻歴波形のRMS(oot ean quare)値、または最大値を算出する計算処理手段と、前記RMS値、または前記最大値の頻度を算出する頻度計算処理手段と、を備えたものである。
【0009】
また、前記鉄道車両は前記異常装置が、更に前記鉄道車両の走行位置検知装置の走行位置と走行速度検知装置の走行速度を基に前記所定の閾値を保存するデ−タベ−スとを備えたものである。
【0010】
また、前記鉄道車両は前記異常検出装置が、前記鉄道車両の軸箱振動加速度と前記鉄道車両の台車枠振動加速度との第2振幅比率を計算する第2振幅比率計算手段と、前記第2振幅比率と所定の閾値とを判定する第4閾値判定処理手段と、前記鉄道車両の車体振動加速度と前記鉄道車両の台車枠振動加速度との第3振幅比率を計算する第3振幅比率計算手段と、前記第3振幅比率と所定の閾値とを判定する第5閾値判定処理手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、軸箱加速度の閾値判定に車体加速度と軸箱加速度の振幅比率の閾値判定を考慮することで、異常検知の精度が向上し、軌道側異常と車両側異常の異常要因を分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は本発明の一実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である。(実施例1)
【図2】図2は図1の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロ−図である。
【図3】図3は本発明の鉄道車両の状態監視装置の信号に対する窓フィルタ適用例とRMS値の振幅比率算出例を示す図である。
【図4】図4は本発明の鉄道車両の状態監視装置の一実施例における閾値判定処理と異常判定処理を示す図である。
【図5】図5は本発明の鉄道車両の状態監視装置の頻度分布の算出例を示す図である。
【図6】図6は本発明の他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である。(実施例2)
【図7】図7は図6の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロ−図である。
【図8】図8は本発明の鉄道車両の状態監視装置の他の実施例における閾値判定処理と異常判定処理とを示す図である。
【図9】図9は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である。(実施例3)
【図10】図10は図9の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロ−図である。
【図11】図11は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である。(実施例4)
【図12】図12は図11の異常監視装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロ−図である。
【図13】図13は本発明の鉄道車両の状態監視装置の更に他の実施例における閾値判定処理と異常判定処理とを示す図である。
【図14】図14は図11のデ−タベ−スを利用した各閾値切換設定方法の説明図である。
【図15】図15は本発明の更に他の実施例を示す鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図である。(実施例5)
【図16】図16は図15の異常検出装置の信号処理の流れを示す異常検出・判定処理フロ−図である。
【図17】図17は本発明の鉄道車両の状態監視装置の信号に対する窓フィルタ適用例とRMS値の振幅比率算出例を示す図である。
【図18】図18は本発明の鉄道車両の状態監視装置の他の実施例における閾値判定処理と異常判定処理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、共通な機能を有する構成要素には同一の参照番号を付し、説明を省略する。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明の一実施例(実施例1)の鉄道車両の状態監視装置の構成例を示すシステム構成図である。
図1において、軌道(線路)1上を走行する車両7は車体6と台車5から構成されている。車体6は、空気ばね4を介して台車5(1台車のみ図示)に搭載される。台車5は台車枠3と輪軸2から構成されている。台車枠3には、軸ばね8を介して輪軸2の軸受けハウジングとなる軸箱9が取付けられる。輪軸2は回転運動するもので軌道1上を前後方向に移動する。
【0015】
車両7の軸箱9には、輪軸2の振動加速度を計測する軸箱加速度計101が設置されており、車体6の床面上には、車体6の振動加速度を計測する車体加速度計102が設置されている。軸箱加速度計101は、該軸箱加速度計の電圧を検出する軸箱加速度検出装置10(軸箱加速度検出手段)を備えている。軸箱加速度計101の電圧20aは軸箱加速度検出装置10によって軸箱加速度信号22aとして検出される。車体加速度計102は、該車体加速度計の電圧を検出する車体加速度検出装置11(車体加速度検出手段)を備えている。車体加速度計102の電圧21aは車体加速度検出装置11によって車体加速度信号23aとして検出される。すなわち、軸箱加速度計101を含む軸箱加速度検出装置10及び車体加速度計102を含む車体加速度検出装置11は、車両7の振動を検出する振動検出手段を構成している。
【0016】
車両7の異常を検出する異常検出装置(異常検出手段)17は、軸箱加速度検出装置10と車体加速度検出装置11とに電気的に接続され、軸箱加速度検出装置10の軸箱加速度信号22aと車体加速度検出装置11の車体加速度信号23aを受け、これらの信号をもって車両の異常を検出するものである。具体的には、軸箱加速度検出装置10及び車体加速度検出装置11に接続され、軸箱加速度信号22a及び車体加速度信号23aを受けるフィルタ処理部12と、該フィルタでノイズ除去された軸箱加速度信号22aと車体加速度信号23aとの振幅比率(第1振幅比率)を算出し、振幅比率信号24aを出力する振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13と、該振幅比率信号24aを受け、閾値判定処理を実行し、閾値判定処理信号25aを出力する閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14と、該閾値判定処理信号25aを受け、閾値判定処を実行し、異常判定処理信号26aを出力する異常判定処理部15と、異常判定処理信号26aを受け、判定結果を出力する判定結果出力処理部16から構成されている。異常検出装置17は車体6側に設置されるが、その設置箇所は判定結果が確認可能な位置であるならばどこでも良い。
【0017】
振幅比率算出処理部13はフィルタ処理部12から出力される軸箱加速度信号22aと車体加速度信号23aを入力とし、閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14は振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13から出力される振幅比率信号24aを入力とし、異常判定処理部15は閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14から出力される閾値判定処理信号25aを入力とし、判定結果出力処理部16は異常判定処理部15から出力される異常判定処理信号26aを入力とする。
【0018】
ここで、異常検出装置17の振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13は、フィルタ処理部12からの軸箱振動加速度信号22a、車体振動加速度23aに基づき車両7の車体振動加速度と軸箱振動加速度との振幅比率(第1振幅比率)を計算する振幅比率計算手段(第1振幅比率計算手段)を構成し、閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14は、振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13の振幅比率信号24aに基づき前記振幅比率(第1振幅比率)と所定の閾値とを判定する閾値判定処理手段(第1閾値判定処理手段)を構成し、また、異常判定処理部15及び判定結果出力処理部16は、前記閾値判定処理手段(第1閾値判定処理手段)の閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14の閾値判定処理信号25a及び異常判定処理部15の異常判定処理信号26aに基づき得られる結果から異常要因を判定する異常判定処理手段を構成している。
【0019】
次に、図2〜図5によって、本発明の一実施例の鉄道車両の状態監視装置における異常検出装置17の処理動作、つまりフィルタ処理、振幅比率算出処理、閾値判定処理及び異常判定処理などの処理フロ−について詳細に説明する。
【0020】
図2は、異常検出・判定処理を示すフロ−である。同図において、軸箱加速度・車体加速度信号入力から異常判定結果が出力されるまでの流れを説明する。図2において、sはステップ(tep)を意味する。
まず、異常検出装置17は、フィルタ処理部12、12において、軸箱加速度検出装置10と車体加速度検出装置11とから振動加速度の軸箱加速度信号22aと車体加速度信号23aの入力(s1)を受け、該信号からノイズ除去するためのフィルタ処理を実行し(s2)、かつ一定量の信号数を抽出するために窓フィルタ(図3参照)を掛ける処理を実行する(s3)。
【0021】
次に、異常検出装置17は、振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13において、フィルタ処理部12にて抽出した軸箱加速度信号22aと車体加速度信号23aに対してRMS値計算処理を実行する(s4)。該RMS値計算処理の実行により、例えば、車両7で発生する車両振動の平均的な振動値を抽出することができる。あるいは、異常検出装置17は、抽出した軸箱加速度信号22aと車体加速度信号23aに対して最大値検出処理を実行する(s4)。最大値計算処理を実施することで、例えば、車両が分岐等通過する際に、瞬間的に車両に発生する著大なインパルス振動を抽出することができる。
また、異常検出装置17は、計算した軸箱加速度信号と車体加速度信号のRMS値と、計算した軸箱加速度信号と車体加速度信号の最大値を基に、軸箱加速度信号に対する車体加速度信号のRMS値と最大値の振幅比率(第1振幅比率)の計算を実行し(s5)、振幅比率算出信号24aを出力する。
【0022】
次に、異常検出装置17は、閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14において、振幅比率算出処理部13にて算出した振幅比率(第1振幅比率)に基づく振幅比率信号24aと予め設定してある所定の閾値(図4のα、β参照)を閾値判定処理(s6)し、閾値判定処理信号25aを出力する。ここで、予め設定してある所定の閾値とは、振幅比率(第1振幅比率)が正常範囲にあるのか、異常範囲にあるのかを判定するために設定した異常判定用閾値を示す。具体的には、後述する。
【0023】
最後に、異常検出装置17は、異常判定処理部15において、振幅比率信号24aの閾値判定結果(閾値判定処理信号25a)から異常要因を判定(s7)し、異常判定処理信号26aを出力する。そして、判定結果出力処理部16において、異常判定処理信号26aに基づき異常判定結果を出力する(s8)。
【0024】
図3は、上述した窓フィルタの適用例とRMS値の振幅比率算出例を示す図であり、図2の処理s3〜s5に対応する。窓フィルタ50、50は、ある所定の長さ(時間)をもっており、その長さのなかでノイズ除去された軸箱加速度信号(波形)51(図1の22a)と車体加速度信号(波形)52(図1の23a)を抽出し、軸箱加速度RMS値53と車体加速度RMS値54が算出される。RMS値振幅比率55は軸箱加速度RMS値53に対する車体加速度RMS値54の比率として算出される。なお、窓フィルタ50内の加速度信号は時々刻々と変化するため、軸箱加速度RMS値53と車体加速度RMS値54とRMS値振幅比率55は一定値をとらず時々刻々と変化する。
なお、ここではRMS値を例としたが、最大値についても同様に適用可能であり、最大値振幅比率を算出する場合は、軸箱加速度信号51と車体加速度信号52の絶対値から最大値を算出し、振幅比率(第1振幅比率)を計算する。
上述した算出を実行するためには、前記窓フィルタで抽出した加速度信号から時刻歴波形のRMS値、又は最大値を算出する計算処理部を備える。
【0025】
図4は、RMS値振幅比率55を対象にした閾値判定処理と異常判定処理の例であり、図2の処理s6〜s7に対応する。同図において、判定処理部60は、RMS値振幅比率55(RMS値振幅比率:A)と所定の閾値α、βとの大小関係を比較判定する。例えば、閾値α、βは事前に健全な車両の振動値を算出しておき、その算出結果を基に設定する。判定処理部60はRMS値振幅比率55が所定の閾値αと閾値βの間にある場合には、異常無し62と判定し、RMS値振幅比率55が所定の閾値αより小さい場合、或いは、RMS値振幅比率55が所定の閾値βより大きい場合には、車両異常61と判定する。
【0026】
図4はRMS値振幅比率55を例としたが、最大値振幅比率においても同様の判定処理で適用できる。その際、閾値は所定の値を設定する必要がある。
また、図4ではRMS値振幅比率55に対して所定の閾値との閾値判定処理を実施しているが、図5に示すRMS値振幅比率55を頻度分布処理計算することで、振幅比率RMS頻度分布70と所定の閾値α’、β’との比較判定処理が実施可能となる。この場合、判定処理部60は、RMS値振幅比率頻度分布70が所定の閾値α’と閾値β’の間にある場合には、「異常無し」62と判定し、RMS値振幅比率頻度分布70がRMS値振幅比率頻度分布70aのように所定の閾値α’より小さい場合、或いは、RMS値振幅比率頻度分布70がRMS値振幅比率頻度分布70bのように所定の閾値β’より大きい場合には、「車両異常」61と判定する。
【0027】
図5はRMS値振幅比率頻度分布70を例としたが、最大値振幅比率頻度分布においても同様の判定処理で適用できる。その際、閾値は所定の値を設定する必要がある。
また、上述した頻度分布処理計算や最大値振幅比率頻度分布処理計算には、前記RMS値、又は前記最大値の頻度を算出する頻度計算処理部が必要である。
なお、以後の実施例においても、頻度分布の算出例は同様に適用可能である。
本実施例によれば、軸箱加速度に対する車体加速度の振幅比率(第1振幅比率)を用いて、所定の閾値に対する閾値判定処理(第1閾値判定処理)を実施することで、車両の異常検出の精度が良く、且つ、簡素なシステム構成で実施できる。
【実施例2】
【0028】
次に、本発明の他の実施例(実施例2)について説明する。図6は本発明の実施例2の鉄道車両の状態監視装置のシステム構成図、図7は本発明の実施例2の鉄道車両の状態監視装置の異常検出・判定処理フロ−、図8は本発明の実施例2の鉄道車両の異常状態監視装置の閾値判定処理と異常判定処理について示したものである。
【0029】
本実施例と図1の実施例1とのシステム構成上の相違点は、図6に示す如く、閾値判定処理部(第2閾値判定処理部B)18の有無にある。すなわち、本実施例においては、異常検出装置17は、閾値判定処理部(第2閾値判定処理部B)18を備え、フィルタ処理部12からの軸箱加速度信号22aを入力し、異常判定処理部15に閾値判定処理信号27aを出力する構成となっている。
【0030】
また、図2の異常検出・判定処理フロ−との相違点は、図7の異常検出・判定処理フロ−に示す如く、軸箱加速度の閾値判定処理と振幅比率(第1振幅比率)の閾値判定処理を実行する処理s6−1の有無にある。すなわち、本実施例においては、軸箱加速度に対する車体加速度の振幅比率計算処理(s5)の後に軸箱加速度の閾値判定処理(第2閾値判定処理)と、振幅比率(第1振幅比率)の閾値判定処理(第1閾値判定処理)を実行(s6−1)してなる構成となっている。
また、本実施例においては、図4の閾値判定処理と異常判定処理
を示す実施例1に対して、図8に示す如く、閾値判定処理と異常判定処理では軸箱加速度RMS値53と所定の閾値に対する大小関係を比較判定する判定処理部63が追加される。
【0031】
ここで、判定処理部60は、RMS値振幅比率55と所定の閾値α、βとの大小関係を比較判定する。判定処理部60は、例えば、RMS値振幅比率計算結果(s6−1)を基に、RMS値振幅比率55が所定の閾値αと閾値βの間にある場合には、「正常」と判定し、RMS値振幅比率55aが所定の閾値αより小さい場合には、「異常1」と判定し、RMS値振幅比率55bが所定の閾値βより大きい場合には、「異常2」と判定する。判定処理部63から出力される2つの信号と判定処理部60から出力される3つの信号は論理積65と論理和64により5つの異常に分類される。
【0032】
具体的な異常判定内容について説明すると、判定処理部63で軸箱加速度RMS値53が所定の閾値より大きく、判定処理部60でRMS値振幅比率55が所定の閾値αより小さい場合には、「車両異常或いは車両異常且つ軌道異常」66として判定される。
また、判定処理部63で軸箱加速度RMS値53が所定の閾値より小さく、判定処理部60でRMS値振幅比率55が所定の閾値αより小さい(或いは、RMS値振幅比率55が所定の閾値βより大きい)場合には、車両異常61として判定される。
また、判定処理部63で軸箱加速度RMS値53が所定の閾値より大きく、判定処理60でRMS値振幅比率55が所定の閾値αより大きい場合には、「車両異常且つ軌道異常」67として判定される。
また、判定処理63で軸箱加速度RMS値53が所定の閾値より大きく、判定処理部60でRMS値振幅比率55が所定の閾値αより小さく且つ閾値βより大きい場合には、軌道異常68として判定される。また、判定処理部63で軸箱加速度RMS値53が所定の閾値より小さく、判定処理60部でRMS値振幅比率55が所定の閾値αより大きく且つ閾値βより小さい場合には、異常無62として判定される。
これらの異常判定結果は車両・軌道異常判定結果部90に記録される。なお、図8ではRMS値を例としたが、最大値も同様の手段で適用可能である。
【0033】
本実施例によれば、軸箱加速度に対する車体加速度の振幅比率(第1振幅比率)に、軸箱加速度を追加考慮し、所定の閾値に対する閾値判定処理(第1、第2閾値判定処理)と異常判定処理を実施することで、軌道側且つ(或いは)車両側の異常検出が精度良く、簡素なシステム構成で実施できる。
【実施例3】
【0034】
次に、本発明の更に他の実施例(実施例3)について説明する。図9は本発明の実施例3の鉄道車両の異常状態監視装置のシステム構成図、図10は本発明の実施例3の鉄道車両の異常状態監視装置の異常検出・判定処理フロ−について示したものである。
【0035】
本実施例は、図6の実施例2に対して、図9に示す如く、システム構成上、車両側6に、走行位置検出装置100及び車両速度検出装置104を追加し、異常検出装置17に、前記走行位置検出装置100及び車両速度検出装置104からの走行位置信号29aと走行速度信号33aを基に閾値判定処理部18(第2閾値判定処理部B)の閾値を設定する閾値設定部80及びその閾値を保存するデータベース81を追加したものである。
【0036】
同図において、閾値設定部80は、車両7に設置されている走行位置検出装置100と車両速度検出装置104から出力される走行位置信号29aと走行速度信号33aの入力を受け、データベース81に閾値取得信号30aを出力する。また、閾値信号32aを閾値判定処理部(第2閾値判定処理部B)18に出力する。データベース81は、閾値設定部80からの閾値取得信号30aに基づき、データベース閾値信号31aを出力し、該データベース閾値信号は閾値設定部80に入力される。
また、異常検出・判定処理フロ−は、図7の実施例2に対して、図10に示す如く、軸箱加速度に対する車体加速度の振幅比率計算処理(s5)の後に、データベース81に保存された車両走行位置と車両走行速度に基づく軸箱加速度の閾値を利用して、閾値設定処理部(第2閾値判定処理部B)18の閾値設定を特徴的な走行箇所に応じて切換え設定処理を実行する(s5−1)ものである。
【0037】
本実施例によれば、車両の走行位置と走行速度に基づきデータベース81に記録された軸箱加速度の閾値を用いて、データベース81の閾値を所定の閾値と切換え設定(s5−1)しながら閾値判定処理(第2閾値判定処理)を実施することで、橋脚等の軌道状態が異なる区間に対する異常検知を精度良く実施することができる。
【実施例4】
【0038】
次に、本発明の他の実施例(実施例4)について説明する。図11は本発明の実施例4の鉄道車両の異常状態監視装置のシステム構成図、図12は本発明の実施例4の鉄道車両の異常状態監視装置の異常検出・判定処理フロ−、図13は本発明の実施例4の鉄道車両の異常状態監視装置の閾値判定処理と異常判定処理を示す図、図14は本発明の実施例4の鉄道車両の異常状態監視装置のデータベース81の閾値を利用した各閾値切換設定方法について示したものである。
【0039】
本実施例は、図9の実施例3に対して、図11に示す如く、システム構成上、異常検出装置17は、更に閾値判定処理部(第3閾値判定処理部C)19を備えたものである。
同図において、閾値設定部80は、閾値信号32aを閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14と閾値判定処理部(第2閾値判定処理部B)18と閾値判定処理部19に出力する。閾値判定処理部19は、閾値信号32aと車体加速度信号23aを入力とし、これらの信号に基づいて異常判定処理部15に閾値判定処理信号28aを出力する。
【0040】
また、図10の実施例3に対して、異常検出・判定処理フロ−は、図12に示す如く、軸箱加速度に対する車体加速度の振幅比率計算処理(s5)の後に、デ−タベ−ス81に保存された閾値、つまり車両走行位置と車両走行速度に基づく軸箱加速度の閾値と振幅比率(第1振幅比率)の閾値と車体加速度の閾値を利用して、閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14と閾値設定処理部(第2閾値判定処理部B)18と閾値設定処理部(第3閾値判定処理部C)19の閾値設定を特徴的な走行箇所に応じて切換え設定処理し(s5−2)、車体加速度の閾値判定処理(第3閾値判定処理)と軸箱加速度の閾値判定処理(第2閾値判定処理部)と振幅比率(第1振幅比率)の閾値判定処理(第1閾値判定処理部)を実行する(s6−2)ようにしたことにある。
【0041】
また、図8の実施例3に対して、閾値判定処理と異常判定処理は、図13に示す如く、図12のs6−2とs7に対応する。すなわち、判定処理部63の閾値γは閾値設定部80から出力される軸箱加速度の閾値信号32a−1として入力され、判定処理部60の閾値αと閾値βは閾値設定部80から出力される振幅比率の閾値信号32a−2として入力される。また、判定処理部93は車体加速度RMS値54と閾値設定部80から出力される車体加速度の閾値信号32a−3とを比較判定する。具体的な異常判定内容について説明すれば、判定処理部93で車体加速度RMS値54が車体加速度の閾値ηより大きい場合には、車両・軌道異常判定結果90に加えて、例えば、空力加振影響による車体異常振動92と判定する。また、判定処理部93で車体加速度RMS値54が車体加速度の閾値ηより小さい場合には、車両・軌道異常判定結果90に加えて、例えば、空力加振影響による車体異常振動無91と判定する。
【0042】
また、図12の異常判定フロ−のデ−タベ−スに基づいた各閾値設定切換え処理(s5−2)の例を、図14を用いて説明する。
図14は、トンネル区間331走行時と明かり区間330走行時、及びトンネル区間331と明かり区間330にそれぞれ橋梁やレ−ル継目といった軌道特徴区間332がある場合の軸箱加速度の閾値信号32a−1と振幅比率の閾値信号32a−2と車体加速度の閾値信号32a−3の設定手段の一例を示している。
【0043】
同図において、軸箱加速度閾値信号32a−1は、橋梁やレ−ル継目といった軌道特徴区間332がある場合において、また軸箱加速度の閾値信号32a−1は、所定の閾値信号300bが橋梁やレ−ル継目といった軌道特徴区間332を通過する場合において、閾値信号301bに示す通り上乗せされるように切り換えられる。
【0044】
振幅比率(第1振幅比率)の閾値信号32a−2は、所定の閾値信号310bがトンネル区間331を通過する場合において、トンネル内での車体加速度の振幅増加分を考慮して閾値信号311bに示す通り上乗せされるように切り換えられる。
車体加速度の閾値信号32a−3は、軸箱加速度と振幅比率(第1振幅比率)を考慮して、所定の閾値信号320bがトンネル区間331(軌道特徴区間332は通過しない)を通過する場合において、トンネル内での車体加速度の振幅増加分を考慮した閾値信号311bを基に閾値信号321bに切り替えられる。
また、車体加速度の閾値信号32a−3は、所定の閾値信号320bがトンネル区間331且つ橋梁やレ−ル継目といった軌道特徴区間332を通過する場合において、閾値信号301bと閾値信号311bを考慮して閾値信号322bに切り換えられる。
また、車体加速度の閾値信号32a−3は、所定の閾値信号320bが明かり区間330且つ軌道特徴区間332を通過する場合において、橋梁やレ−ル継目といった軌道特徴区間332に起因した閾値信号301bを考慮して閾値信号323bに切り換えられる。
【0045】
本実施例によれば、車両の走行位置と走行速度に基づきデ−タベ−ス81に記録された軸箱加速度と車体加速度と振幅比率(第1振幅比率)の閾値を用いて、デ−タベ−スの閾値を所定の閾値と切換え設定しながら閾値判定処理(第1、第2、第3閾値判定処理)を実施することで、これまでの軌道側、あるいは(且つ)車両側の異常検出に加えて、橋脚等の軌道状態の異なる区間やトンネル走行時の空力加振等で車体振動が発生する区間に対する異常検知を精度良く実施することができる。
【実施例5】
【0046】
次に、本発明の他の実施例(実施例5)について説明する。図15は本発明の実施例5の鉄道車両の異常状態監視装置のシステム構成図、図16は本発明の実施例5の鉄道車両の異常状態監視装置の異常検出・判定処理フロ−、図17は本発明の実施例5の鉄道車両の異常状態監視装置の信号に対する窓フィルタの適用例とRMS値の振幅比率算出例、図18は本発明の実施例5の鉄道車両の異常状態監視装置の閾値判定処理と異常判定処理について示したものである。
【0047】
本実施例は、図1の実施例1に対して、システム構成上、図15に示す如く、台車枠振動加速度計103が台車枠3に設置されている。
台車枠加速度計103の電圧200aは、台車枠加速度検出装置(台車枠加速度検出手段)110によって台車枠加速度信号201aとして検出される。
異常検出装置17は、例えば、実施例1における台車枠加速度信号201aを入力としてフィルタ処理部12と振幅比率算出処理部(第2振幅比率算出処理部D)111と閾値判定処理部(第4閾値判定処理部D)112と振幅比率算出処理部(第3振幅比率算出処理部E)113と閾値判定処理部(第5閾値判定処理部E)114を備える。
振幅比率算出処理部(第2振幅比率算出処理D)111は、軸箱加速度信号22aと台車枠加速度信号201aを入力とし、輪軸−台車枠加速度振幅比率信号202aを出力する。
振幅比率算出処理部(第3振幅比率算出処理部E)113は、車体加速度信号23aと台車枠加速度信号201aを入力とし、台車枠−車体加速度振幅比率信号204aを出力する。
閾値判定処理部(第4閾値判定処理部D)112は、輪軸−台車枠加速度振幅比率信号202aを入力し、異常判定処理部15に閾値判定処理信号203aを出力する。
閾値判定処理部(第5閾値判定処理部E)114は、台車枠−車体加速度振幅比率信号204aを入力し、異常判定処理部15に閾値判定処理信号205aを出力する。
ここで、閾値判定処理部112,114の閾値は、実施例1、2と同様に予め設定した閾値を利用するものであるが、実施例3、4と同様に閾値設定手段などに基づき設定変更できるように構成しても良い。
【0048】
また、本実施例は、図2の実施例1に対して、異常判定フロ−は、図16に示す如く、まず、軸箱加速度信号と車体加速度信号と台車枠信号を入力する(s1−1)。
次に、抽出した加速度信号に対するRMS値、最大値計算処理(s4)の後に、軸箱加速度に対する台車枠加速度の振幅比率計算処理と台車枠加速度に対する車体加速度の振幅比率計算処理する(s5−2)。
【0049】
また、本実施例は、図3の実施例1に対して、窓フィルタの適用例とRMS値の振幅比率算出例では、図17に示す如く、窓フィルタ50によって台車枠加速度120が抽出され、台車枠加速度RMS値121が算出され、軸箱加速度RMS値53と車体加速度RMS値54を用いて、軸箱加速度RMS値53に対する台車枠加速度RMS値121の比率として振幅比率(第2振幅比率)122、台車枠加速度RMS値121に対する車体加速度RMS値54の比率として振幅比率(第3振幅比率)123が算出される。
なお、図17はRMS値を例としたが、最大値も適用できる。また、図17は図12の処理s3〜s5−2に対応する。
【0050】
また、本実施例は、図4の実施例1に対して、閾値判定処理と異常判定処理では、図18に示す如く、判定処理部124は、輪軸−台車枠間RMS値振幅比率122と所定の閾値α、βとの大小関係を比較判定し、判定処理部127は台車枠−車体間RMS値振幅比率123と所定の閾値α、βとの大小関係を比較判定する。例えば、判定処理部124は、輪軸−台車枠間RMS値振幅比率122が所定の閾値αと閾値βの間にある場合には、異常無し126と判定し、輪軸−台車枠間RMS値振幅比率122が所定の閾値αより小さい場合、或いは、輪軸−台車枠間RMS値振幅比率122が所定の閾値βより大きい場合には、軸バネ8等の車両異常125と判定する。
また、判定処理部127は、台車枠−車体間RMS値振幅比率123が所定の閾値αと閾値βの間にある場合には、異常無し126と判定し、台車枠−車体間RMS値振幅比率123が所定の閾値αより小さい場合、或いは、台車枠−車体間RMS値振幅比率123が所定の閾値βより大きい場合には、空気バネ4等の車両異常128と判定する。
なお、図18はRMS値を例としたが、最大値も適用できる。また、図18は図12の処理s6〜s7に対応する。
【0051】
以上述べたように、本実施例によれば、台車枠加速度を検出する台車枠加速度検出装置を追加し、軸箱加速度に対する台車枠加速度の振幅比率(第2振幅比率)と台車枠加速度に対する車体加速度の振幅比率(第3振幅比率)を考慮することで、車両異常の要因推定が部品レベルで実施可能であり、且つ、異常検知を精度良く、簡素なシステムで実施できる。すなわち、車体6の床下の異常(軸バネや空気バネなど)の判定が可能となるとともに異常個所(軸バネ:軸箱−台車枠間の振幅比率、空気バネ:台車枠−車体間の振幅比率)の特定も可能となる効果を奏する。
【0052】
上述した各実施例の他、それらの応用も可能である。例えば、実施例3及び実施例4においては、データベース81や閾値設定部80などを設け、該データベースに閾値を保存し、該データベースの保存閾値を閾値設定部80より取り出して第2の閾値判定処理部14及び第1、第2、第3の閾値判定処理部14、18、19における装置異常判定基準となる異常判定用閾値として利用しているが、これらの技術は、他の実施例に応用することも可能である。この場合、実施例3及び実施例4の如く、車両速度検出装置104や走行位置検出装置100などの出力を利用して閾値としてデータベース8に登録保存する。
【0053】
また、実施例5において、台車枠加速度検出装置110を設け、その出力を、フィルタ処理部12を介して第2、第3の振幅比率算出処理部111、113に供給し、該処理部における振幅比率算出処理用信号として利用しているが、この技術も他の実施例に応用することも可能である。例えば、図6の実施例に適用する場合には、台車枠加速度検出装置110、フィルタ12を追加するとともに、その出力信号の台車枠加速度信号201aと軸箱加速度検出装置10−フィルタ12の出力信号の軸箱加速度信号22aとの振幅比率を算出する振幅比率算出処理部(第2振幅比率算出処理部D)111及び閾値判定処理部(第4閾値判定処理部D)112を設け、かつ振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13にて台車枠加速度信号201a(軸箱加速度信号22aに代えて)と車体加速度信号23aとの振幅比率を算出する如く構成する。また、異常判定処理部15にて、閾値判定処理部(第4閾値判定処理部D)112の閾値判定処理信号203aと閾値判定処理部(第2閾値判定処理部B)18の閾値判定処理信号27aと閾値判定処理部(第1閾値判定処理部)14の閾値判定処理信号25aとを異常判定処理部15にて判定する構成とする。但し、この場合、振幅比率算出処理部(第1振幅比率算出処理部)13及び閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14には、図15の振幅比率算出処理部(第3振幅比率算出処理部E)113と同様な振幅比率算出処理及び閾値判定処理機能を持たせる。
係る適用例によれば、(1)軌道異常と(2)台車異常(軸バネ)と(3)台車異常(空気バネ)の分離判定が可能である。
図9の実施例に適用する場合も同様に構成すれば良い。
図11の実施例に適用する場合には、図6の実施例と同様に台車枠振動加速度を検出する台車枠加速度検出装置110、フィルタ12、振幅比率算出処理部(第2振幅比率算出処理部D)111、閾値判定処理部(第2閾値判定処理部D)112を追加するとともに、振幅比率算出処理部13にて車体加速度信号23aと台車枠加速度信号201a(軸箱加速度信号22aに代えて)との振幅比率を算出する如く構成する。また、振幅比率算出処理部13及び閾値判定処理部(第1閾値判定処理部A)14には、図15の振幅比率算出処理部(第3振幅比率算出処理部E)113及び閾値判定処理部(第5閾値判定処理部E)114と同様な振幅比率算出処理及び閾値判定処理機能を持たせる。異常判定処理部15は、閾値判定処理信号203aと閾値判定処理信号27aと閾値判定処理信号25aと閾値判定処理信号28aの4つの信号をもって異常を判定する。
係る適用例によれば、(1)軌道異常、(2)台車異常(軸バネ)、(3)台車異常(空気バネ)、(4)車体異常振動の分離判定が可能である。
【符号の説明】
【0054】
1:軌道
2:輪軸
3:台車枠
5:台車
6:車体
7:車両
9:軸箱
10:軸箱加速度検出装置
11:車体加速度検出装置
12:フィルタ処理部
13:振幅比率算出処理部
14:閾値判定処理部(A)
15:異常判定処理部
16:判定結果出力処理部
17:異常検出装置
18:閾値判定処理部(B)
19:閾値判定処理部(C)
22a:軸箱加速度信号
23a:車体加速度信号
24a:振幅比率信号
25a:閾値判定処理信号(A)
26a:異常判定処理信号
27a:閾値判定処理信号(B)
28a:閾値判定処理信号(C)
29a:走行位置信号
30a:閾値取得信号
31a:デ−タベ−ス閾値信号
32a:閾値信号
50:窓フィルタ
51:軸箱加速度信号
52:車体加速度信号
53:軸箱加速度RMS値
54:車体加速度RMS値
55:RMS値振幅比率
80:閾値設定部
81:デ−タベ−ス
100:走行位置検出装置
101:軸箱加速度計
102:車体加速度計
103:台車枠振動加速度計
110:台車枠加速度検出装置
111:振幅比率算出処理部(D)
112:閾値判定処理部(D)
113:振幅比率算出処理部(E)
114:閾値判定処理部(E)
122:輪軸−台車枠加速度RMS値振幅比率
123:台車枠−車体加速度RMS値振幅比率

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を備え、
前記振動検出装置は、前記鉄道車両の輪軸に設置された軸箱の振動加速度及び前記鉄道車両の車体の振動加速度から前記鉄道車両の振動を検出する振動検出手段を含み、
前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記軸箱振動加速度と前記車体振動加速度との第1振幅比率を計算する第1振幅比率計算手段と、前記第1振幅比率と閾値とを比較判定する第1閾値判定処理手段と、前記第1閾値判定処理手段の判定結果から異常要因を判定する異常判定処理手段を含む、
ことを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
請求項1記載の鉄道車両において、前記異常検出装置が、更に、前記鉄道車両の軸箱振動加速度と閾値とを判定する第2閾値判定処理手段を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項2記載の鉄道車両において、前記異常検出装置が、更に前記鉄道車両の車体振動加速度と閾値とを比較判定する第3閾値判定処理手段を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3記載の鉄道車両において、前記異常検出装置の第1振幅比率算出処理手段が、前記軸箱振動加速度と前記車体振動加速度から一定量の加速度信号を抽出する窓フィルタと、前記窓フィルタで抽出した加速度信号から時刻歴波形のRMS値、又は最大値を算出する計算処理部と、前記RMS値、又は前記最大値の頻度を算出する頻度計算処理部と、を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載の鉄道車両において、前記異常検出装置が、更に前記鉄道車両の走行位置検知装置の走行位置と走行速度検知装置の走行速度を基に前記異常判定用閾値となる閾値を保存するデ−タベ−スと、を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
車体と台車枠と輪軸と軸箱を含む鉄道車両において、
前記鉄道車両の振動加速度を検出する振動検出装置と、前記振動加速度検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置とを備え、
前記振動検出装置は、前記軸箱の振動加速度を検出する軸箱加速度検出手段と、前記車体の振動加速度を検出する車体加速度検出手段と、前記台車枠の台車枠加速度検出手段とからなり、
前記異常検出装置は、前記軸箱加速度検出装置の軸箱振動加速度と前記台車枠加速度検出装置の台車枠振動加速度との第2振幅比率を計算する第2振幅比率計算手段と、
前記車体加速度検出装置の車体振動加速度と前記台車枠加速度検出装置の台車枠振動加速度との第3振幅比率を計算する第3振幅比率計算手段と、
前記第2振幅比率と予め設定された閾値との大小を判定する第4閾値判定処理手段と、
前記第3振幅比率と予め設定された閾値との大小を判定する第5閾値判定処理手段と、
前記第4、第5閾値判定処理手段の判定結果から異常要因を判定する異常判定処理手段と、を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項7】
請求項6記載の鉄道車両において、前記異常検出装置が、更に前記鉄道車両の走行位置検知装置の走行位置と走行速度検知装置の走行速度を基に前記閾値となる閾値を保存するデ−タベ−スと、を備えたことを特徴とする鉄道車両。
【請求項8】
請求項1乃至5記載の鉄道車両の状態を監視する状態監視装置において、
前記状態監視装置は、前記鉄道車両の振動を検出する振動検出装置と、前記振動検出装置から検出した信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する異常検出装置を含み、
前記振動検出装置は、前記輪軸に設置された軸箱の振動加速度及び前記車体の振動加速度から前記鉄道車両の振動を検出する振動検出手段からなり、
前記異常検出装置は、前記振動検出手段の前記軸箱振動加速度と前記車体振動加速度との第1振幅比率を計算する第1振幅比率計算手段と、前記第1振幅比率と異常判定用閾値とを比較判定する第1閾値判定処理手段と、前記第1閾値判定処理手段の判定結果から異常要因を判定する異常判定処理手段からなる
ことを特徴とする鉄道車両の状態監視装置。
【請求項9】
車体と台車枠と輪軸より構成される鉄道車両と、前記鉄道車両の振動を検出し、該検出信号を用いて前記鉄道車両の異常を検知する鉄道車両の状態監視方法において、
前記鉄道車両の車体振動加速度と前記鉄道車両の軸箱振動加速度との第1振幅比率を計算する第1振幅比率計算ステップと、
前記第1振幅比率と所定の閾値との大小を判定する第1閾値判定処理ステップと、
前記第1閾値判定処理ステップの判定結果から異常要因を判定する異常判定処理ステップと、を備えたことを特徴とする鉄道車両の状態監視方法。
【請求項10】
請求項9記載の鉄道車両の状態監視方法において、更に前記鉄道車両の軸箱振動加速度と所定の閾値とを比較判定する第2閾値判定処理ステップを備え、前記異常判定処理ステップは、前記第1及び前記第2閾値判定処理ステップの両判定結果から異常要因を判定することを特徴とする鉄道車両の状態監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−245917(P2011−245917A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118741(P2010−118741)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】