説明

鉄道車両及び骨組み溶接方法

【課題】車体外観を損なうことなく外板に骨組みが接合された鉄道車両を提供すること。
【解決手段】縦骨12及び横骨17からなる骨組みを接合した外板11を備えるものであって、縦骨12及び横骨17は、接合した外板11に対して起立した状態になる起立面12b,17bと、その起立面を挟んで反対方向に折り曲げられた、外板11に接合される接合面12a,17cと、外板11から浮いた状態になる継手面12c,17aとを有する骨部材であり、その骨部材の接合面12a,17cが外板11に接合された骨組みは、横骨17の端部が縦骨12の継手面12cと外板11との間に入り込み、面接触した縦骨12と横骨17との継手面12c,17a同士が接合された鉄道車両。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根構体や側構体などを接合して組み立てられる鉄道車両及び骨組み接合方法に関し、特に側構体などを構成する外板に骨組みを接合する場合、表の仕上げ面に現れる溶接痕が目立たないようにした骨組み溶接方法とその方法によって構成した鉄道車両及び骨組み接合方法に関する。
【背景技術】
【0002】
新幹線車両などの高速鉄道車両ではアルミ製車両が採用され、車体全長に対応した20mもの押出型材を接合して鉄道車両が構成されている。一方、在来線を走行する鉄道車両は、メンテナンスの省力化を主目的に無塗装車両が多く使われており、アルミ製構体は傷や汚れの点で劣ることからステンレス製構体の鉄道車両が採用されている。その場合、ステンレス製構体は、押出型材ではなく側構体ブロックなどのパーツを接合して組み合わせる構造の車両構体が採用されている。
【0003】
近年、ステンレス製の外板に芯材である骨組みを溶接して一体にした構体ブロックによって組み立てる鉄道車両が開発され、例えば特開2002−104180号公報に開示されている。ここで図14は、同公報に開示された鉄道車両の側構体を示した面図である。
鉄道車両は、この側構体と屋根構体、妻構体及び台枠を接合した鉄道車両用構体にて構成される。そうした鉄道車両を構成する一方の面の側構体100は、2組の車端窓ブロック101と2組の中間窓ブロック102、そして各窓ブロック101,102の間に位置する3組の側入口ブロック103からなっている。
【0004】
車端窓ブロック101や各中間窓ブロック102は、幕板部分を含む外板110,120に骨組みを接合して構成されたものであり、それぞれの外板110,120は、上部外板と下部外板とに分けられ全体が車体内側に設けられた骨組みより大きく形成されている。また、側入口ブロック103は、幕板部分を含む入口枠板130が上部枠部材、下部枠部材及び側枠部材で構成された入口用開口部にドアが取り付けられている。そして、こうした2組の車端窓ブロック101と中間窓ブロック102、3組の側入口ブロック103が図14に示すように一体になって側構体100が構成される。
【0005】
そうした側構体100を構成するもののうち、例えば中間窓ブロック102は図15に示すように組まれた骨組み201が、外板120に対して接合されている。骨組み201は、縦骨である4本の側柱211に、幕帯部材212、腰帯部材213及び長土台部材214の横骨を接合し、窓開口部の上下に腰骨215及び幕骨216の縦骨を接合して構成されている。そして、外板120は、上部外板121と下部外板122とで骨組み201よりも大きく構成され、上部外板121は、窓開口部が形成され、腰帯部材213から上部の幕板部分と吹き寄せ板部分に貼られ、下部外板122は腰板部分に貼られる。また、外板120の各骨部材間の内側及び幕帯部材212の上部には外板補強骨217が取り付けられている。
【特許文献1】特開2002−104180号公報(第2−3頁、図2、図4)
【特許文献2】特開2002−103074号公報(第3頁、図2)
【特許文献3】特開2005−263126号公報(第6−7頁、図7、図8)
【特許文献4】特開平09−030414号公報(第3頁、図14)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、外板120に骨組み201を一体に接合する場合、従来はスポット溶接によって接合が行われていたが、最近では上部外板121と下部外板122との外板同士の接合などの他、骨組み201の接合にもレーザ溶接が試みられている。
しかし、低出力のレーザビームで行ったとしても、側柱211や外板補強骨217などの縦骨を溶接した場合、車体表側の仕上げ面に現れる溶接痕が目立ってしまう。一般にステンレス鋼板である外板120の表面には車体長手方向、すなわち横方向にヘアライン仕上げ等が行われている。従って、そうした外板120に幕帯部材212などの横骨をレーザ溶接する場合、その溶接痕はヘアラインなどの仕上げ目の方向と一致するため目立たないが、側柱211などの縦骨をレーザ溶接してできる溶接痕は仕上げ目と交差する方向に現れるため微妙な膨らみであっても目立ってしまう。従って、外板に対して骨組みをレーザ溶接する場合、溶接痕が車体外観を悪くしてしまい、鉄道車両の外観が意匠的に好ましいものではなかった。
【0007】
そこで、本発明は、かかる課題を解決すべく、車体外観を損なうことなく外板に骨組みが接合された鉄道車両及び、外観を損なうことなく外板に骨組みを接合する骨組み接合方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鉄道車両は、縦骨及び横骨からなる骨組みを接合した外板を備えるものであって、前記縦骨及び横骨は、接合した前記外板に対して起立した状態になる起立面と、その起立面を挟んで反対方向に折り曲げられた、前記外板に接合される接合面と、前記外板から浮いた状態になる継手面とを有する骨部材であり、その骨部材の接合面が外板に接合された骨組みは、横骨の端部が縦骨の継手面と外板との間に入り込み、面接触した縦骨と横骨との継手面同士が接合されたものとなることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の鉄道車両は、縦骨及び横骨からなる骨組みを接合した外板を備えるものであって、前記縦骨及び横骨は、中間面と、その中間面の幅方向両端で折り曲げられた起立面と、更に起立面から外側に折り曲げられたフランジ面とが形成された骨部材であり、その骨部材が外板に接合された骨組みは、縦骨の中間面が外板に接合され、横骨は、その端部が縦骨のフランジ面と外板との間に入り込み、フランジ面又は中間面が外板に接合され、面接触した縦骨のフランジ面と横骨の中間面又はフランジ面が接合されたものとなることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の鉄道車両は、前記縦骨及び/又は横骨が、互いに接合される接合部分にのみ前記継手面又はフランジ面が形成されたものであることが好ましい。
また、本発明の鉄道車両は、前記骨組みが前記外板に対してレーザ溶接されるものであって、前記縦骨は、その接合面又は中間面が前記外板の仕上げ面側の仕上げ目と同じ方向の幅向にレーザビームを送って溶接が行われたものであることが好ましい。
また、本発明の鉄道車両は、前記縦骨の接合面又は中間面には、前記外板に対する接合強度が得られる数のレーザ溶接が縦方向に複数行われたものであることが好ましい。
【0011】
一方、本発明の骨組み溶接方法は、鉄道車両用構体の外板に対し縦骨及び横骨からなる骨組みをレーザ溶接するための方法であって、前記縦骨及び横骨は、接合した前記外板に対して起立した状態になる起立面と、その起立面を挟んで反対方向に折り曲げられた、前記外板に接合される接合面と、前記外板から浮いた状態の継手面とを有する骨部材であり、縦骨には、外板に面接触した接合面に対して当該外板の仕上げ目に沿って幅方向にレーザビームを送った溶接を行い、横骨には、外板に面接触した接合面に対して当該外板の仕上げ目に沿って長手向にレーザビームを送った溶接を行うことを特徴とする。
また、本発明の骨組み接合方法は、前記縦骨の接合面に対し、前記外板に対する接合強度が得られる数のレーザ溶接を縦方向に複数行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
よって、本発明によれば、例えばハット形をした骨部材の場合、縦骨は、接合面として中間面を外板に当接し、その中間面に外板の仕上げ目に沿ったレーザ溶接が幅方向に行われ、横骨は接合面としてフランジ面を外板に当接し、仕上げ目に沿った長手方向にフランジ面がレーザ溶接される。そのため、骨組みが外板の仕上げ目と同方向にしかレーザ溶接されないため、仕上げ面に現れる溶接痕を目立たなくすることができる。
【0013】
また、本発明によれば、前記と同様に例えばハット形をした骨部材の場合、縦骨は接合面として中間面を外板に当接させれば、横骨の端部が縦骨の継手面となるフランジ面と外板との間に入り込み、縦骨のフランジ面と横骨の継手面となる中間面又はフランジ面とが面接触するため、その面接触した縦骨と横骨との継手面同士がレーザ溶接やスポット溶接などによって接合され、継手部材を省略することができ、コストの低下と車体軽量化が可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明にかかる鉄道車両及び骨組み接合方法の一実施形態を図面を参照しながら以下に説明する。本実施形態の鉄道車両は、図14に示すような側構体に屋根構体や妻構体、そして台枠が接合されて構成されるものである。そして、その側構体は、同様に車端や中間の窓ブロックの間に側入口ブロックが配置され、それぞれが接合され一体になったものである。
【0015】
図1は、そうした側構体を構成する中間窓ブロックと側入口ブロックとが分離した状態を、車体外側から示した斜視図である。なお、側入口ブロック20は全体が示されているが、中間窓ブロック10はその半分が示されている。そして、図2は、この中間窓ブロック10と側入口ブロック20とが接合された状態を車体内側から示した図であって、いずれも半分が示されている。
【0016】
中間窓ブロック10及び側入口ブロック20、或いは図示しない車端窓ブロックは、いずれも面外変形を防止するため外板11に対して車体内側に骨組みが接合されている。本実施形態の鉄道車両は、側構体を構成する中間窓ブロック10などが、外板に対して骨組みをレーザ溶接によって接合して構成されたものである。そこで、外板に対する骨組みの接合構造及び接合方法について中間窓ブロック10を例に挙げて説明する。
【0017】
中間窓ブロック10の骨組みは、複数の骨部材が外板11の車体内側に縦横に組まれて接合されている。具体的には、外板11に形成された窓開口部19の縦側の辺に沿って側柱12が設けられ、更に外板11の左右端部に位置した側柱13が設けられている。一方、窓開口部19の横側の辺に沿って上下に幕帯部材15と腰帯部材16が設けられ、その窓開口部19の中間位置の下に腰骨14が縦方向に設けられている。そして、縦方向に設けられた側柱12,13及び腰骨14の間には、横向きに配置された複数の補強骨17,18が設けられている。
【0018】
中間窓ブロック10は、図1に示すように外板11が上下に分割され、上部外板11Aと下部外板11Bとが窓開口部19の高さで接合されたものである。そうした外板11の車体内側には、前述した側柱12などからなる骨組みがレーザ溶接によって一体に接合されている。側柱12,13、腰骨14、幕帯部材15、腰帯部材16、補強骨17,18などの骨部材は、鉄道車両用構体に多用される断面がハット形をした部材である。本実施形態の接合方法では、そうした骨部材からなる骨組みを外板11に対してレーザ溶接によって接合する。その際、外板11の仕上げ面にはヘアラインによる仕上げ目等が横向きにはいっているため、これに対して溶接痕が目立たないような方法がとられる。
【0019】
ここで、図3は、図2のA−A断面を示した図である。中間窓ブロック10から側入口ブロック20にまたがって切断された部分であり、側入口ブロック20側の入口開口部29には、その縦側の辺に沿って入口フレーム21が配置されている。この入口フレーム21は、断面がコの字形状をした骨部材である。そして、中間窓ブロック10側には、入口フレーム21と平行に側柱13と側柱12が設けられ、こうした側柱12,13の間には横骨である補強骨17が配置されている。側柱12,13や補強骨17は、いずれも前述したように断面がコの字部分の両端にフランジ面が形成されたハット形をした骨部材である。
【0020】
側柱12,13に見られるハット形をした骨部材は、例えば側柱12に示すように、中間面12aの幅方向両側に屈曲して形成された起立面12bによって断面がコの字形をした立体形状であって、更に幅方向には外側に広げられたフランジ面12cが形成されている。そして、本実施形態では、こうしたハット形状の骨部材を外板11にレーザ溶接する場合、特に縦骨である側柱12,13は、図3に示すように中間面12a,13aが外板11に当てられる。従って、中間面12a,13aが接合面になり、そこにレーザ溶接が行われる。また、図示しない腰骨14などの縦骨も同様である。一方、横骨である補強骨17は、図3に示すように、縦骨とは反対のフランジ面17cが外板11に当てられる。従って、フランジ面17cが接合面になり、そこにレーザ溶接が行われる。そして、図示しない幕帯部材15、腰帯部材16、補強骨18などの横骨も同様である。
【0021】
ここで図4は、図2に示す中間窓ブロック10の窓開口部19右側部分であって、図3のA−A断面に対応する部分を抜き出し、更にレーザ溶接によってできる溶接ビードを表した図である。
縦骨である側柱12,13は、外板11の反対面にある仕上げ目の方向とは交差する縦方向に配置され、外板11に当接した中間面12a,13aにレーザビームが照射される。中間面12a,13aは、フランジ面12c,13cと比べて幅方向に広いため、レーザビームは、その中間面12a,13aに対して幅方向、すなわち仕上げ目と平行な横方向に送られる。そして、こうした幅方向に送るレーザ溶接は、側柱12,13の長手方向にわたって断続的に行われる。
【0022】
従って、中間面12a,13aには、図4に示すように横向きの溶接ビードBが縦方向に複数形成される。このとき中間面12a,13aに対する溶接は、側柱12,13の接合強度を確保するため、所定の間隔で所定の数だけ行われる。
一方、横骨である補強骨17は、外板11の仕上げ目の方向と平行な横方向に配置され、外板11に当接したフランジ面17cにレーザビームが照射される。レーザビームは、仕上げ目に沿った補強骨17の長手方向に連続的に送られ、上下両方のフランジ面17cには図4に示すような溶接ビードBが1本ずつ形成される。
【0023】
よって、本実施形態の接合方法によれば、側柱12,13などの縦骨にできた複数の溶接ビードBと、補強骨17などの横骨にできた溶接ビードBは、いずれも外板11表面の仕上げ目と同方向になる。そのため、鉄道車両では、レーザ溶接によって外板11表面に現れる溶接痕が全て仕上げ目に沿ったものとなるので、例えば車体側面の溶接痕を目立たなくすることができるようになった。
【0024】
ここで図5は、縦骨と横骨の接合部である図3において一点鎖線で囲まれたP部を示す拡大断面図である。側柱12,13や補強骨17などの骨部材に照射されるレーザビームは、レーザ照射エネルギーを調整することで、溶接部分の溶け込み深さを外板11の厚み方向の途中までの領域が加熱溶融して溶接が行われるような制御が行われる。従って、図5の溶接ビードB部分に見られるように、レーザビームの照射によって側柱12の中間面12aを超え、外板11の途中深さまでが溶融して接合部分が形成される。
【0025】
ところで、本実施形態では、例えば図5に示すように、縦骨である側柱12においてハット形状の骨部材を反転して中間面12aを接合する構成は、仕上げ目に沿ってレーザ溶接することによる前述した効果が得られたが、こうした構成は更に別の新たな効果も奏することになった。すなわち、縦骨のフランジ面12cが外板11から浮き、その間に横骨が入り込むようになったため、縦骨と横骨との継手部材を省略することができるようになった。
【0026】
従来、縦骨と横骨との接合部は、例えば図16に示す特開平9−30414号公報に開示されもののように構成されている。ハット形の縦骨301と横骨302が交差する接合部では、その縦骨301に対して直交する横骨302の端部が突き当てられるようにして配置されている。そして、そこには図示するような立体継手303が、縦骨301と横骨302に対してスポット溶接などによって接合されている。
立体継手303などの継手部材は、縦骨と横骨との交差部分毎に必要になるため部品点数が多くなってしまいコストを上げる他、特に車両全体で使用される継手部材を合計した重量が車両の軽量化にとって大きな影響を与えるものであった。この点、本実施形態の鉄道車両では以下に示すように継手部材を省略することができ、それによってコストの低下と車体軽量化が可能になった。
【0027】
縦骨である側柱12は、図5に示すように中間面12aが外板11に接合され、その両端に張り出したフランジ面12cが外板11から浮いた状態になっている。一方、横骨である補強骨17は、側柱12とは反対にフランジ面17cが外板11に接合される。そのため、補強骨17の端部が側柱12のフランジ面12cと外板11との隙間に入り込み、フランジ面12cと補強骨17の中間面17aとが面接触する。そのため、この面接触したフランジ面と中間面とを直接接合することにより、側柱12と補強骨17とを継手部材を用いることなく十分な接合強度を得ることができる。
【0028】
ところで、本実施形態は、主に骨組みをレーザ溶接する際仕上げ面に現れる溶接痕を目立たなくする効果の面から述べたが、以上のように縦骨の中間面を接合する構成は、骨組みの継手部材を省略して車体軽量化の効果を奏するものとしてもとらえることができる。そうした場合、側柱12などからなる骨組みを接合する手段としては、レーザ溶接に限定されることはなく、その他のスポット溶接やアークプラグ溶接、或いはネジや鋲釘類での接合又はこれらの組み合わせであっても良い。
【0029】
そこで次に、こうした縦骨と横骨との接合構造に着目し、継手部材を省略した接合構造の各形態について説明する。ただし、接合方法は前述したように特定のものに限定されないが、ここではレーザ溶接を使用した場合について説明する。
ここで図6乃至図10は、骨部材の継手構造に着目した接合構造の各形態を示した図であり、図(a)は縦骨を長手方向に見た断面図、図(b)は平面図、そして図(c)は横骨を長手方向に見た断面図である。いずれも外板に接合された骨組みであって、縦骨の左右両側から横骨が突き当てられるように配置された状態を示している。
【0030】
先ず、図6に示す接合構造を説明する。図3に示すものと同様に、縦骨31は、中間面31aが外板11にレーザ溶接され、横骨41は、フランジ面41cが外板11にレーザ溶接され、それぞれ二点鎖線で示すように溶接ビードBが形成される。そして、縦骨31の起立面31bが横骨41の起立面41bよりも高いため、縦骨31のフランジ面31cが横骨41端部の中間面41aに上から重なり合っている。そのため、このフランジ面31cと中間面41aとがレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨31と横骨41とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。
【0031】
次に、図7に示す接合構造について説明する。縦骨32は、これまでと同様に中間面32aが外板11にレーザ溶接される。そして、本形態では、横骨42が縦骨32と同様に反転し、フランジ面42cが外板11から浮いて中間面42aが外板11に当接され、その中間面42aがレーザ溶接され、それぞれ二点鎖線で示すように溶接ビードBが形成される。そして、縦骨32の起立面32bが横骨42の起立面42bよりも高いため、縦骨32のフランジ面32cが横骨42端部のフランジ面42cに上から重なり合っている。そのため、このフランジ面32c,42c同士がレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨32と横骨42とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。
【0032】
次に、図8に示す接合構造について説明する。これまでは縦骨及び横骨にハット形状の骨部材を使用したが、本形態では全体にわたって断面がコの字の骨部材とし、縦骨33と横骨43との接合位置に、それぞれ短フランジ33c,43cが形成されている。すなわち、縦骨33には、横骨43が位置する箇所に短フランジ33cが形成され、横骨43には、その端部に短フランジ43cが形成されている。
縦骨33は、これまでと同様に中間面33aが外板11にレーザ溶接され、横骨43は、縦骨33と同様に中間面43aが外板11に当接されて、その中間面43aがレーザ溶接される。そのため、それぞれ中間面33a,43aに二点鎖線で示す溶接ビードBが形成される。
【0033】
そして、縦骨33の起立面33bが横骨43の起立面43bよりも高いため、縦骨33の短フランジ33cが横骨43端部の短フランジ43cに上から重なり合っている。そのため、この短フランジ33c,43c同士がレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨33と横骨43とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。更に、骨部材のフランジを接合部のみの短フランジ33c,43cとしたことにより、骨部材を軽量化することで更なる車体の軽量化が図られる。
【0034】
次に、図9に示す接合構造について説明する。本形態の縦骨34は、全体にわたって断面がコの字であって接合位置に短フランジ34cが形成された骨部材であり、横骨44はハット形状の骨部材である。縦骨34は、これまでと同様に中間面34aが外板11にレーザ溶接され、横骨44は、フランジ面44cが外板11にレーザ溶接され、それぞれ二点鎖線で示すように溶接ビードBが形成される。そして、縦骨34の起立面34bが横骨44の起立面44bよりも高いため、縦骨34の短フランジ34cが横骨44端部の中間面44aに上から重なり合っている。そのため、この短フランジ34cと中間面44aとがレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨34と横骨44とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。更に、縦骨34の接合部を短フランジ34cとしたことにより、骨部材を軽量化することで更なる車体の軽量化が図られる。
【0035】
次に、図10に示す接合構造について説明する。本形態の縦骨35は、全体にわたって断面がコの字であって接合位置に短フランジ35cが形成された骨部材であり、横骨45はハット形状の骨部材である。縦骨35と横骨45は、ともに中間面35a,45aが外板11にレーザ溶接され、それぞれ二点鎖線で示すように溶接ビードBが形成される。そして、縦骨35の起立面35bが横骨45の起立面45bよりも高いため、縦骨35の短フランジ35cが横骨45端部のフランジ面45cに上から重なり合っている。特に、本形態では、縦骨35の短フランジ35cを片側ずつ、横骨45の2つのフランジ面45cと重なる部分にのみ設けた形状になっている。この短フランジ35cとフランジ面45cとがレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨35と横骨45とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。更に、縦骨35の接合部を短フランジ35cとしたことにより、骨部材を軽量化することで更なる車体軽量化が図られる。
【0036】
更に、骨部材の形態を変えた次のようなものであってもよい。図11に示す接合構造は、縦骨36に断面がZ形をした骨部材が使用され、横骨46にはハット形の骨部材が使用される。縦骨36は、外板11に当接して接合される接合面36aと、外板11に対して起立した状態になる起立面36b、そしてその起立面36bを挟んで接合面36aと反対方向に折り曲げられた継手面36cからなる。
縦骨31は、接合面36aが外板11にレーザ溶接され、横骨46は、フランジ面46cが外板11にレーザ溶接され、それぞれ二点鎖線で示すように溶接ビードBが形成される。そして、縦骨36の起立面36bが横骨46の起立面46bよりも高いため、縦骨36の継手面36cが横骨46端部の接合面46aに上から重なり合っている。そのため、この継手面36cと接合面46aとがレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨36と横骨46とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。更に、縦骨36は断面がZ形状の全体面積が小さいものであるため、骨部材を軽量化することで更なる車体軽量化が図られる。
【0037】
次に、図12に示す接合構造は、縦骨37に断面がコ字形をした骨部材が使用され、接合箇所に短フランジ37cが形成されたものであり、横骨47に断面がZ形をした骨部材が使用される。縦骨37は、外板11に対して中間面37aがレーザ溶接され、横骨47は接合面47aがレーザ溶接され、それぞれ二点鎖線で示すように溶接ビードBが形成される。そして、縦骨37の起立面37bが横骨47の起立面47bよりも高いため、縦骨37の短フランジ37cが横骨47端部の継手面47cに上から重なり合っている。そのため、この短フランジ37cと継手面47c同士がレーザ溶接され、図示するように溶接ビードBができる。こうして、縦骨37と横骨47とが継手を設けることなく接合でき、接合部における継手を省略したことで車体軽量化が図れる。更に、縦骨37の接合部を短フランジ37cとし、横骨47は断面がZ形状の全体面積が小さいものであるため、骨部材を軽量化することで更なる車体軽量化が図られる。
【0038】
よって、本実施形態の鉄道車両及び骨組み接合方法によれば、例えばハット形の縦骨では、接合面として中間面を外板に当接し、その中間面に外板の仕上げ目に沿ったレーザ溶接を行うため、骨組みが外板の仕上げ目と同方向にしかレーザ溶接されないため、仕上げ面に現れる溶接痕を目立たなくすることができるようになった。
また、本実施形態では、縦骨のフランジ面や短フランジなどの継手面が外板との間に隙間を設けて配置されるため、横骨の端部が継手面と面接触し、そこを接合することによって継手部材を省略することができ、コストの低下と車体軽量化が可能になった。
【0039】
以上、本発明の鉄道車両及び骨組み接合方法について一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、前述したように継手の省略による車体軽量化を目的とした場合、骨組みの接合にはレーザ溶接の他にもスポット溶接などを使用するものであってもよい。
また、本発明は、縦骨と横骨との全ての接合箇所において必ず継手部材を省略するわけではなく、強度を必要とする場合には、図13に示すように前記実施形態の接合構造に加えて継手50を接合するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】鉄道車両の側構体を構成する中間窓ブロックと側入口ブロックとが分離した状態を、車体外側から示した斜視図である。
【図2】鉄道車両を構成する側構体の一部について、外板に接合された骨組み構造を示した図である。
【図3】図2のA−A断面を示した図である。
【図4】図2にA−A周辺を拡大し、レーザ溶接によってできる溶接ビードを表した図である。
【図5】縦骨と横骨の接合部である図3において一点鎖線で囲まれたP部を示す拡大断面図である。
【図6】骨部材の接合構造の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)、平面図(b)そして横骨を長手方向に見た断面図(c)である。
【図7】骨部材の接合構造の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)、平面図(b)そして横骨を長手方向に見た断面図(c)である。
【図8】骨部材の接合構造の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)、平面図(b)そして横骨を長手方向に見た断面図(c)である。
【図9】骨部材の接合構造の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)、平面図(b)そして横骨を長手方向に見た断面図(c)である。
【図10】骨部材の接合構造の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)、平面図(b)そして横骨を長手方向に見た断面図(c)である。
【図11】骨部材の接合構造の他の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)と平面図(b)である。
【図12】骨部材の接合構造の他の一形態を示した図であり、縦骨を長手方向に見た断面図(a)と平面図(b)である。
【図13】骨部材の接合部において継手部材を用いたものを示した斜視図である。
【図14】鉄道車両の側構体を示した面図である。
【図15】外板に接合した骨組みを示した図である。
【図16】縦骨と横骨との従来の接合構造を示した図である。
【符号の説明】
【0041】
11 外板
12,13 側柱
14 腰骨
15 幕帯部材
16 腰帯部材
17,18 補強骨
12a,17a 中間面
12b,17b 起立面
12c,17c フランジ面
B 溶接ビード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦骨及び横骨からなる骨組みを接合した外板を備える鉄道車両において、
前記縦骨及び横骨は、接合した前記外板に対して起立した状態になる起立面と、その起立面を挟んで反対方向に折り曲げられた、前記外板に接合される接合面と、前記外板から浮いた状態になる継手面とを有する骨部材であり、その骨部材の接合面が外板に接合された骨組みは、横骨の端部が縦骨の継手面と外板との間に入り込み、面接触した縦骨と横骨との継手面同士が接合されたものとなることを特徴とする鉄道車両。
【請求項2】
縦骨及び横骨からなる骨組みを接合した外板を備える鉄道車両において、
前記縦骨及び横骨は、中間面と、その中間面の幅方向両端で折り曲げられた起立面と、更に起立面から外側に折り曲げられたフランジ面とが形成された骨部材であり、その骨部材が外板に接合された骨組みは、縦骨の中間面が外板に接合され、横骨は、その端部が縦骨のフランジ面と外板との間に入り込み、フランジ面又は中間面が外板に接合され、面接触した縦骨のフランジ面と横骨の中間面又はフランジ面が接合されたものとなることを特徴とする鉄道車両。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載する鉄道車両において、
前記縦骨及び/又は横骨は、互いに接合される接合部分にのみ前記継手面又はフランジ面が形成されたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載する鉄道車両において、
前記骨組みが前記外板に対してレーザ溶接されるものであって、前記縦骨は、その接合面又は中間面が前記外板の仕上げ面側の仕上げ目と同じ方向の幅向にレーザビームを送って溶接が行われたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項5】
請求項4に記載する鉄道車両において、
前記縦骨の接合面又は中間面には、前記外板に対する接合強度が得られる数のレーザ溶接が縦方向に複数行われたものであることを特徴とする鉄道車両。
【請求項6】
鉄道車両用構体の外板に対し縦骨及び横骨からなる骨組みをレーザ溶接するための骨組み溶接方法において、
前記縦骨及び横骨は、接合した前記外板に対して起立した状態になる起立面と、その起立面を挟んで反対方向に折り曲げられた、前記外板に接合される接合面と、前記外板から浮いた状態の継手面とを有する骨部材であり、
縦骨には、外板に面接触した接合面に対して当該外板の仕上げ目に沿って幅方向にレーザビームを送った溶接を行い、横骨には、外板に面接触した接合面に対して当該外板の仕上げ目に沿って長手向にレーザビームを送った溶接を行うことを特徴とする骨組み接合方法。
【請求項7】
請求項6に記載する骨組み接合方法において、
前記縦骨の接合面に対し、前記外板に対する接合強度が得られる数のレーザ溶接を縦方向に複数行うようにしたことを特徴とする骨組み接合方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2007−145256(P2007−145256A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−344920(P2005−344920)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(000004617)日本車輌製造株式会社 (722)
【Fターム(参考)】