説明

鉄道車両速度測定装置

【課題】鉄道車両の速度測定を行う区域とそうでない区域とを容易にかつ正確に識別できるようにし、また、線路に配置されたRFIDタグからの情報の受信に誤りまたは欠落が生じた場合に鉄道車両の速度測定精度が低下するのを防止する。
【解決手段】線路11には所定の間隔をもってRFIDタグ2を配置し、鉄道車両13には車両アンテナ4、RFIDリーダ21等を設け、鉄道車両13の走行中に、RFIDタグ2から送信されたID情報を車両アンテナ4およびRFIDリーダ21で読み取り、この読み取ったID情報に基づいて鉄道車両13の速度を算出する。また、前回読み取られたID情報の送信元であるRFIDタグ2と今回読み取られたID情報の送信元であるRFIDタグ2との間の距離が所定の距離基準値より大きい場合には、鉄道車両13の速度算出を行わない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両の速度を測定する鉄道車両速度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両の走行を制御する装置として、自動列車制御装置(ATC)、自動列車停止装置(ATS)等が知られている。これらの装置は、一般に、線路上に配置された地上子から鉄道車両へ無線電波を用いて情報を送り、この情報に基づいて、鉄道車両に搭載された制御装置が鉄道車両を減速させる等の走行制御を行う。また、レールに信号電流を流し、この信号電流を介して鉄道車両に情報を送り、この情報に基づいて鉄道車両の走行を制御する装置も存在する。
【0003】
近年、近距離無線通信により情報のやり取りを行うことができるRFID(Radio Frequency IDentification)タグが普及している。これに伴い、従来の地上子に代えてRFIDタグを線路に設置し、RFIDタグから鉄道車両へ情報を送信することにより鉄道車両の走行制御を行う方法が提案されている(下記の特許文献1参照)。なお、RFIDタグは、無線IDタグまたはICタグとも呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−278805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、RFIDタグを線路に所定の間隔をもって配置し、鉄道車両が、RFIDタグの上方を通過する度にRFIDタグから送信された情報を受信し、この受信した情報に基づいて鉄道車両の速度を測定する鉄道車両速度測定装置を構築し、この鉄道車両速度測定装置を用いて鉄道車両の速度管理を行う場合、次のようないくつかの問題がある。
【0006】
まず、鉄道車両が走行する路線において、鉄道車両の速度測定を行う区域とそうでない区域とを鉄道車両速度測定装置に識別させることが容易でないという問題がある。
【0007】
すなわち、鉄道車両が走行する路線には、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域とそうでない区域とが存在する。このことを考慮すると、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域に限り、上記鉄道車両速度測定装置による鉄道車両の速度測定を行うことが望ましい。しかしながら、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域は、例えば急カーブの区域、踏切付近等であるが、これらは路線ごとにまちまちである。また、路線によっては、線路の周囲の環境(例えば線路沿いに住宅が存在すること)等の個々の路線が有する固有の事情を考慮して鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域を設定する必要が生じる場合もある。このように、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域は路線ごとに様々であり、それゆえ、鉄道車両の速度測定を行う区域も一律でなく、このような一律でない区域を鉄道車両速度測定装置に認識させることは容易ではない。
【0008】
次に、RFIDタグからの情報の受信に誤りや欠落が生じた場合に、鉄道車両の速度の測定精度が低下してしまうという問題がある。
【0009】
すなわち、近年では、RFIDタグの通信可能距離が長くなってきているため、複数の路線が接近している領域では、他の路線の線路に配置されたRFIDタグから送信された情報を受信してしまうことが考えられる。また、自己の路線の線路に配置された2つのRFIDタグ間の距離が近い場合には、何らかの不具合により、これらRFIDタグから送信される情報を、これらRFIDタグの配置順序と異なる順序で受信してしまうことも考えられる。このような事態が生じた場合には、鉄道車両の速度の測定精度が低下してしまうおそれがある。また、自己の路線の線路に配置されたRFIDタグが故障し、当該RFIDタグから情報が送信されない状態になった場合には、鉄道車両が当該RFIDタグの上方を通過しても、当該RFIDタグから送信されるべき情報を受信することができない。このような事態が生じた場合にも、鉄道車両の速度の測定精度が低下してしまうおそれがある。
【0010】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の第1の課題は、鉄道車両の速度測定を行う区域とそうでない区域とを容易にかつ正確に識別することができる鉄道車両速度測定装置を提供することにある。
【0011】
また、本発明の第2の課題は、線路に配置されたRFIDタグからの情報の受信に誤りまたは欠落が生じた場合でも、鉄道車両の速度測定精度の低下を防ぐことができる鉄道車両速度測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、本発明の第1の鉄道車両速度測定装置は、線路に沿って所定の間隔で配置され、固有のID情報が記憶された記憶部を有し、少なくとも当該ID情報を送信する複数のRFIDタグと、鉄道車両に設けられ、前記各RFIDタグに接近したときに前記各RFIDタグから送信される前記ID情報を受信するアンテナと、前記鉄道車両に設けられ、前記アンテナにより受信された前記ID情報を読み取る読取手段と、前記鉄道車両に設けられ、前記複数のRFIDタグのID情報、および前記複数のRFIDタグが配置された位置の距離程を示す距離程情報を含み、複数の前記ID情報と複数の前記距離程情報との間に前記RFIDタグごとにそれぞれ関連付けが形成された路線情報を記憶する記憶手段と、前記読取手段により今回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である今回距離程情報と、前記読取手段により前回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である前回距離程情報とを前記路線情報から取得し、当該取得した今回距離程情報および前回距離程情報を用いて、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグと前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグとの間のタグ間距離を算出し、当該算出したタグ間距離に基づいて前記鉄道車両の速度を算出する速度算出手段とを備え、前記速度算出手段は、前記タグ間距離が所定の距離基準値以下であるか否かを判断し、前記タグ間距離が所定の距離基準値以下である場合には前記鉄道車両の速度の算出を行い、前記タグ間距離が所定の距離基準値以下でない場合には前記鉄道車両の速度の算出を行わないことを特徴とする。
【0013】
本発明の第1の鉄道車両速度測定装置によれば、タグ間距離と距離基準値との比較により、鉄道車両の速度測定を行う区域とそうでない区域とを容易にかつ正確に識別することができる。これにより、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域では、タグ間距離が距離基準値以下となるようにRFIDタグを配置し、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のない区域では、タグ間距離が距離基準値よりも大きくなるようにRFIDタグを配置することで、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域に限り、鉄道車両の速度を算出し、当該算出結果に基づいて鉄道車両の速度が所定の制限速度を超過した場合に警告を発する等の処理を行うことができる。
【0014】
また、本発明の第1の鉄道車両速度測定装置によれば、RFIDタグから送信されたID情報に基づいて、鉄道車両に設けられた記憶手段に記憶された距離程情報を特定し、当該特定した距離程情報に基づいて鉄道車両の速度を算出する構成としたから、線路に配置された各RFIDタグに距離程情報を記憶させる必要がない。したがって、各RFIDタグの線路への配置作業を容易に行うことが可能になる。すなわち、各RFIDタグに距離程情報を記憶させるとすれば、個々のRFIDタグに距離程情報を記憶させる作業が必要になり、また、個々のRFIDタグを線路に配置する際には、個々のRFIDタグに記憶された距離程情報が示す距離程とRFIDタグを実際に配置する位置の距離程とを一致させる作業が必要にある。本発明の第1の鉄道車両速度測定装置によれば、このような作業が不要になる。
【0015】
また、本発明の第1の鉄道車両速度測定装置によれば、上記距離基準値を変更するだけで、1路線において、鉄道車両の速度算出を行う区域とそうでない区域とを容易に変更することができる。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明の第2の鉄道車両速度測定装置は、線路に沿って所定の間隔で配置され、固有のID情報が記憶された記憶部を有し、少なくとも当該ID情報を送信する複数のRFIDタグと、鉄道車両に設けられ、前記各RFIDタグに接近したときに前記各RFIDタグから送信される前記ID情報を受信するアンテナと、前記鉄道車両に設けられ、前記アンテナにより受信された前記ID情報を読み取る読取手段と、前記鉄道車両に設けられ、前記複数のRFIDタグのID情報、前記複数のRFIDタグが配置された位置の距離程を示す距離程情報、および速度算出処理の要否を示す速度算出要否情報を含み、複数の前記ID情報、複数の前記距離程情報および複数の前記速度算出要否情報のそれぞれの間に前記RFIDタグごとにそれぞれ関連付けが形成された路線情報を記憶する記憶手段と、前記読取手段により今回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である今回距離程情報と、前記読取手段により前回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である前回距離程情報とを前記路線情報から取得し、当該取得した今回距離程情報および前回距離程情報を用いて、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグと前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグとの間のタグ間距離を算出し、当該算出したタグ間距離に基づいて前記鉄道車両の速度を算出する前記速度算出処理を行う速度算出手段とを備え、前記速度算出手段は、前記今回読み取られたID情報に関連付けられた速度算出要否情報が前記速度算出処理を要する旨を示している場合には前記速度算出処理を行い、前記今回読み取られたID情報に関連付けられた速度算出要否情報が前記速度算出処理を要する旨を示していない場合には前記速度算出処理を行わないことを特徴とする。
【0017】
本発明の第2の鉄道車両速度測定装置によっても、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域に限り、鉄道車両の速度を算出し、当該算出結果に基づいて鉄道車両の速度が所定の制限速度を超過した場合に警告を発する等の処理を行うことができる。
【0018】
また、本発明の第2の鉄道車両速度測定装置によれば、鉄道車両の速度算出を行う区域とそうでない区域とをタグ間距離に拘わらず設定することができる。例えば、タグ間距離が比較的長い区域に配置されたRFIDタグに対し、速度算出処理を要する旨を示す速度算出要否情報を割り当て、タグ間距離が比較的短い区域に配置されたRFIDタグに対し、速度算出処理を要しない旨を示す速度算出要否情報を割り当てることにより、タグ間距離が比較的長い区域で鉄道車両の速度算出を行い、タグ間距離が比較的短い区域で鉄道車両の速度算出を行わないといった処理を実現することができる。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の第3の鉄道車両速度測定装置は、上述した本発明の第1または第2の鉄道車両速度測定装置において、前記速度算出手段は、前記今回読み取られたID情報が、前記路線情報に含まれる1つの路線または前記路線情報に含まれる複数の路線のうち指定された1つの路線の線路に配置された複数のRFIDタグのID情報のいずれかに一致するか否かを判断し、前記今回読み取られたID情報が前記1つの路線の線路に配置された複数のRFIDタグのID情報のいずれにも一致しない場合には前記鉄道車両の速度の算出を行わないことを特徴とする。
【0020】
本発明の第3の鉄道車両速度測定装置によれば、鉄道車両が走行している路線以外の路線の線路に配置されたRFIDタグから送信された情報を受信した場合でも、そのような情報が鉄道車両の速度算出に用いられることを防止することができる。これにより、複数の路線が接近している領域において鉄道車両の速度算出に誤りが生じることを防止することができ、鉄道車両の速度算出の精度を高めることができる。
【0021】
上記課題を解決するために、本発明の第4の鉄道車両速度測定装置は、上述した本発明の第1ないし第3のいずれかの鉄道車両速度測定装置において、前記速度算出手段は、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程と前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程とを比較し、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程が前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程よりも小さい場合には前記鉄道車両の速度の算出を行わないことを特徴とする。
【0022】
本発明の第4の鉄道車両速度測定装置によれば、各RFIDタグからの情報を受信する順序を誤った場合には、その旨を認識することができる。これにより、受信順序の誤りによって鉄道車両の速度算出に誤りが生じることを防止することができ、鉄道車両の速度算出の精度を高めることができる。
【0023】
上記課題を解決するために、本発明の第5の鉄道車両速度測定装置は、上述した本発明の第1ないし第4のいずれかの鉄道車両速度測定装置において、前記線路に沿って複数の区間が設定され、前記各区間には2個以上の前記RFIDタグが属し、前記記憶手段に記憶された前記路線情報は、前記各RFIDタグが前記複数の区間のうちのいずれの区間に属しているかを示す区間情報を含み、前記読取手段によりID情報が読み取られたときに当該ID情報が記憶された前記RFIDタグが属している区間を前記区間情報に基づいて特定し、当該区間を前記記憶手段または他の記憶手段に記憶する区間記憶処理手段と、前記読取手段により今回読み取られたID情報が記憶された前記RFIDタグが属している区間を前記区間情報に基づいて特定し、当該区間と前記区間記憶処理手段により前回記憶された区間との位置関係に基づいて前記鉄道車両の進行方向を判断する進行方向判断手段とを備えていることを特徴とする。
【0024】
本発明の第5の鉄道車両速度測定装置によれば、読取手段により今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグが属している区間、すなわち今回通過した区間と、区間記憶手段により前回記憶された区間、すなわち前回通過した区間との位置関係に基づいて鉄道車両の進行方向を正確に判断することができる。例えば、上り路線を走行している鉄道車両において、今回通過した区間が前回通過した区間よりも上り側に位置している場合には、当該鉄道車両が上り路線を上り方向に進行していると判断することができる。
【0025】
特に、個々のRFIDタグの位置関係ではなく、区間同士の位置関係に基づいて鉄道車両の進行方向を判断するので、何らかの異常等によりRFIDタグのID情報をRFIDタグの配置順序と異なる順序で受信してしまったり、ID情報を受信し損なってしまった場合でも、このような受信の誤りや欠落の影響を受けずに、区間の位置関係に基づいて鉄道車両の進行方向を正確に判断することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、鉄道車両の速度測定を行う区域とそうでない区域とを容易にかつ正確に識別することができる。また、線路に配置されたRFIDタグからの情報の受信に誤りまたは欠落が生じた場合でも、鉄道車両の速度測定精度の低下を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置等を示す全体図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置において、各路線におけるRFIDタグの配置を示す説明図である。
【図3】本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置において、路線データを示す説明図である。
【図4】本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置において、走行履歴データを示す説明図である。
【図5】本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施形態による鉄道車両速度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施形態による鉄道車両速度測定装置において、線路におけるRFIDタグの配置および区間の設定を示す説明図である。
【図8】本発明の第3の実施形態による鉄道車両速度測定装置において、路線データを示す説明図である。
【図9】本発明の第3の実施形態による鉄道車両速度測定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第1の実施形態)
以下、本発明の実施の形態について説明する。まず、本発明の第1の実施形態について図1ないし図5を参照しながら説明する。
【0029】
図1は、本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置、当該鉄道車両速度測定装置が設けられた鉄道車両および線路等を示している。図1において、本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置1は、RFIDタグ2、車両アンテナ4および装置本体5を備えている。
【0030】
RFIDタグ2は線路11に配置されている。RFIDタグ2は、図1においては1つしか図示していないが、図2に示すように、線路に沿って複数配置されている。複数のRFIDタグ2の配置については後述する。
【0031】
各RFIDタグ2は、例えば、線路11のレール12間のほぼ中央に位置し、枕木上に設置されている。各RFIDタグ2は、筐体内に、制御回路、記憶部としての内部メモリ、および内部アンテナ(いずれも図示せず)等を設けることにより構成されている。また、各RFIDタグ2の内部メモリには固有のID情報が記憶されている。ID情報はRFIDタグ2ごとに異なる。ID情報は例えばRFIDタグ2のシリアル番号である。また、各RFIDタグ2はパッシブタグであり、その通信周波数帯はUHF帯である。各RFIDタグ2は、鉄道車両13に設けられた後述するRFIDリーダ21から供給される電波により電力を作り出し、この電力により動作し、内部メモリに記憶されたID情報を、内部アンテナを介して外部に送信する。なお、各RFIDタグ2はパッシブタグに限らず、アクティブタグでもよいが、パッシブタグを採用することにより、各RFIDタグ2に電力を供給する電源装置を別途設ける必要がなくなり、コストの削減およびメンテナンス作業の簡略化を実現することができる。また、各RFIDタグ2の通信周波数帯はUHF帯以外でもよいが、UHF帯のRFIDタグ2を採用することにより、通信可能距離を長くすることができ、線路11に配置された各RFIDタグ2と鉄道車両13に取り付けられた車両アンテナ4との間で情報の送受信を確実に行うことが可能になる。
【0032】
車両アンテナ4は、例えば列車の先頭の鉄道車両13に設けられている。車両アンテナ4は、鉄道車両13のほぼ先頭部分に位置し、鉄道車両13の床下または底面に取り付けられている。車両アンテナ4は、各RFIDタグ2に接近したときに各RFIDタグ2から送信されるID情報を受信する。
【0033】
装置本体5は、例えば鉄道車両13の運転室内等に設けられている。装置本体5は、読取手段としてのRFIDリーダ21、速度算出手段としてのCPU(Central Processing Unit)22、記憶手段としてのメモリ23、メモリーカード用インターフェイス24、および速度発電機用インターフェイス25を備え、これらは例えば1つの筐体に収容されている。また、CPU22には、キーユニット26、液晶表示器27、ランプ群28、およびスピーカ29が接続され、これらは、装置本体5の筐体に設けられた操作パネル、または鉄道車両13の運転室に設けられた操作パネルに配置されている。
【0034】
RFIDリーダ21は、車両アンテナ4およびCPU22に電気的に接続されている。RFIDリーダ21は、各RFIDタグ2を動作させるための電波を、車両アンテナ4を介して外部に発信する。また、RFIDリーダ21は、車両アンテナ4が各RFIDタグ2に接近し、車両アンテナ4が各RFIDタグ2から送信されたID情報を受信したときに、車両アンテナ4が受信したID情報を読み取り、当該読み取ったID情報をCPU22に出力する。
【0035】
CPU22は、RFIDリーダ21により読み取られた各RFIDタグ2のID情報に基づいて鉄道車両13(列車)の速度を算出する機能を有する。CPU22のこの機能は、メモリ23に記憶されたコンピュータプログラムを読み取り、これを実行することにより実現される。
【0036】
メモリ23は、例えばフラッシュメモリまたはハードディスク等の書換可能な記憶素子または記憶装置である。メモリ23には、上記コンピュータプログラムのほか、後述する路線データ(図3参照)および距離基準値Ds(図2参照)等が記憶されている。また、メモリ23には、後述するように、前回距離基準値、走行履歴データ(図4参照)等が記憶される。
【0037】
メモリーカード用インターフェイス24は、メモリ23とメモリーカード14との間で情報のやり取りを行うためのインターフェイスである。メモリーカード14は、例えばフラッシュメモリを内蔵した外部記憶媒体である。例えば装置本体5の筐体には、メモリーカード接続端子が設けられており、このメモリーカード接続端子にメモリーカード14を接続することにより、メモリーカード14に記憶された情報をメモリ23に記憶させ、また、メモリ23に記憶された情報をメモリーカード14に記憶させることができる。
【0038】
例えば、事業所等に設けられたパーソナルコンピュータを用いて作成した路線データをメモリーカード14に記憶させ、このメモリーカード14を装置本体5に接続し、当該メモリーカード14に記憶された路線データを装置本体5のメモリ23に記憶させることができる。これにより、装置本体5のメモリ23に記憶された路線データを容易に更新することができる。また、装置本体5のメモリ23に記憶された走行履歴データをメモリーカード14に記憶させ、このメモリーカード14を事業所等に設けられたパーソナルコンピュータに接続することにより、当該パーソナルコンピュータで走行履歴データを確認し、または、走行履歴データをデータベース等に記憶させることができる。
【0039】
速度発電機用インターフェイス25は、鉄道車両13に設けられた速度発電機15からのパルス信号をCPU22に入力させるためのインターフェイスである。速度発電機15は、鉄道車両13の車輪の回転速度に応じてパルス周波数が変化するパルス信号を出力する。
【0040】
キーユニット26は、電源スイッチ、CPU22に設定情報等の各種情報を入力するためのテンキー、鉄道車両13の速度算出の開始・終了を指示するボタン等を有している。液晶表示器27は、日時、路線、機能、設定値、制限速度超過の警告メッセージ等の各種情報を表示する。ランプ群28は、電源ランプ、RFIDリーダ21の稼働時に点灯してRFIDリーダ21の稼働を告げるランプ、メモリーカード14へのアクセス時に点灯してメモリーカード14へのアクセスを告げるランプ、制限速度超過の警報ランプ等である。スピーカ29は制限速度超過の警報音等を出力する。
【0041】
図2は各路線の線路におけるRFIDタグ2、3の配置を示している。図2において、路線R1と路線R2は互いに異なる路線である。路線R1の線路において、RFIDタグ2は所定の間隔で配置されている。RFIDタグ2のそれぞれの間隔は必ずしも一定ではない。例えば、鉄道車両(列車)の速度管理を厳格に行う必要のある区域では、RFIDタグ2が比較的短い間隔で配置されている。一方、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のない区域では、RFIDタグ2が比較的長い間隔で配置されている。路線R1においては、他の路線R2が接近している等の事情により速度制限を行う必要性が高い区域Za、および急カーブであるため速度制限を行う必要性が高い区域Zcが、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のある区域に相当する。したがって、区域Zaおよび区域Zcでは、RFIDタグ2が比較的短い間隔で配置されている。これに対し、線路が長い間ほぼ直線である区域Zbは、鉄道車両の速度管理を厳格に行う必要のない区域に相当する。したがって、区域Zbでは、RFIDタグ2が比較的長い間隔で配置されている。
【0042】
一方、路線R2の線路においてもRFIDタグ3が必ずしも一定ではない所定の間隔で配置されている。なお、各RFIDタグ3の構成はRFIDタグ2と同じである(もっともID情報はそれぞれ異なる)。
【0043】
図3はメモリ23に記憶された路線データを示し、図4は走行履歴データを示し、図5は鉄道車両速度測定装置1の動作を示している。これより、図3ないし図5を参照しながら、鉄道車両速度測定装置1の動作を、鉄道車両13が路線R1を走行する場合を例にあげて説明する。
【0044】
図5において、鉄道車両13の走行に伴い、鉄道車両13に設けられた車両アンテナ4が、路線R1の線路11に配置された、ある1つのRFIDタグ2に接近すると、当該RFIDタグ2が、車両アンテナ4を介して発信された電波により電力を得て動作し、当該RFIDタグ2の内部メモリに記憶されたID情報を送信する。そして、車両アンテナ4は、当該RFIDタグ2から送信されたID情報を受信し、RFIDリーダ21が当該受信したID情報を読み取ってこれをCPU22に出力し、CPU22がRFIDリーダ21から出力されたID情報を受け取る(ステップS1)。
【0045】
続いて、CPU22は、メモリ23に記憶された路線データ中に、ステップS1で読み取られたID情報と一致するID情報を含む要素データが存在し、かつ当該要素データ中の路線番号が路線R1の路線番号と一致するか否かを判断する(ステップS2)。なお、鉄道車両13が路線R1を走行する場合、走行開始前に装置本体5に対して路線R1の路線番号がテンキーの操作により入力される。これにより、路線R1がCPU22により速度算出を行うべき路線として指定される。
【0046】
ここで、メモリ23に記憶された路線データについて図3を参照しながら説明する。路線データは、鉄道車両(列車)の速度算出ないし速度管理等に必要または有用な情報を、RFIDタグが配置された位置ごとに記述したデータである。以下、RFIDタグが配置された位置を「タグ配置位置」という。具体的には、路線データは複数の要素データにより構成されている。要素データはタグ配置位置ごとに作られている。各要素データには、図3に示すように、タグ配置位置に係る路線番号、ID情報、距離程情報、制限速度、および備考が含まれている。路線番号は、各路線に付された固有な番号であり、路線番号により各路線を識別し、特定することができる。例えば、路線R1の路線番号は「1」であり、路線R2の路線番号は「2」である。各要素データには、タグ配置位置が属する路線の路線番号が記述されている。ID情報は、タグ配置位置に配置されているRFIDタグのID情報である。距離程情報は、タグ配置位置の距離程を示す情報であり、例えば、タグ配置位置の距離程を1センチメートルの精度で表現した数値である。制限速度は、タグ配置位置を走行する鉄道車両の制限速度を示す情報である。備考は、タグ配置位置についての説明を記述した文字情報であり、例えば、タグ配置位置が○×踏切の近傍である場合には、備考に「○×踏切」と記述される。1つの要素データに含まれる路線番号、ID情報、距離程情報、制限情報および備考の間にはそれぞれ関連付けが形成されている。
【0047】
さて、ステップS2における判断の結果、路線データ中に、ステップS1で読み取られたID情報と一致するID情報を含む要素データが存在しない場合、または路線データ中に、ステップS1で読み取られたID情報と一致するID情報を含む要素データが存在するものの、当該要素データ中の路線番号が路線R1の路線番号と一致しない場合には(ステップS2:NO)、CPU22は、ステップS1で読み取られたID情報を無視し、このID情報についてステップS3以降の処理を行わない。これにより、鉄道車両13の車両アンテナ4が、鉄道車両13が現在走行している路線R1以外の路線、例えば路線R2の線路に配置されたRFIDタグ3から送信されたID情報を受信した場合でも、そのID情報が鉄道車両13の速度算出に用いられることを防止することができる。したがって、例えば図2中の区域Zaのように、複数の路線が接近している領域において鉄道車両13の速度算出に誤りが生じることを防止することができ、鉄道車両13の速度算出の精度を高めることができる。
【0048】
一方、ステップS2における判断の結果、路線データ中に、ステップS1で読み取られたID情報と一致するID情報を含む要素データが存在し、かつ当該要素データ中の路線番号が路線R1の路線番号と一致する場合には(ステップS2:YES)、CPU22は、路線データにおいて当該ID情報に関連付けられた距離程情報、すなわち、当該ID情報と共に同一の要素データ中に含まれている距離程情報を路線データから読み出す(ステップS3)。
【0049】
続いて、CPU22は、前回、車両アンテナ4を介してRFIDリーダ21により読み取られて速度算出の処理対象となったRFIDタグ2のID情報に関連付けられた距離程情報(以下、これを「前回距離程情報」という。)がメモリ23に記憶されているか否かを判断する(ステップS4)。なお、前回距離程情報は、通常であれば、今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2の上方を鉄道車両13が通過する直前に通過したRFIDタグ2に記憶されたID情報に関連付けられた距離程情報であるが、当該直前に通過したRFIDタグ2からのID情報が受信されなかった場合には、当該直前に通過したRFIDタグ2の1つ前に通過したRFIDタグ2に記憶されたID情報に関連付けられた距離程情報である。
【0050】
ここで、CPU22は、後述するように、車両アンテナ4を介してRFIDリーダ21により読み取られて速度算出の処理対象となったRFIDタグ2のID情報に関連付けられた距離程情報をメモリ23に記憶し、保持する(ステップS11参照)。したがって、鉄道車両13が路線R1の始点から出発した直後においては前回距離程情報がメモリ23に記憶されていないが、鉄道車両13が路線R1の始点から出発し、最初に配置されたRFIDタグ2の上方を通過した後は、通常であれば、前回距離程情報がメモリ23に記憶されている。
【0051】
ステップS4における判断の結果、前回距離程情報がメモリ23に記憶されている場合には(ステップS4:YES)、CPU22は、前回距離程情報をメモリ23から読み出し、そして、今回、ステップS1において車両アンテナ4を介してRFIDリーダ21により読み取られたRFIDタグ2のID情報に関連付けられた距離程情報(以下、これを「今回距離程情報」という。)の示す距離程が前回距離程情報の示す距離程よりも大きいか否かを判断する(ステップS5)。
【0052】
ステップS5における判断の結果、今回距離程情報の示す距離程が前回距離程情報の示す距離程以下である場合には(ステップS5:NO)、CPU22は、ステップS1で読み取られたID情報を無視し、このID情報についてステップS6以降の処理を行わない。これにより、鉄道車両13の車両アンテナ4が、線路11におけるRFIDタグ2の配置順序とは異なる順序でRFIDタグ2のID情報を受信してしまった場合に、このような誤って受信されたID情報を用いて鉄道車両13の速度算出が行われるのを防止し、鉄道車両13の速度算出の精度を高めることができる。
【0053】
一方、ステップS5における判断の結果、今回距離程情報の示す距離程が前回距離程情報の示す距離程よりも大きい場合には(ステップS5:YES)、CPU22は、今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2と前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2との間の距離(これを「タグ間距離」という。)を算出する(ステップS6)。具体的には、CPU22は、今回距離程情報が示す距離程から前回距離程情報が示す距離程を引くことによりタグ間距離を求める。
【0054】
続いて、CPU22は、ステップS6で算出したタグ間距離が距離基準値Ds以下であるか否かを判断する(ステップS7)。
【0055】
ここで、距離基準値Dsについて図2を参照しながら説明する。図2に示すように、路線R1には、他の路線R2が接近していることや急カーブであること等の事情により鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のある区域Za、Zcと、線路が長い間ほぼ直線であるために鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のない区域Zbとが存在する。このような路線R1において、鉄道車両速度測定装置1は、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のある区域Za、Zcでは鉄道車両13の速度算出を行い、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のない区域Zbでは鉄道車両13の速度算出を行わない。そして、鉄道車両速度測定装置1は、鉄道車両13の速度算出を行うか否かを、タグ間距離と距離基準値Dsとの比較によって判断する。すなわち、タグ間距離が距離基準値Ds以下である場合には、鉄道車両13の速度算出を行い、タグ間距離が距離基準値Dsよりも大きい場合には、鉄道車両13の速度算出を行わない。そして、距離基準値Dsは次のように定められている。すなわち、路線R1において、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のある区域Za、ZcにおいてはRFIDタグ2が比較的短い間隔で配置され、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のない区域ZbにおいてはRFIDタグ2が比較的長い間隔で配置されている。そこで、距離基準値Dsは、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のある区域Za、Zc内において互いに隣り合う2つのRFIDタグ2間の距離の最大値(例えば80m)以上であり、かつ鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のない区域Zb内において互いに隣り合う2つのRFIDタグ2間の距離の最小値(例えば200m)よりも小さい値(例えば100m)に定められている。また、距離基準値Dsはメモリ23に予め記憶されている。なお、距離基準値Dsは、例えばテンキーを操作し、新たな距離基準値Dsを装置本体5に入力することにより、あるいは、新たな距離基準値Dsが記憶されたメモリーカード14を装置本体5に接続し、当該新たな距離基準値Dsをメモリーカード14からメモリ23に記憶させることにより、変更することができる。
【0056】
ステップS7における判断の結果、タグ間距離が距離基準値Ds以下である場合には(ステップS7:YES)、CPU22は、鉄道車両13の速度を算出する(ステップS8)。具体的には、CPU22は、前回距離程情報がメモリ23に記憶された時点と当該ステップS8の処理が実行される時点との間の時間(以下、これを「タグ間時間」という。)を算出し、このタグ間時間でタグ間距離を割ることにより鉄道車両13の速度を求める。
【0057】
すなわち、後述するように、前回距離程情報がメモリ23に記憶されるとき、その記憶処理が行われた時点の日時を示す日時情報が当該前回距離程情報と共にメモリ23に記憶される。そして、RFIDリーダ21およびCPU22等の処理速度がきわめて高速であることを考慮すると、この日時は、前回距離程情報に関連付けられたID情報が記憶されたRFIDタグ2の真上を車両アンテナ4が通過した日時と実質的に等しい。一方、RFIDリーダ21およびCPU22等の処理速度がきわめて高速であることを考慮すると、当該ステップS8の処理が実行される時点は、今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2の真上を車両アンテナ4が通過した時点と実質的に等しい。したがって、前回距離程情報がメモリ23に記憶された時点と当該ステップS8の処理が実行される時点との間の時間であるタグ間時間は、実質的には、車両アンテナ4が、前回距離程情報に関連付けられたID情報が記憶されたRFIDタグ2の真上を通過してから、今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2の真上を通過するまでにかかった時間である。一方、タグ間距離は、前回距離程情報に関連付けられたID情報が記憶されたRFIDタグ2と今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2との間の距離であるから、タグ間距離をタグ間時間で割ることで、これら2つのRFIDタグ2間を走行した鉄道車両13の速度が求まる。
【0058】
続いて、CPU22は、ステップS8で算出した鉄道車両13の速度が制限速度を超過しているか否かを判断し、超過している場合には警報を発する(ステップS9)。具体的には、CPU22は、まず。今回読み取られたID情報に関連付けられた制限速度、すなわち、ステップS1で読み取られたID情報と一致するID情報と共に同一の要素データ中に含まれる制限速度の情報を路線データから読み出し、当該読み出した制限速度とステップS8で算出した鉄道車両13の速度とを比較する。続いて、ステップS8で算出した鉄道車両13の速度が当該制限速度よりも大きい場合には、例えば、CPU22は、液晶表示器27の表示画面に制限速度超過を告げるメッセージを表示し、ランプ群28中の警報ランプを点灯または点滅させ、スピーカ29から警報音を出力する。これにより、制限速度の超過を鉄道車両13の運転室内にいる運転手等に知らせることができる。一方、ステップS8で算出した鉄道車両13の速度が制限速度を超過していない場合には警告を発しない。
【0059】
続いて、CPU22は走行履歴データをメモリ23に記憶する(ステップS10)。走行履歴データには、図4に示すように、当該走行履歴データの記録処理を行った日時(これは速度算出を行った日時と実質的に等しい)、今回読み取られたID情報、算出された鉄道車両13の速度、警報の有無、速発パルス数等が含まれる。走行履歴データは、例えば鉄道車両13の運行が完了した後等に、鉄道車両13の走行状況や制限速度超過の程度・回数等を確認する際に用いることができる。なお、走行履歴データ中の速発パルス数は、前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2が配置された位置から、今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2が配置された位置までの間において速度発電機15から出力されたパルス信号のパルス数である。例えば、上記ステップS8で算出された速度が正しいか否かを、この速発パルス数に基づいて確かめることができる。
【0060】
続いて、CPU22は今回距離程情報を前回距離程情報としてメモリ23に記憶する(ステップS11)。このとき、CPU22は、当該記憶処理を行った日時を当該前回距離程情報と共にメモリ23に記憶する。
【0061】
一方、ステップS7における判断の結果、タグ間距離が距離基準値Ds以下でない場合には(ステップS7:NO)、CPU22は、鉄道車両13の速度の算出を行わず、直ちに、走行履歴データを少なくとも記憶可能な項目について記憶し、続いて、今回距離程情報を前回距離程情報として処理日時と共にメモリ23に記憶する(ステップS10およびS11)。他方、ステップS4における判断の結果、前回距離程情報がメモリ23に記憶されていない場合にも(ステップS4:NO)、CPU22は、鉄道車両13の速度の算出を行わず、直ちに、走行履歴データを少なくとも記憶可能な項目について記憶し、続いて、今回距離程情報を前回距離程情報として処理日時と共にメモリ23に記憶する(ステップS10およびS11)。
【0062】
以上のステップS1〜ステップS11の処理は、鉄道車両13の車両アンテナ4が路線R1の線路11に配置されたRFIDタグ2の上方を通過する度に繰り返し行われる。
【0063】
以上説明した通り、本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置1によれば、距離基準値Dsに基づいて、鉄道車両13の速度算出を行う区域とそうでない区域とを容易にかつ正確に識別することができる。これにより、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のある区域に限り、鉄道車両13の速度を算出し、当該算出結果に基づいて鉄道車両の速度が所定の制限速度を超過した場合に警告を発することができる。
【0064】
また、鉄道車両速度測定装置1によれば、上述したように、他の路線R2の線路に配置されたRFIDタグ3から送信されたID情報を速度算出に用いないことにより、速度算出に誤りが生じることを防止でき、また、RFIDタグ2の配置順序と異なる順序で受信したID情報を速度算出に用いないことにより、速度算出に誤りが生じることを防止できる。さらに、鉄道車両速度測定装置1によれば、前回距離程情報と今回距離程情報との差を算出してタグ間距離を求め、前回距離程情報が記憶された時点と速度算出時点との差を算出してタグ間時間を求め、タグ間距離をタグ間時間で割ることで鉄道車両13の速度を算出するので、例えば路線R1の線路に配置された一部のRFIDタグ2が故障し、ID情報を送信することができない状態であったために、ID情報の受信に欠落が生じた場合でも、これによって鉄道車両13の速度の算出の精度が大きく低下することを防止することができる。
【0065】
さらに、本発明の第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置1によれば、距離基準値Dsを変更することで、鉄道車両の速度算出を行う区域を個々の路線に適合するように容易に変更することができる。
【0066】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について図6を参照しながら説明する。図6は鉄道車両速度測定装置1の動作の第2実施形態を示している。なお、以下、第2の実施形態を説明するに当たり、図1ないし図5に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付すこととする。
【0067】
第2の実施形態の特徴は、上述した第1の実施形態のように鉄道車両13の速度算出を行うか否かを距離基準値Dsに基づいて判断するのではなく、鉄道車両13の速度算出を行うか否かを速度算出要否情報に基づいて判断する点にある。
【0068】
速度算出要否情報は、鉄道車両13の速度算出の要否を示す情報である。速度算出要否情報は、タグ配置位置ごとに存在し、路線データ中における各要素データに含まれる形でメモリ23に記憶されている。具体的には、各速度算出要否情報は、図3に示す路線データ中の各要素データの第6番目の「予備」の項目に記述されている。各速度算出要否情報は、例えばフラグであり、速度算出要否情報が「1」である場合、それは鉄道車両13の速度算出を要する旨を示し、速度算出要否情報が「0」である場合、それは鉄道車両13の速度算出を要しない旨を示す。また、同一の要素データ中に含まれるID情報、距離程情報、制限速度、備考および速度算出要否情報の間にはそれぞれ関連付けが形成されている。
【0069】
第2の実施形態による鉄道車両速度測定装置の動作は次の通りである。すなわち、図6に示すように、鉄道車両13に設けられた車両アンテナ4が路線R1の線路に配置された、ある1つのRFIDタグ2に接近すると、図5中のステップS1と同様に、当該RFIDタグ2のID情報が車両アンテナ4により受信され、RFIDリーダ21により読み取られ、CPU22に向けて出力される(ステップS21)。続いて、当該ID情報を受け取ったCPU22は、図5中のステップS2と同様に、路線データ中に、当該ID情報と一致するID情報を含む要素データが存在し、かつ当該要素データ中の路線番号が路線R1の路線番号と一致するか否かを判断する(ステップS22)。
【0070】
そして、路線データ中に、当該ID情報と一致するID情報を含む要素データが存在し、かつ当該要素データ中の路線番号が路線R1の路線番号と一致する場合には、CPU22は、当該ID情報に関連付けられた距離程情報および速度算出要否情報を路線データから読み出す(ステップS23)。
【0071】
続いて、CPU22は、図5中のステップS4と同様に、前回距離程情報がメモリ23に記憶されているか否かを判断し(ステップS24)、前回距離程情報がメモリ23に記憶されている場合には、前回距離程情報をメモリ23から読み出し、図5中のステップS5と同様に、今回距離程情報の示す距離程が前回距離程情報の示す距離程よりも大きいか否かを判断する(ステップS25)。
【0072】
そして、今回距離程情報の示す距離程が前回距離程情報の示す距離程よりも大きい場合には、CPU22は、ステップS23で路線データから読み出した速度算出要否情報が、鉄道車両13の速度算出を要する旨を示しているか否かを判断する(ステップS26)。
【0073】
例えば、当該速度算出要否情報が「1」であり、鉄道車両13の速度算出を要する旨を示している場合には(ステップS26:YES)、CPU22は、図5中のステップS6と同様に、今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2と前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグ2との間の距離、すなわちタグ間距離を算出する(ステップS27)。
【0074】
続いて、CPU22は、鉄道車両13の速度を算出する(ステップS28)。すなわち、図5中のステップS8と同様に、タグ間時間を算出し、タグ間距離をタグ間時間で割ることにより鉄道車両13の速度を求める。
【0075】
続いて、CPU22は、ステップS28で算出した鉄道車両13の速度が制限速度を超過しているか否かを判断し、超過している場合には、図5中のステップS9と同様に、警報を発する(ステップS29)。さらに、CPU22は、図5中のステップS10、S11と同様に、走行履歴データをメモリ23に記憶し、今回距離程情報を前回距離程情報として処理日時と共にメモリ23に記憶する(ステップS30、S31)。以上のステップS21〜ステップS31の処理は、鉄道車両13の車両アンテナ4が路線R1の線路11に配置されたRFIDタグ2の上方を通過する度に繰り返し行われる。
【0076】
このような構成を有する本発明の第2の実施形態によれば、速度算出要否情報に基づいて、鉄道車両13の速度算出を行う区域とそうでない区域とを容易にかつ正確に識別することができ、これにより、鉄道車両13の速度管理を厳格に行う必要のある区域に限り、鉄道車両13の速度を算出し、当該算出結果に基づいて鉄道車両の速度が所定の制限速度を超過した場合に警告を発することができる。特に、第2の実施形態によれば、路線データ中においてタグ配置位置ごとに記憶された速度算出要否情報を用いることにより、線路において互いに隣り合うRFIDタグ2間の距離の大小に拘わらず、鉄道車両13の速度算出を行うか否かを決めることができる。例えば、図2において、路線R1中の区域Zc内では鉄道車両13の速度算出を行うが、区域Za内では鉄道車両13の速度算出を行わないといった処理も可能である。また、区域Zc内の一部の区域に限り、鉄道車両13の速度算出を行うといった処理も可能である。したがって、鉄道車両13の速度算出を行うか否かをきめ細かく設定することができる。
【0077】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について図7ないし図9を参照しながら説明する。なお、以下、第3の実施形態を説明するに当たり、図1ないし図5に示す第1の実施形態と同一の構成要素には同一の符号を付すこととする。
【0078】
第3の実施形態の特徴は、路線の線路に沿って設定された区間の位置関係に基づいて鉄道車両13の進行方向を判断する点にある。
【0079】
図7は路線の線路におけるRFIDタグの配置および線路に沿って設定された区間を示している。図7に示すように、路線R3の線路には、複数のRFIDタグ51が所定(必ずしも一定ではない)の間隔で配置されている。各RFIDタグ51自体の構成は第1の実施形態におけるRFIDタグ2と同じである。
【0080】
また、路線R3の線路には、当該線路に沿って複数の区間Gが設定されている。各区間G内には、連続して配置された2つ以上のRFIDタグ51(連続する2つ以上のタグ配置位置)が属している。区間Gは線路に沿って連続して並ぶように設定することが望ましい。また、一本の線路が途中で複数本の線路に分岐している場合には、分岐点の前後および結合点の前後のそれぞれにおいて区間Gを分け、分岐した線路ごとに独立した単一のまたは複数の区間Gを設定することが望ましい。各区間Gの長さは、線路の分岐・結合箇所や、鉄道車両13の進行方向判断に求められる判断精度の程度等によって決めることが望ましいが、大まかには例えば200m〜500m程度である。なお、区間Gは、必ずしも線路の全域に亘って設定しなくてもよく、線路の一部の区域にのみ設定してもよい。例えば、鉄道車両13の進行方向の判断を行う必要性が低い区域には区間Gを設定しなくてもよい。あるいは、鉄道車両13の進行方向の判断を行う必要性が低い区域には、通常よりも長い長さを有する区間Gを設定するようにしてもよい。
【0081】
図8は、本実施形態における路線データを示している。図8に示すように、本実施形態における路線データの各要素データには、第1の実施形態における路線データの各要素データに含まれている情報(図3参照)に加え、区間情報としての区間番号および進行方向情報が含まれている。同一の要素データに含まれる路線番号、ID情報、距離程情報、制限速度、区間番号、進行方向情報および備考の間にはそれぞれ関連付けが形成されている。
【0082】
区間番号は、当該要素データ中のID情報が記憶されたRFIDタグ51(タグ配置位置)が属する区間Gの番号であり、これは少なくとも当該区間Gが設定された路線内において固有の番号である。
【0083】
進行方向情報は、当該路線における鉄道車両13の進行方向を区間Gの位置関係に基づいて示す情報である。具体的には、進行方向情報は、鉄道車両が通過すべき区間Gの順序を示す情報であり、例えば、図8に示すように、当該要素データ中のID情報が記憶されたRFIDタグ51が属する区間Gの直前に通過すべき区間Gの区間番号である。
【0084】
例えば、図7中の矢印が示すように、路線R3において鉄道車両13が区間番号001の区間G、区間番号002の区間G、区間番号003の区間G、区間番号005の区間Gの順序で進行する場合には、区間番号001の区間Gに属する各RFIDタグ51のID情報が含まれる要素データにおける区間番号は「001」であり、進行方向情報は「なし」(例えば「000」)である(区間番号001の区間Gは路線R3の始点である)。また、区間番号002の区間Gに属する各RFIDタグ51のID情報が含まれる要素データにおける区間番号は「002」であり、進行方向情報は「001」である。また、区間番号003の区間Gに属する各RFIDタグ51のID情報が含まれる要素データにおける区間番号は「003」であり、進行方向情報は「002」である。また、区間番号005の区間Gに属する各RFIDタグ51のID情報が含まれる要素データにおける区間番号は「005」であり、進行方向情報は「003」である。
【0085】
また、本実施形態において、装置本体5のCPU22は、速度算出手段に加え、区間記憶処理手段および進行方向判断手段として機能する。
【0086】
図9は鉄道車両速度測定装置1の動作の第3実施形態を示している。図9に示す第3の実施形態による鉄道車両速度測定装置1の動作のうちのステップS61からステップS69までは、次の点を除き、図5に示す第1の実施形態による鉄道車両速度測定装置1の動作のうちのステップS1からステップS9までと同じである。図9中のステップS61からステップS69までの動作と、図5中のステップS1からステップS9までの動作との間において異なる点は、図9中のステップS63において、鉄道車両速度測定装置1に設けられた装置本体5のCPU22が、ステップS61でRFIDリーダ21により読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報に加え、当該ID情報に関連付けられた区間番号をも路線データから読み出す点である。
【0087】
図9においてステップS61からステップS69までの処理を終えた後、CPU22は、前回、RFIDリーダ21により読み取られて進行方向判断の処理対象となったRFIDタグ51のID情報に関連付けられた区間番号(以下、これを「前回区間番号」という。)がメモリ23に記憶されているか否かを判断する(ステップS70)。
【0088】
ステップS70における判断の結果、前回区間番号がメモリ23に記憶されている場合には(ステップS70:YES)、CPU22は、前回区間番号をメモリ23から読み出し、そして、今回、ステップS61でRFIDリーダ21により読み取られたRFIDタグ51のID情報に関連付けられた区間番号(以下、これを「今回区間番号」という。)と前回区間番号とを比較し、今回区間番号と前回区間番号とが異なるか否かを判断する(ステップS71)。路線R3を走行している鉄道車両13が互いに隣接する2つの区間Gをまたいた場合には、今回区間番号と前回区間番号とが異なる。一方、路線R3を走行している鉄道車両13が1個の区間G内を走行している場合には、今回区間番号と前回区間番号とが等しくなる。
【0089】
ステップS71における判断の結果、今回区間番号と前回区間番号とが異なる場合には(ステップS71:YES)、CPU22は、区間Gの位置関係に基づいて鉄道車両13の進行方向を判断する(ステップS72)。この判断は例えば次のように行われる。すなわち、まず、CPU22は、ステップS61でRFIDリーダ21により読み取られたID情報に関連付けられた進行方向情報を路線データから読み取る。次に、CPU22は、当該読み取った進行方向情報を前回区間番号と比較する。進行方向情報は、上述したように鉄道車両13が直前に通過すべき区間Gの区間番号であるので、鉄道車両13の進行方向が正しい場合には、進行方向情報と前回区間番号とが一致する。そこで、CPU22は、進行方向情報と前回区間番号とを比較した結果、両者が一致した場合には、鉄道車両13の進行方向が正しいと判断し、両者が一致しない場合には、鉄道車両13の進行方向が誤りと判断する。なお、鉄道車両13の進行方向の判断方法として他の方法を採用することも可能である。例えば、今回区間番号と前回区間番号との比較に基づいて鉄道車両13が上り方向に進行しているか、下り方向に進行しているかを判断し、一方、路線データ等に現在の鉄道車両13が上りか下りかを特定する情報を記録しておき、上記判断結果と路線データ中の上記情報とを比較することにより、鉄道車両13の進行方向の正誤を判断してもよい。
【0090】
続いて、ステップS72の判断の結果、鉄道車両13の進行方向が誤りである場合には、CPU22は警報を発する(ステップS73)。例えば、CPU22は、液晶表示器27の表示画面に進行方向が誤っている旨を告げるメッセージを表示し、ランプ群28中の警報ランプを点灯または点滅させ、スピーカ29から警報音を出力する。これにより、進行方向の誤りを鉄道車両13の運転室内にいる運転手等に知らせることができる。一方、ステップS72の判断の結果、鉄道車両13の進行方向が正しい場合には警告を発しない。
【0091】
続いて、CPU22は、図5中のステップS10と同様に、走行履歴データをメモリ23に記憶する(ステップS74)。走行履歴データには、進行方向判断の結果や進行方向に関する警報の有無等を含めることが望ましい。さらに、CPU22は、今回距離程情報および今回区間番号を前回距離程情報および前回区間番号として処理日時と共にメモリ23に記憶する(ステップS75)。一方、前回区分番号がメモリ23に記憶されていないとき(ステップS70:NO)、または前回区間番号と今回区間番号とが等しいとき(ステップS71:NO)には、CPU22は、進行方向判断を行わずに直ちに、走行履歴データをメモリ23に記憶する共に、今回距離程情報および今回区間番号を前回距離程情報および前回区間番号として処理日時と共にメモリ23に記憶する(ステップS74、S75)。以上のステップS61〜ステップS75の処理は、鉄道車両13の車両アンテナ4が路線R3の線路に配置されたRFIDタグ51の上方を通過する度に繰り返し行われる。
【0092】
このような構成を有する本発明の第3の実施形態によれば、鉄道車両13の進行方向を正確に判断することができる。すなわち、個々のRFIDタグ51の位置関係ではなく、区間G同士の位置関係に基づいて鉄道車両13の進行方向を判断するので、何らかの異常等により個々のRFIDタグ51のいくつかを読み損なってしまった場合でも、このような読み取りの欠落の影響を受けずに、区間Gの位置関係に基づいて鉄道車両13の進行方向を正確に判断することができる。
【0093】
なお、上述した各実施形態では、各RFIDタグ2、3、51にID情報のみを記憶させ、各RFIDタグ2、3、51から鉄道車両側へ、ID情報のみを送信する場合を例にあげたが、本発明はこれに限らない。例えば、各RFIDタグに、ID情報に加え、当該RFIDタグのタグ配置位置の距離程を示す距離程情報を記憶し、各RFIDタグから鉄道車両側へID情報と距離程情報とを送信する構成としてもよい。この場合には、路線データに距離程情報を記述しなくてもよい。
【0094】
また、装置本体5のメモリ23に、車両アンテナ4の取付位置を示す情報を記憶させてもよい。例えば、列車先頭から車両アンテナ4までの距離を示す情報、列車末尾から車両アンテナ4までの距離を示す情報(または列車編成長を示す情報)を記憶させてもよい。これらの情報を用いて、路線上における列車の位置(列車先頭の位置、列車末尾の位置)を正確に検出することができる。
【0095】
また、上述したように鉄道車両速度測定装置1により算出した鉄道車両13の速度を、速度発電機15から出力されるパルス信号におけるパルス数を用い、必要に応じて補正するようにしてもよい。
【0096】
また、鉄道車両13において、車両アンテナ4の近傍に故障診断用のRFIDタグを取り付け、このRFIDタグと車両アンテナ4との間の通信を常時または必要に応じて行うことにより、線路11に配置されたRFIDタグ2や、鉄道車両13に搭載されたRFIDリーダ21等の健全性を確認する構成も採用し得る。
【0097】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取ることのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う鉄道車両速度測定装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【符号の説明】
【0098】
1 鉄道車両速度測定装置
2、3、51 RFIDタグ
4 車両アンテナ(アンテナ)
5 装置本体
11 線路
13 鉄道車両
21 RFIDリーダ(読取手段)
22 CPU(速度算出手段、区間記憶処理手段、進行方向判断手段)
23 メモリ(記憶手段)
Ds 距離基準値
G 区間
R1、R2、R3 路線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線路に沿って所定の間隔で配置され、固有のID情報が記憶された記憶部を有し、少なくとも当該ID情報を送信する複数のRFIDタグと、
鉄道車両に設けられ、前記各RFIDタグに接近したときに前記各RFIDタグから送信される前記ID情報を受信するアンテナと、
前記鉄道車両に設けられ、前記アンテナにより受信された前記ID情報を読み取る読取手段と、
前記鉄道車両に設けられ、前記複数のRFIDタグのID情報、および前記複数のRFIDタグが配置された位置の距離程を示す距離程情報を含み、複数の前記ID情報と複数の前記距離程情報との間に前記RFIDタグごとにそれぞれ関連付けが形成された路線情報を記憶する記憶手段と、
前記読取手段により今回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である今回距離程情報と、前記読取手段により前回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である前回距離程情報とを前記路線情報から取得し、当該取得した今回距離程情報および前回距離程情報を用いて、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグと前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグとの間のタグ間距離を算出し、当該算出したタグ間距離に基づいて前記鉄道車両の速度を算出する速度算出手段とを備え、
前記速度算出手段は、前記タグ間距離が所定の距離基準値以下であるか否かを判断し、前記タグ間距離が所定の距離基準値以下である場合には前記鉄道車両の速度の算出を行い、前記タグ間距離が所定の距離基準値以下でない場合には前記鉄道車両の速度の算出を行わないことを特徴とする鉄道車両速度測定装置。
【請求項2】
線路に沿って所定の間隔で配置され、固有のID情報が記憶された記憶部を有し、少なくとも当該ID情報を送信する複数のRFIDタグと、
鉄道車両に設けられ、前記各RFIDタグに接近したときに前記各RFIDタグから送信される前記ID情報を受信するアンテナと、
前記鉄道車両に設けられ、前記アンテナにより受信された前記ID情報を読み取る読取手段と、
前記鉄道車両に設けられ、前記複数のRFIDタグのID情報、前記複数のRFIDタグが配置された位置の距離程を示す距離程情報、および速度算出処理の要否を示す速度算出要否情報を含み、複数の前記ID情報、複数の前記距離程情報および複数の前記速度算出要否情報のそれぞれの間に前記RFIDタグごとにそれぞれ関連付けが形成された路線情報を記憶する記憶手段と、
前記読取手段により今回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である今回距離程情報と、前記読取手段により前回読み取られたID情報に関連付けられた距離程情報である前回距離程情報とを前記路線情報から取得し、当該取得した今回距離程情報および前回距離程情報を用いて、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグと前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグとの間のタグ間距離を算出し、当該算出したタグ間距離に基づいて前記鉄道車両の速度を算出する前記速度算出処理を行う速度算出手段とを備え、
前記速度算出手段は、前記今回読み取られたID情報に関連付けられた速度算出要否情報を前記路線情報から取得し、当該取得した速度算出要否情報が前記速度算出処理を要する旨を示している場合には前記速度算出処理を行い、当該取得した速度算出要否情報が前記速度算出処理を要する旨を示していない場合には前記速度算出処理を行わないことを特徴とする鉄道車両速度測定装置。
【請求項3】
前記速度算出手段は、前記今回読み取られたID情報が、前記路線情報に含まれる1つの路線または前記路線情報に含まれる複数の路線のうち指定された1つの路線の線路に配置された複数のRFIDタグのID情報のいずれかに一致するか否かを判断し、前記今回読み取られたID情報が前記1つの路線の線路に配置された複数のRFIDタグのID情報のいずれにも一致しない場合には前記鉄道車両の速度の算出を行わないことを特徴とする請求項1または2に記載の鉄道車両速度測定装置。
【請求項4】
前記速度算出手段は、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程と前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程とを比較し、前記今回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程が前記前回読み取られたID情報が記憶されたRFIDタグに係る距離程情報が示す距離程よりも小さい場合には前記鉄道車両の速度の算出を行わないことを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の鉄道車両速度測定装置。
【請求項5】
前記線路に沿って複数の区間が設定され、前記各区間には2個以上の前記RFIDタグが属し、前記記憶手段に記憶された前記路線情報は、前記各RFIDタグが前記複数の区間のうちのいずれの区間に属しているかを示す区間情報を含み、
前記読取手段によりID情報が読み取られたときに当該ID情報が記憶された前記RFIDタグが属している区間を前記区間情報に基づいて特定し、当該区間を前記記憶手段または他の記憶手段に記憶する区間記憶処理手段と、
前記読取手段により今回読み取られたID情報が記憶された前記RFIDタグが属している区間を前記区間情報に基づいて特定し、当該区間と前記区間記憶処理手段により前回記憶された区間との位置関係に基づいて前記鉄道車両の進行方向を判断する進行方向判断手段とを備えていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の鉄道車両速度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−240660(P2012−240660A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116257(P2011−116257)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000221904)東邦電機工業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】